JP5059294B2 - 有機マグネシウム化合物の製造方法 - Google Patents

有機マグネシウム化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、有機マグネシウム化合物の製造において使用するための試薬、並びにそのような有機マグネシウム化合物の製造方法に向けられている。本発明は、更に、有機化合物の製造方法をも提供する。それは更には、有機金属化合物の製造に並びにそれらと求電子剤との反応における、本発明の試薬の使用をも提供する。最後に、本発明は、有機金属化合物の製造における及びそれらと求電子剤との反応における、リチウム塩LiYの使用に、並びに、それら開示された方法によって得ることのできる有機金属化合物に向けられている。
多官能性有機金属は、現代の有機合成において重要な中間体である(1)
これらの試薬の最もよい製造方法の1つは、ハロゲン−金属交換反応である。Br/Li交換は低い温度で起きる素早い反応であるが、対応するBr/Mg交換は、これよりかなり遅く、幾つかの理由で重大な合成上の制限となっている。すなわち、
(i) 交換に、より高温が必要であり、従って多くの官能基と両立しない、
(ii) 特に電子に富んだ芳香族臭化物上での遅いBr/Mg交換は、反応中にやはり生成するものである臭化アルキル(通常、イソプロピルブロマイド)からのHBrの脱離と競合し、このため、低収率に終わる。Br/Mg交換の触媒反応があれば、極めて望ましい方法となろう。
最近、本発明者は、高度に官能性を有するハロゲン化アリール−及びヘテロアリールマグネシウムが、ヨウ素−マグネシウム交換反応を用いることによって容易に製造できることを示した(2)。交換試薬として、i−PrMgX(X=Cl、Br)が、最も便利であることが判明している。ある場合には、この交換反応は、i−PrMgXに配位しBr−Mgを「分子内」交換させる強力な電子吸引性の及び(又は)キレート性の基が存在している場合には、幾つかのアリール及びヘテロアリールブロマイドへと拡張できた(3)
基本的には、I/Mg交換反応は、官能性を有するアリール及びヘテロアリール化合物を製造するための卓越した方法である。それは、1つの主要な欠点として、時に不安定で、しばしば高価であり又は商業的に入手できない、有機ヨウ化物の使用を必要とする。Br/Mg交換のための基質としてアリールブロマイドを使用するという代替法は知られているが、i−PrMgCl又はi−Pr2Mgを用いる交換反応の遅い反応速度のために、非常に反応性に富んだアリールブロマイド(数個の電子吸引性基を有する)だけに強く限定されていた。
従って、本発明の基礎をなす課題は、有機マグネシウム化合物の製造の改良方法を提供することである。また、本発明の基礎をなす更なる課題は、求電子剤(E+)に対し、より高い反応性を有する有機マグネシウム化合物を提供することである。
これらの課題は、独立請求項の主題によって解決される。好ましい具体例は、従属請求項に提示されている。
本発明者は、混合有機金属R1(MgX)n・LiYを用いることにより、温和な条件にて、高収率で望みのグリニヤール(Grignard)試薬をもたらし、従来はBr/Mg交換反応によって凡庸な収率でのみ可能であった多くの、官能基を有するグリニヤール化合物の製造を可能にする、迅速な交換反応が起こることを見出した。本発明の方法は、特に、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル又はアルキルマグネシウム化合物の製造を大きく効率化し、大学における並びに企業の研究室における、大規模な使用に広い用途を有する。基本的には、本発明の方法は、次の反応スキームに対応する。
Figure 0005059294
第1の側面によれば、本発明は、有機マグネシウム化合物の製造に使用するための試薬に向けられており、該試薬は、一般式R1(MgX)n・LiYを有し、
ここに、nは1又は2であり;
1は、1個又はより多くのヘテロ原子B、O、N、S、Se、P、F、Cl、Br、I若しくはSiを含む、置換された又は無置換の、C4〜C24のアリール又はC3〜C24のヘテロアリールであるか;直鎖状の又は分枝のある、置換された又は無置換の、C1〜C20のアルキル、C2〜C20のアルケニル又はC2〜C20のアルキニルであるか;又は、置換された若しくは無置換のC3〜C20のシクロアルキルであるか;又はそれらの誘導体であり;
X及びYは、独立して又は双方ともに、Cl、Br又はI、好ましくはClであるか;HalOn(ここに、n=3、4)であるか;式RCO2のカルボキシレートであるか;式ROのアルコキシド又はフェノキシドであるか;式LiO−R−Oのジアルコキシドであるか;式(R3Si)2Nのジシラジドであるか;式SRのチオレートであるか、RP(O)O2であるか;又はSCORであり;ここにRは上記にR1として定義されたものであるか;式RNHの、直鎖状の又は分枝のある、置換された又は無置換の、C1〜C20アルキル又はC3〜C20シクロアルキルアミンであるか;式R2N(ここに、Rは、上記定義に同じであるか又はR2Nはヘテロ環状アルキルアミンを表す)のジアルキル/アリールアミンであるか;式PR2(ここに、Rは、上記定義に同じであるか又はPR2はヘテロ環状ホスフィンを表す)のホスフィンであるか;OnSR(ここに、n=2又は3であり、Rは上記定義に同じ)であるか;又はNOn(ここに、n=2又は3)であるか;又はXは、上記に定義されたR1であるか;またはそれらの誘導体である。
X及びR1は、X=R1の場合、通常は同じ置換基であるが、しかしながら、R1について示した定義の範囲内において、異なったものであり得ることに注意しなければならない。
本発明はまた、式XMg−R1−MgX・LiY(すなわち、n=2の場合)の化合物をも含むことが、明示的に言及されている。更には、「R2」が本出願において示されているとき(例えば、R2N又はPR2)は常に、両Rは、上記定義に従って、同一であっても異なっていてもよい。
加えて、驚くべきことに、R1(MgX)n・LiYを用いたときの交換速度が、もしX=R1であれば、更に促進されることが判明した。この試薬は、新しい試薬(R1)2Mg・LiYの形成をもたらすポリエーテル又はポリアミンの添加によって達成される。
従って、好ましい一具体例において、本試薬は、(R1)2Mg・LiYである。
この予想外の発見に関わるメカニズムは、次のように説明し得る:
Figure 0005059294
本システムは、通常は、以下に概説するように少なくとも1種の溶媒、及び少なくとも1種の添加剤(やはり下記を参照)を使用することを必要とすることに注意すべきである。例えば、THFは、溶媒として単独で又は他の溶媒と組み合わせて使用でき、そしてクラウンエーテルが上に概説したように添加剤として使用でき、それは直接、試薬(R1)2Mg・LiYの形成に関与する。
その一般則には、幾つかの溶媒は添加剤としても使用できまたその逆も真であるという点において、例外があり得る。例えば、純粋なジオキサン中で、下に概説するように、(R1)2Mg・LiYを製造することが可能である。
ジオキサンは、幾つかの有利な性質を有しており、それは、例えば、安価で、無毒で、工業的であり、容易に引火せず、高沸点で、余り吸湿性のない、取り扱い易く乾燥させ易い溶媒であり、従って、実際上理想的な溶媒であり且つ添加剤である。そして、それは適した添加剤且つ溶媒として、上記の反応に役立つ。
上記反応の一例として、本試薬は、i−PrMgCl・LiClの溶液を、15−クラウン−5(これは、最もよい結果を与える;表3の項目4を参照)等のようなクラウンエーテルで、又はより一般には、他のポリエーテル若しくはポリアミンで、単に処理することによってその場において(in situ)作られる。表3を参照。顕著なことに、且つ上述したとおり、速度の増大を達成する最も安価な方法は、ジオキサン(10体積%)の添加を用いることであり、これは、24時間の反応時間の後に、100%の変換(4−ブロモアニソールを4−メトキシ−フェニルマグネシウムにクロライド)をもたらす。比較として、THF中でのi−PrMgCl・LiClとの同じ反応の実施は、同じ時間の後に僅かに31〜39%の変換を与えるに過ぎない。LiClなしに15−クラウン−5又はジオキサンをi−PrMgClに添加することは、何らの速度増大ももたらさないことに注目するのも重要である。
従って、1,4−ジオキサン(又は、オリゴ若しくはポリエチレングリコールエーテル若しくはポリアミドのような関連したポリエーテル)の添加は、Br/Mg交換のような交換反応を更に高め、例えば、従来は不完全な反応をもたらした条件下に、臭化物を、対応するグリニヤール試薬へと変換することを可能にするであろう。これについての更なる説明は、「実施例」の章に見出されよう。
一具体例によれば、本試薬は、R1(MgX)n 及びLiYを、モル比0.05〜6.0の間に含んでなる。
好ましい一具体例によれば、R1(MgX)n・LiY又はLiY中において、YはClである。尚も更に好ましい一具体例においては、R1(MgX)n・LiYは、i−PrMgCl・LiCl又はsec−BuMgCl・LiClである。i−PrMgCl又はsec−BuMgClとLiClとの間の好ましいモル比は、0.05〜6.0である。
更なる好ましい一具体例によれば、R1(MgX)n・LiY又はLiY中において、Yはtert−ブチレート又はsec−ブチレートである。過塩素酸リチウム、リチウムアセチルアセトネート、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、及びテトラフルオロホウ酸リチウム等のような他のリチウム塩もまた本発明に含まれるが、好ましさは、より低い。
第2の側面によれば、本発明は、有機マグネシウム化合物の製造方法であって:
a)一般式R2Aを有する化合物であって、
ここに、R2は、R1として定義されたものであるか;又は、置換された若しくは無置換の、フェロセン等のようなメタロセンであるか又はそれらの誘導体であり、
Aは、H、Cl、Br、I、好ましくはBrであるか又は一般式:
S(O)n−R3
ここに、n=0、1又は2である基であるか、
又は、一般式:
P(O)R3 2
ここに、R3は、独立して、R1として上に定義されている基であるか(本文脈においてR3は、同一でも異なっていてもよいことに注意すべきである)又は;
P(O)R3 2は、ヘテロ環状ホスフィンオキシドを表すものである、
化合物を準備するステップと、
b)上に定義された式R1(MgX)n・LiYに従った試薬を準備するステップと、
c)ステップa)及びb)で得られた化合物を、適した条件下に反応させるステップ;
とを含んでなり、それによりそれぞれの有機マグネシウム化合物を得るものである、方法。
c)で得られる有機マグネシウム化合物は、更に単離することができる。
2がアリール又はヘテロアリール化合物である場合、それは、1個又はより多くの基FGで置換されていてよく、ここにFGは、好ましくはF、Cl、Br、CN、CO2R,OR、OH、NR2、NHR、NH2、PR2、P(O)R2、CONR2、CONHR、SR、SH,CF3、NO2、C=NR、R(ここにRは、R1についての上記定義に同じ)より選ばれるであることに、注意すべきである。R2Aの好ましい例は、ブロモナフタレン、ブロモフェナントレン、ブロモアニソール、ブロモチオフェン、ブロモチアゾール、ブロモピリジン、1−ブロモ−3−フルオロベンゼン、3−ブロモベンゾチオフェン、1,2−ジブロモベンゼン、1,2,4−トリブロモベンゼン及びそれらの誘導体、並びに、以下に記載される更なる化合物である。
原理的に、例えば以下の参考文献に引用されているあらゆる種類の官能基FGを使用することが可能であるが、それらに限定されない:
a)Handbook of Grignard reagents; edited by Gary S. Silverman and Philip E. Rakita (Chemical industries; v. 64).
b)Grignard reagents New Developments; edited by Herman G. Richey, Jr., 2000, John Wiley & Sons Ltd.
c)Methoden der Organischen Chemie, Houben-Weyl, Band XIII/2a, Metallorganische Verbindungen Be, Mg, Ca, Sr, Ba, Zn, Cd. 1973.
d)The chemistry of the metal-carbon bond, vol 4. edited by Frank R. Hartley. 1987, John Wiley & Sons.
更なる具体例によれば、一般式R1(MgX)n・LiYの試薬は、R1X、Mg及びLiYを反応させることにより、又は、R1(MgX)n及びLiYを反応させることによって、又はR1LiとMgXYとを反応させることによって、提供される。この反応において使用するための幾つかの成分は、商業的に入手可能であり、従って、新たに合成する必要はないことに注意すべきである(例えば、R1MgXとしてi−PrMgClは、Aldrich又はStrem CAS [1068-55-9]から商業的に入手可能である)。
一具体例によれば、ステップb)で準備される試薬は、ステップa)で準備される化合物1モル当たり0.4−6.0モルのモル量で使用される。一般に、一般式R1(MgX)n・LiYを有する本発明の試薬は、a)で準備される化合物(一般式R2A)1モル当たり、試薬6.0モルまでを加えることができる。R2Aの1モル当たりの下限である0.4モルは、本発明の効果、すなわち、慣用の反応:
Figure 0005059294
における目覚しい速度上昇が、この下限より下の値を使用した場合には達成されないかもしれないことを意味する。
上記式において、R1(MgX)n・LiY及びR2(MgX)n・LiYにおいて、nが異なってよいことに、注意すべきである。
上記反応は、適切な溶媒中において行われる。好ましくは、R1(MgX)n・LiYを溶解させる溶媒は、不活性の非プロトン性溶媒であり、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、2−メチルテトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジオキサン、トリエチルアミン、ピリジン、エチルジイソプロピルアミン、ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、ジメチルスルフィド、ジブチルスルフィド、ベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン若しくはヘプタン、又はそれらの組み合わせ、及び/又は、上に引用した文献中で示されているグリニヤール反応の実施のために通常使用される溶媒である。
上に概説されているように、溶媒への1種又はより多くの添加剤の添加は、改良された試薬(R1)2Mg・LiYを与え得る。この添加剤は、ポリエーテル又はポリアミン、特にクラウンエーテル、ジオキサン、オリゴ−又はポリエチレングリコールエーテル、尿素の誘導体、一般式RCONR2のアミド(ここに、Rは、請求項1における定義に同じであり、置換基は、同一でも異なっていてもよい)、から選択でき、最も好ましくは、1,4−ジオキサン又は15−クラウン−5又はこれらの組み合わせである。本発明において使用してよい添加剤の更なる例は、下の表3に掲げられている。
更なる具体例によれば、R1(MgX)n・LiYの上記溶液は、0.05〜3.0M、好ましくは、1.0〜2.5Mである。原則として、この溶液の濃度が高いほど、全体としての反応は一層良好に起こる。しかしながら、一般に、3Mを超えるR1(MgX)n・LiYの溶液は、それ以上の可溶性がなく、従って本発明においては機能しないであろう。
粉末としてのR1(MgX)n・LiYの使用(溶媒なしで又は配位した溶媒と共に)もまた可能であり、貯蔵のためには特に便利である。
更なる一側面によれば、本発明は、官能基を有する又は官能基を有しない有機化合物を製造するための方法であって;
上記のステップa)〜c)及び、
d)得られた有機マグネシウム化合物を有機又は無機の求電子剤(E+)又は(E)と反応させるステップ
を含んでなる方法を提供する。
この反応は、次の反応スキームに従う:
Figure 0005059294
グリニヤール試薬との反応に一般に用いられる求電子剤の例が、上記の参考文献a)〜d)に引用されているが、それらに限定されない。
求電子剤の具体例は、RCHO、 RCOX、 XnPR3-n(n=1,2,3)、XnP(O)R3-n(n=1,2,3)、RX、RCO2R、RCN、RnSi−X4-n(n =0,1,2,3),RnSnX4-n(n=0,1,2,3)又はRSSOnR(n= 0,1,2),RNO2,RNO,RN=NSO2R,RC=NR,B(OR)3であり、
ここに、Xは、ハロゲン又はS(O)nR基であり、ここにn=0、1又は2であり、Rは、通常、上記R1で定義される。
またも、2個又は3個のRが1つの式に含まれるとき、それらは同一でも相互に異なっていてもよいことに注意すべきである。
しかしながら、本発明は、これらの例に限定されず、LiYと複合体形成したグリニヤール試薬の改良反応が、全てのタイプの求電子剤について観察される。
上記の方法は、−78℃〜80℃の範囲の温度にて、好ましくは室温にて、行われる。温度範囲の上限は、一般に、使用した溶媒それぞれの沸点である。
更なる一側面によれば、本発明は、有機金属化合物の製造における試薬R1(MgX)n・LiYの使用、及び求電子剤とそれらとの反応に向けられている。
本発明の更なる一側面は、有機金属化合物の製造におけるLiYの使用、及び求電子剤とのそれらの反応に向けられており、ここにYは、上記に同じである。特にLiClが上記の交換反応の変換速度を劇的に増大させることが判明したことに、注意すべきである。比較のため、添付の表2を参照。
最後の一側面によれば、本発明は、有機金属化合物を提供し、それは、上記の第2の側面による方法によって得られる。本反応の複合体化した生成物、すなわち一般式R2(MgX)n・LiYの生成物は、求電子剤(E+)または(E)に対して、従来技術の試薬より遥かに高い反応性を有し、また適切な各溶媒(上記参照)へのその溶解度も、優れている。
こうして、本発明の方法により、従来技術の方法の凡庸でしかない収率に比して、100%までの変換率を達成することが可能である。
本発明は、以下の図面及び実施例を参照して更に記述されよう。しかしながら、本発明がそのような図面及び実施例に限定されないということ、理解しなければならない。
本発明は、添付の図面参照して、今や、以下に一層完全に記述されよう。以下の具体例は、本開示が徹底し且つ完全になるよう、そして当業者に本発明の範囲を完全に理解させるように提供されている。
別に定義しない限り、本明細において用いられている全ての技術的及び科学的用語は、本発明の当業者に一般に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に述べられている全ての刊行物及び他の参考文献は、それらの全体が参照により導入されている。
本明細書において用いられている、「アルキル」、「アルケニル」及び「アルキニル」の語は、直鎖状及び分枝鎖状の、置換された及び無置換の、C1〜C20化合物をいう。これらの化合物についての好ましい範囲は、C1〜C10、好ましくはC1〜C5(低級アルキル)、並びに、アルケニル及びアルキニルにつき、それぞれ、C2〜C10及び好ましくはC2〜C5である。「シクロアルキル」の語は、一般に、直鎖状及び分枝鎖状の、置換された及び無置換の、C3〜C20をいう。ここに、好ましい範囲は、C3〜C15であり、より好ましくはC3〜C8である。
本明細書において用いられている「アリール」の語は、置換された又は無置換のC4〜C24アリールをいう。「ヘテロアリール」により、B、O、N、S、Se、Pのようなヘテロ原子の1個又はより多くを含む、置換された又は無置換のC3〜C24ヘテロアリールを意味する。双方について好ましい範囲は、C4〜C15であり、より好ましくはC4〜C10である。
本発明者は、今や、複合体R1(MgX)n・LiY、例えばi−PrMgCl・LiClを用いることにより、交換反応、例えばBr/Mg交換反応、を触媒することが可能なことを見出した。一例として、1−ブロモ−3−フルオロベンゼン(1a)は、i−Pr2Mgと遅く不完全な交換反応しかせず(1.1当量、室温、3時間)、ベンズアルデヒドとの反応後に対応するアルコール2aを50%の単離収率でもたらす(3a)。他方、同じ条件下におけるi−PrMgCl・LiClとの反応は、中間体マグネシウム試薬3aを、テトラデカンを内部標準として用いてGC分析により判定したところによれば、95%の収率で与える。ベンズアルデヒドとの反応後に、アルコール2aが、85%の単離収率で得られる(スキーム1)。
Figure 0005059294
種々のフルオロ−及びクロロ−置換アリールブロマイドが、i−PrMgCl・LiClを用いて、対応するマグネシウム試薬へと室温で容易に変換される。この変換は、0.5〜3時間で完了し、これは、i−PrMgCl又はi−Pr2Mgを用いる従来の手順とは強い対照をなしている(スキーム2)。
Figure 0005059294
同様に、この触媒は、2,6−ジブロモピリジン(1b)のような、ヘテロ環状系にも適用できる。このジブロマイドはまた、Br/Mg交換反応を行うには、i−Pr2Mg(3a)又はi−PrMgCl(3f)の使用も必要とする。これらの条件下において、ベンズアルデヒドとの反応は、所望のアルコール2baを、僅か42%の収率でしか与えない(3f)。我々は、ここでも、交換試薬としてのi−PrMgCl・LiClの優秀性を観察し、試薬i−Pr2Mgの使用が4時間という反応時間を要するのに対し、25℃にて1時間の反応時間の後92%の変換を観察した。この新しい試薬i−PrMgCl・LiClを用いて、その所望の反応性生物(2ba)は89%の単離収率で得られる(スキーム1)。やはり優れた結果が、2,6−ジブロモピリジン(1b)から形成されたグリニヤール試薬(3b)と他の求電子剤(表1、番号1〜3)との反応においても観察された。3,5−ジブロモピリジンの場合のBr/Mg交換は、−10℃にて15分で行うことができ、アリルブロマイドとの反応は、アリル化されたピリジン2caを卓越した収率(表1、番号4)で与える。活性のより低い3−ブロモピリジンもまた、対応するグリニヤール試薬3vへと室温にて5分以内で容易に変換することができ、アリルブロマイドとの反応後3−アリルピリジン2vaを、殆ど定量的収率でもたらす。2−ブロモチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−ブロモベンゾチオフェン及び2−ブロモチアゾール等のような他のヘテロ環状系が、室温にて容易にi−PrMgCl・LiClと反応し、種々の求電子剤との反応後、対応する生成物2ra〜2uaを、優れた乃至卓越した収率で、与える(表1、番号29〜32)。チアゾール基が容易にアルデヒド官能性へ変換できることから、我々のアプローチが、グリニヤール試薬3rと種々の求電子剤とのの反応を介した種々のアルデヒドの合成に途を開いたことに、特に注意すべきである。
この挙動は、全般的であり、i−PrMgCl・LiClの使用は、i−PrMgCl 又はi−Pr2Mgに比して、より素早いBr/Mg交換を可能にする。また、過剰の試薬の必要なしに(通常1.1又は1.05当量のi−PrMgCl・LiClが使用される)、望みの有機マグネシウム試薬への変換を、劇的に増大する。更には、得られるマグネシウム試薬の反応性は、改善もされるようであり、求電子剤との捕捉反応において、より高い収率をもたらす。31のような、オルト位に置換基を有する立体的に障害されたグリニヤール試薬が、室温での12時間の反応時間内に得られ、ベンズアルデヒドの添加後、望みのアルコール21aを90%の収率で与える(表1、番号21)。芳香環が電子に富んでいればいる程、i−PrMgClを用いた交換反応は、より遅い。2−メトキシ−1−ブロモベンゼン(1h)は、しかしながら、室温にて24時間の反応時間の後に、90%を超える収率で望みのマグネシウム試薬3hへと変換される。PhSSPhとのその反応の後、チオエーテル2haが、90%の収率で得られる(番号12)。広範な種々の求電子剤が、CuCN・2LiCl(4)とのトランスメタル化ステップの後これらのグリニヤール試薬と反応して、アリル化及びアシル化の実施を可能にする(番号14)。
高度に置換されたクロロ及びメトキシアリールブロマイドが、望みのグリニヤール試薬3i,jへと、容易に変換できる。ClPPh2との反応及び酸化的処理の後、ホスフィンオキシド2ia,jaが、高収率で得られる(番号15、16)。このタイプの化合物は、非対称の触媒のためのP−リガンドとの関係において、興味深い(5)。シアノ基等のような官能基もまた許容される。従って、−7℃のTHF中での4−ブロモベンゾニトリルの反応は、i−PrMgClを用いては望みのアリールマグネシウム試薬(3d)を50%の変換でしかもたらさないのに対し、i−PrMgCl・LiClとでは90%を超えるのが観察される(スキーム3)。ベンズアルデヒドの添加は、アルコール2daを81%の収率で与えるが、アリルブロマイドによるアリールマグネシウム試薬(3d)のアリル化は、92%の収率で、対応する4−アリルベンゾニトリルをもたらす(表1の番号5,6)。更なる情報については図3を参照のこと。
グリニヤール試薬3e,fは、0℃にて3時間以内に形成され、種々の求電子剤との反応の後、優れた収率を示した(番号5〜10)。ブロモナフタレンやブロモフェナントレン誘導体のような、通常は非反応性の化合物が、ベンズアルデヒド(番号22、24)及びアリルブロマイドの双方と容易に反応する対応するグリニヤール試薬3m,n(番号22〜25)へと、優れた収率で容易に変換される(番号23)。CuCN・2LiCl(0.2当量)との触媒的トランスメタル化及びエチル4−ヨードブチレートとの−10℃での4時間の反応の後、望みの交差カップリング生成物2nbが81%の収率で得られる(番号25)。上で指摘したように、3o及び3pのような、種々のジクロロ置換グリニヤール試薬が、容易に製造でき、芳香族及び脂肪族アルデヒドと反応して、対応するアルコール2oa、2paを、83%及び92%の収率で与える(番号26、27)。エステル基もまた、オルト位に許容され、従って、マグネシウム試薬3qが、−45℃で12時間以内に製造され、アリルブロマイドとの反応は、対応するアリル化されたエステル2qaを82%の収率でもたらす。
目覚しいことに、1,2−ジブロモベンゼンの場合、モノ交換反応のみが起こり、望みのグリニヤール試薬(3k)を、反応サンプルのGC分析により示されるところでは、殆ど定量的収率で与える(−15℃、1.5時間)。2−ブロモフェニルマグネシウムクロライド(3k)と3−ヨード−2−シクロヘキセン−1−オンとの反応は、予期されたエノン(2kc)を86%の収率で生成する。グリニヤール試薬3kもまた、種々の求電子剤に対して優れた活性を示す(番号17〜20)。これらの反応の種々の変形及び数種の重要な新しいマグネシウム試薬が、表1の番号21〜33に報告されている。
立体化学的に十分定義されたE−又はZ−アルケニルマグネシウム化合物の立体選択的な製造は、E−又はZ−アルケニルハライド(halide)へのマグネシウムの直接挿入によっては不可能であることから、このヨード・マグネシウム交換反応は、立体化学的に純粋なE−又はZ−アルケニルマグネシウム誘導体の製造の特異な方法であろう(6)。最近、我々は、アルケニルヨーダイドの場合のヨード・マグネシウム交換反応が、交換反応の促進には、α又はβ位に電子吸引基の存在を要求することを示した(7)。このことは、我々を、非活性化ヨード・アルケンからのI/Mg交換を経た、アルケニルマグネシウム試薬の立体選択的な製造の研究へと導いた。こうして、(E)−1−ブロモヘキセン交換の反応が起こり、(E)−1−ヘキセニルマグネシウムクロライド(4a)を、殆ど定量的な収率で与える(−25℃、10時間)(反応サンプルのGC−分析)。グリニヤール試薬4aとt−BuCHOとの反応は、卓越した収率で、対応するアルコール5aの形成をもたらした。この、顕著に低い温度は、多数の官能基の存在を可能にするであろう。また我々は、キラル(chral)な環状アルケニルヨーダイドの場合において、優れた変換(GC)と共に素早い交換反応をも観察した。マグネシウム試薬4bとアリルブロマイドとのその後の反応は、優れた収率で進み、種々のα−置換されたキラルなアリルアルコールの入手に途を開いた(スキーム3)。
Figure 0005059294
Br/Mg交換をビニル系において行うことも可能である。すなわち、1,2−ジブロモシクロペンテンは、i−PrMgCl・LiClと室温で容易に反応して、安定なグリニヤール試薬4cを生成し、これはシクロヘキシルアルデヒドと反応後、対応するアルコール5bを優れた収率で与えた。
Figure 0005059294
試薬4cは、室温で何週間もの間完全に安定であるが、触媒量のCu(I)又はCu(II)の添加は、シクロペンチンの形成をもたらし、マグネシウム又はリチウム化合物の等量の更なる存在下に反応して、新たなグリニヤール種4d,eを形成する。ベンズアルデヒドの添加は、対応するアルコールを優れた収率で与える。
Figure 0005059294
過塩素酸リチウム、リチウムアセチルアセトネート、臭化リチウム、ヨウ化リチウム及びテトラフルオロホウ酸リチウムのような他のリチウム塩もまた試験したが、触媒作用は劣っていた(図2)。
この触媒作用のメカニズムは明らかになっていないが、本発明者は、塩化リチウムの役割は、タイプ7の中間体をもたらし最終的には有機マグネシウム種PhMgCl・LiCl(8)をもたらすタイプ6のマグネシウム酸種を形成することによって、イソプロピル基の求核性を高めてi−PrMgClを活性化させることであると考えている。
Figure 0005059294
LiClとのアリールマグネシウム種の複合体形成もまた、8(スキーム6)に示したように、これらのマグネシウム有機金属の高められた反応性の原因となっている可能性がある(4)
一例として、本発明者は、アリール及びヘテロアリールブロマイドと複合体i−PrMgCl・LiClとのBr/Mg交換反応を触媒するための簡単な手順を見出した。それは、有機合成に最も重要な諸々の官能性を有する安価なアリール及びヘテロアリールブロマイドから出発して、種々の新規な多官能性の有機マグネシウム化合物を、製造することを可能にする。
試薬i−PrMgCl・LiClの製造: マグネシウム削り屑(110mmole)をアルゴン置換したフラスコ中に無水LiCl(100mmole)と共に入れ、50mlのTHFを加えた。i−PrCl(100mmole)のTHF溶液50mlをゆっくりと加え、混合物を室温にて撹拌し、グリニヤール形成が2,3分以内に開始。発熱反応の完了後、反応混合物を更に12時間室温にて撹拌した。i−PrMgCl・LiClのやや黒っぽい溶液を、アルゴン下に新しいフラスコに移し、そうすることによって過剰のMgから取り出した。
典型的な手順。フェニル−(4−シアノフェニル)メタノール 2daの製造:
マグネティックスターラー及び隔壁を備えた、乾燥し且つアルゴン置換した10mLのフラスコに4−ブロモベンゾニトリル(182mg、1mmole)を仕込んだ。乾燥したTHF(1mL)を加え、反応混合物を−7℃まで冷却し、次いでi−PrMgCl・LiCl(1mL、THF中1.1M、1.1mmole)を滴下して加えた。Br/Mg交換は3時間後に完了し(反応サンプルのGC分析により確認、変換率90%超)、そしてベンズアルデヒド(116.6mg、1.1mmole)を加えた。反応混合物を0.5時間、−7℃にて撹拌し、次いで、飽和NH4Cl溶液(2mL)により反応停止させた。水相をエーテルで抽出し(3回、各4mL)、有機画分を食塩水で洗浄し(5mL)、乾燥させ(Na2SO4)、そして減圧濃縮した。粗製残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン)により精製し、ベンジルアルコール(2da)を、無色油状物として得た(169.5mg、81%):1H−NMR(CDCl3,200≡MHz):δ=7.91〜7.85(m,2≡H);7.65〜7.46(m,3≡H);7.38〜7.30(m, 4≡H);5.86(s,1≡H);2.42(s,1≡H,OH).
3−アリル−5−ブロモピリジン2caの製造:
マグネティックスターラー及び隔壁を備えた、乾燥しアルゴン置換した10mLのフラスコにi−PrMgCl・LiCl(1≡mL,THF中1.05≡M,1.05≡mmole)を仕込み、反応混合物を−15℃まで冷却し、次いで3,5−ジブロモピリジン(236.9mg、1mmole)を一度に加えた。温度が次いで−10℃まで上昇し、Br/Mg交換は15分後に完了し(反応サンプルのGC分析により確認、変換は98%超)、アリルブロマイド(140.6≡mg、1≡mmole)を加えた。反応混合物を−10℃にて1時間撹拌し、次いで飽和NH4Cl溶液(2mL)の添加により反応停止させた。水相をエーテルで抽出し(3回、各4mL)、乾燥させ(Na2SO4)そして減圧濃縮した。粗製残渣を、フラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン)で精製し、3−アリル−5−ブロモピリジン(2ca)を、無色湯状物として得た(184.2mg、93%)。1H−NMR(CDCl3,200≡MHz):δ=8.48(d,J=2.2≡Hz,1≡H);8.32(d,J=1.6≡Hz,1≡H);7.61(dd,J=2.2≡Hz,J=1.6≡Hz,1≡H);5.89≡〜5.68(m,1≡H);5.08〜5.01(m,1≡H);3.32(brd,J=6.8≡Hz,1≡H).
(2−ブロモフェニル)(フェニル)メタノン2kaの製造:
マグネティックスターラー及び隔壁を備えた乾燥しアルゴン置換した10mLのフラスコに、i−PrMgCl・LiCl(1≡mL,THF中1.05≡M,1.05≡mmole)を仕込み、反応混合物を−15℃まで冷却し、1,2−ジブロモベンゼン(235.9≡mg,1≡mmole)を滴下して加えた。Br/Mg交換は1.5時間後に完了し(反応サンプルのGC分析により確認、変換率98%超)、CuCN・2LiCl溶液(0.1≡mL,THF中1.0≡M,0.1 mmole)を加えた。−15℃にて10分間撹拌した後、塩化ベンゾイル(140.6≡mg,1≡mmole)を加えた。反応混合物を1時間、−15℃にて撹拌し、次いで飽和NH4Cl溶液(2mL)により反応停止させ、更に濃NH3を5滴加えた。水相をエーテルで抽出し(3回、各4mL)、有機画分を食塩水(5mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、減圧濃縮した。粗製残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロエタン)で精製し、ケトン(2ka)を白色結晶として得た(219.3≡mg,84 %)。1H−NMR(CDCl3,200≡MHz):δ=7.86〜7.78(m,2≡H);7.68〜7.56(m,2≡H);7.52〜7.30(m,5≡H).
Figure 0005059294
Figure 0005059294
Figure 0005059294
Figure 0005059294
Figure 0005059294
[a]X=Cl・LiCl;[b]分析上純粋な生成物の単離収率;[c]求電子剤との反応の前に、グリニヤール試薬はCuCN・2LiClによりトランスメタル化された;[d]反応混合物を過酸化水素水で酸化的に後処理した。
Figure 0005059294
[a]反応の変換率は、反応物サンプルのガスクロマトグラフィー分析によって決定した;精度±2%。
[b]i−PrMgCl・LiClの濃度は2.22Mであった。
試薬(R1)2Mg・LiYの挙動の改善のための実験:
アリールブロマイド1のi−PrMgCl・LiClとの反応は、混合物をもたらすに過ぎず、これに対して15−クラウン−5を添加したTHF中におけるi−PrMgCl・LiClとの反応は、91%変換率で対応するグリニヤール試薬2をもたらす。
Figure 0005059294
Figure 0005059294
Figure 0005059294
Figure 0005059294
[a]反応の変換率は、ガスクロマトグラフィー分析により決定した;精度±2%。
[b]i−PrMgCl・LiClの濃度は、2.22Mであった。[c]括弧内は、ろ過した試薬による反応についての変換率である。
15−C−5:15−クラウン−5
PEG250:ポリエチレングリコール、平均分子量250g/mol
DMPU:テトラヒドロ−1,3−ジメチル−2(1H)−ピリミジノン
MTBE:2−メトキシ−2−メチルプロパン
TMU:N,N,N’,N’−テトラメチルウレア
NMM:N−メチルモルホリン
方法A: 25℃にて予め撹拌してあるsec−BuMgCl・LiClと添加剤との混合物に、4−ブロモアニソールを添加した。
方法B: 予め撹拌してあるsec−BuMgCl・LiClと4−ブロモアニソールとの混合物に、添加剤を添加した。
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5 P. Torsten, P. Thomas, G. Guido, S. Wolfgram. Eur. Pat. Appl. (2002).
6 The direct insertion of magnesium into alkenyl halides is not stereoselective. For example, the reaction of (Z)-1-bromooctene with magnesium in THF produces a 15:85 E:Z mixture of 1-octenylmagnesium bromide. The same behaviour is observed for the insertion of zinc dust into alkenyl iodides. In both cases, a radical mechanism operates. T. N. Majid and P. Knochel, Tetrahedron. Lett., 1990, 31, 4413.
7 I. Sapountzis, W. Dohle, P. Knochel, Chem. Commun. 2001, 2068.
図1は、4−ブロモベンゾニトリルの−7℃での4−シアノフェニルマグネシウムブロマイドへの変換を示す。 図2は、4−ブロモアニソールの室温での4−メトキシフェニルマグネシウムブロマイドへの変換を示す。 図3は、i−PrMgCl・LiClを用いてBr/Mg交換によって90%を超えて製造されたグリニヤール試薬(反応条件は、各式毎に下に示されている)。

Claims (18)

  1. 有機マグネシウム化合物の製造方法であって:
    a)一般式、R(MgX)・LiYを有する試薬であって、
    ここに、nは1又は2であり;
    は、置換されていてよい、C〜C24のアリール又は1個又はより多くのヘテロ原子B、O、N、S、Se、P、若しくはSiを含むC〜C24のヘテロアリールであるか;直鎖状の又は分枝のある、置換されていてよい、C〜C20のアルキル、C〜C20のアルケニル又はC〜C20のアルキニルであるか;又は、置換されていてよいC〜C20のシクロアルキルであり;
    X及びYは、各々相互に独立して又は双方ともに、Cl、Br又はIであるか;HalO(ここに、n=3、4)であるか;式RCOのカルボキシレートであるか;式ROのアルコキシド又はフェノキシドであるか;式LiO−R−Oのジアルコキシドであるか;式(RSi)Nのジシラジドであるか;式SRのチオレートであるか、RP(O)Oであるか;又はSCORであり;ここにRは上記にRとして定義されたものであるか;式RNHの、直鎖状の又は分枝のある、置換されていてよい、C〜C20アルキル又はC〜C20シクロアルキルアミンであるか;式RN(ここに、Rは、上記定義に同じであるか又はRNはヘテロ環状アルキルアミンを表す)のジアルキル/アリールアミンであるか;式PR(ここに、Rは、上記定義に同じであるか又はPRはヘテロ環状ホスフィンを表す)のホスフィンであるか;OSR(ここに、n=2又は3であり、Rは上記定義に同じ)であるか;又はNO(ここに、n=2又は3)であるか;又はXは、上記に定義されたRである、
    試薬を準備するステップと、
    b)一般式RAを有する化合物であって、
    ここに、Rは、Rとして定義されたものであるか;又は、置換されていてよいメタロセンであり、
    Aは、H、Cl、Br若しくはIであるか又は一般式:
    S(O)−Rであって
    ここに、n=0、1又は2である基であるか、
    又は、一般式:
    P(O)R であって
    ここに、Rは独立してRとして定義されるものであるか又は;
    P(O)R は、ヘテロ環状ホスフィンオキシドを表すものである、
    化合物を準備するステップと、
    c)ステップa)及びb)で準備された化合物を反応させるステップ;
    とを含んでなり、それにより一般式R(MgX)・LiYを有するそれぞれの有機マグネシウム化合物を得るものであり、
    ステップa)で準備された化合物が、溶媒中において溶液として使用されるものであり、そして該溶液が更に、ポリエーテル又はポリアミン、ジオキサン、オリゴ−又はポリエチレングリコールエーテル、尿素誘導体、式RCONRのアミド(ここに、Rは、上記定義に同じであり、基は同一でも異なっていてもよい)、又はそれらの組み合わせよりなる群より選ばれる、1種又は2種以上の添加剤を含有するものである、方法。
  2. 該試薬が、RX、Mg及びLiYを反応させることにより、又は、R(MgX)及びLiYを反応させることにより、又はRLi及びMgXYを反応させることにより得られるものである、請求項1の方法。
  3. ステップa)で準備された化合物が、ステップb)で準備された化合物のモル当たり0.4〜6.0のモル量で使用されるものである、請求項1又は2の方法。
  4. 該溶媒が、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジオキサン類、トリエチルアミン、ピリジン、エチルジイソプロピルアミン、ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、ジメチルスルフィド、ジブチルスルフィド、ベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン又はこれらの組み合わせである、請求項1の方法。
  5. ジオキサンが1,4−ジオキサンである、請求項4の方法。
  6. 1種又は2種以上の添加剤が1種又は2種以上のクラウンエーテルである、請求項1の方法。
  7. 1種又は2種以上の添加剤が1,4−ジオキサン及び15−クラウン−5から選ばれるものである、請求項1の方法。
  8. 該溶液が、0.05M〜3.0M(MgX)・LiYを含有するものである、請求項1ないし7の何れかの方法。
  9. 該溶液が、1.0M〜2.5M(MgX)・LiYを含有するものである、請求項8の方法。
  10. 該メタロセンがフェロセンである、請求項1の方法。
  11. X若しくはYが、又はX及びYの双方が、Clである、請求項1の方法。
  12. AがBrである、請求項1の方法。
  13. 官能性を有する又は官能性を有しない有機化合物を製造するための方法であって、
    請求項1ないし12の何れかのステップa)〜c)を含み、そして
    d)得られた有機マグネシウム化合物を有機又は無機の求電子剤(E+)又は(E)と反応させることを含む方法。
  14. 該求電子剤がRCHO、RCOX、XPR3−s(s=1,2,3)、XP(O)R3−t(t=1,2,3)、RX、RCOR、RCN、RSi−X4−u(u=0,1,2,3)、RSnX4−v(v=0,1,2,3)又はRSSOR(w=0,1,2)、RNO,RNO,RN=NSOR,RC=NR,B(OR)であり、ここに、Xは、ハロゲン又はS(O)R基(y=0、1又は2)であり、RはR(請求項1におけるRの定義に同じ)である、請求項13の方法。
  15. −78℃ないし80℃の範囲の温度で行われるものである、請求項1ないし13の何れかの方法。
  16. 該反応が室温で行われるものである、請求項15の方法。
  17. 有機金属化合物の製造及びそれらと求電子剤との反応における請求項1ないし16の何れかに記載された試薬の使用であって、該試薬が、i−PrMgCl・LiCl又はsec−BuMgCl・LiClであり、i−PrMgCl又はsec−BuMgClとLiClとの間のモル比が0.05〜6.0である、使用。
  18. 請求項1ないし16の何れかに記載された有機金属化合物の製造及びそれらと求電子剤との反応におけるLiYの使用であって、YがClである、使用。
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