以下、添付図面を参照して、本発明に係る画像形成装置及び画像形成方法について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置の第1実施形態の概略を示す全体構成図である。
図1に示すように、このインクジェット記録装置10は、インクの色毎に設けられた複数の印字ユニット12−1、12−2、12−3、12−4を有する印字部12と、印字部12の各印字ユニット12−1、12−2、12−3、12−4に供給する液体を貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12の各印字ユニット12−1、12−2、12−3、12−4の各ヘッド(図示省略、詳しくは後述)のノズル面(インク等の液体を吐出する吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26とを備えている。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンを示しているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター28が設けられており、ロール紙はカッター28によって所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置されている。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコードあるいは無線タグ等の情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻き癖が残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、搬送部22へと送られる。搬送部22は、ローラー31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16幅よりも広い幅寸法を有している。図1に示す搬送部22は、負圧を利用して記録紙16をベルト33に吸着して搬送する吸着ベルト搬送部の例が表示されているが、搬送部22はこれに限定されるものではない。静電気を利用して記録紙16をベルト33に吸着して搬送するようにしてもよい。
負圧を利用した吸着ベルト搬送部の場合、ベルト33のベルト面には多数の吸引孔(図示省略)が形成される。そして図1に示すように、ローラー31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバー34が設けられ、この吸着チャンバー34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラー31、32の少なくとも一方にモータ(図示省略)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1において、時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は、図1の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、あるいはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラー線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、搬送部22として、ローラー・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラー・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面にローラーが接触するので、画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面と接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図3参照)。
記録紙16の搬送方向(紙搬送方向)に沿って上流側(図1の左側)から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の順に各色インクに対応した印字ヘッドを有する印字ユニット12−1、12−2、12−3、12−4が配置されている。すなわち、本実施形態のインクジェット記録装置10は、色数と同数の印字ユニット12−1、12−2、12−3、12−4を有する。記録紙16を搬送しつつ各印字ユニット12−1、12−2、12−3、12−4の印字ヘッドからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色毎に設けられてなる印字部12によれば、紙搬送方向(副走査方向)について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち、一回の副走査で)記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが紙搬送方向と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお、ここで主走査方向及び副走査方向とは、次に言うような意味で用いている。すなわち、記録紙の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時、(1)全ノズルを同時に駆動するか、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動するか、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動するか、等のいずれかのノズルの駆動が行われ、用紙の幅方向(記録紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字をするようなノズルの駆動を主走査と定義する。そして、この主走査によって記録される1ライン(帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向という。
一方、上述したフルラインヘッドと記録紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。そして、副走査を行う方向を副走査方向という。結局、記録紙の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
また本例では、YMCKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
上述したように、第1色目の印字ユニット12−1をイエロー(Y)に対応するものとし、以下第2色目の印字ユニット12−2はマゼンタ(M)、第3色目の印字ユニット12−3はシアン(C)、第4色目の印字ユニット12−4は黒(K)としたのは、視認性の悪い順に印字するようにするためである。
もし、ライト系のインクがある場合には、そのインクを第1色目の印字ユニット12−1から吐出するようにする。
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各印字ユニット12−1、12−2、12−3、12−4の印字ヘッドに対応する色のインクを貯蔵するタンク14Y、14M、14C、14K及び処理液を貯蔵するタンク14Sを有し、各タンクは図示を省略した管路を介して各印字ヘッド及び処理液ヘッドと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各印字ユニット12−1、12−2、12−3、12−4の印字ヘッドによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列とからなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部24は、各色に対応する印字ユニット12−1、12−2、12−3、12−4の印字ヘッドにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行うものである。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定等で構成される。
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹きつける方式が好ましい。
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラー45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
このようにして生成されたプリント物は、排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える選別手段(図示省略)が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に、本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成されている。
また、図示を省略したが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられている。
図2に、印字部12の一部を拡大して示す。すなわち、図2には、3つの印字ユニット12−1、12−2、12−3が表示されている。もう一つの印字ユニット12−4も印字ユニット12−2あるいは12−3と同様である。
各印字ユニット12−1、12−2、12−3は、それぞれヘッドセット12−1HS、12−2HS、12−3HSと、定着部12−1TC、12−2TC、12−3TCを有している。各ヘッドセット12−1HS、12−2HS、12−3HSは、それぞれ処理液を吐出する処理液ヘッド12Sと、各色のインクを吐出する印字ヘッド12Y、12M、12Cとから成っている。また、各定着部12−1TC、12−2TC、12−3TCは、それぞれガイドレール12Gに沿って、図中矢印Aで示す記録紙16の搬送方向に移動可能に設置された定着ランプ12Lとから構成されている。
また、特に第1色目(最上流側)の印字ユニット12−1の定着部12−1TCのすぐ後には、印字された画像中の検知エリアの濃度や形状等を光学的に検出する印字結果検出手段13が配置されている。印字結果検出手段13は、例えば、前述した印字検出部24と同様のラインセンサで構成される。詳しくは後述するが、これは第1色目のインクの吐出結果に応じて、定着条件や吐出条件等の画像記録条件をリアルタイムに変更して、その変更された条件で第2色目以降を印字するためである。
本実施形態の画像形成装置10で用いられる処理液は、硬化(重合)開始剤を含有する。また、各色のインク(UV硬化型インク)は、UV(紫外線)エネルギーの付与によって硬化(重合化)する硬化主剤(モノマー、オリゴマーまたは低分子量ホモポリマー、コポリマーなどの紫外線硬化性成分)と色材(着色剤)とを含有して構成されている。なお、処理液には、拡散防止剤及び高沸点有機溶媒を含有させてもよい。
なお、処理液及びインクについては後で詳しく説明する。
このように、処理液と各色インクとを組み合わせた構成により、主として処理液に含まれる拡散防止剤の機能によって着弾干渉による画像劣化を回避するとともに、定着ランプ12Lの洩れ光や記録紙16による反射光が各印字ヘッド12Y、12M、12C、12K及び処理液ヘッド12Sのノズルに当たってしまう場合にも、各液体は硬化開始剤と硬化主剤とを一緒に含有していないため、硬化反応(重合反応)が起こらず、各ヘッドのノズル内における処理液及びインクの固化が防止される。
また、定着ランプ12Lは、ガイドレール12Gに沿って記録紙16の搬送方向に移動可能であり、これにより処理液及びインクが記録紙16に着弾した後、定着が開始されるまでの時間を変更することが可能となる。その結果、記録紙16を搬送する線速度を変更するのと同等の効果を得ることができる。
なお、記録紙16は、ローラー31によってガイドされるベルト33上に吸着されて搬送されるが、定着ランプ12LでUV光を照射する際、記録紙16を加熱して定着を早めるための加熱ヒータ37が、定着ランプ12Lの位置に対応するベルト33の裏側に配置されている。
なお、上記各液体の構成とは逆に各色インクが硬化開始剤を含有し、処理液が硬化主剤(UVモノマー)を含有するようにした場合にも、上記と同様の効果を奏することができる。
図3に、図2に対応する印字部12付近の平面透視図を示す。
図3に示すように、記録紙16は、搬送路38に沿ってローラー31にガイドされるベルト33上を(図の上方向に)搬送される。ベルト33の上側には、第1色目の印字ユニット12−1、第2色目の印字ユニット12−2、第3色目の印字ユニット12−3及び第4色目の印字ユニット12−4がこの順に配置されている。
第1色目の印字ユニット12−1は、処理液ヘッド12Sとイエローのインクを吐出する印字ヘッド12Yから成るヘッドセット12−1HS、ガイドレール12Gに沿って移動可能な定着ランプ12Lから成る定着部12−1TC及び印字結果検出手段13によって構成されている。
また、特に第1色目の印字ユニット12−1の定着部12−1TCは、搬送方向に沿って、幅方向に3本のガイドレール12Gが配置され、それぞれのガイドレール12Gに対して記録紙16の搬送方向に移動可能なように定着ランプ12Lが設置されている。また、各3本のガイドレール12Gの下側にそれぞれの部分を別々に加熱できるように幅方向に3つの加熱ヒータ37が設けられている。これにより、記録紙16の幅方向に搬送路の温度及び着弾から定着開始までの時間がそれぞれ異なる3水準の定着条件を設定することができる。
また、この幅方向の3水準の定着条件に対する印字結果をそれぞれ別々に検出することができるように、印字結果検出手段13は、幅方向に3つの検出センサ13a、13b、13cを備えている。このように印字結果検出手段13は、異なる定着条件に対応した数だけの検出センサ(13a・・・等)を有している。
このとき、図3に示すように、記録紙16上に破線で示すように吐出イメージ17が印字されるとした場合に、各吐出イメージ17中から、記録紙16の幅方向に上記各検出センサ13a、13b、13cに対応した3箇所の検出エリア19を設定して、各吐出イメージ17の画像記録条件(吐出条件、定着条件)を変えて画像記録を行い、各検出エリア19毎の印字結果の検出を行うことができる。
第2色目の印字ユニット12−2は、処理液ヘッド12Sとマゼンタのインクを吐出する印字ヘッド12Mから成るヘッドセット12−2HSと、ガイドレール12Gと定着ランプ12Lから成る定着部12−2TC及び記録紙16の幅方向全体にわたって定着部12−2TCの下側に配置された加熱ヒータ37とから構成されている。
また、第3色目の印字ユニット12−3の構成は、ヘッドセット12−3HSがシアンのインクを吐出する印字ヘッド12Cを有する以外は、第2色目の印字ユニット12−2の構成と同様である。第4色目の印字ユニット12−4の構成も、ヘッドセット12−4HSが黒のインクを吐出する印字ヘッド12Kを有する以外は、第2色目の印字ユニット12−2及び第3色目の印字ユニット12−3の構成と同様である。
これにより、第2色目以降の印字ユニット12−2、12−3、12−4においては、搬送路の温度及び着弾から定着開始までの時間が変更可能である。
本実施形態は、このように、第1色目の印字ユニット12−1において、画像記録条件(定着条件、印字条件)を複数水準に振って印字した結果を印字結果検出手段13によって検出し、複数水準の検出結果をそれぞれ目標値と比較し、目標値に一番近い結果が得られる条件を下流の第2〜第4印字ユニット12−2、〜、12−4の画像記録条件(定着条件、吐出条件)として設定することで、一つの画像を形成する中において、リアルタイムに画像記録条件を最適なものに変更することで高画質な画像記録を可能とするものである。
次に、ヘッドの構造について説明する。処理液ヘッド12S及び各色の印字ヘッド12Y、12M、12C、12Kの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって単にヘッド50と表すものとする。
図4(a)は、ヘッド50の構造例を示す平面透視図である。
記録紙16上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド50は、図4(a)に示すように、インク滴の吐出口であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52と圧力室52にインクを供給するインク供給口53等から成る圧力室ユニット54を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置した構造を有し、これによりヘッド長手方向(記録紙搬送方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録紙16の送り方向と略直交する方向に記録紙16の全幅に対応する長さ以上のノズル列を構成する形態は、ここに示したものに限定されない。例えば、図4(a)の構成に代えて、図示は省略するが、複数のノズル51が2次元に配列された短尺のヘッドユニットを千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙16の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
ヘッド50の各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、図4(a)に示すようにその平面形状が略正方形となっており、その対角線の両隅部にノズル51とインク供給口53が設けられている。なお、圧力室52の形状は、このように正方形に限定されるものではなく、その平面形状は、四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形や円形、楕円形など多様な形状とすることができる。
また、圧力室ユニット54の、図4(a)中の4B−4B線に沿った断面図を図4(b)に示す。
図4(b)に示すように、各圧力室52はインク供給口53を介して共通液室55と連通している。共通液室55は、図示を省略したインク供給源たるインクタンクと連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通液室55を介して各圧力室52に分配供給される。
圧力室52の天面を構成し共通電極と兼用される振動板56の上側には、個別電極57を備えた圧電素子(アクチュエータ)58が接合されている。個別電極57に駆動電圧を印加することにより圧電素子58が変形して圧力室52の容積が縮小し、これに伴う圧力変化によってノズル51から圧力室52内のインクが吐出される。インク吐出後、圧力室52の容積が元にもどると共通液室55からインク供給口53を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
図5は、インクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。
図5に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置10は、通信インターフェイス70、システムコントローラ72、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、印字ヘッドドライバ84、処理液ヘッドドライバ86、定着手段ドライバ90等を備えている。
通信インターフェイス70は、ホストコンピュータ92から送られてくる画像データを受信するインターフェイス部である。通信インターフェイス70にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェイスやセントロニクスなどのパラレルインターフェイスを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリを搭載してもよい。
ホストコンピュータ92から送出された画像データは通信インターフェイス70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74は、通信インターフェイス70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ72は、通信インターフェイス70、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御し、ホストコンピュータ92との間の通信制御、画像メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ94やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
なお、システムコントローラ72のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データは図示を省略したROM等に格納されている。画像メモリ74は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示に従って搬送系のモータ94を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示に従って後乾燥部42等のヒータ89を駆動するドライバである。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図5において画像バッファメモリ82は、プリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
印刷すべき画像のデータは、通信インターフェイス70を介して外部から入力され、画像メモリ74に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの画像データが画像メモリ74に記憶される。
画像メモリ74に蓄えられた画像データは、システムコントローラ72を介してプリント制御部80に送られ、このプリント制御部80にむおいてディザ法や誤差拡散法などのハーフトーン化技術によってインク色ごとのドットデータに変換される。インクジェット記録装置10では、インク(色材)による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に擬似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。
すなわち、プリント制御部80は、入力されたRGB画像データをY、M、C、Kの4色のドットデータに変換する処理を行う。また、プリント制御部80は、各色のドットデータを基に処理液の打滴領域(処理液の打滴が必要な記録面の領域)を判別し、処理液打滴用のドットデータを生成する。こうして、プリント制御部80で生成されたドットデータ(処理液用及び各色用)は、画像バッファメモリ82に蓄えられる。
印字ヘッドドライバ84は、プリント制御部80から与えられる印字データ(すなわち、画像バッファメモリ82に記憶されたドットデータ)に基づき、各色インク用の印字ヘッド12Y、12M、12C、12Kの駆動制御信号を生成する。また処理液ヘッドドライバ86は、処理液ヘッド12Sの駆動制御信号を生成する。
処理液ヘッドドライバ86で生成された駆動制御信号が処理液ヘッド12Sの圧電素子58に加えられることによって、処理液ヘッド12Sの該当ノズル51から処理液が吐出されるとともに、印字ヘッドドライバ84で生成された駆動制御信号が印字ヘッド12Y、12M、12C、12Kの圧電素子58に加えられることによって、印字ヘッド12Y、12M、12C、12Kの該当ノズル51からインクが吐出される。
記録紙16の搬送速度に同期して処理液ヘッド12Sからの処理液の吐出及び印字ヘッド12Y、12M、12C、12Kからのインクの吐出を制御することにより、記録紙16に画像が形成される。上に述べたように、プリント制御部80において所要の信号処理が施され、印字データに基づいて処理液ヘッドドライバ86及び印字ヘッドドライバ84を介して処理液の打滴、各色インクの吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
印字結果検出手段13は、第1色目の印字ユニット12−1内に設けられ、第1色目の印字ユニット12−1のヘッドセット12−1HSによるイエローインクによる印字結果を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供する。
本実施形態のプリント制御部80は、予め設定されたプリセットテーブルより第1の印字ユニット12−1に対し複数の定着条件、吐出条件を設定する第1の吐出・定着条件設定部95、印字結果検出手段13により検出された結果を基にドット径(ライン径)を計算するドット径計算部96、ドット径(ライン径)の目標値を持ち上記計算されたドット径(ライン径)をこのドット径(ライン径)の目標値と比較するドット径比較部98、該比較結果を基に最適条件を設定する第2の吐出・定着条件部100、設定された条件に対し定着部の経時、環境、インク特性などのデータを加味して補正を行うための補正係数を計算する補正係数計算部102、及び印字データから印字結果検出対象となる検出エリアを設定する検出エリア設定部104を有している。また、プリント制御部80には、この他上記選択された条件に対し、定着部の経時、環境、インク特性などのデータを加味して補正を行う補正テーブル106及び、上記補正係数を基に定着条件及び吐出条件を計算するための修正設定値導出テーブル108を格納するメモリ110が備えられている。もちろん、これらの補正テーブル106及び修正設定値導出テーブル108をプリント制御部80内に保有してもよい。
以下、本実施形態の画像形成方法における画像記録条件(定着条件、吐出条件)の制御について説明する。
図6に、本実施形態の画像形成方法の概略をフローチャートで示す。
まず図6のステップS100に示すように、プリント指示が出されると、ステップS102において、プリント制御部80は画像データを画像メモリ74から読み出し、データを展開して画像バッファメモリ82に記憶する。
次に、ステップS104において、プリント制御部80の検出エリア設定部104は、例えば前述した図3に符号19で示すような、これから印字される画像内の検出エリアを設定する。これは、1色目の印字ユニット12−1の色(本例ではイエロー)がある部分の中から設定される。このとき、もし1色目のインクが吐出されない場合には、例えば、後で他の色のインクが吐出される場所に1色目のインク(本例ではイエロー)でラインをダミー吐出し、これを検出するようにする。1色目のインクは視認性の低いインクであるため、この上に後から他の色のインクが吐出されるので記録画像の画質には特に問題はない。あるいは、画像が記録される領域外にラインをダミー吐出してこれを検出するようにしてもよい。
次に、ステップS106において、第1の吐出・定着条件設定部95は、予め設定されているプリセットテーブルよりN個の定着条件、吐出条件を設定する。例えば、メディアの種類、インクの種類、印刷モードなどからプリセットテーブルに基づいて、第1色目の印字ユニット12−1の定着条件、吐出条件を記録紙(メディア)16の幅方向に複数水準設定するようにする。
具体的には、定着部12−1TCの搬送ガイド温度を、高、中、低と3段階設定する。また、液体が記録紙16に着弾してから定着部12−1TCにより硬化開始されるまでの時間を短、標準、長の3段階に設定するようにする。また、定着光源(定着ランプ12L)の強度を、大、中、小の3段階設定する。さらに、1液目(処理液)と2液目(インク)の混合割合の水準を複数段階振る。このように各条件を複数水準設定することで、定着条件、吐出条件を複数段階設定する。
図3に示す例では、定着ランプ12Lの位置をそれぞれ異なる3種類の位置にずらして配置し、処理液ヘッド12Sからの処理液の吐出及び印字ヘッド12Yからのインク吐出後、定着開始までの時間を3種類設定することで、3種類の定着条件を設定している。
このとき記録紙16の種類やインクの種類、定着ランプ12Lの状態等の情報を事前に取得しておき、これらを基にしてプリセットテーブルより定着条件、吐出条件を設定する。
次に、ステップS108において、補正係数計算部102は補正テーブル106より第2色目以降の各印字ユニット12−2、12−3、12−4ごとの補正係数を算出する。このとき各印字ユニット12−2、12−3、12−4で用いるインクや定着ランプ12Lの使用時間等はわかっており、これにより補正係数を計算する。
図7に、補正テーブル106の一例を示す。
ここに例示した補正テーブル106においては、補正をかける項目として、例えば、インク種類、インク交換からの時間、定着ランプの使用時間、定着部の温度、インク量が挙げられている。インクの種類としては、例えば黒インクは一般的に濃度が高いので補正係数は、普通のインクが1に対して、0.9とする。逆にライト系のインクは色材の濃度が低いのでそれだけ固まりやすいので補正係数を1.1とする。
インク交換からの時間が長い場合、例えば本例では1カ月以上の場合、経時での硬化開始剤の性能が劣化するため、固まり難くなっているので補正係数を0.9とする。また定着ランプの使用時間が長い場合、本例では1000時間以上経過している場合、照度が低下するため固まり難くなるので、補正係数を0.7とする。
また、定着部間の温度差が10度以上違う場合には、それぞれの固まり方に差ができるので、定着ランプの温度差を補償するようにする。また、インク量が多い場合には硬化し難いので、補正係数を0.9とし、逆にインク量が少ない場合には硬化しやすいため補正係数は1.1とする。
なお、複数の条件が重なる場合には、それらの補正係数の積をとるようにする。例えば、ライトインク系で定着ランプの使用時間が1000時間を超えている場合には、1.1×0.7=0.77より約0.8とする。
次に、ステップS110において、印字が開始される。すなわち、記録紙16が給紙部18から給紙され印字部12へ向かって搬送される。
そしてまずステップS112において、処理液ヘッドドライバ86からの制御信号に基づいて、第1の印字ユニット12−1のヘッドセット12−1HSの処理液ヘッド12Sから第1液として硬化開始剤及び拡散防止剤を含んだ処理液が吐出される。
次に、ステップS114において、印字ヘッドドライバ84からの制御信号に基づいて、第1色目の吐出ユニット12−1の印字ヘッド12Yから第2液として1色目の色材と硬化主剤を含んだ(イエロー)インクが吐出される。
次にステップS116において、処理液及び第1色目のインクが吐出された記録紙16は、定着部12−1TC(図3参照)に搬送されると、上で設定されたN個の定着条件に従って定着が開始される。このとき上記図3に示す例では、幅方向に3種類の定着条件が設定されている。
記録紙16は定着部12−1TCで定着が行われた後、印字結果検出手段13の下に搬送される。そして、ステップS118において、印字結果検出手段13により、N個の各定着条件に応じた印字結果の検出が行われる。図3に示す例では、3個の定着条件が設定されており、これに応じて3個の検出センサ13a、13b、13cにより3種類の検出結果が得られる。
このように印字結果検出手段13により、印字した検出対象部のラインを読み取り、検出したデータはプリント制御部80に送られ、ステップS120において、ドット径計算部96において各定着条件ごとにライン径(ドット径)が計算される。
このライン径の算出方法は特に限定されるものではないが、例えば、印字結果検出手段13のCCDイメージセンサを介して取得された画像信号をデジタル信号に変換して画像処理を行うことにより、ラインの品質を数値化してライン径を算出することができる。
ライン径算出方法として、例えば本出願人がすでに出願している特願2004−282648等において開示されている。この方法によれば、対象画像のラインを印字結果検出手段13で撮影して得られた検出画像のデータから、まず線幅A、ぼやけB、歪みC、コントラストD、濃度E及び濃度均一差F等の画質属性が求められ、これらの各項目が、例えばISO13660に準拠して数値化される。
そして、数値化された各測定値、線幅A、ぼやけB、歪みC、コントラストD、濃度E及び濃度均一差Fにそれぞれ重み係数a〜fを掛けたものの和を判定値Qとし、Qの最大値がライン径とされる。このようにして複数の定着条件ごとにライン径が算出される。
次に、ステップS122において、ドット径比較部98において、複数の定着条件ごとに算出されたライン径を、予め設定されたライン径の目標値と比較する。次にステップS124において、比較の結果、最も目標値に近いラインに対する定着条件を、第2の吐出・定着条件設定部100において、第2色目以降の印字ユニット12−2、12−3、12−4の定着条件として設定する。
なお、第2色目以降の印字ユニット12−2、12−3、12−4の経時変化やそのときの環境変化によっては、いま設定した新設定値が必ずしも最適とは限らない場合がある。そこで、ステップS126において、これらの経時や環境変化を考慮して下流側の各印字ユニット12−2、12−3、12−4に対する修正設定値を算出する。この修正設定値は、修正設定値導出テーブル108を用いて算出される。
図8に、修正設定値導出テーブル108の例を示す。
図8において、上で設定した新設定値を修正するために制御可能な部位としては、搬送ガイドの温度、ヘッドから定着部までの時間(これは、定着部の位置を変更する場合と、搬送する線速を変更する場合とがある)、定着光源の強度、各印字ユニットにおいて1液目(硬化開始剤及び拡散防止剤の入った処理液)と2液目(硬化主剤と色材の入ったインク)の混合割合などが考えられる。
例えば、搬送ガイド温度の場合は、メディアの温度が高いと硬化が促進されるため、補正テーブル106で補正係数が1より小さい硬化し難いものは、硬化しやすいように温度を挙げるような補正をかけるようにする。また、ヘッドから定着部までの時間を制御するには、定着ランプ12Lの位置を変える場合と、搬送速度(線速)を変える場合が考えられる。例えばラインを細くしたい場合には、定着ランプ12Lを移動してヘッドから定着部までの距離を短くするか、あるいは線速を上げるようにする。
また、定着光源の強度を変更する場合には、例えば、ラインを細くするときは強度を上げるようにする。また、1液目と2液目の混合割合を変更する場合は、例えば、ラインを細くしたいときには、拡散防止剤を含む第1液の混合割合を多くするようにし、拡散防止剤の効果を充分働かせて拡散を防いでラインを細くするようにする。逆にラインを太くしたいときには、拡散防止剤の入った第1液の混合割合を少なくする。
そしてステップS128において、各印字ユニット12−2、12−3、12−4ごとに修正設定値による定着条件及び吐出条件を設定する。
以下、設定された定着条件及び吐出条件により印字を続行する。
すなわち、ステップS130において、第2色目の印字ユニット12−2のヘッドセット12−2HSの処理液ヘッド12Sから硬化開始剤の入った処理液を吐出し、ステップS132において、色材及び硬化主剤の入った2色目のインク(マゼンタインク)を印字ヘッド12Mから吐出する。そしてステップS134において、定着部12−2TCにおいて上で設定された定着条件により定着が行われる。
ステップS136において、第3色目の印字ユニット12−3についても同様に、まず硬化開始剤の入った処理液をヘッドセット12−3HSの処理液ヘッド12Sから吐出する。以下、上記ステップS130〜S134と同様に処理が続行される。
次に、本実施形態で用いられる処理液及びインクについて説明する。
本実施形態に示す画像形成装置10においては、硬化開始剤(重合開始剤)、拡散防止剤、及び、高沸点溶媒を含有する処理液と、硬化主剤(重合性化合物)、及び、色材を含有する各色インクから構成されるインクセットが用いられる。
重合性化合物とは、後述する重合開始剤から発生するラジカルなどの開始種により、重合反応を生起し、硬化する機能を有する化合物を指す。
少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であることが好ましく、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、より好ましくは2個以上有する多官能化合物から選ばれることが好ましい。かかる化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、これらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態を持つものを包含する。
重合性化合物は、分子内に、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、ビニル基、内部二重結合性基(マレイン酸など)などの重合性基を有することが好ましく、なかでも、アクリロイル基、メタクリロイル基を有する化合物が、低エネルギーで硬化反応を生起させることができるので好ましい。重合性化合物は1つの液体中において、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。着色剤を含む第2の液体に含有させる重合性化合物の含有率としては、第2の液体中に50〜99質量%の範囲が好ましく、70〜99質量%の範囲がより好ましく、80〜99質量%の範囲がさらに好ましい。
重合開始剤とは、光、熱、或いはその両方のエネルギーによりラジカルなどの開始種を発生し、前記重合性化合物の重合を開始、促進させる化合物を指し、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを選択して使用することができる。
そのようなラジカル発生剤としては、有機ハロゲン化化合物、カルボニル化合物、有機過酸化化合物、アゾ系重合開始剤、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン酸化合物、オニウム塩化合物等が挙げられる。
本実施形態で用いられるインクセットにおいては、用いる複数種の液体の内、少なくともいずれかに、重合性化合物を硬化させる重合開始剤を含有する。
重合開始剤の含有率は、経時安定性と硬化性、硬化速度との観点から、インクセットに使用した全重合性化合物に対し、0.5〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、3〜10質量%が更に好ましい。重合開始剤は、1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、本発明の効果を損なわない限りにおいて、感度向上の目的で公知の増感剤と併用することもできる。
本発明に用いられる着色剤には特に制限はなく、インクの使用目的に適合する色相、色濃度を達成できるものであれば、公知の水溶性染料、油溶性染料及び顔料から適宜選択して用いることができる。なかでも、本発明のインクジェット記録用インクを構成する液体は、非水溶性の液体であって水性溶媒を含有しないことがインク打滴安定性及び速乾性の観点から好ましく、そのような観点からは、非水溶性の液体に均一に分散、溶解しやすい油溶性染料や顔料を用いることが好ましい。
本実施形態に使用可能な油溶性染料には特に制限はなく、任意のものを使用することができる。着色剤として油溶性染料を用いる場合の染料の含有量は、固形分換算で0.05〜20質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜15質量%が更に好ましく、0.2〜6質量%が特に好ましい。着色剤として顔料を用いる態様もまた、複数種の液体の混合時に凝集が生じやすいという観点から好ましい。
本実施形態において使用される顔料としては、有機顔料、無機顔料のいずれも使用できるが、黒色顔料としては、カーボンブラック顔料等が好ましく挙げられる。また、一般には黒色、及び、シアン、マゼンタ、イエローの3原色の顔料が用いられるが、その他の色相、例えば、赤、緑、青、茶、白等の色相を有する顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料なども目的に応じて用いることができる。
また、シリカ、アルミナ、樹脂などの粒子を芯材とし、表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等も顔料として使用することができる。
さらに、樹脂被覆された顔料を使用することもできる。これは、マイクロカプセル顔料と呼ばれ、大日本インキ化学工業社製、東洋インキ社製などから市販品としても入手可能である。
本実施形態における液体中に含まれる顔料粒子の体積平均粒子径は、光学濃度と保存安定性とのバランスといった観点からは、30〜250nmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは50〜200nmである。ここで、顔料粒子の体積平均粒子径は、例えば、LB−500(HORIBA(株)製)などの測定装置により測定することができる。
着色剤として顔料を用いる場合の含有量は、光学濃度と噴射安定性の観点から、第2の液体中において、固形分換算で0.1質量%〜20質量%の範囲であることが好ましく、1質量%〜10質量%の範囲であることがより好ましい。着色剤は1種のみならず、2種以上を混合して使用してもよい。また、液体毎に異なった着色剤を用いても、同じであってもよい。
拡散防止剤とは、本発明において、記録媒体に付与された第1の液体上に打滴された着色剤を有する第2の液体の拡散や滲みを防止する目的で、第1の液体中に含有される物質を指す。
上記拡散防止剤としては、アミノ基を有する重合体、オニウム基を有する重合体、含窒素ヘテロ環を有する重合体、及び金属化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する。
上記重合体等は、単一種を使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。「複数種」とは、例えば、アミノ基を有する重合体には属するが異なる構造の重合体の場合や、アミノ基を有する重合体とオニウム基を有する重合体の関係のように異なる属種である場合を含む。また、1つの分子中に、アミノ基、オニウム基、含窒素ヘテロ環、及び金属化合物を組み合わせて併存させても良い。
本実施形態における高沸点有機溶媒とは25℃での粘度が100mPa・s以下又は60℃での粘度が30mPa・s以下であり、且つ沸点が100℃よりも高い有機溶媒を示す。
ここで、用いられる「粘度」は、東機産業(株)社製のRE80型粘度計を用いて求めた粘度をさす。RE80型粘度計は、E型に相当する円錐ロータ/平板方式粘度計であり、ロータコードNo.1番のロータを用い、10rpmの回転数にて測定を行う。但し、60mPa・sより高粘なものについては、必要により回転数を5rpm、2.5rpm、1rpm、0.5rpm等に変化させて測定を行う。
また、「水の溶解度」とは、25℃における高沸点有機溶媒中の水の飽和濃度であり、25℃での高沸点有機溶媒100gに溶解できる水の質量(g)を意味する。
上記高沸点有機溶媒の使用量としては、使用する着色剤に対し、塗設量換算で5〜2000質量%が好ましく、10〜1000質量%がより好ましい。
本実施形態においては、複数種の液体の保存中における好ましくない重合を抑制する目的で、貯蔵安定剤を添加することができる。貯蔵安定剤は、重合性化合物と同じ液体に共存させて用いることが好ましく、また、該液体或いは共存する他の成分に可溶性のものを用いることが好ましい。
貯蔵安定剤としては、4級アンモニウム塩、ヒドロキシアミン類、環状アミド類、ニトリル類、置換尿素類、複素環化合物、有機酸、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノエーテル類、有機ホスフィン類、銅化合物などが挙げられる。
貯蔵安定剤の添加量は、用いる重合開始剤の活性や重合性化合物の重合性、貯蔵安定剤の種類に基づいて適宜調整するのが好ましいが、保存安定性と液体混合時のインクの硬化性とのバランスといった観点からは、液体中における固形分換算で0.005〜1質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%がより好ましく、0.01〜0.2質量%がさらに好ましい。
本実施形態の画像形成装置10においては、第1の液体の記録媒体上への付与手段として、インクジェットノズルでの噴出によるもののほかに、塗布等、他の手段を用いてもよい。
上記塗布に用いる装置としては特に制限はなく、公知の塗布装置を目的に応じて適宜選択することができる。例えば、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロットコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、押出コーター等が挙げられる。
本実施形態において重合性化合物の重合を進行させるための露光光源としては、紫外線、可視光線などを使用することができる。また、光以外の放射線、例えば、α線、γ線、X線、電子線などでエネルギー付与を行うこともできるが、これらのうち、紫外線、可視光線を用いることがコスト及び安全性の点から好ましく、紫外線を用いることが更に好ましい。硬化反応に必要なエネルギー量は、重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、一般的には、1〜500mJ/cm2程度である。
以上説明したように、本実施形態によれば、第1色目の印字ユニットの定着条件及び吐出条件を複数設定して印字を行い。印字結果を検出して目標値と比較して最も近い結果が得られる条件を下流側の印字ユニットの定着条件及び吐出条件として設定する。
このときヘッド幅方向で定着条件を変えるようにし、各定着条件ごとに検出センサが設置される。また、テストチャートを用いるのではなく、実画を用いているため、リアルタイムに画像記録条件を変更することができ、高画質の画像記録を行うことが可能となる。さらに、経時変化、環境変化を反映した補正テーブルを持つことで、より最適な条件の設定が可能となる。
これにより、本実施形態によれば、ランコストの低減、生産性の向上、及び定着条件、吐出条件を最適化することが可能となる。
なお、上記例では、第1色目の印字ユニットにのみ印字結果検出手段を設けたが、第2色目にも同様の検出手段を設置して、その検出結果を第3色目の印字ユニットの定着条件、吐出条件に反映させるようにしてもよい。このようにすれば、より高い効果が期待できる。また、最上流の印字ユニットはプリセットされた条件で吐出及び定着を行っているが、第1色目は視認性の悪いインクを用いているため、実用上は特に問題とはならない。また最上流のインクが硬化不十分となる可能性もあるが、下流の定着部で硬化されるため問題ない。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態は、シャトル型の1液UVインク(紫外線硬化型インク)を用いたインクジェット記録装置の構成例である。すなわち、本実施形態においては、色材の入った(透明を含む)インクヘッドの両側にUV照射ランプをキャリッジに搭載し、キャリッジを主走査軸に沿って左右(記録紙の幅方向)に走査することで印字が行われる。
図9に、本実施形態のインクジェット記録装置の印字部を拡大した平面透視図で示す。
図9に示すように、記録紙116は、搬送路138に沿ってベルト133上を矢印B方向に搬送される。ベルト133上には、搬送路138上流側から、第1液目の印字ユニット112−1及び第2液目の印字ユニット112−2の順に配置されている。
第1液目の印字ユニット112−1は、キャリッジ115−1上の中央にYインクを吐出する印字ヘッド112Yを配置し、その両側にUV照射ランプ112Lが配置され、さらに搬送路138下流側には同じキャリッジ115−1上に印字結果検出手段113が配置されている。
また、第2液目の印字ユニット112−2は、キャリッジ115−2上の中央に、Kインクを吐出する印字ヘッド112K、Cインクを吐出する印字ヘッド112C、Mインクを吐出する印字ヘッド112Mが配置され、その両側にUV照射ランプ112Lが配置されている。
第1液目の印字ユニット112−1のキャリッジ115−1及び第2液目の印字ユニット112−2のキャリッジ115−2は、それぞれ走査ガイド軸139に沿って図の矢印C方向に移動して記録紙116上を走査して印字するようになっている。
また、搬送路138のベルト133の裏側の第1液目及び第2液目の印字領域に対応する部分には記録紙(メディア)116の温調可能な加熱ヒータ137が設けられている。
前述した第1実施形態におけると同様に、記録紙116上の検出エリアを設定した後、その中を複数の定着条件に分割する。例えば図に示すように、記録紙116上に検出エリア119を設定し、その中に定着条件を搬送方向(記録紙長手方向)に3つに分割して第1定着条件119a、第2定着条件119b、第3定着条件119cのように設定する。
前述した第1実施形態においては、記録紙の幅方向に定着条件を分割したが、本実施形態は、シャトル型であるため搬送速度が遅いので、1走査毎に吐出タイミングを変更できるなど、ここでは記録紙長手方向に条件を分割することが可能である。
なお、図9に示す例では、定着条件を119a〜119cとして3つに分割し、その間でランプ強度を変更するようにした。
このように、異なる定着条件の下で定着させた領域は、印字結果検出手段113で検出され、その検出結果に基づいて第2の印字ユニット112−2の吐出・定着条件が設定される。
上に述べた例では、定着条件としてランプ強度を変更したが、キャリッジ115−1、115−2の走査速度と吐出周波数を変更するようにして、シャトル吐出から定着までの時間を変えるようにすることも可能である。また、シャトル型の場合は搬送速度が遅いので、定着部の温度を変えるようにしてもよい。
以上、本発明の画像形成装置及び画像形成方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
10…インクジェット記録装置、12…印字部、12−1〜12−4…印字ユニット、12Y、12M、12C、12K…印字ヘッド、12S…処理液ヘッド、12−1HS〜12−4HS…ヘッドセット、12−1TC〜12−4TC…定着部、12G…ガイドレール、12L…定着ランプ、13…印字結果検出手段、14…インク貯蔵/装填部、16…記録紙、18…給紙部、20…デカール処理部、22…搬送部、24…印字検出部、26…排紙部、28…カッター、30…加熱ドラム、31、32…ローラー、33…ベルト、34…吸着チャンバー、35…ファン、36…ベルト清掃部、37…加熱ヒータ、40…加熱ファン、42…後乾燥部、44…加熱・加圧部、45…加圧ローラー、48…カッター、50…ヘッド、51…ノズル、52…圧力室、53…液滴吐出素子、56…振動板(共通電極)、57…個別電極、58…圧電素子、70…通信インターフェイス、72…システムコントローラ、74…画像メモリ、76…モータドライバ、78…ヒータドライバ、80…プリント制御部、82…画像バッファメモリ、84…印字ヘッドドライバ、86…処理液ヘッドドライバ、89…ヒータ、92…ホストコンピュータ、94…モータ、95…第1の吐出・定着条件設定部、96…ドット径計算部、98…ドット径比較部、100…第2の吐出・定着条件設定部、102…補正係数計算部、104…検出エリア設定部、106…補正テーブル、108…修正設定値導出テーブル、110…メモリ