JP5040090B2 - 化成処理性に優れた冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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水素ガス主体の雰囲気でバッチ焼鈍すると、ガスの還元性が非常に高いため、鋼板中に含有される元素の中で最も酸化が容易なAl、Ti、Siが酸化物として表面濃化し、化成処理性を劣化させていることを初めて見出した。そして、これら酸化物は酸に対し化学的に安定なため、化成処理の化学反応を妨げ、化成処理性を劣化させたと考えた。そこで、化成処理性を向上させるための鋼板の表面状態について、さらに詳細に研究した結果、鋼板表面のMn酸化物量とAl、Ti、Siの各酸化物量の和の比を質量比で1.0以上に制御することにより、冷延鋼板の化成処理性が著しく有効であることを見出した。
[1]鋼板表面におけるFe酸化物量が10mg/m2以下で、かつ、Mn酸化物量の、Al、Ti、Siの各酸化物量の和に対する比が、質量比で1.0以上であることを特徴とする化成処理性に優れた冷延鋼板。
[2]前記[1]において、質量%で、C:0.0030%以下、Si:0.1%以下、Mn:0.2%以下、P:0.02%以下、S:0.02%以下、Sol.Al:0.01〜0.1%、N:0.0040%以下、B:0〜0.002%を含有し、更にTi:0〜0.1%、Nb:0〜0.05%でかつTi/48+Nb/93>2(C/12+N/14)を満たすように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする化成処理性に優れた冷延鋼板。
[3]前記[1]または[2]において、組織が、フェライト単相で、かつ、平均結晶粒径が15〜20μmであることを特徴とする化成処理性に優れた冷延鋼板。
[4]熱延鋼板を冷間圧延後、バッチ焼鈍する際に、雰囲気ガスの水素濃度を80%以上、
焼鈍炉内のコイル最冷点が200℃以上での雰囲気ガスの露点を30℃以下とし、さらに焼鈍炉内のコイル最冷点が600℃以上での雰囲気ガスの露点を-20℃以上とすることを特徴とする化成処理性に優れた冷延鋼板の製造方法。
[5]前記[4]において、前記熱延鋼板として、質量%で、C:0.0030%以下、Si:0.1%以下、Mn:0.2%以下、P:0.02%以下、S:0.02%以下、Sol.Al:0.01〜0.1%、N:0.0040%以下、B:0〜0.002%を含有し、更にTi:0〜0.1%、Nb:0〜0.05%でかつTi/48+Nb/93>2(C/12+N/14)を満たすように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる熱延鋼板を用いることを特徴とする化成処理性に優れた冷延鋼板の製造方法。
[6]前記[4]または[5]において、バッチ焼鈍における前記コイル最冷点の到達温度が700℃以上であることを特徴とする化成処理性に優れた冷延鋼板の製造方法。
Cは鋼板中の不純物として含有される。Cが0.0030%を超えると伸びおよびr値が著しく低下する。よって、Cは0.0030%以下とする必要がある。
Siは鋼板中の不純物として含有される。Siが0.1%を超えると伸びが低下する。よって、Siは0.1%以下とする必要がある。
Mnは鋼板中の不純物として含有される。Mnが0.2%を超えると伸びおよびr値が著しく低下する。よって、Mnは0.2%以下とする必要がある。
Pは鋼板中の不純物として含有される。Pが0.02%を超えると伸びが著しく低下する。よって、Pは0.02%以下とする必要がある。
Sは鋼板中の不純物として含有される。Sが0.02%を超えると伸びが著しく低下する。よって、Sは0.02%以下とする必要がある。
Alは脱酸の目的で添加される。0.01%未満ではその効果が十分でない。一方、0.1%を超えると伸びの劣化をもたらす。よって、Sol.Alは0.01%以上0.1%以下とする必要がある。
Nは鋼板中の不純物として含有される。Nが0.0040%を超えると伸びが著しく低下する。よって、Nは0.0040%以下とする必要がある。
Bは耐2次加工脆性を向上させる元素なので、必要に応じて含有してもよい。一方、0.002%を超えると、伸びおよびr値の劣化が著しくなる。よって、含有する場合は0.002%以下とする必要がある。
TiおよびNbは、CおよびNを化合物として析出させ、有害な固溶C,Nを除去することにより、伸びおよびr値を向上させるので必要に応じて含有してもよい。十分な効果を発揮するためには、原子比でTiとNbの和がCとNの和の2倍以上含有する必要がある。すなわち、Ti/48+Nb/93>2(C/12+N/14)である必要がある。一方で、Tiが0.1%を超えると、上記効果が飽和するばかりか、表面欠陥の発生頻度が増えるので、Tiは0.1%以下とする必要がある。また、Nbは0.05%を超えると、上記効果が飽和するばかりか、過剰に固溶したNbにより、伸びが低下するので、Nbは0.05%以下とする必要がある。
組織がフェライト単相で、平均結晶粒径が15〜20μmであることが好ましい。
良好な伸びとr値を達成するためには、組織はフェライト単相が好ましい。さらに、その平均結晶粒径が15μm未満では、伸びおよびr値が劣化する場合がある。一方、平均結晶粒径が20μmを超えると、プレス成形した場合、肌荒れ状の表面欠陥が発生する場合がある。したがって、フェライトの平均結晶粒径は15〜20μmが好ましい。なお、本発明における平均結晶粒径とはJISG0552規定の切断法により測定した値を指すものとする。
熱延工程までは定法で製造される。鋳造は連続鋳造法でもよいし、鋳型鋳造法でもよい。連続鋳造の場合は、そのまま圧延してもよいし、一旦冷却後再加熱して圧延してもよい。再加熱する場合は伸びおよびr値を向上させるため、抽出温度は1100〜1200℃が望ましい。なお、熱延鋼板(鋼)の化学成分については、特に限定はしない。しかし、本発明では、鋼板表面におけるFe酸化物量が10mg/m2以下で、かつ、Mn酸化物量の、Al、Ti、Siの各酸化物量の和に対する比が質量比で1.0以上とすることが重要であり、そのために、後述するように、焼鈍時の雰囲気、露点を中心に製造条件を規定する。この点から、より一層化成処理性にすぐれた鋼板を得るためには、Mn:0.2%以下、Sol.Al:0.01〜0.1%、Ti:0〜0.1%、Si:0.1%以下の化学組成からなる熱延鋼板(鋼)を用いることが好ましい。
バッチ焼鈍における雰囲気は、焼鈍作業の能率および、製品特性の均一性を良好とするために、非常に重要な要件である。水素濃度が80%未満では、雰囲気ガスと鋼板の熱伝導率が著しく低下し、加熱、冷却に長時間を有し、作業能率が著しく劣化する。また、コイル状に巻かれた板の隙間への雰囲気ガスの浸入が不十分となり、コイル幅方向の表面特性および機械的特性の均一性が著しく劣化する。よって、バッチ焼鈍における雰囲気は、水素濃度80%以上とする。残部は不活性ガス、還元性ガスであれば何でもよいが、コストを考慮すると窒素ガスが望ましい。
露点の規定は、Fe酸化物量を10mg/m2以下とするために、重要な要件である。また、良好な材質を得るためにも重要である。すなわち、焼鈍中に雰囲気ガスの露点が30℃を超えるとFeが酸化し、酸化物となるため、化成処理性が劣化する。コイルの最冷点を200℃以上と規定するのは、コイルの最冷点が200℃未満では、実質的に鋼板上での酸化還元反応が起こらないためである。さらに、特に高温域で焼鈍炉の雰囲気ガスの露点が30℃を超えると、脱炭が発生し、機械的特性が不均一になったり、結晶粒が粗大化して成形後に肌荒れが発生する。したがって、焼鈍炉内のコイル最冷点が200℃以上での雰囲気ガスの露点は30℃以下である必要がある。なお、雰囲気ガスは、組成および露点を制御されたガスを供給して、連続的に置換されるものとし、雰囲気ガスの露点は、この時の廃ガスで測定するものとする。
600℃以上での露点の規定は、Mn酸化物量のAl、Ti、Siの各酸化物量の和に対する比を質量比で1.0以上とし、化成処理性の良好な鋼板を製造するために最も重要な要件である。
還元性の高い雰囲気ガス中で焼鈍すると、Feや鋼中のMnは還元され易く、一方、鋼中元素で酸化が容易なAl,Ti,Siが選択酸化されやすい。Al,Ti,Si酸化物は酸に対し化学的に安定なため、鋼板表面の酸化物は化学反応を妨げる。この選択酸化はFe酸化物が還元されやすい高温域で顕著であるので、コイル最冷点が600℃以上での雰囲気制御が必要である。露点が-20℃未満では、FeやMnは還元され、化成処理性に有害な鋼中のAl,Ti,Siのみが選択酸化し、化成処理性が極めて劣化する。したがって、コイル最冷点が600℃以上での雰囲気ガスの露点は-20℃以上である必要がある。さらに、この効果をさらに高め、化成処理性を向上させるためには-10℃以上が望ましい。
さらに焼鈍炉内のコイル最冷点が600℃以上での雰囲気ガスの露点を-20℃以上とすることにより、鋼板表面におけるFe酸化物量が10mg/m2以下で、かつ、Mn酸化物量の、Al、Ti、Siの各酸化物量の和に対する比が質量比で1.0以上である化成処理性にすぐれた冷延鋼板が得られる。
コイル最冷点の到達温度が700℃未満では、伸びおよびr値が低下する場合がある。したがって、成形性を特に優れたものとするためには、上記製造条件に加えて、コイル最冷点の到達温度は700℃以上が好ましい。
バッチ焼鈍後、さらに伸長率0.6%でスキンパス圧延を行った。
以上により得られた冷延鋼板に対して、表面の酸化物量、組織を分析し、化成処理性、機械的特性を評価した。表2に製造条件と併せて、表面の酸化物量及び組織の分析結果、化成処理性及び機械的特性の特性評価結果を示す。
Claims (3)
- 熱延鋼板を冷間圧延後、バッチ焼鈍する際に、
雰囲気ガスの水素濃度を80%以上、
焼鈍炉内のコイル最冷点が200℃以上での雰囲気ガスの露点を30℃以下とし、
さらに焼鈍炉内のコイル最冷点が600℃以上での雰囲気ガスの露点を-20℃以上
とすることを特徴とする化成処理性に優れた冷延鋼板の製造方法。 - 前記熱延鋼板として、質量%で、C:0.0030%以下、Si:0.1%以下、Mn:0.2%以下、P:0.02%以下、S:0.02%以下、Sol.Al:0.01〜0.1%、N:0.0040%以下、B:0〜0.002%を含有し、更にTi:0〜0.1%、Nb:0〜0.05%でかつTi/48+Nb/93>2(C/12+N/14)を満たすように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる熱延鋼板を用いることを特徴とする請求項1に記載の化成処理性に優れた冷延鋼板の製造方法。
- バッチ焼鈍における前記コイル最冷点の到達温度が700℃以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の化成処理性に優れた冷延鋼板の製造方法。
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