JP3375049B2 - テトラフルオロホウ酸リチウムの製造方法 - Google Patents

テトラフルオロホウ酸リチウムの製造方法

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【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、リチウム電池用電
解質として有用なテトラフルオロホウ酸リチウムの製造
法に関する。 【0002】 【従来の技術および発明が解決しようとする問題点】テ
トラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)の公知の合
成方法としては、湿式法とエーテル法の二種類が報告さ
れている。湿式法では、ホウ弗酸と炭酸リチウムとの反
応により、含水塩(LiBF4・H2O)が生成する。こ
の含水塩を脱水するために200℃程度の加熱が必要で
あるため、テトラフルオロホウ酸リチウムの分解(Li
BF4→LiF+BF3)が起こり純度が低下するばかり
でなく、水分が残留するためリチウム電池用には使用で
きない。エーテル法では、三フッ化ホウ素とメチルエー
テルあるいはエチルエーテルとの錯化合物とフッ化リチ
ウムの反応により無水塩が得られるが、エーテルに対し
てテトラフルオロホウ酸リチウムが難溶性であるため、
リチウム電池用の品質を満足するものが得にくいこと、
また危険なエーテルを使用することなどの欠点がある。 【0003】このように従来の方法においては、得られ
るテトラフルオロホウ酸リチウム及びこれを用いた電解
液は、必ずしも満足できるものではなかった。 【0004】 【問題点を解決するための具体的手段】本発明者らは、
かかる従来技術の問題点に鑑み鋭意検討の結果、特定溶
媒中でテトラフルオロホウ酸リチウムを得ることにより
不純物の少ない電解液等を得る方法を見出し本発明に到
達したものである。 【0005】すなわち本発明は、溶媒である鎖状の炭酸
エステル中で、フッ化リチウムと三フッ化ホウ素とを反
応させてテトラフルオロホウ酸リチウムを生成させて溶
媒中に溶解させた該溶液に環状の炭酸エステルを添加し
て、鎖状の炭酸エステルを蒸留除去したままの溶液がリ
チウム電池用電解液とするテトラフルオロホウ酸リチウ
ムの製造方法を提供するものである。 【0006】本発明の製造方法は、反応収率が高く、反
応の制御も容易で、製品の純度の点でも十分満足できる
ものであり、しかも、テトラフルオロホウ酸リチウムを
結晶として、取り出しても良く、また溶媒にリチウム電
池用のものを使用しているため、反応後の溶液を直接電
解液として使用することも可能である。 【0007】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
製造方法において、テトラフルオロホウ酸リチウムの生
成反応は、鎖状の炭酸エステル中で実施される。これら
の溶媒に対して、原料であるフッ化リチウムの溶解度は
非常に小さいため、溶媒に分散した状態で三フッ化ホウ
素のガスを吹き込み反応を行う。ここで、生成したテト
ラフルオロホウ酸リチウムは非常に溶解度が大きいの
で、溶媒中に溶解して、フッ化リチウムの表面に被膜と
して残ることがないために反応は完全に進行する。 【0008】テトラフルオロホウ酸リチウムの生成反応
で使用される鎖状の炭酸エステルは、化学的な安定性が
高く、しかもテトラフルオロホウ酸リチウムの溶解度が
高い、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、
エチルメチルカーボネートが好ましい。 【0009】この反応を行う際の温度は、−40〜10
0℃の範囲が好ましく、さらに0〜60℃の範囲が最適
である。反応温度が−40℃未満では、溶媒が凝固する
ため反応が進行せず、また、100℃を超える場合は、
溶媒と三フッ化ホウ素との反応が起こり、着色や粘度増
加の原因となるため好ましくない。 【0010】フッ化リチウムの量は、溶媒1リットルに
対して、200g以下、好ましくは100g以下であ
る。フッ化リチウムの量が溶媒に対して、200gより
多い場合は生成物が飽和になり、フッ化リチウム表面に
被膜が生成し、未反応のフッ化リチウムが残存する上、
さらに溶媒の粘度が上昇するため、濾過等の分離操作が
困難になる。 【0011】三フッ化ホウ素の量は、フッ化リチウムに
対して当量以上あれば良いが、過剰に系内に導入した場
合、溶媒中に吸収されるため、反応後に加熱、減圧等の
操作により除去する必要がある。 【0012】この反応において、原料の三フッ化ホウ
素、および生成物のテトラフルオロホウ酸リチウムは、
水分により容易に加水分解を受けるので、水分を含まな
い雰囲気で反応を実施する必要がある。すなわち、真空
に近い状態や窒素等の不活性ガス雰囲気中で反応を行う
ことが好ましい。 【0013】このようにして得られた溶媒溶液から、冷
却や濃縮という操作により、析出分離することにより高
純度のテトラフルオロホウ酸リチウムが得られる。テト
ラフルオロホウ酸リチウムは、高純度の結晶として得ら
れるが、反応により得られた溶媒溶液は、そのまま、ま
たは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネー
ト、γ−ブチロラクトン等を混合してリチウム電池用電
解液として使用できる。ただし、リチウム電池用非水溶
媒として、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネ
ート、γ−ブチロラクトンを単独で使用する場合もあ
り、その場合上記のような反応をこれらの環状の炭酸エ
ステル中で行うと、三フッ化ホウ素により分解、重合等
が発生するため、好ましくない。そこで本発明では、上
記のように安定な鎖状の炭酸エステル中で反応により得
られた溶媒中に、リチウム電池用有機非水溶媒である環
状の炭酸エステルを添加して、先の鎖状の炭酸エステル
を蒸留除去することにより、リチウム電池用電解液を製
造する。本発明において、添加する環状の炭酸エステル
は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、
γ−ブチロラクトン等が挙げられる。 【0014】鎖状の炭酸エステルを除去し、環状の炭酸
エステルに置換する方法としては蒸留法を用いるため、
反応に使用する鎖状の炭酸エステルの沸点は、添加する
環状の炭酸エステルの沸点よりも低いものを選択する必
要がある。また、溶媒の劣化等の問題を考慮すると、置
換の際の蒸留は減圧蒸留を行い、蒸留温度を低くするほ
うが好ましい。このようにして、鎖状の炭酸エステルを
除去し、環状の炭酸エステルに置換した後、所定の濃度
に調整することにより、テトラフルオロホウ酸リチウム
を含有したリチウム電池用電解液が得られる。 【0015】以上のような操作により、従来の方法に比
べて、極めて純度の高いテトラフルオロホウ酸リチウム
が得られる。また、本発明では溶媒としてリチウム電池
用溶媒を使用しているため、反応により得られた溶液を
直接リチウム電池用電解液として使用するが可能であ
る。 【0016】 【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明する
が、本発明はかかる実施例により限定されるものではな
い。 【0017】実施例1 フッ素樹脂製反応器中で200mlのジメチルカーボネ
ートに5.2gのフッ化リチウムを添加して、混合分散
した。この分散液を冷却して5℃を維持しながら、ガス
導入管を通して窒素ガスにより17vol%に希釈した
三フッ化ホウ素ガスをバブリングした。ジメチルカーボ
ネート中に分散されたフッ化リチウムが消失した時点
で、反応を終了した。このときの三フッ化ホウ素の消費
量は14gであった。 得られた溶媒溶液からジメチル
カーボネートを減圧で留出させることにより、テトラフ
ルオロホウ酸リチウム18.5g(収率:98.7%)
を得た。また、リチウム電池に応用する場合に問題とな
る酸性不純物濃度は100ppmであった。 【0018】実施例2 フッ素樹脂製反応器中で200mlのジエチルカーボネ
ートに5.2gのフッ化リチウムを添加して、混合分散
した。この分散液を冷却して20℃を維持しながら、ガ
ス導入管を通して窒素ガスにより17vol%に希釈し
た三フッ化ホウ素ガスをバブリングした。ジエチルカー
ボネート中に分散されたフッ化リチウムが消失した時点
で、反応を終了した。このときの三フッ化ホウ素の消費
量は14gであった。 【0019】得られた溶媒溶液を50℃に昇温して、真
空ポンプで脱気することにより過剰の三フッ化ホウ素を
除外した。F19−NMRとイオンクロマトグラムによ
り、テトラフルオロホウ酸リチウムの生成が確認され
た。溶媒溶液中の酸性不純物濃度は10ppmで、テト
ラフルオロホウ酸リチウムベースに換算すると70pp
mとなる。 【0020】実施例3 フッ素樹脂製反応器中で200mlのジエチルカーボネ
ートに5.2gのフッ化リチウムを添加して、混合分散
した。この分散液を冷却して20℃を維持しながら、ガ
ス導入管を通して窒素ガスにより17vol%に希釈し
た三フッ化ホウ素ガスをバブリングした。ジエチルカー
ボネート中に分散されたフッ化リチウムが消失した時点
で、反応を終了した。このときの三フッ化ホウ素の消費
量は14gであった。 【0021】得られた溶媒溶液を40℃に加熱し、減圧
することにより、未反応の五フッ化リンを除去した。次
に、この溶媒溶液中に200mlのプロピレンカーボネ
ートを添加して、十分混合した後、1torr程度の圧
力で減圧蒸留を行ったところ、36℃でジエチルカーボ
ネートが留出した。ジエチルカーボネートの留出が停止
した時点で蒸留を終了した。 【0022】このようにして得られたテトラフルオロホ
ウ酸リチウムのプロピレンカーボネート溶媒溶液は、外
観的には全く着色もなく、IR、NMR、ガスクロマト
グラフィー等の分析を行った結果からも、溶媒の分解生
成物等は存在していなかった。また、テトラフルオロホ
ウ酸リチウムの生成は、F19−NMRとイオンクロマト
グラフィーにより確認した。 【0023】テトラフルオロホウ酸リチウムの生成量
は、溶媒を蒸発させることにより確認したところ、18
g(収率:96.0%)であった。また、リチウム電池
に応用する場合に問題となる酸性不純物濃度は10pp
mであった。 【0024】比較例1 フッ素樹脂製反応器中で200mlのプロピレンカーボ
ネートに5.2gのフッ化リチウムを添加して、混合分
散した。この分散液を冷却して0℃を維持しながら、ガ
ス導入管を通して窒素ガスにより17vol%に希釈し
た三フッ化ホウ素ガスをバブリングを開始したところ、
テトラフルオロホウ酸リチウムの生成反応は進行するも
のの、徐々に溶液が褐色に着色し、粘度も上昇した。 【0025】実施例4 実施例2で得られたテトラフルオロホウ酸リチウムのジ
エチルカーボネート溶液に100mlのエチレンカーボ
ネートを添加し、十分混合した後、1torr程度の圧
力で減圧蒸留を行ったところ、36℃でジエチルカーボ
ネートが留出した。ジエチルカーボネートが100ml
留出した時点で蒸留を終了した。この操作により濃度1
mol/lのテトラフルオロホウ酸リチウム/(ジエチ
ルカーボネート:エチレンカーボネート=1:1)溶液
が得られた。 【0026】次に、この溶液を用いてテストセルを作製
し、充放電試験により電解液としての性能を評価した。
具体的には、天然黒鉛粉末95重量部に、バインダーと
して5重量部のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を混
合し、さらにN,N−ジメチルホルムアミドを添加し、
スラリー状にした。このスラリーをニッケルメッシュ上
に塗布して、150℃で12時間乾燥させることによ
り、試験用負極体とした。また、コバルト酸リチウム8
5重量部に、黒鉛粉末10重量部およびPVDF5重量
部を混合し、さらに、N,N−ジメチルホルムアミドを
添加し、スラリー状にした。このスラリーをアルミニウ
ム箔上に塗布して、150℃で12時間乾燥させること
により、試験用正極体とした。ポリプロピレン不織布を
セパレーターとして、上記のテトラフルオロホウ酸リチ
ウム/(ジエチルカーボネート:エチレンカーボネート
=1:1)溶液を電解液とし、上記負極体および正極体
とを用いてテストセルを組み立てた。続いて、次のよう
な条件で、定電流充放電試験を実施した。充電、放電と
もに電流密度0.35mA/cm2で行い、充電は4.
2V、放電は2.5Vまで行い、この充放電サイクルを
繰り返して放電容量の変化を観察した。その結果、充放
電効率はほぼ100%で、充放電を100サイクル繰り
返したところ、放電容量は全く変化しなかった。 【0027】 【発明の効果】本発明の製造方法によれば、反応の制御
が容易で、製品の純度の点でも十分満足でき、しかも、
テトラフルオロホウ酸リチウムを結晶として、取り出し
ても良く、また、溶媒にリチウム電池用のものを使用し
ているため、反応後の溶液を直接電解液として使用する
ことができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 徳永 敦之 山口県宇部市大字沖宇部5253番地 セン トラル硝子株式会社化学研究所内 (72)発明者 高畑 満夫 山口県宇部市大字沖宇部5253番地 セン トラル硝子株式会社化学研究所内 (56)参考文献 特開 昭56−145113(JP,A) 特開 平9−165210(JP,A) 特開 平9−245807(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01B 35/00 - 35/18 H01M 10/36 - 10/40 CA(STN)

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 溶媒である鎖状の炭酸エステル中で、フ
    ッ化リチウムと三フッ化ホウ素とを反応させてテトラフ
    ルオロホウ酸リチウムを生成させて溶媒中に溶解させた
    溶液に環状の炭酸エステルを添加して、鎖状の炭酸エ
    ステルを蒸留除去したままの溶液がリチウム電池用電解
    液であることを特徴とするテトラフルオロホウ酸リチウ
    ムの製造方法。
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