JP4449169B2 - 加工性に優れた冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、種々の形状にプレス加工して使用される加工用鋼板(亜鉛めっき鋼板や電気亜鉛めっき鋼板を含む)としての用途に供して好適な、加工性に優れた冷延鋼板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、プレス加工用の冷延鋼板は、連続鋳造スラブを、熱間圧延し、酸洗、冷間圧延、焼鈍の各工程を経て製造される。しかも、連続鋳造スラブを熱間圧延の素材として使用する場合は、連続鋳造スラブを一旦室温まで冷却したのち、これを加熱炉に装入して1000〜1250℃の温度に加熱してから熱間圧延する、いわゆる再加熱と呼ばれるプロセスが一般的であった。
【0003】
これに対し、最近では、省エネルギーおよび生産性の向上を目的として、連続鋳造されたスラブを室温まで冷却することなしに、比較的短時間の熱処理を施したのちに熱間圧延に供するホットチャージ(熱片装入)あるいは連続鋳造スラブをそのまま熱間圧延に供する直送圧延を採用することが多くなっている。
【0004】
ところで、これらのホットチャージや直送圧延で製造された鋼板についてはいうまでもなく、再加熱で製造された鋼板についても、その加工性を向上させるためには、鋼中の固溶C量を可能な限り除去すると共に、酸化物、硫化物、炭窒化物などの析出物を極力少なくすること、そしてそれらが焼鈍時の粒成長を阻害しないように、大きくかつ疎に分布させるなどの析出物制御が必要である。
【0005】
この考えに沿う技術として、例えば特開昭63−96222 号公報等では、熱間圧延のスラブ加熱温度を2段階の加熱処理によってコントロールし、硫化物を析出核とした粗大な炭硫化物 (Ti4C2S2)を形成させることによって、深絞り性の良好な鋼板を得ている。
このように、鋼板の材質を制御する上で、熱間圧延前における析出物の析出状態を知ることは極めて重要である。
【0006】
しかしながら、再加熱を施さない鋼板では、室温での析出物状態を出発点としないために、制御しにくく、しかも再加熱材に比較して析出物量が少ないため、上述したように粗大な析出物を形成して材質の向上を図ることはできない。
また、凝固組織のまま圧延されるために、成分元素の偏析が解消されないだけでなく、凝固組織は結晶粒径が大きいことから、その後の再結晶焼鈍において混粒となったり、著しい粗大粒が生じ易く、そのため、プレス加工時に肌荒れが生じ易く、また再加熱材と比較して安定した材質確保はいうまでもなく、r値や伸びなどの加工性に劣っていた。
【0007】
このような問題に対して、これまでにいくつかの提案がなされてきた。
例えば特開昭59−89723 号公報には、保定処理を含めた直送圧延において、希土類(REM), Ca, Ti, Mg のうちから選んだ一種または二種以上を添加した素材を用いることにより、材質の面内異方性を小さくして、加工性を改善する技術が提案されている。
また、特開平7−242996号公報には、直送圧延による製造方法において、P,Ti, S量を規制する方法が開示されている。
しかしながら、前者の技術では、加工性の向上はわずかであり、一方後者の方法では、特に鋼中のS量を削減するのにトーピードカー中での溶銑予備処理や、二次精錬による粉体吹き込みなどの脱硫処理が必要なため、コスト高となり、現実的ではない。
【0008】
さらに、特開平11−50193 号公報では、ホットチャージ材を利用する場合に、析出Mnと有効Tiの量さらには析出物中のMnとTiの定量値について所定の関係を満足させることにより加工性を改善した冷延鋼板の製造技術が提案されている。
上記の技術の開発により、ホットチャージに関しては良好な加工性を有する冷延鋼板が得られるようになった。
しかしながら、この技術を直送圧延プロセスに適用した場合には、r値や伸び等に関して十分に満足いくほどの特性が得られず、その改善が望まれていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上記の要望に有利に応えるもので、連続鋳造スラブをそのまま熱間圧延に供するいわゆる直送圧延プロセスを採用した場合においても、従来の再加熱プロセスにより製造された鋼板と同等の加工性(r値、伸び)を有する加工性に優れた冷延鋼板を、その有利な製造方法と共に提案することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以下、この発明の解明経緯について説明する。
鋼中に析出する硫化物は、通常、NaCl型の結晶構造をもつQ-phase(以下Q相という)とNiAs型の結晶構造をもつP-phase(同P相)とに分類される。
これらの硫化物の形態は、商用鋼で析出することが知られているMnS(Q相)およびFeS(P相)が代表的であるが、Tiを添加した鋼においてはTiS(P相)が析出することが知られている。
【0011】
特に、Ti添加極低炭素鋼板においては、MnSおよびTiS両方の析出が同時に起こり、かつTiSはその後の Ti4C2S2析出の核となり材質に大きく影響を及ぼすために、この鋼種の硫化物の析出挙動については種々の研究がなされている。
しかしながら、これまでの研究では、Q相とP相を分類して、組成を分析したような詳細な検討はなされておらず、MnSおよびTiSのそれぞれの析出挙動については明確ではなかった。
【0012】
そこで、発明者らは、Ti添加極低炭素鋼板におけるこれらの硫化物の析出挙動について、詳細な検討を行った。
その結果、Q相はFeを固溶したMnS:(Mn, Fe)Sであり、Mnを0.48mass%添加した鋼板においても1200℃以下でしか析出しないこと、一方P相はFe,Mnを固溶したTiS:(Ti, Fe, Mn)Sであり、γ域のみならず高温のδ域でも析出していることが明らかとなった。
すなわち、従来の研究では、TiSは主にγ域で析出し、1300℃以上では溶解すると考えられていたが、δ域たとえば1400℃の高温においてもP相が析出することが解明されたのである。
【0013】
これは、TiSが、従来考えられていたような析出形態ではなく、FeやMnを固溶する(Ti, Fe, Mn)Sとして析出するためであり、特にFeを固溶することによって熱力学的に安定になるため、δ域でも析出するものと考えられる。
実際、1400℃における析出Ti量が0.0004〜0.02mass%の範囲内にあるものは、直送圧延材でも再加熱材と同等の加工性を有し、このときの析出Fe量は0.0005〜0.015 mass%であり、いずれの析出物もFeを固溶していた。また、これらにおいてはMnの固溶は少なく、析出Mn量は0.0015mass%以下であった。
【0014】
上記したところからも明らかなように、(Ti, Fe, Mn)S(P相)を効果的に析出させることができれば、熱間圧延前に再加熱なしに、硫化物すなわちその後の炭化物の核を確保することができ、その結果加工性の有利な改善が達成されるものと考えられる。
この発明は、上記の知見に基づき、好適な成分組成を見出すべく鋭意研究を重ね、試行錯誤の末に完成されたものである。
【0015】
すなわち、この発明は、
C:0.0005〜0.0030mass%、
Si:0.1 mass%以下、
Mn:0.05〜0.20mass%、
Al:0.01〜0.1 mass%および
N:0.001 〜0.005 mass%
を含有し、さらにTiおよびSを
Ti:0.01〜0.055 mass%、
S:0.01〜0.03mass%
でかつ、次式(1)
(Ti (mass%) + 0.008928 ) ×S (mass%) ≧ 0.000503 --- (1)
を満足する範囲において含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなり、さらに抽出レプリカによる透過電子顕微鏡観察における 10000倍視野で、粒径が0.05〜5.0 μm の析出物の個数が10〜30個の範囲を満足し、平均r値が2.5以上であることを特徴とする加工性に優れた冷延鋼板である。
ここで、 10000倍視野とは、 7.5μm×9μmの領域を10000 倍に拡大して観察することを意味する。
【0017】
また、この発明は、
C:0.0005〜0.0030mass%、
Si:0.1 mass%以下、
Mn:0.05〜0.20mass%、
Al:0.01〜0.1 mass%および
N:0.001 〜0.005 mass%
を含有し、さらにTiおよびSを
Ti:0.01〜0.055 mass%、
S:0.01〜0.03mass%
でかつ、次式(1)
(Ti (mass%) + 0.008928 ) ×S (mass%) ≧ 0.000503 --- (1)
を満足する範囲において含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなる連続鋳造スラブを、そのまま直送圧延に供し、圧延終了温度:(Ar3変態点−30℃)〜(Ar3変態点+30℃)で熱間圧延を終了したのち、一旦コイルに巻取り、ついで圧下率:60〜95%で冷間圧延を施したのち、再結晶温度〜Ac3変態点の温度域で焼鈍を施すことを特徴とする加工性に優れた冷延鋼板の製造方法である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を具体的に説明する。
まず、この発明において鋼板の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。
C:0.0005〜0.0030mass%
Cは、鋼中に固溶状態で存在すると鋼板の加工性に悪影響を及ぼす。そこで、Cの固定のためにTiを添加するが、Cが多量に含有されるとそれらを固定するのに必要なTi量が増大し、焼鈍時における粒成長を阻害したり、硬質化を招くことになる。従って、C量の上限は0.0030mass%とした。一方、下限は真空脱ガス処理コストの観点から、0.0005mass%に限定した。
【0019】
Si:0.1 mass%以下
Siは、鋼の強度を向上させるために有用な元素であり、製造する鋼板の使用目的に応じた量を添加する。この効果を得るためには0.01mass%以上の添加が好ましい。しかしながら、Siは本来、加工性を損ねる元素でもあるため、過度に添加すると製造上問題となる他、酸洗性やめっき性を損ねる原因ともなる。従って、上限を 0.1mass%に限定した。
【0020】
Mn:0.05〜0.20mass%
Mnは、この発明において特に重要な元素の一つである。
まず、Mn量が0.05mass%未満の添加では、熱間圧延時に熱間脆性割れを起こすおそれがあることの他、Q相,P相いずれの自由エネルギーを低下させて析出を促進し、鋼中に不用に残存するSを低減する作用があるので、下限を0.05mass%とする。一方、Mn量が0.20mass%を超えると、変態点の変動が大きくなる他、Q相の出現領域が高温側へ広がり、粗大な析出物となるおそれがあるので好ましくない。従って、Mn量は0.05〜0.20mass%の範囲に限定した。
なお、この発明で問題としているP相は、Feを固溶して熱力学的に安定になるが、Mn量が適当であればMnもP相に固溶して成長するため、高温からQ相が析出することによる粒成長性の劣化を防止する効果もある。
【0021】
Al:0.01〜0.1 mass%
Alは、鋼の脱酸のために少なくとも0.01mass%添加する必要があるが、Al脱酸の効果の上限は 0.1mass%であり、それを超えて添加してもかえって鋼の硬質化および加工性の劣化を招くので、上限を 0.1 mass %とした。
【0022】
N:0.001 〜0.005 mass%
Nは、鋼中に不可避的に含有される元素であるが、侵入型元素としてCと同様の作用を与えるため、表面性状や加工性の観点からは含有量は少ない方が望ましい。しかしながら、鋼中のN量を 0.001mass%未満まで低減することは、現在の鉄鋼製造技術では、生産性の低下および大幅なコストアップを余儀なくされる。一方、多量のNを添加することは、Cと同様にそれらを固定するために多量のTiを必要とし、しかもTiとNは非常に結合し易い元素であるのでNを多く含有するとP相の析出の妨げにもなる。
従って、N量は 0.001〜0.005 mass%の範囲に限定した。
【0023】
S:0.01〜0.03mass%
Sも、この発明における重要な元素の一つであり、0.01〜0.03mass%の範囲で含有させる。この発明においてポイントとなる知見は、1400℃においてP相を析出させておくことで、再加熱工程と同様に、その後の炭硫化物析出の核となる析出物を熱間圧延前に確保しておくという点にあり、これを実現する要件の一つがS添加量である。
1400℃において、所定量のP相析出物を確保するためには、少なくとも0.01mass%のSが必要であるが、0.03mass%を超えると硫化物が増えすぎて熱間割れを起し易く、耐食性や表面性状に悪影響を与える。
従って、S量は0.01〜0.03mass%の範囲に限定した。
【0024】
Ti:0.01〜0.055 mass%
Tiも、この発明における重要な元素の一つであり、鋼中の不純物であるN,C,Sを析出させて固定するために添加される。この発明に従い、Ti量を適正化すれば、析出物の析出量および組成を適正に制御して、直送圧延においても加工性の向上を図ることができる。
このためには、少なくとも0.01mass%の添加を必要とするが、一方で 0.055mass%を超えると、必要以上にCやNを固定し、微細な析出物を形成して粒成長性を著しく低下させる他、固溶Ti量の増加により再結晶温度を上昇させ、材質の劣化を招くことになるので、Ti量は0.01〜0.055mass%の範囲に限定した。
【0025】
ここで、同じ組成を持つ再加熱で作られた熱延鋼板と直送圧延で作られた熱延鋼板の析出物を、抽出レプリカ法によって試料調整後、透過電子顕微鏡(TEM) 観察して比較したところ、再加熱した鋼板の析出物は、大きさが小さくかつ数が多いのに対し、直送圧延によるものは、析出物の大きさが大きくかつ数が少ないことが判明した。
すなわち、再加熱した熱延鋼板は、スラブが室温まで冷却されたときに析出した析出物が、再加熱処理では平衡状態に達しないために溶けきらずに残存しているのに対し、高温から冷却されてそのまま圧延された直送圧延による熱延鋼板では、もともと析出物が少ないものと考えられる。従って、直送圧延で熱間圧延された鋼板は、熱延前の析出物の数の少なさがその後に析出するTi4C2S2 などの析出核の個数を低減することになり、加工性を劣化させるものと考えられる。
【0026】
しかしながら、1400℃において、適正な大きさで適正量のP相を析出させて、再加熱と同様にその後の析出核を確保することができれば、特性の劣化は生じないものと考えられる。
そこで、TiとSの好適配合比について検討した。
【0027】
図1に、C:0.002 mass%, Si:0.01mass%, Mn:0.1 mass%, Al:0.03mass%およびN:0.002 mass%をベースとし、TiおよびS量を種々に変化させて含有させた鋼について、1400℃におけるP相の析出の境界線およびこれらの鋼を直送圧延相当の処理により熱延板とし、さらに圧下率:80%で冷延圧延後、830 ℃で20秒の連続焼鈍相当の熱処理により再結晶焼鈍して作製した冷延鋼板の加工性について調べた結果を示す。
同図に示したとおり、TiとSが、次式(1)
(Ti (mass%) + 0.008928 ) ×S (mass%) ≧ 0.000503 --- (1)
の関係を満足する配合比で含有させた場合には、1400℃においてP相が析出し、しかも平均r値が 2.5以上の優れた加工性が得られることが判明した。
【0028】
次に、良好な加工性が得られた鋼板について、析出物の大きさとその個数を調べたところ、加工性が良好な鋼板ではいずれも、抽出レプリカによる透過電子顕微鏡観察における 10000倍視野で、粒径が0.05〜5.0 μm の析出物が10〜30個の範囲で存在していることが判明した。なお、熱延板の析出物についても抽出レプリカで観察したところ冷延焼鈍板と同様の結果となり、これら析出物が熱延板の段階から存在していることが判った。
【0029】
ここに、対象とする析出物の大きさを、粒径が0.05〜5.0 μm のものに限定したのは、粒径が0.05μm 未満では、焼鈍時の結晶粒成長に悪影響を及ぼして延性の劣化を招き、一方 5.0μm を超えると析出物が粗大化してやはり延性の劣化を招き、いずれにしても良好な加工性が得られないからである。
そして、かような大きさの析出物の個数が、10個に満たないと、析出すべき元素が固溶状態で冷却されるためと考えられるが、直送圧延を経て製造された場合に加工性が低下するおそれがあり、一方30個を超えると強度が大きくなりすぎて加工性の劣化を招くので、かかる析出物の個数は10〜30個の範囲に限定した。
【0030】
次に、この発明に従う製造条件について説明する。
上述した成分組成に溶製した溶鋼から、連続鋳造スラブを製造し、得られた連続鋳造スラブはそのまま直送圧延に供し、熱間圧延工程でまず粗圧延される。この熱間粗圧延は、γ域すなわち 900〜1100℃程度の温度範囲で行うことが好ましい。
ついで、熱間仕上げ圧延に供されるが、この仕上げ圧延における圧延終了温度は(Ar3変態点−30℃)以上、(Ar3変態点+30℃)以下とする必要がある。
というのは、仕上げ圧延終了温度が(Ar3変態点−30℃)を下回ると析出が促進されすぎると同時に異常組織が生成して、表面性状の劣化を招き、一方(Ar3変態点+30℃)を超える温度で圧延を終了すると、析出に遅れが生じ析出物が少なくなりすぎると共に、巻き取りまでの間に変態が起こり、結晶粒径が粗大化して、やはり表面性状が悪化するからである。
なお、かかる仕上げ圧延は、粗圧延終了後のシートバーを接合して、連続的に実施するようにしても良い。
【0031】
ついで、コイルに巻き取るが、この発明では、巻き取り温度の影響は小さいので、400 〜700 ℃の広い温度範囲を適用することができる。なお、巻き取り温度が、700 ℃を超えると、コイルの形状が崩れたり、スケールロスの増加を招き、一方巻き取り温度が 400℃を下回ると、ダウンコイラーの負荷が増大するので好ましくない。
【0032】
コイル巻き取り後、酸洗等によってスケールを除去したのち、冷間圧延に供する。
この冷間圧延において、圧下率が60%に満たないと得られる冷延鋼板のr値が低く、一方95%を超えると熱延板の板厚を厚くする必要が生じ、安定した特性を得ることが難しくなるので、冷間圧延における圧下率は60〜95%の範囲に限定した。
なお、耐食性や表面性状を面からは70〜90%の範囲がより好適である。
【0033】
ついで、冷間圧延後、さらに焼鈍を行う。
この焼鈍おける焼鈍温度が、再結晶温度を下回ると、未再結晶部分による加工性の劣化および耐食性、表面性状の劣化を招くので、再結晶温度以上の温度とする必要がある。一方、Ac3変態点を超える温度で焼鈍を行うと、析出物が溶解してr値が低下するおそれがあるので、焼鈍温度は再結晶温度〜Ac3変態点の範囲に限定した。
なお、この発明では、上記の焼鈍工程における昇温速度や冷却速度の影響は小さいので、焼鈍方法は連続焼鈍または箱焼鈍のいずれであっても構わない。
また、溶融亜鉛めっきラインを用いて焼鈍し、その後溶融亜鉛めっき、さらには加熱合金化処理などを行っても、上記の工程を経ることによってこの発明の効果は同様に発揮される。
【0034】
【実施例】
表1に示す成分組成になる鋼を溶製し、連続鋳造によってスラブとしたのち、直送圧延により、直ちに熱延工程に移送して熱間圧延を開始した。熱間圧延条件、巻取り条件、冷延条件および焼鈍条件は表2に示すとおりであり、また焼鈍は連続焼鈍で行った。なお、供試鋼のAc3変態点は 860〜930 ℃であり、いずれも再結晶温度以上の温度で焼鈍を行った。
上記の焼鈍後、伸び率:0.7 %の調質圧延を施して製品板とした。
【0035】
一方、各鋼種について、実験室にて同一組成の鋼を溶製し、連続鋳造を模してスラブとし、このスラブの温度が1400℃を下回らない段階で、1400℃に保持した加熱炉に装入し、炉温が1400℃に安定してから30分間保持後、水冷した試料を作製した。
これらの試料は、非水溶媒(例えばアセチルアセトン−メタノール溶液)によって析出物を電解抽出し、得られた抽出残渣を化学分析して析出Mn量、析出Ti量および析出Fe量を求めた。
得られた分析値を表1に併記する。なお表1中、<0.001 で表示したものは、その成分が検出されなかったことを意味する。
【0036】
また、得られた製品板について、その引張特性を、JIS 5 号引張試験片を使用して測定した。
r値は、15%予ひずみを与えたのちに、3点法にて測定し、L方向(圧延方向)、C方向(圧延方向に90°方向)およびD方向(圧延方向に45°方向)の平均値をr=(rL +2rD +rC )/4 により求めた。
さらに、冷延−焼鈍後の鋼板について、「鉄鋼便覧 第3版 IV P.397 」(日本鉄鋼協会編)に示されるような方法で、電子顕微鏡観察用の抽出レプリカを作製し、透過電子顕微鏡(10000倍視野、観察領域:7.5 μm ×9μm )により、粒径が0.05〜5.0 μm の析出物の個数を測定した。
なお、測定は10視野で行い、析出物の個数はこれらの視野での平均値として求めた。また、熱間圧延後の鋼板についても、析出物について同様の調査を行ったが、No.11 を除いて冷延−焼鈍板の調査結果と変わらなかった。
かくして得られた結果を、表2にまとめて示す。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
表2から明らかなように、TiとSの配合比が適正範囲を満足し、かつ抽出レプリカによる透過電子顕微鏡観察における 10000倍視野での析出物(粒径:0.05〜5.0 μm )の個数がこの発明の適正範囲を満足する発明例(No.1〜7)はいずれも、高いr値と良好な引張強度および伸び値が得られている。
これに対し、比較例 No.8, 9, 13, 14はそれぞれ、Ti, SあるいはMn量がこの発明の適正範囲から外れているため、抽出レプリカによる透過電子顕微鏡による10000 倍視野での析出物の個数がこの発明の適正範囲を満足できず、十分なr値および伸び値が得られていない。また、No.10, 11 は、熱延終了温度が適正範囲から外れているため、やはり析出物の個数がこの発明の適正範囲外となり、良好なr値および伸び値が得られていない。さらに No.12は、焼鈍温度が上限を超えたため、せっかく析出した析出物が溶解し、材質の劣化を招いている。
【0040】
【発明の効果】
かくして、この発明によれば、直送圧延材を素材とする場合であっても、再加熱材を素材とした場合と遜色のない、優れた加工性を有する冷延鋼板を得ることができる。
従って、この発明は、加工性に優れる冷延鋼板の製造に際し、省エネルギーと生産性の向上に寄与するところ極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 1400℃におけるP相:(Ti、Fe、Mn)Sの析出境界線と加工性の良否を、鋼中のTi量およびS量との関係で示したグラフである。
Claims (2)
- C:0.0005〜0.0030mass%、
Si:0.1 mass%以下、
Mn:0.05〜0.20mass%、
Al:0.01〜0.1 mass%および
N:0.001 〜0.005 mass%
を含有し、さらにTiおよびSを
Ti:0.01〜0.055 mass%、
S:0.01〜0.03mass%
でかつ、次式(1)
(Ti (mass%) + 0.008928 ) ×S (mass%) ≧ 0.000503 --- (1)
を満足する範囲において含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなり、さらに抽出レプリカによる透過電子顕微鏡観察における 10000倍視野で、粒径が0.05〜5.0 μm の析出物の個数が10〜30個の範囲を満足し、平均r値が2.5以上であることを特徴とする加工性に優れた冷延鋼板。
ここで、 10000倍視野とは、 7.5μm×9μmの領域を10000 倍に拡大して観察することを意味する。 - C:0.0005〜0.0030mass%、
Si:0.1 mass%以下、
Mn:0.05〜0.20mass%、
Al:0.01〜0.1 mass%および
N:0.001 〜0.005 mass%
を含有し、さらにTiおよびSを
Ti:0.01〜0.055 mass%、
S:0.01〜0.03mass%
でかつ、次式(1)
(Ti (mass%) + 0.008928 ) ×S (mass%) ≧ 0.000503 --- (1)
を満足する範囲において含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなる連続鋳造スラブを、そのまま直送圧延に供し、圧延終了温度:(Ar3変態点−30℃)〜(Ar3変態点+30℃)で熱間圧延を終了したのち、一旦コイルに巻取り、ついで圧下率:60〜95%で冷間圧延を施したのち、再結晶温度〜Ac3変態点の温度域で焼鈍を施すことを特徴とする加工性に優れた冷延鋼板の製造方法。
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