JP5037031B2 - 壁パネル固定構造および建築物 - Google Patents
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Description
すなわち、地震時において、地震エネルギーの吸収に大きな耐力上昇を伴う壁パネルに代わり、降伏後の耐力上昇が小さく変形性能に優れた鋼材から成る壁パネル脚部接合部において地震エネルギーを吸収可能であれば、経済的であるという技術思想がある。
本発明はこのような基本思想のもとで考案されたもので、アンカーボルト、ボルトあるいは連結材をエネルギー吸収要素と考えて、地震時において、壁パネル脚部接合部におけるボルト等を塑性変形させて、建物に入力される地震エネルギーを低減させ、接合金物、接合具、枠材の重量を落とすことが可能な壁パネル固定構造およびそのような固定構造を備えた建築物を提供することを目的とする。
本発明は前記の課題を解消することができ、壁パネル脚部接合部において地震エネルギーの吸収可能な壁パネル固定構造およびその構造を備えた建築物を提供することを目的とする。
そして、第1発明の壁パネル固定構造では、スチールハウスにおける壁パネルの固定構造において、壁パネルは面材を合板又は石膏ボードとし、壁パネルの一部と壁パネル脚部接合部とが共同して塑性変形した後に壁パネル脚部接合部側の塑性変形が大きくなるようにするために、壁パネル脚部接合部の降伏耐力を、壁パネルの降伏耐力よりも高い降伏耐力とし、かつ壁パネルの最大耐力よりも低い降伏耐力としたことを特徴とする。
また、第2発明では、第1発明の壁パネル固定構造において、壁パネルの枠組が薄板軽量形鋼からなり、壁パネル脚部接合部の降伏個所が、アンカーボルトであることを特徴とする。
また、第3発明では、第1発明の壁パネル固定構造において、壁パネルの枠組が薄板軽量形鋼からなり、壁パネル脚部接合部の降伏個所がアンカーボルトと壁パネルの枠材との連結材であることを特徴とする。
また、第4発明では、第3発明の壁パネル固定構造において、連結材を圧縮させて降伏させるようにしたことを特徴とする。
また、第5発明では、第3発明または第4発明の壁パネル固定構造において、アンカーボルトが開断面の鋼製基礎に接合され、かつ連結材が鋼製基礎側に配置されていることを特徴とする。
また、第6発明では、第2発明〜第5発明のいずれかに記載の壁パネル固定構造において、アンカーボルトもしくは連結材の塑性変形により生じた雌ねじ部材との間隙を、前記アンカーボルトもしくは連結材の塑性変形方向と直角方向に移動するように付勢された楔により自動充填することを特徴とする。
また第7発明の建築物では、第1発明〜第6発明のいずれかの壁パネル固定構造を備えていることを特徴とする。
なお、本発明は接合部のみの変更ですむことから安価に実施が可能である。
本願発明によると、壁パネル脚部接合部の降伏耐力を、壁パネルの降伏耐力よりも低い降伏耐力としたので、壁パネル側が弾性領域内において弾性変形させ、かつ壁パネル脚部接合部において塑性変形させて、壁パネル脚部接合部において地震時に建物に入力される地震エネルギーを吸収して壁パネルに入力される地震エネルギーを低減することができ、壁パネルの損傷を防止することができる。また例えば、大地震後も、接合部の交換だけで、建物の耐震性能を回復することができる。但し、接合部の降伏耐力は必要耐力以上ある必要があるため、相対的に壁パネルの降伏耐力を高める必要があり、壁パネルが十分に配置されている場合は安価に実施が可能であるが、壁パネルが十分にない場合はコストアップを伴う。
第2発明によると、変形性能に優れ降伏後の耐力上昇が少ない鋼材としてアンカーボルトを塑性変形させることによりその部分で地震時のエネルギーを吸収して、壁パネルまたは建物の損傷を低減させることができ、部材数の増加が不要なため安価に実施が可能である。
第3発明によると、アンカーボルトと壁パネルの枠材との連結材を塑性変形させることによりその部分で地震時のエネルギーを吸収して、アンカーボルトの損傷を防止することができ、また、接合部における塑性変形した連結材のみを交換することにより、接合部の耐震性能を回復することができる。
第4発明によると、連結材を圧縮させて降伏させるようにしたので、連結材を引張力により降伏させる場合のように、剛性および耐力は面積に比例して低減することなく、接合部の剛性を高く保ったまま、耐力だけ落とすことができる。
第5発明によると、アンカーボルトが開断面の鋼製基礎に接合され、連結材が鋼製基礎側に配置されているので、アンカーボルトの端部を開断面の鋼製基礎の開口部内に配置して接合することができ、また、連結材を鋼製基礎の開口部側に配置することができるため、地震エネルギーを吸収して塑性変形した連結材等の交換作業を容易に行うことができる。
第6発明によると、アンカーボルトもしくは連結材の塑性変形により生じた雌ねじ部材と接合金物との間隙に、楔を前記の塑性変形と直交するように付勢させて移動させ、前記間隙が楔により充填させることができるため、アンカーボルトもしくは連結材に、地震時における繰り返し力(地震力)においても常時、引張力あるいは圧縮力に抵抗するように機能させることができるため、アンカーボルトもしくは連結材が機能しないことによる復元力特性上のスリップ性状を防止することができ、壁パネル脚部接合部しいては建物の耐震性能を向上させることができる。
第7発明によると、第1発明〜第6発明のいずれかの壁パネル固定構造を備えている建築物であるので、壁パネルそのものを大きく損傷させることなく、建物に入力される地震エネルギーを低減させることができ、接合部および枠材の必要耐力を低減することができ、経済的な建築物を実現することができる。
また、物性の安定した鋼材の塑性変形を地震エネルギー吸収に利用することにより、建物13の安定した耐震性能を確保することができる。また、地震規模によっては、建物13の損傷位置を、壁パネル脚部接合部6に特定することにより、接合部の損傷した部品を交換することにより、補修して回復させることができる。
なお、前記接合金物8としては、前記以外にも、断面角形のU字状部17等であってもよい。
なお、前記各実施形態のように接合金物8の上部にコ字状の座金を嵌設させる形態では、図4に示すように壁パネル1に水平力Qが作用した場合に、図4の左側に位置する接合金物8に跨り接合用フランジに近接するようにコ字状の座金を嵌設するようにしておくと、コ字状座金の下部と接合用金物における接合用フランジが接触して、ボルト4が外れるのを防止でき、また、図4の右側に位置する接合金物8では、ボルト4と筒部17が接触してボルト4が外れるのを防止できる。
また、壁パネル支承(b)座右21の上面板22bのボルト挿通孔5と接合金物8の凹溝9とに渡って、軟鋼または低降伏点鋼からなるボルト23を挿通して上面板22bの下面と接合金物8の上端面にナット等の雌ねじ部材20をねじ込んで圧着固定するようにしている。
図7(a)には、筒状部材24の正面図が示され、図に示すように、7(b)には、筒状本体部材24が圧縮力変形した状態が拡大して示されている。筒状部材24の中間部が外側に膨らむようにするために、中間部の内周面側に環状溝24a等の薄肉部を設けておくとよい。
このように地震時に壁パネル脚部接合部における連結材に圧縮力を作用させて、連結材を降伏させて、地震時の入力エネルギーを低減することもできる。
部材を圧縮降伏させる形態の特徴として、引張力を作用させて降伏させる場合には、剛性・耐力ともに断面積に比例するが、圧縮力が作用するときには、剛性は断面積に比例するものの、耐力は局部座屈を生じて断面積に比例しない特性を利用したもので、径厚比により、耐力上、無効な断面が生じるため、剛性は高く保ったまま、耐力のみを落とすことが可能になる。なお、さらに耐力を落とすには、筒の形状は平行部が多い角錐にするとよい。また、筒の材軸方向にスリットを入れた場合も圧縮耐力の低減に効果的である。連結材の一部としての筒状部材24の平面形態としては、図7(c)に示す円形形態よりは図7(d)に示す角形形態のほうが、圧縮力が作用した場合に局部座屈が起こりやすいので、圧縮耐力を積極的に下げる場合には、平面形態が角形のほうが有利である。
その他の構成は、前記第1実施形態と同様であるので、同様な部分には、同様な符号を付した。
その他の構成は、前記した実施形態と同様であるので、同様な部分には、同様な符号を付して説明を省略する。
前記楔27の傾斜上面には、アンカーボルト4に、楔27の上面と同じ傾斜角の傾斜面とされている下面を有する楔32が嵌挿装着され、その楔32の上面にナットからなる雌ねじ部材20がアンカーボルト4に装着されている。
このような形態では、アンカーボルト4が塑性変形し伸びた場合に、接合金物8と雌ねじ部材20との間の距離が大きくなって、間隙が生じても、前記圧縮ばね30により、楔27を前進するように押圧付勢して間隙をなくし、常時アンカーボルト4に地震時の引張力が作用するように機能させ、地震エネルギーを吸収することができる。その他の構成は、前記した実施形態と同様であるので、同様な部分には、同様な符号を付している。
前記の楔27の前進移動させる手段としては、引張ばねにより楔27を前進移動させるようにしてもよい。
その他の構成は、前記実施形態と同様であるので、同様な部分には、同様な符号を付した。
その他の構成は、前記実施形態と同様であるので、同様な部分には、同様な符号を付して説明を省略する。
また、前記壁パネル支承部材21における上フランジ26の下面にバネ受け部材29の上部を取付け、前記バネ受け部材29の下部をばね受け33とし、そのばね受け33と前記二股状の楔27との間に圧縮ばね30が介在されて、前記楔27を常時、前進移動するように押圧している。この形態では、壁パネル支承部材21内において、楔27を上記前進移動するような形態であり、楔27を含めて連結材の収まりがよい。その他の構成は、前記実施形態と同様であるので、同様な部分には、同様な符号を付して説明を省略する。
また、アンカーボルト4(4b)、ボルト23または筒状部材24などに使用される低耐力部材としては、一般に降伏比が比較的小さく(75%以下)、加工硬化係数が比較的小さい塑性伸びしやすい材料が望ましく、例えば軟鋼を使用したり、低降伏点鋼を使用することができる。
2 下横枠材
3 ウェブ
4 アンカーボルト
4a アンカーボルト
4b ボルト
5 ボルト挿通孔
6 壁パネル脚部接合部
7 縦枠材
8 接合金物
9 凹溝
10 コンクリート基礎
11 接合用フランジ
12 接合具
13 建物
14 上横枠材
15 枠体
16 構造用面材
17 U字状部
18 側板
19 円弧状ガイド部
20 雌ねじ部材
21 壁パネル支承部材
22a 下面板
22b 上面板
23 ボルト
24 筒状部材
25 下フランジ
26 上フランジ
27 楔
28 遊隙充填機構
29 バネ受け部材
30 圧縮ばね
31 縦部分
32 楔
33 ばね受け
34 側根太あるいは端根太
35 カプラ
Claims (7)
- スチールハウスにおける壁パネルの固定構造において、壁パネルは面材を合板又は石膏ボードとし、壁パネルの一部と壁パネル脚部接合部とが共同して塑性変形した後に壁パネル脚部接合部側の塑性変形が大きくなるようにするために、壁パネル脚部接合部の降伏耐力を、壁パネルの降伏耐力よりも高い降伏耐力とし、かつ壁パネルの最大耐力よりも低い降伏耐力としたことを特徴とする壁パネル固定構造。
- 壁パネルの枠組が薄板軽量形鋼からなり、壁パネル脚部接合部の降伏個所が、アンカーボルトであることを特徴とする請求項1に記載の壁パネル固定構造。
- 壁パネルの枠組が薄板軽量形鋼からなり、壁パネル脚部接合部の降伏個所がアンカーボルトと壁パネルの枠材との連結材であることを特徴とする請求項1に記載の壁パネル固定構造。
- 連結材を圧縮させて降伏させるようにしたことを特徴とする請求項3に記載の壁パネル固定構造。
- アンカーボルトが開断面の鋼製基礎に接合され、かつ連結材が鋼製基礎側に配置されていることを特徴とする請求項3または4に記載の壁パネル固定構造。
- アンカーボルトもしくは連結材の塑性変形により生じた雌ねじ部材と接合金物との間隙を、前記アンカーボルトもしくは連結材の塑性変形方向と直角方向に移動するように付勢された楔により自動充填することを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の壁パネル固定構造。
- 請求項1〜請求項6のいずれかに記載の壁パネル固定構造を備えていることを特徴とする建築物。
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