本発明は、上記の事実を考慮し、建築構造物の最上階層を構築する前に、制震間柱に圧縮軸力を伝達可能に設置することを目的とする。
請求項1に記載の制震間柱の施工方法は、複数階層からなる建築構造物の階層をなす上下の水平部材の内法高さよりも部材高さが短く且つ前記階層に層間変形が生じたときにせん断変形する制震部材を、前記建築構造物の最上階層を構築したときに前記制震部材が負担する初期圧縮軸力が設計圧縮軸力以下となる基準階層以下の階層に、前記最上階層を構築する前に圧縮軸力を伝達可能に接合する。
上記の構成によれば、制震部材が接合された階層に層間変形が生じると、上下の水平部材から制震部材に水平力が伝達され、当該制震部材がせん断変形する。この制震部材の繰り返しせん断変形による履歴ループ(履歴減衰)により、振動エネルギーが吸収される。
ここで、制震部材の部材高さは、建築構造物の階層をなす上下の水平部材の内法高さよりも短い。従って、階層に層間変形が生じたときに、せん断変形する制震部材のせん断変形角が階層の層間変形角よりも大きくなり、制震部材に引張り力(引張り軸力)が作用する。この引張り軸力により、制震部材が負担していた初期圧縮軸力が打ち消される。即ち、制震部材に初期圧縮軸力を負担させても、この初期圧縮軸力が制震部材のせん断変形による引張り軸力によって打ち消されるため、制震部材の振動エネルギー吸収性能が低下しない。換言すれば、制震部材が負担する初期圧縮軸力が、せん断変形時に作用する引張り軸力以下であれば、初期圧縮軸力を負担しない制震部材と同程度の振動エネルギー吸収性能を発揮させることができる。
請求項1に係る発明は、先ず、せん断変形時に制震部材に作用する引張り軸力に基づいて設計圧縮軸力を決定する。そして、建築構造物の最上階層を構築する前であって設計圧縮軸力以下となる基準階層を構築した後に、この基準階層以下の階層に制震部材を、圧縮軸力を伝達可能に接合する。これにより、初期圧縮軸力を負担しない制震部材と同等の振動エネルギー吸収性能を維持することができる。また、基準階層の上階層の施工と並行して、基準階層以下の階層に制震部材を接合することができるため、工期の短縮化を図ることができる。
請求項2に記載の制震間柱の施工方法は、請求項1に記載の制震間柱の施工方法において、前記基準階層に至るまで、前記制震部材に圧縮軸力を伝達させないように前記制震部材を配置しながら各階層を構築する。
ここで、階層を下から順に積み上げて複数階層の建築構造物を構築する場合、積み上げた階層数に応じて下階層(例えば、最下階層)における水平部材のたわみ変形量や、柱等の軸変形量(軸ひずみ量)が大きくなる。従って、制震部材を各階層に接合しながら建築構造物を構築すると、下階層に接合された制震部材が負担する初期圧縮軸力が大きくなり、制震部材の振動エネルギー吸収性能が低下する恐れがある。
一方、請求項2に係る発明は、基準階層に至るまで、制震部材を配置しながら各階層を構築するが、制震部材に圧縮軸力が伝達されない。即ち、建築構造物を基準階層まで構築し、基準階層より下の階層の水平部材をたわみ変形させた後に、各階層に配置された制震部材を接合する。このように基準階層に至るまで、制震部材を配置しながら各階層を構築することで、工期を短縮することができる。
請求項3に記載の制震間柱の施工方法は、請求項1又は請求項2に記載の制震間柱の施工方法において、前記基準階層の上階層を構築したときに、該上階層に前記制震部材を接合する。
ここで、制震部材が負担する初期圧縮軸力は、上階層に向かうに従って小さくなる。従って、基準階層の上階層では、各階層の施工と並行して制震部材を接合することができる。このように、基準階層の上階層を構築したときに、当該上階層に制震部材を接合することで、振動エネルギー吸収性能を維持しつつ、工期の短縮化を図ることができる。
請求項4に記載の制震間柱の施工方法は、複数階層からなる建築構造物の階層をなす上下の水平部材の内法高さよりも部材高さが短く且つ前記階層に層間変形が生じたときにせん断変形するパネル部材を、前記最上階層を構築する前に圧縮軸力を伝達可能に接合する制震間柱の施工方法であって、前記建築構造物の最上階層を構築したときに前記パネル部材が負担する初期圧縮軸力によって生じる該パネル部材の圧縮ひずみをεとし、前記内法高さに対する前記パネル部材の部材高さの比(前記パネル部材の部材高さ/前記内法高さ)を式(1)から求められる設計高さ比W以下とする。
但し、W :設計高さ比、
θ
R:設計層間変形角
である。
上記の構成によれば、パネル部材が接合された階層に層間変形が生じると、上下の水平部材からパネル部材に水平力が伝達され、パネル部材がせん断変形する。このパネル部材の繰り返しせん断変形による履歴ループ(履歴減衰)により、振動エネルギーが吸収される。
ここで、最上階層を構築する前に建築構造物の階層にパネル部材を、圧縮軸力を伝達可能に接合すると、階層をなす上の水平部材のたわみ変形や柱等の軸変形によって、パネル部材に圧縮軸力が導入される。このようにパネル部材に圧縮軸力を負担させると、パネル部材の振動エネルギー吸収性能が低下する恐れがある。
一方、パネル部材の部材高さは、建築構造物の階層をなす上下の水平部材の内法高さよりも短い。従って、階層に層間変形が生じたときに、せん断変形するパネル部材のせん断変形角が階層の層間変形角よりも大きくなり、パネル部材に引張り力(引張り軸力)が作用する。この引張り軸力により、パネル部材が負担していた初期圧縮軸力が打ち消される。即ち、パネル部材に初期圧縮軸力を負担させても、パネル部材のせん断変形による引張り軸力によって初期圧縮軸力が打ち消されるため、パネル部材の振動エネルギー吸収性能が低下しない。この引張り軸力は、上下の水平部材の内法高さに対するパネル部材の部材高さの比(=パネル部材の部材高さ/内法高さ、以下「パネル部材高さ比」という。)を変えることで調整可能であり、請求項4に記載の発明は、このパネル部材高さ比を式(1)から求められる設計高さ比W以下に設定する。
即ち、階層の層間変形角が設計層間変形角θRに達したときに、初期圧縮軸力によってパネル部材に生じた圧縮ひずみεがゼロとなる設計高さ比Wを求め、この設計高さ比W以下となるようにパネル部材高さ比を決定する。このようにパネル部材高さ比を設計高さ比W以下とすることで、階層の層間変形角が設計層間変形角θRを超えたときに、パネル部材が負担していた圧縮ひずみεが全て打ち消された状態になり、パネル部材が本来備えている振動エネルギー吸収性能を発揮させることができる。
請求項5に記載の制震間柱の施工方法は、請求項4に記載の制震間柱の施工方法において、 低降伏点鋼製の前記パネル部材の左右の端部にはフランジ鋼板が設けられ、
前記圧縮ひずみεが、前記フランジ鋼板の降伏ひずみの2倍である。
上記の構成によれば、パネル部材が低降伏点鋼からなり、このパネル部材の左右の端部には、フランジ鋼板が設けられている。また、初期圧縮軸力によって生じるパネル部材の圧縮ひずみεがフランジ鋼板の降伏ひずみの2倍とされ、設計高さ比Wが式(1)に基づいて算出される。
ここで、仮に、設計層間変形角θRを1/70とすると、設計高さ比が53/340となる。この場合、階層の層間変形角が1/70に達すると、パネル部材に作用する引張り軸力により、パネル部材が負担していた圧縮ひずみεが全て打ち消される。従って、パネル部材高さ比を53/340以下に設定することで、パネル部材が本来備えている振動エネルギー吸収性能を発揮させることができる。
請求項6に記載の制震間柱の施工方法は、請求項4に記載の制震間柱の施工方法において、低降伏点鋼製の前記パネル部材の左右の端部にはフランジ鋼板が設けられ、前記圧縮ひずみεが、前記パネル部材の降伏ひずみである。
上記の構成によれば、パネル部材が低降伏点鋼からなり、このパネル部材の左右の端部には、フランジ鋼板が設けられている。また、初期圧縮軸力によって生じるパネル部材の圧縮ひずみεがパネル部材の降伏として、設計高さ比Wが式(1)に基づいて算出される。
ここで、仮に、設計層間変形角θRを1/125とすると、設計高さ比が53/340となる。この場合、階層の層間変形角が1/125に達すると、パネル部材に作用する引張り軸力により、パネル部材が負担していた圧縮軸力εが全て打ち消される。従って、パネル部材高さ比を53/340以下に設定することで、パネル部材が本来備えている振動エネルギー吸収性能を発揮させることができる。
請求項7に記載の制震間柱の施工方法は、請求項1〜3に記載の何れか1項に記載の制震間柱の施工方法において、前記制震部材が、低降伏点鋼製のパネル部材を備えている。
上記の構成によれば、制震部材が、低降伏点鋼製のパネル部材を備えている。このように、低降伏点鋼を用いることで、普通鋼と比較してパネル部材を早期に降伏させることができる。従って、低降伏点鋼の履歴エネルギーによって効率的に振動エネルギー吸収を図ることができる。
請求項8に記載の制震間柱は、複数層からなる建築構造物の階層をなす上の水平部材に設けられる上側連結部材と、前記階層をなす下の水平部材に設けられる下側連結部材と、前記上側連結部材と前記下側連結部材とに連結され前記階層に層間変形が生じたときにせん断変形するパネル部材と、を備え、上の前記水平部材と下の前記水平部材との内法高さに対する前記パネル部材の部材高さの比(前記パネル部材の部材高さ/前記内法高さ)を式(1)から求められる設計高さ比W以下とする。
但し、W :設計高さ比、
ε :建築構造物の最上階層を構築したときにパネル部材が負担する初期圧縮軸力によって生じるパネル部材の圧縮ひずみ、
θ
R:設計層間変形角
である。
上記の構成によれば、建築構造物の階層をなす上の水平部材に上側連結部材が設けられ、建築構造物の階層をなす下の水平部材に下側連結部材が設けられている。これらの上側連結部材、下側連結部材には、パネル部材が連結される。パネル部材が連結された階層に層間変形が生じると、上下の水平部材からパネル部材に水平力が伝達され、当該パネル部材がせん断変形する。このパネル部材の繰り返しせん断変形による履歴ループ(履歴減衰)により、振動エネルギーが吸収される。
ここで、パネル部材高さ比は、式(1)から求められる設計高さ比W以下とされている。即ち、階層の層間変形角が設計層間変形角θRに達したときに、初期圧縮軸力によってパネル部材に生じた圧縮ひずみεがゼロとなる設計高さ比Wを求め、この設計高さ比W以下となるようにパネル部材高さ比を決定する。このようにパネル部材高さ比を設計高さ比W以下とすることで、階層の層間変形角が設計層間変形角θRを超えたときに、パネル部材が負担していた圧縮ひずみεが全て打ち消された状態になり、パネル部材が本来備えている振動エネルギー吸収性能を発揮させることができる。
請求項9に記載の建築構造物は、請求項1〜7の何れか1項に記載の制震間柱の施工方法で施工された制震間柱を備えている。
上記の構成によれば、請求項1〜7の何れか1項に記載の制震間柱の施工方法を用いることにより、施工性が向上した制震間柱を備える建築構造物を構築することができる。
請求項10に記載の建築構造物は、請求項8に記載の制震間柱を有している。
上記の構成によれば、請求項8に記載の制震間柱を有することにより、施工性が向上した建築構造物を構築することができる。
本発明は、上記の構成としたので、建築構造物の最上階層を構築する前に、制震間柱に圧縮軸力を伝達可能に設置することができる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る制震間柱の施工方法、及び制震間柱の施工方法について説明する。
先ず、実施形態に係る制震間柱10の構成について説明する。図1(A)は、本実施形態に係る制震間柱10を示す正面図であり、図1(B)は、図1(A)の1−1線断面図である。また、図2は、制震間柱10が設置される建築構造物12の模式図である。なお、図2中の1点鎖線は、柱22が軸変形(圧縮ひずみ)する前の状態を示している。
図2に示すように、複数階層からなる建築構造物12は、柱22と梁26とで構成された階層14を複数積み上げて構築されたラーメン構造とされ、建築構造物12の各階層14に制震間柱10が設置されている。この制震間柱10は、図1(A)、図1(B)に示すように、鉄筋コンクリート造の上側連結部材16と、鉄筋コンクリート造の下側連結部材18と、上側連結部材16と下側連結部材18とに連結される制震部材20と、を備えている。なお、図1(A)では、説明の便宜上、階層14を構成する上側の梁26(上の水平部材)を梁26Aとし、下側の梁26(下の水平部材)を梁26Bとする。
梁26Aの中央部には、この梁26Aの下面から下向きに突出する上側連結部材16が設けられている。また、梁26Bの中央部には、上側連結部材16と対向し、梁26Bの上面から上向きに突出する下側連結部材18が設けられている。これらの上側連結部材16、下側連結部材18は、梁26A、26Bにそれぞれ剛結されている。
なお、上側連結部材16、下側連結部材18は、梁26A、26Bと一体的に形成しても良いし、上側連結部材16、下側連結部材18を貫通するボルトやPC鋼棒等で、梁26、28と剛結しても良い。
上側連結部材16と下側連結部材18との間には、制震部材20が設けられている。この制震部材20は、せん断変形することで振動エネルギーを吸収する鋼製の制震パネル30(パネル部材)と、制震パネル30の左右の端部に沿って溶接された鋼製のフランジ鋼板32と、から構成され、断面がH型に形成されている。この制震パネル30の表面には、必要とする振動エネルギーを吸収するために、座屈防止用の補剛リブ34が格子状に溶接されている。この補剛リブ34は、場合によって省略可能である。
また、制震パネル30は、エネルギー吸収性能の観点から低降伏点鋼(例えば、LY225等)で構成され、フランジ鋼板32、補剛リブ34は、普通鋼(例えば、490N/mm2級鋼、400N/mm2級鋼等)で構成されている。更に、制震パネル30の部材高さPは、梁26Aと梁26Bとの内法高さL、即ち、上の梁26Aの下面と下の梁26Bの上面との間の距離よりも短くされ、内法高さLに対する制震パネル30の部材高さPの比(=パネル部材の部材高さ/内法高さ、以下「パネル部材高さ比」という。)が53/340とされている。
なお、内法高さLは、建築構造物12の最上階層を構築したときに生じる柱22の軸変形、梁26Aのたわみ変形等を考慮した高さである。
制震部材20は、制震パネル30の下端部に溶接された鋼製のベースプレート36を介して下側連結部材18に連結されている。ベースプレート36と下側連結部材18とは、ベースプレート36を貫通するアンカーボルト37によって一体的に接合され、制震パネル30と下側連結部材18とが一体挙動すると共に、階層14に作用する水平力が制震パネル30に伝達可能に連結されている。
また、制震部材20の上端部は、接合部材38を介して上側連結部材16に連結されている。この接合部材38は、制震部材20と同形同大の断面H型に形成された鋼製の固定部材40と、制震部材20の上端部に設けられ制震部材20と同形同大の断面H型に形成された鋼製の固定部材42と、固定部材40と固定部材42とを接合する鋼製の接合プレート44と、を備えている。なお、制震パネル30と固定部材42とは、フランジ鋼板32を共用している。
固定部材40は、固定部材40の上端部に溶接されたベースプレート46を介して上側連結部材16に接合されている。ベースプレート46と上側連結部材16とは、ベースプレート46を貫通するアンカーボルト37によって一体的に接合されている。
固定部材40と制震部材20とは、固定部材40と固定部材42との間に隙間Dが空くように配置され、固定部材40、42の間にまたがるように接合プレート44を架け渡し、高力ボルト48を締め付けることで一体的に接合される。これにより、上側連結部材16に制震部材20の上端部が連結され、制震部材20と上側連結部材16とが一体挙動すると共に、階層14に作用する水平力が制震パネル30に伝達可能に連結される。
ここで、固定部材40と固定部材42との間に設けられた隙間Dにより、柱22、24の軸変形(圧縮ひずみ)又は梁26のたわみ変形を吸収可能となっており、高力ボルト48を締め付けるまで、制震部材20に圧縮軸力が伝達されないように構成されている。また、図示を省略するが、接合プレート44に設けられた高力ボルト48用のボルト孔は、上下方向に延びる長孔とされ、高力ボルト48を締め付ける前の仮止めした状態で、柱22、24の軸変形又は梁26のたわみ変形を吸収可能に構成されている。
なお、本実施形態では、アンカーボルト37を用いてベースプレート36、44を上側連結部材16又は下側連結部材18に接合したがこれに限らない。ベースプレート36、44は、上側連結部材16又は下側連結部材18に一体的に接合されていれば良く、例えば、ボルトやPC鋼棒で良いし、ベースプレート36の下面に水平力伝達要素としてのスタッドを複数立設し、このスタッドを下側連結部材18に埋設して接合しても良い。
次に、制震間柱10の作用について説明する。
図3は、制震間柱10を模式化した説明図であり、図3(A)は、階層14に水平力が作用する前の状態を示し、図3(B)は、階層14に水平力が作用し、階層14に層間変形が生じた後の状態を示す。また、図4は、制震パネル30に作用する引張り力の理解を容易にするために、図3(B)を更に模式化した図である。なお、図3(B)、図4では、階層14に生じる層間変形を誇張して表している。
図3(B)に示すように、地震荷重、風荷重等の水平力Fが階層14に作用すると、階層14に層間変形が生じ、梁26Aと梁26Bとが相対移動する。この際、上側連結部材16及び下側連結部材18がそれぞれ梁26A、26Bと一体挙動するため、制震間柱10がクランク状に折れ曲がり、制震部材20がせん断変形する。このように、制震部材20がせん断変形することで、低降伏点鋼で構成された制震パネル30(図1(A)参照)が他の部材よりも早期に塑性域に達して履歴ダンパーとして機能し、振動エネルギーを吸収する。
また、図4に示すように、梁26Aと梁26Bとの相対移動に伴って、制震部材20の上端部が上側連結部材16に引っ張られ、制震部材20に引張り軸力Gが作用する。これは、柱22の沈み込み量Δcに対して、制震部材20の沈み込み量Δpが大きくなるためである。沈み込み量Δc、Δpは、式(2)、式(3)によって求められる。
ここで、δh:層間変形量、θ
L:層間変形角、θ
p:制震部材のせん断変形角である。なお、式(2)、式(3)では、柱22、梁26A、26B、上側連結部材16、及び下側連結部材18を剛体とみなし、これらの柱22、梁26A、26B、上側連結部材16、下側連結部材18の軸変形、曲げ変形を考慮していない。更に、層間変形角θ
L、せん断変形θ
pが充分小さいため、sinθ≒θ、及びcosθ≒1の近似を用いている。
沈み込み量Δc、Δpを比較すると、本実施形態では、柱22の内法高さLよりも制震部材20の部材高さPが小さいため、Δc<Δp(δh/L<δh/P)となることが分かる。これにより、制震パネル30(図1(A)参照)に引張り軸力Gが作用し、制震パネル30に引張ひずみε
G(=Δg/P)が生じる。従って、制震パネル30に圧縮軸力が導入されている場合、引張り軸力Gによって制震パネル30に導入された圧縮軸力が打ち消される。これらの引張ひずみε
G、引張り軸力Gは、式(4)、式(5)によって求めることができる。
ここで、E:制震パネルのヤング係数、A:制震パネルの断面積である。また、引張ひずみε
Gと層間変形角θ
Lとの関係を図5に示す。なお、図5では、L=424.5mm、P=80mmとしている。
これらの式(4)、式(5)から、所定の層間変形角θL(設計層間変形角θR)に対する引張り軸力Gを算出することで、制震パネル30に導入可能な設計圧縮軸力(=引張り軸力G)を求めることができる。即ち、制震パネル30が負担する初期圧縮軸力が、設計圧縮軸力以下であれば、階層14の設計層間変形角θRに達したときに、制震パネル30が負担する初期圧縮軸力が全て打ち消された状態となり、圧縮縮軸力を負担しない制震パネル30と同程度の振動エネルギー吸収性能を発揮する。従って、建築構造物12に求められる設計層間変形角θRに応じた設計圧縮軸力を算出することで、最上階層を構築する前に、圧縮軸力を伝達可能に階層14に制震パネル30を接合することができる。
具体例として、図2に示す7階層からなる建築構造物12を構築する場合を例に説明する。なお、制震部材20の設計圧縮軸力が3階層分の躯体荷重によって生じる圧縮軸力を負担可能に設計されているものとする。
この場合、4階の階層14(基準階層)を構築した後に(即ち、3階層分の施工作業を残した時点で)、1階〜4階の各階層14に、制震部材20に圧縮軸力を伝達可能に接合することができる。即ち、1階〜4階の各階層14に接合された制震部材20には、4階の階層14を構築した後に建てられる3階分(=7階−4階)の階層14の躯体荷重による圧縮軸力(初期圧縮軸力)を負担することになる。このように1階〜4階の各階層14は、4階の階層14を構築したときに初期圧縮軸力が設計圧縮軸力以下となるため、建築構造物12の最上階層(7階)を構築する前に1階〜4階の各階層14に制震部材20を接合することができる。
また、4階の階層14(基準階層)の上階層となる各階層14(5階〜7階)には、初期圧縮軸力が設計圧縮軸力より大きくなることがないため、各階層14を構築したときに制震部材20を接合することができる。
なお、本発明では、建築構造物の所定階層を構築したときに、この所定階層以下の階層に接合される制震部材が負担する初期圧縮軸力が、設計圧縮軸力以下となる所定階層を基準階層とする。
次に、図6に示すn階層からなる建築構造物50を構築する場合を例に説明すると、以下のようになる。即ち、基準階層をm階とすると、m階を構築したときに1階〜m階の各階層14に制震部材20を、圧縮軸力を伝達可能に接合することができる。1階〜m階の各階層14に接合された制震部材20は、m階を構築した後に建てられるn−m階分の躯体荷重によって生じる圧縮軸力(初期圧縮軸力)を負担することになるためである。従って、m+1階〜n階の各階層14の施工と並行して1階〜m階の各階層14に制震部材20を接合することが可能となり、工期が短縮される。また、m+1階からn階までの各階層14には、各階層14を構築したときに制震部材20を接合することができる。
なお、本発明の設計圧縮軸力とは、制震部材が接合される階層に、所定の層間変形(層間変形角)が生じたとき、パネル部材高さ比によって生じる変形差から求められる引張り軸力によって開放される圧縮軸力であり、制震部材に求められる性能に応じて適宜設計される。
一方、初期圧縮軸力とは、建築構造物12の最上階層を構築したとき(最上階層の上側の梁26の施工が完了したとき)に、柱22の軸変形(圧縮ひずみ)及び梁26のたわみ変形によって、階層14に接合された制震パネル30に導入される圧縮軸力である。この初期圧縮軸力は、主に柱22の軸変形、梁26のたわみ変形を考慮して算出される。これらの柱22の軸変形、及び梁26のたわみ変形は、制震間柱10が設置された階層14の上層階の躯体荷重によって生じる。従って、本発明における初期圧縮軸力とは、所定階層に制震パネルを接合して制震パネルに圧縮軸力が伝達可能となった後に、当該所定階層の上階層に構築される1又は複数の階層の躯体荷重によって生じる柱の軸変形及び梁のたわみ変形により制震パネルに導入される圧縮軸力のことをいう。
なお、上記式(4)では、所定の層間変形角θLが生じたときに制震パネル30に作用する引張ひずみεGを算出したが、初期圧縮軸力によって制震パネル30に生じる圧縮ひずみεから、設計高さ比Wを算出することができる。内法高さLWとし、制震パネル30の部材高さをPWとすると、設計高さ比W(=PW/LW)は以下のようにして求められる。
なお、初期圧縮軸力は、上記したように所定階層に制震パネルを接合してから当該所定階層の上階層に構築される階層の数等などを施工工程から割り出して算出される。
先ず、式(6)の右辺の分子及び分母に1/L
Wをそれぞれ掛けると式(7)になり、P
W/L
Wを設計高さ比Wに変形すると式(8)になる。なお、層間変形角θ
Lが充分小さいため、sinθ
L≒θ
L≒δh/L
Wの近似を用いている。
式(8)の両辺を2乗し、設計高さ比Wの2次関数にすると式(9)を得ることができ、この式(9)において層間変形角θ
Lを設計層間変形角θ
R、引張ひずみε
Gを圧縮ひずみεに置き換えると式(10)が得られる。式(11)は式(10)の解である。なお、設計高さ比Wは正(W>0)である。
このように、設計層間変形角θR、及び施工工程から算出される制震パネル30の初期圧縮ひずみεから、設計高さ比Wを求めることができる。即ち、階層14の層間変形角が設計層間変形角θRに達したときに、初期圧縮軸力によって制震パネル30に生じた圧縮ひずみεがゼロとなる設計高さ比Wを求めることができる。
従って、パネル部材高さ比をこの設計高さ比W以下とすることで、階層14の層間変形角が設計層間変形角θRを超えたときに、制震パネル30に生じた圧縮ひずみεが全て打ち消された状態になり、制震パネル30が本来備えている振動エネルギー吸収性能を発揮させることができる。
なお、設計層間変形角θRは、制震間柱10に求められる性能に応じて適宜設定すれば良いが、例えば、建築構造物に求められる限界層間変形角(例えば、1/300〜1/50)を設定することができる。
即ち、再現期間50年期待値に相当する地震、風、及びそれ以上の地震、風に対して、初期圧縮軸力の影響が無い状態で制震パネル30を有効に機能させるためには、設計層間変形角θRを1/300〜1/200程度に設定する必要がある。また、再現期間500年期待値に相当する地震、風、及びそれ以上の地震、風に対して、初期圧縮軸力の影響が無い状態で制震パネル30を有効に機能させるためには、設計層間変形角θRを1/200〜1/50程度に設定する必要がある。
設計層間変形角θRを小さく設定すれば、小さい変形で初期圧縮軸力の影響がなくなり、制震パネル30がその性能が十分に発揮できるが、制震パネル30に導入可能な初期圧縮軸力の値を小さく設定する必要がある。つまり、施工の早い段階で制震パネル30に軸力を伝達可能に接合することができなくなり、施工性の改善効果(工期の短縮)が薄れる。よって、設計層間変形角θRの値は、圧縮軸力の影響が無い状態で制震パネル30が有効に機能し始める外力(地震、風等)の大きさと、施工性の改善効果の条件を総合的に比較して、トレードオフの関係で設定すればよい。
次に、本実施形態に係る制震間柱10の施工方法について説明する。なお、各階層14に接合される制震部材20の設計圧縮軸力は全て同じものとし、初期圧縮軸力が設計圧縮軸力以下となる基準階層をm階とする。また、図7〜図10中の1点鎖線は、柱22が軸変形(圧縮変形)する前の状態を示している。
先ず、図7(A)に示すように、n階層からなる建築構造物50の1階の階層14を構築する。この際、1階の階層14には、圧縮軸力を伝達させないように制震部材20を配置する。具体的には、図1(A)に示すように、梁26A、26Bに上側連結部材16、下側連結部材18を剛結し、上側連結部材16に固定部材40を一体的に接合すると共に、下側連結部材18に制震部材20を一体的に接合する。この際、固定部材40と、制震部材20の上端部に設けられた固定部材42との間に隙間Dを空けておき、梁26Aから制震部材20に圧縮軸力が伝達されないように、高力ボルト48を締め付けないでおく。なお、高力ボルト48をボルト孔(不図示)に挿入して仮止めしておき、後施工の手間を低減することが好ましい。
次に、同様手順で、図7(B)に示すように制震部材20に圧縮軸力を伝達させないように制震部材20を配置しながら2階〜m階(基準階層)までの各階層14を構築する。なお、m階(基準階層)については、階層14を構築したときに高力ボルト48を締め付けている。
次に、図8(A)に示すように、m+1階の階層14を構築すると共にm+1階の階層14に制震間柱10を設置し、圧縮軸力が伝達可能に制震部材20を接合する。このとき、1階〜m−1階の各階層14に配置された制震部材20の高力ボルト48を順次締め付けていく。図8(A)では、1階の制震間柱10の高力ボルト48を締め付けている。
次に、図8(B)に示すように、制震間柱10を設置すると共に制震部材20を接合しながらm+2階〜n階(最上階層)までの各階層14を構築する。2階〜m−1階の各階層14に配置された制震部材20については、n階層が構築される前に全ての高力ボルト48を締め付ける。これにより、n階層を構築した後に制震部材20の後施工が残らないため工期を短縮化することができ、更に、制震部材20の振動エネルギー吸収性能の低下を防止できる。
なお、図8(B)に示すように、n階まで建てられた建築構造物50を下から順に低層部50A、中層部50B、高層部50Cに分けると、柱22の生じる軸変形、及び梁26のたわみ変形は、低層部50A、中層部50B、高層部50Cの順に大きくなる。即ち、本実施形態の建築構造物50は、低層部50A、中層部50B、高層部50Cにおける階層14の内法高さが、L0<L1<L2となっている。即ち、制震部材20に圧縮軸力を伝達可能に接合しながら1階〜m階の各階層14を構築すると、制震部材20が負担する初期圧縮軸力が下階層に向かうに従って大きくなり、制震パネル30の振動エネルギー吸収性能が低下する恐れがある。しかし、本実施形態では、m階を構築した後に1階〜m階の各階層14に制震部材20を接合するため、設計圧縮軸力より大きな圧縮軸力(初期圧縮軸力)が制震部材20に導入されず、振動エネルギー吸収性能を維持することができる。
なお、本施工方法では、m階(基準階層)に至るまで、圧縮軸力が伝達されないように制震部材20を配置しながら1階〜m階の各階層14を構築したが、m階の階層14を構築した後に、1階〜m階の各階層14に制震間柱10を設置し、制震部材20に圧縮軸力を伝達可能に接合しても良い。具体的には、図9(A)に示すように、先ず、1階〜m階の各階層14を構築する。次に、図9(B)に示すように、1階〜m階の各階層14の何れかの階層14に制震間柱10を設置し、制震部材20を接合する。図9(B)では、1階の階層14に制震部材20を接合すると共に、m+1階の階層14を構築している。その後、図10に示すように、n階を構築する前に2階〜m階の各階層14に制震部材20を接合する。このように、m階の階層14を構築した後に、1階〜m−1階の各階層14に制震間柱10を設置することで、柱22の軸変形等を吸収する接合部材38が不要となり、制震間柱10の製造コストを削減できる。
また、建築構造物50の各階層14に制震間柱10を設置する場合の例について説明したが、制震間柱10は必要な階層14に適宜設ければ良い。また、一般的に、建築構造物50に作用する水平力、及び柱22、梁26の部材剛性、層間変形等は階層14ごとに異なるため、これらの要素を考慮して階層ごとに設計圧縮軸力を算出しても良い。
また、本実施形態では、制震パネル30を低降伏点鋼で構成したが、制震パネル30は塑性変形して振動エネルギーを吸収可能な部材であれば良く、薄板の普通鋼や軟鋼等で構成しても良いし、また、板状に限らず様々な形状の鋼材を用いることができる。フランジ鋼板32は必要に応じて適宜設ければ良く、また、H型鋼、L型鋼、C形鋼、丸棒鋼などを使用しても良い。更に、制震間柱10は、制震部材20の上下の端部を上側連結部材16、下側連結部材18に連結して階層14に接合したがこれに限らず、制震パネル30を上下の梁26A、26Bに一体的に接合できれば良い。
また、階層14をなす柱22、梁26は、鉄筋コンクリート造に限らず、鉄骨鉄筋コンクリート造、プレストレスコンクリート造、鉄骨造、更には現場打ち工法、プレキャスト工法等の種々の工法を用いた構造部材に適用可能である。また、梁26に替えてコンクリートスラブ又は小梁等に制震部材20を接合しても良い。
また、梁26が鉄骨造である場合は、制震部材20と同一の形状、断面をした鋼製(490N/mm2級鋼、400N/mm2級鋼等)の連結部材を用いて、制震部材20を上下の梁26に一体的に接合しても良い。
次に、制震部材の水平加力実験について説明する。
<試験体>
図11(A)〜図11(C)に制震間柱の試験体60(約1/2スケール)の形状、寸法を示す。試験体60は、制震部材66と、鋼板68(SM490、板厚6mm)とを一体的に接合して構成されている。制震部材66は、低降伏点鋼からなる制震パネル62(LY225、板厚3.5mm)と鋼製のフランジ鋼板64(SM490、板厚9mm)から構成されている。この制震パネル62には格子状の補剛リブ70(SM490、板厚3.2mm)が溶接されている。また、試験体60の上部及び下部にはベースレート72がそれぞれ設けられている。なお、図11(C)における符号74は、試験体60を固定するボルト用の孔である。
<試験方法>
先ず、図12に示す載荷装置76に試験体60を接合し、柱を模擬して試験体60の左右に配置されたジャッキ78により、制震パネル62に所定の圧縮ひずみ(初期圧縮軸力、表1参照)を発生させた。その後、ジャッキ78のストロークを一定に保持したまま試験体60に水平荷重(矢印K)を与えた。水平荷重は、制震パネル62のせん断変形角制御により行い、制震パネル62(LY225)の降伏せん断変形角γ
yの0.5、1、2、4、6、8、10、15、20、25、30、40、50、及び55倍の変形角で各サイクル3回の正負繰返し載荷を行った。なお、実測値の降伏せん断変形角γ
y=1.79×10
−3radである。また、図12中のS(図1(A)における内法高さLに相当)は1700mm、制震パネル62の部材高さTは265mmであり、パネル部材高さ比は、53/340(=265mm/1700mm)である。
<実験結果>
ケース1〜3により得られた制震パネル62の荷重−変形履歴特性及び測定値を図13〜15、表2に示し、ケース1〜3における累積エネルギーと累積せん断変形角の関係を図16に示す。また、ジャッキ78にセットしたロードセルから検出されるジャッキ78の軸力(柱軸力)の変動とせん断変形角の関係を図17〜19に示す。
ケース1では、制震パネル62に圧縮ひずみを与えず、ケース2、3では、それぞれ制震パネル62の降伏ひずみpεyに相当する圧縮ひずみ、フランジ鋼板64の降伏ひずみfεyの2倍に相当する圧縮ひずみ、を与えたが、図13〜15から分かるように、ケース1〜3の荷重−変形履歴特性に顕著な違いはない。また、図16から分かるように、実用的な範囲であるせん断変形角50/1000までの累積エネルギーについても顕著な違いはなく、制震パネル62に初期圧縮軸力(圧縮ひずみ)を負担させても振動エネルギー吸収性能が低下しない。
また、降伏比(最大荷重/降伏荷重)について比較すると、ケース1(降伏比1.76)に対してケース2(降伏比1.59)の降伏比が改善されていることが分かる。従って、ケース2のように制震パネル62に初期圧縮軸力を負担させることで、制震間柱が設置される周辺の柱、梁の設計強度を下げることができる。
更に、図17〜図19から分かるように、ケース1では制震パネル62の軸力変動はほぼ見られない。これに対してケース2では、約600kNに達している圧縮軸力(初期圧縮軸力)が、振幅を増大させるに従って徐々に圧縮軸力が開放され、最大振幅時の変形角0において125kNにまで減少している。また、ケース3では約1000kNに達している圧縮軸力(初期圧縮軸力)が、ケース2と同様に、振幅を増大させるに従って徐々に圧縮軸力が開放され、最大振幅時の変形角0において60kNにまで減少している。これにより、制震パネル62のせん断変形に伴い、制震パネル62に引張り軸力が作用し、初期圧縮軸力が打ち消されることが確認できる。
また、上記式(10)の圧縮ひずみεにケース3の圧縮ひずみ(フランジ鋼板64の降伏ひずみ×2)を代入した場合の、設計高さ比Wと設計層間変形角θRとの関係を図20に示す。本実験では、パネル部材高さ比を53/340としているため、設計層間変形角θRが1/125(=0.008)に達したときに、制震パネル62に導入された圧縮ひずみが全て打ち消される。従って、パネル部材高さ比が53/340以下であれば、層間変形角が1/125に達したときに制震パネル62に生じた圧縮ひずみεが全て打ち消された状態となる。逆に、パネル部材高さ比が、53/340を超えると、層間変形角が1/125に達しても、制震パネル62に圧縮ひずみが残存することになるため、制震パネル62の振動エネルギー吸収性能が低下する恐れがある。
グラフを省略するがケース2の圧縮ひずみ(制震パネル62の降伏ひずみ)を式(10)に与えた場合の設計層間変形角θRは1/70(=0.014)となる。従って、パネル部材高さ比が53/340以下であれば、層間変形角が1/70に達したときに制震パネル62に生じた圧縮ひずみεが全て打ち消された状態となり、パネル部材高さ比が53/340を超えると、層間変形角が1/70に達しても、制震パネル62に圧縮ひずみが残存することになるため、制震パネル62の振動エネルギー吸収性能が低下する恐れがある。
このように、制震パネル62に引張り軸力Gを有効に発生させるためには、制震パネル62の部材高さT(=L)が、建築構造物の階層をなす上下の水平部材の内法高さS(=P)よりも適切に短いことが要点となる。即ち、パネル部材高さ比を適切に設定することで、制震性能に応じた制震間柱を設計することができる。
更に、制震部材の製作上の条件、制震部材の累積塑性ひずみ、制震部材の変形性能、制震部材の耐力の側面から、パネル部材高さ比が決まる場合がある。その際は、式(4)にパネル部材高さ比(=P/L)と設計層間変形角θRを代入して、引張ひずみεGを計算し、制震パネルに導入できる圧縮ひずみ(引張ひずみεG)、それから求まる初期圧縮軸力(引張り軸力G)を算出することができ、施工のいつの時点で制震部材を圧縮軸力伝達可能に接合することができるかを決定することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。