JP2017036491A - 鉄損に優れた無方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents

鉄損に優れた無方向性電磁鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板を提供する。【解決手段】C、Si、Mn、Al、P、Nを所定範囲で含有し、S:0.0010〜0.05%、Cu:0.01〜3.00%を含有し、更に、V:0.002〜0.20%、Nb:0.002〜0.20%、Ti:0.002〜0.10%の1種または2種以上を含有し、残部がFe及び不純物からなり、電解抽出残渣に対するX線回折において得られる、2θ=46.8°に現れる回折強度I2θ=46.8と、2θ=34.4°に現れる回折強度I2θ=34.4と、2θ=43.3°に現れる回折強度I2θ=43.3と、2θ=51.6°に現れる回折強度I2θ=51.6とが下記式1を満たす鉄損に優れた無方向性電磁鋼板を採用する。0.1≦I2θ=46.8/(I2θ=34.4+I2θ=43.3+I2θ=51.6)・・・式1【選択図】なし

Description

本発明は、鉄損に優れた無方向性電磁鋼板及びその製造方法に関し、特に、電気機器の鉄心材料として使用される、鉄損に優れた無方向性電磁鋼板およびその製造方法に関する。
無方向性電磁鋼板は、重電機器、家電用などの各種モーターの鉄芯材料として用いられている。無方向性電磁鋼板は、商業的には鉄損でグレード分けされ、モーターやトランスの設計特性に応じて使い分けられている。
近年、エネルギー節減の観点から、無方向性電磁鋼板に対して、一層の低鉄損化が強く要望されている。一般に、鋼板中に微細な析出物が存在すると、磁壁移動が阻害され、ヒステリシス損は劣化する。
そこで、従来、無方向性電磁鋼板の鉄損の改善を目的に、熱延における硫化物の析出制御、脱硫による硫化物の低減方法、仕上焼鈍後の急速冷却によるCu硫化物の析出抑制などの方法が提案されてきた。
例えば、特許文献1では、Cuを0.2%以下含んだ鋼片を900〜1100℃の範囲で30分以上保定し、その後、1150℃で高温保定し、引き続いて圧延を開始するとともに、仕上熱延中の冷却速度を50℃/秒以下に抑えることによって、Cu硫化物の分散状態を無方向性電磁鋼板の磁気特性、即ち、鉄損および磁束密度にとって好ましい状態に制御する方法が開示されている。
特許文献2では、鋳造完了時までに溶鋼にCaSiを添加し、S含有量を0.005%以下に制御し、1000℃以上の温度でスラブを加熱した後、熱間圧延し、特定の温度域でコイル巻取りすることによって、微細な析出物の生成を回避する方法が開示されている。
また、特許文献3では、仕上焼鈍後、500〜600℃の温度域から300℃までの間を10〜50℃/秒の冷却速度で急冷し、Cu硫化物の析出を抑制する技術が開示されている。
特許文献4〜7では、仕上焼鈍後の冷却速度を制御することによって、磁気特性の向上を期待する技術が開示されている。
特開2010−174376号公報 特開平10−183244号公報 特開平09−302414号公報 特開2011−006721号公報 特開2006−144036号公報 特開2003−113451号公報 国際公開第2014/168136号
CAMP−ISIJ Vol.25(2012),p1080 CAMP−ISIJ Vol.22(2009),p1284 j.Flux Growth vol.5(2010),p48 Tetsu−to−Hagane vol.100(2014),p1229 Tetsu−to−Hagane vol.83(1997),p479 Tetsu−to−Hagane vol.92(2006),p609 Bunnseki vol.11(2002),p639
しかし、上記特許文献1〜6に記載の従来の方法では、以下のような問題があった。
特許文献1に記載の方法では、スラブ加熱温度の低温化による圧延負荷の増大や、冷却速度の厳密な制御の困難さなど、生産性に問題があった。
また特許文献2に記載の方法では高純度鋼が必須であるが、不可避レベルで混入するCuによる微細Cu硫化物の形成は避けられないので、Cu混入によって、かえって磁気特性が劣化するという問題があった。
また特許文献3には、500〜600℃の温度域から300℃までの間を10〜50℃/秒の冷却速度で急冷する方法が開示されているが、Cu硫化物は50℃/秒以上の冷却速度でも冷却中に析出する事実が非特許文献1および2などで知られている。すなわち、10〜50℃/秒程度の冷却を行う特許文献3の技術では完全にCu硫化物の析出を抑制することは困難である。
また特許文献4〜6においては、上述した方法により鋼板への冷却歪の導入を回避でき、鉄損劣化を低減することは可能であるが、Cu硫化物の析出状態を制御することはできず、微細に析出したCu硫化物が磁気特性に悪影響してしまう。
特許文献7には、Cu硫化物の析出形態を制御する技術が開示されているが、Cu硫化物以外の析出物(例えば窒化物など)が存在する場合、Cu硫化物の無害化が困難になるという課題があった。
本発明は上述の問題を鑑み、Cu硫化物の析出形態を制御し、コスト増加や生産性の低下を招くことなく、鉄損に優れた無方向性電磁鋼板と、その製造方法とを提供することを目的とする。
本発明は上記課題を解決するため、鋼板成分、製造条件が硫化物の分散状態と磁気特性の関係に及ぼす影響について検討を重ねた。その結果、NaCl型の結晶構造を有する窒化物である窒化バナジウム(以下、VN)、窒化チタン(以下、TiN)、窒化ニオブ(以下、NbN)のいずれか1種以上を含む無方向性電磁鋼板をある条件で焼鈍した場合に、Cu硫化物の微細分散が抑制され、かつ磁気特性が著しく向上することを認識した。そしてさらに鋼中析出物の形態や構造について詳細な調査を行った結果、この現象が特にCu硫化物がNaCl型窒化物と複合析出することで、(A)Cu硫化物の単独分散が回避されること、(B)Cu硫化物が地鉄と良好な格子整合性を有することに起因することを見出した。また、Cu硫化物とNaCl型窒化物の複合析出は、析出核であるNaCl型窒化物とCu硫化物の格子整合性が最適化された場合に起こりうることを見出した。
本発明は上記知見をもとになされたもので、以下の(1)〜(5)を要旨とする。
(1)本発明の一態様に係る無方向性電磁鋼板は、化学成分が、質量%で、
C:0.0001〜0.01%、Si:0.05〜3.5%、Mn:0.01〜2.0%、Al:0.002〜2.0%、S:0.0010〜0.05%、P:0.001〜0.20%、N:0.0005〜0.02%、Cu:0.01〜3.00%を含有し、更に、V:0.002〜0.20%、Nb:0.002〜0.20%、Ti:0.002〜0.10%の1種または2種以上を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有し、電解抽出残渣に対するX線回折において得られる、2θ=46.8°に現れるHexagonal構造を有するCu硫化物の回折強度であるI2θ=46.8と、2θ=34.4°に現れるCubic構造を有するVNの回折強度であるI2θ=34.4と、2θ=43.3°に現れるCubic構造を有するTiNの回折強度であるI2θ=43.3と、2θ=51.6°に現れるCubic構造を有するNbNの回折強度であるI2θ=51.6とが、下記式1の条件を満たす。
0.1≦I2θ=46.8/(I2θ=34.4+I2θ=43.3+I2θ=51.6) … 式1
(2)上記(1)に記載の無方向性電磁鋼板の電解抽出残渣に対するX線回折において得られる、2θ=32.1°に現れるCubic構造を有するCu硫化物の回折強度であるI2θ=32.1と、2θ=46.8°に現れるHexagonal構造を有するCu硫化物の回折強度であるI2θ=46.8とが、下記式2の条件を満たす。
2θ=32.1/ I2θ=46.8 ≦ 3.0 … 式2
(3)本発明に係る無方向性電磁鋼板の製造方法は、
上記(1)に記載の化学組成を有する鋼片を熱間圧延して熱延鋼板を得る熱延工程と、前記熱延工程後の前記熱延鋼板を酸洗する酸洗工程と、前記酸洗工程後の前記熱延鋼板を冷間圧延して冷延鋼板を得る冷延工程と、前記冷延鋼板を焼鈍してから冷却する仕上焼鈍工程とを備え、
前記仕上焼鈍工程において、下記式3に示すT1(℃)以上、下記式3〜5に示すT2(℃)〜T4(℃)のうち最も高い温度であるT7(℃)以下の温度で10〜3600秒の保持を行い、
その後の冷却において、前記下記式3に示すT1(℃)以下から下記式7に示すT5(℃)以上までの温度域における平均冷却速度を50℃/秒以下とする。
T1(℃)=15000/(12−log10([%Cu]×[%S]))−273 …式3
T2(℃)=10700/(5−log10([%V]×[%N]))−273 …式4
T3(℃)=10200/(4−log10([%Nb]×[%N]))−273 …式5
T4(℃)=16800/(8−log10([%Ti]×[%N]))−273 …式6
T5(℃)=15000/(12−log10([%Cu]×[%S]))−323 …式7
T6(℃)=15000/(12−log10([%Cu]×[%S]))−423 …式8
上記式3〜式8において、[%Cu]はCuの質量%での含有量であり、[%S]はSの質量%での含有量であり、[%V]はVの質量%での含有量であり、[%Nb]はNbの質量%での含有量であり、[%Ti]はTiの質量%での含有量であり、[%N]はNの質量%での含有量である。
(4)上記(3)に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法は、前記仕上焼鈍工程において、前記T1(℃)以上、前記T2(℃)〜T4(℃)のうち最も高い温度T7(℃)以下で10〜3600秒の保持を行い、その後の冷却において、前記T1(℃)以下から前記T5(℃)以上までの温度域における平均冷却速度を50℃/秒以下とし、前記T5(℃)未満から前記T6℃以上までの温度域における平均冷却速度を50℃/秒超えとする。
(5)上記(3)または(4)に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法は、前記熱延工程と前記酸洗工程との間に、前記熱延鋼板を焼鈍する熱延板焼鈍工程を備え、前記熱延板焼鈍工程において、前記T7℃以上で10〜3600秒の保持を行い、その後の冷却において、前記T7℃以下から下記式9記載のT9(℃)以上までの温度域における平均冷却速度を50℃/秒以下とする。
T9(℃)=T8(℃)−150 …式9
ただし式9におけるT8(℃)は、上記T2(℃)〜T4(℃)のうち最も低い温度である。
本発明によれば、無方向性電磁鋼板に対し、高純化や、スラブ加熱温度の低温化、熱延条件の最適化などを施さなくても、微細Cu硫化物の単独析出を回避するとともに、鉄損に好影響をもたらす析出形態に制御することで、鉄損に優れた無方向性電磁鋼板を提供することができる。
なお、本発明によれば、無方向性電磁鋼板において求められる鉄損以外の特性(磁束密度や加工性など)は、従来材と同等以上を確保できる。
以下に本発明の一実施形態に係る無方向性電磁鋼板(本実施形態に係る無方向性電磁鋼板と言う場合がある。)及びその製造方法について、詳細に説明する。含有量の%は全て質量%である。
C:0.0001〜0.01%
Cは磁気時効によって鉄損を著しく劣化させる。そのため、C含有量の上限を0.01%とする。Cはトランプエレメントとして少なくとも0.0001%混入するため、C含有量の下限を0.0001%とする。磁束密度改善の観点から0.0001%以上0.003%以下が好ましい。より好ましくは0.0001%以上0.001%以下である。
Si:0.05〜3.5%
Si含有量は鉄損の確保と通板性との兼ね合いから0.05〜3.5%とする。Si含有量が0.05%未満では良好な鉄損が得られない。一方で、Si含有量が3.5%を超えると、SiNが析出し、NaCl型窒化物が析出しづらくなり、鉄損向上を十分享受できない恐れがある。Si含有量は、好ましくは0.1〜2.0%であり、より好ましくは0.3〜1.0%である。
Mn:0.01〜2.0%
MnはSと反応して硫化物を形成するので、本発明では重要な元素である。鋼中にMnが存在する場合、MnSが析出することにより、CuSの析出量が低下し、CuSが微細に析出しやすくなる。そのため、Mn含有量の上限を2.0%とする。一方、Mn含有量が0.01%未満であると、熱間圧延時に鋼板が脆化する。そのため、Mn含有量の下限を0.01%とする。好ましくは、Mn含有量は0.05〜1.0%、より好ましくは、0.10〜0.50%以下である。
Al:0.002〜2.0%
Al含有量の高い溶鋼は鋳造時の操業性を悪化させるとともに、鋼板の脆化を招く。さらにAlはAlNを形成し、本発明で活用する析出物であるVN、TiN、Nbの析出温度を低下させ、発明効果の享受を難しくする。そのため、Al含有量の上限を2.0%とする。一方、Alは不可避のトランプエレメントとして材料中に存在する。そのためAl含有量の下限を0.002%とする。Al含有量は、好ましくは0.01〜1.2%、より好ましくは0.1〜0.8%である。
P:0.001〜0.20%
Pは鋼板の硬度を高め、打ち抜き性を向上させる作用を有する。また、微量のPは磁束密度を改善する効果を有する。これらの効果を得るため、P含有量の下限を0.001%とする。好ましいP含有量は0.005〜0.10%であり、より好ましくは0.01〜0.05%である。
S:0.0010〜0.05%
S含有量は硫化物量に直接関係する。S含有量が過剰であると、Sが固溶状態で鋼中に存在し、熱間圧延時に鋼が脆化する。そのため、S含有量の上限を0.05%とする。一方で、Sが存在しないと、Cuは金属Cuとして微細析出し、鉄損劣化の原因となる。そのためS含有量の下限を0.0010%とする。好ましくは0.0020〜0.02%であり、より好ましくは0.0040〜0.01%であり、更に好ましくは0.0045〜0.01%である。
N:0.0005〜0.02%
Nは、窒化物を形成する元素であるため、本発明においてはとくに重要な元素のひとつである。ただし、N含有量が過剰であると窒化物の析出量が増えすぎ、結晶粒の成長を阻害し、磁束密度が劣化する。そのためN含有量の上限を0.02%とする。Nが少ないと、本発明効果の享受は難しくなるため、N含有量の下限を0.0005%とする。好ましくは0.0010〜0.008%であり、より好ましくは0.0040〜0.008%である。
Cu:0.01〜3.00%
CuはCu硫化物を形成するため、本発明において特に重要な元素である。Cu含有量が多すぎると、Cu硫化物がNaCl型窒化物の固溶温度を超える為に、本発明の適用が難しくなる。そのためCu含有量の上限を3.00%とする。一方、Cuが少なすぎる場合、TiSなどの他の微細な硫化物が析出し、鉄損劣化の原因となるため、Cu含有量の下限を0.01%とする必要がある。好ましくは0.10〜1.00%であり、より好ましくは0.20〜0.50%である。
V、Nb、Tiは、NaCl型の結晶構造を有する窒化物を形成する本願発明において重要な元素であり、1種または2種以上を含有させることが必要である。
V:0.002〜0.20%
V含有量はVN析出量に直接関係するため、本発明において重要な元素である。Vが多く存在しても、問題はないが、製造コストの観点からV含有量の上限を0.20%とする。一方で、Vは不可避のトランプエレメントとして材料中に存在する。そのためV含有量の下限を0.002%とする。好ましくは0.005〜0.1%であり、より好ましくは0.01〜0.05%である。
Nb:0.002〜0.20%
Nb含有量はNbN量に直接関係するため、本発明において重要な元素である。Nb含有量が過剰であると、NbN以外にNbCを生成し、磁束密度の改善に効果のある、固溶Cを減少させてしまう。そのため、Nb含有量の上限を0.20%とする。一方で、靭性と強度両立の観点から、Nb含有量の下限を0.002%とする。好ましくは0.005〜0.1%であり、より好ましくは0.01〜0.05%である。
Ti:0.002〜0.10%
Ti含有量はTiN析出量に直接関係するため、本発明において重要な元素である。Ti含有量が過剰であると、微細炭化物を形成し粒成長を抑制、磁束密度を低下させる。そのため、Ti含有量の上限を0.10%とする。一方で、Tiは不可避のトランプエレメントとして材料中に存在するため下限を0.002%とする。好ましくは0.005〜0.05%であり、より好ましくは0.010〜0.025%である。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、上述の化学成分を含有し、残部がFe及び不純物からなることを基本とする。しかしながら、磁気特性の更なる向上、強度、耐食性や疲労特性などの構造部材に求められる特性の向上、鋳造性や通板性の向上、スクラップ使用などによる生産向を目的としてMo、W、In、Sn、Bi、Sb、Ag、Te、Cr、Co、Ni、Se、Re、Os、Zr、Hf、Ta、Y、La等の微量元素を、合計で0.5%以下の範囲で含有させてもよい。また、これらの元素が、合計で0.5%以下の範囲で混入したとしても、本実施形態の効果を損なうものではない。
次に本実施形態に係る無方向性電磁鋼板における重要な制御因子であるCu硫化物の状態について説明する。Cu硫化物は、鋼板中での存在を完全になくすことが困難である。そこで、本実施形態に係る無方向性電磁では、Sを積極的にCu硫化物として析出させることに加え、析出するCu硫化物について、窒化物を析出核として複合析出するように制御することで良好な鉄損を得る。
Cu硫化物と窒化物の複合析出のしやすさは、析出核である窒化物の結晶構造、つまり原子配列の周期性で決まる。すなわち窒化物がNaCl型の結晶構造である場合に、窒化物がCu硫化物の析出核として最も有効に機能する。NaCl型の結晶構造の窒化物は例えばVN、TiN、NbNである。複合析出時のCu硫化物の結晶系は、Hexagonalであり、結晶構造はX線回折(XRD)により同定可能である。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板においては、例えば鋼板の電解抽出残渣に対してX線回折(XRD)を行ったとき、2θ=34.4°に現れるCubic構造を有するVNの回折強度であるI2θ=34.4と、2θ=43.3°に現れるCubic構造を有するTiNの回折強度であるI2θ=43.3と、2θ=51.6°に現れるCubic構造を有するNbNの回折強度であるI2θ=51.6と2θ=46.8°±3°におけるCu硫化物(Hexagonal)由来の回折強度であるI2θ=46.8とが、下記式1の条件を満たすように制御する。I2θ=46.8はNaCl型の窒化物と整合析出しているCu硫化物(Hexagonal)の存在量に対応し、(I2θ=34.4+I2θ=43.3+I2θ=51.6)はNaCl型の窒化物すなわち析出核の存在量に対応している。析出核に対し、Cu硫化物(Hexagonal)が一定以上の存在量がない場合、本発明効果は享受できないため、下記式1の右辺の下限値を0.1とする。下記式1の右辺の上限は特に制限はないが、Cu硫化物(Hexagonal)がNaCl型の窒化物と複合析出できる量には限りがあるため、その上限は100が好ましい。NaCl型の窒化物の存在量とCu硫化物の存在量には最適なバランスが存在するため、I2θ=46.8/(I2θ=34.4+I2θ=43.3+I2θ=51.6)の値は0.5以上50以下がより好ましい。さらに好ましい範囲は3.0以上10以下である。
0.1≦I2θ=46.8/(I2θ=34.4+I2θ=43.3+I2θ=51.6) …式1
また、本発明者らは、鋼中のCu硫化物の構造にはHexagonal構造(最密六方晶構造)に加え、Cubic構造(立方晶構造)が存在することを知見している。Cubic構造のCu硫化物はNaCl型の窒化物とは複合析出し難いため、本発明を適用した無方向性電磁鋼板においては、Cubic構造のCu硫化物はHexagonal構造のCu硫化物に比べて、その存在量が少なくなることが好ましい。したがって、2θ=32.1°に現れるCubic構造を有するCu硫化物の回折強度であるI2θ=32.1と、2θ=46.8°に現れるHexagonal構造を有するCu硫化物の回折強度であるI2θ=46.8とが、下記式2の条件を満たすことが好ましい。Cubic構造のCu硫化物は少ないほど本発明効果を享受できるので、I2θ=46.8/ I2θ=32.1の好ましい範囲は0以上1.0以下であり、さらに好ましくは0以上0.5以下である。
2θ=32.1/I2θ=46.8≦3.0 …式2
XRDでは試料の結晶構造に応じて、特定の2θ位置に回折ピークが観察される。ただし鉄鋼材料中の析出物は、析出物に対するFe固溶、地鉄マトリクスとの格子整合性などの諸要因で結晶格子が変動する。それに伴い、回折が現れる上記2θの値は、誤差の範囲で少なくとも±3°を含むことになる。結晶構造の同定は結晶格子のデータベースであるJCPDS−CARDを用いて照合すればよいが、Cu硫化物(Hexagonal)は23−0958、Cu硫化物(Cubic)はJCPDS−CARD:00−012−0174、00−024−0061や023−0962、053−0522、33−0491、33−0492、070−9133などが存在し、これらは2θの誤差範囲±3°に収まる。
特にCu硫化物においてはFeとSが一部置換することで、CuFe16(JCPDS:00−027−0165)、CuFeS(JCPDS:024−0050, 089−2620)やCuFe(JCPDS:027−0166)、CuFeS(JCPDS:075−0253、041−1404)などの析出物を形成するが、このようなCu−Fe−S系化合物についても、結晶系がCubicであり、かつ2θ=32.1°±3°において200回折ピークが観察されれば、I2θ=32.1と定義できる。なお、上記誤差範囲において、Cu硫化物(Cubic)について2つ以上の回折ピークが存在した場合については、それらのピーク強度を足し合わせたものをI2θ=32.1とする。
一般的に、XRDの回折強度とはスペクトルのバックグラウンドからピークまでの高さである。本実施形態におけるXRDの回折強度(ピーク強度)も、非特許文献3、4に記載あるソフトウェアなどを用いてバックグラウンドを除去することが可能である。
次に、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法について述べる。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、上述した成分組成となるよう通常の電磁鋼板と同様に転炉で溶製され、連続鋳造された鋼片に、熱間圧延、熱延板焼鈍、冷間圧延、仕上焼鈍などを行うことによって製造できる。
熱間圧延については特に限定せず、直送熱延や、連続熱延などの熱延方法およびスラブ加熱温度によらず、鉄損改善効果を享受できる。冷間圧延についても特に限定せず、二回以上冷延、温間圧延などの冷延方法及び冷延圧下率によらず、鉄損改善効果を享受できる。またこれらの工程に加え、絶縁皮膜の形成や脱炭工程などを経ても構わない。また、通常の工程ではなく急冷凝固法による薄帯の製造や熱延工程を省略する薄スラブ、連続鋳造法などの工程によって製造しても問題ない。
しかしながら、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板を得る場合、仕上焼鈍工程において、以下に説明するような熱履歴を経ることが重要である。すなわち、仕上焼鈍工程においてCu硫化物を全量固溶させ、仕上焼鈍工程の冷却中に、Cu硫化物とNaCl型窒化物であるVN、TiNおよびNbNを複合析出させるよう制御することである。
本発明では以下に示すT1〜T6(℃)の6つの温度が重要な意味を持つ。T1(℃)はCu硫化物の固溶開始温度であり、T2、T3およびT4(℃)はそれぞれVN、TiNおよびNbNの固溶開始温度である。T5(℃)はCubic型のCu硫化物が析出する上限温度であり、T6(℃)はCubic型のCu硫化物が析出する下限温度である。
T1(℃)=15000/(12−log10([%Cu]×[%S]))−273 …式3
T2(℃)=10700/(5−log10([%V]×[%N]))−273 …式4
T3(℃)=10200/(4−log10([%Nb]×[%N]))−273 …式5
T4(℃)=16800/(8−log10([%Ti]×[%N]))−273 …式6
T5(℃)=15000/(12−log10([%Cu]×[%S]))−323 …式7
T6(℃)=15000/(12−log10([%Cu]×[%S]))−423 …式8
上記式3〜式8において、[%Cu]はCuの質量%での含有量であり、[%S]はSの質量%での含有量であり、[%V]はVの質量%での含有量であり、[%Nb]はNbの質量%での含有量であり、[%Ti]はTiの質量%での含有量であり、[%N]はNの質量%での含有量である。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板では、Cu硫化物とNaCl型窒化物を複合析出せしめることで鉄損改善の効果を得る。一般にCu硫化物は析出速度が速く、仕上焼鈍で固溶しても、その後の冷却中に単独で微細に再析出してしまい鉄損に悪影響を及ぼす。しかし、冷却開始時にNaCl型窒化物が存在すると、Cu硫化物は、冷却中にNaCl型窒化物を核として複合析出するため、微細析出を抑制できる。しかも、この複合析出物(Cu硫化物+NaCl型窒化物)が存在する場合に良好な鉄損が得られる。このため、仕上焼鈍の保持温度を、Cu硫化物を固溶させつつ、NaCl型窒化物が固溶しない温度域に制御することで冷却開始時にNaCl型窒化物を存在させておく必要がある。
すなわち、仕上焼鈍工程においては、Cu硫化物をその固溶温度T1(℃)以上で10秒以上保持することで、Cu硫化物を全量固溶させることが可能となる。保持温度がT1(℃)未満では、Cu硫化物を固溶させることができない。ただし、鋼板がNaCl型窒化物の溶解温度を超えてしまうと、Cu硫化物の析出核であるNaCl型窒化物が消失してしまうことになり、本発明効果は享受できない。そのため、保持温度の上限はT2〜T4(℃)の中で最も高い温度であるT7(℃)とする必要がある。
また、保持時間(T1(℃)以上の滞在時間)は10秒以上3600秒以下とする。保持時間が10秒未満では十分に固溶が進まない。一方で、3600秒を超えて加熱すると、析出速度の遅いTiSなどの他の微細硫化物が生成し、鉄損改善に悪影響を及ぼす。好ましい保持時間は、100秒以上1000秒以下である。
仕上焼鈍工程において、Cu硫化物(Hexagonal)をNaCl型窒化物と複合析出させ、Cu硫化物の微細析出を回避するには、Cu硫化物(Hexagonal)の析出温度域であるT5(℃)以上T1(℃)以下の温度範囲における冷却速度の制御も本発明において重要な制御因子である。T1〜T5(℃)の温度範囲の冷却速度が大きすぎると、Cu硫化物(Hexagonal)が十分析出できず、NaCl型窒化物とCu硫化物とは複合析出せず本発明の効果を享受できない。そのため、T1〜T5(℃)の温度範囲の冷却速度を50℃/秒以下にする必要がある。一方、冷却速度が小さいほど本発明効果は大きいが、実際の製造においては自然空冷が現実的であり、その場合、冷却速度の下限は0.01℃/秒が限界である。好ましい冷却速度は0.01℃/秒以上20℃/秒以下である。
また、NaCl型窒化物と複合析出し難い、Cubic型の結晶構造を有するCu硫化物の析出温度域の滞在時間を短縮することも重要である。したがって、T6℃以上T5℃以下の温度域における平均冷却速度を50℃/秒超えとする。この温度域における冷却速度は大きければ大きいほど、本発明効果は高いが、鋼板に導入される冷却歪の影響を考えると、好ましい範囲は75℃/秒以上100℃/秒以下である。なお、冷却速度を50℃/秒以下から50℃/秒超えに切替える際は、鋼板温度がT5(℃)になった時に切り替えればよい。
熱延工程後の熱延板には様々な結晶構造の窒化物が多く存在する。そのため、仕上焼鈍より前の工程において、板中の窒化物を一度固溶させ、再度、NaCl型の析出物として再析出させることは、本発明効果を更に発揮するうえで効果的である。そこで、熱延板中の窒化物(VN、NbN、TiN)をT7(℃)以上の温度で完全固溶させ、その後の冷却中においてNaCl型窒化物として再析出させる。
NaCl型の窒化物であるVN、NbN、TiNはそれぞれ固溶温度が異なるが、これらの固溶温度の中で最も高い温度であるT7(℃)以上の温度で鋼板を保持し、その後の冷却工程を緩冷却して、NaCl型の窒化物を多く析出させることで本発明効果を享受できる。緩冷却する温度範囲の上限は、鋼板保持温度であるT7(℃)とし、温度範囲の下限は下記式9記載のT9(℃)とする。式9におけるT8(℃)は、NaCl型の窒化物の固溶温度T2〜T4(℃)のうち最も低い温度とする。緩冷却する温度範囲の下限をT9(℃)とする理由は、固溶温度がT8(℃)の析出物を冷却中に析出させるには、少なくともT8〜T9℃の範囲においても冷却速度の制御をおこなう必要があるためである。すなわち、本発明においては熱延板焼鈍工程において、T9(℃)以上T7(℃)以下の温度範囲の冷却速度を50℃/秒以下とする。
T9(℃)=T8(℃)−150 …式9
この温度域における冷却速度が小さいほど本発明の効果は大きいが、実際の製造においては自然空冷が現実的であり、その場合、冷却速度の下限は0.01℃/秒が限界である。T9〜T7℃における好ましい冷却速度は0.01℃/秒以上20℃/秒以下である。
また、熱延板焼鈍の保持時間(T1(℃)以上の滞在時間)は、10秒以上3600秒以下とする。保持時間が10秒未満では十分に固溶が進まない。一方で、3600秒を超えて加熱すると、析出速度の遅いTiSなどの他の微細硫化物が生成し、鉄損改善に悪影響を及ぼす。好ましい保持時間は、100秒以上1000秒以下である。
一般的に析出物と鋼の界面との整合性が良好なほど、磁壁移動はスムーズとなり、鉄損が良好となる。Cu硫化物は単独かつ極微細(<5nm)に析出することで、鉄損に悪影響するが、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板では、Cu硫化物はNaCl型窒化物と複合析出することで、微細析出が回避される。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板では、磁壁移動が容易であり良好な鉄損を示すと考えられる。
以下、本発明の実施例を挙げながら、本発明の技術的内容について更に説明する。なお、以下に示す実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。また本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
なお、下記の説明で用いる表中の下線は、本発明の範囲外であることを示す。
<実施例1>
表1A及び表1Bに示す成分のインゴットを真空溶解し、このインゴットを1150℃で加熱し、熱延仕上温度を850℃、巻取温度を600℃として熱延し、板厚2.0mmの熱延鋼板とした。その後、酸洗を経て圧下率75%で冷間圧延し、板厚0.50mmの冷延鋼板とした。続いて仕上焼鈍を行った。仕上焼鈍の保持温度は各鋼について表2に示すT1℃以上、T7℃以下の範囲とし、保持時間は120秒とした。仕上焼鈍後の冷却過程においては、T1〜T5(℃)間の冷却速度を15℃/秒とした。X線回折結果と磁気特性(磁束密度および鉄損)の結果を表2に示す。なお、表中の「ICuS/I」はI2θ=46.8/(I2θ=34.4+I2θ=43.3+I2θ=51.6)を示す。
鉄損に応じて、VG:非常に優れる、G:優れる、F:効果がみられる、B:従来レベルとして評価した。なお、磁気特性の評価はJIS C 2550:2000に準じて行った。歪取焼鈍は実施していない。鉄損については、W15/50(W/kg)を評価した。W15/50は、周波数50Hz、最大磁束密度1.5Tのときの鉄損である。また、磁束密度については、B50を用いて評価した。B50は、磁界の強さ5000A/mにおける磁束密度を示す。なお、B50の最低目標値を従来材と同等である1.50Tとした。試料の鉄損評価基準は、以下の通りとした。
VG(VeryGood):W15/50(W/kg)<2.20
G(Good):2.20≦W15/50(W/kg)≦2.50
F(Fair):2.50<W15/50(W/kg)≦4.50
B(Bad):4.50<W15/50(W/kg)
X線回折には非特許文献4及び5に記載されている一般的な抽出残渣法により介在物のみをフィルターで捕集したものを分析試料として用いた。XRD測定は非特許文献4〜6に記載のCuKα線をプローブとした広角X線回折により行った。
表2に示すように、ICuS/Iが0.1以上の発明鋼は、ICuS/Iが0.1未満の比較鋼に比べて、鉄損が向上していることがわかる。
Figure 2017036491
Figure 2017036491
Figure 2017036491
<実施例2>
表1Aに示す成分のインゴットを真空溶解し、このインゴットを1150℃で加熱し、熱延仕上温度を875℃、巻取温度を630℃として熱延し、板厚2.0mmの熱延鋼板とした。その後、酸洗を経て圧下率75%で冷間圧延し、板厚0.50mmの冷延鋼板とした。続いて表3に示すT1(℃)以上T7(℃)以下の範囲の保持温度にて仕上焼鈍を120秒行った。仕上焼鈍後の炉冷却過程においては、T5〜T6(℃)間の冷却速度を75℃/秒、T1〜T(5)℃間の冷却速度を15℃/秒に制御した。
表3にはX線回折結果、磁気特性(磁束密度および鉄損)の評価結果も示す。X線回折、磁気特性の測定については、<実施例1>と同様の評価を行った。なお、表3中の「Icub/Ihex」はI2θ=32.1/I2θ=46.8を示す。No.c1〜c4では、ICuS/Iが本発明範囲に制御されてはいるが、Icub/Ihexが3.0を超えており、Cubic構造のCu硫化物が多く析出したため、No.C1〜C6と比較し、鉄損が少々低下したが、表1の比較鋼よりは鐵損は向上した。
Figure 2017036491
<実施例3>
表1Aに示す鋼No.A1の成分を有するインゴットを、1150℃で加熱し、熱延仕上温度を850℃、巻取温度が630℃となるように熱延して、板厚2.0mmの熱延板とした。その後、酸洗を経て圧下率75%で冷間圧延し、板厚0.50mmの冷延鋼板とし、表4に示す条件で仕上焼鈍を実施した。表4にはX線回折結果、析出物の析出状態、磁気特性(磁束密度および鉄損)の評価結果も示す。X線回折、磁気特性の測定、析出物の測定については、実施例1と同様の評価を行った。
仕上焼鈍の条件が本発明範囲外であるNo.d1〜d6はいずれも、ICuS/Iが小さく、すなわちNaCl型析出物がうまく析出しなかったがために、鉄損が劣化してしまった。No.D1〜D9は仕上焼鈍の冷却工程において、T5〜T6(℃)の温度範囲の冷却速度が、本発明範囲を外れているが、T1〜T5℃の温度範囲の冷却速度が本発明の範囲に入っているため、鉄損はNo.d1〜d6に比べて優位だった。No.D10、D11はT1〜T5℃の温度範囲の冷却速度およびT5〜T6℃の温度範囲の冷却速度がいずれも発明範囲に入っているため、特に良好な鉄損を示した。
Figure 2017036491
<実施例4>
表1Aに示す鋼No.A1の成分を有するインゴットを、1100℃で加熱し、熱延仕上温度が850℃、巻取温度が630℃となるように熱延して板厚2.0mmの熱延板とした。この熱延板を表5に示す条件で熱延板焼鈍を実施した。その後、酸洗を経て圧下率75%で冷間圧延し、板厚0.50mmの冷延鋼板とし、表5記載の条件で仕上焼鈍を実施した。
表5にはX線回折結果、磁気特性(磁束密度および鉄損)の評価結果も示す。X線回折、磁気特性の測定については、<実施例1>と同様の評価を行った。
No.E1〜E6のいずれもの試料についても、仕上焼鈍の温度、時間及び冷却速度が本発明範囲内にあるため、本発明効果が得られた。特に、熱延板焼鈍のT7〜T9℃間の冷却速度を好ましい範囲に制御した、No.E5およびE6では、ICuS/Iが好ましい範囲に制御されており、特に良好だった。
Figure 2017036491

Claims (5)

  1. 化学成分が、質量%で、
    C:0.0001〜0.01%、Si:0.05〜3.5%、Mn:0.01〜2.0%、Al:0.002〜2.0%、S:0.0010〜0.05%、P:0.001〜0.20%、N:0.0005〜0.02%、Cu:0.01〜3.00%を含有し、更に、V:0.002〜0.20%、Nb:0.002〜0.20%、Ti:0.002〜0.10%の1種または2種以上を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有し、
    電解抽出残渣に対するX線回折において得られる、2θ=46.8°に現れるHexagonal構造を有するCu硫化物の回折強度であるI2θ=46.8と、2θ=34.4°に現れるCubic構造を有するVNの回折強度であるI2θ=34.4と、2θ=43.3°に現れるCubic構造を有するTiNの回折強度であるI2θ=43.3と、2θ=51.6°に現れるCubic構造を有するNbNの回折強度であるI2θ=51.6とが、下記式1の条件を満たすことを特徴とする鉄損に優れた無方向性電磁鋼板。
    0.1≦I2θ=46.8/(I2θ=34.4+I2θ=43.3+I2θ=51.6) …式1
  2. 電解抽出残渣に対するX線回折において得られる、2θ=32.1°に現れるCubic構造を有するCu硫化物の回折強度であるI2θ=32.1と、2θ=46.8°に現れるHexagonal構造を有するCu硫化物の回折強度であるI2θ=46.8とが、下記式2の条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載の鉄損に優れた無方向性電磁鋼板。
    2θ=32.1/I2θ=46.8≦3.0 …式2
  3. 請求項1に記載の化学組成を有する鋼片を熱間圧延して熱延鋼板を得る熱延工程と、前記熱延工程後の前記熱延鋼板を酸洗する酸洗工程と、前記酸洗工程後の前記熱延鋼板を冷間圧延して冷延鋼板を得る冷延工程と、前記冷延鋼板を焼鈍してから冷却する仕上焼鈍工程とを備え、
    前記仕上焼鈍工程において、下記式3に示すT1(℃)以上、下記式3〜5に示すT2(℃)〜T4(℃)のうち最も高い温度であるT7(℃)以下の温度で10〜3600秒の保持を行い、
    その後の冷却において、前記下記式3に示すT1(℃)以下から下記式7に示すT5(℃)以上までの温度域における平均冷却速度を50℃/秒以下とすることを特徴とする鉄損に優れた無方向性電磁鋼板の製造方法。
    T1(℃)=15000/(12−log10([%Cu]×[%S]))−273 …式3
    T2(℃)=10700/(5−log10([%V]×[%N]))−273 …式4
    T3(℃)=10200/(4−log10([%Nb]×[%N]))−273 …式5
    T4(℃)=16800/(8−log10([%Ti]×[%N]))−273 …式6
    T5(℃)=15000/(12−log10([%Cu]×[%S]))−323 …式7
    T6(℃)=15000/(12−log10([%Cu]×[%S]))−423 …式8
    上記式3〜式8において、[%Cu]はCuの質量%での含有量であり、[%S]はSの質量%での含有量であり、[%V]はVの質量%での含有量であり、[%Nb]はNbの質量%での含有量であり、[%Ti]はTiの質量%での含有量であり、[%N]はNの質量%での含有量である。
  4. 前記仕上焼鈍工程において、前記T1(℃)以上、前記T2(℃)〜T4(℃)のうち最も高い温度T7(℃)以下で10〜3600秒の保持を行い、
    その後の冷却において、前記T1(℃)以下から前記T5(℃)以上までの温度域における平均冷却速度を50℃/秒以下とし、前記T5(℃)未満から前記T6℃以上までの温度域における平均冷却速度を50℃/秒超えとすることを特徴とする請求項3に記載の鉄損に優れた無方向性電磁鋼板の製造方法。
  5. 前記熱延工程と前記酸洗工程との間に、前記熱延鋼板を焼鈍する熱延板焼鈍工程を備え、
    前記熱延板焼鈍工程において、前記T7℃以上で10〜3600秒の保持を行い、
    その後の冷却において、前記T7℃以下から下記式9記載のT9(℃)以上までの温度域における平均冷却速度を50℃/秒以下とすることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の鉄損に優れた無方向性電磁鋼板の製造方法。
    T9(℃)=T8(℃)−150 …式9
    ただし式9におけるT8(℃)は、上記T2(℃)〜T4(℃)のうち最も低い温度である。
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