JP3593728B2 - 成形性の優れた極低炭素冷延鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、プレス加工等により様々な形状に成形されて用いられる冷延鋼板の製造方法に関するものであり、特に自動車のサイドフレームアウター等の非常に成形の厳しい部品に使用される、従来の冷延鋼板より伸びとr値が優れた冷延鋼板の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼中に侵入型(Interstitial)固溶するCやNを、TiやNbなど炭窒化物形成元素と結合させて、固溶していない(Free)状態にしたいわゆるIF鋼は、最終焼鈍の温度が充分高ければ、製造プロセスの条件にあまり影響されずに容易に深絞り性のよい冷延鋼板が得られる。さらに、連続焼鈍のような急速加熱においても優れた深絞り性を示し、その上、燒鈍後急冷しても歪み時効のような問題を生じない(例えば、特公昭44−18066号公報)。このような点から、急速加熱するとともに、高温焼鈍が可能な連続焼鈍法の発展や、溶融亜鉛メッキラインでの深絞り用鋼板の製造要求により、IF鋼は大量に製造されるようになってきた。近年、製鋼工程における不純物元素の低減技術が大幅に進歩し、低コストで高純な鋼が量産できるようになり、これもIF鋼の大量製造を可能にする要因の一つになっている。
【0003】
IF鋼のプレス成形性あるいは深絞り性は、通常、CやNばかりでなくPやSなどの不純物元素を低減するほど向上する。CやNあるいはSが低減できると、これらと結合するTi等の添加量も少なくてすみ、結合の結果として生じてくる微細析出物の量が減少するためである。しかしながら、TiやC等の鋼中含有量を低下させると、熱間圧延の加熱時に固溶状態にあるTiやCは、冷却の過程での結合または析出反応を起こし難くなってくる。このような析出不十分、すなわち固溶したCが存在する状態で、冷間圧延し、急速加熱し焼鈍すると深絞り性の向上が不十分になる傾向がある。
【0004】
そこで、IF鋼にて深絞り性をできるだけ向上させるには、通常、熱間圧延時の巻取温度をできるだけ高くする。これは、巻取った後のゆっくりした冷却過程の高温に維持される間に、充分析出反応を進行させ、固溶しているCを無くしてしまうためである。しかし高温巻取は、コイルの外周および内周、または鋼帯の先端部および後端部の温度が充分確保できずに長手方向の特性変動が大きくなったり、酸化によるスケール発生が増大したりするので、操業上はできるだけ低温で巻き取ることが好ましい。
【0005】
熱間圧延時の巻取温度を低くしても、優れた深絞り性を得るようにするため、特開平5−117758号公報にはsol.Al(鋼中の酸可溶アルミ)を通常より高めに含有させ、CやNの析出を十分に行わせようとする方法が開示されている。この方法によれば、(Ti,Nb)Cおよび(Ti,Al)Nとの複合析出物の析出が低温で促進されるため 650℃以下の低温で巻取っても、Cの固定が十分なされるとしている。しかし、sol.Alを高めることは、鋼の硬化とコスト増を招き、必ずしも満足のいく方法とはいえない。
【0006】
IF鋼の深絞り性を向上させるもう一つの手段として、冷圧前の熱延板の結晶粒の微細化が重要であることが知られている。これは、冷間圧延後の焼鈍工程において、冷間加工組織から加工歪みの解放によって再結晶組織が形成される際、加工前に結晶粒界であった場所の方が、粒内であった場所よりも、深絞りに好ましい方位を持った結晶組織(集合組織)が発達しいやすいという理由による。すなわち、加工前、結晶粒が小さいほど結晶粒界の量が多くなる。冷延鋼板の深絞り向上のために、熱延板の結晶粒を微細化する方法の例として、特開平5−112831号公報では、熱間圧延をAr3点からAr3+50℃の温度範囲で仕上げ、かつ熱間圧延の最終圧下率を30%以上の強加工とし、圧延直後から急冷をおこなうとしている。この場合、巻取温度は特に規制されておらず、高温で巻き取ると巻き取った後結晶粒成長がおこり、粗粒化してしまう危険性がある。
【0007】
IF鋼の深絞り性向上のための熱延時の巻取り温度は、低すぎれば固溶C等が残存して深絞り性向上を阻害し、高くすると固溶Cはなくなるが、今度は冷圧前の結晶粒が大きくなって、これも悪影響をおよぼす。このように、IF鋼において特にC含有量を 0.003%以下にまで低下させて、深絞り性を向上させようとする時、巻取り温度の設定は極めて重要であるにもかかわらず、その効果が明確にされていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、C濃度が 0.003%以下と特に低い極低炭素IF鋼の製造において、熱延条件を適正化し、固溶Cの析出の促進と熱延板の細粒化を図り、高い伸びと良好な深絞り性を得ようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者はC含有量の特に低いIF鋼において、成分と熱間圧延時のスラブ加熱温度および巻取り温度が、冷延鋼板の機械的性質に及ぼす影響を種々検討した結果、成分とスラブ加熱温度から決定される特定の巻取り温度で熱間圧延をおこなうと、従来にない深絞り性の向上が得られることを知った。ここでまず本発明のもととなった実験の例について説明する。
【0010】
重量%で、C:0.0025%、Si:0.01%、Mn:0.15%、P: 0.008%、S:0.0041%、Ti: 0.031%、sol.Al: 0.042%、N:0.0019%で他は不可避的不純物からなる鋼のスラブを用い、加熱温度を1050℃および1250℃の2種とし、仕上げ温度を 920℃として 5mm厚に仕上げた後、急冷して 300〜 700℃の範囲で種々の温度で巻取った。スケール除去後、圧下率82%で 0.8mm厚に冷間圧延し、連続焼鈍条件にて均熱温度 840℃の焼鈍をおこない、伸び率 0.3%で調質圧延した。得られた鋼板から、圧延方向に対して 0°、45°および90°の3方向にJIS5号引張り試験片を採取し、引張り試験により伸びおよびr値をそれぞれ測定し、3方向の平均値をもとめた。この伸びおよび塑性異方性の指標r値の平均値から深絞り性の良否を判定できるが、どちらも大きいほど優れている。
【0011】
図1に熱延の巻取温度と冷延焼鈍板の3方向平均伸びの関係を示す。巻取り温度の上昇に伴い、伸びは大きくなり、ある温度以上では飽和することがわかる。
【0012】
巻取り温度が高温になると伸びが向上するのは、TiCの析出物が粗大になり、鋼の素地に対する影響が低減するためと考えられる。熱延時のスラブ加熱温度の影響を、巻取り温度が約 450℃から上の温度範囲で見ると、1250℃の高温加熱の方が1050℃の低温加熱の場合よりも低目の巻取り温度ではよいが、高目の巻取り温度では低温加熱の方がよくなっている。
【0013】
図2に熱延の巻取温度と、冷延焼鈍板の3方向の平均r値の関係を示す。伸びとは異り、r値については極大を示す巻取り温度が存在する。r値は再結晶集合組織の{111}面方位の多少と密接な関係があるが、この{111}面方位の発達に、固溶Cが減少する効果と、冷間圧延前の結晶粒径が小さいという効果がいずれも有効に作用する。巻取温度が低温から高温になるに伴い、TiCの析出が促進されて固溶Cは減少するが、一方では熱延板の結晶粒が粗大になって行く傾向がある。このために、r値が極大になる最適巻取り温度が現れたものと考えられる。この最適巻取り温度は、スラブ加熱温度によって影響を受け、スラブ加熱温度が低い方が、高い方へ移動し、しかも平均r値のレベルは高くなっている。冷間圧延前の結晶粒径や固溶C量、あるいは析出物の分布状態などが影響をおよぼしていると考えられるが、理由は明らかでない。
【0014】
次に、C量が 0.003%以下でTiを添加した鋼を種々を溶製し、熱間圧延の巻取り温度の影響について調査した。その結果、冷間圧延燒鈍後の伸びに関しては成分の影響は大きくなく、大略図1に示した傾向と同じであった。ところが、平均r値については、極大値を示す巻取り温度、すなわち最適巻取り温度が存在することまでは同様であったが、その温度は、鋼により大きく変っていた。
【0015】
C含有量が極めて少ない鋼にTiを含有させた場合、熱間圧延工程の温度範囲で、その条件により種々変化すると考えられる主要な冶金学的要因の一つに、TiCの固溶析出挙動がある。Alで脱酸された不純物含有量の少ない低Mn鋼に少量のTiを添加する場合、凝固から熱延のスラブ加熱までの温度範囲にてTiは鋼中のNやSと結合し析出物を形成する。したがって、熱間圧延工程でのTiCの固溶析出挙動を考えるには、この温度までに析出物になってしまったTi分をTiの分析値から差し引いておく必要がある。そこで、TiCの固溶析出挙動に関与する固溶Tiすなわち《Ti》(有効チタン)を次式のように定義する。
【0016】
この《Ti》を用い、最適巻取り温度との対応を調べてみると、図3の様な関係が見出された。すなわち、《Ti》(%)×C(%)を横軸に、最適巻取り温度を縦軸に取ると、《Ti》(%)×C(%)が大きくなるほど、最適巻取り温度は低下の傾向がある。スラブ加熱温度が同じ場合、これらの関係は一本の曲線で近似でき、スラブ加熱温度が異ると、この図3の中において、曲線を上下に平行移動する関係にあることがわかった。
【0017】
これらの結果からは、r値が極大となる温度で巻取り、しかもその温度が伸びの良好な領域にあれば、伸びとr値の両方が高い値を示すプレス成形性のよい、深絞り性の優れた鋼板が得られることが期待される。
【0018】
本発明は、以上のような知見に基づいて完成された成形性の優れた極低炭素冷延鋼板の製造方法であり、その要旨とするところは次の通りである。
【0019】
重量%で、C:0.0005〜0.0030%、Si: 0.1%以下、Mn:0.05〜0.50%、P: 0.018%以下、S: 0.007%以下、 酸可溶Al: 0.005〜 0.080%、 N:0.0035%以下、Ti:0.01〜0.08%、Nb: 0〜 0.020%、 およびB: 0〜0.0030%を含有し、上記▲1▼式で定義される《Ti》の含有量が、下記▲2▼式を満足し、残部はFeおよび不可避的不純物よりなる鋼のスラブを加熱し、仕上げ温度 880℃以上として圧延した後、直ちに急冷して、巻取り温度Tc (℃)が下記▲3▼式を満足する条件とした、熱間圧延をおこない、圧下率60〜95%の冷間圧延後、再結晶温度以上、Ac3変態点以下の温度で連続焼鈍または箱焼鈍することを特徴とする、成形性の優れた冷延鋼板の製造方法。
【0020】
【0021】
【作用】
本発明において、素材鋼スラブの成分組成ならびに製造工程の各条件を前記のように限定した理由について、以下その作用とともに説明する。
【0022】
A)鋼成分
(1) C
鋼中に必然的に含有されるもので、少ない程好ましい。ただし、必要以上に低くすることは鋼中の介在物を増加させる傾向があり、伸びに悪影響をおよぼす。
【0023】
一方、C量が増加すると、C原子をTiCとして固定するために必要なTi量が増加し、析出したTiCが伸びを劣化させる。したがって、C量の範囲は0.0005〜 0.003%とする。
【0024】
(2) Si
Siは鋼に対し固溶強化作用があるが、含有量が高いと酸洗不良やめっき性不良を来すので 0.1%以下とするが、含有量は実質的に 0でもよい。
【0025】
(3) Mn
極低炭素鋼において、Mnの添加は固溶強化の作用があるが、含有量が多すぎると伸びの劣化や、TiCの析出を微細にさせて降伏点の必要以上の上昇をもたらすので、 0.5%以下とする。また低減させすぎると鋼が脆化することがあるので、0.05%以上含有させる。なお、強度の必要がない場合、伸びをよくするには0.05〜 0.2%とする方が望ましい。
【0026】
(4) P
伸びの点からは低ければ低いほど好ましい。ただし、r値を低下させることなく強度を上げる効果があるので、 0.018%以下の含有は許容できる。
【0027】
(5) S
Sは伸びを劣化させるので低ければ低いほどよい。その影響が顕著でない範囲として、 0.007%以下とする。
【0028】
(6) sol.Al
sol.Al(酸可溶Al)の含有量は、溶鋼の脱酸を十分おこない健全なスラブにすると、 0.005%以上となる。ただし、過剰の含有は鋼が硬質化すると同時に伸びが低下するので、0.08%を上限とする。望ましくは0.005 〜0.05%である。
【0029】
(7) N
NはTiと結合しTiNとして析出する。TiNの存在はは伸びを低下させるので、Nは低いほど好ましい。目立った影響をおよぼさない限界として、0.0035%以下とする。
【0030】
(8) Ti
Ti添加の目的は、冷間圧延以降の工程において鋼中に固溶Cや固溶Nが存在しないように、これらと結合させて固定することにある。このためには0.01%以上含有させる必要があるが、多く含有させてもその効果は飽和し、さらに鋼が硬質化してくるので、多くても0.08%以下とする。
【0031】
前述のように、凝固から熱延のスラブ加熱までの温度範囲にて、Tiは鋼中のNやSと結合し、TiNやTiSのような安定な析出物を形成してしまう。したがって、熱間圧延工程以降の温度範囲におけるTiの効果は、残った固溶Tiの量で考えなければならない。そこで、通常は前出▲1▼式で定義される《Ti》量をもって、その効果が検討されている。本発明においても、Cとの結合が重要なので、Tiは上記の含有量範囲であっても、《Ti》の含有量は、上記と同じ理由から前出▲2▼式を満足しなければならない。
【0032】
(9) Nb
Nbは添加しなくてもよいが、熱延板の結晶粒を微細化する効果があるので、必要により添加する。添加する場合、少なすぎると効果がないので、 0.005%以上含有させることが望ましい。しかし、0.03%を超えて含有させると再結晶温度が上昇し、所要の性能を得るための焼鈍温度が高くなってしまうので、その含有量は多くても0.03%以下とする。
【0033】
(10) B
本発明鋼のように固溶Nや固溶Cを鋼中から充分に排除した場合、製品鋼板に強度の加工をおこなった後、低温で加工変形応力とは異る方向の衝撃応力を加えると、簡単に割れてしまうことがある。これを二次加工脆性というが、その発生防止のため、必要であればBを微量添加してもよい。添加する場合、少なすぎると効果がないので、0.0003%以上含有させることが望ましい。ただし、0.0030%を超える含有は効果が飽和してしまう。なお、Bの含有はr値を低下させる傾向があるので、添加しなくてもよいが、必要により添加する場合は、以上のように、0.0003〜0.0030%が望ましい。
【0034】
B)製造工程条件
(11) スラブ加熱温度
熱間圧延時のスラブ加熱温度は、1000℃以下の低温ではオーステナイト域での圧延仕上げが困難であり、1280℃をこえるといたずらに酸化損失とエネルギー損失を増すだけである。したがって、スラブ加熱温度は1000〜1280℃とするのがよい。しかし、図1および図2からわかるように、スラブ加熱温度は低温の方が伸びおよびr値共、到達しうるレベルが高くなるので、望ましくは1000〜1100℃である。
【0035】
(12) 熱間圧延仕上げ温度
熱間圧延は、上記スラブ加熱温度から 880℃までのオーステナイト域でおこなうのが好ましい。仕上げ温度が 880℃を切ると、フェライト相が出始め、巻取り時に異常粒成長をおこし、表面性状が劣化する危険性がある。
【0036】
(13) 熱間圧延後の急冷
熱間圧延の仕上げロールを出た直後に急冷する。冷却速度は望ましくは20〜80℃/s程度とする。巻取り温度まで緩冷却すると、熱延板結晶粒が大きくなり、冷間圧延燒鈍後のr値が低下する。
【0037】
(14) 熱間圧延の巻取り温度
平均r値が極大値を示す最適巻取り温度To について、成分の異る種々の鋼を用い熱延条件を変えて試験し、データを整理した結果、次の関係式で近似的に表せることがわかった。
【0038】
ここで、《Ti》は前出▲1▼式の有効チタン、Ts はスラブ加熱温度である。熱間圧延時の巻取り温度を、To に一致させることができれば理想的である。しかし現実には、成分とスラブ加熱温度を知り、それによって求められたTo に、できるだけ近い温度で巻取ることができれば、安定して平均r値の優れた鋼板が得られる。実際の巻取り温度をTc とすれば、その温度範囲の限界は、
−25≦Tc −To ≦25 ・・・・▲3▼
書き換えれば
To −25≦Tc ≦To +25 ・・・・▲5▼
とする必要があり、この温度範囲を外れた温度で巻取った場合は、優れたr値の製品鋼板は得られない。
【0039】
伸びに関して、図1に見られるように巻取り温度が低下すると劣化してくるので、r値、伸びとも優れた鋼板を得るためには、上記の範囲であっても巻取り温度は 500℃以上とすることが望ましい。また、巻取り温度の上限は特には設定しないが、仕上げ温度や巻取った時のコイル形状、または部位による特性ばらつきの増大から自ずから定まり、大略 750℃程度である。
【0040】
(15) 冷間圧延の圧下率
極低炭素鋼の場合、冷間圧延率が高いほどr値は高くなる。圧下率が60%未満では、r値は不十分であり好ましくない。一方、冷間圧延の圧下率が95%をこえると、熱延板の板厚を厚しておかなければならず、仕上げ圧延直後の冷却が緩冷却になりがちである。したがって、冷延圧下率は60〜95%とする。
【0041】
(16) 焼鈍条件
焼鈍方法は連続焼鈍,箱焼鈍のいずれでもかまわない。また、連続溶融亜鉛めっきラインを用いて焼鈍後、溶融亜鉛めっきもしくは合金化溶融亜鉛めっきをおこなってもよい。さらに、焼鈍後の鋼板に電気めっき、たとえばZn系めっきを施すこともできる。
【0042】
また、再結晶温度未満の焼鈍温度では鋼が硬質なままであり、Ac3をこえる焼鈍温度になると変態がおきて、r値にとって好ましい集合組織が破壊される。したがって、焼鈍温度は再結晶温度以上、Ac3変態温度以下に限定する。
【0043】
【実施例】
表1に示す鋼を溶製し、そのスラブを表2に示す温度で1時間加熱した後,仕上げ温度 920℃で、 5mm厚に熱間圧延した。熱間圧延ロールを出た直後に水スプレイにて50℃/sの冷却速度で冷却し、表2に示す種々の温度で巻取った。熱延板は表面のスケールを除去した後、圧下率82%の冷間圧延をして板厚 0.8mmとした。昇温速度10℃/s、均熱 840℃×30s、冷却速度10℃/sの連続焼鈍相当の焼鈍を施した後、 0.3%の調質圧延を行い、圧延方向に対し 0°45°および90°方向のJIS5号試験片を採取して引張試験を行った。表2に3方向平均の引張試験結果を示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
鋼Aによる条件 1および 5は、熱間圧延の巻取り温度が本発明の範囲より低いため、伸びとr値が低い。一方、条件 4、 8は本発明で定める範囲より高い巻取り温度であるため、r値が低くなっている。本発明で定める範囲にて製造した条件 2、 3、 6および 7は、伸びとr値の両方が高い値を示している。
【0047】
鋼BはTi量が本発明の範囲より少なく、固溶Cを完全に固定することができないため、この鋼による条件 9では伸びとr値の両方が著しく劣る。鋼CはTi量が本発明で定める範囲より多く、この鋼を用いた条件10では引張強さが高く、伸びが小さくなっている。鋼DはC量が本発明の範囲より多い。この鋼を用いた条件11は、引張強さが高く伸びが小さいが、これはTiC析出量が多くなったためである。鋼E、FおよびGは、それぞれSi、MnおよびPの含有量を本発明の範囲内で変えた鋼であり,それらによる条件12〜14は、高い伸びとr値を示している。
【0048】
Nbを含有させた鋼H、I、J、KおよびLによる条件15〜19においては、表2に示されるように、条件15および19を除き、極めて優れた伸びとr値が得られている。これはNb添加によって熱延鋼板の結晶粒が微細化した効果であると思われる。条件15では含有量が少ないためやや効果が不足であり、条件19で伸びが低いのは、過剰のNb含有で再結晶温度が高くなり粒成長が不十分になったためである。
【0049】
耐二次加工脆性の改良効果を見るため、鋼M、N、O、PおよびQではBを含有させた。耐二次加工脆性の評価は、ポンチ径33mmにて絞り比 1.8として円筒カップを成形後、種々の温度に冷却し、円錐台金型(尖頭角度60°)を用い開口部を拡大する衝撃荷重を加え、縦割れ発生の遷移温度を求めた。これらの結果も、表2の条件20〜24に示した。B含有量の少ない条件20では、脆性遷移温度が−20℃であるが、充分なB含有量の条件21〜23では、−60〜−80℃と優れた耐二次加工脆性を示す。ただし、条件24では、耐二次加工脆性は優れているが、r値が低下しており、含有量が多すぎる場合は成形性に悪影響をおよぼすことがわかる。
【0050】
【発明の効果】
本発明の方法によれば,自動車部品の一体成形等きびしい加工に利用できる、伸びとr値が極めて優れた冷延鋼板を安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱間圧延の巻取り温度と製品冷延鋼板の伸びとの関係を示す図である。
【図2】熱間圧延の巻取り温度と製品冷延鋼板のr値との関係を示す図である。
【図3】《T》(有効チタン)量とC量の積の値と、最適巻取り温度(r値が極大となる巻取り温度)との関係を示す図である。
Claims (1)
- 重量%にて、C:0.0005〜0.0030%、Si: 0.1%以下、Mn:0.05〜0.50%、P: 0.018%以下、S: 0.007%以下、酸可溶Al: 0.005〜 0.080%、N:0.0035%以下、Ti:0.01〜0.08%、Nb: 0〜 0.020%、およびB: 0〜0.0030%を含有し、下注▲1▼式で定義される《Ti》の含有量が、下注▲2▼式を満足し、残部はFeおよび不可避的不純物よりなる鋼のスラブを加熱し、仕上げ温度 880℃以上として圧延した後、直ちに急冷して巻取り温度Tc (℃)が下注▲3▼式を満足する条件とした熱間圧延をおこない、次いで圧下率60〜95%の冷間圧延後、再結晶温度以上、Ac3変態点以下の温度で連続焼鈍または箱焼鈍することを特徴とする、成形性の優れた冷延鋼板の製造方法。
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