JP5038985B2 - 曝気レス水処理装置 - Google Patents
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Description
(2)流入水質の悪化(有機汚濁物質の増加)
(3)流入水への毒物等の混入
(4)流入水中の浮遊物質(SS)の増加
(5)ガス発生量の増加
(6)流入水質の低濃度化(高濃度BOD産業排水から低濃度BOD下水へ)
これらの変動や外乱(1)〜(6)を生じると、従来の水処理装置100では、嫌気リアクタ104内の嫌気性微生物(UASB)が流出し、その結果として次の(i)〜(iii)の問題を生じる。
(ii)好気リアクタ内の嫌気化
(iii)処理水の水質低下
通常、UASB部105の最上部では、汚水ポンプ102からの流入量による線速度Lv(Line Velocity)とUASBの粒子の落下速度とが釣り合って、一定の高さでバランスしている。
(b)返送ポンプ(最終沈殿池汚泥を曝気槽へ返送するポンプ):約10%
(c)ブロワ(曝気槽内に空気を供給する曝気装置):50〜60%
上記のエネルギ内訳を検討してみると、目標とするエネルギ70%を達成するためには、多くのエネルギを占める(c)を採用することは不利である。実際には(c)を用いて目標とする省エネルギを達成することは不可能であるため、(c)のブロワは用いられていない。一方、(a)の汚水ポンプは地中深い下水管内の下水を地上の水処理装置に供給するためには必要不可欠である。従って、ブロワを使用することなく、汚水ポンプ等の必要不可欠な機器のみを有するシステムを構築し、そのプロセス技術を確立する必要がある。そこで、本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下に述べる簡素化されたシンプルな水処理システムとそのプロセス技術を確立することができた。
前記嫌気処理槽の下部に配置され、前記嫌気性微生物としてアップフロー・アンエアロビック・スラッジ・ブランケット、消化汚泥、および生物学的窒素除去法または生物学的リン除去法の嫌気汚泥中の嫌気性微生物のうちの少なくとも1つを汚水中に浮遊させた浮遊汚泥部と、
前記嫌気処理槽の上部に配置され、かつ前記嫌気処理槽の高さ方向に直列に配置され、互いに形状が異なる担体を有する複数の担体グループを有し、前記嫌気性微生物としてアップフロー・アンエアロビック・スラッジ・ブランケット、消化汚泥、および生物学的窒素除去法または生物学的リン除去法の嫌気汚泥中の嫌気性微生物のうちの少なくとも1つを付着させた担体を支持する担体支持部を有し、上向流の汚水と前記担体との接触が促進されるように前記担体支持部により前記担体が支持され、前記担体支持部に支持された担体に前記浮遊汚泥部から流れてきた嫌気性微生物をさらに付着させ、前記嫌気性微生物が前記嫌気処理槽から前記好気処理槽へ流出するのを防止する担体部と、
を有することを特徴とする。
また、担体部は、担体の充填率を10〜50%の範囲とすることが好ましい。嫌気性微生物付着担体部の充填率は、有効容積(嫌気処理槽内の水が入っている実容積)の約20%程度である。この充填率は10〜50%の範囲で種々変えることができる。10%未満の充填率では、嫌気固定床としての分解機能が十分に発揮されないからである。一方、充填率が50%を超えると、流動抵抗が増大して汚水が嫌気処理槽内を円滑な上向流として通流し難くなるとともに、汚水ポンプの負荷が増大してその寿命が短くなるからである。
本実施形態では、本発明の曝気レス水処理装置を下水処理設備に用いた場合について説明する。
図1に示すように、曝気レス水処理装置1は、前段に嫌気リアクタ21を備え、後段に好気リアクタ10を備えている。嫌気リアクタ21の底部には供給ラインL1を介してポンプ2の吐出口が接続され、図示しない汚水供給源から汚水がポンプ2の駆動により下方から嫌気リアクタ21内に導入されるようになっている。嫌気リアクタ21の上部と好気リアクタ10の上部はオーバーフローラインL2によって接続されている。嫌気リアクタ21の上部開口には蓋が被せられている。メンテナンス作業者は、蓋を開けて嫌気リアクタ21の内部を保守点検することができるようになっている。好気リアクタ10の上部開口は大気中に開放されている。
(a)嫌気リアクタ内の水処理作用
汚水は、汚水ポンプ2を駆動することによって、ラインL1を介して嫌気リアクタ21の底部に供給され、嫌気リアクタ21内を上向流で通流する。次いで、汚水は、嫌気リアクタ21内のメタン菌、酸発酵菌、硫酸還元菌などの嫌気性微生物が浮遊する浮遊汚泥部22に供給され、嫌気性微生物の凝集体であるUASBによって、汚水中の有機汚濁物質が除去・分解される。さらに、ひも状担体33の表面に付着した嫌気性微生物と汚水中の有機汚濁物質とが高い頻度で接触し、処理効率が急激に上昇する。その化学反応は下式(1)(2)(3)に示す通りである。すなわち、酸発酵菌は、式(1)に従って高分子の炭水化物等の有機汚濁物質をパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸に分解する。さらに、酸発酵菌は、式(2)に従って脂肪酸を酢酸に分解する。また、メタン発酵菌は、式(3)に従って酢酸をメタンと二酸化炭素に分解する。
→ 脂肪酸(R−COOH、RCHNH2COOH) …(1)
脂肪酸*酸発酵菌 → 酢酸(CH3COOH) …(2)
酢酸(CH3COOH)*メタン発酵菌 → メタン(CH4)+二酸化炭素(CO2)
…(3)
このように有機汚濁物質が分解除去された処理水は、第1の上澄み部23を上向流で通流し、担体支持部24の孔を通過して、嫌気性微生物付着担体部25の嫌気性微生物と接触する。この嫌気性微生物付着担体部25では、上記浮遊汚泥部22を通過した有機汚濁物質の残存したものをさらに上式(1)(2)(3)の化学反応に従ってさらに分解する。このように、ひも状担体33において嫌気性微生物と汚水が高効率に接触するため、嫌気性微生物の活性が長期間にわたり劣化することなく所望レベルに維持される。このようにして浮遊汚泥部22と担体部25とで二段階に分けて分解された処理水は、第2の上澄み部26、越流部27、オーバーフローラインL2を通って好気リアクタ10の上部に供給される。
処理水は、好気リアクタ10内では下向流で通流する。下向流の汚水19を好気性微生物付着担体部11と空気と接触させることによって、上記嫌気リアクタ21で分解されずに残存した有機汚濁物質や、嫌気リアクタ21で発生した硫化水素を、下式(4)と(5)の反応にしたがって分解除去する。
(CxHyOz)+(x+y/4-z/2)O2 → xCO2+y/2 H2O …(4)
硫化水素+酸素 → 硫酸+水素イオン
H2S+2O2 → SO4 +2H+ …(5)
(c)嫌気リアクタからの嫌気性微生物の流出抑制作用
上記(a)の水処理作用の他に、嫌気リアクタ21内の作用としては、浮遊汚泥部22中の嫌気性微生物の集合体であるUASBの流出抑制作用がある。
(i)嫌気リアクタ内での嫌気性微生物濃度の低下抑制効果
処理操作中に変動や外乱が発生した場合であっても、浮遊汚泥部22の嫌気性微生物が嫌気リアクタ21から好気リアクタ10のほうに流出することを抑制できる。よって、嫌気リアクタ21内の嫌気性微生物濃度の低下を抑制でき、嫌気リアクタ21の水処理運転が安定化する。
上記のように、嫌気リアクタ21から嫌気性微生物が流出することを抑制できるので、好気リアクタ10内に嫌気性微生物が流出しなくなる。このため、好気リアクタ10内が嫌気化しなくなる(酸素が無くなる)。好気リアクタ10が嫌気化しなくなることで、上記の式(4)と式(5)にしたがって有機汚濁物質や硫化水素を効率的に除去できるようになり、好気処理効率の低下を抑制できる。
第2の実施形態の嫌気性微生物付着担体部25の担体は、UASBの嫌気性微生物が付着・固定され、プラスチック製の筒体、球体、楕円球体、立方体、直方体、多面体、螺旋状体など種々の形状・形態を有するモジュールフィラー(module filler)であり、担体支持部24により支持されている。
上記第1の実施形態の装置1では、嫌気性微生物付着担体部25の上方に第2の上澄み部26と越流部27を設けたが、本発明において嫌気リアクタの上部構造はこれのみに限定されるものではない。下方の浮遊汚泥部22から浮上した嫌気性微生物の集合物が担体部25の担体表面に付着し過ぎて、同担体の比重が小さくなった場合に、この担体そのものが浮上するおそれがある。
さらに、図10に示す装置1Bのメッシュ30の代わりに、図12に示す装置1Cでは複数対の傾斜邪魔板31を担体部25の上方に並べて配置することもできる。一対の傾斜邪魔板31は、嫌気リアクタ21の軸(垂直軸)に対して傾斜し、かつ下方に向かってハの字状に開いている。
上記第2の実施形態の装置1Aでは嫌気性微生物付着担体部25を単層構造としているが、図13に示す本実施形態の装置1Dでは2層以上の嫌気性微生物付着担体部25b,25cを有する複数層構造とすることもできる。すなわち、本実施形態の曝気レス水処理装置1Dは、第1の嫌気性微生物付着担体部25bに加えて、さらに同じ担体が同じ充填量で投入された第2の嫌気性微生物付着担体部25cをさらに有する。
上記第5の実施形態の装置1Dでは複数の嫌気性微生物付着担体部25b,25cにほぼ同径の担体を用いた。これに対して、本実施形態の装置1Eでは、図14に示すように、下段側の第1の嫌気性微生物付着担体部25bの担体として上記第1の実施形態の担体とほぼ同じ粒径の第1の担体を用いるが、上段側の第2の嫌気性微生物付着担体部32の担体には前記第1の担体よりも粒径の小さい異種粒径の第2の担体を用いる。
本実施形態の曝気レス水処理装置は、その構造を具体的に図示していないが、図14の装置1Eと同様に、第1の担体部の上方に第2の担体部を配置した上下二段の構造としている。本実施形態の装置では、第2の担体部の担体を異種表面積担体とし、第2の担体部の担体の表面積を第1の担体部の担体の表面積と異なるものとしている。例えば、同じ形状(例えば円筒形状)で、同じ粒径であっても、第1の担体に塩化ビニル製の担体を用い、第2の担体にポリプロピレン(PP)製の担体を用いることができる。
本実施形態の曝気レス水処理装置1Fでは、図16に示すように、嫌気リアクタ21の下段側に第1の嫌気性微生物付着担体部25bを配置し、上段側に異種形状担体を有する第2の嫌気性微生物付着担体部33を配置している。すなわち、第1の担体部25bの担体が球形状であるのに対して、第2の担体部33の担体を立方体形状としている。このような組み合せにすると、球形状の第1の担体では捕獲し難い微生物であっても、立方体形状の第2の担体では、四隅が角張っていることから、第1の担体で捕獲できなかった微生物を捕獲することができる。このため、比重の小さな浮上しやすい嫌気性微生物であっても、第2の担体部33によって捕獲でき、好気リアクタ10側への嫌気性微生物の流出を抑制できるようになる。
2)第1の担体:球形状 + 第2の担体:ひも状
3)第1の担体:円筒状 + 第2の担体:ひも状
すなわち、第2の担体の形状が第1の担体の形状よりも均一性が高くなるようにすることで、嫌気リアクタ内において嫌気性微生物を高い効率で捕獲することができ、好気リアクタ側への嫌気性微生物の流出を有効に抑制することができる。
本実施形態の曝気レス水処理装置1Gは、図17に示すように、越流部27に連通するオーバーフローラインL2に第1の弁40を有するとともに、オーバーフローラインL2から分岐する返送ラインL4に第2の弁41を有している。オーバーフローラインL2から返送ラインL4が分岐する箇所にはドレンポット43が取り付けられている。このドレンポット43は、嫌気リアクタ21から溢れ出したオーバーフロー水を一時的に溜めておき、嫌気性微生物を沈殿させる機能を有するものである。
本実施形態の曝気レス水処理装置1Hは、図18に示すように、オーバーフローラインL2から分岐する返送ラインL5と、ラインL2/L5の分岐点を間に挟んでオーバーフローラインL2に取り付けた一組の弁49,50と、返送ラインL5に取り付けた弁51と、ポンプ2からの供給ラインL1に取り付けた弁53と、嫌気リアクタ21の下部からポンプ2の上流側の供給ラインL1までの間をつなぐバイパスラインL6と、バイパスラインL6に取り付けた弁54と、これらの弁49,50,51,53,54の開閉動作等を制御する制御器55と、担体の状態(例えば、担体の位置、微生物の付着状況など)を検知するセンサ56と、を備えている。
第1の実施形態の装置1では、浮遊汚泥部22内には、嫌気性微生物の集合体であるUASB(粒径が1〜5mm)を投入していたが、本発明において、浮遊汚泥部22内の嫌気性微生物はUASBのみに限定されない。
第1の実施形態の装置1では、嫌気性微生物付着担体部25内には、嫌気性微生物の集合体であるUASBの嫌気性微生物を付着させたが、この担体部25内の嫌気性微生物はUASBのみに限定されない。
第1の実施形態の装置1では、好気リアクタ10は上部開放系による大気圧空気供給を使用しているが、本実施形態の装置1Lでは図21に示すように、通気手段として、通気孔14とファン15とを配置することにより、微量の空気供給を行うことができる。なお、通気孔及びファンは複数設けるようにしても良い。
10…好気リアクタ(好気処理槽)、
11…好気性微生物付着担体部、
21…嫌気リアクタ(嫌気処理槽)、
22…浮遊汚泥部、22b…浮遊汚泥部嫌気性微生物部(嫌気性微生物担体、UASB)、
23…第1の上澄み部、
24…担体支持部、
25…嫌気性微生物付着担体部、
25b…異種粒径担体を有する第2の嫌気性微生物付着担体部、
25c…第2の嫌気性微生物付着担体部、
26…第2の上澄み部、
27…越流部、
30…メッシュ、31…邪魔板、
32…異種粒径担体を有する第2の嫌気性微生物付着担体部、
40,41,49,50,51…弁、
55…制御器、56…センサ、
60…消化汚泥による浮遊汚泥部、
61…消化汚泥による嫌気性微生物付着担体部、
L1〜L5…ライン、P…ポンプ、B…ブロワ。
Claims (8)
- ポンプにより供給される汚水を下部に受けて上向流で流動させ、汚水を嫌気性微生物と接触させて、汚水中の汚濁物質を嫌気処理する嫌気処理槽と、この嫌気処理槽からの処理水を上部に受けて下向流で流動させ、前記処理水を好気性微生物および空気に接触させて、前記処理水中の汚濁物質を好気処理する好気処理槽と、を具備する曝気レス水処理装置において、
前記嫌気処理槽の下部に配置され、前記嫌気性微生物としてアップフロー・アンエアロビック・スラッジ・ブランケット、消化汚泥、および生物学的窒素除去法または生物学的リン除去法の嫌気汚泥中の嫌気性微生物のうちの少なくとも1つを汚水中に浮遊させた浮遊汚泥部と、
前記嫌気処理槽の上部に配置され、かつ前記嫌気処理槽の高さ方向に直列に配置され、互いに形状が異なる担体を有する複数の担体グループを有し、前記嫌気性微生物としてアップフロー・アンエアロビック・スラッジ・ブランケット、消化汚泥、および生物学的窒素除去法または生物学的リン除去法の嫌気汚泥中の嫌気性微生物のうちの少なくとも1つを付着させた担体を支持する担体支持部を有し、上向流の汚水と前記担体との接触が促進されるように前記担体支持部により前記担体が支持され、前記担体支持部に支持された担体に前記浮遊汚泥部から流れてきた嫌気性微生物をさらに付着させ、前記嫌気性微生物が前記嫌気処理槽から前記好気処理槽へ流出するのを防止する担体部と、
を有することを特徴とする曝気レス水処理装置。 - 前記担体部は、前記担体支持部に吊り下げ支持される複数のひも状担体を有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
- 前記ひも状担体は、幹ひもと、前記幹ひもを中心としてその周囲に取り付けられた複数の枝ひもと、を有することを特徴とする請求項2に記載の装置。
- 前記ひも状担体の相互間距離を前記ひも状担体の外周径の−1倍から+4倍までの範囲とすることを特徴とする請求項3に記載の装置。
- 前記担体部は、前記担体の充填率を10〜50%の範囲とすることを特徴とする請求項1に記載の装置。
- 粒径の大きな第1の担体を前記担体部の下部に配置し、前記第1の担体よりも粒径の小さな第2の担体を前記担体部の上部に配置したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の装置。
- 表面積の小さな材質の第1の担体を前記担体部の下部に配置し、前記第1の担体よりも表面積の大きな材質の第2の担体を前記担体部の上部に配置したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の装置。
- 形状均一性が高い塊状の担体を前記担体部の下部に配置し、前記塊状の担体よりも形状均一性が低いひも状の担体を前記担体部の上部に配置したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の装置。
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