しかしながら、特許文献2、3は最終的に柱の軸線が鉛直になるまで寝ている柱を起立させる方法であり(特許文献2の段落0007、特許文献3の段落0002)、最終的に軸線が鉛直に対して傾斜した状態で柱を設置することに適した方法を示していない。
特許文献1は柱が脚部から頭部へかけて傾斜した状態で立設されることの結果を述べ、傾斜した柱の立設方法を問わないことを説明するに留まり(段落0024〜0036、0058、0066〜0073)、傾斜した柱の具体的な立設方法を開示していない。
特に最終的に軸線が鉛直に対して傾斜した状態で柱を基礎上に立設する場合、柱には常に自重による転倒しようとするモーメントが作用し、柱を基礎上に立設した後にも作用し続けるため、この転倒しようとするモーメントの処理が課題になる。
本発明は上記背景より、最終的に軸線が鉛直に対して傾斜した状態で基礎上に立設される斜め柱を、最終的な傾斜状態で基礎上に設置することに適した具体的な立設方法を提案するものである。
請求項1に記載の発明の斜め柱の設置方法は、軸線が鉛直に対して傾斜した状態の斜め柱を天端面が水平面に対して傾斜した基礎上に設置する方法であり、
前記基礎の構築位置の付近において前記斜め柱を保持しながら組み立てる工程と、
この斜め柱の組み立て工程と並行し、前記基礎の構築位置と同一水準の上面上に、この上面から前記斜め柱が前記基礎上に設置されたときの、前記斜め柱の軸方向の中間部が接触し得る高さを有し、前記斜め柱を支持する支持部材を設置する工程と、
完成した前記斜め柱を吊り上げて前記斜め柱の下端を前記基礎の天端上に移動させ、この天端に、前記斜め柱の傾斜方向に回転自在に連結する工程と、
前記斜め柱を吊り支持したまま、前記斜め柱を前記支持部材側へ傾斜させ、前記支持部材に支持させる工程と、
前記斜め柱の下端部を前記基礎に接合する工程を含むことを構成要件とする。
斜め柱が組み立てられる「基礎の構築位置の付近」とは、図1−(a)、(b)に示すように斜め柱1の組み立てが完了した後、例えば斜め柱1の全体を吊り上げたまま、斜め柱1の脚部が基礎2の天端面上に移行するまでの移動を同一の揚重機が行える範囲内の場所を言う。図1−(a)、(b)では完成直後の斜め柱1と傾斜状態の斜め柱1を二点鎖線で示している。請求項1における「斜め柱を組み立てる」とは、「斜め柱を完成させる」の意味であり、斜め柱1の構成材がない状態から斜め柱1を組み立てる、あるいは製作することと、基礎2の構築位置付近、または工場において予め、後述の下柱1Aと上柱1Bを含む斜め柱構成材を製作し、基礎2の構築位置付近において斜め柱構成材を組み合わせ、斜め柱1を完成させることを含む。
斜め柱1が鉛直に対し、傾斜して基礎2上に設置されることは、特許文献1のように例えば架構のスパン方向、もしくは桁行方向に配列する斜め柱1の頂部を同一直線上に配列させながらも、脚部を地盤面、または地盤面を含む下部構造の条件から平面上、頂部と同一位置に配置できないような場合に生じる。
斜め柱1は基礎2の構築位置の付近において組み立てられ、全長分が完成させられた後、吊り支持され、基礎2の天端上に移動させられる。斜め柱1は組み立て中と完成後の基礎2上への移動のための吊り上げまで常に、図1−(a)、(b)に示すように斜め柱1の周囲に仮設で構築される支保工4に転倒等に対して安定的に保持される。支保工4は予め完成する斜め柱1の全長分の高さを有する場合と、斜め柱1の組み立てに伴い、上方へ積み上げられる場合がある。
斜め柱1の組み立て作業と並行し、基礎2上に載置された後に傾斜させられた、完成後の斜め柱1を傾斜状態に保持する支持部材3の設置、もしくは構築作業が行われる。「並行して」とは、支持部材3の設置作業が斜め柱1の組み立て作業と同時に行われる場合と、斜め柱1の組み立て作業と前後して行われる場合があることを言う。請求項1における「工程を含む」とは、各工程が請求項1に記載の上位の工程から順次、下位の工程へ向けて独立して遂行される場合と、複数の工程が並行し、相前後して進行する場合があることを意味する。
支持部材3が設置される面である「基礎2の構築位置と同一水準」とは、斜め柱1を基礎2に接合するまで、あるいは斜め柱1の頂部に屋根架構7が接合されるまでの間、斜め柱1を支持する支持部材3の設置場所が斜め柱1の脚部が接合される基礎2の構築位置と同等のレベルに位置することを言い、例えば基礎2と支持部材3が共に地盤面10上に、または地盤面10上に構築された底版11上に構築されるようなことを言う。
特許文献1では構造物全体を下部構造と上部構造に区分したときの下部構造がレベルの低い底面部と、それより幾らかレベルが高い周辺の法面部とに区分され、柱の脚部が法面部に設置されているが、本発明では斜め柱1を支持する基礎2と支持部材3が共に特許文献1で言う同一水準の下部構造に設置されることに該当する。「同一水準の上面」とは、同一の地盤面10上、もしくは底版11上、または床面上等であり、特許文献1で言えば、下部構造の同一上面上を指す。以下、「基礎2の構築位置と同一水準の上面」を「地盤面10」に代表させ、「上面上」を地盤面10等上と言う。
「基礎2の構築位置と同一水準の上面から斜め柱1が設置されたときの、斜め柱1の軸方向の中間部が接触し得る高さを有し」とは、図3に示すように地盤面10等上から、斜め柱1が鉛直に対して傾斜した状態で基礎2上に設置されたときの軸方向中間部までに亘る高さを支持部材3自身が有することを言う。または支持部材3の頂部に接続され、斜め柱1を直接、保持、あるいは支持する支持部31が支持部材3の、斜め柱1の軸方向中間部が接触し得る高さに接続される場合があることを言う。支持部材3は地盤面10等上から連続して構築されるか、積み上げられて地盤面10等上に設置される。設置は構築を含む。「上面上に支持部材3を設置する」とは、支持部材3が地盤面等10上で完成することを言う。支持部材3は前記のように斜め柱1の基礎2への接合までの間、または斜め柱1の頂部への屋根架構7の接合までの間、傾斜状態の斜め柱1を支持する役目を果たす。
斜め柱1は軸方向に一定の長さを持った柱ユニット(斜め柱構成材)を軸方向に連結(接合)し、一体化させることを繰り返すことにより全長が組み立てられることもあるが、斜め柱1を1本の柱として完成させる上では、柱ユニット同士は柱ユニット間で曲げモーメントとせん断力の伝達が可能な状態に接合されている必要があることから、柱ユニットの数が多ければ、斜め柱1の完成までに時間を要することになる。
そこで、斜め柱1を組み立てる工程において、斜め柱1の全長を軸方向に下柱1Aと上柱1Bに2分割し、下柱1Aと上柱1Bをそれぞれ予め製作しておけば(請求項2)、斜め柱1の組み立て位置での柱ユニットの連結数を最小の1回に抑えることができるため、斜め柱1の組み立て効率を向上させることが可能になる。この場合、鉛直に保持された下柱1A上に上柱1Bを載置し、下柱1Aに軸方向に接合して斜め柱1として一本化させ、この一本化した斜め柱1を鉛直に支持したまま、基礎2の天端上に吊り込むことが行われる(請求項2)。
斜め柱1の完成後、斜め柱1は揚重機により吊り上げられ、図1−(a)、(b)に示すように組み立て位置から基礎2の天端上へ移動させられ、天端上に載置される。斜め柱1は例えば上端部の一箇所において、または上端部、もしくは上端部以外の部分を含む複数箇所において吊り支持される。
斜め柱1は基礎2天端上への載置時に、天端上で最終的な立設状態である傾斜状態に移行できるよう、吊り上げられている鉛直状態のときに、図4−(a)に示すように傾斜状態へ回転自在な状態に、基礎2の天端に連結される。「鉛直状態のときに傾斜状態へ回転自在な状態」とは、斜め柱1が吊り上げられたまま、斜め柱1の下端が基礎2に連結されたときに、斜め柱1の下端(ベースプレート1a)が基礎2の天端面に沿い、(b)に示すように軸線が傾斜する状態にまで移行できることを言う。
斜め柱1の下端の基礎2天端への連結時には、図4−(a)に示すように傾斜側と反対側である、支持部材3から遠い側の端部を基礎2の天端に水平軸回りに回転自在に連結することが行われる(請求項4)。基礎2天端の「傾斜側(支持部材3に近い側)」は基礎2天端の内、レベルの低い側を指し、「反対側(支持部材3から遠い側)」はレベルの高い側を指す。「水平軸」は斜め柱1が鉛直状態から傾斜状態に移行するときの回転軸である。
斜め柱1の下端は例えば斜め柱1の下端に一体化したベースプレート1aの、レベルの高い側の端部が図5−(a)に示すように基礎2天端上のレベルの高い側に、水平軸の方向に沿って直線状に配列した接合材24に連結されることにより水平軸回りに回転自在に連結される。接合材24は基礎2天端上に定着され、ベースプレート1aを受ける定着プレート21のレベルの高い側に固定されており、ベースプレート1aの、レベルの高い側の端部には接合材24に重なる被接合材1bが固定されている。
斜め柱1の下端を基礎2の天端に回転自在に連結した後、斜め柱1は吊り支持されたまま、支持部材3側へ傾斜させられ、支持部材3に支持される。斜め柱1が支持部材3に支持された後、図3−(b)、図5に示すように斜め柱1の下端が基礎2の天端に接合される。斜め柱1の下端の基礎2天端への接合によって斜め柱1の設置作業は終了する。
斜め柱1下端の基礎2天端への接合によって斜め柱1の設置作業は終了するが、斜め柱1の上端部(頂部)には屋根架構7が直接、もしくは屋根架構7に一体化した梁部材が接合され、斜め柱1の使用状態では屋根架構7の鉛直荷重と水平荷重を斜め柱1が負担するため、斜め柱1の上端部への屋根架構7の接合が完了するまでは、支持部材3は斜め柱1を支持した状態に置かれることが適切である。
斜め柱1が基礎2に接合され、斜め柱1の基礎2への設置が完了した状態では、斜め柱1は屋根架構7を支持することから、支持部材3は斜め柱1を介して間接的に屋根架構7を支持するため、斜め柱1の基礎2への接合後の屋根架構7との接合の完了までは、上記のように傾斜した斜め柱1を支持部材3に支持させ続けることができる。すなわち、斜め柱1を基礎2上へ設置した後にも支持部材3に支持させたまま、図7、図8に示すように頂部において屋根架構7に接合し、斜め柱1が屋根架構7を支持する状態に移行させることができる。
例えば斜め柱1の基礎2への接合後に、支持部材3を斜め柱1から離脱させ、支持部材3による斜め柱1の支持が解除されれば、斜め柱1の脚部は自重による転倒モーメントに抵抗できるだけの構造を持つ必要がある。これに対し、斜め柱1の基礎2への接合後にも斜め柱1を支持部材3に支持させ続けたまま、斜め柱1の頂部が屋根架構7に接合されることで、斜め柱1の自重による転倒しようとする力を屋根架構7に負担させることができるため、斜め柱1の脚部を自重による転倒モーメントに抵抗できるだけの構造にする必要が生じず、斜め柱1を自重に対して安定させた状態で基礎2に接合した状態に保つことができる。
斜め柱1は図8に示すように傾斜した方向に対向する斜め柱1と対になった状態で屋根架構7に接続されることで、屋根架構7の鉛直荷重の内、対向する斜め柱1、1を転倒させようとする水平成分が相殺され、屋根架構7で負担されるため、斜め柱1、1の頂部に屋根架構7が接合された後には、斜め柱1は主に自重と屋根架構7の荷重による軸方向力と曲げモーメントを負担すればよくなる。屋根架構7の接合後に斜め柱1が主に軸方向力と曲げモーメントを負担すればよく、自重による転倒モーメントの負担から解放されることで、屋根架構7の接合後には支持部材3による斜め柱1の支持を解除することができる。斜め柱1、1への屋根架構7の接合前には各斜め柱1には自らを転倒させようとする自重による力が作用するため、斜め柱1は前記のように支持部材3による支持を受けることが適切である。
斜め柱1は鉛直に対して傾斜した状態で基礎2上への立設状態になることから、屋根架構7との接合の前後を問わず、斜め柱1が基礎2上に設置された時点から、斜め柱1の軸方向中央部には鉛直方向下向きに斜め柱1の自重が作用するため、支持部材3がなければ、斜め柱1は常に基礎2への接合部回りに転倒する状態にある。従って支持部材3は少なくともこの斜め柱1の自重による斜め柱1を転倒させようとする力に抵抗できる必要がある。
ここで、支持部材3が軸線を鉛直方向に向けて立設された状態で斜め柱1を支持するとすれば、斜め柱1の自重の、軸線に垂直な成分が支持部材3を支持部材3の脚部の回りに回転させようとするモーメントを作用させるため、支持部材3の脚部はモーメントに抵抗し得る状態に地盤面10等上に接合されている必要がある。そこで、支持部材3の軸線が斜め柱1の傾斜方向と反対側に傾斜した状態で、支持部材3を地盤面10等上に設置すれば(請求項3)、斜め柱1の自重の、斜め柱1の軸線に垂直な成分の多くを支持部材3の軸方向力として負担させることができるため、支持部材3の脚部を鉛直の場合程、モーメントに抵抗可能な状態に地盤面10等上に接合する必要がなくなる。
斜め柱1の自重の、軸線に垂直な成分は斜め柱1の軸線に垂直な方向を向くから、支持部材3の軸線が斜め柱1の軸線に垂直な方向を向く場合が理論上は最も効率的に斜め柱1の自重の、軸線に垂直な成分を軸方向力として負担できるため、脚部に生じるモーメントを小さくできる。但し、支持部材3の軸線と斜め柱1の軸線が共に鉛直状態から互いに逆向きに傾斜した状態にあれば、支持部材3の脚部のモーメントを低減できるため、支持部材3の軸線の水平面に対する傾斜角度は問われない。
斜め柱を基礎上に設置し、傾斜させたときから斜め柱を支持部材に支持させるため、斜め柱の下端を基礎に接合した後も、斜め柱の頂部に屋根架構を接合するまで支持部材に傾斜した斜め柱を支持させることができ、斜め柱を支持部材に支持させ続けたまま、斜め柱の頂部を屋根架構に接合することで、斜め柱の自重による転倒しようとする力を屋根架構に負担させることが可能である。この結果、斜め柱の脚部を自重による転倒モーメントに抵抗できるだけの構造にする必要が生じず、斜め柱を自重に対して安定させた状態で基礎に接合した状態に保つことができる。
図1−(a)は軸線が鉛直に対して傾斜した状態の斜め柱1を天端面が水平面に対して傾斜した基礎2上に設置するまでの作業要領を示す。斜め柱1の基礎2天端上への設置は基礎2の構築位置の付近において斜め柱1を保持しながら組み立てる工程と、斜め柱1を組み立てる工程と並行し、基礎2の構築位置と同一水準の上面上に、完成した斜め柱1を傾斜した状態で支持する支持部材3を設置する工程と、斜め柱1を基礎2の天端に連結する工程と、斜め柱1を支持部材3に支持させる工程と、斜め柱1の下端部を基礎2に接合する工程を経て完了する。
斜め柱1の設置位置には、図1に示すように軸線が鉛直に対して傾斜した状態で設置が完了する斜め柱1を支持する基礎2が構築される。斜め柱1の設置位置である基礎2の構築位置は図1−(a)に示すように地盤面10上、または地盤面10上に構築される底版11上、もしくは床面上等であり、後述の屋根架構7が上部構造であれば、基礎2は上部構造と区分される下部構造のいずれかの部分に設置(構築)される。以下では基礎2の設置(構築)面を地盤面10等と言う。図1−(a)では基礎2が構築される地盤面10と斜め柱1の組み立てのための支保工4が設置される地盤面10に段差があるが、この段差に意味はない。
基礎2は図5に示すように鉄筋コンクリート造等で構築され、傾斜した斜め柱1の軸線に対して天端が垂直な面をなすよう、基礎2の天端には図3に示すように傾斜した斜め柱1を支持する支持部材3に近い側から遠い側へかけて下方から上方へ向かう傾斜が付けられる。基礎2の天端の内、支持部材3に近い側のレベルは支持部材3から遠い側のレベルより低い。
基礎2の天端には斜め柱1の脚部に一体化するベースプレート1aを受ける定着プレート21が定着される。定着プレート21は例えば基礎2のコンクリート中に埋設されるアンカーボルト22が定着プレート21の表面側に緊結され、また定着プレート21の背面に一体化した定着体23がコンクリート中に埋設されることにより基礎2に定着される。
基礎2天端の定着プレート21上には、斜め柱1の脚部に一体化し、斜め柱1の軸線に垂直な面をなすベースプレート1aが載置され、ベースプレート1aは図4−(a)に示すように基礎2天端上の支持部材3から遠い側において定着プレート21に水平軸回りに回転自在に連結された後、(b)に示すように斜め柱1全体が支持部材3側へ傾斜したときに定着プレート21に重なって定着プレート21に接合される。
定着プレート21の、レベルが高い側には、図5に示すように基礎2上に設置された直後の斜め柱1のベースプレート1aを水平軸の回りに回転自在に、定着プレート21に連結するための複数個の、挿通孔24aを有する接合材24が水平軸の方向に間隔を置いて溶接等により固定されている。斜め柱1が回転自在になる水平軸は斜め柱1の軸線が鉛直状態から傾斜するときの回転中心になる軸であり、斜め柱1が鉛直状態にあるときの軸線と傾斜状態にあるときの軸線を含む平面(鉛直面)に垂直な方向を向く。図5は基礎2上に斜め柱1を設置し、その傾斜後、固定した様子を示している。
斜め柱1のベースプレート1aには定着プレート21の接合材24に水平軸上で重なり、互いに水平軸方向を向くボルトやピン等の連結材25により連結される、挿通孔1cを有する被接合材1bが、接合材24と同一の間隔で配列し、溶接等により固定されている。被接合材1bは図5−(b)に示すようにベースプレート1aからベースプレート1aの外周側へ張り出し、その張り出した部分に挿通孔1cが形成されている。被接合材1bはベースプレート1aから張り出した部分において接合材24に重なり、双方の挿通孔24a、1cが水平軸上で合致する。
図1−(a)に実線で示すように定着プレート21上に斜め柱1が鉛直状態で落とし込まれたときには、図4−(a)に示すようにベースプレート1aが水平面をなしているため、図5−(a)に示すようにまずベースプレート1aの被接合材1bが定着プレート21の接合材24に重ねられ、双方の挿通孔1c、24aを挿通する連結材25により互いに連結される。図5−(b)では連結材25が互いに重なった接合材24と被接合材1b間単位で両者を挿通しているが、連結材25は全接合材24と全被接合材1bを同時に貫通することもある。水平軸は連結材25の軸心である。
ベースプレート1aの被接合材1bが接合材24に連結されることにより斜め柱1は基礎2に対して水平軸回りに回転自在に連結された状態になる。ベースプレート1aの定着プレート21への連結後の斜め柱1の傾斜後には、図5−(a)に示すように定着プレート21とベースプレート1aは二点鎖線で示すようにコンクリート26中に埋設され、ベースプレート1aは基礎2に固定される。
斜め柱1は図1−(b)に示すように斜め柱1の完成後に設置される基礎2の付近において組み立てられ、完成後に吊り支持されたまま基礎2の天端上に移動させられる。斜め柱1の組み立て位置には斜め柱1の組み立て状態を保持する保持部材5を有する支保工4が組み立てられる。斜め柱1は例えば軸方向への組み立て(積み上げ)に伴い、斜め柱1を周囲から拘束して保持する、例えば箱形に組まれたフレーム等からなる保持部材5に保持され、鉛直に立設された状態を維持する。保持部材5は支保工4の内、斜め柱1に沿って配置される部分に、斜め柱1の軸方向に1箇所、もしくは複数箇所、設置される。
斜め柱1は自重と屋根架構7の荷重を受けることで、常に軸方向圧縮力と曲げモーメントを負担した状態に置かれるため、主に曲げモーメントに対する抵抗力の高い鉄筋コンクリート、鋼管コンクリート等で製作されるが、これらに限定されることはない。
斜め柱1の軸方向の組み立てとは、例えば斜め柱1を軸方向に複数個に分割された形で製作された斜め柱構成材(ユニット)を軸方向に積み上げ、互いに一体的に接合しながら、斜め柱1の全長を完成させるようなことを言う。保持部材5は例えば支保工4の側面から支保工4の外周側へ箱状に張り出すことにより斜め柱1を周囲から保持し、製作中の斜め柱1の転倒を防止する。斜め柱1は予め製作された斜め柱構成材を用いることなく、組み立て位置において製作されることもある。
図面では斜め柱1の製作効率を上げ、製作時間を短縮させるために、斜め柱1の全長を軸方向に2分割した形の、斜め柱構成材としての下柱1Aと上柱1Bを接合して一本化させ、斜め柱1を製作することにより斜め柱1の組み立て作業を簡略化させている。下柱1Aと上柱1Bは支保工4の付近、または周辺において独立して製作され、あるいは工場で製作された後に現場に搬入され、下柱1Aが鉛直に立設された後に上柱1Bが吊り上げられて下柱1A上に軸方向に載置され、下柱1Aに接合される。下柱1Aへの上柱1Bの接合は斜め柱1の組み立て位置において行われる。
この場合、予め製作された下柱1Aは地上に寝かせられた状態から揚重機を用いて起立させられた後、支保工4の側面に設置、もしくは構築される保持部材5に周囲から保持される。続いて上柱1Bを起立した下柱1Aの上端上に載置し、上柱1Bの下端部を下柱1Aの上端部に剛に接合することにより一本化した斜め柱1が製作される。
下柱1Aと上柱1Bの接合方法は接合の結果として接合部(継手部)での曲げモーメントの伝達が可能になれば、問われず、両柱1A、1Bの対向する面を直接、溶接する他、図6に示すようにボルト6等を用いることにより両柱1A、1Bが剛に接合される。
ボルト接合の場合は、例えば下柱1Aの上端面と上柱1Bの下端面に溶接されている端板1d、1eの外周に、両端板1d、1eに軸方向に同時に跨る接続プレート1fを配置し、接続プレート1fの外周側から、端板1d、1eに下柱1Aと上柱1Bの軸方向に突き当たった状態で下柱1Aと上柱1Bの外周を包囲している側板1g、1hに到達するボルト6を螺入させることにより下柱1Aと上柱1Bが剛に接合される。接続プレート1fは両柱1A、1Bの周方向に複数本、集合することにより円環状等、環状の形状をし、各接続プレート1fは環を周方向に分割された、例えば円弧状の形状に形成されている。側板1g、1hはボルト6の軸部が螺合するナットの役目を果たす。ボルト6は下柱1Aと上柱1Bの周方向に多数本、配置される。
斜め柱構成材の積み上げと接合による、または下柱1Aと上柱1Bの接合による斜め柱1の製作後、斜め柱1は揚重機により吊り上げられ、図1に実線で示すように下端が基礎2の天端上に載置される位置にまで移動させられ、その吊り上げ状態で図4−(a)に示すように下端が基礎2天端に傾斜側へ回転自在に連結される。
一方、斜め柱1の組み立て工程と並行し、斜め柱1が最終的に傾斜した状態で立設される位置では、図3に示すように基礎2の構築位置と同一水準の上面上である地盤面10等上に、完成した斜め柱1を傾斜した状態で支持する支持部材3が設置、もしくは構築される。図3では地盤面10上に構築された底版11上に支持部材3を設置している。
支持部材3は軸線を鉛直方向に向けた状態で立設されることもあるが、その場合、傾斜した斜め柱1の自重の、斜め柱1の軸線に直交する方向の成分が支持部材3を転倒させようとするモーメントを作用させるため、図示するように支持部材3の軸線が斜め柱1の軸線の傾斜方向と反対側に傾斜した状態で斜め柱1を支持することが合理的である。支持部材3の軸線が斜め柱1の軸線の傾斜方向と反対側に傾斜した状態にあれば、斜め柱1の自重の内、斜め柱1の軸方向に垂直な方向の成分の多くを支持部材3の軸方向力として受けることができることによる。
「支持部材3の軸線が斜め柱1の軸線の傾斜方向と反対側に傾斜する」とは、斜め柱1の軸線と支持部材3の軸線が鉛直線に関して線対称の状態にある場合を含め、鉛直線に関して互いに逆向きであることを言う。但し、図示するように鉛直線に関して線対称の状態にある場合には、斜め柱1の自重により斜め柱1と支持部材3を転倒させようとする分力を互いに相殺させることができる利点がある他、支持部材3の脚部での滑り等に対する安定性を確保し易いため、支持部材3の水平面に対する傾斜角度は斜め柱1の水平面に対する傾斜角度と同一である場合が合理的と言える。
支持部材3の地盤面10等上への設置等を含む支持部材3の設置工程は斜め柱1の組み立て工程と並行して進められるが、支持部材3の設置は遅くとも完成した斜め柱1を基礎2天端上に移動させ、傾斜させるまでに完了していればよいため、斜め柱1の基礎2天端への移動・連結工程の作業中にも並行(継続)して進行することもある。
斜め柱1は上記のように基礎2の付近において完成させられた後、上端部において、または上端部とそれより下方の中間部の複数箇所において揚重機により吊り支持された状態で、基礎2の天端上に移動させられる。斜め柱1は基礎2天端上で静止させられ、図4−(a)に示すように基礎2の天端に水平軸回りに回転自在に連結される。具体的には上記のように基礎2天端に固定されている定着プレート21の接合材24に斜め柱1のベースプレート1aの被接合材1bを重ね、接合材24と被接合材1bを貫通する連結材25を挿通させることにより斜め柱1が水平軸回りに回転自在に基礎2に連結される。斜め柱1が基礎2に回転自在に連結された状態は斜め柱1が基礎2にヒンジを介して連結されたことに相当する。
斜め柱1のベースプレート1aを基礎2の定着プレート21に水平軸回りに回転自在に連結した後、斜め柱1は図3、図4−(b)に示すように吊り支持されたまま、支持部材3側へ傾斜させられ、支持部材3に転倒に対して支持される。斜め柱1の頂部は屋根架構7に直接、もしくは屋根架構7に接合される梁部材等を介して間接的に接合されるため、斜め柱1は頂部を外した、軸方向中間部の区間のいずれか1箇所、または複数箇所において支持部材3に支持される。
斜め柱1の図1−(a)に実線で示す鉛直状態から鎖線で示す傾斜状態への移行は揚重機による吊り支持と共に、必要により安全のために、斜め柱1の頂部付近、もしくは中間部に接続されるワイヤ等の引張材9に傾斜の向きと反対側から張力を付与され、引張材9に支持された状態で行われる。
支持部材3の、斜め柱1を直接、支持する支持部31は斜め柱1の傾斜方向に加え、斜め柱1の設置が完了し、頂部の屋根架構7への接合が完了するまでの間の傾斜方向に直交する方向の水平力に対しても斜め柱1を保持し得るよう、斜め柱1を支持部材3側と傾斜方向に直交する方向の両側から支持可能な、例えば斜め柱1に外接し得る曲面状、または多角形状に形成される。
斜め柱1を支持部材3に支持させた後、基礎2天端に回転自在に連結されている斜め柱1の下端部が基礎2に接合される。斜め柱1の下端部は、下端部に一体化したベースプレート1aと基礎2の定着プレート21を貫通するアンカーボルト22の頭部がベースプレート1aにナット等により緊結されることにより基礎2に定着される。アンカーボルト22の本体は基礎2の構築時に予め基礎2中に埋設され、頭部は基本的に定着プレート21を貫通し、天端から突出している。その場合、斜め柱1のベースプレート1aはベースプレート1aに形成された挿通孔をアンカーボルト22の頭部が貫通することにより定着プレート21に重なり、ベースプレート1aの表面に突出したアンカーボルト22の頭部にナットが緊結されることによりベースプレート1aが基礎2に剛に接合される。
アンカーボルト22の頭部としてのボルトはアンカーボルト22本体から分離し、後から基礎2中のアンカーボルト22本体に接続されることもある。その場合、図示しないが、アンカーボルト22本体の頭部(ボルト)寄りにはナット(カプラー)が螺合し、ナットは頭部側の端面が天端から露出した状態で基礎2中に埋設される。アンカーボルト22本体から分離した頭部であるボルトはベースプレート1aが定着プレート21に重なった後、ベースプレート1aと定着プレート21の挿通孔を挿通して基礎2中のナットに螺合し、ベースプレート1aを定着プレート21に接合する。
ベースプレート1aの定着プレート21への接合後、必要により、斜め柱1の脚部の基礎2への一体性を高めるために、図5−(b)に二点鎖線で示すように斜め柱1のベースプレート1aを含む脚部と定着プレート21、及び両者を連結した接合材24と被接合材1bをコンクリート26中に埋設することが行われる。
ベースプレート1aの定着プレート21への接合により、または両者のコンクリート26中への埋設により斜め柱1の脚部が基礎2に剛に接合された状態になるが、斜め柱1の頂部が屋根架構7に接合されるまでは、斜め柱1には自重により自らを転倒させようとするモーメントが作用するため、このモーメントを斜め柱1に負担させないために、斜め柱1の頂部が屋根架構7に接合されるまでは、支持部材3に支持された状態に保たれる。
ベースプレート1aの定着プレート21への接合後、斜め柱1の頂部は図7に示すように例えば斜め柱1の頂部と屋根架構7の双方にそれぞれ突設されたブラケット1i、7aを同時に水平方向に貫通するボルト8やピンにより屋根架構7に接合される。斜め柱1の屋根架構7への接合により屋根架構7の荷重が、図8に示す斜め柱1の傾斜方向に対になる他方の斜め柱1と共に負担された状態になり、斜め柱1の基礎2と屋根架構7との間への架設が完了する。屋根架構7の斜め柱1、1への接合が終了するまでは、屋根架構7の鉛直荷重と水平荷重は屋根架構7用の、図示しない支保工(サポート)に支持されるが、斜め柱1の組み立て時に斜め柱1を保持する支保工4が屋根架構7のサポートを兼ねることもできる。
ブラケット1i、7aをピン接合するボルト8等の軸は屋根架構7から斜め柱1の頂部に少なくともスパン方向、すなわち対になる斜め柱1、1が対向する方向の曲げモーメントを作用させないよう、スパン方向に直交する水平方向を向く。この方向は斜め柱1のベースプレート1aを基礎2の定着プレート21にピン接合する連結材25の軸と同一の方向である。
斜め柱1の頂部はピン接合された屋根架構7から鉛直荷重と水平荷重を受けるが、鉛直荷重の内、斜め柱1の軸方向の成分は斜め柱1に軸方向圧縮力として負担される。斜め柱1の軸方向に垂直な成分は斜め柱1を傾斜した方向へ転倒させようとする力になるが、斜め柱1が傾斜した方向の同一線上に位置する斜め柱1とスパン方向に対になることで、斜め柱1を転倒させようとする力は屋根架構7の、対になる斜め柱1との接合部分間の区間の圧縮力として負担されることになる。
スパン方向に対になる斜め柱1、1に屋根架構7が接続され、支持された後には、屋根架構7は対になる斜め柱1、1に支持され、斜め柱1の自重の内、斜め柱1自身を転倒させようとする成分は屋根架構7が負担するため、斜め柱1は屋根架構7を支持することにより自立する。斜め柱1が自立性を確保したところで、支持部材3と支保工4は役目を終えるため、解体され、撤去される。