JP5043253B2 - 脱毛剤及び外用剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬、化粧料及び動物薬として有用な脱毛剤及び外用剤に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
哺乳類の頭髪や体毛は、生物学的には頭部、胸部、手足等の重要な器官を防護するものであるが、近年、ヒトにおいては手足等における体毛は化粧上及び美的外観上の点から無い方が好ましいとされ、体毛を除去する傾向がある。
【0003】
従来、体毛の除去方法としては、シェーバー、抜毛器等を用いる機械的除去方法の他、化学的に毛繊維を分解させたり、毛成長を防止、抑制又は遅滞させる脱毛方法等が知られている。しかし、斯かる体毛除去方法は、皮膚に対して物理的又は化学的刺激を生じ易く、また発毛抑制という点でも未だ十分であるとはいえず、一定期間経過後には再び体毛除去処理を行わなければならず体毛除去処理の軽減化が望まれている。
【0004】
一方、動物においては、上皮細胞成長因子(EGF)に脱毛活性があることに着目し、EGFを羊毛収穫薬として使用する試みが実用化されつつある。この場合、羊を傷つける心配がなく、収穫された毛は毛の長さが一定で毛端が丸いこと等、収量及び品質ともに向上するといった利点が挙げられ、斯かる分野においても、より安全でかつ安価な脱毛剤の開発は有意義である。
【0005】
本発明の目的は、哺乳動物皮膚における体毛の成長を抑制し、医薬、化粧料及び動物薬として有用な脱毛剤及び外用剤を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、脱毛作用物質について検討したところ、エンドセリン及びその作動薬に優れた毛成長抑制作用があることを見出した。
【0007】
即ち本発明は、エンドセリン又はその作動薬を含有する脱毛剤及び外用剤を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
エンドセリンは、直接・間接的に血管性及び非血管性の平滑筋を持続的に収縮させる生理活性物質である。近年、エンドセリンの個体形成における役割も明らかにされ、またグリア細胞や腎メサンギウム細胞、メラノサイト等、様々な細胞におけるエンドセリンの役割も解明されつつある。しかし、エンドセリンが毛成長に対して如何なる作用を及ぼすかは全く報告されておらず、また外用剤として用いられることも知られていない。
【0009】
エンドセリンは、アミノ酸残基21個からなるペプチドであり、これまでにエンドセリン−1、エンドセリン−2、及びエンドセリン−3の3つの異なるアイソフォームの存在が知られているが、本発明脱毛剤及び外用剤においては、いずれのアイソフォームも使用することができ、好ましくは、エンドセリン−1である。上述したエンドセリンの各アイソフォームは、前駆体蛋白質、すなわち、各ビッグエンドセリンより、生体内酵素(エンドセリン変換酵素)の作用により活性化され、本発明脱毛剤においては、それら前駆体蛋白質を用いることもできる。
【0010】
また、エンドセリン作動薬(アゴニスト)、及びアゴニスト作用を有するそれらのペプチド断片配列も本脱毛剤に有用である。エンドセリン作動薬の例としては、Sarafotoxin−6C、[Ala1,3,11,15]−エンドセリン−1(Biochem. Biophys. Res. Commun., 182, 144(1992))、アゴニスト作用を有するそれらペプチドの断片配列の例としては、エンドセリン−1のフラグメント11−21(FEBS Lett., 311;12(1992))、IRL1620(N−Succinyl−[Glu9, Ala11,15]ET−1(8−21))、BQ3020(N−acetyl−[Ala11,15]ET−1(6−21))等が挙げられる。
【0011】
斯かるエンドセリンは、エンドセリン産生細胞の培養上清やそれらの破砕液からの分離精製、ペプチド化学合成、或いはエンドセリンをコードする塩基配列を有するDNAを用いて遺伝子工学的手法により製造することができる。
【0012】
本発明におけるエンドセリンの脱毛作用は、後記実施例3に示すように成長期にある毛包を退行期へと移行させることにより毛成長を抑制させる作用に基づくものである。従って、本発明の脱毛剤及び外用剤は、ヒト又はいかなる家畜動物種に対しても用いることができ、また対象とする毛の種類や部位も限定されるものではない。
【0013】
本発明脱毛剤の投与方法は、その目的や適用対象又は部位によって、経皮投与、局所皮内投与、全身投与等から選択することができる。
【0014】
本発明の外用剤又は脱毛剤を経皮投与剤として用いる場合のエンドセリンの含有量は、脱毛効果、経済性等の観点から、通常0.01〜10重量%とすることが好ましく、0.1〜1重量%が特に好ましい。
また、本発明の脱毛剤を局所皮内投与剤として用いる場合のエンドセリンの含有量は、通常0.1〜100μg/回とすることが好ましく、1〜10μg/回が特に好ましい。さらに、全身投与剤として用いる場合には、通常体重1kgあたり0.01〜100mgとすることが好ましく、体重1kgあたり0.1〜10mgが特に好ましい。
尚、動物薬として用いる場合には、全身的には皮下又は腹腔内投与が有効であり、局所的には皮内投与が有効である。また、連続的な経皮投与も有効であるが、この場合はリポゾームに封入して経皮吸収性を高めたものがより有効である(RM.Hoffman,J Drug Target,5,67(1998))。
【0015】
本発明の脱毛剤及び外用剤には、エンドセリンに加えて、角質溶解剤やチオグリコール酸又はその塩等の制毛・脱毛作用を有する成分を適宜加えることができる。当該角質溶解剤としては、例えば乳酸、ビオプラーゼ、サリチル酸、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸等が挙げられ、チオグリコール酸の塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩の他、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩が挙げられる。これらの角質溶解剤、チオグリコール酸又はその塩の含有量は、0.01〜10重量%、特に0.05〜5%が好ましい。
【0016】
本発明脱毛剤及び外用剤は、医薬、化粧料又は動物薬として用いられ、特に除毛、脱毛又は髭剃り関連化粧料又は医薬とすることが好ましい。このような化粧料又は医薬としては、ペースト状、クリーム状、エアゾール状等の除毛剤、ワックス状、ジェル状、シート状等の脱毛剤、除毛又は脱毛の後処理に用いるローション、クリーム等の後処理料、デオドラントローション、デオドラントパウダー、デオドラントスプレー、デオドラントスティック等の制汗・防臭化粧料、プレシェーブローション等の髭剃り前処理料、シェービングクリーム等の髭剃り料、アフターシェーブローション等の髭剃り後処理料などが挙げられる。
【0017】
また、本発明の脱毛剤及び外用剤には、通常、医薬品、化粧品、医薬部外品、動物薬等に用いられる各種成分、例えば精製水、エタノール、油性物質、保湿剤、増粘剤、防腐剤、乳化剤、薬効成分、粉体、紫外線吸収剤、色素、香料、乳化安定剤等を含有させることができる。
【0018】
【実施例】
実施例1 エンドセリンの脱毛誘導作用
0. 1%牛血清アルブミン(BSA)を含有するリン酸緩衝塩水(PBS)に溶解したエンドセリン−1 0.3μgモルモット背部の皮内に投与(50μl/部位)を行った。その結果、投与10日後、溶媒(0.1%BSA/PBS)投与部位には、変化を観察されなかったのに対し、エンドセリン−1投与部位では、毛幹脱落、明瞭な脱毛斑の形成が観察された。
このことから、エンドセリンには、脱毛誘導作用があることが示された。
【0019】
実施例2 エンドセリンの成長期毛包抑制作用
0. 1%牛血清アルブミン(BSA)を含有するリン酸緩衝塩水(PBS)に溶解したエンドセリン−1、エンドセリン−2、エンドセリン−3のそれぞれについて1μgを毛刈りしたモルモット背部の皮内に投与(50μl/部位)を行った。投与3日後に投与部位を再び毛刈し、その2日後に投与部位一定面積当たりの伸長した毛幹数を計測した。その結果、投与5日目には、有意(p<0.01)な毛幹数の減少が観察された(図1)。
このことから、上述したエンドセリン類において成長期毛包数の減少効果があることが示された。
【0020】
実施例3 エンドセリン投与による毛包組織の形態変化
1. 1%牛血清アルブミン(BSA)を含有するリン酸緩衝塩水(PBS)に溶解したエンドセリン−1 0.3μgモルモット背部の皮内に投与(50μl/部位)を行った。その後、経日的に投与された背部皮膚を採取し、ヘマトキシリン・エオシン染色法による組織標本を作製した。その結果、投与1日目には、成長期毛包の退縮像が観察され、投与3日目には、移行期の毛包組織像を呈した(図2)。
以上のことから、エンドセリン投与による成長期毛包抑制作用は、成長期毛包の休止期毛包移行作用(休止期毛誘導作用)によることが示唆された。
【0021】
実施例4
エンドセリン誘導脱毛斑形成に対するエンドセリン阻害剤同時投与の影響
実施例1に示した如く、モルモット背部皮内に0.3μgのエンドセリン−1を投与するとともに、エンドセリン阻害剤であるPD142893を10μgの同時投与を行った。
投与10日後に形成された脱毛斑の程度をその長径と短径の積算値として求めた。その結果を表1に示した。PD142893の同時投与により、その形成が有意に抑制された。
本結果から、エンドセリン−1による脱毛斑誘導が、非特異的組織毒性に起因した現象ではないことが示唆された。
【0022】
【表1】
Figure 0005043253
【0023】
実施例5 器官培養毛包への成長抑制作用
ヒト頭皮組織より、実体顕微鏡下にて成長期にある毛包器官を外科的に単離した。単離毛包は、常法(Philpott MP. et.al. J Cell Sci 97: 463-471, 1990)に従い、器官培養を行った。すなわち、L-グルタミン(2mM)、ハイドロコルチソン(10ng/ml)、インシュリン(10μg/ml)、亜セレン酸ナトリウム(10ng/ml)およびトランスフェリン(10μg/ml)を含むウィリアムE培地にエンドセリン−1を添加し、単離毛包を同培地中にて、37℃、5%CO2の気相下にて培養し、経日的毛伸長量を観察した。その結果、エンドセリン−1添加群では、培養4日目以降、無添加群と比較して有意な毛伸長抑制作用が観察された(図3)。さらに、この培養期間中、エンドセリン処理した成長期毛包の休止期毛包様の形態変化が観察された(図4)。各培養径日毎の退縮毛包の出現率を表2に示した。
本結果から、エンドセリンの添加により、ヒト単離毛包が、成長期から退行期への移行が促進され、その成長が抑制されることが明らかとなった。
【0024】
【表2】
Figure 0005043253
【0025】
実施例6 マウス発毛試験
0.5mgのエンドセリンー1をポリエチレングリコール400(Av. Mol. Wt.:400)とポリエチレングリコール3350(Av. Mol. Wt.:3350)の混合液2.5ml(混合比95:5)に溶解して、抑毛剤を調製した。生後8週齢のC3H/HeNCrjマウスの背部毛を除毛クリームを用いて除毛(2×4cm2の範囲)し、上記抑毛剤を除毛部位に一日一回25μlずつ2週間にわたり塗布した。なお、溶媒のみを同様に塗布した群を対照群とした。毛再生を観察するため、除毛処理14日目の上記除毛部位を一定倍率で撮影し、画像解析装置を用いて再生毛面積比(再生毛面積/除毛面積×100)を測定した。結果を表3に示した。
本結果から、エンドセリンの皮膚塗布による毛成長抑制効果が明らかとなった。
【0026】
【表3】
Figure 0005043253
【0027】
実施例7 処方例
(1)抑毛ローション
【0028】
【表4】
Figure 0005043253
【0029】
Aに属する成分を溶解し、これとは別にBに属する成分を溶解する。AにBを添加して均一に攪拌混合し、抑毛ローションを得た。
【0030】
(2)抑毛クリーム
【0031】
【表5】
Figure 0005043253
【0032】
Aに属する成分を溶解し、これとは別にBに属する成分を加熱溶解する。AにBを添加して均一に攪拌混合し、乳化後、冷却して抑毛クリームを得た。
【0033】
(3)抑毛フォーム
【0034】
【表6】
Figure 0005043253
【0035】
Aに属する成分を均一に混合して容器に入れ、常法によりBを容器に充填して抑毛フォームを製造した。
【0036】
(4)エアゾール
【0037】
【表7】
Figure 0005043253
【0038】
Aに属する成分を均一に混合して容器に入れ、常法によりBを容器に充填してエアゾールを製造した。
【0039】
【発明の効果】
本発明の脱毛剤及び外用剤は、哺乳動物皮膚の毛成長を抑制することから、医薬又は化粧料として人体に適用することにより安全で効率的な体毛処理を可能にすると共に、例えば羊毛収穫薬として羊の採毛に使用することで品質の高い羊毛の収穫を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、エンドセリン類の成長期毛包数減少効果を示す図である。
【図2】図2は、エンドセリン投与による毛包組織の形態変化を示す図である。
【図3】図3は、エンドセリンの培養毛包に対する成長抑制作用を示す図である。
【図4】図4は、エンドセリン添加による培養毛包の形態変化を示す図である。

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  1. エンドセリンを含有する脱毛剤。
  2. 外用剤である請求項1記載の脱毛剤。
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