JP5092901B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents

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Description

本発明はインクジェット記録装置に係わり、特には光を照射する半硬化光源を備えたシングルパス方式のインクジェット記録装置であって、光硬化反応を使用して多色印刷することが可能なインクジェット記録装置に関する。
近年、インクにより紙や樹脂フィルム、布帛等の記録媒体に画像を形成する装置として、インクをインクジェットヘッドのノズルから記録媒体に吐出し、記録媒体に着弾したインクに光照射手段から光を照射して硬化させることで画像を定着させる光照射型のインクジェット記録装置が多く用いられている。インクジェット記録装置は、インク吸収性の乏しい記録媒体に対しても画像形成することが可能である点に特徴があり、インクとしては、紫外線照射により速やかに硬化する紫外線硬化型のインクが多く使用されている。
インクジェット記録装置では、インクが流動性を有するため、記録媒体に着弾したインクが紫外線照射により硬化・定着されるまでの間に、インクのドット径が拡大し、ドット間の滲みが生じ、あるいは記録媒体にインクが浸透して、画質が変化する。インク着弾から時間が経つとこのようなドット径拡大や滲み等の問題が顕著となるため、インク射出から光照射までの時間は極力短くすることが好ましい。一般的な手法では、インクジェットヘッドのごく近傍に光源を配置することがなされている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1では、色別のページ幅のフルラインヘッド間に、インク液滴を半硬化させる程度の比較的低エネルギーの紫外線照射を行う予備硬化光源を設ける一方、最終色のインクジェットヘッドの後段に、インク液滴を下流側工程のハンドリングによって画像劣化しない程度に硬化(本硬化)させるに十分なエネルギーの紫外線照射を行う本硬化光源を設けたシングルパス印刷用のプリンタが開示されている。
特開2005−280346号公報
しかしながら、前述のようにインクジェットヘッドのノズルと光源が接近している場合、光源から照射された紫外線が記録媒体で散乱されてノズルに届き、ノズル付近のインクが重合反応を開始して増粘または硬化してしまうことがある。
より正確に言えば、光源から照射され記録媒体に入射した紫外線の散乱光は、通常、種々の出射角度を有する反射光を生成する完全拡散反射と、正反射光を中心とした散乱エネルギー分布を生成する近正反射とが合成された混合散乱となる。そのため、通常、紫外線の散乱光は、入射光線に対する正反射方向に散乱エネルギーの極大を持ち、正反射方向から離れる角度が大きいほど散乱エネルギーは小さくなる関係にある。
そのため、インクジェットヘッドのノズルと光源が接近している場合、主に、光源から四方に紫外線が照射されるが、そのうち直接インクジェットヘッド側に向かう紫外線や反射板等で反射されてインクジェットヘッド側に向かう紫外線が、記録媒体により散乱されて、インクジェットヘッドのノズルに到達する。
前記のように、紫外線がインクジェットヘッドのノズルに到達してノズル付近のインクが重合反応を生じてインクの増粘や硬化が生じると、インクの射出不良が起こり易くなり、インクの着弾精度が低下したり、射出できなかったりするため高精細な画像が形成し難くなるという問題があった。
また、従来、インクの射出不良が発生した場合には、圧電素子等を駆動して強制的にインクを吐出(パージ)したり、インクジェットヘッドをキャップで密閉して、気泡やゴミ等を含んだインクをポンプで吸引したりしているが、その間、画像記録を中断しなければならない。
特に、ページ幅のフルラインヘッドを用いたシングルパス印刷用のプリンタで連続印刷を行う場合に、上のような従来技術を用いたのでは、気泡を除去する際にはノズルをキャップしてポンプで吸引するような印刷を中断する動作を伴うため、著しく生産性を低下させるという問題があった。
また、紫外線光源をオンさせた状態で連続印刷を行う際には、フルラインヘッドのノズルが、長時間の間、記録媒体からの反射光にさらされる傾向があり、上記問題解決は一層重要になる。
そこで、本発明の課題は、シングルパス方式で多色印刷する場合であっても、インクジェットヘッド近傍に配置された光源からインクジェットヘッドのノズルが配置された面(以下、ノズル面という)に到達する光量を極力低減することで、長期にわたってインクを安定射出でき、ドット形状の優れた高画質の画像を形成し得るインクジェット記録装置を提供することである。
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
1.記録媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、
それぞれ異なる色のカチオン重合系の紫外線硬化型インクを前記記録媒体に吐出する複数のフルライン型のインクジェットヘッドを前記搬送方向に配列してなり、前記複数のインクジェットヘッドのうちの黒インクを吐出する黒ヘッドが前記搬送方向の最下流に配置されたヘッド部と、
各インクジェットヘッド間に配置され、記録媒体に吐出されたインクを半硬化させる光を照射する半硬化光源と、
前記搬送方向の最下流に配置されている前記黒ヘッドの下流に配置され、記録媒体に吐出されたインクを完全硬化させる光を照射する完全硬化光源と
前記インクジェットヘッドと前記半硬化光源との間に配置され、前記半硬化光源から照射された光を捕捉する第1の光トラップと、
前記最下流に配置されている前記黒ヘッドと前記完全硬化光源との間に配置され、前記完全硬化光源から照射された光を捕捉する第2の光トラップと、
を備え、
前記半硬化光源の光量は、前記完全硬化光源の光量よりも少なく、
前記第1の光トラップ及び前記第2の光トラップの前記搬送方向の長さが10mm以上300mm以下であり、且つ、前記第2の光トラップの前記搬送方向の長さは、前記第1の光トラップの前記搬送方向の長さよりも長いことを特徴とするインクジェット記録装置。
.前記記録媒体の搬送速度が300mm/sec〜1500mm/secであることを特徴とする前記1に記載のインクジェット記録装置。
.前記記録媒体の記録面の白色度が60%以上95%以下であることを特徴とする前記1または2に記載のインクジェット記録装置。
本発明によれば、シングルパス方式で多色印刷する場合であっても、インクジェットヘッド近傍に配置された光源からインクジェットヘッドのノズルが配置された面(以下、ノズル面という)に到達する光量を極力低減することで、長期にわたってインクを安定射出でき、ドット形状の優れた高画質の画像を形成し得るインクジェット記録装置を提供できる。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、本欄の記載は請求項の技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、以下の本発明の実施の形態における断定的な説明はベストモードを示すものであって、本発明の用語の意義や技術的範囲を限定するものではない。
<インクジェット記録装置>
以下、添付図面を参照して、本発明に係るインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示したように、このインクジェット記録装置10は、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数のインクジェットヘッド(ヘッド部。以下、ヘッドという。)12K(黒)、12C(シアン)、12M(マゼンタ)、12Y(イエロー)と、各ヘッドに供給する紫外線硬化型インク(いわゆるUVインク)を貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、各ヘッドの間にそれぞれ配置された半硬化光源16A、16B、16Cと、各ヘッドと半硬化光源の間に配置された第1の光トラップ7A、7B、7C、最終ヘッド(イエローヘッド12Y)の下流に配置された完全硬化光源18と、最終ヘッドと完全硬化光源18の間に配置された第2の光トラップ7D、記録媒体20を供給する給紙部22と、記録媒体20のカールを除去するアンチカール処理部24と、各ヘッド12K、12C、12M、12Yのノズル面(インク吐出面)及び各半硬化光源16A〜16Dの光出射面に対向して配置され、記録媒体20の平面性を保持しながら記録媒体20を搬送する吸着ベルト搬送部26と、記録済みの記録媒体(プリント物)を外部に排紙する排紙部28とを備えている。
紫外線硬化型インクは、紫外線エネルギーの付与によって硬化(重合化)する成分(モノマー、オリゴマー、又は低分子量ホモポリマー、コポリマーなどの紫外線硬化性成分)と重合開始剤とを含むインクであり、紫外線を受光すると重合を開始し、重合の進行とともに増粘し、やがて硬化する性質を有する。
ここで、本実施形態で使用される紫外線硬化型インクとしては、重合性モノマーや光重合開始剤等としてラジカル重合化合物を含むラジカル重合系インクや、カチオン重合性化合物を含むカチオン重合系インク等が好ましく用いられる。ラジカル重合系インクは、インクに照射する紫外線の光量が一定のしきい値を超えないと重合反応が開始されないが、空気中の酸素によってラジカル重合反応が阻害され易いという特性がある。カチオン重合系インクは、ラジカル重合系インクと異なり、空気中の酸素により重合反応は阻害されないが、インクに紫外線が照射されると照射された紫外線の光量分だけ重合反応が進行するという特性がある。
インク貯蔵/装填部14は、各ヘッド12K、12C、12M、12Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンク14K、14C、14M、14Yを有し、各タンクは所要の管路30を介して各ヘッド12K、12C、12M、12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
図1において、給紙部22の一例として記録媒体がロール状態(連続用紙)のマガジン32が示されているが、紙幅や記録媒体の紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール状のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット状のものが積層装填されたカセットによって供給してもよい。
複数種類の記録媒体を利用可能な構成にした場合、記録媒体の種類等の識別情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類等の識別情報を自動的に判別し、記録媒体の種類等の識別情報に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部22から送り出される記録媒体20はマガジン32に装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、アンチカール処理部24においてマガジン32の巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム34で記録媒体20に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御することもできる。
ロール状で使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター38が設けられており、該カッター38によって記録媒体は所望のサイズにカットされる。カッター38は、記録媒体20の搬送路幅以上の長さを有する固定刃38Aと、該固定刃38Aに沿って移動する丸刃38Bとから構成される。
アンチカール処理後、カットされた記録媒体20は、吸着ベルト搬送部26へと送られる。吸着ベルト搬送部26は、ローラ41、42間に無端状のベルト43が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも各ヘッド12K、12C、12M、12Yのノズル面に対向する部分が平面をなすように構成されている。
ベルト43は、記録媒体20の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(図示省略)が形成されている。ローラ41、42間に掛け渡されたベルト43の内側には、吸着チャンバなどを設けてファンで吸引して負圧にすることによって記録媒体20がベルト43上に吸着保持されるようにしても良い。
ベルト43が巻かれているローラ41、42の少なくとも一方にモータ(図示省略)の動力が伝達されることにより、ベルト43は図1上で反時計回り方向に駆動され、ベルト43上に保持された記録媒体20は図1の矢印で示される搬送方向(副走査方向A)に沿って右から左へと搬送される。
各ヘッド12K、12C、12M、12Yは、当該インクジェット記録装置10が対象とする記録媒体20の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録媒体20の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている。
ヘッド12K、12C、12M、12Yは、記録媒体20の送り方向に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのヘッド12K、12C、12M、12Yが記録媒体20の搬送方向(副走査方向A)と略直交する方向(主走査方向B)に沿って延在するように配置される。ヘッド配列順序は、本発明の効果を損なわなければ、硬化感度やインクの透過率を鑑みて、必要に応じて並べてもよい。
吸着ベルト搬送部26により記録媒体20を搬送しつつ各ヘッド12K、12C、12M、12Yから各色のインクを吐出することにより記録媒体20上にカラー画像を形成し得る。
このように、シングルパス方式のインクジェット記録装置10は、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッドの黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)を色別に設ける構成によれば、記録媒体20の搬送方向について記録媒体20をヘッド12K、12C、12M、12Yに対して相対移動させる動作を1回行うという、シングルパスをするだけで、記録媒体20の全面に画像を記録することができる。
本例では、YMCKの標準色(4色)インクの組み合わせによる構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせは本実施形態には限定されず、色数が2種以上であれば良く、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能である。
各ヘッド間に配置されている半硬化光源16A〜16Cは、ヘッドと同様に記録媒体20の最大紙幅に対応する長さを有し、記録媒体20の搬送方向と略直交する方向に延在するように固定されている。
半硬化光源16A〜16Cは、低圧水銀ランプなどを用いて遮光囲い(図示せず)がされた複数の半硬化光源がライン状に並べられて配置されている。
遮光囲いされた半硬化光源の底部には光出射口となるスリット状の開口部(図示せず)などが形成される。各素子の発光量を制御することより、紫外線の照射エリアについて所望の照射範囲及び光量(強度)分布を実現することができる。
この際に、記録媒体20のサイズやヘッド12による打滴範囲及びインク量に応じて半硬化光源の発光位置及び発光量を適切に制御すると共にヘッド12への悪影響(ノズル内インクの硬化など)を極力抑制するようにして必要な発光を行うことができる。
なお、半硬化光源には、紫外線LED、LD(レーザダイオード)、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ブラックライト、熱陰極管、冷陰極管を用いる構成も可能である。ヘッド部の下流に配置されている完全硬化光源18と比べて発光波長領域の狭いLED素子、或いはLD素子が好適に用いられる。ただし、半硬化光源16A〜16Cや完全硬化光源18の中心波長や発光波長領域は使用されるインクの設計に応じて選択される。
本発明でいう完全硬化とは、形成した画像中の重合性化合物の反応率を測定し70%以上であれば構わず、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR、例えば、島津製作所社製のIR Prestinge−21、IRAffinity−1等)などで測定することもできる。逆に、70%未満であれば半硬化状態であると判定し、半硬化として好ましくは反応率が50%以下の条件である。また、形成されたカラー画像部が完全硬化している状態とは、完全硬化光源で硬化後、搬送ハンドリングにおいても、形成画像にインクこすれ等による画質劣化を起こさない程度に硬化されている状態をいう。
記録媒体20が上流のヘッドを通過して、次のヘッド下に入る前に、半硬化光源16A〜16Cから光を照射して、記録媒体20上のインクを半硬化状態にし、次段の異色ヘッドによる打滴を行うようになっている。
図1の例では、黒ヘッド12Kによる打滴を行い、半硬化光源16Aによる光照射を経て黒インクを半硬化させてから、シアンヘッド12Cによる打滴を行う。同様に、シアンヘッド12Cによる打滴後は、半硬化光源16Bによる光照射を経てマゼンタヘッド12Mによる打滴を行い、その後半硬化光源16Cによる光照射を経てイエローヘッド12Yによる打滴を行う。
記録媒体20の搬送方向に沿って上流側に存在するヘッドから吐出されたインクは紫外線の照射によって、半硬化して記録媒体20上のインクは半硬化状態を維持することが可能となる。
完全硬化光源18は、半硬化光源16A〜16Cよりも発光波長域が広く、照射光量が大きいメタルハライドランプや水銀ランプなどを用いる。この完全硬化光源18によってインクを完全に硬化させるに足る光照射が行われ、本定着が行われる。
こうして、完全硬化光源18による完全硬化処理(搬送ハンドリングにおいてもインクこすれ等による画質劣化を起こさない程度に硬化定着させる処理)を経て生成されたプリント物は排紙部28から排出される。なお、図1には示さないが、排紙部28には、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
次に、光トラップ7について説明する。
半硬化光源16と、各半硬化光源16に隣合うヘッド12との間には、第1の光トラップ7A、7B、7Cが配設されている。完全硬化光源18と、完全硬化光源18に隣合うヘッド12Yとの間には、第2の光トラップ7Dが配設されている。
以下、光トラップ7について図1及び図2を参照して詳細に説明する。
ここで、図2は、光トラップ7の形状を具体的に示した斜視図である。
図1及び図2に示すように、光トラップ7は、紫外線光源16,18から照射されヘッド12側に入射してくる紫外線を捕捉するためのものである。この光トラップ7は、主走査方向Bに沿って延在する長尺な部材とされており、その長さは少なくとも紫外線光源16,18の主走査方向Bに沿った長さと等しくなっている。光トラップ7の記録媒体搬送方向の長さは10mm以上300mm以下であり、10mm未満では光源からの光を十分にトラップしきれない。また、300mmより長いと印字部の全体長さが長くなり装置全体が大きくならざるを得ないという不具合が発生する。光トラップ7の記録媒体搬送方向の長さとは、光トラップにおける光が入射する、記録媒体に対向する面における記録媒体搬送方向の長さを意味する。
本実施形態において、光トラップ7は、記録媒体側に向かって開口(図2の斜線部分)するような容器状に形成され、この光が入射する、開口した端縁が記録媒体と略平行となるように配設されている。この開口部の記録媒体搬送方向の長さA1は10mm以上300mm以下である。本実施形態においては、長さA1は、主走査方向Bにおいて分布はなくほぼ等しく形成されている。長さA1が、主走査方向Bにおいて一様ではない場合、その最大値と最小値の両方が10mm以上300mm以下の範囲に入るように開口を形成する。
光トラップ7の形状は、光トラップ7の内部に紫外線が入射可能で、且つ入射してきた紫外線が光トラップ7の内面にて反射を繰り返すような形状であれば良い。具体的には、例えば図2(a)に示すような、主走査方向B(光トラップ7の長手方向)に直交する断面の形状が矩形形状であっても良いし、図2(b)に示すような、同方向に沿った断面の形状が三角形状であっても良い。また、断面形状は曲面であっても良い。また、一端が閉鎖した細長い導管のアレイを有するハニカム形状としても良い。導管のアレイの開口した側を記録媒体に対向させることにより、導管内に進入した光を確実にトラップできる。
特に、半硬化光源16は、各ヘッド12の間に配置されているため、図2(b)に示すような、三角形状が有効である。三角形状の両側面は傾斜状に設けられているため、1次反射紫外線は両側面で大部分が吸収されると共に、吸収されずに反射された3次反射紫外線は、両側のヘッド12のノズル面から遠ざかる方向(ヘッド12間の中央近傍)に反射される。これにより、両側のヘッド12のノズル面に紫外線が到達することを効果的に防止しあるいは紫外線が効率良くトラップされるため、本発明の効果が顕著に発揮される。
なお、図1においては、図2(a)に示す光トラップ7が図示されている。
また、光トラップ7の内面には、紫外線吸収率の高い材料から構成された紫外線吸収部が設けられている。ここで、紫外線吸収部を光トラップ7の内面に設ける方法としては、例えば、紫外線吸収率の高い材料を光トラップ7内面にアルマイト処理などの各種金属酸化物処理する方法や、メッキ処理・蒸着・スパッタリング処理する方法等が挙げられる。また、各種の紫外線吸収率の高い素材をコーティングすることによって、紫外線吸収部を光トラップ7の内面に設けても良い。
なお、紫外線吸収率の高い素材としては、例えば、カーボンブラック、超粒子化した酸化チタン・酸化亜鉛・酸化鉄(α−Fe、Fe)等の粉体などの無機物や、ベンゾトリアゾール系化合物、芳香族化合物などの有機物等が挙げられ、これらの材料により紫外線吸収部が構成されている。
また、光トラップ7は、紫外線光源16,18の配設位置によって規定される所定位置に配設されている。すなわち、紫外線光源は、少なくとも記録媒体の上面(記録面)にて反射した紫外線(以下、「一次反射紫外線」という。)がヘッド12のノズル面に直接入射しないように、ヘッド12に対して所定距離をもって配設されている。また、ヘッド12側に入射する一次反射紫外線の入射角及び入射位置は、紫外線光源の記録媒体に対する位置に基づき規定されている。従って、紫外線光源の記録媒体に対する位置に基づき、少なくともヘッド12側に入射する一次反射紫外線を確実に捕捉できるように、光トラップ7の配設位置が求められる。
次に、インクジェット記録装置10の画像記録の動作について説明する。
インクジェットプリンタ10による画像記録は、制御部の制御下において行われ、搬送部による搬送方向(副走査方向A)に沿った記録媒体の搬送がなされた状態で、記録媒体に対して、黒ヘッド12Kによる打滴を行い、半硬化光源16Aによる光照射を経て黒インクが半硬化状態となる。このとき、半硬化光源16Aから照射された紫外線のうち、隣接したヘッド12K、12C側に入射してくる、上述した一次反射紫外線等の紫外線は、光トラップ7Aの開口した部分から光トラップ7A内部へと入射していき、光トラップ7Aの内面の紫外線吸収部にて捕捉されることとなる。
ここで、紫外線吸収部が前記紫外線を吸収しきれない場合には、紫外線は前記紫外線吸収部にて所定の角度で反射する(以下「二次反射」という。)。このとき、紫外線は光トラップ7Aの内面に向けて二次反射するため、二次反射した紫外線の入射先となる紫外線吸収部の部分にて吸収されることとなる。また、光トラップ7Aの内面に入射した紫外線は、反射を繰り返すことにより次第に減衰していく。このようにして、光トラップ7Aはその内部に入射してくる紫外線を捕捉する。
次いで、シアンヘッド12Cによる打滴を行う。同様に、シアンヘッド12Cによる打滴後は、半硬化光源16Bによる光照射を経てシアンインクが半硬化状態となる。このとき、半硬化光源16Bから照射された紫外線のうち、隣接したヘッド12C、12M側に入射してくる、上述した一次反射紫外線等の紫外線は、光トラップ7Bの開口した部分から光トラップ7B内部へと入射していき、光トラップ7Bの内面の紫外線吸収部にて捕捉されることとなる。
次いで、マゼンタヘッド12Mによる打滴を行い、その後半硬化光源16Cによる光照射を経てマゼンタインクが半硬化状態となる。このとき、半硬化光源16Cから照射された紫外線のうち、隣接したヘッド12M、12Y側に入射してくる、上述した一次反射紫外線等の紫外線は、光トラップ7Cの開口した部分から光トラップ7C内部へと入射していき、光トラップ7Cの内面の紫外線吸収部にて捕捉されることとなる。
次いで、イエローヘッド12Yによる打滴を行う。完全硬化光源18による光照射を経て、記録媒体上のインクが完全硬化状態となる。このとき、完全硬化光源18から照射された紫外線のうち、隣接したヘッド12Y側に入射してくる、上述した一次反射紫外線等の紫外線は、光トラップ7Dの開口した部分から光トラップ7D内部へと入射していき、光トラップ7Dの内面の紫外線吸収部にて捕捉されることとなる。
以上は、4色のヘッドを駆動して記録する場合であるが、画像データによって全てのヘッドが駆動されるとは限らず、少なくとも2色のヘッドを駆動して記録する場合に、完全硬化光源18と、駆動するヘッドの間に配置された半硬化光源16とを点灯させて記録を行うことが好ましい。例えば、12Kと12Cのみで記録を行う場合は、完全硬化光源18と半硬化光源16Aのみを点灯させればよい。半硬化光源16Bは点灯させることが好ましいが、必ずしも点灯させなくても良い。また単色で記録する場合は、完全硬化光源18のみを点灯させるだけでもよいし、加えて、ヘッド12に隣接して下流側に配置された半硬化光源を点灯させても良い。例えば、12Kのみで記録する場合は、完全硬化光源18のみ、あるいは完全硬化光源18と半硬化光源16Aのみを点灯させればよい。
以上のように構成されたインクジェット記録装置10によれば、半硬化光源16が各ヘッド12の間にそれぞれ設けられているため、上流側のインクが半硬化した後に次の下流側のインクが吐出されているため、インク間の混じりが無くなり、色のにじみが発生せず、鮮明な画像を記録することができる。また、1つのヘッド12により吐出されたインクに対して半硬化を行うため、1つ当たりの半硬化光源16の紫外線の照射量が少なくても十分に半硬化作用を実現できる。また、最下流のヘッド12Yのみによる画像記録であれば、その隣接する完全硬化光源18の点灯だけで硬化を行うことができる。
尚、ヘッド12と紫外線光源16,18の距離を近づけると、記録媒体での反射によるノズル近傍の重合反応が心配されるが、本実施の形態のインクジェット記録装置10によれば、ヘッド12と紫外線光源16,18との間に設けられた光トラップ7により、紫外線光源から照射され、記録媒体上に吐出されたインクの硬化に関与しない紫外線のうち、ヘッド12側に入射してくる一次反射紫外線等の紫外線を捕捉するので、光トラップ7よりもヘッド12側に入射する紫外線量を低減させて、ヘッド12のノズル面に入射する紫外線量を低減できる。この場合において、光トラップ7の内面には、紫外線吸収部が設けられているので、光トラップ7の内部へと入射してきた紫外線を吸収することにより、紫外線を光トラップ7にて確実に捕捉することができる。
よって、ヘッド12のノズル面へ入射した紫外線と、ノズル面及びそのノズルのインクとの反応に基づく、前記インクの増粘や硬化を防止して、ノズルの吐出不良を生じ難くできる。
また、前述したように、カチオン重合系インクは、ラジカル重合系インクと異なり、インクに照射された照射された紫外線の光量分だけ重合反応が進行し、進行した反応は経時的に解消されることなくそのままインクに蓄積する。そのため、ヘッド12のノズル面に紫外線が到達すると、カチオン重合系インクでは弱い紫外線でもその分反応が進み、インクが増粘したり硬化したりする。しかし、本発明では、インクが、紫外線に対する感度が高く、また活性種である酸が有する光エネルギー蓄積性のあるカチオン硬化性のインクであっても、光トラップ7にて紫外線を確実に捕捉して、ヘッド12のノズル面に入射する紫外線量を低減することで、ノズル面及びそのノズルのカチオン硬化性のインクが増粘したり硬化したりすることを防止できる。
半硬化光源16の光量は、完全硬化光源18の光量よりも少ないことが好ましい。半硬化光源16に隣接するヘッド12への影響も少なく、ノズル近傍のインクの硬化を防止する効果が高めることができる。
さらに、完全硬化光源18の発光量が半硬化光源16の発光量よりも大きい場合であっても、完全硬化光源18と搬送方向の最下流に位置するヘッドの間に配置された第2の光トラップ7Dの搬送方向の長さが、各半硬化光源16と各ヘッド12の間に配置された第1の光トラップ7A、7B、7Cの搬送方向の長さよりも長くすることにより、発光量の多い完全硬化光源18から照射された紫外線のノズル面への入射量を確実に低減できる。
また、本実施形態では、最下流にイエローヘッド12Yを配置しているが、最下流に黒ヘッド12Kを配置することも好ましい。黒インクは他色のインクに比較して硬化感度が低いため、最下流に黒インクを吐出するヘッド12Kを配置することは、完全硬化光源18の発光量が半硬化光源16の発光量よりも大きい場合に、完全硬化光源18Kの紫外線による最下流のヘッドのノズルのインク増粘や硬化を低減する観点で特に有効である。
記録媒体の搬送速度は、300mm/sec〜1500mm/secが好ましい。搬送速度が1500mm/secを超えると、色混じりやサテライトが発生しドット形状の乱れが生じやすくなる。これは、搬送速度が1500mm/secを超えるほど速くなると記録媒体の搬送に伴う気流の影響が大きくなり、色混じりやサテライトが発生しやすくなるものと考えられる。
搬送速度が300mm/sec未満であると、1色目のドットの上に2色目のドットが乗らずにはじかれることによるドット形状の乱れが生じやすくなる。これは、搬送速度が300mm/sec未満と遅くなると、1色目のインクに照射される半硬化光源からの照射光量が多くなるので、1色目のインクの硬化が進行し、2色目のインクがはじかれやすくなるものと考えられる。
なお、上記実施の形態では、光トラップ7の内面に紫外線吸収部を備える構成を例示したが、これに限られるものではなく、前記紫外線吸収部を光トラップの内面に備えるか否かは任意である。すなわち、光トラップの内面に紫外線吸収部を備えない場合であっても、紫外線は光トラップ7の内部に入射した後、その内面にて反射を繰り返すことで次第に減衰していくためである。また、光トラップ7の内部へと入射してくる紫外線量や光トラップ7の形状によっても、光トラップ7の内面に紫外線吸収部を備えるか否かが決定されても良い。
《複数の光硬化性インク》
次に、本発明に係る光硬化性インクについて説明する。
本発明に係る複数の光硬化性インク(以下、単にインクともいう)は、色相の異なる2種以上のインクからなるインクセットを構成し、かつ少なくとも1種のインクが含有する光重合開始剤群の構成が、他のインクの光重合開始剤群の構成と異なることを特徴とする。
本発明に係るインクセットを構成するインクとしては、イエローインク、マゼンタインク及びシアンインクから選ばれる少なくとも2種であることが好ましく、更にはイエローインク、マゼンタインク、シアンインク及びブラックインクの4種を含むことが好ましい。また、必要に応じて、本発明に係るインクセットでは、淡色インク(例えば、ライトマゼンタインク、ライトシアンインク、ライトブラックインク等)や白色顔料を用いたホワイトインク等を加えた構成であっても良い。
本発明に係る各光硬化性インクは、主には、光重合性化合物(以下、単に重合性化合物ともいう)、光重合開始剤群の構成化合物及び色材から構成される。本発明でいう光重合開始剤群の構成とは、単一の光重合開始剤、複数種の光重合開始剤、光重合開始剤と増感剤との組み合わせ及び光重合開始剤と増感剤と開始助剤との組み合わせをいい、これらの光重合開始剤群の構成が、少なくとも2種のインク間で異なることを特徴とするものである。
〔光重合性化合物〕
本発明に係る光硬化性インクに適用可能な光重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物を挙げることができる。
(ラジカル重合性化合物)
本発明に適用可能なラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であればどの様なものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態をもつものが含まれる。ラジカル重合性化合物は1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。また、単官能化合物よりも官能基を2つ以上持つ多官能化合物の方がより好ましい。更に好ましくは多官能化合物を2種以上併用して用いることが、反応性、物性などの性能を制御する上で好ましい。
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エステル、ウレタン、アミドや無水物、アクリロニトリル、スチレン、さらに種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。具体的には、アクリロイルモルホリン、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセリンエポキシアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル誘導体、その他、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられ、さらに具体的には、山下晋三編,「架橋剤ハンドブック」、(1981年大成社);加藤清視編,「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」,79頁,(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著,「ポリエステル樹脂ハンドブック」,(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品もしくは業界で公知のラジカル重合性ないし架橋性のモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。上記ラジカル重合性化合物の添加量は好ましくは1〜97質量%であり、より好ましくは30〜95質量%である。
(カチオン重合性化合物)
本発明に適用可能なカチオン重合性化合物としては、例えば、カチオン重合により高分子化することができるエポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物等を挙げることができる。
本発明で用いることのできるエポキシ化合物としては、例えば、特開2001−220526号、特開2002−188025号、特開2002−317139号、特開2003−55449号、特開2003−73481号公報等に記載の公知のあらゆるエポキシ化合物を用いることができ、少なくとも1個のシクロヘキセンまたはシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましい。
本発明で用いることのできるオキセタン化合物としては、例えば、特開2001−220526号、同2001−310937号に紹介されているような公知のあらゆるオキセタン化合物を使用できる。
本発明で用いることのできるビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−o−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
上記重合性化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
また、インク色材による遮光効果による感度低下を防ぐ手段として、開始剤寿命の長いカチオン重合性モノマーと開始剤を組み合わせ、ラジカル・カチオンのハイブリッド型硬化インクとすることも可能である。
〔光重合開始剤群の構成〕
本発明にかかる光重合開始剤群を構成する添加剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、開始助剤、増感剤等が包含される。これらの光重合開始剤群のインク中への添加量はインク全体の1〜10質量部が必要となる。
本発明にかかる光重合開始剤群は公知の様々な化合物を使用することができるが、上記重合性化合物に溶解するものから選択する。
(光重合開始剤)
〈ラジカル重合開始剤〉
ラジカル重合開始剤としては、特公昭59−1281号、同61−9621号、及び特開昭60−60104号等の各公報記載のトリアジン誘導体、特開昭59−1504号及び同61−243807号等の各公報に記載の有機過酸化物、特公昭43−23684号、同44−6413号、同44−6413号及び同47−1604号等の各公報並びに米国特許第3,567,453号明細書に記載のジアゾニウム化合物、米国特許第2,848,328号、同2,852,379号及び同2,940,853号各明細書に記載の有機アジド化合物、特公昭36−22062号、同37−13109号、同38−18015号、同45−9610号等の各公報に記載のオルト−キノンジアジド類、特公昭55−39162号、特開昭59−14023号等の各公報及び「マクロモレキュルス(Macromolecules)、第10巻、第1307ページ(1977年)に記載の各種オニウム化合物、特開昭59−142205号公報に記載のアゾ化合物、特開平1−54440号公報、ヨーロッパ特許第109,851号、同126,712号等の各明細書、「ジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス」(J.Imag.Sci.)」、第30巻、第174ページ(1986年)に記載の金属アレン錯体、特開平4−213861号及び同4−255347号の各公報に記載の(オキソ)スルホニウム有機ホウ素錯体、特開昭61−151197号公報に記載のチタノセン類、「コーディネーション・ケミストリー・レビュー(Coordinantion Chemistry Review)」、第84巻、第85〜第277ページ(1988年)及び特開平2−182701号公報に記載のルテニウム等の遷移金属を含有する遷移金属錯体、特開平3−209477号公報に記載の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、四臭化炭素や特開昭59−107344号公報記載の有機ハロゲン化合物等が挙げられる。これらの重合開始剤はラジカル重合可能なエチレン不飽和結合を有する化合物100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲で含有されるのが好ましい。
〈カチオン重合開始剤〉
本発明に係る光硬化性インクにおいては、カチオン重合性化合物と共に、光重合開始剤としてカチオン重合開始剤を含有することが好ましい。
カチオン重合開始剤としては、具体的には光酸発生剤等を挙げることができ、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。本発明に好適な化合物の例を以下に挙げる。
第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム等の芳香族オニウム化合物のB(C 、PF 、AsF 、SbF 、CFSO 塩を挙げることができる。
本発明で用いることのできるオニウム化合物の具体的な例を以下に示す。
Figure 0005092901
第2に、スルホン酸を発生するスルホン化物を挙げることができ、その具体的な化合物を以下に例示する。
Figure 0005092901
第3に、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物も用いることができ、以下にその具体的な化合物を例示する。
Figure 0005092901
第4に、鉄アレン錯体を挙げることができる。
Figure 0005092901
(増感剤)
本発明に係る光硬化性インクにおいては、300nmよりも長波長に紫外線スペクトル吸収を有する増感剤を用いることが好ましく、例えば、置換基として水酸基、置換されていてもよいアラルキルオキシ基またはアルコキシ基を少なくとも1つ有する多環芳香族化合物、カルバゾール誘導体、チオキサントン誘導体等を挙げることができる。
本発明で用いることのできる多環芳香族化合物としては、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体が好ましい。置換基であるアルコキシ基としては、炭素数1〜18のものが好ましく、特に炭素数1〜8のものが好ましい。アラルキルオキシ基としては、炭素数7〜10のものが好ましく、特に炭素数7〜8のベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基が好ましい。
本発明に用いることのできるこれらの増感剤を例示すると、カルバゾール、N−エチルカルバゾール、N−ビニルカルバゾール、N−フェニルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、1−ナフトール、2−ナフトール、1−メトキシナフタレン、1−ステアリルオキシナフタレン、2−メトキシナフタレン、2−ドデシルオキシナフタレン、4−メトキシ−1−ナフトール、グリシジル−1−ナフチルエーテル、2−(2−ナフトキシ)エチルビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジメトキシナフタレン、1,1′−チオビス(2−ナフトール)、1,1′−ビ−2−ナフトール、1,5−ナフチルジグリシジルエーテル、2,7−ジ(2−ビニルオキシエチル)ナフチルエーテル、4−メトキシ−1−ナフトール、ESN−175(新日鉄化学社製のエポキシ樹脂)またはそのシリーズ、ナフトール誘導体とホルマリンとの縮合体等のナフタレン誘導体、9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9−メトキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジエトキシアントラセン、9−エトキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、9−イソプロポキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、9−ベンジルオキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、9−(α−メチルベンジルオキシ)−10−メチルアントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ジ(2−カルボキシエトキシ)アントラセン等のアントラセン誘導体、1,4−ジメトキシクリセン、1,4−ジエトキシクリセン、1,4−ジプロポキシクリセン、1,4−ジベンジルオキシクリセン、1,4−ジ−α−メチルベンジルオキシクリセン等のクリセン誘導体、9−ヒドロキシフェナントレン、9,10−ジメトキシフェナントレン、9,10−ジエトキシフェナントレン等のフェナントレン誘導体等を挙げることができる。これら誘導体の中でも、特に、炭素数1〜4のアルキル基を置換基として有していてもよい9,10−ジアルコキシアントラセン誘導体が好ましく、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基が好ましい。
また、チオキサントン誘導体としては、例えば、チオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン2−クロロチオキサントン等を挙げることができる。
(開始助剤)
開始助剤とは、光照射により、電子供与、電子吸引、熱の発生等により開始剤にエネルギーを供与して、開始剤のラジカルまたは酸の発生効率を向上させる増感色素として作用する物質であり、開始剤と組み合わせて適用される。
開始助剤としては、例えば、キサンテン、チオキサントン色素、ケトクマリン、チオキサンテン色素、シアニン、フタロシアニン、メロシアニン、ポルフィリン、スピロ化合物、フェロセン、フルオレン、フルギド、イミダゾール、ペリレン、フェナジン、フェノチアジン、ポリエン、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ポリメチンアクリジン、クマリン、ケトクマリン、キナクリドン、インジゴ、スチリル、ピリリウム化合物、ピロメテン化合物、ピラゾロトリアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、バルビツール酸誘導体、チオバルビツール酸誘導体等が適用できる。
また、開始助剤としては、上述の化合物の他、「高分子添加剤の開発技術」(シーエムシー出版、大勝靖一監修)等の文献で増感色素として作用することが周知になっている物質を適用することとしてもよい。なお、開始助剤は光重合開始剤の一部をなす構成要素とみなすこともできる。
これらの光開始剤に加え、光重合(硬化)反応を促進するため促進助剤を添加することもできる。これらの例として、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
ラジカル重合性組成物に適用されるラジカル重合開始剤と開始助剤との組み合わせの例としては、ラジカル重合開始剤である過酸エステルと開始助剤であるキサンテン、チオキサントン色素、ケトクマリン、チオピリリウム塩との組み合わせ、ラジカル重合開始剤であるジフェニルヨードニウム塩等のオニウム塩と開始助剤であるチオキサンテン色素との組み合わせ等が周知となっている。
また、ラジカル重合開始剤としてチタノセン類を適用する場合には、チタノセン類をレーザ又はLEDに対応して可視光線から近赤外線まで波長増感させる開始助剤として、例えばシアニン、フタロシアニン、メロシアニン、ポルフィリン、スピロ化合物、フェロセン、フルオレン、フルギド、イミダゾール、ペリレン、フェナジン、フェノチアジン、ポリエン、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ポリメチンアクリジン、クマリン、ケトクマリン、キナクリドン、インジゴ、スチリル、ピリリウム化合物、ピロメテン化合物、ピラゾロトリアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、バルビツール酸誘導体、チオバルビツール酸誘導体等が適用できる。
チタノセンと組み合わせて用いる開始助剤としては、更に欧州特許568,993号、米国特許4,508,811号、同5,227,227号、特開2001−125255号、特開平11−271969号等に記載の化合物も適用可能である。このようなチタノセン類のラジカル重合開始剤と開始助剤との組合せの具体例としては、特開2001−125255号、特開平11−271969号に記載のある組合せが挙げられる。
〔色材〕
本発明に係る光硬化性インクに用いる色材は、顔料あるいは染料を用いることができる。画像の耐候性の観点から、顔料を用いることが好ましい。
本発明で好ましく用いることのできる顔料を、以下に列挙する。
C.I.Pigment Yellow 1,2,3,12,13,14,16,17,73,74,75,81,83,87,93,95,97,98,109,114,120,128,129,138,150,151,154,180,185、
C.I.Pigment Red 5,7,12,22,38,48:1,48:2,48:4,49:1,53:1,57:1,63:1,101,112,122,123,144,146,168,184,185,202、
C.I.Pigment Violet 19,23、
C.I.Pigment Blue 1,2,3,15:1,15:2,15:3,15:4,18,22,27,29,60、
C.I.Pigment Green 7,36、
C.I.Pigment White 6,18,21、
C.I.Pigment Black 7。
上記顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。また、顔料の分散を行う際に、分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、高分子分散剤を用いることが好ましく、高分子分散剤としてはAvecia社のSolsperseシリーズや、味の素ファインテクノ社のPBシリーズが挙げられる。また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤および分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。分散媒体は、溶剤または重合性化合物を用いて行うが、本発明に用いる照射線硬化型インクでは、インク着弾直後に反応・硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。溶剤が硬化画像に残ってしまうと、耐溶剤性の劣化、残留する溶剤のVOCの問題が生じる。よって、分散媒体は溶剤では無く重合性化合物、その中でも最も粘度の低いモノマーを選択することが分散適性上好ましい。
顔料の分散は、顔料粒子の平均粒径を0.08〜0.2μmとすることが好ましく、最大粒径は0.3〜10μm、好ましくは0.3〜3μmとなるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を適宜設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性および硬化感度を維持することができる。
本発明に係るインクにおいては、色材濃度としては、インク全体の1質量%乃至30質量%であることが好ましい。白以外のインクにおいては1質量%乃至10質量%が更に好ましい。
〔その他の添加剤〕
本発明に係るインクには、保存性を高める観点から、重合禁止剤を200〜20000ppm添加することができる。本発明に係るインクは40〜80℃の範囲で加熱、低粘度化して射出することが好ましいので、熱重合によるヘッド詰まりを防ぐためにも重合禁止剤を入れることが好ましい。
この他に、必要に応じて界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を添加することができる。
25℃における粘度は、着弾後の液滴の定着のしやすさから25mPa・s以上500mPa・s以下が好ましく、吐出時の駆動電圧、安定性から吐出時の粘度は8mPa・s以上20mPa・s以下が好ましい。インクの自由表面張力は30mN/m以下が着弾後の後退が少なく線の輪郭の描画性が良く好ましい。
記録媒体との接触角は、液寄りによる着弾後の後退が少なく線の輪郭の描画性が良く、かつ記録媒体での定着しやすさから、前述のように10〜30°が好ましい。
本実施形態においては、紫外線を照射することにより硬化するインクを用いて画像記録を行うものとしたが、インクは必ずしもこれには限定されず、例えば、可視光線、赤外線等の電磁波といった紫外線以外の光を照射することにより硬化するインクであってもよい。この場合、インクには、紫外線以外の光で重合して硬化する重合性化合物と、紫外線以外の光で重合性化合物同士の重合反応を開始させる光開始剤とが適用される。また、紫外線以外の光で硬化する光硬化性のインクを用いる場合は、紫外線光源に代えて、その光を照射する光源を適用する。
また、インクジェットヘッド12のインク滴の吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)等を具体的な例として挙げることができる。本発明はいずれの吐出方式であってもよい。
《記録媒体》
本発明で用いることのできる記録媒体としては、通常の非コート紙、コート紙などの他、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性のプラスチックおよびそのフィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、延伸ポリスチレン(OPS)フィルム、延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、延伸ナイロン(ONy)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等を挙げることができる。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、ポリビニルアルコール(PVA)、ゴム類などが使用できる。また、金属類や、ガラス類にも適用可能である。これらの記録媒体の中でも、特に熱でシュリンク可能な、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルムへ画像を形成する場合に、本発明の構成は有効となる。これらの基材は、インクの硬化収縮、硬化反応時の発熱などにより、フィルムのカール、変形が生じやすいばかりでなく、インク膜が基材の収縮に追従し難い。
本発明において、包装の費用や生産コスト等の記録媒体のコスト、プリントの作成効率、各種のサイズのプリントに対応できる等の点で、長尺(ウェブ)な記録媒体を使用する方が有利である。
本発明においては、記録媒体の記録面の白色度が、JIS P−8123に規定されている測定方法で、60%以上、95%以下であることが好ましい。白色度が60%よりも低すぎると、画像に不要な影響を与える。逆に、白色度が95%を超えると、1次反射される紫外線の光量増加し、ノズルの詰まりに対して悪影響を与える。
記録媒体の表面を白色着色することによって、上記の範囲の白色度を達成することができる。
本発明において、記録媒体の表面を白色に着色する方法として、特に制限はなく、例えば、白色顔料を表面に塗設する方法、表面を粗面化して白色乱反射状態とする方法等を用いることができる。本発明においては、記録媒体表面の白色着色は、全面に施されることが好ましい。
本発明において用いることのできる白色顔料としては、主として二酸化チタン(アナターゼ型、およびルチル型)が使用されるが、この他には、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、カオリン、クレーおよびタルク等がいずれも使用できる。これらの白色顔料は、適当なバインダーとともに記録媒体表面に塗設されるが、前述の表面親水化や表面張力調整に適用される親水性物質をバインダーとすることが好ましい。
以下、本発明の効果を実施例に基づいて例証するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<インク>
なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
《分散液の調製》
〔分散液Aの調製〕
下記の各化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間加熱撹拌溶解した。
PB822(味の素ファインテクノ社製分散剤) 8部
テトラエチレングリコールジアクリレート(TEGDA、二官能) 72部
室温まで冷却した後、これにPigment Black 7(三菱化学社製#52)を20部加えて、直径0.3mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて4時間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去し、分散液Aを調製した。
〔分散液B〜Dの調製〕
上記分散液Aの調製において、顔料をPigment Black 7に代えて、それぞれPigment Blue 15:4(山陽色素社製Cyanine Blue 4044)、Pigment Red 122(大日精化社製CFR321)、Pigment Yellow 180(大日精化社製CFY313−2)を用いた以外は同様にして、分散液B、分散液C、分散液Dを調製した。
〔分散液Eの調製〕
下記の各化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間加熱撹拌溶解した。
PB821(味の素ファインテクノ社製分散剤) 9部
OXT221(東亞合成社製オキセタン化合物) 71部
室温まで冷却した後、これにPigment Black 7(三菱化学社製#52)を20部加えて、直径0.3mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて4時間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去し、分散液Eを調製した。
〔分散液F〜Hの調製〕
上記分散液Eの調製において、顔料をPigment Black 7に代えて、それぞれPigment Blue 15:4(山陽色素社製Cyanine Blue 4044)、Pigment Red 122(大日精化社製CFR321)、Pigment Yellow 180(大日精化社製CFY313−2)を用いた以外は同様にして、分散液F、分散液G、分散液Hを調製した。
《インクセットの調製》
〔インクセット1の調製〕
上記調製した分散液A〜D(ラジカル重合性化合物)を用いて、表1に記載の構成からなるインク1K、1C、1M及び1Yを調製し、これをインクセット1とした。
Figure 0005092901
〔インクセット2の調製〕
上記調製した分散液A〜D(ラジカル重合性化合物)を用いて、表2に記載の構成からなるインク2K、2C、2M及び2Yを調製し、これをインクセット2とした。
Figure 0005092901
〔インクセット3の調製〕
上記調製した分散液E〜H(カチオン重合性化合物)を用いて、表3に記載の構成からなるインク3K、3C、3M及び3Yを調製し、これをインクセット3とした。
Figure 0005092901
〔インクセット4の調製〕
上記調製した分散液E〜H(カチオン重合性化合物)を用いて、表4に記載の構成からなるインク4K、4C、4M及び4Yを調製し、これをインクセット4とした。
Figure 0005092901
なお、上記表1〜4に記載の数値は、質量部を表す。
また、表1〜4に略称で記載の化合物の詳細は、以下の通りである。
〈ラジカル重合性化合物〉
RA:ラウリルアクリレート
TEGDA:テトラエチレングリコールジアクリレート
A−400:NKエステル 新中村化学工業製
〈カチオン重合性化合物〉
2021P:セロキザイド2021P(脂環式エポキシ化合物、二官能、ダイセル化学工業社製)
OXT212:単官能オキセタン化合物、東亞合成社製
OXT221:二官能オキセタン化合物、東亞合成社製
〈変性シリコーンオイル〉
SDX−1843:変性シリコーンオイルSDX−1843、旭電化工業社製
〈光重合開始剤〉
I−907:イルガキュア907 チバ・ジャパン社製
UVI6992:トリアリールスルホニウム塩、UVI6992、ダウケミカル社製
〈増感剤〉
IPTX:イソプロピルチオキサントン
CPTX:1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン
AHC:3−アセチル−7−ヒドロキシクマリン
《画像形成》
〔画像1の形成〕
(インクジェット記録装置)
ピエゾ型のインクジェットヘッド12を備えた図1に記載の構成からなるライン方式のインクジェット記録装置に、上記調製した表1に記載のインクセット1(インク1K、1C、1M、1Y)を装填し、巾600mm、長さ20mの長尺の各記録媒体へ、下記の条件で吐出した。インク供給系は、インクタンク14、管路30、ピエゾ型のヘッド12からなり、インクタンクからヘッド部分まで断熱して50℃の加温を行った。なお、各インクの粘度にあわせてヘッド部を加温し、720×720dpi(dpiとは、2.54当たりのドットの数を表す。)の解像度で吐出できるよう駆動して、上記各インクを連続吐出して、各2次色のドット画像を印字した。また、記録材料は面ヒーター及び冷却装置により40℃になるように調整した。
インク吐出量は、最小液滴量を4pl、最大液適量80plでそれぞれ印字を行った。また、インクジェット画像の形成は、気温23℃湿度30%で行った。
半硬化光源16A、16B、16Cは、LEDZero 395(INTEGRATION社製、ピーク波長:395nm、照度(光量):1〜2.5W/cm)を使用し、完全硬化光源18は、日亜化学社製(特注品)のピーク波長:365nm、照度(光量):100mW/cmのLEDを使用した。
光トラップは、第1の光トラップ7A、7B、7Cが図2(b)の形状とし、記録媒体の搬送方向の長さA1を40mmとし、第2の光トラップ7Dが図2(a)の形状とし、記録媒体の搬送方向の長さA1を80mmとした。
記録媒体は、白色度が80%のものを使用し、搬送速度を310mm/secとした。
〔画像2の形成〕
上記画像1の形成において、インクセット1に代えて、インクセット2を用いた以外は同様にして、画像2を形成した。
〔画像3〜4の形成〕
上記画像1の形成において、インクセット1に代えて、それぞれインクセット3、4を用い、搬送速度を400mm/secとした以外は同様にして、画像3〜4を形成した。
〔画像5〜6の形成〕
上記画像3〜4の形成において、搬送速度を200mm/secに変更した以外は同様にして、画像5〜6を形成した。
〔画像7〜8の形成〕
上記画像3〜4の形成において、搬送速度を1600mm/secに変更した以外は同様にして、画像7〜8を形成した。
〔画像9〜10の形成〕
上記画像3〜4の形成において、記録媒体は、白色度が97%のものを使用した以外は同様にして、画像9〜10を形成した。
〔画像11の形成〕
上記画像1の形成において、各光トラップ7A、7B、7C、7Dの記録媒体の搬送方向の長さを20mmとし、搬送速度を400mm/secに変更した以外は同様にして、画像11を形成した。
〔画像12〜15の形成〕
上記画像1〜4の形成において、すべての光トラップ7を設置しなかった以外は同様にして、画像12〜15を形成した。
〔画像16の形成〕
上記画像1の形成において、各光トラップ7A、7B、7C、7Dの記録媒体の搬送方向の長さを8mmとしM搬送速度を400mm/secに変更した以外は同様にして、画像16を形成した。
《形成画像の評価》
以上により形成した形成した各画像について、下記に示す各評価を行った。
〔ドット形状の評価〕
形成した各色画像について、各色1ドットの形状をルーペで拡大観察し、下記の評価基準に則りドット形状の評価を行った。なお、評価は、各色インクの平均値で求めた。
○:ドット形状が真円である
△:ドット形状もやや乱れているが、許容の範囲である
×:ドット形状が悪く、実用上問題となるレベル。
(連続出射性の評価)
20℃、30%RHの環境下で、それぞれのインクセットを装着し、1滴あたり12plを吐出する条件で、クリーニングをせずに1時間連続して吐出を続けた後の状態を目視観察し、下記に示す基準に従って吐出安定性を評価した。
○:全ノズルから正常に出射
△:1〜3ノズルに目詰まりが見られるが、ノズル面からの吸引クリーニングにより回復し、実用上許容できる範囲にある
×:4ノズル以上に目詰まりが発生し、吸引クリーニングにより回復不可能な目詰まりが1ノズル発生。
以上により得られた結果を、表5に示す。
Figure 0005092901
表5に記載の結果より明らかな様に、本発明の光トラップを設置して形成した画像は、各インクにより形成した画像のドット形状に優れ、連続出射性も良好であることがわかる。
搬送速度が1500mm/secを超えた画像番号7,8では、色混じりやサテライトが発生しドット形状の乱れが生じた。搬送速度が1500mm/secを超えるほど速くなると記録媒体の搬送に伴う気流の影響が大きくなり、色混じりやサテライトが発生しやすくなるものと考えられる。
搬送速度が300mm/sec未満の画像番号5,6では、1色目のドットの上に2色目のドットが乗らずにはじかれることによるドット形状の乱れが生じた。これは、搬送速度が300mm/sec未満と遅くなると、1色目のインクに照射される半硬化光源からの照射光量が多くなるので、1色目のインクの硬化が進行し、2色目のインクがはじかれやすくなるものと考えられる。
白色度が95%を超えた画像番号9,10では、連続出射性が若干ではあるが悪くなる傾向が見られた。白色度が95%を超えると記録媒体からの1次反射の紫外線光量が多くなるためにノズルへ到達しやすくなるものと考えられる。
本発明に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。 図1のインクジェット記録装置に備わる光トラップの形状の例を示した斜視図である。
符号の説明
10 インクジェット記録装置
12Y、12C、12M、12K ヘッド
14 インク貯蔵/装填部
16,16A、16B、16C、16D 半硬化光源
7、7A、7B、7C、7D 光トラップ
18 完全硬化光源
20 記録媒体
22 給紙部
26 吸着ベルト搬送部
32 マガジン

Claims (3)

  1. 記録媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、
    それぞれ異なる色のカチオン重合系の紫外線硬化型インクを前記記録媒体に吐出する複数のフルライン型のインクジェットヘッドを前記搬送方向に配列してなり、前記複数のインクジェットヘッドのうちの黒インクを吐出する黒ヘッドが前記搬送方向の最下流に配置されたヘッド部と、
    各インクジェットヘッド間に配置され、記録媒体に吐出されたインクを半硬化させる光を照射する半硬化光源と、
    前記搬送方向の最下流に配置されている前記黒ヘッドの下流に配置され、記録媒体に吐出されたインクを完全硬化させる光を照射する完全硬化光源と
    前記インクジェットヘッドと前記半硬化光源との間に配置され、前記半硬化光源から照射された光を捕捉する第1の光トラップと、
    前記最下流に配置されている前記黒ヘッドと前記完全硬化光源との間に配置され、前記完全硬化光源から照射された光を捕捉する第2の光トラップと、
    を備え、
    前記半硬化光源の光量は、前記完全硬化光源の光量よりも少なく、
    前記第1の光トラップ及び前記第2の光トラップの前記搬送方向の長さが10mm以上300mm以下であり、且つ、前記第2の光トラップの前記搬送方向の長さは、前記第1の光トラップの前記搬送方向の長さよりも長いことを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記記録媒体の搬送速度が300mm/sec〜1500mm/secであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記記録媒体の記録面の白色度が60%以上95%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
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