以下、添付図面を参照して、本発明に係る画像形成装置及び画像形成方法について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る画像形成装置の一実施形態の全体構成図である。
図1に示すように、この画像形成装置10は、各インク色に対応して設けられた複数のインクジェットヘッド(以下、単にヘッドという。)12K、12M、12C、12Y及び処理液吐出ヘッド12Sと、各ヘッド12K、12M、12C、12Yに供給する紫外線硬化型インク(いわゆるUVインク)及び処理液吐出ヘッド12Sに供給する処理液を貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、各ヘッド間に配置された予備硬化光源16A、16B、16Cと、最終色のヘッド12Yの後段に配置された本硬化光源18と、記録媒体たる記録紙20を供給する給紙部22と、記録紙20のカールを除去するデカール処理部24と、各ヘッド12(12K、12M、12C、12Y)及び処理液吐出ヘッド12Sのノズル面(インク吐出面)及び各光源(16A、16B、16C、18)の光出射面に対向して配置され、記録紙20の平面性を保持しながら記録紙20を搬送する吸着ベルト搬送部26と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部28と、を備えている。
本実施形態の画像形成装置10で用いられる処理液は、重合開始剤と、拡散防止剤と、オイル(高沸点有機溶媒)とを含有し、各色の紫外線硬化型インクは、紫外線エネルギーの付与によって硬化(重合化)する成分(モノマー、オリゴマー、又は低分子量ホモポリマー、コポリマーなどの紫外線硬化性成分)と色材(着色剤)とを含有して構成されている。
このように、処理液と各色インクとを組み合わせた構成により、主として処理液に含まれる拡散防止剤の機能によって着弾干渉による画像劣化を回避するとともに、予備硬化光源16A、16B、16Cのもれ光や記録紙20による反射光が各ヘッド12K、12M、12C、12Y及び処理液吐出ヘッド12Sのノズルにあたってしまう場合にも、各液体は重合開始剤とUVモノマーとを一緒に含有していないので重合反応が起こらず、各ヘッドのノズル内における処理液及びインクの固化が防止される。また、各色インクが重合開始剤を含有し、処理液がUVモノマーを含有する態様の場合も、上記と同様の効果を奏することができる。
なお、処理液及びインクについては後で詳しく説明する。
インク貯蔵/装填部14は、各ヘッド12K、12M、12C、12Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンク14K、14M、14C、14Y、及び処理液Sを貯蔵するタンク14Sを有し、各タンクは所要の管路30を介してヘッド12K、12M、12C、12Y及び処理液吐出ヘッド12Sと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
図1において、給紙部22の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジン32が示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部22から送り出される記録紙20はマガジン32に装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部24においてマガジン32の巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム34で記録紙20に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなる加熱温度を制御するとより好ましい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター38が設けられており、該カッター38によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター38は、記録紙20の搬送路幅以上の長さを有する固定刃38Aと、該固定刃38Aに沿って移動する丸刃38Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃38Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃38Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター38は不要である。
デカール処理後、カットされた記録紙20は、吸着ベルト搬送部26へと送られる。吸着ベルト搬送部26は、ローラ41、42間に無端状のベルト43が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも各ヘッド12K、12M、12C、12Y及び処理液吐出ヘッド12Sのノズル面に対向する部分が平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト43は、記録紙20の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(図示省略)が形成されている。ローラ41、42間に掛け渡されたベルト43の内側には、図示を省略した吸着チャンバが設けられており、この吸着チャンバをファンで吸引して負圧にすることによって記録紙20がベルト43上に吸着保持される。
ベルト43が巻かれているローラ41、42の少なくとも一方にモータ(図示省略)の動力が伝達されることにより、ベルト43は図1上で反時計回り方向に駆動され、ベルト43上に保持された記録紙20は図1の右から左へと搬送される。
各ヘッド12K、12M、12C、12Y及び処理液吐出ヘッド12Sは、当該画像形成装置10が対象とする記録紙20の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録紙20の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている。
ヘッド12K、12M、12C、12Yは、記録紙20の送り方向に沿って上流側から黒(K)、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのヘッド12K、12M、12C、12Yが記録紙20の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。
吸着ベルト搬送部26により記録紙20を搬送しつつ、まず処理液吐出ヘッド12Sから処理液を吐出した後、各ヘッド12K、12M、12C、12Yからそれぞれ異色のイ
ンクを吐出することにより記録紙20上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド12K、12M、12C、12Yを色別に設ける構成によれば、紙送り方向(副走査方向)について記録紙20をヘッド12K、12M、12C、12Yに対して相対移動させる動作を一回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙20の全面に画像を記録することができる。このようなシングルパス方式の画像形成装置は、記録ヘッドを主走査方向に往復動作させながら描画を行うシャトルスキャン方式に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせは本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
ヘッド間に配置されている予備硬化光源16A、16B、16Cは、ヘッドと同様に記録紙20の最大紙幅に対応する長さを有し、記録紙20の搬送方向と略直交する方向に延在するように固定されている。各予備硬化光源16A、16B、16Cは、隣接配置されている上流側のヘッド12K、12M又は12Cによる着弾インク液滴を半硬化状態(完全に硬化していない状態、半固溶状態)にする程度のエネルギーの紫外線を照射する。
すなわち、予備硬化光源16は、先行するヘッド12K、12M又は12Cによって記録紙20上に打滴されたインク液滴と後続のヘッド12M、12C又は12Yから吐出される他色インク液滴とが記録媒体表面上で混合して色滲みを起こすことがないように、その混合を防止し得る程度に記録紙20上のインク液滴を半硬化させる機能を果たす。
記録紙20が上流のヘッド部を通過して、次のヘッド下に入る前に、予備硬化光源16から光を照射して、記録紙20上のインク液滴を半硬化状態にし、次段の異色ヘッドによる打滴を行うようになっている。
図1の例では、まず記録紙20上に処理液吐出ヘッド12Sから処理液を吐出した後、黒ヘッド12Kによる打滴後に、予備硬化光源16Aによる光照射を経て黒インク液滴を半硬化させてから、マゼンタヘッド12Mによる打滴を行う。同様に、マゼンタヘッド12Mによる打滴後は、予備硬化光源12Bによる光照射を経てシアンヘッド12Cによる打滴を行い、その後予備硬化光源16Cによる光照射を経てイエローヘッド12Yによる打滴が行われる。
最終色のイエローヘッド12Yによる打滴後は、半硬化のための光照射は不要であるため、予備硬化光源は省略されている。
イエローヘッド12Y通過後は、本硬化光源18によって、記録紙20上のインク液滴を、その後の(下流側工程の)ハンドリングによって画像劣化が起こらないよう程度に硬化(本硬化)させるに足る光照射が行われ、本定着が行われる。
本硬化光源18の後段には、加圧定着ローラ46が設けられている。加圧定着ローラ46は、画像表面の光沢度及び平坦度を制御するための手段であり、画像面を所定の圧力で加圧する。
こうして生成されたプリント物は排紙部28から排出される。なお、図1には示さないが、排紙部28には、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
次に、ヘッドの構造について説明する。インク色毎に設けられている各ヘッド12K、12M、12C、12Y及び処理液吐出ヘッド12Sの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によってヘッドを示すものとする。
図2(a)は、ヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図2(b)は、その一部の拡大図である。また、図3は、ヘッド50の他の構造例を示す平面透視図であり、図4は、一つの液滴吐出素子(一つのノズル51に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図2中の4−4線に沿った断面図)である。
記録紙20上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド50は、図2(a)、(b)に示したように、インク滴の吐出口であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録紙20の送り方向と略直交する方向に記録紙20の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図2(a)の構成に代えて、図3に示すように、複数のノズル51が2次元に配列された短尺のヘッドユニット50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙20の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル51に対して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており(図2(a)、(b)参照)、対角線上の両隅部にノズル51への流出口と供給インクの流入口(供給口)54が設けられている。なお、圧力室52の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など多様な形態があり得る。
図4に示したように、各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。共通流路55はインク供給源たるインクタンク(図4においては図示省略)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは図4の共通流路55を介して各圧力室52に分配供給される。
圧力室52の一部(図4において天面)を構成している加圧板(振動板)56には個別電極57を備えたアクチュエータ58が接合されている。個別電極57に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ58が変形して圧力室52の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル51からインクが吐出される。なお、アクチュエータ58には、ピエゾ素子などの圧電体が好適に用いられる。インク吐出後、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
次に予備硬化光源部の構造例について説明する。
図5は、予備硬化部の構造例を示した模式図である。図5中図1と共通する部分には同一の符号を付してある。図5に示したように、予備硬化光源16A、16B、16Cは、遮光囲い70の中に線状の紫外線LED素子72とレンズ系74とが配置された構造を有し、遮光囲い70の底面に形成されているスリット状の開口部76を介してベルト43上の記録紙20に線状集光された紫外線が照射される。なお、符号78は、紫外線LED素子72が支持されている基板である。
イエローヘッド12Y後段の本硬化光源18には、水銀ランプ又はメタルハライドランプなどが好適に用いられる。本硬化光源18は、紫外線LED素子72よりも広い波長領域を有し、かつ、光量も大きい。また、イエローヘッド12Yと本硬化光源18の間には、本硬化光源18からの照射光がイエローヘッド12Yに入らないようにするための遮光仕切り部材80が配設されている。
予備硬化光源16A、16B、16C(以下、説明の便宜上これら各光源をまとめて符号16で表す。)による硬化処理は、記録媒体表面上での他色インク液滴同士の干渉による混色を防止する程度でインク中に未硬化部分が残る半固溶状態(粘度上昇状態)でよい。そのため、予備硬化光源16と、本硬化光源18とでは、それぞれ別種の光源を用い、予備硬化光源16と本硬化光源18の関係が以下の条件の少なくとも一つを満たすように構成する態様が好ましい。
(条件1):予備硬化光源16の波長域 < 本硬化光源18の波長域
(条件2):予備硬化光源16の照射量 < 本硬化光源18の照射量
(条件3):予備硬化光源16による光源域の照射領域 < 本硬化光源18による光源域の照射領域
ただし、予備硬化光源16や本硬化光源18の中心波長や波長域は使用されるインクの設計に応じて選択される。
図6は、予備硬化光源16の詳細な構造例を示した部分断面図であり、図7は、図6中の7A矢視断面図である。これらの図面に示したとおり、遮光囲い70の内側に配置された基板78には、ヘッド50の長手方向に沿って複数の紫外線LED素子72がライン状に並べられて配置されている。これら紫外線LED素子72列の下方には集光用のシリンドリカルレンズ84が設けられている。
遮光囲い70の底部には、光出射口となるスリット状の開口部76が形成されるとともに、該開口部76の周囲には光出射方向に凸の遮光くちばし86が設けられている。また、記録紙20と対向する遮光囲い70の底面には、紫外線吸収コーティング88が施されている。
紫外線LED素子72群から発せられる発散光は、シリンドリカルレンズ84の作用によって紙送り方向に略直交する方向に沿って線状に集光され、記録紙20上に照射される。シリンドリカルレンズ84に代えて、これと同様の集光パワーをもつ、光屈折面形状の非球面を1面以上有するレンズ群を用いることも可能である。
図8には、図6及び図7に示した構造の予備硬化光源16によって記録紙20上に照射される紫外線の照射エリアの例が示されている。
図8において、記録紙20は右から左へ白矢印方向に沿って搬送され、ヘッド50によってインクが吐出される。こうして記録紙20上に順次インクが着弾し、主走査方向のドットライン90が形成されていく。ヘッド50の下流側にある予備硬化光源16から照射される紫外線の照射エリア92は図示のように、副走査方向については狭幅w(好ましくは、数ドットライン以内)を成し、主走査方向のドットライン90に沿って略平行な線状となっている。
図6及び図7で説明した紫外線LED素子72群を選択的に発光させたり、各素子の発光量を制御することにより、紫外線の照射エリア92について所望の照射範囲及び光量(強度)分布を実現することができる。
図9は、予備硬化光源16から出射される紫外線の照射エリアの光量分布例を示した拡大図である。図9中符号92Aは、弱光量エリア、符号92Bは強光量エリアを示し、符号92Cは、色なしエリア(直前のヘッドによって打滴が行われていないエリア)を示す。色なしエリア92Cについては、記録紙20上に着弾インク液滴が存在しないため、予備硬化させるための紫外線照射が不要なエリアである。
記録紙20のサイズやヘッド50による打滴範囲及びインク量に応じて紫外線LED素子72の発光位置及び発光量を適切に制御して必要最小限の発光を行うことにより、ヘッド50への悪影響を極力抑えることが望ましい。
なお、予備硬化光源16の構成は、図6及び図7のような砲弾型の紫外線LED素子72を用いる構成に限定されず、図10のように、基板94上にLED素子95を一次元的に並べたものであってもよい。また、LEDに代えて、LD(レーザダイオード)を用いる構成も可能である。例えば、図6及び図7のような砲弾型の紫外線LED素子72列とシリンドリカルレンズ84とから成る光源部に代えて、図11のように、LD素子97と、集光レンズ98及びシリンドリカルレンズ99で構成する光源部に置き換えることができる。
次に、画像形成装置10の制御系について説明する。
図12は、画像形成装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。画像形成装置10は、通信インターフェース110、システムコントローラ112、画像メモリ114、モータドライバ116、ヒータドライバ118、プリント制御部120、画像バッファメモリ122、ヘッドドライバ124、メディア検出部126、光源制御部128等を備えている。
通信インターフェース110は、ホストコンピュータ130から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース110にはUSB、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(図示省略)を搭載してもよい。ホストコンピュータ130から送出された画像データは通信インターフェース110を介して画像形成装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ114に記憶される。画像メモリ114は、通信インターフェース110を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ112を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ114は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ112は、通信インターフェース110、画像メモリ114、モータドライバ116、ヒータドライバ118等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ112は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ130との間の通信制御、画像メモリ114の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ134やヒータ136を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ116は、システムコントローラ112からの指示に従ってモータ134を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ118は、システムコントローラ112からの指示に従って加熱ドラム34その他各部のヒータ136を駆動するドライバである。
プリント制御部120は、濃度変化値算出部140及びドットデータ生成部142を含み、システムコントローラ112の制御に従い、画像メモリ114内の画像データから印
字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(ドットデータ)をヘッドドライバ124に供給する制御部である。プリント制御部120において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ124を介して色別のヘッド12K、12M、12C、12Yのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部120には画像バッファメモリ122が備えられており、プリント制御部120における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ122に一時的に格納される。なお、図12において画像バッファメモリ122はプリント制御部120に付随する態様で示されているが、画像メモリ114と兼用することも可能である。また、プリント制御部120とシステムコントローラ112とを統合して一つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ124はプリント制御部120から与えられるドットデータに基づいて各ヘッド12K、12M、12C、12Yの吐出駆動用アクチュエータ58を駆動する。ヘッドドライバ124にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース110を介して外部から入力され、画像メモリ114に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの画像データが画像メモリ114に記憶される。画像メモリ114に蓄えられた画像データは、システムコントローラ112を介してプリント制御部120に送られ、該プリント制御部120のドットデータ生成部142において既知のディザ法、誤差拡散法などの手法によりインク色毎のドットデータに変換される。
こうして、プリント制御部120のドットデータ生成部142で生成されたドットデータに基づいてヘッド12K、12M、12C、12Yが駆動制御され、ヘッドからインクが吐出される。記録紙20の搬送速度に同期してヘッド12K、12M、12C、12Yからのインク吐出を制御することにより、記録紙20上に画像が形成される。
メディア検出部126は、記録紙20の紙種やサイズを検出する手段である。例えば、給紙部22のマガジン32に付されたバーコード等の情報を読み込む手段、用紙搬送路中の適当な場所配置されたセンサ(用紙幅検出センサ、用紙の厚みを検出するセンサ、用紙の反射率を検出するセンサなど)が用いられ、これらの適宜の組み合わせも可能である。また、これら自動検出の手段に代えて、もしくはこれと併用して、所定のユーザインターフェースからの入力によって紙種やサイズ等の情報を指定する構成も可能である。
メディア検出部126により取得された情報はシステムコントローラ112及びプリント制御部120の少なくとも一方に通知され、インク吐出制御及び予備硬化光源16A、16B、16Cの制御等に利用される。
光源制御部128は、予備硬化光源16A、16B、16Cの点灯(ON)、消灯(OFF)並びに点灯位置、点灯時の発光量等を制御する予備硬化光源制御回路と、本硬化光源18の点灯(ON)、消灯(OFF)並びに点灯時の発光量を制御する本硬化光源制御回路と、を含んで構成される。光源制御部128は、プリント制御部120からの指令に従って各光源(16A、16B、16C)の発光を制御する。
次に、プリント制御部120中の濃度変化値算出部140及びドットデータ生成部142について説明する。
濃度変化値算出部140は、UV照射強度記憶部144、印字モード制御部146、色材濃度変化記憶部148を有しており、ドットデータ生成部142は、画像データ入力部150、インク量変換部152、CMYKインク量補正部154、CMYKドットデータ生成部156、アクチュエータ駆動波形生成部158を有している。
UV照射強度記憶部144は、UV硬化に必要なUV照射強度と時間との関係を予め実験等で特定し記憶するものである。
印字モード制御部146は、低速印字モード、高速印字モード等の各印字モードに対応した記録媒体搬送速度を設定し、UV照射距離(被記録媒体の搬送路上で、UV照射される領域の搬送距離)からUV照射時間を演算し、記録媒体搬送速度に応じて、UV照射強度記憶部144からUV照射強度を設定するものである。
色材濃度変化記憶部148は、UV照射強度記憶部144で記憶されたUV照射強度及び時間との照射条件にて、予め色材の濃度変化値を実験等により測定し、記憶するものである。
また、画像データ入力部150は、画像バッファメモリ122より画像データを取り込むものである。インク量変換部152は、RGBデータからCMYKデータへデータ変換する際のインク量の変換を行うものであり、このとき、CMYKインク量補正部154によりCMYKインク打滴量が補正される。
CMYKインク量補正部154は、色材濃度変化記憶部148からUV照射による色材の濃度変化後の濃度値を読み出し、所定の画像濃度に近づくようにCMYKインク打滴量を補正する。例えば、高速印字モード時において、UV照射により色材濃度が低速印字モードと比べて相対的に低下した場合は、インク量を増加する補正を行う。
CMYKドットデータ生成部156は、いわゆるデジタル・ハーフトーニング処理を行い、CMYKドットデータを生成するものである。
アクチュエータ駆動波形生成部158は、CMYKドットデータ生成部156で生成されたドットデータから実際にアクチュエータを駆動する波形を生成するものであり、この駆動波形がヘッドドライバ124に送られてヘッド12が駆動され、インクが吐出される。
次に、本実施形態の画像形成装置10で用いられる処理液及びインクについて説明する。
本実施形態に示す画像形成装置10においては、重合開始剤、拡散防止剤、及び、高沸点溶媒を含有する処理液と、重合性化合物、及び、色材を含有する各色インクから構成されるインクセットが用いられる。重合性化合物とは、後述する重合開始剤から発生するラジカルなどの開始種により、重合反応を生起し、硬化する機能を有する化合物を指す。
少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であることが好ましく、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、より好ましくは2個以上有する多官能化合物から選ばれることが好ましい。かかる化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、これらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物なら
びにそれらの共重合体などの化学的形態を持つものを包含する。
重合性化合物は、分子内に、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、ビニル基、内部二重結合性基(マレイン酸など)などの重合性基を有することが好ましく、なかでも、アクリロイル基、メタクリロイル基を有する化合物が、低エネルギーで硬化反応を生起させることができるので好ましい。重合性化合物は1つの液体中において、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。着色剤を含む第2の液体に含有させる重合性化合物の含有率としては、第2の液体中に50〜99質量%の範囲が好ましく、70〜99質量%の範囲がより好ましく、80〜99質量%の範囲がさらに好ましい。
重合開始剤とは、光、熱、或いはその両方のエネルギーによりラジカルなどの開始種を発生し、前記重合性化合物の重合を開始、促進させる化合物を指し、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを選択して使用することができる。
そのようなラジカル発生剤としては、有機ハロゲン化化合物、カルボニル化合物、有機過酸化化合物、アゾ系重合開始剤、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン酸化合物、オニウム塩化合物等が挙げられる。
本実施形態で用いられるインクセットにおいては、用いる複数種の液体の内、少なくともいずれかに、重合性化合物を硬化させる重合開始剤を含有する。
重合開始剤の含有率は、経時安定性と硬化性、硬化速度との観点から、インクセットに使用した全重合性化合物に対し、0.5〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、3〜10質量%が更に好ましい。重合開始剤は、1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、本発明の効果を損なわない限りにおいて、感度向上の目的で公知の増感剤と併用することもできる。
本発明に用いられる着色剤には特に制限はなく、インクの使用目的に適合する色相、色濃度を達成できるものであれば、公知の水溶性染料、油溶性染料及び顔料から適宜選択して用いることができる。なかでも、本発明のインクジェット記録用インクを構成する液体は、非水溶性の液体であって水性溶媒を含有しないことがインク打滴安定性及び速乾性の観点から好ましく、そのような観点からは、非水溶性の液体に均一に分散、溶解しやすい油溶性染料や顔料を用いることが好ましい。
本実施形態に使用可能な油溶性染料には特に制限はなく、任意のものを使用することができる。着色剤として油溶性染料を用いる場合の染料の含有量は、固形分換算で0.05〜20質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜15質量%が更に好ましく、0.2〜6質量%が特に好ましい。着色剤として顔料を用いる態様もまた、複数種の液体の混合時に凝集が生じやすいという観点から好ましい。
本実施形態において使用される顔料としては、有機顔料、無機顔料のいずれも使用できるが、黒色顔料としては、カーボンブラック顔料等が好ましく挙げられる。また、一般には黒色、及び、シアン、マゼンタ、イエローの3原色の顔料が用いられるが、その他の色相、例えば、赤、緑、青、茶、白等の色相を有する顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料なども目的に応じて用いることができる。
また、シリカ、アルミナ、樹脂などの粒子を芯材とし、表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等も顔料として使用
することができる。
さらに、樹脂被覆された顔料を使用することもできる。これは、マイクロカプセル顔料と呼ばれ、大日本インキ化学工業社製、東洋インキ社製などから市販品としても入手可能である。
本実施形態における液体中に含まれる顔料粒子の体積平均粒子径は、光学濃度と保存安定性とのバランスといった観点からは、30〜250nmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは50〜200nmである。ここで、顔料粒子の体積平均粒子径は、例えば、LB−500(HORIBA(株)製)などの測定装置により測定することができる。
着色剤として顔料を用いる場合の含有量は、光学濃度と噴射安定性の観点から、第2の液体中において、固形分換算で0.1質量%〜20質量%の範囲であることが好ましく、1質量%〜10質量%の範囲であることがより好ましい。着色剤は1種のみならず、2種以上を混合して使用してもよい。また、液体毎に異なった着色剤を用いても、同じであってもよい。
拡散防止剤とは、本発明において、記録媒体に付与された第1の液体上に打滴された着色剤を有する第2の液体の拡散や滲みを防止する目的で、第1の液体中に含有される物質を指す。
上記拡散防止剤としては、アミノ基を有する重合体、オニウム基を有する重合体、含窒素ヘテロ環を有する重合体、及び金属化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する。
上記重合体等は、単一種を使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。「複数種」とは、例えば、アミノ基を有する重合体には属するが異なる構造の重合体の場合や、アミノ基を有する重合体とオニウム基を有する重合体の関係のように異なる属種である場合を含む。また、1つの分子中に、アミノ基、オニウム基、含窒素ヘテロ環、及び金属化合物を組み合わせて併存させても良い。
本実施形態における高沸点有機溶媒とは25℃での粘度が100mPa・s以下又は60℃での粘度が30mPa・s以下であり、且つ沸点が100℃よりも高い有機溶媒を示す。
ここで、用いられる「粘度」は、東機産業(株)社製のRE80型粘度計を用いて求めた粘度をさす。RE80型粘度計は、E型に相当する円錐ロータ/平板方式粘度計であり、ロータコードNo.1番のロータを用い、10rpmの回転数にて測定を行う。但し、60mPa・sより高粘なものについては、必要により回転数を5rpm、2.5rpm、1rpm、0.5rpm等に変化させて測定を行う。
また、「水の溶解度」とは、25℃における高沸点有機溶媒中の水の飽和濃度であり、25℃での高沸点有機溶媒100gに溶解できる水の質量(g)を意味する。
上記高沸点有機溶媒の使用量としては、使用する着色剤に対し、塗設量換算で5〜2000質量%が好ましく、10〜1000質量%がより好ましい。
本実施形態においては、複数種の液体の保存中における好ましくない重合を抑制する目的で、貯蔵安定剤を添加することができる。貯蔵安定剤は、重合性化合物と同じ液体に共
存させて用いることが好ましく、また、該液体或いは共存する他の成分に可溶性のものを用いることが好ましい。
貯蔵安定剤としては、4級アンモニウム塩、ヒドロキシアミン類、環状アミド類、ニトリル類、置換尿素類、複素環化合物、有機酸、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノエーテル類、有機ホスフィン類、銅化合物などが挙げられる。
貯蔵安定剤の添加量は、用いる重合開始剤の活性や重合性化合物の重合性、貯蔵安定剤の種類に基づいて適宜調整するのが好ましいが、保存安定性と液体混合時のインクの硬化性とのバランスといった観点からは、液体中における固形分換算で0.005〜1質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%がより好ましく、0.01〜0.2質量%がさらに好ましい。
本実施形態の画像形成装置10においては、第1の液体の記録媒体上への付与手段として、インクジェットノズルでの噴出によるもののほかに、塗布等、他の手段を用いてもよい。
上記塗布に用いる装置としては特に制限はなく、公知の塗布装置を目的に応じて適宜選択することができる。例えば、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロットコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、押出コーター等が挙げられる。
本実施形態において重合性化合物の重合を進行させるための露光光源としては、紫外線、可視光線などを使用することができる。また、光以外の放射線、例えば、α線、γ線、X線、電子線などてエネルギー付与を行うこともできるが、これらのうち、紫外線、可視光線を用いることがコスト及び安全性の点から好ましく、紫外線を用いることが更に好ましい。硬化反応に必要なエネルギー量は、重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、一般的には、1〜500mJ/cm2程度である。
以下、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態では、UVインクを用い、紫外線(UV)を照射してUVインクを硬化させるようにしているが、UVインクが硬化するために必要なUV照射エネルギーQは、UV照射強度Eと、UV照射時間tとの積で決まる。すなわち、Q=E×t表される。
このとき、UV照射強度Eと、UV照射時間tとの積、E×tとしてのUV照射エネルギーQが同じであっても、UV照射強度E及びUV照射時間tの違い(UV照射条件の違い)によって、UVインクの硬化反応あるいはUVインク中の色材の褪色反応が異なるという現象が発生する。そこで、まずこの現象について説明することとする。
記録紙を低速で搬送して高画質の画像記録を行うことを目的とする低速印字モードと、記録紙を高速で搬送して画像記録のスピードアップを図る高速印字モードとでは、記録媒体上に打滴されたインクドットを硬化させるためのUV露光照射条件(UV照射条件)が異なっている。
すなわち、低速印字モードにおけるUV照射エネルギー、UV照射強度、UV照射時間をそれぞれQa、Ea、taとすると、Qa=Ea×taと表される。また、高速印字モードにおけるUV照射エネルギー、UV照射強度、UV照射時間をそれぞれQb、Eb、tbとすると、Qb=Eb×tbと表される。
UVインクが硬化するために必要なUV照射エルギーは、低速印字モードでも高速印字モードでも等しく設定される。すなわち、前述した記号を用いれば、Qa=Qbである。このとき、UV照射領域の搬送方向長さは、通常の装置では固有の値であり、低速印字モードより高速印字モードの方が記録紙の搬送速度が速いため、UV照射時間は低速印字モードより高速印字モードの方が短く、ta>tbとなる。従って、UV照射エネルギーを等しく、Qa=Qbとするためには、照射時間の短い高速印字モードのUV照射強度を強く、Ea<Ebとする必要がある。
しかし、低速印字モードの場合とUV照射エネルギーが等しく、Qa=Qbであっても、高速印字モードの場合には、短時間で高照度(高強度)のUV光を照射することとなり、却ってUVインクの硬化反応が十分でないという現象が発生する。
そこで、このような高速印字モードの場合には、UV照射強度EbまたはUV照射時間tbを大きく設定することによって、UVインクの硬化反応を確実に実現可能とする。
いま、記録紙の搬送速度は固定されていて、UV照射時間tbは一定とすれば、UV照射強度Ebをより大きな値Eb’に設定し、Qbより大きなUV照射エネルギーQb’=Eb’×tbでUVインクの硬化反応を確実にする。
結局この場合、最終的には、
低速印字モード:Qa=Ea×ta
高速印字モード:Qb’=Eb’×tb
なる条件でUV照射する。
また、以上を表にまとめると図14Aのようになる。
すなわち、図14Aに示すように、低速印字モードの場合には、UV照射強度Eaがそれ程強くないので、硬化反応が不十分となるような現象は発生せず、UV照射エネルギーはQa=Ea×taと設定される。
これに対して、高速印字モードの場合には、UV照射強度Ebはそれなりに強い照射強度(Ea×ta/tb)で設定されているが照射時間が短いために硬化反応が追いつかず、硬化反応が不十分となる現象が発生することがある。このような現象が発生しない場合には、UV照射エネルギーはQb=Eb×tb(ここでQb=Qaである。)でよい。しかし、このような現象が発生する場合には、UV照射強度Ebをより強くしてEb’とし、UV照射エネルギーをQb’=Eb’×tb(Qb’>Qb=Qa)のようにより高く設定して、UV硬化反応を確実なものとするようにする。
また、一方UVインク中に含まれる色材は、UV照射を受けることで色材の濃度が変化する。この濃度の変化の度合いは、低速印字モードや低速印字モードと高速印字モードの中間の中速印字モードにおいては、UV照射エネルギー量が等しければ一定となるが、高速印字モードにおいて前述したようなUV照射強度はそれなりに強い照射強度(Ea×ta/tb)で設定されているが照射時間が短いためにインクの褪色反応が追いつかずUV硬化反応が不十分となる現象と同様の現象(褪色反応が進まない)が発生することがある。高速印字モードにおいて、このような現象が発生した場合には、低速印字モードと比較して、UV照射条件の違いによって、UV照射後の色材の濃度値が異なる場合が多い。
図14Bで説明する。ここでは、UV高照度により硬化不十分となる現象が発生しない場合(Qa=Qb)を前提とする。高速印字モードでは、UV照射強度はそれなりに強く設定されているが照射時間が短いために、インクのUV照射による褪色反応が追いつかず、その結果として、高速印字モードの褪色変化量は低速印字モードの褪色変化量に較べて相対的に小さくなり色材濃度が相対的に高くなる。
UV照射条件が、UVインクの硬化反応あるいは色材濃度変化(褪色)に起因する反応に影響する場合、色材の濃度変化後の最終濃度の高低の関係が変わってくる。この関係を図15に示す。
図15に示すように、高速印字モードにおいて、まずケース1として、UV高照度によ
り硬化不十分となる現象が発生する場合には、インクを硬化させるために強度Eを増大させることが必要である。このとき、色材濃度変化に起因する反応において、UV照射強度が増大されているため、色材の劣化が大きく、色材最終濃度は後述するケース2と比較して相対的に低下する。
また、高速印字モードにおけるケース2として、UV高照度により硬化不十分となる現象が発生しない場合には、UV照射強度の増大は必要ない。このとき、色材濃度変化に起因する反応において、UV照射強度は増大されていないため、色材の劣化は少なく、色材最終濃度はケース1と比較して相対的に増加する。
このように、各色の色材の硬化反応の特性の違いに応じてUV照射条件が異なるので、色材最終濃度が変化する。
本実施形態においては、高画質の画像記録を目的とした低速印字モード優先で色材を設計することが好ましい。
すなわち、低速印字モードにおけるUV照射による色材の濃度変化を予め想定して、色材の素材を設計し、製造するようにする。この場合、低速印字モードでは、UV高照度により硬化不十分となる現象が発生しないので、低照射強度の条件でUV照射されるためUV照射後に所定の色材の色濃度が得られ、補正処理なしで高画質の画像を得ることができる。
一方、高速印字モードでは、UV照射強度を増大して照射時間を短くするので褪色反応が追いつかず、低速印字モードと比較すると色材の濃度が相対的に高くなる。そのため本実施形態では、高速印字モードにおける色材の濃度変化(低速印字モードでの濃度変化の差分)を予め考慮して、CMYKのインク量データに補正処理を行うことで、所定の階調濃度の画像を得るようにする。
高速印字モードにおけるUV照射によって色材の濃度が所定値より低くなる場合、打滴インク量の補正を行っても最大濃度が得られない場合も起こり得るが、打滴インク量の補正によりある程度まで改善することは可能である。特に、高生産性を優先する高速印字モードにおいては、画像濃度が所定値と厳密に一致していなくても許容範囲以内であれば特に有効である。これに対し、高画質を重視する低速印字モードでは、色材濃度が所定値になる方を優先する。
また、記録媒体の種類によって、UVインクが硬化する前にUVインクが記録媒体内部に浸透して滲みが発生する場合がある。この場合、印字モード(高速印字モード、低速印字モード)とは独立して、UVインク着弾直後の早期段階で着弾インクをUV硬化させて記録媒体内への浸透量を低減する必要がある。
一方、必要以上のUV照射強度でUV照射すると、ノズル内のUVインクがUV光の回り込みにより硬化して目詰まりするという問題がある。従って、記録媒体に応じた必要最小限のUV照射強度を設定する。この場合においてもUV照射強度が異なる条件で種々の記録媒体に対してUV照射されるので、UV高照度により硬化不十分となる現象の発生に対応して色材の濃度変化に応じて打滴インク量の補正を行う。
また、本実施形態のように、着弾干渉を防止するための半硬化手段と最終的な定着を行う本硬化手段の2工程の硬化手段を有する画像形成装置の場合、この2工程の硬化により最終的な色材の濃度変化に対して、本発明を適用することができる。
以下、本実施形態における画像形成方法の、特にUV照射条件の違いによって生じる色材の濃度変化を階調補正する制御について図16のフローチャートに沿って説明する。
まず図16のステップS100において、UV硬化に必要なUV照射強度(E1、E2
、・・・)と時間(t1、t2、・・・)との関係を予め実験等で特定し、UV照射強度記憶部144に記憶する。なお、ここで各UV照射強度EiとUV照射時間tiとの積は、それぞれ異なっている場合が多い。
次に、ステップS110において、印字モードを設定する。すなわち、印字モード制御部146において、各印字モードに応じた記録媒体搬送速度及びUV照射時間を演算し設定する。例えば、高画質向けの低速印字モードの場合には記録媒体搬送速度をV1、高速印字モードの場合にはこれよりも速い搬送速度V2(V1<V2)を設定する。
また、UV照射距離L(搬送方向におけるUV照射エリアの距離)からUV照射時間を演算して設定する。例えば、低速印字モードの場合には、UV照射時間t1は、記録媒体搬送速度V1でUV照射距離Lを割って、t1=L/V1で求められる。また、高速印字モードの場合にも同様に、UV照射時間t2は、記録媒体搬送速度V2でUV照射距離Lを割って、t2=L/V2で求められる。
さらに、各印字モードにおける記録媒体搬送速度に応じて、UV照射強度記憶部144からUV照射強度を設定する。
次に、ステップS120において、UV照射強度記憶部144で記憶されたUV照射強度と時間による照射条件にて、予め色材の濃度変化値を実験等により測定し、図17Aに示すように、各印字モードに対応させて各色インク毎に色材の濃度変化後の濃度値を色材濃度変化記憶部148に記憶する。
次に、ステップS130において、画像データ入力部150から画像データを入力する。これは例えば画像バッファメモリ122に格納されている画像データを引っ張ってくればよい。
次に、ステップS140において、インク量変換部152において、入力されたRGB画像データをCMYKデータに変換する。
一方、ステップS150において、CMYKインク量補正部154において、色材濃度変化記憶部148からUV照射による色材の濃度変化後の濃度値を読み出し、所定の画像濃度に近づくようにCMYKインク打滴量を補正する。例えば、高速印字モード時でUV照射により色材濃度が低速印字モードと比べて相対的に低下した場合は、インク量を増加するように補正を行うようにする。
なお、この打滴インク量の補正処理は、高速で画像記録を行う高速印字モードと、高画質画像を得るための低速印字モードの双方に対して行うようにしてもよいし、低速印字モードにおいては補正処理は行わず、UV高照度下において色材の濃度が変化する現象が発生する高速印字モードにおいてのみ補正処理を行うようにしてもよい。
また、メディア検出部126によって検出された記録紙20の種類に応じたUV照射条件に対応して補正処理を行うようにしてもよい。このとき、記録紙(被記録媒体)20の種類と印字モードとを組み合わせてUV照射条件を決定し、これに応じて補正処理を行うようにしてもよい。これによりきめ細かな条件設定及び補正処理が可能となる。
次に、ステップS160において、CMYKドットデータ生成部156において、デジタル・ハーフトーン処理を行い、ドットデータを生成する。
最後に、ステップS170において、アクチュエータ駆動波形生成部158において、印字ヘッド50の各アクチュエータ58を駆動するための駆動波形を生成する。生成され
た駆動波形は、ヘッドドライバ124に送られ、各印字ヘッド50(12Y、12C、12M、12K)のアクチュエータ58を駆動して、各色のインクを吐出して画像を形成する。
このように、本実施形態によれば、UV照射条件が異なることによって色材の濃度が変化しても、その濃度変化を予め考慮してCMYKのインク量データに補正処理を行うことで、所定の階調の画像を得ることが可能となる。
図17Aでは、説明を簡単にするためにUV光源が1個の例で説明したが、図1のように各色インク毎の下流側に予備硬化光源を持ち、最下流側に本硬化光源を有するような複数のUV光源がある場合の説明をする。
図1のようにUV照射光源が複数ある場合、Kドットは4回、Mドットは3回、Cドットは2回、Yドットは1回、UV照射を受けることになる。図17Bは、高速印字モードと低速印字モードにおける各UV照射条件と色材の最終濃度を記憶するテーブルの一例である。ここで、図17Bでは全UV光源でのUV照射条件が記載されているが、ドットの色毎にUV照射される回数(条件)は異なっている。図17Bでは、高速印字モード1種類と低速印字モード1種類の計2種類の例であるが、例えば高速印字モードの中でも記録媒体等の種類に応じて複数のUV照射条件を設定し、UV照射条件に対応する色材の最終濃度を記憶させても良い。
なお、上で述べた実施形態では、UVインクを例にとって説明したが、本発明はUVインクには限定されず、一般の放射線硬化型インクに対しても適用可能である。
以上、本発明の画像形成装置及び画像形成方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
10…画像形成装置、12K、12C、12M、12Y…ヘッド、12S…処理液吐出ヘッド、14…インク貯蔵/装填部、16、16A、16B、16C…予備硬化光源、18…本硬化光源、20…記録紙、22…給紙部、26…吸着ベルト搬送部、32…マガジン、50…ヘッド、51…ノズル、52…圧力室、58…アクチュエータ、70…遮光囲い、72…紫外線LED素子、74…レンズ系、76…開口部、84…シリンドリカルレンズ、120…プリント制御部、122…画像バッファメモリ、124…ヘッドドライバ、126…メディア検出部、140…濃度変化値算出部、142…ドットデータ生成部、144…UV照射強度記憶部、146…印字モード制御部、148…色材濃度変化記憶部、150…画像データ入力部、152…インク量変換部、154…CMYKインク量補正部、156…CMYKドットデータ生成部、158…アクチュエータ駆動波形生成部