JP5054576B2 - 接合構造 - Google Patents

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Description

本発明は、建築物を構成する基礎梁などの要素部材と要素部材を支持する基礎杭などの支持部材とを接合する接合構造に関する。
従来より、建物の基礎として現場打ちコンクリートで形成する基礎梁に替えて、鉄骨製基礎梁を用いた基礎(鉄骨梁基礎)が検討されている。鉄骨梁基礎は、地盤に接地する部分であるベース部にコンクリートを打設し、基礎梁を形成する立ち上がり部に断面H型鋼を使用するものが考えれらている。このようなコンクリートスラブとH形鋼梁を組み合わせた基礎構造では、コンクリートの影響による発錆を防止して耐久性の向上を図る工夫が必要である(特許文献1参照)。

一方で、鉄骨梁基礎を直接基礎ではなく、杭基礎とする場合は、鋼管杭と鉄骨基礎梁の間にコンクリートベースを介在させず直接に鋼管杭と鉄骨製基礎梁を固定することが考えられる。これにより現場コンクリート工事を省略したいわゆる乾式工法とすることができるので好適である。
特開2003−268782号公報
ところで、上記の鉄骨製基礎梁などの建築物の要素部材を鋼管杭などの支持部材で支持する際の施工上の設置誤差は、基礎梁と杭頭を現場打ちコンクリートベースで互いに連結固定する場合には、コンクリートは杭頭の設置状態に応じた形状で固まるので、杭頭の施工上の設置誤差に影響を受けずに基礎梁の位置調整が可能であり、前記誤差に対する許容範囲は、鉄骨部品の接合に比して、広く(大きく)設定することができると言える。
しかしながら、上記乾式工法を採用し、鋼製等で製作した連結部品同士を使用して鉄骨製基礎梁などの建築物の要素部材と鋼管杭などの支持部材を接合する場合には、前記誤差の値の許容範囲も狭く(小さく)設定され、、施工の位置等の精度は高いものが要求される。すなわち支持部材である杭の配置や杭頭の高さの「ズレ」方や杭の転倒の状態が、その杭の直上に接続される要素部材である基礎梁の設置位置や、基礎天端の高さ、及び傾きの精度にそのまま影響して基礎梁の設置誤差を生じさせ、前記誤差が許容範囲を超える場合は、基礎天端面(土台面)の水平面が確保されず、その基礎天端面(土台面)の上に構築される建物の柱の鉛直性や床面等の水平性が確保されないことにつながってしまう。
本発明は、以上の問題を解決することを課題としており、その課題は、支持部材の施工上の設置誤差によって生じる要素部材の設置誤差を簡単に調整することができ、寸法精度良く要素部材を支持部材に容易に接続することができる接合構造を提供することを目的とする。
本発明は、建築物を構成する要素部材と、要素部材を支える支持部材とを接続する接合構造において、支持部材に固定される台座部と、一方の端部に支承端が形成され、その支承端が台座部に支承される支持軸部と、支持軸部の一方の端部を台座部に固定する固定手段と、支持軸部の他方の端部と要素部材とを連結する要素受け部と、を備え、支持軸部の一方の端部には、径方向に張り出した張出し部が形成され、固定手段は、支持軸部の他方の端部が挿通する挿通孔と張出し部に当接して支持軸部を係止する支持軸抜け止め部とを有し、挿通孔は、支承端を支点にして支持軸部が揺動自在の孔径を有し、支承端には、台座部に当接する凸面が形成されていることを特徴とする。
本発明において、台座部は支持部材に固定されており、支持軸部の一方の端部には、台座部に支承される支承端が形成されている。その支持軸部の一方の端部は、固定手段によって台座部に固定され、他方の端部は、要素受け部によって要素部材に連結される。支持軸部は、他方の端部から固定手段の挿通孔に通され、一方の端部に形成された張出し部が、固定手段の支持軸抜け止め部に係止されて支持軸部が固定手段から引き抜かれることが防止される。支持軸部の支承端には、台座部に当接する凸面が形成されている。挿通孔は、支承端を支点にして支持軸部が揺動自在の孔径を有するため、支持軸部は、支承端の凸面を支点にして挿通孔内を揺動できる。その結果として、支持軸部を挿通孔内で傾けながら調整することで、支持部材に接続される要素部材の設置状態の傾きの誤差を簡単に調整でき、寸法精度よく要素部材を支持部材に容易に接続することができる。
さらに、固定手段は、挿通孔及び支持軸抜け止め部が形成された円形の小径プレートと、小径プレートが回転自在に装着される円形の第1装着孔が形成された円形の大径プレートと、大径プレートが回転自在に装着される円形の第2装着孔が形成された固定プレートと、を有し、固定手段は、台座部に一方の端部が支承される支持軸部の他方の端部側が小径プレートの挿通孔、大径プレートの第1装着孔、及び固定プレートの第2装着孔を貫通し、小径プレートの挿通孔に大径プレートが装着され、大径プレートの第1装着孔に固定プレートが装着され、固定プレートは台座部に固定され、大径プレートには、小径プレートの周縁に当接して小径プレートを係止する小径プレート抜け止め部が設けられ、固定プレートには、大径プレートの周縁に当接して大径プレートを係止する大径プレート抜け止め部が設けられ、支持軸部の軸芯と一致する挿通孔の中心は、小径プレートの中心から偏心しており、第1装着孔の中心は、大径プレートの中心から偏心していると好適である。支持軸部が挿通して、中心が支持軸部の軸芯と一致する挿通孔は小径プレートの中心から偏心し、小径プレートが装着される第1装着孔は大径プレートの中心から偏心しているため、小径プレートや大径プレートを回転させることにより、支持軸部を横方向(例えば水平方向)に自由にずらすことができ、支持部材の横方向の設置誤差を簡単に補正できる。その結果として、要素部材の設置位置の誤差を、支持軸部を動かすことで簡単に調整でき、寸法精度よく要素部材を支持部材に容易に接続することができる。
さらに、支持軸部の他方の端部と要素受け部とは連結部により連結され、支持軸部と要素受け部とは、連結部によって支持軸部の軸線に沿って相対的に進退移動自在であると好適である。連結部によって支持軸部と要素受け部とを相対的に進退移動させることで、要素部材の設置高さの誤差を簡単に調整でき、寸法精度よく要素部材を支持部材に容易に接続することができる。
さらに、連結部は、支持軸部の他方の端部に形成された雄ねじ部と、要素受け部に形成された雌ねじ部とを有し、挿通孔には、雄ねじ部が挿通すると好適である。支持軸部に雌ねじが形成されていると、雄ねじ部を形成する場合に比べて支持軸部の幅が広くなり、支持軸部が挿通する挿通孔を広げる必要を生じて固定手段の強度低下につながり易い。一方で、上記構成によれば、支持軸部の雄ねじ部が挿通孔に挿通するので、挿通孔は小さくなり、固定手段の強度低下が抑えられて小型化し易くなる。
支持軸部は、軸線と同軸線となる角柱状の首部を有すると好適である。レンチなどの工具で首部を把持して支持軸部を簡単に回すことができ、要素受け部を相対的に進退移動させて要素部材の高さ方向の調整を簡単に実行できる。
さらに、台座部は、支承端の凸面が当接する平坦な受け面を有すると好適である。支承端の凸面が当接する受け面が平坦あれば、支持軸部を横にずらす際の抵抗は少なく、設置位置の誤差の調整を行い易くなる。
さらに、要素部材は建築物の基礎梁であり、支持部材は基礎梁を支える基礎杭であると好適である。施工誤差により、基準高さに対して、上部構造体の基礎の高さ、杭頭高さが合わない場合であっても、上記構成によれば、基礎杭の打ち込みの位置の不揃いを吸収することができ、その上に設置される基礎梁の設置誤差を防止しながら基礎梁を基礎杭に容易に接続することができる。
本発明によれば、支持部材の施工上の設置誤差によって生じる要素部材の設置誤差を簡単に調整することができ、寸法精度良く要素部材を支持部材に容易に接続することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る接合構造の分解斜視図であり、図2は接合構造の断面図である。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
なお、本明細書において、施工上の設置誤差(以下単に誤差という場合もある。)とは、地盤に埋め込む際(建て入れ時)の支持部材である杭の設置位置(杭の配置)や地盤面からの杭の出寸法(杭頭の高さ)が期待される設計基準に対して「ズレ」る大きさをいい、杭の建て入れ時の鉛直方向に対して杭が「倒れ」る程度(杭の転倒)をいい、さらに杭の設置誤差に影響される要素部材である基礎梁(天端面が問題となる)の設置位置や設置高さのズレ、および設置状態の傾きの程度(基礎天端面が水平基準面に対して傾斜する程度)を含む。また、設計基準とは、例えば、敷地境界線や道路境界線からの離れ寸法、支持部材同士の設置間隔の寸法、仮想の水平基準面(地盤など)からの高さ寸法、および鉛直方向線に対する倒れの角度または寸法をいう。
中低層住宅などの建築物を施工する際には、建築物本体(「上部構造体」ともいう)からの力を地盤に伝達し、建築物本体を安全に支えるための基礎(「下部構造体」ともいう)を施工する。一般に基礎には、フーチング基礎やべた基礎などの直接基礎の他に杭基礎などがあるが、杭基礎は、フーチング基礎やべた基礎に比較すると、コンクリート工事となる部分が杭と基礎梁の接続部分に限られているものの、なお接続部の鉄筋施工(配筋)やコンクリート打設と硬化のために乾燥を待つ時間などが必要となる点で不利である。これに対して、本発明の実施形態では、乾式の接合構造であるため、このようなコンクリート工事を一切不要とするものであり、施工期間が短縮できるという利点がある。
本実施形態は、建築物本体1(図13参照)の要素部材となる基礎梁5と、建築物本体1の柱や壁床の荷重を負担するために基礎梁5を下から支える鋼管杭(支持部材)3とを接続する接合構造7であり、杭基礎において利用される。接合構造7は、基礎梁5に固定される基礎梁固定プレート(要素受け部)9、鋼管杭3の上端に固定される杭頭キャップ(台座部)19、杭頭キャップ19によって支承される球座頭ボルト(支持軸部)11及び球座頭ボルト11の横方向(水平方向)への位置補正を行い、且つ球座頭ボルト11を杭頭キャップ19上に固定するための位置調整部(固定手段)21を備えて構成される。なお、以下の説明では、鉛直上方を「上方」、鉛直下方を「下方」として説明し、水平方向を「横方向」として説明する。
図1及び図2に示されるように、基礎梁5はH形鋼であり、下部のフランジに鋼材からなる基礎梁固定プレート9がボルト及びナットを用いて接合されている。基礎梁固定プレート9の下面側には、雌ねじが形成された高ナット部(雌ねじ部)9aが設けられている。高ナット部9aには、球座頭ボルト11が螺合する。基礎梁固定プレート9は、基礎梁5から伝達される鉛直荷重を受け、下方の球座頭ボルト11に伝達する。
球座頭ボルト11の上端部(他方の端部)には、高ナット部9aに螺合する雄ねじ部11aが形成されている。雄ねじ部11aは、ボルト押え内プレート13に形成された円形の挿通孔Haに通された後、基礎梁固定プレート9の高ナット部9aに螺合される。高ナット部9a及び雄ねじ部11aによって連結部14が構成され、基礎梁5と鋼管杭3とは連結部14によって球座頭ボルト11の軸線Lに沿って相対的に進退移動自在に連結されている。
球座頭ボルト11の下端部(一方の端部)には、支承端となる頭部11cが設けられており、頭部11cと雄ねじ部11aとの間には、雄ねじ部11aの軸線Lと同軸線となる六角柱状の首部11dが設けられている。施工作業者は、首部11dをレンチなどの工具で把持して球座頭ボルト11を簡単に回すことができ、基礎梁固定プレート9の高ナット部9aに対する球座頭ボルト11の雄ねじ部11aの進入度合いを簡単に調整できる。なお、首部11dの形状は六角柱状に限定されず、その他の多角柱状であってもよい。
鋼管杭3は筒状の鋼材からなる基礎杭であり、鋼管杭3の上端に被せられた杭頭キャップ19は鋼管杭3に固定される。杭頭キャップ19は、鋼管杭3の上端を塞ぐ円形のフランジプレート部19aと、フランジプレート部19aの下面側から突き出し、鋼管杭3の杭頭部を飲み込んだ状態で溶接される筒状の杭装着部19bとを有している。
球座頭ボルト11の頭部11cはフランジプレート部19aに支承される。フランジプレート部19aの上面(受け面)19cは平坦であり、頭部11cには、フランジプレート部19aの上面19cに当接する球座面(凸面)11bが形成されている。球座面11bは、数十cm〜数m程度の曲率半径を有する球面の一部である。
球座頭ボルト11は、ボルト押え内プレート13に形成された円形の挿通孔Haに通された後、頭部11cの球座面11bをフランジプレート部19aの上面19cに当接させた状態で立設される。円形の挿通孔Haは、頭部11cを支点にして揺動自在の孔径を有する。すなわち球座頭ボルト11は、挿通孔Haを形成する内周面(支持軸抜け止め部)13aとフランジプレート部19aの上面(受け面)19cにより形成される揺動空間Tにおいて揺動自在に動く。
図3〜図6に示されるように、球座頭ボルト11の頭部11cは、雄ねじ部11aに比較して径方向に張り出している側面部(張出し部)11eを有する。側面部11eは、首部11d側の直径d1よりも球座面11b側の直径d2の方が大きくなるように拡径したテーパ形状である。一方で、ボルト押え内プレート13には、挿通孔Haを形成する内周面(支持軸抜け止め部)13aが形成されている。内周面13aは、上端面側の内径(挿通孔Haの上端側の孔径)d3よりも下端面側の内径(挿通孔Haの下端側の孔径)d4の方が大きくなるようなテーパ形状である。内周面13aと頭部11cの側面部11eとの間には僅かな隙間Sが空くように形成されている。
建物に外力(風や地震などの水平力)が作用すると、躯体構造(柱、筋交い、床等)から基礎梁を経由して杭を上方へ持ち上げようとする引き抜き力が作用するので基礎梁と杭の接合部である球座頭ボルト11は、この引き抜き力を負担しなければならない。
球座頭ボルト11に引き抜き力が作用した場合(図4参照)、球座頭ボルト11の頭部11cは上方に僅かに移動し、側面部11eの下端が、ボルト押え内プレート13の内周面13aに当接する。その結果、内周面13aは、球座頭ボルト11に干渉して係止し、球座頭ボルト11がボルト押え内プレート13から上方に引き抜かれることを防止する。なお、本実施形態では、好ましい形態として断面視で球座頭ボルト11の側面部11eと挿通孔Haの内周面13aとが相対して対称的に下方に拡がるように傾斜している円錐状のテーパ形状であり、このテーパ形状同士の係り合いで前記引き抜き力に抵抗する構成としたが、これに限られるものではなく、鉤型形状とテーパ形状の係り合いで前記引き抜き力に抵抗する構成とすることも考えられる。例えば、張出し部として、球座頭ボルト11から径方向に張り出したフランジを設け、球座頭ボルト11の側面部11eを鉤型形状とし、この球座頭ボルト11の側面部11eに相対して挿通孔Haの内周面13aが下方に拡がるように傾斜している円錐状のテーパ形状する場合が考えられる。また、これとは逆に支持軸抜け止め部として、ボルト押え内プレート13に段差を持った内周面(断面視鉤形)を形成して、球座頭ボルト11のテーパ形状に当接するようにしてもよい。
また、球座頭ボルト11は、隙間Sが空いているために、挿通孔Ha内で頭部11cを支点にして揺動自在である。従って、鋼管杭3の鉛直性の倒れに起因して鋼管杭3に接合した基礎梁5の設置状態が鉛直方向に対して傾いている場合であっても、球座頭ボルト11の傾きを調整することで、基礎梁5の天端面を水平に保つことができる。
球座頭ボルト11の傾きの調整について図5を参照して具体的に説明する。図5は、鋼管杭3の軸線方向に対して球座頭ボルト11を傾けた状態を実線で示し、傾ける前の状態を二点鎖線で示す拡大図である。一例として、球座頭ボルト11の長手方向の寸法を85mm程度とし、頭部11cの側面部11eは、首部11d側の直径d1を47mm、球座面11b側の直径d2を57mmとする。一方で、ボルト押え内プレート13の板厚を12mmとし、ボルト押え内プレート13の挿通孔Haの孔径は、頭部11cの側面部11eよりも1mm(片側の隙間Sは0.5mm)程度大きくなるように形成する。球座頭ボルト11は、内周面13aのテーパ形状に倣って隙間Sの分だけ傾くことができ、この例によれば、杭の建て入れ精度(鉛直線に対する傾き)が1/24程度の場合まで調整できる。通常、鋼管杭3は、施工基準1/100を満たす施工を行う必要があり、この例のように、1/24程度まで調整できれば、通常の鋼管杭3の倒れにより生じる基礎梁5の傾きの誤差を十分に吸収して調整できる。
図6、図7及び図8に示されるように、球座頭ボルト11は、位置調整部21によって横方向への位置補正が行われる。位置調整部21は、挿通孔Ha及び内周面13aが形成された前述のボルト押え内プレート13と、ボルト押え内プレート13が回転自在に装着される円形の第1装着孔Hbが形成されたボルト押え外プレート15と、ボルト押え外プレート15が回転自在に装着される円形の第2装着孔Hcが形成された固定プレート17とを備えて構成されている。
ボルト押え内プレート13は、上端面の直径d5よりも下端面の直径d6の方が大きくなるようなテーパ形状の外周面13bを有する。ボルト押え外プレート15は、第1装着孔Hbを形成する内周面15aを有する。内周面15aは、ボルト押え内プレート13の外周面13bに当接するようなテーパ形状であり、上端面側の内径(第1装着孔Hbの上端側の孔径)d7よりも下端面側の内径(第1装着孔Hbの下端側の孔径)d8の方が大きくなっている。内周面(小径プレート抜け止め部)15aは、ボルト押え内プレート13の周縁であるテーパ形状の外周面13bに当接してボルト押え内プレート13を係止する。
ボルト押え外プレート15は、上端面の直径d9よりも下端面の直径d10の方が大きくなるようなテーパ形状の外周面15bを有する。固定プレート17は、第2装着孔Hcを形成する内周面17aを有する。内周面17aは、ボルト押え外プレート15の外周面15bに当接するようなテーパ形状であり、上端面側の内径(第2装着孔Hcの上端側の孔径)d11よりも下端面側の内径(第2装着孔Hcの下端側の孔径)d12の方が大きくなっている。内周面(大径プレート抜け止め部)17aは、ボルト押え外プレート15の周縁であるテーパ状の外周面15bに当接してボルト押え外プレート15を係止する。
固定プレート17は、杭頭キャップ19のフランジプレート部19aにボルト止めすることができ、3枚に分割された同厚の各プレート13,15,17は、テーパ形状同士の係り合いにより、1枚もののプレートとなり、球座頭ボルト11は、各プレート13,15,17の孔(挿通孔Ha、第1装着孔Hb及び第2装着孔Hc)を貫通して、杭頭キャップ19の受け面19cに固定するための固定手段となる。固定プレート17はボルト押え外プレート15を上方から押え込み、さらに、ボルト押え外プレート15はボルト押え内プレート13を上方から押え込み、さらに、ボルト押え内プレート13は球座頭ボルト11の頭部11cを上方から押え込むようになる。
その結果、球座頭ボルト11は、位置調整部21(固定手段)を構成する各プレート13,15,17からの引き抜きが防止され、その状態で保持される。なお、本実施形態では、各プレート13,15,17同士は、テーパ形状同士の係り合いによって抜けが防止される構成としたが、例えば、ボルト押え内プレート13やボルト押え外プレート15の外周面をテーパ形状にせず、ボルト押え外プレート15の内周面には、ボルト押え内プレート13の上端面の縁に当接する段差を形成してボルト押え内プレート13の抜けを防止する断面視鉤型の小径プレート抜け止め部を構成し、固定プレート17の内周面には、ボルト押え外プレート15の上端面の縁に当接する段差を形成してボルト押え外プレート15の抜けを防止する断面視鉤型の大径プレート抜け止め部を構成するようにしてもよい。
固定プレート17の第2装着孔Hcの中心C1と鋼管杭3の軸心及びボルト押え外プレート15の中心C2は一致している。一方で、ボルト押え外プレート15に形成された第1装着孔Hbの中心C3は、ボルト押え外プレート15の中心C2から偏心している。また、第1装着孔Hbの中心C3は、ボルト押え内プレート13の中心C4に一致しており、ボルト押え内プレート13に形成された挿通孔Haの中心C5は、ボルト押え内プレート13の中心C4から偏心している。なお、球座頭ボルト11の軸線Lは、挿通孔Haの中心C5を通っている。
固定プレート17が仮締めされた状態では、ボルト押え外プレート15及びボルト押え内プレート13はそれぞれ回転可能である。そして、例えば、ボルト押え内プレート13(図7参照)を回転させると、挿通孔Haはボルト押え内プレート13の中心C4回りを、円を描くように移動し、挿通孔Haと一緒に球座頭ボルト11も移動する。また、ボルト押え外プレート15(図8参照)を回転させると、第1装着孔Hbはボルト押え外プレート15の中心C2回りを、円を描くように移動し、第1装着孔Hbと一緒にボルト押え内プレート13も移動し、結果的に球座頭ボルト11も移動する。このように、ボルト押え内プレート13及びボルト押え外プレート15を相互に回転させることで、挿通孔Haや第1装着孔Hbはそれぞれ円運動し、双方の複合的な移動によって挿通孔Ha内の球座頭ボルト11は任意の位置に平行移動する。その結果、球座頭ボルト11の横方向への移動補正を行うことができる。
次に、図9を参照して、接合構造7の作用について説明する。例えば、図9(a)に示されるように、鋼管杭3に鉛直性倒れが生じている場合、そのまま鋼管杭3に基礎梁5を接合すると、基礎梁5も鉛直方向に対して転倒している状態になってしまう。しかしながら、接合構造7では、位置調整部21の各プレート13,15,17を仮締めした状態で、球座頭ボルト11が杭頭キャップ19の上端に支承され、且つ、ある程度の揺動を許容されているので、位置調整部21を分解して取り外すことなく、球座頭ボルト11の傾きを調整することで、基礎梁5の天端面を水平に保つことができる。
さらに、図9(b)に示されるように、基礎梁5が基準位置からズレていたとしても、位置調整部21を仮締めした状態で、位置調整部21のボルト押え外プレート15及びボルト押え内プレート13を相互に回転させることで、横方向の任意の位置に微調整でき、基礎梁5に対して横方向への位置補正を行うことができる。
さらに、図9(c)に示されるように、基礎梁5が基準高さからズレていたとしても、位置調整部21を仮締めした状態で、連結部14の球座頭ボルト11を回転させることで、基礎梁5と鋼管杭3とを接近または離間させることができ、基礎梁5の高さ方向の微調整を簡単に行うことができる。
(施工方法)
次に、図10〜図13を参照し、上記の接合構造7を利用して鋼管杭3と基礎梁5とを接続する施工方法を説明する。図10〜図12は、施工の手順を示すための側面図であり、図13は、杭基礎で建築物本体を支持している状態を模式的に示す側面図である。
図10(a)に示されるように、第1の工程では、地盤Gの所定エリアに複数の鋼管杭3を所定の深さまで打ち込む。その後、各鋼管杭3の杭頭の高さを揃える。すなわち鋼管杭3の上部を切断し、各鋼管杭3同士の上端高さを略一致させる。図10(b)に示されるように、第2の工程では、杭頭キャップ19を鋼管杭3の上端に被せるように載せ、杭頭キャップ19を鋼管杭3に溶接して固定する。
図11(a)に示されるように、第3の工程では、球座頭ボルト11、位置調整部21及び基礎梁固定プレート9を予めユニット化(工場等で各部品を一体化すること)して準備し、杭頭キャップ19の上に設置する。すなわち、球座頭ボルト11をボルト押え内プレート13、ボルト押え外プレート15及び固定プレート17の孔に挿入しておき、さらに、球座頭ボルト11の雄ねじ部11aを基礎梁固定プレート9の高ナット部9aに螺合してユニット化する。その後、そのユニットを杭頭キャップ19のフランジプレート部19a上に載せる。次に、図11(b)に示されるように、第4の工程では、杭頭キャップ19上に設置されたユニットの基礎梁固定プレート9に基礎梁5のフランジを載せる。
図12(a)に示されるように、第5の工程では、杭頭キャップ19のフランジプレート部19aと位置調整部21の固定プレート17とをボルトとナットで螺合して仮締結し、さらに、基礎梁5のフランジと接合構造7の基礎梁固定プレート9とをボルトとナットで螺合して仮締結する。この第5の工程では、球座頭ボルト11を僅かに傾けることで、基礎梁5の天端面の基準位置に対する傾き(鋼管杭3の建て入れの悪さ(鉛直方向の転倒)の影響)を補正し、さらに、位置調整部21のボルト押え内プレート13及びボルト押え外プレート15を回転させて球座頭ボルト11を横方向に移動させることで、鋼管杭3が横にずれていても基礎梁5の設置位置を補正する。
図12(b)に示されるように、第6の工程では、球座頭ボルト11の首部11dをレンチで把持して回し、球座頭ボルト11に螺合する基礎梁固定プレート9を上下方向に移動させて基礎梁5の天端面の高さを調節し、必要であれば、上記補正を適宜繰り返す。さらに一つの基礎梁5には接合構造7を複数設けるため、各接合構造7について同様に上述した補正作業を行い、調整を終えた後は、仮締めされた杭頭キャップ19のフランジプレート部19aと位置調整部21の固定プレート17の締結部(ボルト・ナット)、および基礎梁5のフランジと接合構造7の基礎梁固定プレート9の締結部(ボルト・ナット)を本締めすることにより、鋼管杭3と基礎梁5とを接続する施工を完了する(図13参照)。
以上の接合構造7によれば、鋼管杭3の建て入れ精度が不良で、基準値に対して傾きが大きくても、球座頭ボルト11の頭部11cを支点にして傾けることで補正できる。さらに、位置調整部21のボルト押え外プレート15及びボルト押え内プレート13を相互に回転させることで、横方向の任意の位置に微調整でき、基礎梁5に対して横方向への位置補正を行うことができる。さらに、連結部14の球座頭ボルト11を回転させることで、基礎梁5の高さ方向の微調整を行うことができる。
さらに、杭頭キャップ19のフランジプレート部19aの上面19cは平坦なので、球座頭ボルト11の横ズレを補正するために球座頭ボルト11を横にずらす際の抵抗は少なく、横ズレの補正を行い易くなる。
特に、上記接合構造7において、基礎梁5に対して複数の鋼管杭3を仮留めにしたまま基礎梁3や各部品を外すことなく、球座頭ボルト11を横方向に移動させ、また球座頭ボルト11自身を回したり傾けたりするだけで、接合状態の設置誤差を調整することができ、施工上たいへん有利である。
また、本実施形態に係る接合構造7では、基礎梁5に固定された基礎梁固定プレート9に高ナット部9aが設けられ、その雌ねじに球座頭ボルト11の雄ねじ部11aが螺合する構造であるが、球座頭ボルト11の雄ねじ部11aが挿通孔Haに挿通するので、挿通孔Haは小さくなり、ボルト押え内プレート13の強度低下が抑えられて位置調整部21を小型化し易くなる。しかしながら、本発明は、この形態に限定されず、基礎梁固定プレート9に雄ねじを形成した場合には、球座頭ボルト11の代わりに雌ねじを形成した支持軸部を設けることもできる。この場合は、球座頭ボルト11の雄ねじ部11aに比べて、雌ねじを形成する分だけ支持軸部の幅は広がり、支持軸部が挿通する挿通孔Haの孔径を広げる必要がある。
さらに、球座頭ボルト11は、六角柱状の首部11dを有するので、レンチなどの工具で首部11dを把持して球座頭ボルト11を簡単に回すことができ、基礎梁固定プレート9を上下させて基礎梁5の上下方向の補正を簡単に実行できる。
さらに、球座頭ボルト11は、頭部11c及び位置調整部21を構成する各プレート13,15,17同士の係り合いによって引き抜きが防止され、その状態で保持される。従って、建築物本体1を傾けようとする力が働いて基礎梁5を引き上げるような力が作用した場合であっても、球座頭ボルト11は引き抜かれず、基礎梁5と鋼管杭3との接続を強固に保持することができる。
また、本実施形態に係る接合構造7によれば、施工誤差により、基準高さに対して、建築物本体1の基礎の高さ、杭頭高さが合わない場合であっても、鋼管杭3の打ち込みの位置の不揃いや建て入れ寸法の誤差を吸収することができ、基礎梁5のズレを防止しながら基礎梁5を鋼管杭3に容易に接続することができる。
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の接合構造7では、鋼管杭3側に対して、球座頭ボルト11の球座面11bを向け、基礎梁5側に雄ねじ部11aの先端を向けて設置したが、雌ねじ部を杭頭キャップ19に設けて、接合構造7の構成部材の取り付けの配置を天地逆さまにしてもよい。また、建築物の要素部材としては基礎梁以外の部材であってもよく、さらに、支持部材も鋼管杭に限定されず、他の部材であってもよい。
また、支持軸部の下端に形成された凸面は、球面の一部に限定されず、場所によって曲率半径が変化する曲面によって形成されていてもよい。
本発明の実施形態に係る接合構造の分解斜視図である。 本実施形態に係る接合構造の断面図である。 球座頭ボルトの斜視図である。 球座頭ボルトの頭部の拡大図である。 球座頭ボルトの傾きを示す頭部の拡大図である。 球座頭ボルト及び調整手段の分解断面図である。 図2のV−V線に沿った断面図であり、回転調整前を示す図である。 図7に対応する断面図であり、回転調整後を示す図である。 接合構造の作用を説明するための側面図であり、(a)は基礎梁の転倒の調整を示す図、(b)は横方向の位置調整を示す図、(c)は高さ方向の調整を示す図である。 本実施形態に係る接合構造を利用した施工の手順を示し、(a)は第1工程を示す側面図であり、(b)は第2工程を示す側面図である。 本実施形態に係る接合構造を利用した施工の手順を示し、(a)は第3工程を示す側面図であり、(b)は第4工程を示す側面図である。 本実施形態に係る接合構造を利用した施工の手順を示し、(a)は第5工程を示す側面図であり、(b)は第6工程を示す側面図である。 杭基礎と上部構造体を示す側面図である。
符号の説明
3…鋼管杭(基礎杭、支持部材)、5…基礎梁(要素部材)、7…接合構造、9…基礎梁固定プレート(要素受け部)、9a…高ナット部(雌ねじ部)、11…球座頭ボルト(支持軸部)、11a…球座頭ボルトの雄ねじ部、11b…球座面(凸面)、11c…球座頭ボルトの頭部(支承端)、11d…首部、11e…頭部の側面(張出し部)、13…ボルト押え内プレート(小径プレート)、13a…ボルト押え内プレートの内周面(支持軸抜け止め部)、13b…ボルト押え内プレートの外周面(小径プレートの周縁)、14…連結部、15…ボルト押え外プレート(大径プレート)、15a…ボルト押え外プレートの内周面(小径プレート抜け止め部)、15b…ボルト押え外プレートの外周面(大径プレートの周縁)、17…固定プレート、17a…固定プレートの内周面(大径プレート抜け止め部)、19…杭頭キャップ(台座部)、19c…杭頭キャップの上面(受け面)、21…位置調整部(固定手段)、Ha…挿通孔、d3…挿通孔の上端側の孔径、d4…挿通孔の下端側の孔径、C2…ボルト押え外プレートの中心、C3…第1装着孔の中心、C4…ボルト押え内プレートの中心、C5…挿通孔の中心、Hb…第1装着孔、Hc…第2装着孔、L…軸線。

Claims (7)

  1. 建築物を構成する要素部材と、前記要素部材を支える支持部材とを接続する接合構造において、
    前記支持部材に固定される台座部と、
    一方の端部に支承端が形成され、その支承端が前記台座部に支承される支持軸部と、
    前記支持軸部の前記一方の端部を前記台座部に固定する固定手段と、
    前記支持軸部の他方の端部と前記要素部材とを連結する要素受け部と、を備え、
    前記支持軸部の前記一方の端部には、径方向に張り出した張出し部が形成され、
    前記固定手段は、前記支持軸部の前記他方の端部が挿通する挿通孔と前記張出し部に当接して前記支持軸部を係止する支持軸抜け止め部と、を有し、
    前記挿通孔は、前記支承端を支点にして前記支持軸部が揺動自在の孔径を有し、
    前記支承端には、前記台座部に当接する凸面が形成されていることを特徴とする接合構造。
  2. 前記固定手段は、前記挿通孔及び前記支持軸抜け止め部が形成された円形の小径プレートと、前記小径プレートが回転自在に装着される円形の第1装着孔が形成された円形の大径プレートと、前記大径プレートが回転自在に装着される円形の第2装着孔が形成された固定プレートと、を有し、
    前記固定手段は、前記台座部に一方の端部が支承される前記支持軸部の他方の端部側が前記小径プレートの挿通孔、前記大径プレートの第1装着孔、及び前記固定プレートの第2装着孔を貫通し、前記小径プレートの挿通孔に大径プレートが装着され、前記大径プレートの前記第1装着孔に前記固定プレートが装着され、
    前記固定プレートは前記台座部に固定され、前記大径プレートには、前記小径プレートの周縁に当接して前記小径プレートを係止する小径プレート抜け止め部が設けられ、前記固定プレートには、前記大径プレートの周縁に当接して前記大径プレートを係止する大径プレート抜け止め部が設けられ、
    前記支持軸部の軸芯と一致する前記挿通孔の中心は、前記小径プレートの中心から偏心しており、前記第1装着孔の中心は、前記大径プレートの中心から偏心していることを特徴とする請求項1記載の接合構造。
  3. 前記支持軸部の前記他方の端部と前記要素受け部とは連結部により連結され、前記支持軸部と前記要素受け部とは、前記連結部によって前記支持軸部の軸線に沿って相対的に進退移動自在であることを特徴とする請求項1または2記載の接合構造。
  4. 前記連結部は、前記支持軸部の前記他方の端部に形成された雄ねじ部と、前記要素受け部に形成された雌ねじ部と、を有し、
    前記挿通孔には、前記雄ねじ部が挿通することを特徴とする請求項3記載の接合構造。
  5. 前記支持軸部は、前記軸線と同軸線となる角柱状の首部を有することを特徴とする請求項3または4記載の接合構造。
  6. 前記台座部は、前記支承端の前記凸面が当接する平坦な受け面を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の接合構造。
  7. 前記要素部材は前記建築物の基礎梁であり、前記支持部材は前記基礎梁を支える基礎杭であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の接合構造。

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