以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における車両用制御装置100が搭載される車両1の上面視を模式的に示した模式図である。なお、図1の矢印FWDは、車両1の前進方向を示す。
まず、車両1の概略構成について説明する。車両1は、図1に示すように、車体フレームBFと、その車体フレームBFに支持される複数(本実施の形態では4輪)の車輪2と、それら各車輪2の回転駆動を行う車輪駆動装置3と、各車輪2の操舵駆動およびキャンバ角の調整を行うキャンバ角付与装置4とを主に備え、キャンバ角付与装置4を車両用制御装置100により作動制御し、車輪2にキャンバ角を付与することで(図7及び図8参照)、車輪2の特性を使い分けて、車両1の旋回性能を確保しつつ省燃費性能を得ることができるように構成されている。
次いで、各部の詳細構成について説明する。車輪2は、図1に示すように、車両1の進行方向前方側に位置する左右の前輪2FL,2FRと、進行方向後方側に位置する左右の後輪2RL,2RRとの4輪を備え、車輪駆動装置3によりそれぞれ独立に回転可能に構成されている。
車輪駆動装置3は、各車輪2を回転駆動するための装置であり、図1に示すように、合計4個の電動モータ(FL〜RRモータ3FL〜3RR)が各車輪2に(即ち、インホイールモータとして)配設されている。例えば、運転者がアクセルペダル52を操作した場合には、車輪駆動装置3が車両用制御装置100により作動制御され、アクセルペダル52の操作量に応じた回転速度で各車輪2が回転駆動される。
キャンバ角付与装置4は、各車輪2の操舵角およびキャンバ角を調整するための装置であり、図1に示すように、合計4個のアクチュエータ(FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RR)が各車輪2に対応して配設されている。例えば、運転者がステアリング54を操作した場合には、キャンバ角付与装置4の一部(例えば、FLアクチュエータ4FL及びFRアクチュエータ4FR)又は全部が車両用制御装置100により作動制御され、ステアリング54の操作量に応じた操舵角で各車輪2が操舵駆動される。
また、キャンバ角付与装置4は、車両1の走行状態(例えば、定速走行時または加減速時、或いは、直進時または旋回時)や車両1が走行する路面の路面状況(例えば、舗装路または未舗装路)に応じて車両用制御装置100により作動制御され、各車輪2のキャンバ角を調整する。
ここで、図2を参照して、車輪駆動装置3及びキャンバ角付与装置4の詳細構成について説明する。図2(a)は、車輪2の断面図であり、図2(b)は、車輪2の操舵角およびキャンバ角の調整方法を模式的に説明する模式図である。
なお、図2(a)では、車輪駆動装置3に駆動電力を供給する配線などの図示が省略されている。また、図2(b)中の仮想軸Xf−Xb、仮想軸Yl−Yr及び仮想軸Zu−Zdは、それぞれ車両1の前後方向、左右方向および高さ方向に対応する。
図2(a)に示すように、車輪2は、ゴム状弾性材から構成されるタイヤ2aと、アルミニウム合金などから構成されるホイール2bとを主に備えて構成され、ホイール2bの内周部には、車輪駆動装置3(FL〜RRモータ3FL〜3RR)がインホイールモータとして配設されている。
タイヤ2aは、車両1の内側(図2(a)右側)に配置される第1トレッド21と、車両1の外側(図2(a)左側)に配置される第2トレッド22とを備え、第1トレッド21が第2トレッド22に比してグリップ力の高い特性(高グリップ性)に構成されると共に、第2トレッド22が第1トレッド21に比して転がり抵抗の小さい特性(低転がり抵抗)に構成されている。なお、車輪2(タイヤ2a)の詳細構成については、図6を参照して後述する。
車輪駆動装置3は、図2(a)に示すように、その前面側(図2(a)左側)に突出された駆動軸3aがホイール2bに連結固定されており、駆動軸3aを介して、車輪2に回転駆動力を伝達可能に構成されている。また、車輪駆動装置3の背面には、キャンバ角付与装置4(FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RR)が連結固定されている。
キャンバ角付与装置4は、複数(本実施の形態では3本)の油圧シリンダ4a〜4cを備えており、それら3本の油圧シリンダ4a〜4cのロッド部は、車輪駆動装置3の背面側(図2(a)右側)にジョイント部(本実施の形態ではユニバーサルジョイント)60を介して連結固定されている。なお、図2(b)に示すように、各油圧シリンダ4a〜4cは、周方向略等間隔(即ち、周方向120°間隔)に配置されると共に、1の油圧シリンダ4bは、仮想軸Zu−Zd上に配置されている。
これにより、各油圧シリンダ4a〜4cが各ロッド部をそれぞれ所定方向に所定長さだけ伸長駆動または収縮駆動することで、車輪駆動装置3が仮想軸Xf−Xb,Zu−Xdを揺動中心として揺動駆動され、その結果、車輪2に所定のキャンバ角および操舵角が付与される。
例えば、図2(b)に示すように、車輪2が中立位置(車両1の直進状態)にある状態で、油圧シリンダ4bのロッド部が収縮駆動され、かつ、油圧シリンダ4a,4cのロッド部が伸長駆動されると、車輪駆動装置3が仮想線Xf−Xb回りに回転され(図2(b)矢印A)、車輪2にマイナス方向(ネガティブキャンバ側)のキャンバ角(車輪2の中心線が仮想線Zu−Zdに対してなす角度)が付与される。一方、これとは逆の方向に油圧シリンダ4b及び油圧シリンダ4a,4cがそれぞれ伸縮駆動されると、車輪2にプラス方向(ポジティブキャンバ側)のキャンバ角が付与される。
また、車輪2が中立位置(車両1の直進状態)にある状態で、油圧シリンダ4aのロッド部が収縮駆動され、かつ、油圧シリンダ4cのロッド部が伸長駆動されると、車輪駆動装置3が仮想線Zu−Zd回りに回転され(図2(b)矢印B)、車輪2にトーインの操舵角(車輪2の中心線が仮想線Zf−Zbに対してなす角度であり、車両1の進行方向とは無関係に定まる角度)が付与される。一方、これとは逆の方向に油圧シリンダ4a及び油圧シリンダ4cが伸縮駆動されると、車輪2にトーアウトの操舵角が付与される。
なお、ここで例示した各油圧シリンダ4a〜4cの駆動方法は、上述した通り、車輪2が中立位置にある状態から駆動する場合を説明するものであるが、これらの駆動方法を組み合わせて各油圧シリンダ4a〜4cの伸縮駆動を制御することにより、車輪2に任意のキャンバ角および操舵角を付与することができる。
また、本実施の形態では、油圧シリンダを用いて説明したが、油圧シリンダに限らず、モータを用いてシリンダを動かす電動シリンダや圧縮した気体の圧力を用いてシリンダを動かす空気シリンダ、或いは、気体の熱膨張を利用してシリンダを動かすシリンダ等を用いても良い。
図1に戻って説明する。アクセルペダル52及びブレーキペダル53は、運転者により操作される操作部材であり、各ペダル52,53の踏み込み状態(踏み込み量、踏み込み速度など)に応じて、車両1の走行速度や制動力が決定され、車輪駆動装置3の作動制御が行われる。
ステアリング54は、運転者により操作される操作部材であり、その操作状態(操作方向、操作角など)に応じて、車両1の旋回方向や旋回半径が決定され、キャンバ角付与装置4の作動制御が行われる。
同様に、路面状況スイッチ55は、運転者により操作される操作部材であり、その操作状態(操作位置など)に応じて、キャンバ角付与装置4の作動制御が行われる。なお、路面状況スイッチ55は、3段式(3ポジション式)のロッカースイッチとして構成され、第1位置は走行路面が乾燥舗装路である状態に、第2位置は走行路面が未舗装路である状態に、第3位置は走行路面が雨天舗装路である状態に、それぞれ対応する。
車両用制御装置100は、上述のように構成された車両1の各部を制御するための制御装置であり、例えば、各ペダル52,53の踏み込み状態を検出し、その検出結果に応じて車輪駆動装置3を作動制御することで、各車輪2の回転駆動を行う。或いは、ステアリング54の操作状態を検出し、その検出結果に応じてキャンバ角付与装置4を作動制御することで、各車輪2の操舵駆動およびキャンバ角の調整を行う。
ここで、図3を参照して、車両用制御装置100の詳細構成について説明する。図3は、車両用制御装置100の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御装置100は、図3に示すように、CPU71、ROM72及びRAM73を備え、それらがバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。また、入出力ポート75には、車輪駆動装置3等の複数の装置が接続されている。
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置である。ROM72は、CPU71により実行される制御プログラム(例えば、図9及び図10に図示されるフローチャートのプログラム)や固定値データ等を格納した書き換え不能な不揮発性のメモリであり、RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリである。また、ROM72には、摩擦係数マップ72aとキャンバ角マップ72bと規定値メモリ72cとが設けられている。
ここで、図4及び図5を参照して、摩擦係数マップ72a及びキャンバ角マップ72bの詳細について説明する。図4は、摩擦係数マップ72aの内容を模式的に図示した模式図である。摩擦係数マップ72aは、アクセルペダル52及びブレーキペダル53の踏み込み量と必要前後摩擦係数との関係を記憶したマップである。
CPU71は、この摩擦係数マップ72aの内容に基づいて、現在の車両1の走行状態において車輪2に確保すべき摩擦係数(即ち、車輪2がスリップしないために車輪2と路面との間に必要な摩擦係数)である必要摩擦係数を算出する、なお、縦軸に示した必要前後摩擦係数は、車輪2がスリップしないために車輪2と路面との間に必要な車両1の前後方向(図1上下方向)における摩擦係数を表している。
この摩擦係数マップ72aによれば、図4に示すように、アクセルペダル52及びブレーキペダル53が踏み込まれていない状態(アクセルペダル52及びブレーキペダル53の踏み込み量=0)では、必要前後摩擦係数が最小値μfminに規定されると共に、アクセルペダル52又はブレーキペダル53の踏み込み量に比例して直線的に変化し、アクセルペダル52又はブレーキペダル53が最大に踏み込まれた状態(アクセルペダル52又はブレーキペダル53の踏み込み量=100%)において、必要前後摩擦係数が最大値μfmaxとなるように規定されている。
図5は、キャンバ角マップ72bの内容を模式的に図示した模式図である。キャンバ角マップ72bは、車輪2の摩擦係数および転がり抵抗とキャンバ角との関係を記憶したマップであり、車輪2が発揮できる摩擦係数(即ち、車輪2が路面との間で生じさせることができる摩擦係数)を表している。
CPU71は、このキャンバ角マップ72bの内容に基づいて、車輪2に付与すべきキャンバ角を決定する。なお、図5において、実線101は摩擦係数に、実線102は転がり抵抗に、それぞれ対応する。また、横軸のキャンバ角は、図5右側がマイナス方向(ネガティブキャンバ側)に、図5左側がプラス方向(ポジティブキャンバ側)に、それぞれ対応する。
ここで、キャンバ角マップ72bには、上述した路面状況スイッチ55の3つの操作状態に対応して3種類のマップが記憶されているが、図5では、図面を簡素化して理解を容易とするべく、1種類のマップ(乾燥舗装路用マップ)のみを代表例として図示し、他の2種類のマップについては図示を省略している。
即ち、キャンバ角マップ72bには、乾燥舗装路用マップ、未舗装路用マップ及び雨天舗装路用マップの3種類が記憶されており、CPU71は、路面状況スイッチ55の操作状態を検出し、走行路面が乾燥舗装路である場合には乾燥舗装路用マップを、走行路面が未舗装路である場合には未舗装路用マップを、走行路面が雨天舗装路である場合には雨天舗装路用マップを、それぞれ読み出し、その内容に基づいて、車輪2に付与すべきキャンバ角を決定する。
このキャンバ角マップ72bによれば、図5に示すように、キャンバ角が0度の状態(即ち、第1トレッド21及び第2トレッド22が均等に接地している状態)では、摩擦係数は最小値μbとなる。また、転がり抵抗についても同様であり、最小値となる。
キャンバ角が0度の状態からマイナス方向(ネガティブキャンバ側)へ向けて変化すると、かかる変化に伴って、高グリップ性の第1トレッド21の接地(接地圧または接地面積)が漸次増加することで、摩擦係数および転がり抵抗が漸次増加する。
そして、キャンバ角がθa(以下、「第1キャンバ角θa」と称す。)に達すると、第2トレッド22が路面から離れ、第1トレッド21のみが接地した状態となることで、摩擦係数が最大値μaに達する。
なお、キャンバ角が第1キャンバ角θaからマイナス方向(ネガティブキャンバ側)へ向けて更に変化しても、第2トレッド22が既に路面から離れているので、摩擦係数は、ほとんど変化せず最大値μaに維持される。
一方、転がり抵抗は、キャンバ角が第1キャンバ角θaに達した後、その変化(傾き)は小さくなるが、キャンバ角の変化に伴って漸次増加する。つまり、キャンバ角がマイナス方向(ネガティブキャンバ側)へ向けて変化し、かかる変化に伴ってキャンバスラストが漸次増加することで、転がり抵抗が漸次増加する。
ここで、キャンバ角が第1キャンバ角θaに達した後、転がり抵抗は増加するにも関わらず摩擦係数が一定に維持されるのは、一般に、摩擦係数の変化がキャンバスラストの影響よりも第1トレッド21の高グリップ性による影響を受け易いためである。
一方、図5に示すように、キャンバ角が0度よりもプラス方向(ポジティブキャンバ側)の領域では、キャンバ角が0度の状態から、プラス方向(ポジティブキャンバ側)へ向けて変化しても、摩擦係数は、ほとんど変化せず最小値μbに維持される。
即ち、キャンバ角が0度の状態からプラス方向(ポジティブキャンバ側)へ向けて変化し、かかる変化に伴って、低転がり抵抗の第2トレッド22の接地(接地圧または接地面積)が漸次増加するにも関わらず、摩擦係数は最小値μbに維持される。
これは、一般に、低転がり抵抗の第2トレッド22が高グリップ性の第1トレッド21よりも高硬度に構成されるために、第2トレッド22の接地が第1トレッド21の接地による高グリップ性への寄与を妨げるためである。
一方、転がり抵抗は、キャンバ角の変化に伴って漸次増加する。即ち、キャンバ角がプラス方向(ポジティブキャンバ側)へ向けて変化し、かかる変化に伴ってキャンバスラストが漸次増加することで、転がり抵抗が漸次増加する。
ここで、転がり抵抗は増加するにも関わらず摩擦係数が一定に維持されるのは、上述したのと同様に、一般に、摩擦係数の変化がキャンバスラストの影響よりも第2トレッド22の低転がり抵抗による影響を受け易いためである。
ここで、図5で図示を省略した未舗装路用マップ及び雨天舗装路用マップについては、乾燥舗装路用マップの実線を摩擦係数および転がり抵抗が小さくなる方向へ平行移動したものとなる。また、いずれのマップにおいても、摩擦係数および転がり抵抗が最小値となるキャンバ角は0度となり、摩擦係数が最大値となるキャンバ角は第1キャンバ角θaとなる。
図3に戻って説明する。規定値メモリ72cは、必要摩擦係数の規定値μsを記憶するメモリであり、CPU71は、後述する旋回制御処理(図10参照)において、この規定値メモリ72cの内容に基づいて、車輪2に付与するキャンバ角の場合分けを行う(図10のS25参照)。
具体的には、CPU71は、必要摩擦係数がμs以下の場合に、旋回外輪にキャンバ角マップ72bから読み出したキャンバ角を付与すると共に、旋回内輪に0度のキャンバ角を付与する一方(図10のS27参照)、必要摩擦係数がμsよりも大きい場合に、旋回外輪にキャンバ角マップ72bから読み出したキャンバ角を付与すると共に、その読み出したキャンバ角に等しいプラス方向(ポジティブキャンバ側)のキャンバ角を旋回内輪に付与する(図10のS29参照)。これにより、省燃費性能の向上を図る。
なお、本実施の形態では、規定値μsは、車輪2が発揮できる摩擦係数の最小値μbと最大値μaとの半分の値(即ち、最小値μbと最大値μaとの平均値)に設定されている。なお、規定値μsは、最小値μbと最大値μaとの半分の値に限られるものではなく、最小値μbから最大値μaまでの範囲内の値であれば良い。
車輪駆動装置3は、上述したように、各車輪2(図1参照)を回転駆動するための装置であり、各車輪2に回転駆動力を付与する4個のFL〜RRモータ3FL〜3RRと、それら各モータ3FL〜3RRをCPU71からの命令に基づいて駆動制御する駆動回路(図示せず)とを主に備えている。
キャンバ角付与装置4は、上述したように、各車輪2の操舵角およびキャンバ角を調整するための装置であり、各車輪2(車輪駆動装置3)に角度調整のための駆動力を付与する4個のFL〜RRアクチュエータ4FL〜4RRと、それら各アクチュエータ4FL〜4RRをCPU71からの命令に基づいて駆動制御する駆動回路(図示せず)とを主に備えている。
なお、FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RRは、3本の油圧シリンダ4a〜4cと、それら各油圧シリンダ4a〜4cにオイル(油圧)を供給する油圧ポンプ4d(図1参照)と、その油圧ポンプから各油圧シリンダ4a〜4cに供給されるオイルの供給方向を切り換える電磁弁(図示せず)とを主に備えて構成されている。
CPU71からの指示に基づいて、キャンバ角付与装置4の駆動回路が油圧ポンプを駆動制御すると、その油圧ポンプから供給されるオイル(油圧)によって、各油圧シリンダ4a〜4cが伸縮駆動される。また、電磁弁がオン/オフされると、各油圧シリンダ4a〜4cの駆動方向(伸長または収縮)が切り替えられる。
キャンバ角付与装置4の駆動回路は、各油圧シリンダ4a〜4cの伸縮量を伸縮センサ(図示せず)により監視し、CPU71から指示された目標値(伸縮量)に達した場合に、油圧シリンダ4a〜4cの伸縮駆動を停止する。なお、伸縮センサによる検出結果は、駆動回路からCPU71に出力され、CPU71は、その検出結果に基づいて各車輪2の現在の操舵角およびキャンバ角を得ることができる。
加速度センサ装置31は、車両1(車体フレームBF)の加速度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、前後および左右方向加速度センサ31a,31bと、それら各加速度センサ31a,31bの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
前後方向加速度センサ31aは、車両1(車体フレームBF)の前後方向(図1上下方向)の加速度を検出するセンサであり、左右方向加速度センサ31bは、車両1(車体フレームBF)の左右方向(図1左右方向)の加速度を検出するセンサである。なお、本実施の形態では、これら各加速度センサ31a,31bが圧電素子を利用した圧電型センサとして構成されている。
CPU71は、車速センサ装置31から入力された各加速度センサ31a,31bの検出結果(加速度値)を時間積分して、2方向(前後方向および左右方向)の速度をそれぞれ算出すると共に、それら2方向成分を合成することで、車両1の車速を得ることができる。
接地荷重センサ装置32は、各車輪2の接地面が路面から受ける荷重を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2が受ける荷重をそれぞれ検出するFL〜RR荷重センサ32FL〜32RRと、それら各荷重センサ32FL〜32RRの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
なお、本実施の形態では、各荷重センサ32FL〜32RRがピエゾ抵抗型の3軸荷重センサとして構成されている。これら各荷重センサ32FL〜32RRは、各車輪2のサスペンション軸(図示せず)上に配設され、車輪2が路面から受ける荷重を車両1の前後方向、左右方向および高さ方向(図1紙面表裏方向)の3方向で検出する。
CPU71は、接地荷重センサ装置32から入力された各荷重センサ32FL〜32RRの検出結果に基づいて、各車輪2の接地面における各車輪2と路面との間の摩擦係数を次のように推定する。
例えば、左の前輪2FLに着目すると、FL荷重センサ32FLによって検出される車両1の前後方向、左右方向および高さ方向の荷重をそれぞれFx、Fy及びFzとすると、左の前輪2FLと路面との間の車両1前後方向の摩擦係数μxは、左の前輪2FLが路面に対してスリップしているスリップ状態ではFx/Fzとなり(μx=Fx/Fz)、左の前輪2FLが路面に対してスリップしていない非スリップ状態ではFx/Fzよりも大きい値であると推定される(μx>Fx/Fz)。
なお、車両1の左右方向の摩擦係数μyについても同様であり、スリップ状態ではμy=Fy/Fzとなり、非スリップ状態ではFy/Fzよりも大きな値と推定される。また、摩擦係数を他の手法により推定することは当然可能である。他の手法としては、例えば、特開2001−315633号公報や特開2003−118554号に開示される公知の技術が例示される。
アクセルペダルセンサ装置52aは、アクセルペダル52の踏み込み状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、アクセルペダル52の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを主に備えている。
ブレーキペダルセンサ装置53aは、ブレーキペダル53の踏み込み状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ブレーキペダル53の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを主に備えている。
ステアリングセンサ装置54aは、ステアリング54の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ステアリング54の操作方向および操作角を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを主に備えている。
なお、本実施の形態では、各角度センサが電気抵抗を利用した接触型のポテンショメータとして構成されている。CPU71は、各センサ装置52a,53a,54aから入力された各角度センサの検出結果により、各ペダル52,53の踏み込み量およびステアリング54の操作角を得ると共に、その検出結果を時間微分することで、各ペダル52,53の踏み込み速度およびステアリング54の操作速度を算出することができる。また、ステアリングセンサ装置54aから入力された角度センサの検出結果に基づいて、車輪2の操舵角を得ることができる。
路面状況スイッチセンサ装置55aは、路面状況スイッチ55の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、路面状況スイッチ55の操作位置を検出するポジショニングセンサ(図示せず)と、そのポジショニングセンサの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
CPU71は、路面状況スイッチセンサ装置55aから入力された路面状況スイッチ55の操作状態により、車両1が走行する路面の路面状況(乾燥舗装路、未舗装路または雨天舗装路)を判断することができる。
なお、本実施の形態では、路面状況スイッチ55の操作状態により路面状況を判断するが、他の方法によって路面状況を判断しても良い。他の方法としては、例えば、ナビゲーション装置などの情報端末やインターネットなどのネットワーク、或いは、車両1のワイパーや緊急ブレーキ用のABSの作動状態などが例示される。
図3に示す他の入出力装置33としては、例えば、各車輪2の回転速度を検出するための装置などが例示される。
次いで、図6から図8を参照して、車輪2の詳細構成について説明する。図6は、車両1の上面視を模式的に示した模式図である。図7及び図8は、車両1の正面視を模式的に図示した模式図であり、図7では、車輪2にマイナス方向(ネガティブキャンバ側)のキャンバ角が付与された状態が図示され、図8では、車輪2にプラス方向(ポジティブキャンバ側)のキャンバ角が付与された状態が図示されている。
上述したように、車輪2は、第1トレッド21及び第2トレッド22の2種類のトレッドを備え、図6に示すように、各車輪2において、第1トレッド21が車両1の内側に配置され、第2トレッド22が車両1の外側に配置されている。なお、本実施の形態では、両トレッド21,22の幅寸法(図6左右方向寸法)が同一に構成されている。
ここで、例えば、図7に示すように、キャンバ角付与装置4が作動制御され、車輪2にマイナス方向(ネガティブキャンバ側)のキャンバ角θL,θRが付与されると、車両1の内側に配置される第1トレッド21の接地(接地圧または接地面積)が増加すると共に、車両1の外側に配置される第2トレッド22の接地(接地圧または接地面積)が減少する。これにより、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車両1の走行性能(旋回性能、加速性能、制動性能など)を確保することができる。
一方、図8に示すように、キャンバ角付与装置4が作動制御され、車輪2にプラス方向(ポジティブキャンバ側)のキャンバ角θL,θRが付与されると、車両1の内側に配置される第1トレッド21の接地(接地圧または接地面積)が減少すると共に、車両1の外側に配置される第2トレッド22の接地(接地圧または接地面積)が増加する。これにより、第2トレッド22の低転がり抵抗を利用して、車両1の省燃費性能を得ることができる。
次いで、図9を参照して、キャンバ制御処理について説明する。図9は、キャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される処理である。
CPU71は、キャンバ制御処理に関し、まず、路面状況を判断する(S1)。この処理は、路面状況スイッチセンサ装置55a(図3参照)により路面状況スイッチ55の操作状態を検出することで行われる。即ち、CPU71は、上述したように、路面状況スイッチ55の操作位置が第1位置であると検出した場合には、路面状況を乾燥舗装路と判断し、第2位置であれば未舗装路と判断すると共に、第3位置であれば雨天舗装路と判断する。
次いで、アクセルペダル52及びブレーキペダル53の操作状態をアクセルペダルセンサ装置52a及びブレーキペダルセンサ装置53aにより検出し(S2)、その検出した操作状態に対応する必要前後摩擦係数を摩擦係数マップ72a(図4参照)から読み出す(S3)。これにより、車輪2に確保すべき車両1の前後方向(図1上下方向)における摩擦係数(即ち、車輪2がスリップしないために車輪2と路面との間に必要な車両1の前後方向における摩擦係数)を得ることができる。
次いで、ステアリング54の操作角は所定値以上であるか否かを判断し(S4)、ステアリング54の操作角が所定値以上であると判断される場合には(S4:Yes)、旋回制御処理(S20)を実行して、このキャンバ制御処理を終了する。なお、ステアリング54の操作角は、上述したように、ステアリングセンサ装置54aにより検出される。
一方、S4の処理の結果、ステアリング54の操作角が所定値に達していないと判断される場合には(S4:No)、車両1がほぼ直進状態にあるということなので、S3の処理で取得した必要前後摩擦係数と、車輪2が発揮できる摩擦係数(即ち、車輪2が路面との間で生じさせることができる摩擦係数)の最大値μa及び最小値μbとを比較し、必要前後摩擦係数が最小値μb以上かつ最大値μa以下であるか否かを判断する(S5)。
なお、車輪2が発揮できる摩擦係数の最大値μa及び最小値μbは、上述したように、キャンバ角マップ72b(図5参照)から読み出される。また、この場合には、CPU71は、S1の処理で判断した路面状況に応じたマップを3種類のマップの中から選択し、その選択したマップの内容に基づいて、最大値μa及び最小値μbを読み出す。
S5の処理の結果、必要前後摩擦係数が最小値μb以上かつ最大値μa以下であると判断される場合には(S5:Yes)、必要前後摩擦係数を確保する(即ち、必要前後摩擦係数と同等の摩擦係数となる)キャンバ角をキャンバ角マップ72bから読み出し(S6)、その読み出したキャンバ角を車輪2に付与して(S7)、このキャンバ制御処理を終了する。
具体的には、例えば、S3の処理で取得された必要前後摩擦係数がμ1の場合、図5に示すキャンバ角マップ72bより、μb≦μ1≦μaの関係が成り立つので(S5:Yes)、この必要前後摩擦係数μ1に対応するキャンバ角をθ1と読み出し(S6)、その読み出したキャンバ角θ1を車輪2に付与する(S7)。
これにより、車輪2に必要最低限の摩擦係数を発揮させ、そのスリップを防止することができる。その結果、車両1の加速性能や制動性能を十分なだけ確保しつつも、車輪2の転がり抵抗をより小さなものとして、その走行抵抗の低減を図ることができる。よって、省燃費性能の向上を図ることができる。
一方、S5の処理の結果、必要前後摩擦係数が最小値μb以上かつ最大値μa以下でないと判断される場合には(S5:No)、必要前後摩擦係数が最小値μbよりも小さいか否かを判断する(S8)。その結果、必要前後摩擦係数が最小値μbよりも小さいと判断される場合には(S8:Yes)、車輪2に0度のキャンバ角を付与して(S9)、このキャンバ制御処理を終了する。
具体的には、例えば、S3の処理で取得された必要前後摩擦係数がμ2の場合、図5に示すキャンバ角マップ72bより、μ2<μbの関係が成り立つので(S8:Yes)、この必要前後摩擦係数μ2に対応するキャンバ角をθ2と読み出すのではなく、車輪2に付与するキャンバ角を0度と決定し、これを車輪2に付与する(S9)。
つまり、S3の処理で取得された必要前後摩擦係数が車輪2の発揮できる摩擦係数の最小値μbを下回っている場合には、車輪2に0度よりもプラス方向(ポジティブキャンバ側)のキャンバ角を付与しても、それ以上の転がり抵抗の低減(省燃費性能の向上)を見込めないと判断し、その結果として、車輪2に付与するキャンバ角を0度とする。これにより、車輪2の転がり抵抗を最小として、その走行抵抗の低減を図ることができる。よって、省燃費性能の向上を図ることができる。
一方、S8の処理の結果、必要前後摩擦係数が最小値μbよりも小さくないと判断される場合、即ち、必要前後摩擦係数が最大値μaよりも大きいと判断される場合には(S8:No)、車輪2に第1キャンバ角θaを付与すると共に(S10)、報知処理(S11)を実行して、このキャンバ制御処理を終了する。
具体的には、例えば、S3の処理で取得された必要前後摩擦係数がμ3の場合、図5に示すキャンバ角マップ72bより、μa<μ3の関係が成り立つので(S8:No)、この必要前後摩擦係数μ3に対応するキャンバ角をθ3と読み出すのではなく、車輪2に付与するキャンバ角を第1キャンバ角θaと決定し、その決定したキャンバ角θaを車輪2に付与する(S10)。
つまり、S3の処理で取得された必要前後摩擦係数が車輪2の発揮できる摩擦係数の最大値μaを上回っている場合には、車輪2に第1キャンバ角θaよりもマイナス方向(ネガティブキャンバ側)のキャンバ角を付与しても、それ以上の摩擦係数の増加(走行性能の向上)を見込めないと判断し、その結果として、車輪2に付与するキャンバ角を第1キャンバ角θaとする。これにより、車輪2の転がり抵抗が不必要に大きくなることを回避して、その走行抵抗の低減を図ることができる。よって、省燃費性能の向上を図ることができる。
ここで、報知処理(S11)では、急加速などによって車輪2がスリップしている(又は、する恐れのある)旨をスピーカ(図示せず)等から出力すると共に、ディスプレイ(図示せず)等に表示して運転者に報知する。なお、車両1が加速状態にある場合には、車両1の車速を減速させる手段(例えば、車輪駆動装置3の回転駆動力を低下させる等)をS11の処理で実行しても良い。
上述したように、S4の処理の結果、ステアリング54の操作角が所定値以上であると判断される場合には(S4:Yes)、車両1が旋回状態にあるということなので、旋回制御処理(S20)を実行する。ここで、図10を参照して、旋回制御処理(S20)について説明する。図10は、旋回制御処理(S20)を示すフローチャートである。なお、図10の説明においては、図11を適宜参照して説明する。図11(a)から図11(d)は、車両1の正面視を模式的に図示した模式図であり、必要摩擦係数と車輪2の状態との関係を、必要摩擦係数を4つの範囲に分けてそれぞれ示している。なお、図11では、右旋回状態にある車両1を示しており、左の前輪2FLが旋回外輪に、右の前輪2FRが旋回内輪に、それぞれ対応する。
CPU71は、旋回制御処理(S20)に関し、まず、車輪2の操舵角および車両1の車速を取得し(S21)、その取得した操舵角および車速から必要横摩擦係数を算出する(S22)。なお、CPU71は、上述したように、ステアリングセンサ装置54aから入力された角度センサの検出結果に基づいて車輪2の操舵角を取得すると共に、加速度センサ装置31から入力された各加速度センサ31a,31bの検出結果に基づいて車両1の車速を取得する。
ここで、必要横摩擦係数とは、旋回中の車両1において車輪2がスリップしないために車輪2と路面との間に必要な車両1の左右方向(図1左右方向)における摩擦係数であり、次のように算出される。即ち、まず、車輪2の操舵角σ、アッカーマン旋回半径R0及び車両1のホイールベースLの関係は、tanσ=L/R0により表すことができる。この関係式は、操舵角σが微小角の場合、σ=L/R0と近似することができる。これをアッカーマン旋回半径R0について変形することで、R0=L/σを得ることができる。
一方、車両1の実旋回半径R及び車両1の車速Vの関係は、車両1について実測したスタビリティファクターKを使用することで、車両1のステア特性より、R/R0=1+K・V2により表すことができる。これを実旋回半径Rについて変形すると共に、先に求めたアッカーマン旋回半径R0を代入することで、R=L(1+K・V2)/σを得ることができる。
ここで、旋回中の車両1に作用する遠心力Fは、車両1の重量をMとすれば、F=M・V2/Rとなり、これに先に求めた実旋回半径Rを代入することで、F=M・V2・σ/(L(1+K・V2))を得ることができる。車輪2が横方向(車両1の左右方向)にスリップすることを回避するための摩擦力は、この遠心力Fよりも大きな値であれば良いので、必要横摩擦係数μwは、遠心力Fを重量Mで割ることで、μw=F/M=V2・σ/(L(1+K・V2))により表すことができる。
次いで、S3及びS22の処理で取得した必要前後摩擦係数および必要横摩擦係数に基づいて(即ち、車両1の前後方向および左右方向を向くベクトルの合力として)、必要摩擦係数を算出する(S23)。
次いで、S23の処理で算出した必要摩擦係数と、車輪2が発揮できる摩擦係数(即ち、車輪2が路面との間で生じさせることができる摩擦係数)の最大値μa及び最小値μbとを比較し、必要摩擦係数が最小値μb以上かつ最大値μa以下であるか否かを判断する(S24)。
なお、車輪2が発揮できる摩擦係数の最大値μa及び最小値μbは、上述したように、キャンバ角マップ72b(図5参照)から読み出される。また、この場合には、CPU71は、S1の処理で判断した路面状況に応じたマップを3種類のマップの中から選択し、その選択したマップの内容に基づいて、最大値μa及び最小値μbを読み出す。
S24の処理の結果、必要摩擦係数が最小値μb以上かつ最大値μa以下であると判断される場合には(S24:Yes)、必要摩擦係数が規定値メモリ72cに記憶されている規定値μsよりも大きいか否かを判断する(S25)。その結果、必要摩擦係数が規定値μsよりも大きくないと判断される場合、即ち、必要摩擦係数が規定値μs以下であると判断される場合には(S25:No)、必要摩擦係数を確保する(即ち、必要摩擦係数と同等の摩擦係数となる)キャンバ角をキャンバ角マップ72bから読み出し(S26)、その読み出したキャンバ角を旋回外輪に付与すると共に、旋回内輪に0度のキャンバ角を付与して(S27)、この旋回制御処理(S20)を終了する。
この場合、車輪2は、図11(b)の状態となる。これにより、旋回外輪に必要最低限の摩擦係数を発揮させ、そのスリップを防止することができる。その結果、車両1の旋回性能を十分なだけ確保しつつも、旋回外輪の転がり抵抗をより小さなものとして、その走行抵抗の低減を図ることができる。また、旋回内輪の転がり抵抗を最小として、その走行抵抗の低減を図ることができる。よって、省燃費性能の向上を図ることができる。
このように、必要摩擦係数が最小摩擦係数μb以上かつ最大摩擦係数μa以下である場合には、車両1がロールする分、旋回内輪に必要な必要摩擦係数は旋回外輪に必要な必要摩擦係数ほど大きくないと見込み、S27の処理を実行することで、省燃費性能のより一層の向上を図ることができる。
一方、S25の処理の結果、必要摩擦係数が規定値μsよりも大きいと判断される場合には(S25:Yes)、必要摩擦係数を確保するキャンバ角をキャンバ角マップ72bから読み出し(S28)、その読み出したキャンバ角を旋回外輪に付与すると共に、読み出したキャンバ角に等しいプラス方向(ポジティブキャンバ側)のキャンバ角を旋回内輪に付与して(S29)、この旋回制御処理(S20)を終了する。
この場合、車輪2は、図11(c)の状態となる。これにより、旋回外輪に必要最低限の摩擦係数を発揮させ、そのスリップを防止することができる。その結果、車両1の旋回性能を十分なだけ確保しつつも、旋回外輪の転がり抵抗をより小さなものとして、その走行抵抗の低減を図ることができる。また、旋回内輪の第2トレッド22による低転がり抵抗を利用して、その走行抵抗の低減を図ることができる。よって、省燃費性能の向上を図ることができる。
更に、この場合には、旋回内輪を旋回内側へ傾斜させるので、必要摩擦係数が規定値μsよりも大きく、旋回の度合い(車両1が旋回方向へ旋回しようとする度合い)が大きいと見込まれる場合でも、旋回内輪にキャンバスラストを発生させて、かかるキャンバスラストを旋回力として利用することで、旋回性能の向上を図ることができる。
即ち、車両1が旋回状態にある場合、旋回の度合いが大きくなると、車両1に作用する遠心力が大きくなり、その分、必要摩擦係数も大きくなる。よって、必要摩擦係数が規定値μsよりも大きい場合には、旋回の度合いが大きいと判断し、旋回外輪に必要最低限の摩擦係数を発揮させてスリップを防止すると同時に、旋回内輪にキャンバスラストを発生させて旋回性能の向上を図る。
なお、本実施の形態では、上述したように、旋回の度合いが大きくなると必要摩擦係数も大きくなるという関係を利用し、必要摩擦係数が規定値μsよりも大きいか否かを判断して、旋回内輪のキャンバ角を0度とするか又はプラス方向(ポジティブキャンバ側)とするかの場合分けを行ったが、かかる場合分けの判断として、他の判断を行うことは当然可能である。他の判断としては、例えば、ステアリング54の操作角が所定値以上であるか否か等の判断が例示される。
ここで、S25の処理で必要摩擦係数が規定値μs以下であると判断され(S25:No)、旋回内輪のキャンバ角が0度とされる場合であっても、必要摩擦係数が規定値μsよりも大きいと判断され(S25:Yes)、旋回内輪のキャンバ角がプラス方向(ポジティブキャンバ側)とされる場合であっても、キャンバ角マップ72b(図5参照)によれば、旋回内輪が発揮し得る摩擦係数は、いずれもμbとなる。
このように、必要摩擦係数が規定値μsよりも大きく、旋回の度合いが大きいと見込まれる場合(S25:Yes)には、必要摩擦係数が規定値μs以下である場合(S25:No)と比較して、旋回内輪が発揮し得る摩擦係数は同等であるものの、旋回内輪にキャンバスラストを発生させることができる分、旋回性能の向上を図ることができる。
S24の処理の結果、必要摩擦係数が最小値μb以上かつ最大値μa以下でないと判断される場合には(S24:No)、必要摩擦係数が最小値μbよりも小さいか否かを判断する(S30)。その結果、必要摩擦係数が最小値μbよりも小さいと判断される場合には(S30:Yes)、旋回外輪および旋回内輪に0度のキャンバ角を付与して(S31)、この旋回制御処理(S20)を終了する。
この場合、車輪2は、図11(a)の状態となる。これにより、上述したS9の処理と同様に、車輪2(旋回外輪および旋回内輪)の転がり抵抗を最小として、その走行抵抗の低減を図ることができる。よって、省燃費性能の向上を図ることができる。
一方、S30の処理の結果、必要摩擦係数が最小値μbよりも小さくないと判断される場合、即ち、必要摩擦係数が最大値μaよりも大きいと判断される場合には(S30:No)、旋回外輪および旋回内輪に第1キャンバ角θaを付与すると共に(S32)、報知処理(S11)を実行して、この旋回制御処理(S20)を終了する。
この場合、車輪2は、図11(d)の状態となる。これにより、上述したS10の処理と同様に、車輪2(旋回外輪および旋回内輪)の転がり抵抗が不必要に大きくなることを回避して、その走行抵抗の低減を図ることができる。よって、省燃費性能の向上を図ることができる。
なお、図9に示すフローチャート(キャンバ制御処理)において、請求項1記載の旋回要求検出手段としてはS4の処理が、請求項3記載の路面状況検出手段としてはS1の処理が、それぞれ該当する。また、図10に示すフローチャート(旋回制御処理)において、請求項1記載のキャンバ角変更手段としてはS27、S29、S31及びS32の処理が、請求項2記載の走行状態取得手段としてはS21の処理が、必要摩擦係数算出手段としてはS23の処理が、それぞれ該当する。
次いで、図12から図17を参照して、第2実施の形態について説明する。図12は、第2実施の形態における車輪202の上面図である。また、図13は、左旋回状態にある車両201の正面視を模式的に示した模式図であり、左右の車輪202に左旋回用の舵角が付与されると共に、旋回外輪(右の前輪202FR)にマイナス方向(ネガティブキャンバ側)のキャンバ角が付与され、旋回内輪(左の車輪202FL)にプラス方向(ポジティブキャンバ側)のキャンバ角が付与された状態が図示されている。
第1実施の形態では、車輪2が第1トレッド21及び第2トレッド22の2種類のトレッドを備え、それら両トレッド21,22の外径が幅方向に一定とされる場合を説明したが、第2実施の形態における車輪202は、第1トレッド221及び第2トレッド22に第3トレッド223を加えた3種類のトレッドを備え、第1トレッド221の外径および第3トレッド223の外径が漸次縮径するように構成されている。なお、第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
また、第2実施の形態では、第1実施の形態における車両用制御装置100(図3参照)により車両201を制御する場合を例に説明する。但し、第2実施の形態では、第1実施の形態に対して、後述するように、キャンバ角マップの構成が異なる。
第2実施の形態における車輪202は、図12に示すように、第1トレッド221と第2トレッド22と第3トレッド223とを備え、第1トレッド221が車両201の内側(図12右側)に配置されると共に、第3トレッド223が車両201の外側(図12左側)に配置され、第2トレッド22が第1トレッド221と第3トレッド223との間に配置されている。
第1トレッド221は、第2トレッド22に比してグリップ力の高い特性(高グリップ性)に構成され、第3トレッド223は、少なくとも第2トレッド22に比してグリップ力の高い特性に構成されている。
また、図12に示すように、第1トレッド221の外径は、第2トレッド22側(図12左側)から車両201の内側(図12右側)に向かうに従って漸次縮径して構成され、第3トレッド223の外径は、第2トレッド22側(図12右側)から車両201の外側(図12左側)に向かうに従って漸次縮径して構成されている。
これにより、図13に示すように、車輪202に大きなキャンバ角を付与しなくても(例えば、キャンバ角を0°としても)、第1トレッド221及び第3トレッド223が路面から離れた状態で、第2トレッド22のみを接地させることができる。その結果、車輪202全体としての転がり抵抗をより小さくして、省燃費性能の向上を図ることができる。
同時に、第1トレッド221及び第3トレッド223が接地せず、かつ、第2トレッド22をより小さなキャンバ角で接地させることができるので、各トレッド221,22,223の摩耗を抑制して、車輪202の高寿命化を図ることができる。
また、図13に示すように、車輪202にマイナス方向(ネガティブキャンバ側)のキャンバ角を付与して、第1トレッド221を接地させる場合には、かかる第1トレッド221の外径が漸次縮径しているので、第1トレッド221における接地を幅方向全域において均等化することができ、偏摩耗を抑制して、高寿命化を図ることができる。
一方、車輪202にプラス方向(ポジティブキャンバ側)のキャンバ角を付与して、第3トレッド223を接地させる場合には、かかる第3トレッド223の外径が漸次縮径しているので、第3トレッド223における接地を幅方向全域において均等化することができ、偏摩耗を抑制して、高寿命化を図ることができる。
図14は、第2実施の形態におけるキャンバ角マップの内容を模式的に図示した模式図である。なお、図14に示すキャンバ角マップは、車輪202について実測した実測値に基づくものである。CPU71は、第1実施の形態の場合と同様に、このキャンバ角マップの内容に基づいて、車輪202に付与すべきキャンバ角を決定する。なお、図14において、実線201は摩擦係数に、実線202は転がり抵抗に、それぞれ対応する。また、横軸のキャンバ角は、図14右側がマイナス方向(ネガティブキャンバ側)に、図14左側がプラス方向(ポジティブキャンバ側)に、それぞれ対応する。
また、第2実施の形態におけるキャンバ角マップには、第1実施の形態の場合と同様に、路面状況スイッチ55の3つの操作状態に対応して3種類のマップが記憶されているが、図14では、図面を簡素化して理解を容易とするべく、1種類のマップ(乾燥舗装路用マップ)のみを代表例として図示し、他の2種類のマップについては図示を省略している。
第2実施の形態におけるキャンバ角マップによれば、図14に示すように、キャンバ角が0度の状態(即ち、第2トレッド22のみが接地し、第1トレッド221及び第3トレッド223が路面から離れている状態)から、マイナス方向(ネガティブキャンバ側)へ向けて変化した場合、キャンバ角がθbnまでの間は、第2トレッド22のみが接地し、第1トレッド221(及び第3トレッド223)は路面から離れているので、摩擦係数は最小値μbに維持される。一方、転がり抵抗は、キャンバ角が0度の状態で最小値となり、キャンバ角がθbnまでの間は、キャンバ角の変化に伴って漸次増加する。つまり、キャンバ角がマイナス方向(ネガティブキャンバ側)へ向けて変化し、かかる変化に伴ってキャンバスラストが漸次増加することで、転がり抵抗が漸次増加する。
キャンバ角がθbnから、マイナス方向(ネガティブキャンバ側)へ向けて変化すると、かかる変化に伴って、高グリップ性の第1トレッド221の接地(接地圧または接地面積)が漸次増加することで、摩擦係数および転がり抵抗が漸次増加する。
そして、キャンバ角がθan(以下、「第2キャンバ角θan」と称す。)に達すると、第2トレッド22が路面から離れ、第1トレッド221のみが接地した状態となることで、摩擦係数が最大値μaに達する。なお、キャンバ角が第2キャンバ角θanからマイナス方向(ネガティブキャンバ側)へ向けて更に変化しても、第2トレッド22が既に路面から離れているので、摩擦係数は、ほとんど変化せず最大値μaに維持される。
一方、転がり抵抗は、キャンバ角が第2キャンバ角θanに達した後、その変化(傾き)は小さくなるが、キャンバ角の変化に伴って漸次増加する。つまり、上述したのと同様に、キャンバ角がマイナス方向(ネガティブキャンバ側)へ向けて変化し、かかる変化に伴ってキャンバスラストが漸次増加することで、転がり抵抗が漸次増加する。
同様に、図14に示すように、キャンバ角が0度の状態(即ち、第2トレッド22のみが接地し、第1トレッド221及び第3トレッド223が路面から離れている状態)から、プラス方向(ポジティブキャンバ側)へ向けて変化した場合、キャンバ角がθbpまでの間は、第2トレッド22のみが接地し、第3トレッド223(及び第1トレッド221)は路面から離れているので、摩擦係数は最小値μbに維持される。一方、転がり抵抗は、キャンバ角が0度の状態で最小値となり、キャンバ角がθbpまでの間は、キャンバ角の変化に伴って漸次増加する。つまり、上述したのと同様に、キャンバ角がプラス方向(ポジティブキャンバ側)へ向けて変化し、かかる変化に伴ってキャンバスラストが漸次増加することで、転がり抵抗が漸次増加する。
キャンバ角がθbpから、プラス方向(ポジティブキャンバ側)へ向けて変化すると、かかる変化に伴って、高グリップ性の第3トレッド223の接地(接地圧または接地面積)が漸次増加することで、摩擦係数および転がり抵抗が漸次増加する。
そして、キャンバ角がθap(以下、「第3キャンバ角θap」と称す。)に達すると、第2トレッド22が路面から離れ、第3トレッド223のみが接地した状態となることで、摩擦係数が最大値μaに達する。なお、キャンバ角が第3キャンバ角θapからプラス方向(ポジティブキャンバ側)へ向けて更に変化しても、第2トレッド22が既に路面から離れているので、摩擦係数は、ほとんど変化せず最大値μaに維持される。
一方、転がり抵抗は、キャンバ角が第3キャンバ角θapに達した後、その変化(傾き)は小さくなるが、キャンバ角の変化に伴って漸次増加する。つまり、上述したのと同様に、キャンバ角がプラス方向(ポジティブキャンバ側)へ向けて変化し、かかる変化に伴ってキャンバスラストが漸次増加することで、転がり抵抗が漸次増加する。
次いで、図15を参照して、第2実施の形態におけるキャンバ制御処理について説明する。図15は、第2実施の形態におけるキャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される処理である。
CPU71は、第2実施の形態におけるキャンバ制御処理に関し、第1実施の形態の場合と同様に、路面状況を判断した後(S201)、アクセルペダル52及びブレーキペダル53の操作状態を検出し(S202)、その検出した操作状態に対応する必要前後摩擦係数を摩擦係数マップ72a(図4参照)から読み出す(S203)。
次いで、ステアリング54の操作角は所定値以上であるか否かを判断し(S204)、ステアリング54の操作角が所定値以上であると判断される場合には(S204:Yes)、旋回制御処理(S220)を実行して、このキャンバ制御処理を終了する。
一方、S204の処理の結果、ステアリング54の操作角が所定値に達していないと判断される場合には(S204:No)、S203の処理で取得した必要前後摩擦係数が最小値μb以上かつ最大値μa以下であるか否かを判断する(S205)。なお、最大値μa及び最小値μbは、図14に示すキャンバ角マップから読み出される。また、この場合には、CPU71は、S201の処理で判断した路面状況に応じたマップを3種類のマップの中から選択し、その選択したマップの内容に基づいて、最大値μa及び最小値μbを読み出す。
その結果、必要前後摩擦係数が最小値μb以上かつ最大値μa以下であると判断される場合には(S205:Yes)、必要前後摩擦係数を確保する(即ち、必要前後摩擦係数と同等の摩擦係数となる)キャンバ角であって、マイナス方向(ネガティブキャンバ側)のキャンバ角を図14に示すキャンバ角マップから読み出し(S206)、その読み出したキャンバ角を車輪202に付与して(S207)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、第1実施の形態の場合と同様に、車輪202に必要最低限の摩擦係数を発揮させ、そのスリップを防止することができる。その結果、車両201の加速性能や制動性能を十分なだけ確保しつつも、車輪202の転がり抵抗をより小さなものとして、その走行抵抗の低減を図ることができる。よって、省燃費性能の向上を図ることができる。
一方、S205の処理の結果、必要前後摩擦係数が最小値μb以上かつ最大値μa以下でないと判断される場合には(S205:No)、必要前後摩擦係数が最小値μbよりも小さいか否かを判断する(S208)。その結果、必要前後摩擦係数が最小値μbよりも小さいと判断される場合には(S208:Yes)、車輪202に0度のキャンバ角を付与して(S209)、このキャンバ制御処理を終了する。
つまり、S203の処理で取得された必要前後摩擦係数が車輪202の発揮できる摩擦係数の最小値μbを下回っている場合には、車輪202にキャンバ角を付与しても、それ以上の転がり抵抗の低減(省燃費性能の向上)を見込めないと判断し、その結果として、車輪202に付与するキャンバ角を0度とする。これにより、第1実施の形態の場合と同様に、車輪202の転がり抵抗を最小として、その走行抵抗の低減を図ることができる。よって、省燃費性能の向上を図ることができる。
一方、S208の処理の結果、必要前後摩擦係数が最小値μbよりも小さくないと判断される場合、即ち、必要前後摩擦係数が最大値μaよりも大きいと判断される場合には(S208:No)、車輪202に第2キャンバ角θanを付与すると共に(S210)、報知処理(S11)を実行して、このキャンバ制御処理を終了する。
つまり、S203の処理で取得された必要前後摩擦係数が車輪202の発揮できる摩擦係数の最大値μaを上回っている場合には、車輪202に第2キャンバ角θanよりもマイナス方向(ネガティブキャンバ側)のキャンバ角を付与しても、それ以上の摩擦係数の増加(走行性能の向上)を見込めないと判断し、その結果として、車輪202に付与するキャンバ角を第2キャンバ角θanとする。これにより、第1実施の形態の場合と同様に、車輪202の転がり抵抗が不必要に大きくなることを回避して、その走行抵抗の低減を図ることができる。よって、省燃費性能の向上を図ることができる。
上述したように、S204の処理の結果、ステアリング54の操作角が所定値以上であると判断される場合には(S204:Yes)、旋回制御処理(S220)を実行する。ここで、図16を参照して、第2実施の形態における旋回制御処理(S220)について説明する。図16は、第2実施の形態における旋回制御処理(S220)を示すフローチャートである。なお、図16の説明においては、図17を適宜参照して説明する。図17(a)から図17(c)は、車両201の正面視を模式的に図示した模式図であり、必要摩擦係数と車輪202の状態との関係を、必要摩擦係数を3つの範囲に分けてそれぞれ示している。なお、図17では、右旋回状態にある車両201を示しており、左の前輪202FLが旋回外輪に、右の前輪202FRが旋回内輪に、それぞれ対応する。
CPU71は、第2実施の形態における旋回制御処理(S220)に関し、第1実施の形態の場合と同様に、車輪202の操舵角および車両201の車速を取得し(S221)、その取得した操舵角および車速から必要横摩擦係数を算出する(S222)。
次いで、S203及びS222の処理で取得した必要前後摩擦係数および必要横摩擦係数に基づいて(即ち、車両1の前後方向および左右方向を向くベクトルの合力として)、必要摩擦係数を算出し(S223)、その算出した必要摩擦係数が最小値μb以上かつ最大値μa以下であるか否かを判断する(S224)。なお、最大値μa及び最小値μbは、図14に示すキャンバ角マップから読み出される。また、この場合には、CPU71は、S201の処理で判断した路面状況に応じたマップを3種類のマップの中から選択し、その選択したマップの内容に基づいて、最大値μa及び最小値μbを読み出す。
その結果、必要摩擦係数が最小値μb以上かつ最大値μa以下であると判断される場合には(S224:Yes)、必要摩擦係数を確保する(即ち、必要摩擦係数と同等の摩擦係数となる)キャンバ角であって、マイナス方向(ネガティブキャンバ側)のキャンバ角を図14に示すキャンバ角マップから読み出し(S225)、その読み出したキャンバ角を旋回外輪に付与すると共に、旋回内輪に0度のキャンバ角を付与して(S226)、この旋回制御処理(S220)を終了する。
この場合、車輪202は、図17(b)の状態となる。これにより、第1実施の形態の場合と同様に、旋回外輪に必要最低限の摩擦係数を発揮させ、そのスリップを防止することができる。その結果、車両201の旋回性能を十分なだけ確保しつつも、旋回外輪の転がり抵抗をより小さなものとして、その走行抵抗の低減を図ることができる。また、旋回内輪の転がり抵抗を最小として、その走行抵抗の低減を図ることができる。よって、省燃費性能の向上を図ることができる。
一方、S224の処理の結果、必要摩擦係数が最小値μb以上かつ最大値μa以下でないと判断される場合には(S224:No)、必要摩擦係数が最小値μbよりも小さいか否かを判断する(S227)。その結果、必要摩擦係数が最小値μbよりも小さいと判断される場合には(S227:Yes)、旋回外輪および旋回内輪に0度のキャンバ角を付与して(S228)、この旋回制御処理(S220)を終了する。
この場合、車輪202は、図17(a)の状態となる。これにより、第1実施の形態の場合と同様に、車輪202(旋回外輪および旋回内輪)の転がり抵抗を最小として、その走行抵抗の低減を図ることができる。よって、省燃費性能の向上を図ることができる。
一方、S227の処理の結果、必要摩擦係数が最小値μbよりも小さくないと判断される場合、即ち、必要摩擦係数が最大値μaよりも大きいと判断される場合には(S227:No)、旋回外輪に第2キャンバ角θanを付与すると共に、旋回内輪に第3キャンバ角θapを付与し(S229)、報知処理(S11)を実行して、この旋回制御処理(S220)を終了する。
この場合、車輪202は、図17(c)の状態となる。これにより、第1実施の形態の場合と同様に、車輪202(旋回外輪および旋回内輪)の転がり抵抗が不必要に大きくなることを回避して、その走行抵抗の低減を図ることができる。よって、省燃費性能の向上を図ることができる。
また、図17(c)に示すように、左右の車輪202をいずれも旋回内側(図17(c)左側)へ傾斜させることができるので、左右両輪202にそれぞれキャンバスラストを発生させて、かかるキャンバスラストを旋回力として利用することで、旋回性能の向上を図ることができる。
なお、図15に示すフローチャート(キャンバ制御処理)において、請求項1記載の旋回要求検出手段としてはS204の処理が、請求項3記載の路面状況検出手段としてはS201の処理が、それぞれ該当する。また、図16に示すフローチャート(旋回制御処理)において、請求項1記載のキャンバ角変更手段としてはS226、S228及びS229の処理が、請求項2記載の走行状態取得手段としてはS221の処理が、必要摩擦係数算出手段としてはS223の処理が、それぞれ該当する。
次いで、図18から図20を参照して、第3実施の形態について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。また、第3実施の形態では、第1実施の形態における車両用制御装置100(図3参照)により車両1を制御する場合を例に説明する。但し、第3実施の形態では、第1実施の形態に対して、キャンバ角マップの構成が異なる。
図18は、第3実施の形態におけるキャンバ角マップの内容を模式的に図示した模式図である。第3実施の形態におけるキャンバ角マップは、車輪2における第1トレッド21の幅と第2トレッド22の幅との製造上のばらつきや、荷重による車輪2の潰れなど、車輪2の各種状態が考慮されている。なお、図18に示すキャンバ角マップは、車輪2について実測した実測値に基づくものである。
CPU71は、第1実施の形態の場合と同様に、このキャンバ角マップの内容に基づいて、車輪2に付与すべきキャンバ角を決定する。なお、図18において、実線301は摩擦係数に、実線302は転がり抵抗に、それぞれ対応する。また、横軸のキャンバ角は、図18右側がマイナス方向(ネガティブキャンバ側)に、図18左側がプラス方向(ポジティブキャンバ側)に、それぞれ対応する。
また、第3実施の形態におけるキャンバ角マップには、第1実施の形態の場合と同様に、路面状況スイッチ55の3つの操作状態に対応して3種類のマップが記憶されているが、図18では、図面を簡素化して理解を容易とするべく、1種類のマップ(乾燥舗装路用マップ)のみを代表例として図示し、他の2種類のマップについては図示を省略している。
第3実施の形態におけるキャンバ角マップによれば、図18に示すように、第1実施の形態におけるキャンバ角マップ72b(図5参照)とは異なり、0度よりもプラス方向(ポジティブキャンバ側、図18左側)において、摩擦係数および転がり抵抗が漸次減少する範囲が存在する。
即ち、図18に示すように、キャンバ角が0度よりも所定の角度だけプラス方向(ポジティブキャンバ側)のθb(以下、「第4キャンバ角θb」と称す。)の状態で、摩擦係数は最小値μbとなる。また、転がり抵抗についても同様であり、最小値となる。
キャンバ角が第4キャンバ角θbの状態からマイナス方向(ネガティブキャンバ側)へ向けて変化すると、かかる変化に伴って、高グリップ性の第1トレッド21の接地(接地圧または接地面積)が漸次増加することで、摩擦係数および転がり抵抗が漸次増加する。
そして、キャンバ角がθc(以下、「第5キャンバ角θc」と称す。)に達すると、第2トレッド22が路面から離れ、第1トレッド21のみが接地した状態となることで、摩擦係数が最大値μaに達する。
なお、キャンバ角が第5キャンバ角θcからマイナス方向(ネガティブキャンバ側)へ向けて更に変化しても、第2トレッド22が既に路面から離れているので、摩擦係数は、ほとんど変化せず最大値μaに維持される。
一方、転がり抵抗は、キャンバ角が第5キャンバ角θcに達した後、その変化(傾き)は小さくなるが、キャンバ角の変化に伴って漸次増加する。つまり、キャンバ角がマイナス方向(ネガティブキャンバ側)へ向けて変化し、かかる変化に伴ってキャンバスラストが漸次増加することで、転がり抵抗が漸次増加する。
ここで、キャンバ角が第5キャンバ角θcに達した後、転がり抵抗は増加するにも関わらず摩擦係数が一定に維持されるのは、一般に、摩擦係数の変化がキャンバスラストの影響よりも第1トレッド21の高グリップ性による影響を受け易いためである。
一方、図18に示すように、キャンバ角が第4キャンバ角θbよりもプラス方向(ポジティブキャンバ側)の領域では、キャンバ角が第4キャンバ角θbの状態からプラス方向(ポジティブキャンバ側)へ向けて変化しても、摩擦係数は、ほとんど変化せず最小値μbに維持される。
即ち、キャンバ角が第4キャンバ角θbの状態からプラス方向(ポジティブキャンバ側)へ向けて変化し、かかる変化に伴って、低転がり抵抗の第2トレッド22の接地(接地圧または接地面積)が漸次増加するにも関わらず、摩擦係数は最小値μbに維持される。
これは、一般に、低転がり抵抗の第2トレッド22が高グリップ性の第1トレッド21よりも高硬度に構成されるために、第2トレッド22の接地が第1トレッド21の接地による高グリップ性への寄与を妨げるためである。
一方、転がり抵抗は、キャンバ角の変化に伴って漸次増加する。即ち、キャンバ角がプラス方向(ポジティブキャンバ側)へ向けて変化し、かかる変化に伴ってキャンバスラストが漸次増加することで、転がり抵抗が漸次増加する。
ここで、転がり抵抗は増加するにも関わらず摩擦係数が一定に維持されるのは、上述したのと同様に、一般に、摩擦係数の変化がキャンバスラストの影響よりも第2トレッド22の低転がり抵抗による影響を受け易いためである。
ここで、図18で図示を省略した未舗装路用マップ及び雨天舗装路用マップについては、乾燥舗装路用マップの実線を摩擦係数および転がり抵抗が小さくなる方向へ平行移動したものとなる。また、いずれのマップにおいても、摩擦係数および転がり抵抗が最小値となるキャンバ角は第4キャンバ角θbとなり、摩擦係数が最大値となるキャンバ角は第5キャンバ角θcとなる。
次いで、図19を参照して、第3実施の形態におけるキャンバ制御処理について説明する。図19は、第3実施の形態におけるキャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される処理である。
CPU71は、第3実施の形態におけるキャンバ制御処理に関し、第1実施の形態の場合と同様に、路面状況を判断した後(S301)、アクセルペダル52及びブレーキペダル53の操作状態を検出し(S302)、その検出した操作状態に対応する必要前後摩擦係数を摩擦係数マップ72a(図4参照)から読み出す(S303)。
次いで、ステアリング54の操作角は所定値以上であるか否かを判断し(S304)、ステアリング54の操作角が所定値以上であると判断される場合には(S304:Yes)、旋回制御処理(S320)を実行して、このキャンバ制御処理を終了する。
一方、S304の処理の結果、ステアリング54の操作角が所定値に達していないと判断される場合には(S304:No)、S303の処理で取得した必要前後摩擦係数が最小値μb以上かつ最大値μa以下であるか否かを判断する(S305)。なお、最大値μa及び最小値μbは、図18に示すキャンバ角マップから読み出される。また、この場合には、CPU71は、S301の処理で判断した路面状況に応じたマップを3種類のマップの中から選択し、その選択したマップの内容に基づいて、最大値μa及び最小値μbを読み出す。
その結果、必要前後摩擦係数が最小値μb以上かつ最大値μa以下であると判断される場合には(S305:Yes)、必要前後摩擦係数を確保する(即ち、必要前後摩擦係数と同等の摩擦係数となる)キャンバ角を図18に示すキャンバ角マップから読み出し(S306)、その読み出したキャンバ角を車輪2に付与して(S307)、このキャンバ制御処理を終了する。
具体的には、例えば、S303の処理で取得された必要前後摩擦係数がμ4の場合、図18に示すキャンバ角マップより、μb≦μ4≦μaの関係が成り立つので(S305:Yes)、この必要前後摩擦係数μ4に対応するキャンバ角をθ4と読み出し(S306)、その読み出したキャンバ角θ4を車輪2に付与する(S307)。
これにより、第1実施の形態の場合と同様に、車輪2に必要最低限の摩擦係数を発揮させ、そのスリップを防止することができる。その結果、車両1の加速性能や制動性能を十分なだけ確保しつつも、車輪2の転がり抵抗をより小さなものとして、その走行抵抗の低減を図ることができる。よって、省燃費性能の向上を図ることができる。
一方、S305の処理の結果、必要前後摩擦係数が最小値μb以上かつ最大値μa以下でないと判断される場合には(S305:No)、必要前後摩擦係数が最小値μbよりも小さいか否かを判断する(S308)。その結果、必要前後摩擦係数が最小値μbよりも小さいと判断される場合には(S308:Yes)、車輪2に第4キャンバ角θbを付与して(S309)、このキャンバ制御処理を終了する。
具体的には、例えば、S303の処理で取得された必要前後摩擦係数がμ5の場合、図18に示すキャンバ角マップより、μ5<μbの関係が成り立つので(S308:Yes)、この必要前後摩擦係数μ5に対応するキャンバ角をθ5と読み出すのではなく、車輪2に付与するキャンバ角を第4キャンバ角θbと決定し、これを車輪2に付与する(S309)。
つまり、S303の処理で取得された必要前後摩擦係数が車輪2の発揮できる摩擦係数の最小値μbを下回っている場合には、車輪2に第4キャンバ角θbよりもプラス方向(ポジティブキャンバ側)のキャンバ角を付与しても、それ以上の転がり抵抗の低減(省燃費性能の向上)を見込めないと判断し、その結果として、車輪2に付与するキャンバ角を第4キャンバ角θbとする。これにより、第1実施の形態の場合と同様に、車輪2の転がり抵抗を最小として、その走行抵抗の低減を図ることができる。よって、省燃費性能の向上を図ることができる。
一方、S308の処理の結果、必要前後摩擦係数が最小値μbよりも小さくないと判断される場合、即ち、必要前後摩擦係数が最大値μaよりも大きいと判断される場合には(S308:No)、車輪2に第5キャンバ角θcを付与すると共に(S310)、報知処理(S11)を実行して、このキャンバ制御処理を終了する。
具体的には、例えば、S303の処理で取得された必要前後摩擦係数がμ6の場合、図18に示すキャンバ角マップより、μa<μ6の関係が成り立つので(S308:No)、この必要前後摩擦係数μ6に対応するキャンバ角をθ6と読み出すのではなく、車輪2に付与するキャンバ角を第5キャンバ角θcと決定し、これを車輪2に付与する(S310)。
つまり、S303の処理で取得された必要前後摩擦係数が車輪2の発揮できる摩擦係数の最大値μaを上回っている場合には、車輪2に第5キャンバ角θcよりもマイナス方向(ネガティブキャンバ側)のキャンバ角を付与しても、それ以上の摩擦係数の増加(走行性能の向上)を見込めないと判断し、その結果として、車輪2に付与するキャンバ角を第5キャンバ角θcとする。これにより、第1実施の形態の場合と同様に、車輪2の転がり抵抗が不必要に大きくなることを回避して、その走行抵抗の低減を図ることができる。よって、省燃費性能の向上を図ることができる。
上述したように、S304の処理の結果、ステアリング54の操作角が所定値以上であると判断される場合には(S304:Yes)、旋回制御処理(S320)を実行する。ここで、図20を参照して、第3実施の形態における旋回制御処理(S320)について説明する。図20は、第3実施の形態における旋回制御処理(S320)を示すフローチャートである。
CPU71は、第3実施の形態における旋回制御処理(S320)に関し、第1実施の形態の場合と同様に、車輪2の操舵角および車両1の車速を取得し(S321)、その取得した操舵角および車速から必要横摩擦係数を算出する(S322)。
次いで、S303及びS322の処理で取得した必要前後摩擦係数および必要横摩擦係数に基づいて(即ち、車両1の前後方向および左右方向を向くベクトルの合力として)、必要摩擦係数を算出し(S323)、その算出した必要摩擦係数が最小値μb以上かつ最大値μa以下であるか否かを判断する(S324)。なお、最大値μa及び最小値μbは、図18に示すキャンバ角マップから読み出される。また、この場合には、CPU71は、S301の処理で判断した路面状況に応じたマップを3種類のマップの中から選択し、その選択したマップの内容に基づいて、最大値μa及び最小値μbを読み出す。
その結果、必要摩擦係数が最小値μb以上かつ最大値μa以下であると判断される場合には(S324:Yes)、必要摩擦係数が規定値メモリ72c(図3参照)に記憶されている規定値μsよりも大きいか否かを判断する(S325)。
その結果、必要摩擦係数が規定値μs以下であると判断される場合には(S325:No)、必要摩擦係数を確保する(即ち、必要摩擦係数と同等の摩擦係数となる)キャンバ角を図18に示すキャンバ角マップから読み出し(S326)、その読み出したキャンバ角を旋回外輪に付与すると共に、旋回内輪に第4キャンバ角を付与して(S327)、この旋回制御処理(S320)を終了する。
これにより、第1実施の形態の場合と同様に、旋回外輪に必要最低限の摩擦係数を発揮させ、そのスリップを防止することができる。その結果、車両1の旋回性能を十分なだけ確保しつつも、旋回外輪の転がり抵抗をより小さなものとして、その走行抵抗の低減を図ることができる。また、旋回内輪の転がり抵抗を最小として、その走行抵抗の低減を図ることができる。よって、省燃費性能の向上を図ることができる。
このように、必要摩擦係数が最小摩擦係数μb以上かつ最大摩擦係数μa以下である場合には、車両1がロールする分、旋回内輪に必要な必要摩擦係数は旋回外輪に必要な必要摩擦係数ほど大きくないと見込み、S327の処理を実行することで、省燃費性能のより一層の向上を図ることができる。
一方、S325の処理の結果、必要摩擦係数が規定値μsよりも大きいと判断される場合には(S325:Yes)、必要摩擦係数を確保するキャンバ角を図18に示すキャンバ角マップから読み出し(S328)、その読み出したキャンバ角を旋回外輪に付与すると共に、読み出したキャンバ角に等しいプラス方向(ポジティブキャンバ側)のキャンバ角を旋回内輪に付与して(S329)、この旋回制御処理(S320)を終了する。
これにより、第1実施の形態の場合と同様に、旋回外輪に必要最低限の摩擦係数を発揮させ、そのスリップを防止することができる。その結果、車両1の旋回性能を十分なだけ確保しつつも、旋回外輪の転がり抵抗をより小さなものとして、その走行抵抗の低減を図ることができる。また、旋回内輪の第2トレッド22による低転がり抵抗を利用して、その走行抵抗の低減を図ることができる。よって、省燃費性能の向上を図ることができる。
更に、この場合には、旋回内輪を旋回内側へ傾斜させるので、必要摩擦係数が規定値μsよりも大きく、旋回の度合いが大きいと見込まれる場合でも、旋回内輪にキャンバスラストを発生させて、かかるキャンバスラストを旋回力として利用することで、旋回性能の向上を図ることができる。
S324の処理の結果、必要摩擦係数が最小値μb以上かつ最大値μa以下でないと判断される場合には(S324:No)、必要摩擦係数が最小値μbよりも小さいか否かを判断する(S330)。その結果、必要摩擦係数が最小値μbよりも小さいと判断される場合には(S330:Yes)、旋回外輪および旋回内輪に第4キャンバ角θbを付与して(S331)、この旋回制御処理(S320)を終了する。
これにより、第1実施の形態の場合と同様に、車輪2(旋回外輪および旋回内輪)の転がり抵抗を最小として、その走行抵抗の低減を図ることができる。よって、省燃費性能の向上を図ることができる。
一方、S330の処理の結果、必要摩擦係数が最大値μaよりも大きいと判断される場合には(S330:No)、旋回外輪および旋回内輪に第5キャンバ角θcを付与すると共に(S332)、報知処理(S11)を実行して、この旋回制御処理(S320)を終了する。
これにより、第1実施の形態の場合と同様に、車輪2(旋回外輪および旋回内輪)の転がり抵抗が不必要に大きくなることを回避して、その走行抵抗の低減を図ることができる。よって、省燃費性能の向上を図ることができる。
また、左右の車輪2をいずれも旋回内側へ傾斜させることができるので、左右両輪2にそれぞれキャンバスラストを発生させて、かかるキャンバスラストを旋回力として利用することで、旋回性能の向上を図ることができる。
なお、図19に示すフローチャート(キャンバ制御処理)において、請求項1記載の旋回要求検出手段としてはS304の処理が、請求項3記載の路面状況検出手段としてはS301の処理が、それぞれ該当する。また、図20に示すフローチャート(旋回制御処理)において、請求項1記載のキャンバ角変更手段としてはS327、S329、S331及びS332の処理が、請求項2記載の走行状態取得手段としてはS321の処理が、必要摩擦係数算出手段としてはS323の処理が、それぞれ該当する。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。また、上記各実施の形態における構成の一部または全部を他の実施の形態における構成の一部または全部と組み合わせることは当然可能である。
上記各実施の形態では、摩擦係数マップ72aのパラメータ(横軸)がアクセルペダル52又はブレーキペダル53の踏み込み量によって構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の状態量によってパラメータを構成することは当然可能である。ここで、他の状態量としては、例えば、アクセルペダル52又はブレーキペダル53の操作速度が挙げられる。
上記各実施の形態では、摩擦係数マップ72aにおいて、アクセルペダル52の踏み込み量に対する必要前後摩擦係数の変化と、ブレーキペダル53の踏み込み量に対する必要前後摩擦係数の変化とが同じ変化となるように構成する場合を説明したが(図4参照)、かかる構成は一例であり、他の構成とすることは当然可能である。
例えば、アクセルペダル52の踏み込み量が100%における必要前後摩擦係数の最大値と、ブレーキペダル53の踏み込み量が100%における必要前後摩擦係数の最大値とが異なる値であっても良い。また、各ペダル52,53の踏み込み量の変化に対して必要前後摩擦係数が直線的に変化する場合を説明したが、かかる変化を曲線的に変化させることは当然可能である。
上記各実施の形態では、車両用制御装置100が1の摩擦係数マップ72aのみを備える場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、複数の摩擦係数マップを備えることは当然可能である。
例えば、走行路面の状態に対応してそれぞれ異なる内容で構成された複数の摩擦係数マップ(例えば、路面状況スイッチ55の操作状態に対応する乾燥舗装路用マップ、未舗装用マップ及び雨天舗装路用マップの3種類)を準備し、図9のS3の処理において、路面状況スイッチ55の操作状態に対応するマップから必要前後摩擦係数を読み出すように構成しても良い。
上記各実施の形態では、第1トレッド21,221が車両1,201の内側に、第2トレッド22又は第3トレッド223が車両1,201の外側に、それぞれ配置される場合を説明したが、この位置関係に限定されるものではなく、各車輪2毎に適宜変更することは当然可能である。
例えば、第1トレッド21,221が車両1,201の外側に、第2トレッド22又は第3トレッド223が車両1,201の内側に、それぞれ配置されていても良く、前輪では第1トレッド21,221が車両1,201の外側に、後輪では第2トレッド22又は第3トレッド223が車両1,201の外側に、それぞれ配置されていても良い。或いは、各車輪2毎にこの位置関係が異なっていても良い。
上記各実施の形態では、車輪2,202が2種類のトレッドを備える場合と3種類のトレッドを備える場合とを説明したが、これらの車輪2,202を組み合わせることは当然可能である。例えば、前輪には2種類のトレッドを備える車輪2を使用し、後輪には3種類のトレッドを備える車輪202を使用しても良く。この逆でも良い。
<その他>
<技術的思想>
技術的思想1記載のキャンバ角制御装置は、幅方向に並設される第1トレッドと第2トレッドとを少なくとも有し、前記第1トレッドが前記第2トレッドに比してグリップ力の高い特性に構成されると共に、前記第2トレッドが前記第1トレッドに比して転がり抵抗の小さい特性に構成される車輪と、その車輪にキャンバ角を付与するキャンバ角付与装置とを備えた車両に用いられるものであって、運転者の旋回要求を検出する旋回要求検出手段と、その旋回要求検出手段により旋回要求が検出された場合に、前記キャンバ角付与装置を制御し、前記車輪にキャンバ角を付与して、前記車輪の前記第1トレッドと前記第2トレッドとの接地比率を変更するキャンバ角変更手段とを備え、そのキャンバ角変更手段は、旋回外輪の前記接地比率と旋回内輪の前記接地比率とをそれぞれ変更する。
技術的思想2記載のキャンバ角制御装置は、技術的思想1記載のキャンバ角制御装置において、前記車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、その走行状態検出手段により検出された前記走行状態に基づいて前記車輪と路面との間に必要な必要摩擦係数を算出する必要摩擦係数算出手段とを備え、前記キャンバ角変更手段は、前記必要摩擦係数算出手段により算出された前記必要摩擦係数に基づいて前記接地比率を変更する。
技術的思想3記載のキャンバ角制御装置は、技術的思想2記載のキャンバ角制御装置において、前記路面の路面状況を検出する路面状況検出手段を備え、前記必要摩擦係数算出手段は、前記走行状態検出手段により検出された前記走行状態および前記路面状況検出手段により検出された前記路面状況に基づいて前記必要摩擦係数を算出する。
技術的思想4記載のキャンバ角制御装置は、技術的思想2又は3に記載のキャンバ角制御装置において、前記車輪の摩擦係数および転がり抵抗とキャンバ角との関係を記憶する記憶手段を備え、前記キャンバ角変更手段は、前記車輪が発揮できる最小の摩擦係数である最小摩擦係数を前記記憶手段から取得すると共に、前記必要摩擦係数が前記最小摩擦係数より小さい場合に、転がり抵抗が最小となるキャンバ角を前記記憶手段から取得し、その取得したキャンバ角を前記旋回外輪および前記旋回内輪に付与して、前記旋回外輪の前記接地比率および前記旋回内輪の前記接地比率を変更する。
技術的思想5記載のキャンバ角制御装置は、技術的思想4記載のキャンバ角制御装置において、前記キャンバ角変更手段は、前記車輪が発揮できる最大の摩擦係数である最大摩擦係数を前記記憶手段から取得すると共に、前記必要摩擦係数が前記最大摩擦係数より大きい場合に、前記最大摩擦係数を確保しつつ転がり抵抗がより小さくなるキャンバ角を前記記憶手段から取得し、その取得したキャンバ角を前記旋回外輪および前記旋回内輪に付与して、前記旋回外輪の前記接地比率および前記旋回内輪の前記接地比率を変更する。
技術的思想6記載のキャンバ角制御装置は、技術的思想4又は5に記載のキャンバ角制御装置において、前記キャンバ角変更手段は、前記必要摩擦係数が前記最小摩擦係数以上かつ前記最大摩擦係数以下である場合に、前記必要摩擦係数を確保するキャンバ角を前記記憶手段から取得し、その取得したキャンバ角を前記旋回外輪に付与して、前記旋回外輪の前記接地比率を変更すると共に、転がり抵抗が最小となるキャンバ角を前記記憶手段から取得し、その取得したキャンバ角を前記旋回内輪に付与して、前記旋回内輪の前記接地比率を変更する。
技術的思想7記載のキャンバ角制御装置は、技術的思想4から6のいずれかに記載のキャンバ角制御装置において、前記車輪は、前記第2トレッドが最も前記車両の外側に配置されるものであって、前記キャンバ角変更手段は、前記必要摩擦係数が前記最小摩擦係数以上かつ前記最大摩擦係数以下であると共に、前記必要摩擦係数が規定値より大きい場合に、前記必要摩擦係数を確保するキャンバ角を前記記憶手段から取得し、その取得したキャンバ角を前記旋回外輪に付与して、前記旋回外輪の前記接地比率を変更すると共に、前記旋回内輪にプラス方向のキャンバ角を付与して、前記旋回内輪の前記接地比率を変更する。
<効果>
技術的思想1記載のキャンバ角制御装置によれば、キャンバ角付与装置がキャンバ角変更手段により制御され、車輪にマイナス方向(ネガティブキャンバ側)のキャンバ角が付与されると、車両の内側に配置されるトレッド(第1トレッド又は第2トレッド)の接地(接地圧または接地面積)が増加する一方、車両の外側に配置されるトレッド(第2トレッド又は第1トレッド)の接地(接地圧または接地面積)が減少する。
これに対し、車輪にプラス方向(ポジティブキャンバ側)のキャンバ角が付与されると、車両の内側に配置されるトレッド(第1トレッド又は第2トレッド)の接地(接地圧または接地面積)が減少する一方、車両の外側に配置されるトレッド(第2トレッド又は第1トレッド)の接地(接地圧または接地面積)が増加する。
このように、本発明のキャンバ角制御装置によれば、キャンバ角変更手段によりキャンバ角付与装置を制御して、車輪にキャンバ角を付与することで、車輪の第1トレッドと第2トレッドとの接地比率を変更することができ、第1トレッドの特性により得られる性能と第2トレッドにより得られる性能とを使い分けることができる。
ここで、本発明のキャンバ角制御装置が用いられる車両の車輪は、第1トレッドが第2トレッドに比してグリップ力の高い特性(高グリップ性)に構成されると共に、第2トレッドが第1トレッドに比して転がり抵抗の小さい特性(低転がり抵抗)に構成されているので、車輪の第1トレッドと第2トレッドとの接地比率を変更して、第1トレッドの高グリップ性と第2トレッドの低転がり抵抗とを使い分けることで、車両の走行性能(旋回性能、加速性能、制動性能など)を確保しつつ省燃費性能を得ることができるという効果がある。
また、本発明のキャンバ角制御装置によれば、運転者の旋回要求を旋回要求検出手段により検出し、旋回要求が検出された場合に、車輪の第1トレッドと第2トレッドとの接地比率を変更するので、旋回のタイミングに合わせて、第1トレッドの高グリップ性を得ることが可能となる。よって、旋回性能を確実に確保することができるという効果がある。
更に、本発明のキャンバ角制御装置によれば、キャンバ角変更手段は、旋回外輪の接地比率と旋回内輪の接地比率とをそれぞれ変更するので、旋回外輪の接地比率と旋回内輪の接地比率とを一定とする場合と比較して、旋回外輪の接地比率および旋回内輪の接地比率を旋回の度合いに応じて適正に変更することができる。よって、旋回性能および省燃費性能の向上を図ることができるという効果がある。
技術的思想2記載のキャンバ角制御装置によれば、技術的思想1記載のキャンバ角制御装置の奏する効果に加え、車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、その走行状態検出手段により検出された車両の走行状態に基づいて車輪と路面との間に必要な必要摩擦係数を算出する必要摩擦係数算出手段とを備え、キャンバ角変更手段は、その必要摩擦係数算出手段により算出した必要摩擦係数に基づいて接地比率を変更するので、車輪の滑動(スリップ)を防止することができる。その結果、車輪の滑動(スリップ)に伴う燃費の悪化を抑制して、省燃費性能の向上を図ることができるという効果がある。同時に、旋回性能の向上を図ることができるという効果がある。
技術的思想3記載のキャンバ角制御装置によれば、技術的思想2記載のキャンバ角制御装置の奏する効果に加え、路面状況を検出する路面状況検出手段を備え、必要摩擦係数算出手段は、走行状態検出手段により検出された車両の走行状態および路面状況検出手段により検出された路面状況に基づいて必要摩擦係数を算出するので、路面状況に応じて接地比率を変更することができる。よって、車輪の滑動(スリップ)をより確実に防止して、省燃費性能のより一層の向上を図ることができるという効果がある。同時に、旋回性能のより一層の向上を図ることができるという効果がある。
技術的思想4記載のキャンバ角制御装置によれば、技術的思想3記載のキャンバ角制御装置の奏する効果に加え、車輪の摩擦係数および転がり抵抗とキャンバ角との関係を記憶する記憶手段を備え、キャンバ角変更手段は、車輪が発揮できる最小の摩擦係数である最小摩擦係数を記憶手段から取得すると共に、必要摩擦係数が最小摩擦係数より小さい場合に、転がり抵抗が最小となるキャンバ角を記憶手段から取得し、その取得したキャンバ角を旋回外輪および旋回内輪に付与して、旋回外輪の接地比率および旋回内輪の接地比率を変更するので、走行抵抗の低減を図ることができる。よって、省燃費性能の向上を図ることができるという効果がある。
技術的思想5記載のキャンバ角制御装置によれば、技術的思想4記載のキャンバ角制御装置の奏する効果に加え、キャンバ角変更手段は、車輪が発揮できる最大の摩擦係数である最大摩擦係数を記憶手段から取得すると共に、必要摩擦係数が最大摩擦係数より大きい場合に、最大摩擦係数を確保しつつ転がり抵抗がより小さくなるキャンバ角を記憶手段から取得し、その取得したキャンバ角を旋回外輪および旋回内輪に付与して、旋回外輪の接地比率および旋回内輪の接地比率を変更するので、車輪の転がり抵抗が不必要に大きくなることを回避して、走行抵抗の低減を図ることができる。よって、省燃費性能の向上を図ることができるという効果がある。
技術的思想6記載のキャンバ角制御装置によれば、技術的思想4又は5に記載のキャンバ角制御装置の奏する効果に加え、キャンバ角変更手段は、必要摩擦係数が最小摩擦係数以上かつ最大摩擦係数以下である場合に、必要摩擦係数を確保するキャンバ角を記憶手段から取得し、その取得したキャンバ角を旋回外輪に付与して、旋回外輪の接地比率を変更すると共に、転がり抵抗が最小となるキャンバ角を記憶手段から取得し、その取得したキャンバ角を旋回内輪に付与して、旋回内輪の接地比率を変更するので、旋回外輪に必要最低限の摩擦係数を発揮させ、その滑動(スリップ)を抑制しつつ、旋回内輪の走行抵抗の低減を図ることができる。
その結果、車両の旋回性能を十分なだけ確保しつつも、旋回外輪および旋回内輪の走行抵抗の低減を図ることができる。よって、省燃費性能の向上を図ることができるという効果がある。
即ち、一般に、車両は旋回時にロールするため、旋回内輪に必要な必要摩擦係数は、旋回外輪に必要な必要摩擦係数と比較して極めて小さくなる。このため、旋回内輪の接地比率と旋回外輪の接地比率とを同等とすると、旋回内輪の発揮する摩擦係数が不必要に大きくなり、その分、走行抵抗が増加して、燃費の悪化を招く。
これに対し、本発明のキャンバ角制御装置によれば、必要摩擦係数が最小摩擦係数以上かつ最大摩擦係数以下である場合に、旋回内輪に必要な必要摩擦係数は旋回外輪に必要な必要摩擦係数ほど大きくないと見込み、旋回外輪の接地比率および旋回内輪の接地比率を上記のように変更することで、省燃費性能の向上を図ることができる。
技術的思想7記載のキャンバ角制御装置によれば、技術的思想6記載のキャンバ角制御装置の奏する効果に加え、車輪は、第2トレッドが最も車両の外側に配置されるものであって、キャンバ角変更手段は、必要摩擦係数が最小摩擦係数以上かつ最大摩擦係数以下であると共に、必要摩擦係数が規定値より大きい場合に、必要摩擦係数を確保するキャンバ角を記憶手段から取得し、その取得したキャンバ角を旋回外輪に付与して、旋回外輪の接地比率を変更すると共に、旋回内輪にプラス方向のキャンバ角を付与して、旋回内輪の接地比率を変更するので、旋回外輪に必要最低限の摩擦係数を発揮させ、その滑動(スリップ)を抑制しつつ、旋回内輪の走行抵抗の低減を図ると共に、旋回内輪を旋回内側へ傾斜させることができる。
その結果、車両の旋回性能を十分なだけ確保しつつも、旋回外輪および旋回内輪の走行抵抗の低減を図ることができる。よって、省燃費性能の向上を図ることができるという効果がある。更に、旋回内輪にキャンバスラストを発生させて、かかるキャンバスラストを旋回力として利用することで、旋回性能の向上を図ることができるという効果がある。
即ち、本発明のキャンバ角制御装置によれば、必要摩擦係数が最小摩擦係数以上かつ最大摩擦係数以下であると共に、必要摩擦係数が規定値より大きい場合に、旋回内輪に必要な必要摩擦係数は旋回外輪に必要な必要摩擦係数ほど大きくないと見込み、旋回外輪の接地比率および旋回内輪の接地比率を上記のように変更することで、省燃費性能の向上を図ることができる。
また、車輪は、第2トレッドが最も車両の外側に配置されるものであるため、旋回内輪にプラス方向(ポジティブキャンバ側)のキャンバ角を付与して、旋回内輪の接地比率を変更することで、旋回内輪を旋回内側へ傾斜させることができる。その結果、旋回内輪に必要な必要摩擦係数は旋回外輪に必要な必要摩擦係数ほど大きくないと見込まれるが、必要摩擦係数が規定値より大きく、旋回の度合いが大きいと見込まれる場合には、キャンバスラストを旋回力として利用することで、旋回性能の向上を図ることができる。