以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における車両用制御装置100が搭載される車両1を模式的に示した模式図である。なお、図1の矢印FWDは、車両1の前進方向を示す。
まず、車両1の概略構成について説明する。車両1は、図1に示すように、車体フレームBFと、その車体フレームBFに支持される複数(本実施の形態では4輪)の車輪2と、それら各車輪2を独立に回転駆動する車輪駆動装置3と、各車輪2の操舵駆動及びキャンバー角の調整等を行うキャンバー角調整装置4とを主に備え、車輪2のキャンバー角を車両用制御装置100により制御して、車輪2に設けられた2種類のトレッドを使い分けることで(図5及び図6参照)、走行性能の向上と省燃費の達成とを図ることができるように構成されている。
次いで、各部の詳細構成について説明する。車輪2は、図1に示すように、車両1の進行方向前方側に位置する左右の前輪2FL,2FRと、進行方向後方側に位置する左右の後輪2RL,2RRとの4輪を備え、これら前後輪2FL〜2RRは、車輪駆動装置3から回転駆動力を付与されて、それぞれ独立に回転可能に構成されている。
車輪駆動装置3は、各車輪2を独立に回転駆動するための回転駆動装置であり、図1に示すように、4個の電動モータ(FL〜RRモータ3FL〜3RR)を各車輪2に(即ち、インホイールモータとして)配設して構成されている。運転者がアクセルペダル52を操作した場合には、各車輪駆動装置3から回転駆動力が各車輪2に付与され、各車輪2がアクセルペダル52の操作量に応じた回転速度で回転される。
また、車輪2(前後輪2FL〜2RR)は、キャンバー角調整装置4により舵角とキャンバー角とが調整可能に構成されている。キャンバー角調整装置4は、各車輪2の舵角とキャンバー角とを調整するための駆動装置であり、図1に示すように、各車輪2に対応する位置に合計4個(FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RR)が配置されている。
例えば、運転者がステアリング54を操作した場合には、キャンバー角調整装置4の一部(例えば、前輪2FL,2FR側のみ)又は全部が駆動され、ステアリング54の操作量に応じた舵角を車輪2に付与する。これにより、車輪2の操舵動作が行われ、車両1が所定の方向へ旋回される。
また、キャンバー角調整装置4は、車両1の走行状態(例えば、定速走行時または加減速時、或いは、直進時または旋回時)や車輪2が走行する路面Gの状態(例えば、乾燥路面時と雨天路面時)などの状態変化に応じて、車両用制御装置100により作動制御され、車輪2のキャンバー角を調整する。
ここで、図2を参照して、車輪駆動装置3とキャンバー角調整装置4との詳細構成について説明する。図2(a)は、車輪2の断面図であり、図2(b)は、車輪2の舵角及びキャンバー角の調整方法を模式的に説明する模式図である。
なお、図2(a)では、車輪駆動装置3に駆動電圧を供給するための電源配線などの図示が省略されている。また、図2(b)中の仮想軸Xf−Xb、仮想軸Yl−Yr、及び、仮想軸Zu−Zdは、それぞれ車両1の前後方向、左右方向、及び、上下方向にそれぞれ対応する。
図2(a)に示すように、車輪2(前後輪2FL〜2RR)は、ゴム状弾性材から構成されるタイヤ2aと、アルミニウム合金などから構成されるホイール2bとを主に備えて構成され、ホイール2bの内周部には、車輪駆動装置3(FL〜RRモータ3FL〜3RR)がインホイールモータとして配設されている。
タイヤ2aは、車両1の内側(図2(a)右側)に配置される第1トレッド21と、その第1トレッド21と特性が異なり、車両1の外側(図2(a)左側)に配置される第2トレッド22とを備える。なお、車輪2(タイヤ2a)の詳細構成については図4を参照して後述する。
車輪駆動装置3は、図2(a)に示すように、その前面側(図2(a)左側)に突出された駆動軸3aがホイール2bに連結固定されており、駆動軸3aを介して、回転駆動力を車輪2へ伝達可能に構成されている。また、車輪駆動装置3の背面には、キャンバー角調整装置4(FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RR)が連結固定されている。
キャンバー角調整装置4は、複数本(本実施の形態では3本)の油圧シリンダ4a〜4cを備えており、それら3本の油圧シリンダ4a〜4cのロッド部は、車輪駆動装置3の背面側(図2(a)右側)にジョイント部(本実施の形態ではユニバーサルジョイント)54を介して連結固定されている。なお、図2(b)に示すように、各油圧シリンダ4a〜4cは、周方向略等間隔(即ち、周方向120°間隔)に配置されると共に、1の油圧シリンダ4bは、仮想軸Zu−Zd上に配置されている。
これにより、各油圧シリンダ4a〜4cが各ロッド部をそれぞれ所定方向に所定長さだけ伸長駆動又は収縮駆動することで、車輪駆動装置3が仮想軸Xf−Xb,Zu−Xdを揺動中心として揺動駆動され、その結果、各車輪2に所定のキャンバー角と舵角とが付与される。
例えば、図2(b)に示すように、車輪2が中立位置(車両1の直進状態)にある状態で、油圧シリンダ4bのロッド部が収縮駆動され、かつ、油圧シリンダ4a,4cのロッド部が伸長駆動されると、車輪駆動装置3が仮想線Xf−Xb回りに回転され(図2(b)矢印A)、車輪2にマイナス方向(ネガティブキャンバー)のキャンバー角(車輪2の中心線が仮想線Zu−Zdに対してなす角度)が付与される。一方、これとは逆の方向に油圧シリンダ4b及び油圧シリンダ4a,4cがそれぞれ伸縮駆動されると、車輪2にプラス方向(ポジティブキャンバー)のキャンバー角が付与される。
また、車輪2が中立位置(車両1の直進状態)にある状態で、油圧シリンダ4aのロッド部が収縮駆動され、かつ、油圧シリンダ4cのロッド部が伸長駆動されると、車輪駆動装置3が仮想線Zu−Zd回りに回転され(図2(b)矢印B)、車輪2にトーイン傾向の舵角(車輪2の中心線が車両1の基準線に対してなす角度であり、車両1の進行方向とは無関係に定まる角度)が付与される。一方、これとは逆の方向に油圧シリンダ4a及び油圧シリンダ4cが伸縮駆動されると、車輪2にトーアウト傾向の舵角が付与される。
なお、ここで例示した各油圧シリンダ4a〜4cの駆動方法は、上述した通り、車輪2が中立位置にある状態から駆動する場合を説明するものであるが、これらの駆動方法を組み合わせて各油圧シリンダ4a〜4cの伸縮駆動を制御することにより、車輪2に任意のキャンバー角及び舵角を付与することができる。
図1に戻って説明する。アクセルペダル52及びブレーキペダル53は、運転者により操作される操作部材であり、各ペダル52,53の踏み込み状態(踏み込み量、踏み込み速度など)に応じて、車両1の走行速度や制動力が決定され、車輪駆動装置3の作動制御が行われる。
ステアリング54は、運転者により操作される操作部材であり、その操作状態(回転角度、回転速度など)に応じて、車両1の旋回半径などが決定され、キャンバー角調整装置4の作動制御が行われる。ワイパースイッチ55は、運転者により操作される操作部材であり、その操作状態(操作位置など)に応じて、ワイパー(図示せず)の作動制御が行われる。
同様に、ウインカスイッチ56及び高グリップスイッチ57は、運転者により操作される操作部材であり、その操作状態(操作位置など)に応じて、前者の場合はウインカー(図示せず)の作動制御が行われ、後者の場合はキャンバー角調整装置4の作動制御が行われる。
なお、高グリップスイッチ57がオンされた状態は、車輪2の特性として高グリップ性が選択された状態に対応し、高グリップスイッチ57がオフされた状態は車輪2の特性として低転がり抵抗が選択された状態に対応する。
車両用制御装置100は、上述のように構成された車両1の各部を制御するための車両用制御装置であり、例えば、各ペダル52,53の操作状態を検出し、その検出結果に応じて車輪駆動装置3を作動させることで、各車輪2の回転速度を制御する。
或いは、アクセルペダル52、ブレーキペダル53やステアリング54の操作状態を検出し、その検出結果に応じてキャンバー角調整装置4を作動させ、各車輪のキャンバー角を調整することで、車輪2に設けられた2種類のトレッド21,22を使い分けて(図5及び図6参照)、走行性能の向上と省燃費の達成とを図る。ここで、図3を参照して、車両用制御装置100の詳細構成について説明する。
図3は、車両用制御装置100の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御装置100は、図3に示すように、CPU71、ROM72及びRAM73を備え、これらはバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。また、入出力ポート75には、車輪駆動装置3等の複数の装置が接続されている。
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置である。ROM72は、CPU71により実行される制御プログラムや固定値データ等を格納した書き換え不能な不揮発性のメモリであり、RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリである。なお、ROM72内には、図7に図示されるフローチャート(キャンバ制御処理)のプログラムが格納されている。
車輪駆動装置3は、上述したように、各車輪2(図1参照)を回転駆動するための装置であり、各車輪2に回転駆動力を付与する4個のFL〜RRモータ3FL〜3RRと、それら各モータ3FL〜3RRをCPU71からの命令に基づいて駆動制御する駆動回路(図示せず)とを主に備えている。
キャンバー角調整装置4は、上述したように、各車輪2の舵角とキャンバー角とを調整するための駆動装置であり、各車輪2(車輪駆動装置3)に角度調整のための駆動力を付与する4個のFL〜RRアクチュエータ4FL〜4RRと、それら各アクチュエータ4FL〜4RRをCPU71からの命令に基づいて駆動制御する駆動回路(図示せず)とを主に備えている。
なお、FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RRは、3本の油圧シリンダ4a〜4cと、それら各油圧シリンダ4a〜4cにオイル(油圧)を供給する油圧ポンプ4d(図1参照)と、その油圧ポンプから各油圧シリンダ4a〜4cに供給されるオイルの供給方向を切り換える電磁弁(図示せず)と、各油圧シリンダ4a〜4c(ロッド部)の伸縮量を検出する伸縮センサ(図示せず)とを主に備えて構成されている。
CPU71からの指示に基づいて、キャンバー角調整装置4の駆動回路が油圧ポンプを駆動制御すると、その油圧ポンプから供給されるオイル(油圧)によって、各油圧シリンダ4a〜4cが伸縮駆動される。また、電磁弁がオン/オフされると、各油圧シリンダ4a〜4cの駆動方向(伸長又は収縮)が切り換えられる。
キャンバー角調整装置4の駆動回路は、各油圧シリンダ4a〜4cの伸縮量を伸縮センサにより監視し、CPU71から指示された目標値(伸縮量)に達した油圧シリンダ4a〜4cは、その伸縮駆動が停止される。なお、伸縮センサによる検出結果は、駆動回路からCPU71に出力され、CPU71は、その検出結果に基づいて各車輪2の現在の舵角及びキャンバー角を得ることができる。
車両速度センサ装置32は、路面Gに対する車両1の対地速度(絶対値及び進行方向)を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、前後及び左右方向加速度センサ32a,32bと、それら各加速度センサ32a,32bの検出結果を処理してCPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
前後方向加速度センサ32aは、車両1(車体フレームBF)の前後方向(図1上下方向)の加速度を検出するセンサであり、左右方向加速度センサ32bは、車両1(車体フレームBF)の左右方向(図1左右方向)の加速度を検出するセンサである。なお、本実施の形態では、これら各加速度センサ32a,32bが圧電素子を利用した圧電型センサとして構成されている。
CPU71は、車両速度センサ装置32の制御回路から入力された各加速度センサ32a,32bの検出結果(加速度値)を時間積分して、2方向(前後及び左右方向)の速度をそれぞれ算出すると共に、それら2方向成分を合成することで、車両1の対地速度(絶対値及び進行方向)を得ることができる。
接地荷重センサ装置34は、各車輪2の接地面が路面Gから受ける荷重を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2が受ける荷重をそれぞれ検出するFL〜RR荷重センサ34FL〜34RRと、それら各荷重センサ34FL〜34RRの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
なお、本実施の形態では、各荷重センサ34FL〜34RRがピエゾ抵抗型の3軸荷重センサとして構成されている。これら各荷重センサ34FL〜34RRは、各車輪2のサスペンション軸(図示せず)上に配設され、上述した車輪2が路面Gから受ける荷重を車両1の前後方向(仮想軸Xf−Xb方向)、左右方向(仮想軸Yl−Yr方向)及び上下方向(仮想軸Zu−Zd方向)の3方向で検出する(図2(b)参照)。
CPU71は、接地荷重センサ装置34から入力された各荷重センサ34FL〜34RRの検出結果(接地荷重)より、各車輪2の接地面における路面Gの摩擦係数μを次のように推定する。
例えば、前輪2FLに着目すると、FL荷重センサ34FLにより検出される車両1の前後方向、左右方向および垂直方向の荷重がそれぞれFx、Fy及びFzであれば、前輪2FLの接地面に対応する部分の路面Gにおける車両1前後方向の摩擦係数μは、前輪2FLが路面Gに対してスリップしているスリップ状態ではFx/Fzとなり(μx=Fx/Fz)、前輪2FLが路面Gに対してスリップしていない非スリップ状態ではFx/Fzよりも大きい値であると推定される(μx>Fx/Fz)。
なお、車両1の左右方向の摩擦係数μyについても同様であり、スリップ状態ではμy=Fy/Fzとなり、非スリップ状態ではFy/Fzよりも大きな値と推定される。また、摩擦係数μを他の手法により検出することは当然可能である。他の手法としては、例えば、特開2001−315633号公報や特開2003−118554号に開示される公知の技術が例示される。
車輪回転速度センサ装置36は、各車輪2の回転速度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2の回転速度をそれぞれ検出する4個のFL〜RR回転速度センサ35FL〜35RRと、それら各回転速度センサ35FL〜35RRの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
なお、本実施の形態では、各回転センサ35FL〜35RRが各車輪2に設けられ、各車輪2の角速度を回転速度として検出する。即ち、各回転センサ35FL〜35RRは、各車輪2に連動して回転する回転体と、その回転体の周方向に多数形成された歯の有無を電磁的に検出するピックアップとを備えた電磁ピックアップ式のセンサとして構成されている。
CPU71は、車輪回転速度センサ装置35から入力された各車輪2の回転速度と、予めROM72に記憶されている各車輪2の外径とから、各車輪2の実際の周速度をそれぞれ得ることができ、その周速度と車両1の走行速度(対地速度)とを比較することで、各車輪2がスリップしているか否かを判断することができる。
アクセルペダルセンサ装置52aは、アクセルペダル52の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、アクセルペダル52の踏み込み状態を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
ブレーキペダルセンサ装置53aは、ブレーキペダル53の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ブレーキペダル53の踏み込み状態を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
ステアリングセンサ装置54aは、ステアリング54の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ステアリング54の操作状態を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
ワイパスイッチセンサ装置55aは、ワイパースイッチ55の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ワイパースイッチ55の操作状態(操作位置)を検出するポジショニングセンサ(図示せず)と、そのポジショニングセンサの検出結果を処理してCPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
ウィンカスイッチセンサ装置56aは、ウィンカスイッチ56の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ウィンカスイッチ56の操作状態(操作位置)を検出するポジショニングセンサ(図示せず)と、そのポジショニングセンサの検出結果を処理してCPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
高グリップスイッチセンサ装置57aは、高グリップスイッチ57の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、高グリップスイッチ57の操作状態(操作位置)を検出するポジショニングセンサ(図示せず)と、そのポジショニングセンサの検出結果を処理してCPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
なお、本実施の形態では、各角度センサが電気抵抗を利用した接触型のポテンショメータとして構成されている。CPU71は、各センサ装置52a〜54aの制御回路から入力された検出結果により各ペダル52,53の踏み込み量及びステアリング54の操作角を得ると共に、その検出結果を時間微分することにより、各ペダル52,53の踏み込み速度(操作速度)及びステアリング54の回転速度(操作速度)を得ることができる。
図3に示す他の入出力装置35としては、例えば、雨量を検出するための雨量センサや路面Gの状態を非接触で検出する光学センサなどが例示される。
次いで、図4から図6を参照して、車輪2の詳細構成について説明する。図4は、車両1の上面視を模式的に示した模式図である。図5及び図6は、車両1の正面視を模式的に図示した模式図であり、図5では、車輪2にネガティブキャンバーが付与された状態が図示され、図6では、車輪2にポジティブキャンバーが付与された状態が図示されている。
上述したように、車輪2は、第1トレッド21及び第2トレッド22の2種類のトレッドを備え、図4に示すように、各車輪2(前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RR)において、第1トレッド21が車両1の内側に配置され、第2トレッド22が車両1の外側に配置されている。
本実施の形態では、両トレッド21,22の幅寸法(図4左右方向寸法)が同一に構成されている。また、第1トレッド21は、第2トレッド22に比して、グリップ力の高い特性(高グリップ性)に構成される。一方、第2トレッド22は、第1トレッド21に比して、転がり抵抗の小さい特性(低転がり抵抗)に構成されている。
例えば、図5に示すように、キャンバー角調整装置4が作動制御され、車輪2のキャンバー角θL,θRがマイナス方向(ネガティブキャンバー)に調整されると、車両1の内側に配置される第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に、車両1の外側に配置される第2トレッド22の接地圧Routが減少される。これにより、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、走行性能(例えば、旋回性能、加速性能、制動性能或いは雨天時の車両安定性など)の向上を図ることができる。
一方、図6に示すように、キャンバー各調整装置4が作動制御され、車輪2のキャンバー角θL,θRがプラス方向(ポジティブキャンバー方向)に調整されると、車両1の内側に配置される第1トレッド21の接地圧が減少されると共に、車両1の外側に配置される第2トレッド22の接地圧が増加される。これにより、第2トレッド22の低転がり抵抗を利用して、省燃費性能の向上を図ることができる。
次いで、図7を参照して、キャンバー制動制御について説明する。図7は、キャンバー制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される処理であり、車輪2に付与するキャンバー角を調整することで、上述した走行性能と省燃費性能との2つの性能の両立を図る。
CPU71は、キャンバー制御処理に関し、まず、ワイパースイッチ55がオンされているか否か、即ち、フロントガラスのワイパーによる拭き取り動作が運転者により指示されているか否かを判断する(S1)。その結果、ワイパースイッチ55がオンされていると判断される場合には(S1:Yes)、現在の天候が雨天であり、路面Gに水膜が形成されている可能性があると推定されるので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S6)、このキャンバー処理を終了する。
これにより、第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少されることで(図5参照)、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、雨天時の車両安定性の向上を図ることができる。
S1の処理において、ワイパースイッチ55はオンされていないと判断される場合には(S1:No)、雨天ではなく、路面Gの状態は良好であると推定されるので、次いで、アクセルペダル52の踏み込み量は所定値以上であるか否か、即ち、所定以上の加速(急加速)が運転者により指示されているか否かを判断する(S2)。
その結果、アクセルペダル52の踏み込み量が所定値以上であると判断される場合には(S2:Yes)、急加速が運転者より指示されており、車輪2がスリップするおそれがあるので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S6)、このキャンバー処理を終了する。
これにより、上述した場合と同様に、第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少されることで(図5参照)、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車輪2のスリップを防止することができ、車両1の加速性能の向上を図ることができる。
S2の処理において、アクセルペダル52の踏み込み量が所定値に達していないと判断される場合には(S2:No)、急加速は指示されておらず、緩やかな加速又は定速走行であると推定されるので、次いで、ブレーキペダル53の踏み込み量は所定値以上であるか否か、即ち、所定以上の制動(急制動)が運転者により指示されているか否かを判断する(S3)。
その結果、ブレーキペダル53の踏み込み量が所定値以上であると判断される場合には(S3:Yes)、急制動が運転者より指示されており、車輪2がロックするおそれがあるので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S6)、このキャンバー処理を終了する。
これにより、上述した場合と同様に、第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少されることで(図5参照)、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車輪2のロックを防止することができ、車両1の制動性能の向上を図ることができる。
S3の処理において、ブレーキペダル53の踏み込み量が所定値に達していないと判断される場合には(S3:No)、急制動は指示されておらず、緩やかな制動か加速又は定速走行であると推定されるので、次いで、車両速度(対地速度)は所定値(例えば、時速15km)以下であるか否か、即ち、低速走行であるか否かを判断する(S17)。
その結果、車両速度が所定値以下(即ち、低速走行中)であると判断される場合には(S17:Yes)、車両速度が所定値を越えている場合と比較して、車両1がその後に減速し停車する可能性や加速する可能性も高いといえる。よって、これらの場合には車両1(車輪2)のグリップ力や停止力を予め確保しておく必要があるので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S6)、このキャンバー処理を終了する。
これにより、上述した場合と同様に、第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少されることで(図5参照)、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車輪2のグリップ力を増加させることで、そのロックやスリップを防止して、車両1の制動性能や加速性能の向上を図ることができる。
また、車両1が停車した後は、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車両1(車輪2)の停止力を確保することができるので、車両1を安定した状態で停車させておくことができる。更に、その停車後に再発進する場合には、予め第1トレッドの接地圧Rinが増加されていることで、車輪2がスリップすることを防止して、車両1の再発進をスムーズ且つ高レスポンスで行うことができる。
S17の処理において、車両速度が所定値よりも大きいと判断される場合には(S17:No)、車両速度が低速ではなく、加減速の際の駆動力・制動力が比較的小さな値になると推定されるので、次いで、ウィンカスイッチ56はオンであるか否か、即ち、右左折や車線変更を行う旨が運転者により指示されているか否かを判断する(S18)。
その結果、ウィンカスイッチ56がオンであると判断される場合には(S18:Yes)、右左折や車線変更に伴って、車両1の旋回動作やその準備のための減速が行われる可能性が高いので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S6)、このキャンバー処理を終了する。
これにより、上述した場合と同様に、第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少されることで(図5参照)、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車輪2のスリップを防止することができ、車両1の旋回性能の向上を図ることができる。
S18の処理において、ウィンカスイッチ56はオンされていないと判断される場合には(S18:No)、右左折や車線変更に伴う車両1の旋回動作は行われないと推定されるので、次いで、高グリップスイッチ57はオンであるか否か、即ち、車輪2の特性として高グリップ性を選択する旨が運転者により指示されているか否かを判断する(S19)。
その結果、高グリップスイッチ57がオンであると判断される場合には(S19:Yes)、車輪2の特性として高グリップ性が選択されたということであるので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S6)、このキャンバー処理を終了する。
これにより、上述した場合と同様に、第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少されることで(図5参照)、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車輪2のスリップを防止することができ、車両1の制動性能や加速性能、或いは旋回性能の向上を図ることができる。
S19の処理において、高グリップスイッチ57はオンされていないと判断される場合には(S19:No)、次いで、ステアリング54の操作角は所定値以上であるか否か、即ち、所定以上の旋回(急旋回)が運転者により指示されているか否かを判断する(S4)。
その結果、ステアリング54の操作角が所定値以上であると判断される場合には(S4:Yes)、急旋回が運転者より指示されており、車輪2がスリップして、車両1がスピンするおそれがあるので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S6)、このキャンバー処理を終了する。
これにより、上述した場合と同様に、第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少されることで(図5参照)、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車輪2のスリップ(車両1のスピン)を防止することができ、車両1の旋回性能の向上を図ることができる。
一方、S4の処理において、ステアリング54の操作角が所定値に達していないと判断される場合には(S4:No)、急旋回は指示されておらず、緩やかな旋回又は直進走行であり、また、S1からS3の処理より、路面状態は良好であり、急加速や急制動も指示されていないと推定される(S1:No、S2:No、S3:No)。
よって、この場合には(S1:No、S2:No、S3:No、S4:No)、車輪2の性能として高グリップ性を得る必要はなく、低転がり抵抗による省燃費性能を得ることが好ましいと判断できるので、車輪2にポジティブキャンバーを付与して(S5)、このキャンバー処理を終了する。
これにより、第1トレッド21の接地圧Rinが減少されると共に第2トレッド22の接地圧Routが増加されることで(図6参照)、第2トレッド22の低転がり抵抗を利用して、車輪2の転がり効率を向上させることができ、車両1の省燃費性能の向上を図ることができる。
このように、本実施の形態によれば、キャンバー角調整装置4により車輪2のキャンバー角θR,θLを調整して、第1トレッド21における接地圧Rinと第2トレッド22における接地圧Routとの比率を変更することで、加速性能及び制動性能と省燃費性能との互いに背反する2つの性能の両立を図ることができる。
次いで、図8から図11を参照して、第2実施の形態について説明する。図8は、第2実施の形態における車輪202の上面図であり、図9は、車両201の上面視を模式的に示した模式図である。
また、図10は、左旋回状態にある車両201の正面視を模式的に図示した模式図であり、左右の車輪202に左旋回用の舵角が付与されると共に、旋回外輪(右の前輪202FR)にネガティブキャンバーが付与され、旋回内輪(左の車輪202FL)にキャンバー定常角が付与された状態が図示されている。
第1実施の形態では、車輪2の両トレッド21,22の外径が幅方向に一定とされる場合を説明したが、第2実施の形態における車輪202は、第1トレッド221の外径が漸次縮径するように構成されている。なお、上記した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
第2実施の形態における車輪202は、図8及び図9に示すように、車両201の内側(図8右側)に配置される第1トレッド221と、その第1トレッド221と特性が異なり、車両201の外側(図8左側)に配置される第2トレッド22とを備える。
なお、第1トレッド221は、第2トレッド22に比して、グリップ力の高い特性(高グリップ性)に構成され、第2トレッド22は、第1トレッド221に比して、転がり抵抗の小さい特性(低転がり抵抗)に構成されている。
図8及び図9に示すように、車輪202は、両トレッド221,22の幅寸法(図8左右方向寸法)が同一に構成されているが、第2トレッド22における外径が幅方向(図8左右方向)に略一定に構成される一方で、第1トレッド221における外径が第2トレッド22側(図8左側)から車両201の内側(図8右側)に向かうに従って漸次縮径して構成されている。
これにより、図10に示すように、車輪202(左の前輪202FL)に大きなキャンバー角を付与しなくても(即ち、キャンバー角を0°に設定しても)、第1トレッド221が路面Gから離れた状態で、第2トレッド22のみを接地させることができる。その結果、車輪202全体としての転がり抵抗をより小さくして、省燃費性能のより一層の向上を図ることができる。同時に、第1トレッド221が接地せず、かつ、第2トレッド22がより小さなキャンバー角で接地されることより、これら両トレッド221,22の摩耗を抑制して、高寿命化を図ることができる。
一方、図10に示すように、車輪202(右の前輪202FR)にマイナス方向へのキャンバー角(ネガティブキャンバー)を付与して、第1トレッド221を接地させる場合には、かかる第1トレッド221の外径が漸次縮径されていることから、第1トレッド221における接地圧を幅方向(図8左右方向)全域において均等化することができ、トレッド端部に接地圧が集中することを抑制することができる。
よって、高グリップの第1トレッド221を効率的に利用して、走行性能(旋回性能、加速性能、制動性能、雨天時の走行安定性など)のより一層の向上を図ることができると共に、第1トレッド221の偏摩耗を抑制して、高寿命化を図ることができる。
次いで、図11を参照して、第2実施の形態におけるキャンバー制動制御について説明する。図11は、キャンバー制御処理を示すフローチャートである。
CPU71は、キャンバー制御処理に関し、ワイパースイッチ55がオンされていると判断される場合(S1:Yes)、アクセルペダル52の踏み込み量が所定値以上であると判断される場合(S1:No、S2:Yes)、ブレーキペダル53の踏み込み量が所定値以上であると判断される場合(S1:No、S2:No、S3:Yes)、車両速度が所定値以下であると判断される場合(S1:No、S2:No、S3:No、S17:Yes)、ウィンカスイッチ56がオンされていると判断される場合(S1:No、S2:No、S3:No、S17:No、S18:Yes)、及び、高グリップスイッチ57がオンされていると判断される場合には(S1:No、S2:No、S3:No、S17:No、S18:No、S19:Yes)、上述した第1実施の形態で説明したように、路面Gに水膜が形成されている、急加速・急制動が指示されている、大きな駆動力の発生や停車が予測される、右左折や車線変更に伴う旋回動作が予測される、或いは、高グリップ性の選択が指示されているということであり、第1トレッド221の高グリップ性を利用する必要がある。
よって、この場合には、左右の車輪202にネガティブキャンバー(本実施の形態では、少なくとも第2トレッド22が路面Gから離接するキャンバー角、図10に図示する右の前輪202FRを参照)を付与して(S27)、このキャンバー処理を終了する。
これにより、上述した第1実施の形態の場合と同様に、第1トレッド221の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少される(本実施の形態では接地圧Routが0となる)ことで、第1トレッド221の高グリップ性を利用して、車輪202のスリップ・ロックを防止することができ、車両201の走行安定性や加速・制動性能の向上を図ることができる。
なお、左右の車輪202に付与するキャンバー角θR,θLは直進走行時であれは同じ角度であることが好ましい。また、そのキャンバー角θR,θLは第2トレッド22が路面Gから離接する以上の角度であることが好ましい。
一方、S4の処理において、ステアリング54の操作角が所定値に達していないと判断される場合には(S4:No)、急旋回は指示されておらず、緩やかな旋回又は直進走行であり、また、S1からS3及びS17からS19の処理より、路面状態は良好であり、急加速や急制動も指示されておらず、大きな駆動力の発生や停車は予測されず、右左折や車線変更に伴う旋回動作も予測されず、更に、高グリップ性の選択は指示されていないと推定される(S1:No、S2:No、S3:No、S17:No、S18:No、S19:No)。
よって、この場合には(S1:No、S2:No、S3:No、S17:No、S18:No、S19:No、S4:No)、車輪202の性能として高グリップ性を得る必要はなく、低転がり抵抗による省燃費性能を得ることが好ましいと判断できるので、車輪202にキャンバー定常角を付与して(S25)、このキャンバー処理を終了する。なお、本実施の形態では、キャンバー定常角が0°(図10に図示する左の前輪202FL参照)に設定される。
これにより、第1トレッド221が路面Gから離れた状態で、第2トレッド22のみを接地させることができるので、車輪202全体としての転がり抵抗をより小さくして、省燃費性能のより一層の向上を図ることができる。また、この場合には、第1トレッド221が接地せず、かつ、キャンバー角が0°で第2トレッド22が接地されることで、これら両トレッド221,22の摩耗を抑制して、高寿命化を図ることができる。
また、S4の処理において、ステアリング54の操作角が所定値以上であると判断される場合には(S4:Yes)、急旋回が運転者より指示されており、車輪202がスリップして、車両201がスピンするおそれがある。そこで、本実施の形態では、旋回外輪(図10では右の前輪202FR)にネガティブキャンバーを付与すると共に、旋回内輪(図10では左の前輪202FL)にキャンバー定常角を付与して(S26)、このキャンバー処理を終了する。
これにより、旋回性能を確保しつつ、制御駆動コストの削減を図ることができる。即ち、旋回外輪では、第1トレッド221の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少される(本実施の形態では0となる)ことで(図10参照)、第1トレッド221の高グリップ性を利用して、車輪202のスリップ(車両201のスピン)を防止することができ、車両201の旋回性能の向上を図ることができる。一方、旋回内輪では、そのキャンバー角の変化を旋回外輪よりも少なくする(即ち、直進走行時のキャンバー角をそのまま維持する)ことで、車両用制御装置100の制御コスト或いはキャンバー角調整装置4の駆動コストの削減を図ることができる。
次いで、図12から図14を参照して、第3実施の形態について説明する。図12は、第3実施の形態における車輪302の上面図である。また、図13は、左旋回状態にある車両301の正面視を模式的に図示した模式図であり、左右の車輪302に左旋回用の舵角が付与されると共に、旋回外輪(右の前輪202FR)にネガティブキャンバーが付与され、旋回内輪(左の車輪202FL)にポジティブキャンバーが付与された状態が図示されている。
第1実施の形態では、車輪2の両トレッド21,22の外径が幅方向に一定とされる場合を説明したが、第3実施の形態における車輪302は、第1トレッド221の外径と第3トレッド323の外径とが漸次縮径するように構成されている。なお、上記した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
第3実施の形態における車輪302は、図12に示すように、第3トレッド323を備え、第1トレッド221が車両301の内側(図12右側)に配置されると共に、第3トレッド323が車両301の外側(図12左側)に配置され、第2トレッド22が第1トレッド221と第3トレッド323との間に配置されている。
そして、第3トレッド323は、少なくとも第2トレッド22に比して、グリップ力の高い特性に構成されると共に、その第3トレッド323の外径は、図12に示すように、第2トレッド22側(図12右側)から車両301の外側(図12左側)に向かうに従って漸次縮径して構成されている。
これにより、車輪302に大きなキャンバー角を付与することなく(例えば、キャンバー角を0°に設定しても)、第1トレッド221及び第3トレッド323が路面Gから離れた状態で、第2トレッド22のみを接地させることができる。これにより、車輪302全体としての転がり抵抗をより小さくして、省燃費性能のより一層の向上を図ることができる。
同時に、第1トレッド221及び第3トレッド323が接地せず、かつ、第2トレッド22がより小さなキャンバー角で接地されることより、これら各トレッド221,22,323の摩耗を抑制して、高寿命化を図ることができる。
一方、車輪302にプラス方向へのキャンバー角(ポジティブキャンバー)を付与して、第3トレッド323を接地させる場合には、かかる第3トレッド323の外径が漸次縮径されていることから、第3トレッド323における接地圧を幅方向(図12左右方向)全域において均等化することができ、トレッド端部に接地圧が集中することを抑制することができる。
よって、高グリップ性の第3トレッド323を効率的に利用して、走行性能(旋回性能、加速性能、制動性能、雨天時の走行安定性など)のより一層の向上を図ることができると共に、偏摩耗を抑制して、高寿命化を図ることができる。
次いで、図14を参照して、第3実施の形態におけるキャンバー制動制御について説明する。図14は、キャンバー制御処理を示すフローチャートである。
CPU71は、S4の処理において、ステアリング54の操作角が所定値に達していないと判断される場合には(S4:No)、急旋回は指示されておらず、緩やかな旋回又は直進走行であり、また、S1からS3及びS17からS19の処理より、路面状態は良好であり、急加速や急制動も指示されておらず、大きな駆動力の発生や停車は予測されず、右左折や車線変更に伴う旋回動作も予測されず、更に、高グリップ性の選択は指示されていないと推定される(S1:No、S2:No、S3:No、S17:No、S18:No、S19:No)。
よって、この場合には(S1:No、S2:No、S3:No、S17:No、S18:No、S19:No、S4:No)、車輪302の性能として高グリップ性を得る必要はなく、低転がり抵抗による省燃費性能を得ることが好ましいと判断できるので、車輪302にキャンバー定常角を付与して(S25)、このキャンバー処理を終了する。なお、本実施の形態では、キャンバー定常角が0°(図10に図示する左の前輪202FL参照)に設定される。
これにより、第1トレッド221及び第3トレッド323が路面Gから離れた状態で、第2トレッド22のみを接地させることができるので、車輪302全体としての転がり抵抗をより小さくして、省燃費性能のより一層の向上を図ることができる。また、この場合には、第1トレッド221及び第3トレッド323が接地せず、かつ、キャンバー角が0°で第2トレッド22が接地されることで、これら各トレッド221,22,323の摩耗を抑制して、高寿命化を図ることができる。
また、S4の処理において、ステアリング54の操作角が所定値以上であると判断される場合には(S4:Yes)、急旋回が運転者より指示されており、車輪302がスリップして、車両301がスピンするおそれがある。そこで、本実施の形態では、旋回外輪(図13では右の前輪202FR)にネガティブキャンバーを付与すると共に、旋回内輪(図13では左の前輪202FL)にポジティブキャンバーを付与して(S36)、このキャンバー処理を終了する。
即ち、S36の処理では、図13に示すように、左右の車輪320がいずれも旋回内方側(図13右側)に傾斜するように、キャンバー角θR,θLを付与するので、左右両輪302にそれぞれ横力を発生させて、それら両輪302の横力を旋回力として利用することができるので、旋回性能のより一層の向上を図ることができる。
次いで、図15を参照して、第4実施の形態について説明する。図15は、第4実施の形態におけるキャンバー制御処理を示すフローチャートである。
第1実施の形態では、例えば、急加速や急旋回などが運転者により指示された場合に車輪302のキャンバー角を調整する場合を説明したが、第4実施の形態では、スリップした車輪202がある場合にその車輪202のキャンバー角を調整するように構成されている。
なお、上記した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。また、第4実施の形態では、第2実施の形態における車両201(車輪202)を車両用制御装置100で制御する場合を例に説明する。
CPU71は、キャンバー制御処理において、まず、車両速度を検出すると共に(S41)、車輪202の回転速度(周速度)を検出し(S42)、これら車両速度と車輪202の周速度とに基づいて、スリップしている車輪202が有るか否かを判断する(S43)。なお、車両速度及び車輪202の周速度は、上述したように、車両速度センサ装置32及び車輪回転速度センサ装置35により算出される。
その結果、S43の処理において、スリップしている車輪202はない、即ち、全ての車輪202が路面Gにグリップして走行していると判断される場合には(S43:No)、車輪202の性能として高グリップ性を得る必要はなく、低転がり抵抗による省燃費性能を得ることが好ましいと判断できるので、車輪202にキャンバー定常角(第2実施の形態の場合と同様に0°)を付与して(S44)、このキャンバー処理を終了する。
これにより、第1トレッド221が路面Gから離れた状態で、第2トレッド22のみを接地させることができるので、車輪202全体としての転がり抵抗をより小さくして、省燃費性能のより一層の向上を図ることができる。また、この場合には、第1トレッド221が接地せず、かつ、キャンバー角が0°で第2トレッド22が接地されることで、これら両トレッド221,22の摩耗を抑制して、高寿命化を図ることができる。
一方、S43の処理において、スリップしている車輪202があると判断される場合には(S43:Yes)、車両201の加速性能や走行安定性が損なわれるおそれがあるので、スリップしている車輪202にネガティブキャンバーを付与して(S45)、このキャンバー処理を終了する。
これにより、上述した第1実施の形態の場合と同様に、第1トレッド221の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少される(本実施の形態では接地圧Routが0となる)ことで、第1トレッド221の高グリップ性を利用して、車輪202のスリップを防止することができ、車両201の加速性能や走行安定性の向上を図ることができる。
ここで、図7に示すフローチャート(キャンバー制御処理)において、請求項1又は2に記載の作動制御手段としてはS5及びS6の処理が、路面判断手段としてはS1の処理が、路面変化時作動制御手段としてはS6の処理が、それぞれ該当する。
また、図11に示すフローチャート(キャンバー制御処理)において、請求項1又は2に記載の作動制御手段としてはS25、S26及びS27の処理が、路面判断手段としてはS1の処理が、路面変化時作動制御手段としてはS27の処理が、それぞれ該当する。
また、図14に示すフローチャート(キャンバー制御処理)において、請求項1又は2に記載の作動制御手段としてはS25、S27及びS36の処理が、路面判断手段としてはS1の処理が、路面変化時作動制御手段としてはS27の処理が、それぞれ該当する。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
上記第1から第3実施の形態では、運転者によるアクセルペダル52又はブレーキペダル53の操作量(踏み込み量)が所定値以上の場合に車輪2にネガティブキャンバーを付与する場合を説明したが(図7S2、S3及びS6参照)、必ずしもこれに限られるものではなく、他の状態量に基づいて車輪2のキャンバー角を決定するように構成することは当然可能である。
ここで、他の状態量としては、例えば、アクセルペダル52又はブレーキペダル53の操作速度が例示される。例えば、アクセルペダル52又はブレーキペダル53の踏み込み量が同一であっても、その操作速度が基準値よりも速い(遅い)場合には、ネガティブキャンバー(ポジティブキャンバー)を付与するように構成しても良い。
或いは、他の状態量としては、例えば、変速機のシフト操作が例示される。例えば、変速機の減速度を上げるシフト操作(シフトダウン操作)が行われた場合に、そのシフト操作により比較的大きな加減速が発生すると判断して、車輪2にネガティブキャンバーを付与するように構成しても良い。これにより、車輪2のスリップやロックを抑制して、車両1の加速性能や制動性能の向上を図ることができる。
上記第1から第3実施の形態では、運転者によるステアリング54の操作角が所定値以上の場合に車輪2にネガティブキャンバーを付与する場合を説明したが(図7S4及びS6参照)、必ずしもこれに限られるものではなく、他の状態量に基づいて車輪2のキャンバー角を決定するように構成することは当然可能である。
ここで、他の状態量としては、例えば、ステアリング54の操作速度が例示される。例えば、ステアリング54の操作角が同一であっても、その操作速度が基準値よりも速い(遅い)場合には、ネガティブキャンバー(ポジティブキャンバー)を付与するように構成しても良い。
上記第1から第3実施の形態では、操作状態判断手段として、各ペダル52,53の操作状態に基づいて判断する処理を例示したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、車両速度センサ装置32(前後方向加速度センサ32a、左右方向加速度センサ32b)により検出された実際の加減速度に基づいて判断することは当然可能である。即ち、車両に所定値以上の加減速度が発生した場合に、車輪2にネガティブキャンバーを付与し、所定値に達していない場合にポジティブキャンバーを付与するように構成しても良い。この場合には、車両前後方向と車両左右方向との両方向の加減速度に基づいて判断しても良く、或いは、これら両方向のいずれか一方の加減速度のみに基づいて判断しても良い。
上記第1から第3実施の形態では、路面判断手段として、ワイパースイッチ55の操作状態に基づいて判断する処理を例示したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、雨量センサにより降雨量を検出し、その検出値が所定値以上の場合に、車輪2にネガティブキャンバーを付与するように構成しても良い。或いは、非接触の光学式センサ等で路面の状態を検出し、その検出結果(路面の水膜状態、路面の積雪状態、路面の凍結状態、或いは、舗装状態など)に基づいて、車輪にネガティブキャンバー又はポジティブキャンバーを付与するように構成しても良い。
上記第1から第3実施の形態では、ネガティブキャンバーを付与するか否かの判断順序として、ワイパースイッチ55の状態、アクセルペダル52の状態、ブレーキペダル53の状態、車両速度の状態、ウィンカスイッチ56の状態、高グリップスイッチ57の状態、ステアリング54の状態の順としたが(S1からS4参照)、この順序に限られるものではなく、これらを入れ替えて他の順序とすることは当然可能である。また、これらの判断ステップの一部を省略することも当然可能である。
上記各実施の形態では、左右の車輪2に付与するキャンバー角θR,θLが同じ角度である場合を説明したが(θR=θL)、必ずしもこれに限られるものではなく、左右の車輪2にそれぞれ異なるキャンバー角θR,θLを付与することは当然可能である(θR<θL又はθL<θR)。
上記第1から第3実施の形態では、第1トレッド21,221が車両内側に、第2トレッド22が車両外側に、それぞれ配設される場合を説明したが、この位置関係に限定されるものではなく、各車輪2毎に適宜変更することは当然可能である。
例えば、第1トレッド21,221が車両外側に、第2トレッド22が車両内側に、それぞれ配設されていても良く、前輪では第1トレッド21,221が車両外側に、後輪では第2トレッド22を車両内側に、それぞれ配設されていても良い。或いは、各車輪2毎にこの位置関係が異なっていても良い。
上記第2から第4実施の形態では、キャンバー定常角が0°の場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、キャンバー定常角をポジティブキャンバー又はネガティブキャンバーに設定することは当然可能である。
上記各実施の形態では、車輪が2種類のトレッドを有する場合と3種類のトレッドを有する場合とを説明したが、これらの車輪を組み合わせることは当然可能である。例えば、前輪には2種類のトレッドを有する車輪2、202を使用し、後輪には3種類のトレッドを有する車輪303を使用しても良く、この逆でも良い。
上記各実施の形態では、第1又は第3のトレッド21,221,323が第2のトレッド22に比して高グリップ性の特性を有し、第2のトレッド22が第1又は第3のトレッド21,221,323に比して低転がり性の特性を有する場合を説明したが、これら各トレッド21,221,22,323に他の特性を持たせて構成することは当然可能である。例えば、2種類のトレッドパターン(溝)を設けることで、一のトレッドは排水性の高い特性とし、他のトレッドはロードノイズの小さい特性をするものが例示される。
上記第4実施の形態では、車輪2がスリップしているか否かに応じて車輪2のキャンバー角を制御する場合を説明したが(図15S43からS45参照)、必ずしもこれに限られるものではなく、他の状態に基づいて車輪2のキャンバー角を制御することは当然可能である。
他の状態としては、例えば、車輪2が走行する路面の摩擦係数μが例示される。なお、摩擦係数μは上述したように接地荷重センサ装置34により推定することができる。或いは、車輪2がロックしているか否かに基づいて、車輪2のキャンバー角を制御する(ロック時にネガティブキャンバーを付与する)ようにしても良い。
以下に本発明の変形例を示す。請求項1又は2に記載の車両用制御装置において、前記作動制御手段は、前記車両の加減速状態を判断する加減速判断手段と、その加減速判断手段により前記車両の加減速状態が所定量以上であると判断される場合に、前記第1トレッドにおける接地圧が前記第2トレッドにおける接地圧よりも大きくなるように、前記キャンバー角調整装置を作動させて前記車輪のキャンバー角を調整する加減速時作動制御手段と、を備えていることを特徴とする車両用制御装置1。なお、加減速時作動制御手段は、加減速判断手段により前記車両の加減速状態が所定量以上であると判断される場合に、前記第1トレッドにおける接地圧が少なくとも増加するように、前記キャンバー角調整装置を作動させて前記車輪のキャンバー角を調整するものであっても良い。
車両用制御装置1によれば、加減速判断手段により車両の加減速状態が所定量以上であると判断される場合には、加減速時作動制御手段がキャンバー角調整装置を作動させて車輪のキャンバー角を調整することで、第1トレッドにおける接地圧を第2トレッドにおける接地圧よりも大きくすることができるので、高グリップの第1トレッドを利用して、加速性能・制動性能の向上を図ることができるという効果がある。
一方、加減速判断手段により車両の加減速状態が所定量以上であるとは判断されない場合には、キャンバー角調整装置を作動させて車輪のキャンバー角を調整することで、第2トレッドにおける接地圧を第1トレッドにおける接地圧よりも大きくする(即ち、第1トレッドにおける接地圧を減少させる)ことができるので、低転がり抵抗の第2トレッドを利用して、省燃費走行の実現を図ることができるという効果がある。
このように、本発明によれば、作動制御手段(加減速時作動制御手段)によって、車輪のキャンバー角を調整して、第1トレッドにおける接地圧と第2トレッドにおける接地圧との比率(一方のトレッドのみが接地し、他方のトレッドが路面から離れている状態を含む)を変更することで、加減速性能と省燃費性能との互いに背反する2つの性能の両立を図ることができるという効果がある。
なお、車両用制御装置1の発明において、加減速判断手段により車両の加減速状態が所定量以上であると判断される場合(判断されない場合)とは、例えば、加速度センサにより計測された車両の実際の加減速状態が既に所定量以上に達している場合(達していない場合)のみでなく、運転者により操作される操作部材(例えば、アクセルペダルやブレーキペダルの操作状態)などに基づいて、車両の加減速状態が所定量以上になる(所定量以上とはならない)と予測される場合も含む趣旨である。
請求項1又は2に記載の車両用制御装置または車両用制御装置1において、前記作動制御手段は、前記車両の旋回状態を判断する旋回判断手段と、その旋回判断手段により前記車両の旋回状態が所定量以上であると判断される場合に、前記第1トレッドにおける接地圧が前記第2トレッドにおける接地圧よりも大きくなるように、前記キャンバー角調整装置を作動させて前記車輪のキャンバー角を調整する旋回時作動制御手段と、を備えていることを特徴とする車両用制御装置2。なお、旋回時作動制御手段は、旋回判断手段により前記車両の旋回状態が所定量以上であると判断される場合に、前記第1トレッドにおける接地圧が少なくとも増加するように、前記キャンバー角調整装置を作動させて前記車輪のキャンバー角を調整するものであっても良い。
車両用制御装置2によれば、旋回判断手段により車両の旋回状態が所定量以上であると判断される場合には、旋回時作動制御手段がキャンバー角調整装置を作動させて車輪のキャンバー角を調整することで、第1トレッドにおける接地圧を第2トレッドにおける接地圧よりも大きくすることができるので、高グリップの第1トレッドを利用して、旋回性能の向上を図ることができるという効果がある。
一方、旋回判断手段により車両の旋回状態が所定量以上であるとは判断されない場合には、キャンバー角調整装置を作動させて車輪のキャンバー角を調整することで、第2トレッドにおける接地圧を第1トレッドにおける接地圧よりも大きくする(即ち、第1トレッドにおける接地圧を減少させる)ことができるので、低転がり抵抗の第2トレッドを利用して、省燃費走行の実現を図ることができるという効果がある。
このように、本発明によれば、作動制御手段(旋回時作動制御手段)によって、車輪のキャンバー角を調整して、第1トレッドにおける接地圧と第2トレッドにおける接地圧との比率(一方のトレッドのみが接地し、他方のトレッドが路面から離れている状態を含む)を変更することで、旋回性能と省燃費性能との互いに背反する2つの性能の両立を図ることができるという効果がある。
なお、車両用制御装置2の発明において、旋回判断手段により車両の旋回状態が所定量以上であると判断される場合(判断されない場合)とは、車両の実際の旋回状態が既に所定量以上に達している場合(達していない場合)のみでなく、運転者により操作される操作部材(例えば、ステアリングの操作状態)などに基づいて、車両の旋回状態が所定量以上になる(所定量以上とはならない)と予測される場合も含む趣旨である。
なお、請求項1又は2に記載の車両用制御装置の発明において、路面判断手段により車輪が走行する路面の状態が所定条件を満たす状態であると判断される場合(判断されない場合)とは、路面の状態が既に所定条件を満たす状態となっている場合(なっていない場合)のみでなく、運転者により操作される操作部材(例えば、ワイパ操作レバーの操作状態)などに基づいて、路面の状態が所定の条件を満たす状態になる(所定の条件を満たす状態とはならない)と予測される場合も含む趣旨である。
請求項1又は2に記載の車両用制御装置または車両用制御装置1又は2において、前記車輪は、前記第2トレッドにおける外径が車輪幅方向に略一定に構成されると共に、前記第1トレッドにおける外径が前記第2トレッド側から前記車両の内側又は外側に向かうに従って漸次縮径して構成されていることを特徴とする車両用制御装置4。
車両用制御装置4によれば、第2トレッドにおける外径が車輪幅方向に略一定に構成されると共に、第1トレッドにおける外径が第2トレッド側から車両の内側又は外側に向かうに従って漸次縮径して構成されているので、車輪に大きなキャンバー角を付与しなくても(例えば、キャンバー角を0°に設定しても)、第1トレッドが路面から離れた状態で、第2トレッドのみを接地させることができる。
これにより、車輪全体としての転がり抵抗をより小さくして、省燃費性能のより一層の向上を図ることができる。同時に、第1トレッドが接地せず、かつ、第2トレッドがより小さなキャンバー角で接地されることで、これら両トレッドの摩耗をそれぞれ抑制して、高寿命化を図ることができるという効果がある。
一方、車輪にマイナス方向又はプラス方向へのキャンバー角(ネガティブキャンバー又はポジティブキャンバー)を付与して、第1トレッドを接地させる場合には、かかる第1トレッドの外径が漸次縮径されていることから、第1トレッドにおける接地圧を幅方向全域において均等化することができ、トレッド端部に接地圧が集中しないので、高グリップの第1トレッドを効率的に利用して、走行性能(旋回性能、加速性能、制動性能、雨天時の走行安定性など)のより一層の向上を図ることができると共に、偏摩耗を抑制して、高寿命化を図ることができるという効果がある。
車両用制御装置4において、前記車輪は、少なくとも前記第2トレッドに比して、グリップ力の高い特性に構成される第3トレッドを備え、前記第1トレッドが前記車両の内側に配置されると共に、前記第3トレッドが前記車両の外側に配置され、前記第2トレッドが前記第1トレッドと第3トレッドとの間に配置されるものであり、前記第3トレッドにおける外径が前記第2トレッド側から前記車両の外側に向かうに従って漸次縮径して構成されていることを特徴とする車両用制御装置5。
車両用制御装置5によれば、第3トレッドにおける外径が第2トレッド側から車両の外側に向かうに従って漸次縮径して構成されているので、第1及び第2トレッドに加えて第3トレッドを更に設ける場合であっても、車輪に大きなキャンバー角を付与することなく(例えば、キャンバー角を0°に設定しても)、第1トレッド及び第3トレッドが路面から離れた状態で、第2トレッドのみを接地させることができる。
これにより、車輪全体としての転がり抵抗をより小さくして、省燃費性能のより一層の向上を図ることができる。同時に、第1トレッド及び第3トレッドが接地せず、かつ、第2トレッドがより小さなキャンバー角で接地されることで、これら各トレッドの摩耗をそれぞれ抑制して、高寿命化を図ることができるという効果がある。
一方、車輪にプラス方向へのキャンバー角(ポジティブキャンバー)を付与して、第3トレッドを接地させる場合には、かかる第3トレッドの外径が漸次縮径されていることから、第3トレッドにおける接地圧を幅方向全域において均等化することができ、トレッド端部に接地圧が集中しないので、高グリップの第3トレッドを効率的に利用して、走行性能(旋回性能、加速性能、制動性能、雨天時の走行安定性など)のより一層の向上を図ることができると共に、偏摩耗を抑制して、高寿命化を図ることができるという効果がある。
車両用制御装置5において、前記車輪は、前記車両の左右に配置され、前記作動制御手段は、前記車両が旋回される場合に、前記キャンバー角調整装置を作動させ、前記左右の車輪がいずれも旋回内方側に傾斜するようにキャンバー角を調整することで、旋回外輪では前記第1トレッドにおける接地圧が前記第2トレッド及び第3トレッドにおける接地圧よりも大きくなり、かつ、旋回内輪では前記第3トレッドにおける接地圧が前記第1トレッド及び第2トレッドにおける接地圧よりも大きくなるようにする旋回第1作動制御手段を備えていることを特徴とする車両用制御装置6。なお、旋回第1作動制御手段は、旋回外輪では前記第1トレッドにおける接地圧が少なくとも増加し、かつ、旋回内輪では前記第3トレッドにおける接地圧が少なくとも増加するように、キャンバー角調整装置を作動させるものであっても良い。
車両用制御装置6によれば、第1から第3トレッドを有する車輪が車両の左右に配置され、車両が旋回される場合には、旋回第1作動制御手段により、左右の車輪がいずれも旋回内方側に傾斜する(即ち、旋回外輪がネガティブキャンバーとなり旋回内輪がポジティブキャンバーとなる)ようにキャンバー角を調整するので、左右両輪にそれぞれ横力を発生させて、それら両輪の横力を旋回力として利用することができるので、旋回性能のより一層の向上を図ることができるという効果がある。
請求項1又は2に記載の車両用制御装置または車両用制御装置1、2又は4において、前記車輪は、前記車両の左右に配置され、前記作動制御手段は、前記車両が旋回される場合に、前記キャンバー角調整装置を作動させ、前記左右の車輪の内の旋回外輪となる車輪のキャンバー角を調整することで、前記旋回外輪の第1トレッドにおける接地圧が前記旋回外輪の第2トレッドにおける接地圧よりも大きくなるようにする旋回第2作動制御手段を備えていることを特徴とする車両用制御装置7。なお、旋回第2作動制御手段は、前記左右の車輪の内の旋回外輪となる車輪のキャンバー角を調整することで、前記旋回外輪の第1トレッドにおける接地圧が少なくとも増加するように、前記キャンバー角調整装置を作動させるものであっても良い。
車両用制御装置7によれば、第1及び第2トレッドを有する車輪が車両の左右に配置され、車両が旋回される場合には、旋回第2作動制御手段により、左右の車輪の内の旋回外輪のキャンバー角を調整(例えば、旋回外輪のみを旋回内方側(ネガティブキャンバー側)へ傾斜させ、旋回内輪は直進走行時と同様のキャンバー角を維持する)するので、旋回性能を確保しつつ、制御駆動コストの削減を図ることができるという効果がある。
即ち、本発明によれば、旋回外輪では、第1トレッドにおける接地圧を第2トレッドにおける接地圧よりも大きくすることで、高グリップ性能の第1トレッドを利用して、旋回性能を確保することができる。一方、旋回内輪では、そのキャンバー角の調整を不要とする(直進走行時のキャンバー角をそのまま維持する)ことで、車両用制御装置の制御コスト或いはキャンバー角調整装置の駆動コストの削減を図ることができる。
請求項1又は2に記載の車両用制御装置または車両用制御装置1、2又は4から7のいずれかにおいて、前記車両の対地速度を検出する対地速度検出手段と、前記車輪の回転速度を検出する回転速度検出手段と、それら対地速度検出手段および回転速度検出手段により検出された対地速度および回転速度に基づいて、前記車輪がスリップしているか否かを判断するスリップ判断手段とを備え、前記作動制御手段は、前記スリップ判断手段により前記車輪がスリップしていると判断された場合に、前記キャンバー角調整装置を作動させ、前記車輪のキャンバー角を調整することで、前記第1トレッド又は第3トレッドにおける接地圧が前記第2トレッドにおける接地圧よりも大きくなるようにするスリップ時作動制御手段を備えていることを特徴とする車両用制御装置8。なお、スリップ時作動制御手段は、前記スリップ判断手段により前記車輪がスリップしていると判断された場合に、前記キャンバー角調整装置を作動させ、前記車輪のキャンバー角を調整することで、前記第1トレッド又は第3トレッドにおける接地圧が少なくとも増加するようにものであっても良い。
車両用制御装置8によれば、車輪がスリップしているとスリップ判断手段によって判断された場合には、スリップ時作動制御手段がスリップしている車輪のキャンバー角を調整して、第1トレッド又は第3トレッドの接地圧を増加させることができるので、グリップ力を回復させて、車両の走行安定性を高めることができるという効果がある。
ここで、図7に示すフローチャート(キャンバー制御処理)において、車両用制御装置1の加減速判断手段としてはS2及びS3の処理が、加減速時作動制御手段としてはS6の処理が、車両用制御装置2の旋回判断手段としてはS4の処理が、旋回時作動制御手段としてはS6の処理が、それぞれ該当する。
また、図11に示すフローチャート(キャンバー制御処理)において、車両用制御装置1の加減速判断手段としてはS2及びS3の処理が、加減速時作動制御手段としてはS27の処理が、車両用制御装置2の旋回判断手段としてはS4の処理が、旋回時作動制御手段としてはS26の処理が、車両用制御装置7記載の旋回第2作動制御手段としてはS26の処理が、それぞれ該当する。
また、図14に示すフローチャート(キャンバー制御処理)において、車両用制御装置1の加減速判断手段としてはS2及びS3の処理が、加減速時作動制御手段としてはS27の処理が、車両用制御装置2の旋回判断手段としてはS4の処理が、旋回時作動制御手段としてはS36の処理が、車両用制御装置6の旋回第1作動制御手段としてはS36の処理が、それぞれ該当する。
また、図15に示すフローチャート(キャンバー制御処理)において、車両用制御装置8の対地速度検出手段としてはS41の処理が、回転速度検出手段としてはS42の処理が、スリップ判断手段としてはS43の処理が、スリップ時作動制御手段としてはS45の処理が、それぞれ該当する。