JP5040090B2 - 化成処理性に優れた冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

化成処理性に優れた冷延鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は化成処理に優れた冷延鋼板およびその製造方法に関するものである。
冷延鋼板は、自動車や電気機器の部品として、主に加工後、組立て、塗装して用いられる。そのため、成形性と化成処理性は必須の材料特性である。
これを受けて、高成形性を達成するため、冷延鋼板は、通常、熱延鋼板を所定の板厚まで冷間圧延した後、焼鈍処理される。この焼鈍処理はバッチ焼鈍法と連続焼鈍法に大別され、バッチ焼鈍法は比較的小規模な設備、すなわち少ない設備投資で実施可能という特徴がある。
バッチ焼鈍法の歴史は古く、従来は、雰囲気ガスとしてはHNX、ANガスが主流であった。しかし、近年は、非特許文献1に記載のように、能率向上、温度の均一性、表面品質向上、省エネルギー、脱炭・窒化防止などのため水素濃度の高い雰囲気ガスが一般に用いられるようになりつつある。
水素雰囲気にて焼鈍された場合の鋼板の重要な技術課題として表面特性制御が挙げられ、これまでも研究、技術開示がなされている。特に、数100Å以上の厚い酸化膜に支配されるテンパーカラーと呼ばれる外観上の表面品質の制御方法ついては、いくつかの方法が公知となっている。一方で、テンパーカラーの厚い酸化膜と比較して、薄い酸化膜に影響される化成処理性に関しては有効な解決策が示されておらず、水素雰囲気にて焼鈍された鋼板は化成処理性が一般に優れないのが現状である。
上記に対して特許文献1では、極低炭素鋼をほぼ水素100%雰囲気で焼鈍する方法が開示されている。しかし、特許文献1では専ら機械試験値特性の改善に関するもので、雰囲気の露点についてまったく記載されておらず、化成処理性の向上に関して何ら示唆を与えるものではない。
特許文献2では、水素濃度を80%以上、酸素濃度を100ppm以下の混合気体でバッチ焼鈍する化成処理性に優れた冷延鋼板の製造方法が開示されている。しかし、特許文献2では、従来技術である窒素比率の高い水素との混合ガス雰囲気を用いた焼鈍と比較すると化成処理性向上に対して一定の効果が得られるものの、成形性の向上に有効な高温焼鈍した場合や極低炭素鋼の場合に、化成処理性が著しく劣化する。
特許文献3では、炉内ガス中の酸素および水分を除去する、すなわち露点を下げることによって酸化皮膜、いわゆるテンパーカラーの発生を防止する方法が開示されている。そして、その実施例として、焼鈍終盤の露点を-60℃とし、テンパーカラーを改善している。しかしながら、特許文献3では、成形性の向上に有効な高温焼鈍した場合や極低炭素鋼の場合、化成処理性が著しく劣化する。
特許文献4には、極低炭素鋼を露点-20℃以下の100%水素雰囲気で730〜850℃の温度範囲にて箱焼鈍する方法が開示されている。しかしながら、特許文献4に記載の方法は化成処理性が著しく劣化する。
特許文献5には、テンパーカラー防止のため、真空引き後置換により雰囲気の露点および酸素濃度を下げる方法が開示されている。
特許文献6には、テンパーカラー防止のため、脱酸材を炉内に設置する方法が開示されている。
特許文献7には、酸化皮膜、いわゆるテンパーカラー防止のため露点を-40〜0℃とする方法が開示されている。一般に、バッチ焼鈍において露点は加熱初期において鋼板表面の付着物に起因して一旦上昇し、その後低下する。特許文献7では、加熱初期の露点を0℃以下に低下することにより酸化皮膜の発生を防止できるとしているが、焼鈍終盤での露点については記載されていない。また、化成処理性に関しても考慮されていない。
特許文献8には、20%水素、80%窒素ガスを雰囲気ガスとし、露点20℃で焼鈍する方法が開示されている。特許文献8の技術は熱延鋼板を、オープンコイルで脱炭する方法であり、本発明とは技術思想が全く異なる。その上に、水素主体の雰囲気ガスの記載もないし、化成処理性についても考慮されていない。
以上をまとめると、従来技術においては、バッチ焼鈍の主要技術課題としてテンパーカラーと化成処理性の問題があった。前者すなわちテンパーカラーの問題に対しては、露点、すなわち水分濃度または酸素濃度を低下させることで改善対策がとられていたが、後者の化成処理性の問題については全く考慮されていないか、あるいは十分でなかった。そのため、水素ガス主体の雰囲気による焼鈍を行う場合、能率、温度の均一性に優れる一方で、化成処理性が不可避的に劣化する問題があった。
特開平4-168228号公報 特開平7-97616号公報 特開2000-104123号公報 特開平6-172868号公報 特開平5-59456号公報 特開2000-45038号公報 特開平8-27523号公報 特開2001-234250号公報 NKK技報No.145(1994),47
以上のように、水素ガス主体の雰囲気で焼鈍を行う場合、能率、温度の均一性に優れる一方で、化成処理性が劣化する問題があった。
本発明は、上記の事情に鑑み、水素ガス主体の雰囲気によるバッチ焼鈍法を用いて、化成処理性に優れた冷延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、冷延鋼板を水素ガス主体の雰囲気でバッチ焼鈍した場合における、化成処理不良の発生原因と、化成処理性の優れた表面状態を明らかにすべく鋭意研究した。その結果、以下の知見を得た。
水素ガス主体の雰囲気でバッチ焼鈍すると、ガスの還元性が非常に高いため、鋼板中に含有される元素の中で最も酸化が容易なAl、Ti、Siが酸化物として表面濃化し、化成処理性を劣化させていることを初めて見出した。そして、これら酸化物は酸に対し化学的に安定なため、化成処理の化学反応を妨げ、化成処理性を劣化させたと考えた。そこで、化成処理性を向上させるための鋼板の表面状態について、さらに詳細に研究した結果、鋼板表面のMn酸化物量とAl、Ti、Siの各酸化物量の和の比を質量比で1.0以上に制御することにより、冷延鋼板の化成処理性が著しく有効であることを見出した。
また、上記化成処理性に優れた冷延鋼板を製造するに際しては、コイル最冷点が200℃以上での露点を制御し、かつ、焼鈍炉内のコイル最冷点が600℃以上において、露点を従来技術より高い温度領域で適正に制御することが重要であることをも見出した。
さらに、鋼の化学成分、焼鈍温度を適正な値にすることにより、成形性も向上することを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1]鋼板表面におけるFe酸化物量が10mg/m2以下で、かつ、Mn酸化物量の、Al、Ti、Siの各酸化物量の和に対する比が、質量比で1.0以上であることを特徴とする化成処理性に優れた冷延鋼板。
[2]前記[1]において、質量%で、C:0.0030%以下、Si:0.1%以下、Mn:0.2%以下、P:0.02%以下、S:0.02%以下、Sol.Al:0.01〜0.1%、N:0.0040%以下、B:0〜0.002%を含有し、更にTi:0〜0.1%、Nb:0〜0.05%でかつTi/48+Nb/93>2(C/12+N/14)を満たすように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする化成処理性に優れた冷延鋼板。
[3]前記[1]または[2]において、組織が、フェライト単相で、かつ、平均結晶粒径が15〜20μmであることを特徴とする化成処理性に優れた冷延鋼板。
[4]熱延鋼板を冷間圧延後、バッチ焼鈍する際に、雰囲気ガスの水素濃度を80%以上、
焼鈍炉内のコイル最冷点が200℃以上での雰囲気ガスの露点を30℃以下とし、さらに焼鈍炉内のコイル最冷点が600℃以上での雰囲気ガスの露点を-20℃以上とすることを特徴とする化成処理性に優れた冷延鋼板の製造方法。
[5]前記[4]において、前記熱延鋼板として、質量%で、C:0.0030%以下、Si:0.1%以下、Mn:0.2%以下、P:0.02%以下、S:0.02%以下、Sol.Al:0.01〜0.1%、N:0.0040%以下、B:0〜0.002%を含有し、更にTi:0〜0.1%、Nb:0〜0.05%でかつTi/48+Nb/93>2(C/12+N/14)を満たすように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる熱延鋼板を用いること特徴とする化成処理性に優れた冷延鋼板の製造方法。
[6]前記[4]または[5]において、バッチ焼鈍における前記コイル最冷点の到達温度が700℃以上であることを特徴とする化成処理性に優れた冷延鋼板の製造方法。
なお、本明細書において、鋼の成分を示す%は、すべて質量%であり、化学成分の下限が0のものについては、含有しない場合を含むことを意味する。
また、焼鈍炉内のコイル最冷点とは、焼鈍作業中における製品コイルで最も温度の低い位置であるが、通常の焼鈍作業では最冷点の位置は、最下段コイルと炉床の間で、内周と外周の1/2付近であることが知られているので、最冷点温度は前記位置での温度測定値を用いることができる。
本発明によれば、化成処理性、さらには、成形性に優れた冷延鋼板が得られる。そして、本発明では、前記冷延鋼板を、高能率でかつ均一な材質で製造することができる。また、本発明の冷延鋼板は、製造時において焼鈍工程のエネルギー効率に優れるため、低環境負荷の観点からも、自動車用の鋼板として最適である。
以下、発明について詳細に説明する。なお、本発明において、冷延鋼板とは、冷間圧延後焼鈍処理したものを指すこととする。
まず、本発明の重要な要件である、鋼板表面におけるFe酸化物量が10mg/m2以下、Mn酸化物量のAl、Ti、Siの各酸化物量の和に対する比が質量比で1.0以上について説明する。
鋼板の焼鈍作業において、鋼板の表面でFeが酸化物になると、外観が劣化するばかりか、化成処理性も劣化する。このとき、Fe酸化物量が10mg/m2を超えると、その悪影響が顕著となる。よって、Fe酸化物量は10mg/m2以下でなければならない。またこのような理由で、焼鈍作業では、Feが還元される雰囲気および温度条件が選択される。しかし、Feの還元雰囲気で焼鈍を行っても、Feよりも酸化しやすいAl,Ti,Si,Mnなどの元素は、選択的に酸化され、鋼板の表面で酸化物になる。このとき、Mn酸化物量多いと化成処理性が向上し、Al、Ti、Siの酸化物量が多いと劣化する。図1は、表面におけるMn酸化物量と表面Al、Ti、Siの各酸化物量の和ならびに化成処理性との関係を示した図である。なお、図1において、用いた供試材は種々の雰囲気でバッチ焼鈍した冷延鋼板であり、化成処理は市販の薬液を用いて、スプレー方式のリン酸亜鉛処理を実施した。そして、得られた化成処理後の供試材に対して、化成結晶粒の緻密度を電子顕微鏡像より目視で観察し、×(劣)、△(実用上問題ないレベル)、○(優れる)の3段階で化成処理性を判定した。図1より、明らかに、Mn酸化物量の、Al、Ti、Si酸化物量の和に対する比が1.0以上で化成処理性が良好となることがわかる。したがって、鋼板表面のMn酸化物量のAl、Ti、Siの各酸化物量の和に対する比は、質量比で1.0以上とする。なお、図1中△で示す鋼板は、化成処理性が実用可能レベルであるものの、やや、他の発明例と比較すると、化成結晶の均一性でやや劣った。したがって、さらに化成処理性を良好とするためには、Mn酸化物量のAl、Ti、Siの各酸化物量の和に対する比は、質量比で1.5以上とすることが望ましい。
次に鋼の化学成分および組織の限定理由について説明する。
C:0.0030%以下
Cは鋼板中の不純物として含有される。Cが0.0030%を超えると伸びおよびr値が著しく低下する。よって、Cは0.0030%以下とする必要がある。
Si:0.1%以下
Siは鋼板中の不純物として含有される。Siが0.1%を超えると伸びが低下する。よって、Siは0.1%以下とする必要がある。
Mn:0.2%以下
Mnは鋼板中の不純物として含有される。Mnが0.2%を超えると伸びおよびr値が著しく低下する。よって、Mnは0.2%以下とする必要がある。
P:0.02%以下
Pは鋼板中の不純物として含有される。Pが0.02%を超えると伸びが著しく低下する。よって、Pは0.02%以下とする必要がある。
S:0.02%以下
Sは鋼板中の不純物として含有される。Sが0.02%を超えると伸びが著しく低下する。よって、Sは0.02%以下とする必要がある。
Sol.Al:0.01〜0.1%
Alは脱酸の目的で添加される。0.01%未満ではその効果が十分でない。一方、0.1%を超えると伸びの劣化をもたらす。よって、Sol.Alは0.01%以上0.1%以下とする必要がある。
N:0.0040%以下
Nは鋼板中の不純物として含有される。Nが0.0040%を超えると伸びが著しく低下する。よって、Nは0.0040%以下とする必要がある。
B:0〜0.002%以下
Bは耐2次加工脆性を向上させる元素なので、必要に応じて含有してもよい。一方、0.002%を超えると、伸びおよびr値の劣化が著しくなる。よって、含有する場合は0.002%以下とする必要がある。
Ti:0〜0.1%、Nb:0〜0.05%でかつTi/48+Nb/93>2(C/12+N/14)
TiおよびNbは、CおよびNを化合物として析出させ、有害な固溶C,Nを除去することにより、伸びおよびr値を向上させるので必要に応じて含有してもよい。十分な効果を発揮するためには、原子比でTiとNbの和がCとNの和の2倍以上含有する必要がある。すなわち、Ti/48+Nb/93>2(C/12+N/14)である必要がある。一方で、Tiが0.1%を超えると、上記効果が飽和するばかりか、表面欠陥の発生頻度が増えるので、Tiは0.1%以下とする必要がある。また、Nbは0.05%を超えると、上記効果が飽和するばかりか、過剰に固溶したNbにより、伸びが低下するので、Nbは0.05%以下とする必要がある。
なお、上記以外の残部はFe及び不可避的不純物からなる。不可避的不純物として、化成処理性などを劣化させない範囲で、例えば、Cu:0.1%以下、Ni:0.1%以下、Sn:0.01%以下、Mo:0.01%以下、Cr:0.1%以下、Sb:0.01%以下、O:0.003%以下、Zr:0.01%以下を含有してもよい。
次に本発明の化成処理性に優れた冷延鋼板の組織について説明する。
組織がフェライト単相で、平均結晶粒径が15〜20μmであることが好ましい。
良好な伸びとr値を達成するためには、組織はフェライト単相が好ましい。さらに、その平均結晶粒径が15μm未満では、伸びおよびr値が劣化する場合がある。一方、平均結晶粒径が20μmを超えると、プレス成形した場合、肌荒れ状の表面欠陥が発生する場合がある。したがって、フェライトの平均結晶粒径は15〜20μmが好ましい。なお、本発明における平均結晶粒径とはJISG0552規定の切断法により測定した値を指すものとする。
次に、本発明の化成処理性に優れた冷延鋼板の製造方法について説明する。
熱延工程までは定法で製造される。鋳造は連続鋳造法でもよいし、鋳型鋳造法でもよい。連続鋳造の場合は、そのまま圧延してもよいし、一旦冷却後再加熱して圧延してもよい。再加熱する場合は伸びおよびr値を向上させるため、抽出温度は1100〜1200℃が望ましい。なお、熱延鋼板(鋼)の化学成分については、特に限定はしない。しかし、本発明では、鋼板表面におけるFe酸化物量が10mg/m2以下で、かつ、Mn酸化物量の、Al、Ti、Siの各酸化物量の和に対する比が質量比で1.0以上とすることが重要であり、そのために、後述するように、焼鈍時の雰囲気、露点を中心に製造条件を規定する。この点から、より一層化成処理性にすぐれた鋼板を得るためには、Mn:0.2%以下、Sol.Al:0.01〜0.1%、Ti:0〜0.1%、Si:0.1%以下の化学組成からなる熱延鋼板(鋼)を用いることが好ましい。
熱延後、冷間圧延を行う。また、冷間圧延前に酸洗を行ってもよい。r値を向上させるため、冷間圧延の圧延率は75%以上が望ましい。
冷間圧延後、焼鈍を行う。なお、焼鈍前に電解洗浄を行ってもよい。焼鈍はバッチ焼鈍法で行う。タイトコイルでもオープンコイル焼鈍でも効果はかわらないが、コスト面からタイトコイル焼鈍が望ましい。また、バッチ焼鈍はベル型焼鈍炉でも、コイル状のまま連続的に焼鈍する方式の炉でもどちらでもよく、限定しない。なお、コイルを巻きほぐして帯状で焼鈍するいわゆる連続焼鈍法は、焼鈍中における鋼板表面の酸化物の形成挙動がバッチ焼鈍とまったく異なるため、本発明の範囲外とする。
バッチ焼鈍における雰囲気:水素濃度は80%以上
バッチ焼鈍における雰囲気は、焼鈍作業の能率および、製品特性の均一性を良好とするために、非常に重要な要件である。水素濃度が80%未満では、雰囲気ガスと鋼板の熱伝導率が著しく低下し、加熱、冷却に長時間を有し、作業能率が著しく劣化する。また、コイル状に巻かれた板の隙間への雰囲気ガスの浸入が不十分となり、コイル幅方向の表面特性および機械的特性の均一性が著しく劣化する。よって、バッチ焼鈍における雰囲気は、水素濃度80%以上とする。残部は不活性ガス、還元性ガスであれば何でもよいが、コストを考慮すると窒素ガスが望ましい。
焼鈍炉内のコイル最冷点が200℃以上において、雰囲気ガスの露点は30℃以下
露点の規定は、Fe酸化物量を10mg/m2以下とするために、重要な要件である。また、良好な材質を得るためにも重要である。すなわち、焼鈍中に雰囲気ガスの露点が30℃を超えるとFeが酸化し、酸化物となるため、化成処理性が劣化する。コイルの最冷点を200℃以上と規定するのは、コイルの最冷点が200℃未満では、実質的に鋼板上での酸化還元反応が起こらないためである。さらに、特に高温域で焼鈍炉の雰囲気ガスの露点が30℃を超えると、脱炭が発生し、機械的特性が不均一になったり、結晶粒が粗大化して成形後に肌荒れが発生する。したがって、焼鈍炉内のコイル最冷点が200℃以上での雰囲気ガスの露点は30℃以下である必要がある。なお、雰囲気ガスは、組成および露点を制御されたガスを供給して、連続的に置換されるものとし、雰囲気ガスの露点は、この時の廃ガスで測定するものとする。
焼鈍炉内のコイル最冷点が600℃以上において、雰囲気ガスの露点を-20℃以上
600℃以上での露点の規定は、Mn酸化物量のAl、Ti、Siの各酸化物量の和に対する比を質量比で1.0以上とし、化成処理性の良好な鋼板を製造するために最も重要な要件である。
還元性の高い雰囲気ガス中で焼鈍すると、Feや鋼中のMnは還元され易く、一方、鋼中元素で酸化が容易なAl,Ti,Siが選択酸化されやすい。Al,Ti,Si酸化物は酸に対し化学的に安定なため、鋼板表面の酸化物は化学反応を妨げる。この選択酸化はFe酸化物が還元されやすい高温域で顕著であるので、コイル最冷点が600℃以上での雰囲気制御が必要である。露点が-20℃未満では、FeやMnは還元され、化成処理性に有害な鋼中のAl,Ti,Siのみが選択酸化し、化成処理性が極めて劣化する。したがって、コイル最冷点が600℃以上での雰囲気ガスの露点は-20℃以上である必要がある。さらに、この効果をさらに高め、化成処理性を向上させるためには-10℃以上が望ましい。
以上のように、熱延鋼板を冷間圧延後、バッチ焼鈍する際に、雰囲気ガスの水素濃度を80%以上、焼鈍炉内のコイル最冷点が200℃以上での雰囲気ガスの露点を30℃以下とし、
さらに焼鈍炉内のコイル最冷点が600℃以上での雰囲気ガスの露点を-20℃以上とすることにより、鋼板表面におけるFe酸化物量が10mg/m2以下で、かつ、Mn酸化物量の、Al、Ti、Siの各酸化物量の和に対する比が質量比で1.0以上である化成処理性にすぐれた冷延鋼板が得られる。
コイル最冷点の到達温度が700℃以上
コイル最冷点の到達温度が700℃未満では、伸びおよびr値が低下する場合がある。したがって、成形性を特に優れたものとするためには、上記製造条件に加えて、コイル最冷点の到達温度は700℃以上が好ましい。
なお、本発明においては、形状や表面粗さ調整のため、さらに、スキンパス圧延を行ってもよい。また、本発明の冷延鋼板は電気めっき性も良好であるので、各種めっき原板として用いてもよい。
表1に示す化学成分、組成を有するスラブを溶製し、1150℃に再加熱し、板圧3.6mmまで熱間圧延を行い、熱延板を得た。次いで、得られた熱延板に対して、酸化スケールを塩酸酸洗にて除去した後、0.7mmまで冷間圧延を行い、電解洗浄し、表2に示す種々のガス雰囲気でバッチ焼鈍を行った。このバッチ焼鈍において、加熱開始から最高温度到達までの時間は約24hとした。また、炉開放までの冷却時間は約24hとした。図2に焼鈍工程での、コイル最冷点の温度および露点の履歴例を、本発明例、比較例と併せて示す。図2に示すように、まず加熱初期では、本発明例、比較例ともにバッチ焼鈍の鋼板表面付着物に起因して露点が低下した。比較例では引き続き、時間の経過とともに、露点が低下し、終盤は-40℃以下に達した。これに対し、本発明例では露点が目標値まで低下した後、最高温度に到達する前後では露点を制御し、ほぼ一定値(0℃)とした。なお、露点の制御は、温度を制御した水中に雰囲気ガスをバブリングし、水蒸気を一定量混入させた。
バッチ焼鈍後、さらに伸長率0.6%でスキンパス圧延を行った。
以上により得られた冷延鋼板に対して、表面の酸化物量、組織を分析し、化成処理性、機械的特性を評価した。表2に製造条件と併せて、表面の酸化物量及び組織の分析結果、化成処理性及び機械的特性の特性評価結果を示す。
なお、鋼板の表面の酸化物量は、Mn酸化物は、インヒビターを添加した塩酸で酸可溶酸化膜のみを溶出させ、化学的に定量分析した。Al,Ti,Si酸化物は、地鉄(金属Fe)の上に形成している酸化物層を表面(層)とし、この表面層を機械的に分離した後、濃硫酸で金属Feおよび酸可溶酸化物を溶解し、溶解残渣中のAl,Ti,Si量をそれぞれ定量分析した。
組織(平均結晶粒径)は光学顕微鏡写真から圧延方向と板厚方向に切断法(JISG0552)で測定した。
化成処理性は市販の薬液を用いて、スプレー方式のリン酸亜鉛処理を実施し、化成結晶粒の緻密度を電子顕微鏡像より目視で、×(劣)、△(実用上問題ないレベル)、○(優れる)の3段階で判定した。
機械的特性は、圧延方向と平行にJIS5号試験片(JISZ2201)を採取し、JISZ2241に準拠して試験した。r値はJISZ2254に準拠し、平均r値を測定した。なお、機械的特性値の目標値は伸び50%以上、平均r値2.0以上である。
Figure 0005040090
Figure 0005040090
表2より明らかなように、鋼板表面におけるMn酸化物量のAl、Ti、Siの各酸化物量の和に対する比が質量比で1.0以上である本発明例(符号A〜E、G、M〜S)は、化成処理性に優れる。符号Iの本発明例も実用上問題ないレベルである。また、水素ガス主体の雰囲気のため、温度の均一性、加熱、冷却時間を考慮した能率も良好であった。
ただし、符号D、Mの本発明例は、実用上問題ないレベルではあるが、到達温度が低いため、結晶粒径が小さく、そのため伸びおよびr値が他の本発明例と比べて低い。符号R、Sの本発明例は、実用上問題ないレベルではあるが、鋼中のC量が高いため、伸びおよびr値が他の本発明例と比べて低い。符号Qの本発明例は、実用上問題ないレベルではあるが、鋼中のSi量が高く、Siによる固溶強化のため、伸びおよびr値が低い。その他の符号A〜C、E、G、I、N〜Pの本発明例は、化成処理性に加えて機械特性にも優れている。
これに対し、符号Fは焼鈍炉内のコイル最冷点が200℃以上での露点の最高値が40℃で、表面Fe酸化物が生成したため、化成処理性がよくない。符号Hは焼鈍炉内のコイル最冷点が200℃以上での露点の最高値が50℃で、表面Fe酸化物が生成したため、化成処理性がよくない。さらに、高温域での露点が高いため、焼鈍中の脱炭し、フェライト結晶粒が粗大、不均一となり、伸びが著しく劣化した。符号J〜Lの比較例は、焼鈍炉内のコイル最冷点が600℃以上での露点が低いため、鋼板表面Mn酸化物量とAl,Ti,Siの各酸化物量の和の比が1.0未満であり、化成処理すると化成皮膜に著しい不均一なムラが発生した。
本発明の優れた特性から、自動車用途を中心に本発明の冷延鋼板は極めて有効である。
表面Mn酸化物量と表面Al、Ti、Siの各酸化物量の和及び化成処理性との関係を示す図である。 焼鈍工程での、温度および露点の履歴例を示す図である。(実施例1)

Claims (3)

  1. 熱延鋼板を冷間圧延後、バッチ焼鈍する際に、
    雰囲気ガスの水素濃度を80%以上、
    焼鈍炉内のコイル最冷点が200℃以上での雰囲気ガスの露点を30℃以下とし、
    さらに焼鈍炉内のコイル最冷点が600℃以上での雰囲気ガスの露点を-20℃以上
    とすることを特徴とする化成処理性に優れた冷延鋼板の製造方法。
  2. 前記熱延鋼板として、質量%で、C:0.0030%以下、Si:0.1%以下、Mn:0.2%以下、P:0.02%以下、S:0.02%以下、Sol.Al:0.01〜0.1%、N:0.0040%以下、B:0〜0.002%を含有し、更にTi:0〜0.1%、Nb:0〜0.05%でかつTi/48+Nb/93>2(C/12+N/14)を満たすように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる熱延鋼板を用いることを特徴とする請求項に記載の化成処理性に優れた冷延鋼板の製造方法。
  3. バッチ焼鈍における前記コイル最冷点の到達温度が700℃以上であることを特徴とする請求項またはに記載の化成処理性に優れた冷延鋼板の製造方法。
JP2005283611A 2005-09-29 2005-09-29 化成処理性に優れた冷延鋼板およびその製造方法 Active JP5040090B2 (ja)

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