JP5029353B2 - 四フッ化ホウ素塩の製造方法、該方法により得られる四フッ化ホウ素塩、これを用いる電気二重層キャパシタ用電解液およびその製造方法 - Google Patents
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Description
また、非水電解液としてはオニウムBF4塩をプロピレンカーボネート(PCと表す。)に溶解させたものが主に使われている。
しかしながら、これらの特許文献に記載の方法によりBF4塩を製造する場合には、前述のように、非水系で製造できるものの、高価で毒性の高いBF3を使用しており、高圧に耐えられる高価な装置や安全設備などが必要である。
即ち本発明は、以下のBF4塩の製造方法、BF4塩および電気二重層キャパシタ用電解液とその製造方法を提供するものである。
Q+X- (1)
(式中、Q+はオニウムイオンまたは金属イオンを表し、X-はBF4 -を除く無機酸イオン、有機酸イオンまたは水酸化物イオンを表す)
(B)オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、酸化ホウ素および一般式(2)で表されるホウ酸エステルからなる群より選ばれた1種以上のホウ素化合物および、
B(OR1)(OR2)(OR3) (2)
(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基、R2およびR3は水素原子もしくは炭素数1〜10のアルキル基を表し、R1、R2およびR3は同一でも異なっていても良い)
(C)フッ化水素を反応させることを特徴とする一般式(3)で表される四フッ化ホウ素塩の製造方法。
Q+BF4 - (3)
(式中、Q+は一般式(1)と同様である。)
3. 一般式(1)および(3)において、Q+がテトラエチルアンモニウムイオン、トリメチルエチルアンモニウムイオンまたはジエチルジメチルアンモニウムイオンである上記2の四フッ化ホウ素塩の製造方法。
4. 一般式(1)および(3)において、Q+がイミダゾリウムイオンである上記2の四フッ化ホウ素塩の製造方法。
5. 一般式(1)において、X-が有機酸イオンである上記1〜4のいずれかの四フッ化ホウ素塩の製造方法。
7. (A)成分が、アルキルアミンとヒドロキシカルボン酸エステルとの反応によって得られたものである上記6の四フッ化ホウ素塩の製造方法。
8. (A)成分、(B)成分および(C)成分を、非水溶媒の存在下で反応させる上記1〜7のいずれかの四フッ化ホウ素塩の製造方法。
9. (B)成分に一般式(2)で表されるホウ酸エステルを用いる上記8の四フッ化ホウ素塩の製造方法。
10. 一般式(2)で表されるホウ酸エステルを溶媒として用い、(A)成分、(B)成分および(C)成分を反応させる上記1〜7いずれかの四フッ化ホウ素塩の製造方法。
12. 上記11の四フッ化ホウ素塩を含有することを特徴とする電気二重層キャパシタ用非水電解液。
13. 上記11の四フッ化ホウ素塩を非水溶媒に溶解させることを特徴とする電気二重層キャパシタ用非水電解液の製造方法。
Q+X- (1)
(式中、Q+はオニウムイオンまたは金属イオンを表し、X-はBF4 -を除く無機酸イオン、有機酸イオンまたは水酸化物イオンを表す)
Q+BF4 - (3)
(式中、Q+は一般式(1)と同様である。)
オニウムイオンとしては、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン、オキソニウムイオン、アルソニウムイオン、セレノニウムイオン、スチボニウムイオン、スタノニウムイオン、ヨードニウムイオン、ジアゾニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ニトロニウムイオン等が挙げられる。これらのオニウム塩化合物の中心元素に結合する結合基は水素、脂肪族、芳香族、脂環族を含むアルキル基が挙げられ、該アルキル基はニトリル、アミド、エーテル、エステル、アルコール、ハロゲン等の置換基で置換されていても良い。また、複数ある結合基は各々異なっていても同一であっても良く、これらが結合して環状であっても、窒素原子や不飽和結合を持つアミジン環を形成していても良い。また1種類のオニウムイオンが2つ以上結合していても2種類以上のオニウムイオンが2つ以上結合していても良い。
上記のアルキルアンモニウムイオンおよびアルキルホスホニウムイオンは、窒素原子やリン原子に対称にアルキルが配置したもの、非対称にアルキルが配置したもの、環状にアルキルが配置したもの、或いはアルキルの一部が、ニトリル基、エーテル基、アルコール基、エステル基、ハロゲン基などで置換されたものでも良い。
イミダゾリウムイオンを有する化合物としては、アミジン化合物である1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−メチル−3−エチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム等のイミダゾリウム塩等が挙げられる。
本発明においては、アルキルアンモニウムイオンのテトラエチルアンモニウム、トリメチルエチルアンモニウムまたはジエチルジメチルアンモニウムと、イミダゾリウムイオンが特に好適に用いられる。
X-の具体例としては無機酸イオンおよび水酸化物イオンとして、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲンイオン、ClO4 -、ClO3 -、NO3 -、SO4 2-、HCO3 -、CO3 2-、PO4 3-、HPO4 2-、H2PO4 -、シアノ、イソチオシアナト等が挙げられる。また、有機酸イオンとして、ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、イソ酪酸イオン、シュウ酸イオン、アクリル酸イオン、メタクリル酸イオン、乳酸イオン、2−ヒドロキシイソ酪酸イオン等のカルボン酸イオンや、炭酸モノメチルイオン(CH3CO3 -)、炭酸モノエチルイオン(C2H5CO3 -)、炭酸モノプロピルイオン(C3H7CO3 -)、炭酸モノブチルイオン(C4H9CO3 -)、等の炭酸モノアルキルイオンが挙げられる。これらの中では反応後の精製の容易さ及び残留した場合の影響を考慮すると有機酸イオンが好ましい。
これらの中で、反応速度、原料の入手のしやすさ、安定性から、炭酸ジメチルおよび2−ヒドロキシイソ酪酸メチルが好ましい。2−ヒドロキシイソ酪酸メチルはACH(アセトンシアンヒドリン)新法と呼ばれるメタクリル酸メチルの製造中間体として大量に製造されており、またBF4塩を製造する際に分解しないのでエステル化して四級化反応に循環再使用が可能であることから、特に好ましく用いられる。
この際の原料の仕込み方法でバッチ操作の場合は、すべての原料を一括して仕込むことができる。
反応温度は用いる原料の種類及び組成、反応時間などにより異なるが、通常50〜300℃の範囲、好ましくは80〜200℃の範囲である。反応温度が50℃より低い場合、反応は完結せず、300℃より高い場合には分解が懸念される。反応圧力は特に制限されないが、反応液の反応温度での自圧(通常、0〜5MPa(ゲージ圧)程度)で好適に行なうことができる。反応時間は用いる原料の種類及び組成、反応温度等により異なり一概に言えないが、通常0.5〜50時間の範囲である。
四級化反応は溶媒なしで反応は好適に進むが、アルコール等の極性溶媒を含む任意の溶媒やカルボン酸等の添加剤を用いて反応を行なうこともできる。必要に応じて窒素、アルゴン、ヘリウム等の反応に影響を与えない雰囲気下で行なうこともできる。
四級化反応で生成したアルキルアンモニウム有機酸塩は常法、例えば低沸点留分を留去、必要に応じて再結晶することにより容易に反応生成液から分離、回収できる。またアルキルアンモニウム有機酸塩を分離、回収せず、そのままBF4塩の製造に使用することもできる。また、四級化反応は回分、流通どちらの方法でも実施できる。
B(OR1)(OR2)(OR3) (2)
(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基、R2およびR3は水素原子もしくは炭素数1〜10のアルキル基を表し、R1、R2およびR3は同一でも異なっていても良い)
一般式(2)で表されるホウ酸エステルとしては、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリペンチル、ホウ酸トリヘキシル、ホウ酸トリヘプチル、ホウ酸トリオクチル、ホウ酸トリノニル、ホウ酸トリデシル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリtert−ブチル、ホウ酸トリアリル、ホウ酸トリシクロヘキシル、ホウ酸トリフェニル、ホウ酸エチルジメチル、ホウ酸ジエチルメチル、ホウ酸エチルジブチル等が挙げられる。またホウ酸エステルのアルキル基同士が同じ分子内または別の分子のアルキル基と結合していても良い。これらの化合物の2種以上を混合して使用することもできる。
これらの化合物のうち、一般式(2)で表されるホウ酸エステルは反応により水が生成しないため特に好ましい。また、ホウ酸エステルは別途合成したものを使用することもできるが、安価なオルトホウ酸、メタホウ酸、無水ホウ酸等のホウ酸化合物とアルコールを加熱することによりホウ酸エステルを製造できるため、このようにして製造したものも好適に使用できる。また、水よりも沸点が高いかあるいは沸点の高い共沸組成をつくるアルコールとアルコール過剰系でホウ酸化合物を反応させ、生成する水を留去した釜残をアルコール溶液として用いることができる。水よりも沸点の低いホウ酸エステルを蒸留により分離して用いることもできる。
溶媒を使用する場合の使用量は、通常原料の塩化合物1質量部に対して、0.001〜1000質量部の範囲、好ましくは0.01〜100質量部の範囲、さらに好ましくは0.1〜50質量部の範囲である。これより少ないと溶媒を使用する効果はなく、これより多い場合には経済的に不利となる。
仕込み順は特に限定されないが、原料の塩化合物の存在下にホウ素化合物とフッ化水素を添加する方法が好ましい。
反応圧力は限定されないが、通常0〜10MPaGの範囲、好ましくは0.05〜5MPaGの範囲、さらに好ましくは常圧である。反応時間は使用する原料により異なるため一概には言えないが、通常1分〜200時間の範囲、好ましくは3分〜150時間の範囲、さらに好ましくは5分〜100時間の範囲である。
なお、本発明のBF4塩の製造方法は回分法または流通法のどちらの方法でも好適に実施できる。
本発明の電気二重層キャパシタ用非水電解液において、電解質である前記BF4塩を含有していれば非水溶媒の使用は特に限定されないが、BF4塩が固体の場合には非水溶媒にBF4塩を溶解させて電解液が構成される。
電気二重層キャパシタ用非水電解液の非水溶媒としては、例えばγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸エチル等のエステル類、メチルエチルケトン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、ブチレンカーボネート、イソブチレンカーボネート、1,3−ジオキソラン−2−オン等の炭酸エステル類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトニトリル、プロピオニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、フマロニトリル、グルタロニトリル等のニトリル類、ニトロメタン等のニトロ化合物、3−メチル−2−オキサゾリジノン等のウレタン類、リン酸トリメチル等のリン化合物、スルホラン、3−メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド等の硫黄化合物が挙げられる。これらの非水溶媒は1種又は2種以上を混合して用いることもできる。
これらの非水溶媒は精密蒸留、カラム処理、モレキュラーシーブ、抽出等により不純物を除去して使用することもできる。
このようにして得られる非水電解液をさらにカラム処理、モレキュラーシーブ、抽出等により不純物を除去することもできる。また、耐電圧を向上させる、または安全性を高める目的で電解液に添加剤を加えてもよい。
通常、電気二重層キャパシタは、外装体、分極性電極、セパレータ及び電解液から構成される。
電気二重層キャパシタの外装体及び形状としては、例えば金属外装によるコイン形、円筒形、角形、アルミラミネートフィルムやプラスチックによる袋形等の形状で組み立てることができる。
活性炭としては、例えばヤシ殻、フェノール樹脂、石油ピッチ等の炭化物を水蒸気、二酸化炭素、塩化亜鉛、水酸化カリウム等で賦活したものが挙げられる。
導電助剤としては、例えばアセチレンブラック等のカーボンブラックあるいはアルミや銅などの金属等が挙げられる。
バインダーとしては、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、ゴム類等が挙げられる。
集電極としては、例えばアルミ、ステンレス、銅、導電性プラスチック等が挙げられる。
このようにして得られた分極性電極は乾燥した後、セパレータを挟んで対向させて外装体内に設置し、電解液を含浸させて密封して電気二重層キャパシタを組み立てる。電極の乾燥方法や温度は特に限定されないが、通常50〜400℃であり、真空下で乾燥を行なうこともできる。
このセパレータには、紙製や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン等のプラスチック製のものが使用可能である。
電気二重層キャパシタにおける本発明の電解液と正負極合計での分極性電極との質量比(電解液の質量/分極性電極の質量)は限定されないが、通常0.1〜5、好ましくは0.5〜2、特に好ましくは0.7〜1.5の範囲である。質量比を0.1以上とすることにより電解液を電極全体に行き渡らすことができ、イオン不足による静電容量の低下、内部抵抗の増加を引き起こすことがない。一方、質量比を5以下とすることにより電解液量が多くならず、経済性が得られる。
なお、以下において、生成物の分析にはイオンクロマトグラフィーを、電解液の水分の分析はカールフィッシャー水分計を用いた。
また、電解液の評価は、作用極にグラッシーカーボン、対極に白金線、参照極に銀線を用いポテンショスタットにより5mV/secの掃引速度で正、負極に掃引し、±10μAに到達した電位の絶対値を合計した「電位窓」により行った。
メソフェーズピッチの炭素化物を水酸化カリウムにより賦活して得た活性炭粉末80wt%、カーボンブラック10質量%,ポリテトラフルオロエチレン10質量%からなる混合物を混練した後、加圧シート化した。得られたシートを円盤状に打ち抜いたのち、200℃で12時間真空乾燥して分極性電極(直径16mm、厚さ0.4mm)とした。この電極を、紙製セパレータを介して互いに対向させ、ステンレス製ケース内に収納した。その後、上記電解液を含浸させ封じ込め電気二重層キャパシタセルを作製した。
電気二重層キャパシタの評価は、作製したセルに25℃で5mAの定電流で2.7Vまで電圧を印加して十分に充電した後、5mAの定電流で0Vまで放電する充放電試験により初期静電容量(F/cc)を求め、次いで加速試験として70℃で250時間充放電サイクルを繰り返して静電容量の初期に対する加速後静電容量保持率(%)を求めた。
なお、静電容量は、岡村廸夫著、日刊工業新聞社刊「電気二重層キャパシタと蓄電システム 第二版」記載の放電エネルギーから求めた。
水40g、オルトホウ酸12g(0.2モル)を、攪拌機を付したPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製の200mlナスフラスコに仕込み、氷冷下50質量%フッ化水素32g(0.8モル)を滴下し、直ちにジエチルジメチルアンモニウム2−ヒドロキシイソ酪酸塩(DEDMA−HBAと表す。)41g(0.2モル)を添加した。3時間攪拌後、水を減圧で留去し、釜残にエタノールを加え再結晶してジエチルジメチルアンモニウムBF4(DEDMA−BF4と表す。)の白色の結晶26gを得た。結晶の純度は99.2質量%、収率はDEDMA−HBA基準で69モル%であった。
エタノール40g、DEDMA−HBA41g(0.2モル)とオルトホウ酸12g(0.2モル)を実施例1と同様の容器に仕込み、氷冷下フッ化水素16g(0.8モル)を吹き込んだ。1時間攪拌を継続し、析出した結晶を濾過してDEDMA−BF4の白色結晶28gを得た。結晶の純度は99.8質量%、収率はDEDMA−HBA基準で75モル%であった。
オルトホウ酸に代えてメタホウ酸8.9g(0.2モル)とした以外は実施例2と同様にして反応を行なった。DEDMA−BF4結晶の純度は99.8質量%、収率はDEDMA−HBA基準で73モル%であった。
オルトホウ酸に代えて無水ホウ酸7.0g(0.1モル)、反応温度を室温、反応時間を72時間とした以外は実施例2と同様にして反応を行なった。DEDMA−BF4結晶の純度は99.8質量%、収率はDEDMA−HBA基準でモル69%であった。
オルトホウ酸に代えてホウ酸トリエチル29g(0.2モル)とした以外は実施例2と同様にして反応を行なった。DEDMA−BF4結晶の純度は99.8質量%、収率はDEDMA−HBA基準で79モル%であった。
ホウ酸トリエチルに代えてホウ酸トリメチル21g(0.2モル)とした以外は実施例5と同様に反応を行った。DEDMA−BF4結晶の純度は99.8質量%、収率はDEDMA−HBA基準で54モル%であった。
エタノール40g、ジエチルジメチルアンモニウムメチル炭酸塩35g(0.2モル)とホウ酸トリエチル29g(0.2モル)を、攪拌機を付したPTFE製の200mlナスフラスコに仕込み、氷冷下フッ化水素16g(0.8モル)を吹き込んだ。得られたDEDMA−BF4結晶の純度は99.8質量%、収率はジエチルジメチルアンモニウムメチル炭酸塩基準で75モル%であった。
エタノールに代えて2−ヒドロキシイソ酪酸メチルとした以外は実施例2と同様にして反応を行なった。DEDMA−BF4結晶の純度は99.8質量%、収率はDEDMA−HBA基準で20モル%であった。
エタノールを使用せず、ホウ酸トリエチル73g(0.5モル)を自己溶媒とした以外は実施例5と同様に反応を行なった。DEDMA−BF4結晶の純度は99.8質量%、収率はDEDMA−HBA基準で81モル%であった。
実施例2において原料の塩化合物(DEDMA−HBA)を第1表に記載のものに代えた以外は実施例2と同様にして反応を行なった。得られたBF4塩とその純度および収率を第1表に示す。
なお、第1表において、Meはメチル基、Etはエチル基、Prはプロピル基、Phはフェニル基を示す。
メタノール40g、1−エチル−3-メチルイミダゾリウムメチル2−ヒドロキシイソ酪酸塩43g(0.2モル)とホウ酸トリメチル21g(0.2モル)を、攪拌機を付したPTFE製の200mlナスフラスコに仕込み、氷冷下フッ化水素16g(0.8モル)を吹き込んだ。反応液から低沸を留去した後に酢酸エチルで洗浄し、1−エチル−3-メチルイミダゾリウム−BF4の液体を得た。純度は99.8質量%、収率は1−エチル−3-メチルイミダゾリウムメチル炭酸塩基準で96モル%であった。
DEDMA−HBAに代えて20質量%トリエチルメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TEMA−OHと表す。)水溶液133g(0.2モル)、水に代えてエタノール40gとした以外は実施例1と同様にして反応を行なった。トリエチルメチルアンモニウムBF4(TEMA−BF4と表す。)結晶の純度は99.8質量%、収率はTEMA−OH基準で76モル%であった。
仕込みをエタノールにTEMA−OHとオルトホウ酸を仕込み、次いで50質量%フッ化水素を滴下する順とした以外は実施例11と同様にして反応を行なった。TEMA−OHとオルトホウ酸を仕込んだところで一旦沈殿が生じ、フッ化水素を滴下すると沈殿はなくなった。TEMA−BF4結晶の純度は99.8質量%、収率はTEMA−OH基準で74モル%であった。
仕込みをエタノールにTEMA−OHと50質量%フッ化水素を仕込み、次いでオルトホウ酸を添加する順とした以外は実施例11と同様にして反応を行なった。TEMA−BF4結晶の純度は99.8質量%、収率はTEMA−OH基準で71モル%であった。
水40g、DEDMA−HBA41g(0.2モル)と42質量%ホウフッ化水素酸水溶液29g(0.2モル)を、攪拌機を付したPTFE製の200mlナスフラスコに仕込み、氷冷下50質量%フッ化水素水溶液32g(0.8モル)を滴下した。1時間攪拌を継続したが結晶は析出せず、反応液をエバポレータにて加熱して減圧で濃縮し、再結晶溶媒としてエタノールを加え冷却することによりDEDMA−BF4結晶が析出した。
高価で腐食性の高いホウフッ化水素酸水溶液を用いると、非水系で反応を行なうことはできず、水に対するBF4塩の溶解度が高いため反応液の加熱濃縮操作が必要であった。
攪拌機の付いた200mlのハステロイC製のHF−BF3調合槽に、エタノール64g(1.4モル)を仕込み、5℃に冷却しながらフッ化水素10g(0.5モル)を滴下し、次いでBF3ガス33g(0.5モル)を吹き込みHF−BF3のエタノール溶液を調製した。攪拌機の付いた500mlのハステロイC製の反応槽にDEDMA−HBA103g(0.5モル)とエタノール88g(1.9モル)を加え、DEDMA−HBAのエタノール溶液を調製した。
DEDMA−HBAに代えて1−エチル−3-メチルイミダゾリウムメチル2−ヒドロキシイソ酪酸塩107g(0.5モル)とした以外は比較例2と同様に反応を行なった。反応液から低沸を留去した後に酢酸エチルで洗浄し、1−エチル−3-メチルイミダゾリウム−BF4の液体を得た。純度は99.7質量%、収率は1−エチル−3-メチルイミダゾリウムメチル炭酸塩基準で94モル%であった。
実施例21
実施例5で得られたDEDMA−BF4を100℃の真空乾燥器にて10時間乾燥後、露点−30℃のグローブボックス内に持ち込み、市販品を精密蒸留したプロピレンカーボネート(PC)に1.8モル/リットル(以降、モル/リットルをMと略す)の濃度で溶解させDEDMA−BF4/PC電解液を調製した。電解液の水分は20ppm以下であった。
調製した電解液の電位窓を測定した結果を第2表に示す。
第2表に示す実施例および比較例で得られたDEDMA−BF4を用い、実施例21と同様にして1.8MのDEDMA−BF4/PC電解液を調製した。電解液の水分はいずれも20ppm以下であった。
調製した電解液の電位窓を測定した結果を第2表に示す。
比較例2で得られたDEDMA−BF4を用い、実施例21と同様にして1.8MのDEDMA−BF4/PC電解液を調製した。電解液の水分は20ppm以下であった。
調製した電解液の電位窓を測定した結果を第2表に示す。
第3表に示す実施例で得られたBF4塩を用い、実施例21と同様にして第3表に示す濃度のPC電解液を調製した。電解液の水分はいずれも20ppm以下であった。
調製した電解液の電位窓を測定した結果を第3表に示す。
実施例17で得られた1−エチル−3-メチルイミダゾリウム−BF4を用い、実施例21と同様にして1Mの1−エチル−3-メチルイミダゾリウム−BF4/PC電解液を調製した。電解液の水分は20ppm以下であった。
調製した電解液の電位窓を測定した結果を第4表に示す。
比較例3で得られた1−エチル−3-メチルイミダゾリウム−BF4を用い、実施例21と同様にして1Mの1−エチル−3-メチルイミダゾリウム−BF4/PC電解液を調製した。電解液の水分は20ppm以下であった。
調製した電解液の電位窓を測定した結果を第4表に示す。第4表から明らかなように従来法と同等の電位窓を持つ1−エチル−3-メチルイミダゾリウム−BF4電解液が製造可能であった。
実施例32〜34、比較例6
第5表に示す実施例、比較例により製造した1.8MのDEDMA−BF4電解液を用いた電気二重層キャパシタの評価を行なった。結果を第5表に示す。HF−BF3を使用する比較例4の方法は非水系の反応でBF4塩が高収率で得られ電解液は高純度であるが、高価で毒性の高いBF3ガスを使用しており耐圧の装置が必要であった。
また、本発明の非水系でBF4塩を製造する方法では、電気二重層キャパシタ用の非水電解液として良好な物性を有し、非水電解液を有利に製造できる。
特に、ホウ酸エステル化合物をホウ素源とすることにより系内で水の副生が無く、溶媒を不要とすることもでき、高純度のBF4塩を工業的に非常に有利に製造できる。
更に、アルキルアミンとカルボン酸エステルとの反応によって得られたアルキルアンモニウム有機酸塩を原料とすることにより、精製工程の簡略化が可能であり、カルボン酸エステルとしてヒドロキシカルボン酸エステルを用いることにより、副生したヒドロキシカルボン酸をエステル化して四級化工程へリサイクルすることができ、工業的にBF4塩を極めて有利に製造できる。
従って本発明によれば、電気二重層キャパシタ用の非水電解液として良好な物性を有するBF4塩を工業的に極めて有利に製造でき、高性能を有する電気二重層キャパシタ用非水電解液を経済的に有利に得ることができる。
Claims (8)
- (A)一般式(1)で表される塩化合物、
Q+X- (1)
(式中、Q+はオニウムイオンまたは金属イオンを表し、X-はBF4 -を除く無機酸イオン、有機酸イオンまたは水酸化物イオンを表す)
(B)オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、酸化ホウ素および一般式(2)で表されるホウ酸エステルからなる群より選ばれた1種以上のホウ素化合物および、
B(OR1)(OR2)(OR3) (2)
(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基、R2およびR3は水素原子もしくは炭素数1〜10のアルキル基を表し、R1、R2およびR3は同一でも異なっていても良い)
(C)フッ化水素を非水溶媒の存在下で反応させることを特徴とする一般式(3)で表される四フッ化ホウ素塩の製造方法。
Q+BF4 - (3)
(式中、Q+は一般式(1)と同様である。) - (A)一般式(1)で表される塩化合物、
Q+X- (1)
(式中、Q+はオニウムイオンまたは金属イオンを表し、X-はBF4 -を除く無機酸イオン、有機酸イオンまたは水酸化物イオンを表す)
(B)オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、酸化ホウ素および一般式(2)で表されるホウ酸エステルからなる群より選ばれた1種以上のホウ素化合物および、
B(OR1)(OR2)(OR3) (2)
(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基、R2およびR3は水素原子もしくは炭素数1〜10のアルキル基を表し、R1、R2およびR3は同一でも異なっていても良い)
(C)フッ化水素を一般式(2)で表されるホウ酸エステルを溶媒として用い、反応させることを特徴とする一般式(3)で表される四フッ化ホウ素塩の製造方法
Q+BF4 - (3)
(式中、Q+は一般式(1)と同様である。) - 一般式(1)および(3)において、Q+がリチウムイオン、アルキルアンモニウムイオン、アルキルホスホニウムイオンおよびイミダゾリウムイオンからなる群より選ばれた1種以上のイオンである請求項1又は2に記載の四フッ化ホウ素塩の製造方法。
- 一般式(1)および(3)において、Q+がテトラエチルアンモニウムイオン、トリメチルエチルアンモニウムイオンまたはジエチルジメチルアンモニウムイオンである請求項3に記載の四フッ化ホウ素塩の製造方法。
- 一般式(1)および(3)において、Q+がイミダゾリウムイオンである請求項3に記載の四フッ化ホウ素塩の製造方法。
- 一般式(1)において、X-が有機酸イオンである請求項1〜5のいずれかに記載の四フッ化ホウ素塩の製造方法。
- (A)成分が、アルキルアミンと有機酸エステルまたは炭酸ジアルキルとの反応によって得られたものである請求項1〜6のいずれかに記載の四フッ化ホウ素塩の製造方法。
- (A)成分が、アルキルアミンとヒドロキシカルボン酸エステルとの反応によって得られたものである請求項7に記載の四フッ化ホウ素塩の製造方法。
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