JP2019014927A - 無方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また特許文献7において、Cu硫化物の析出形態を制御する技術が開示されているが、Cu硫化物以外の析出物が存在する場合、Cu硫化物の無害化が困難になるという課題があった。
(1) すなわち、本発明の一態様に係る無方向性電磁鋼板は、質量%で、C:0.0100%以下、Si:0.10〜5.00%、Mn:0.010〜2.000%、Al:0.10〜3.00%、S:0.0001〜0.0300%、P:0.0010〜0.2000%、Cu:0.005〜2.000%、N:0.0001〜0.0150%、O:0.0010〜0.0200%、Mg:0〜0.0100%、Ti:0〜0.0100%及びZr:0〜0.0100%を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有し、結晶系がCubic型の酸化物とCu硫化物とが複合析出し、平均直径が10〜5000nmである複合析出物の個数密度が0.001〜10.000個/μm2である。
(2) 上記(1)に記載の無方向性電磁鋼板の電解抽出残渣に対するX線回折において得られる、2θ=46.8°に現れるHexagonal構造を有するCu硫化物の回折強度であるI2θ=46.8と、2θ=32.9°に現れるCubic構造を有するMn2O3の回折強度であるI2θ=32.9が下記式1の条件を満たしてもよい。
I2θ=46.8/I2θ=32.9≧0.10・・・式1
(3) 上記(1)または(2)に記載の無方向性電磁鋼板の電解抽出残渣に対するX線回折において得られる、2θ=46.8°に現れるHexagonal構造を有するCu硫化物の回折強度であるI2θ=46.8と、2θ=21.6°に現れるCubic構造を有するSiO2、2θ=42.9°に現れるCubic構造を有するMgO、2θ=43.3°に現れるCubic構造を有するTiO、2θ=45.9°に現れるCubic構造を有するAl2O3のそれぞれの回析強度が下記式2の条件を満たしてもよい。
I2θ=46.8/(I2θ=21.6+I2θ=42.9+I2θ=43.3+I2θ=45.9)≧0.010・・・式2
ただし、I2θ=21.6、I2θ=42.9、I2θ=43.3、I2θ=45.9はそれぞれ、2θ=21.6°に現れるCubic構造を有するSiO2、2θ=42.9°に現れるCubic構造を有するMgO、2θ=43.3°に現れるCubic構造を有するTiO、2θ=45.9°に現れるCubic構造を有するAl2O3のXRDの回折ピーク高さである。
(4) 上記(1)〜(3)の何れか一項に記載の無方向性電磁鋼板の電解抽出残渣に対するX線回折において得られる、2θ=32.1°に現れるCubic構造を有するCu硫化物の回折強度であるI2θ=32.1と、2θ=46.8°に現れるHexagonal構造を有するCu硫化物の回折強度であるI2θ=46.8とが、下記式3の条件を満たしてもよい。
I2θ=46.8/I2θ=32.1>0.50・・・式3
(5) 本発明に係る無方向性電磁鋼板の製造方法は、(1)に記載の化学組成を有する鋼片に熱間圧延を行い、熱延鋼板を得る熱延工程と、前記熱延工程後の前記熱延鋼板を酸洗する酸洗工程と、前記酸洗工程後の前記熱延鋼板に冷間圧延を行い、冷延鋼板を得る冷延工程と、前記冷延鋼板を焼鈍する仕上焼鈍工程とを有する無方向性電磁鋼板の製造方法であって、前記仕上焼鈍工程において、下記式4に示すT1(℃)以上で10秒以上3600秒以下の保持を行い、前記仕上焼鈍工程の冷却において、前記T1(℃)以下、下記式5に示すT2(℃)以上の温度域における平均冷却速度CR1を60℃/秒未満とする。
T1(℃)=15000/(12−log10([%Cu]2×[%S]))−273・・・式4
T2(℃)=15000/(12−log10([%Cu]2×[%S]))−373・・・式5
なお、上記式中の[%Cu]はCuの質量%での含有量であり、[%S]はSの質量%での含有量である。
(6) 上記(5)に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法は、前記仕上焼鈍工程の冷却において、下記式6に示すT3(℃)以上、前記T2(℃)以下の温度域における平均冷却速度CR2を20℃/秒以上としてもよい。
T3(℃)=15000/(12−log10([%Cu]2×[%S]))−473・・・式6
なお、上記式中の[%Cu]はCuの質量%での含有量であり、[%S]はSの質量%での含有量である。
(7) 上記(5)または(6)に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法は、前記熱延工程の鋼片加熱温度を下記式7記載のT4(℃)以下かつ下記式8記載のT5(℃)以上とし、熱間圧延した後、熱延板の巻取温度を下記式9記載のT6(℃)以下に制御してもよい。
T4(℃)=15000/(6−log10([%Mn]×[%O]))−273・・・式7
T5(℃)=14900/(8−log10([%Mn]×[%S]))−473・・・式8
T6(℃)=14900/(8−log10([%Mn]×[%S]))−573・・・式9
なお、上記式中の[%Mn]はMnの質量%での含有量であり、[%O]はOの質量%での含有量であり、[%S]はSの質量%での含有量である。
(8) 上記(5)〜(7)の何れか一項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法は、前記熱延工程と前記酸洗工程との間に、前記熱延鋼板を焼鈍する熱延板焼鈍工程を備えてもよい。
なお、本発明によれば、無方向性電磁鋼板において求められる鉄損以外の特性(磁束密度や加工性など)は、従来材と同等以上を確保できる。
C:0.0100%以下
Cが多く存在すると磁気時効によって鉄損を著しく劣化させる。そのため、C含有量の上限を0.0100%以下とする。下限は0%を含むが、Cはトランプエレメントとして少なくとも0.0001%以上混入することが好ましい。磁気時効の回避を考慮すると、C含有量は0.0001〜0.0070%がより好ましい。更に好ましいC含有量は0.0001〜0.0050%である。
Siの含有量は0.10%未満では良好な鉄損が得られないため、Si含有量の下限を0.10%以上とする。一方で、Si含有量が5.00%を超えると、脆性が劣化し、製造工程での通板が困難となる。したがって、Si含有量の上限を5.00%以下とする。磁性と通板性の観点から、好ましいSi含有量は2.00〜4.00%であり、より好ましくは2.50〜3.50%である。
MnはOと反応してMn酸化物を形成するので、本発明では重要な元素のひとつである。鋼中に多量のMnが存在する場合、MnSが析出することにより、Cu2Sの析出量が低下し、本発明の効果が享受できなくなる。そのため、Mn含有量の上限を2.000%以下とする。一方、Mn含有量が0.010%未満であると、熱間圧延時に鋼板が脆化する。そのため、Mn含有量の下限を0.010%以上とする。好ましくは、Mn含有量は0.050〜1.500%であり、より好ましくは、0.100〜1.000%である。
Alは含有量が多いと、Siと同様に鋼板の硬度上昇を招き、製造工程での通板が困難になる。そのため、生産性を考慮してAl含有量の上限を3.00%以下とする。AlはSi同様、電気抵抗を上げる効果を有するため、下限を0.10%以上とする。好ましいAl含有量は0.20〜2.00%であり、より好ましくは0.30〜1.50%である。
Pは鋼板の硬度を高め、打ち抜き性を向上させる作用を有する。しかし、0.2000%を超えて含有すると鋼板の硬さが上昇するので、打ち抜き金型の摩耗が速くなり、モーター鉄心の製造コストが増加する。また、鋼板が固くなるため、通板そのものが難しくなる。そのため、P含有量の上限を0.2000%以下とする。一方、微量のPは磁束密度を改善する効果を有する。これらの効果を得るため、P含有量の下限を0.0010%以上とする。好ましいP含有量は0.0010〜0.1500%であり、より好ましくは0.0010〜0.1000%である。
S含有量は硫化物量に直接関係する。S含有量が過剰であると、Sが固溶状態で鋼中に存在し、熱間圧延時に鋼が脆化する。そのため、S含有量の上限を0.0300%以下とする。一方でSが存在しないと、Cuは金属Cuとして微細析出し、粒成長を妨げ磁束密度劣化の原因となる。そのため、S含有量の下限を0.0001%以上とする。好ましいSi含有量は0.0010〜0.0100%であり、より好ましくは0.0010〜0.0050%である。
CuはCu硫化物を形成するため、本発明において特に重要な元素である。Cu含有量が多すぎると、熱間脆性が生じる。そのため、Cu含有量の上限を2.000%以下とする。一方、Cuが少なすぎる場合、TiSなどの他の微細な硫化物が析出し、鉄損劣化の原因となるため、Cu含有量の下限を0.005%以上とする必要がある。好ましいCu含有量は0.010〜1.000%であり、より好ましくは0.010〜0.500%である。
Nが過剰であると窒化物の析出量が増えすぎ、結晶粒の成長を阻害し、磁束密度が劣化する。そのためN含有量の上限を0.0150%以下とする。窒化物による強度上昇を期待しないのであればNは低いほど好ましい。すなわち、Nの下限値は0%を含むが、Nの検出限界が0.0001%なので、これを考慮して、Nの下限値を0.0001%以上とする。N含有量は、0.0001〜0.0050%とするのが、磁気特性にとって好ましく、より好ましくは0.0001〜0.0030%である。
OはMn酸化物の析出量に直接関係するため、本発明において重要な元素である。O含有量が過剰であると、微細酸化物を多数形成し、かえって磁束密度を低下させる。そのため、O含有量の上限を0.0200%以下とする。一方で、Mn酸化物を析出させ、本発明効果を享受するには、Oを少なくとも0.0010%以上含有させる必要がある。そのため、O含有量の下限を0.0010%以上とする。好ましいO含有量は0.0010〜0.0150%であり、より好ましくは0.0050〜0.0100%である。
Mg含有量はMgOの析出量に直接関係するため、本発明において制御すべき元素である。Mgが多すぎると、鋼中で微細なMgSを形成し、鋼板粒成長を阻害し磁束密度の低下の原因となる。そのため、その上限を0.0100%以下とする。また、Mgは0.0001%以上含有してもよい。Mg含有量の好ましい範囲は0.0001〜0.0060%であり、より好ましくは0.0001〜0.0030%である。
ZrはZrO2を形成する元素であり、本発明効果を更に発揮することが可能であるため、選択的に含有させることのできる元素である。Zrが多すぎると、熱間脆性が悪化する。そのため、その上限を0.0100%以下とする。また、Zrは0.0001%以上含有してもよい。Zr含有量の好ましい範囲は0.0001〜0.0060%であり、より好ましくは0.0001〜0.0030%である。
Ti含有量が過剰であると、微細炭化物を形成して粒成長を抑制し、磁束密度を低下させる。そのため、Ti含有量の上限を0.0100%以下とする。また、Tiは0.0001%以上含有してもよい。好ましいTi含有量は0.0001〜0.0060%であり、より好ましくは0.0001〜0.0030%である。
次に、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板における重要な制御因子である酸化物の結晶構造について説明する。Cu硫化物は、鋼板中での存在を完全になくすことが困難である。そこで、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板では、Cubic型の酸化物を析出核としてCu硫化物が複合析出するように制御し、良好な鉄損を得る。すなわち、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板においては、CuおよびOを含有し、かつ10〜5000nmの平均直径を有する複合析出物の単位面積当たりの個数密度(面密度)を、0.001〜10.000個/μm2と規定する。好ましくは0.001〜1.000個/μm2、より好ましくは0.001〜0.100個/μm2、更に好ましくは0.001〜0.010個/μm2である。析出核となる酸化物はCubic型の結晶構造を有していればよく、例えば、Mn2O3、MgO、TiO、Al2O3、SiO2などである。なお、結晶構造がCubic型であれば、カチオンとアニオンの化学結合比が異なっても本発明効果を享受できる。また、Cubic型の酸化物が球形をとらず、矩形の場合は、短軸長さと長軸長さとの平均値を複合析出物の平均直径と定義する。
次に、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法について述べる。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、上述した成分組成となるように通常の電磁鋼板と同様に転炉で溶製され、連続鋳造された鋼片に、熱間圧延、熱延板焼鈍、冷間圧延、仕上焼鈍などを行うことによって製造できる。
なお、本実施形態において、熱延工程後の酸洗については特に限定しない。また、冷間圧延についても特に限定せず、二回以上冷延、温間圧延などの冷延方法及び冷延圧下率によらず、鉄損改善効果を享受できる。またこれらの工程に加え、絶縁皮膜の形成や脱炭工程などを経ても構わない。
仕上焼鈍工程において、下記式4記載のT1(℃)、下記式5記載のT2(℃)および下記式6記載のT3(℃)が重要な意味を持つ。下記T1(℃)はCu硫化物の固溶温度であり、下記T2(℃)はHexagonal型のCu硫化物が析出する下限温度かつCubic型のCu硫化物が析出する上限温度、下記T3(℃)はCubic型のCu硫化物が析出する下限温度である。
T2(℃)=15000/(12−log10([%Cu]2×[%S]))−373・・・式5
T3(℃)=15000/(12−log10([%Cu]2×[%S]))−473・・・式6
本実施形態では酸化物を析出核として活用するため、仕上焼鈍工程の前工程までにCubic型の酸化物をなるべく多く析出させることが好ましい。特に、Cu硫化物と格子整合性の良好なMn酸化物を多く析出させ、Mn硫化物の析出を回避しておくことが好ましい。そのためには、まず熱延工程において、鋼片加熱温度をMn酸化物の固溶温度である下記式7記載のT4(℃)以下かつ、微細なMnSが固溶する温度である下記式8記載のT5(℃)以上に制御して、保持することが好ましい。MnSの完全な固溶温度はT5+200℃程度であるが、鋼片中の粗大なMnSは磁性への悪影響をほとんど与えないので、鋼片加熱温度をT5(℃)以上とすることで、本発明の効果は享受できる。
T5(℃)=14900/(8−log10([%Mn]×[%S]))−473・・・式8
冷間圧延前の熱延板を焼鈍することで、熱間圧延における温度偏差や析出物の分散状態のばらつきを均一化させ、鉄損を改善することが可能である。溶け残りの微細MnSを固溶させ、Mn酸化物を析出させることで本発明効果を更に発揮できるため、熱延板焼鈍工程において、前記T5(℃)以上に保持することは磁性にとって好ましい。本発明と関連するMn2O3、MgO、TiO、Al2O3、SiO2の固溶温度は、一般的には1250℃以上である。そのため、酸化物の溶解を回避すべく、熱延板焼鈍工程における保持温度を1250℃以下に設定することが好ましい。磁性にとってより好ましくは、T5+100〜1250℃で保持することである。
表1(鋼No.A1〜A27、鋼No.a1〜a15)に示す成分のインゴットを真空溶解し、1200℃に加熱して3600秒保持した後、巻き取り温度が700℃となるように熱間圧延し、板厚2.0mmの熱延鋼板を得た。その後、酸洗を経て圧下率75%で冷間圧延し、板厚0.50mmの冷延鋼板とした。続いて1000℃で30秒の仕上焼鈍を行った。仕上焼鈍後の冷却において、T1〜T2(℃)間の平均冷却速度CR1を30℃/秒とし、T2〜T3(℃)間の平均冷却速度CR2を18℃/秒とした。
G(Good):3.00≦W15/50(W/kg)≦3.40
F(Fair):3.40<W15/50(W/kg)≦4.50
B(Bad):4.50<W15/50(W/kg)
比較鋼のNo.b2およびb6は平均直径が10〜5000nmである、Cu硫化物と酸化物の複合析出物の個数密度(面密度)が発明範囲を越えており、鉄損はいずれも4.50W/kgを超える悪値だったため、評価を「B」とし、不合格と判定した。
No.b8、b11およびb15は、そもそも磁束密度B50が1.50T未満であり、目標値に達しなかったため不合格と判定し、析出物の観察を行っていない。
No.b5、b12、b14は、観察されたCu硫化物のうち、Cubic型の酸化物と複合析出していたCu硫化物の個数割合が50%未満であり、Cu硫化物と酸化物の複合析出物が得られず、鉄損は4.50W/kgを超える悪値を示したため、評価を「B」とし、不合格と判定した。
No.b1は磁気時効を示したため、不合格と判定した。
No.b3、b4、b7、b9、b10、b13は、熱間圧延または冷間圧延が困難であったため、不合格と判定した。
表1に示すNo.A14、A15、A18〜A21、A23〜A27に示す成分のインゴットを真空溶解し、1100℃でインゴットを加熱して、それぞれの温度にて4500秒保持した後、巻き取り温度が480℃となるように熱間圧延し、板厚2.0mmの熱延鋼板を得た。その後、酸洗を経て圧下率75%で冷間圧延し、板厚0.50mmの冷延鋼板とした。続いて950℃で60秒の仕上焼鈍を行った。冷却において、T1〜T2(℃)間の平均冷却速度CR1を38℃/秒とした。また、T2〜T3(℃)間の平均冷却速度CR2を30℃/秒とした。
表1に示す鋼No.A7、A11、A18〜A27の成分を有するインゴットを真空溶解し、1200℃で加熱して、それぞれの温度にて3600秒保持した後、巻き取り温度が750℃となるように熱間圧延し、板厚2.0mmの熱延板を得た。その後、酸洗を経て圧下率75%で冷間圧延し、板厚0.50mmの冷延鋼板とした。続いて950℃で60秒の仕上焼鈍を行った。仕上焼鈍後の冷却において、T1〜T2(℃)間の平均冷却速度CR1を42℃/秒とし、T2〜T3(℃)間の平均冷却速度CR2を25℃/秒とした。
表1に示す鋼No.A15〜A23およびA27の成分を有するインゴットを真空溶解し、1200℃で加熱して3600秒保持した後、巻取温度が580℃となるように熱間圧延して板厚2.0mmの熱延板とした。熱延板を1100℃で50秒の熱延板焼鈍を実施した。その後、すべての熱延板において、酸洗を経て圧下率75%で冷間圧延し、板厚0.50mmの冷延鋼板とし、1000℃で40秒の仕上焼鈍を行った。冷却において、T1〜T2(℃)間の平均冷却速度CR1を32℃/秒とした。また、T2〜T3(℃)間の平均冷却速度CR2を55℃/秒とした。
表1に示す鋼No.A15、A27の成分を有するインゴットを真空溶解し、1200℃に加熱して3600秒保持した後、巻取温度が490℃となるように熱間圧延をして板厚2.0mmの熱延鋼板とした。その後、酸洗を経て圧下率75%で冷間圧延し、板厚0.50mmの冷延鋼板とした。その後、表6に示す条件で仕上焼鈍を行った。
表1に示す鋼No.A13〜A17,A19,A20,A22〜A27の成分を有するインゴットを真空溶解し、このインゴットを表7に示す条件で加熱、保持した後に熱間圧延し、板厚2.0mmの熱延鋼板とした。その後、酸洗を経て圧下率75%で冷間圧延し、板厚0.50mmの冷延鋼板とした。その後、表7に示す条件で仕上焼鈍を行った。
No.G6およびG9はT3〜T2(℃)間の平均冷却速度CR2または熱間圧延における巻取温度が好ましい範囲(500〜T6(℃))の範囲外だったため、鉄損評価は「F」だった。No.G4およびG5は平均冷却速度CR2が20℃/秒未満だったが、熱延工程における鋼片加熱の保持温度がより好ましい範囲(2400秒〜10000秒)に制御されていたため、鉄損評価は「G」と比較的良好な結果だった。
表1に示す鋼No.A12〜A27の成分を有するインゴットを真空溶解し、このインゴットを表8に示す条件で加熱、保持した後に熱間圧延し、板厚2.0mmの熱延鋼板とした。その後、表8に示す条件で熱延板焼鈍を施した後、酸洗を経て圧下率75%で冷間圧延し、板厚0.50mmの冷延鋼板とした。この冷延鋼板に対し、表8に示す条件で仕上焼鈍を行った。
No.H2、H3、H5〜H7、H15〜H17は、熱間圧延における鋼片加熱温度、鋼片加熱時間(保持時間)および巻取温度のいずれかが好ましい範囲外だった。このため、鉄損評価は「G」にとどまった。
No.H1は熱間圧延における鋼片加熱温度および仕上焼鈍工程のT3〜T2(℃)間の平均冷却速度CR2が好ましい範囲外だった。このため、鉄損評価が「F」だった。
Claims (8)
- 質量%で、
C:0.0100%以下、
Si:0.10〜5.00%、
Mn:0.010〜2.000%、
Al:0.10〜3.00%、
S:0.0001〜0.0300%、
P:0.0010〜0.2000%、
Cu:0.005〜2.000%、
N:0.0001〜0.0150%、
O:0.0010〜0.0200%、
Mg:0〜0.0100%、
Ti:0〜0.0100%及び
Zr:0〜0.0100%
を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有し、結晶系がCubic型の酸化物とCu硫化物とが複合析出し、平均直径が10〜5000nmである複合析出物の個数密度が0.001〜10.000個/μm2であることを特徴とする無方向性電磁鋼板。 - 電解抽出残渣に対するX線回折において得られる、2θ=46.8°に現れるHexagonal構造を有するCu硫化物の回折強度であるI2θ=46.8と、2θ=32.9°に現れるCubic構造を有するMn2O3の回折強度であるI2θ=32.9が下記式1の条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
I2θ=46.8/I2θ=32.9≧0.10・・・式1 - 電解抽出残渣に対するX線回折において得られる、2θ=46.8°に現れるHexagonal構造を有するCu硫化物の回折強度であるI2θ=46.8と、2θ=21.6°に現れるCubic構造を有するSiO2、2θ=42.9°に現れるCubic構造を有するMgO、2θ=43.3°に現れるCubic構造を有するTiO、2θ=45.9°に現れるCubic構造を有するAl2O3のそれぞれの回析強度が下記式2の条件を満たすことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無方向性電磁鋼板。
I2θ=46.8/(I2θ=21.6+I2θ=42.9+I2θ=43.3+I2θ=45.9)≧0.010・・・式2 - 電解抽出残渣に対するX線回折において得られる、2θ=32.1°に現れるCubic構造を有するCu硫化物の回折強度であるI2θ=32.1と、2θ=46.8°に現れるHexagonal構造を有するCu硫化物の回折強度であるI2θ=46.8とが、下記式3の条件を満たすことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
I2θ=46.8/I2θ=32.1>0.50・・・式3 - 請求項1に記載の化学組成を有する鋼片に熱間圧延を行い、熱延鋼板を得る熱延工程と、
前記熱延工程後の前記熱延鋼板を酸洗する酸洗工程と、
前記酸洗工程後の前記熱延鋼板に冷間圧延を行い、冷延鋼板を得る冷延工程と、
前記冷延鋼板を焼鈍する仕上焼鈍工程とを有する無方向性電磁鋼板の製造方法であって、
前記仕上焼鈍工程において、下記式4に示すT1(℃)以上で10秒以上3600秒以下の保持を行い、
前記仕上焼鈍工程の冷却において、前記T1(℃)以下、下記式5に示すT2(℃)以上の温度域における平均冷却速度CR1を60℃/秒未満とすることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
T1(℃)=15000/(12−log10([%Cu]2×[%S]))−273・・・式4
T2(℃)=15000/(12−log10([%Cu]2×[%S]))−373・・・式5
なお、上記式中の[%Cu]はCuの質量%での含有量であり、[%S]はSの質量%での含有量である。 - 前記仕上焼鈍工程の冷却において、下記式6に示すT3(℃)以上、前記T2(℃)以下の温度域における平均冷却速度CR2を20℃/秒以上とすることを特徴とする請求項5に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
T3(℃)=15000/(12−log10([%Cu]2×[%S]))−473・・・式6
なお、上記式中の[%Cu]はCuの質量%での含有量であり、[%S]はSの質量%での含有量である。 - 前記熱延工程の鋼片加熱温度を下記式7記載のT4(℃)以下かつ下記式8記載のT5(℃)以上とし、熱間圧延した後、熱延板の巻取温度を下記式9記載のT6(℃)以下に制御することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
T4(℃)=15000/(6−log10([%Mn]×[%O]))−273・・・式7
T5(℃)=14900/(8−log10([%Mn]×[%S]))−473・・・式8
T6(℃)=14900/(8−log10([%Mn]×[%S]))−573・・・式9
なお、上記式中の[%Mn]はMnの質量%での含有量であり、[%O]はOの質量%での含有量であり、[%S]はSの質量%での含有量である。 - 前記熱延工程と前記酸洗工程との間に、前記熱延鋼板を焼鈍する熱延板焼鈍工程を備えることを特徴とする請求項5〜請求項7の何れか一項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
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