JP5028047B2 - 防風性、防水透湿性に優れる積層シート、それを用いた生地及びそれらの製造方法 - Google Patents
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Description
このような消費者ニーズに応えるために、汗等の湿気は、透過することができるが、外気の流れを遮断することができるような機能を持った外衣を提供することが要望されている。
したがって、衣類または生地に、防風性、防水透湿性の機能を付与するために、汗等の湿気は、透過することができるが、外気の流れを遮断することができるような機能を持った繊維、織物自身の改良と同時に、種々のタイプの好みの表地生地と組み合せることができる芯地等の改良も、要望されている。
上記接着芯地は、衣服に保型性を持たせる目的で広く用いられており、表地と接着するための接着樹脂を芯地基布に所定形状で被着形成した構成が一般的である。芯地基材布として、織編物や不織布などが用いられ、接着樹脂には、接着プレス機などの加熱手段により、表地と容易に熱接着し得るホットメルト樹脂が利用されている。接着プレス機は、主に縫製工場で使用される温度・圧力・時間の調整が出来るプレス機をいう。
これら接着芯地の基材の一つとして、不織布芯地は、保型性の出にくい素材に補強して保型性を出す基材として多用されている。特に不織布に接着剤を塗布した接着芯地は、芯地の特性が生地に影響を与えることが多く、その選択には種々検討が加えられている。
しかし、前記接着芯地や生地などの構成成分として、エレクトロスピニング法を用いた不織布を用いたものは、未だ見当らない。
不織布(A)は、ポリアミド、ポリエステル、アクリル、レーヨン、綿および羊毛からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維材料から形成され、
ナノファイバー層(B)は、ポリウレタン、メタ系アラミドおよびポリエステル(但し、ポリ乳酸を除く。)からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂材料から形成される単位繊維で構成され、且つ、
不織布(A)とナノファイバー層(B)との間に、非全面的な状態でドット状にホットメルト接着剤(C’)が塗布されていることを特徴とする積層シートが提供される。
さらに、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、不織布(A)の他の片面に、非全面的な状態でドット状にホットメルト接着剤(C”)が塗布されていることを特徴とする積層シートが提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、JIS L1099の塩化カルシウム法(A−1法)による透湿度が3000〜20000(g/m2・24h)、及びJIS L1018による通気性が0〜20(cm3/cm2/s)の範囲であることを特徴とする積層シートが提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明に係る積層シートを製造する方法であって、下記の(I)〜(III)の工程を含むことを特徴とする積層シートの製造方法が提供される。
(I):不織布(A)を準備し、その片面上に、ドット加工法により、ホットメルト接着剤(C’)を非全面的な状態で積層する工程
(II):不織布(A)のホットメルト接着剤(C’)側に、エレクトロスピニング法により、ナノファイバー層(B)を形成させる工程
(III):ナノファイバー層(B)に、ドット加工法により、ホットメルト接着剤(C)を非全面的な状態で塗布する工程
また、本発明の第8の発明によれば、第2の発明に係る積層シートを芯地として用い、そのホットメルト接着剤(C”)側に裏地生地と接着一体化してなる生地が提供される。
さらに、本発明の第9の発明によれば、前記(I)〜(III)の工程に加え、下記の(IV)の工程を含むことを特徴とする第7の発明に係る生地の製造方法が提供される。
(IV):積層シートのホットメルト接着剤(C)側に、熱プレスにより、表地生地を接着一体化する工程
またさらに、本発明の第10の発明によれば、前記(I)〜(IV)の工程に加え、下記の(V)の工程を含むことを特徴とする第8の発明に係る生地の製造方法が提供される。
(V):積層シートのホットメルト接着剤(C”)側に、熱プレスにより、裏地生地を接着一体化する工程
その結果、通気性が0までの性能が必要でないカジュアル衣料などに好適に用いることができる。
また、この積層シートを機能性芯地として用いると、従来の接着芯地と同様の取り扱いが可能となり、接着プレス機があれば、縫製工場でも、表地生地或いは裏地生地との接着一体化が可能となる効果も、奏する。
本発明の積層シートに用いられる不織布(A)は、特に限定されないが、用途によってそれぞれ適した構造、材質、目付のものを使用すればよい。例えば、テキスタイルの芯地として使用する場合は、従来芯地として使用されていたもののいずれもが使用できる。
例えば、構造や製造方法としては、短繊維を一方向に揃えるようにするパラレルカード機、クロスカード機等を用い、熱融着によって不織布とするサーマルボンド法不織布、あるいは接着剤を使用するケミカルボンド法不織布あるいは水流によって繊維を交絡させたスパンレース法不織布やニードルパンチ不織布あるいは、スパンボンド不織布等がある。
また、不織布を構成する材料、材質としては、芯地としての機能を果たす材料であれば、特に限定されないが、ナイロン、ポリエステル、アクリル、レーヨン、綿、羊毛等が好ましく、これらの繊維を2種以上混合して用いても良い。
さらに、本発明で用いる不織布(A)の目付としては、10〜100g/m2が好適であり、より好ましくは10〜40g/m2である。不織布の目付けが10g/m2未満では、接着剤の染み出しが発生して、風合いが硬くなる恐れがあり、100g/m2を超えると、厚みが加工時につぶれてなくなり、硬くなる恐れがある。
本発明の積層シートに用いられるナノファイバー層(B)は、例えば、電界紡糸法(或いは電気紡織法、電荷誘導紡糸法、エレクトロスピニング法、エレクトロスプレー法であり、以下、エレクトロスピニング法という。)により作製されたものである。
エレクトロスピニング法とは、前記し、図1に示すように、高分子(ポリマー)溶液に、2〜20kV程度の高電圧を印加することによって、溶液をキャピラリー先端からスプレー(噴射)し、ポリマー溶液を極細化すると同時に溶媒を蒸発させ、続いてポリマーを捕集することにより、一工程で超極細繊維(ナノファイバー)からなる不織布を得る方法である。
ナノファイバーは、単位繊維がナノメートルサイズ(繊維径1μm以下、すなわち、1000nm以下)の超極細繊維であり、比表面積が非常に大きいという特徴を有する。
本発明においては、ナノファイバー層(B)の単位繊維の繊維径は、好ましくは200〜800nmである。尚、従来の紡糸技術および不織布製造技術を利用して得られた繊維の直径、および不織布を構成する繊維の直径は、既存の繊維と同等の直径(数〜数十μm程度)である。
また、本発明において、エレクトロスピニング法で使用される溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、フェノール、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、水等の少なくとも1種が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
ナノファイバー層(B)の積層量は、0.5g/m2〜10g/m2にすることが好ましい。より好ましくは1〜8g/m2である。さらに好ましくは1〜5g/m2である。ナノファイバー層(B)の積層量が0.5g/m2未満では、防風性が小さく、一方、10g/m2を超えると、通気性と透湿性が阻害される。積層量をこの範囲内とすることにより、好適な防風性(或いは通気性)と優れた防水透湿性を有する積層シートや芯地を提供できる。
本発明の積層シートは、不織布(A)の片面に、上記のエレクトロスピニング法によって形成されたナノファイバー層(B)およびホットメルト接着剤(C)を順次積層してなる積層シートであり、その好ましい態様として、(i)前記不織布(A)とナノファイバー層(B)間には、ホットメルト接着剤(C’)が積層されたものであり、及び/又は(ii)不織布(A)の他の片面には、ホットメルト接着剤(C”)が積層されたものである。
すなわち、不織布(A)には、片面または両面に、ホットメルト接着剤(C’,C”)が付いたものを使用するのが好ましい。(i)前記不織布(A)とナノファイバー層(B)間に、ホットメルト接着剤(C’)を使用することにより、ナノファイバー層(B)と重ねた状態で、熱プレスするだけで、不織布(A)とナノファイバー層(B)とを、簡単に接着することができる。また、(ii)不織布(A)の他の片面に、ホットメルト接着剤(C”)が積層された場合には、同様に熱プレスするだけで、本発明の積層シートと裏地生地との接着一体化が可能となる。
例えば、不織布(A)の片面、或いはナノファイバー層(B)においては、個々のドットの直径は、0.1〜3.0mmが好ましく、不織布(A)面、或いはナノファイバー層(B)面上のドットの密度は、50〜1,500個/in2が好ましく、不織布(A)面、或いはナノファイバー層(B)面に対するドットの付着量は、2〜60g/m2が好ましい。ドットの直径、密度、付着量がこの範囲未満であると、例えば、表地との良好な接着強度が保証されず、この範囲を超えると接着加熱加圧時に裏面にしみだし、外観風合いを損なう。
なお、不織布(A)の両面に接着剤を付着させる場合は、両面に同じように付着させる必要がなく、上記の範囲内でそれぞれ接着させる材料に合わせた直径、密度、付着量にすることができる。また、ナノファイバー層(B)に接着剤を付着させる場合も、上記と同様に、上記の範囲内で接着させる表地の材料に合わせた直径、密度、付着量にすることができる。
本発明の積層シートは、例えば、次の工程を含むことにより、作製することができる。
すなわち、
(I):不織布(A)を準備し、そのまま使用するか、或いは、その片面上に、ドット加工法により、ホットメルト接着剤(C’)を非全面的な状態で積層する工程と、
(II):不織布(A)の片面上に、或いは、そのホットメルト接着剤(C’)側に、エレクトロスピニング法により、ナノファイバー層(B)を形成させる工程と、
(III):ナノファイバー層(B)に、ドット加工法により、ホットメルト接着剤(C)を非全面的な状態で塗布する工程と、
を含む。
こうして、先ず、不織布(A)とナノファイバー層(B)との積層シートを形成することができる。
次に、この積層シートのナノファイバー層(B)側に、ホットメルト接着剤(C)を積層する。積層に際しては、例えば、ドット加工機により、ホットメルト接着剤(C)をドット状に塗布した後、溶融し固化させることにより、容易に行うことができる。
(IV):積層シートのホットメルト接着剤(C)側に、熱プレス法により、表地生地を接着一体化する工程、
或いは、所望により、
(V):積層シートのナノファイバー層(B)側とは反対面に、すなわち、積層シートのホットメルト接着剤(C”)側に、熱プレス法により、裏地生地を接着一体化する工程、とを含む。
また、上記のように、所望により、積層シートの裏面に、上記と同様に、裏地を重ね合わせ、これを熱プレスで圧着することにより、貼り合わせることができる。
さらに、必要であれば、積層シートの外側に、更に表地または裏地を縫製等により取り付けることで、積層シートを隠すことができる。
(2)積層シートの通気性:JIS L1018「ニット生地試験方法」の「8.33 通気性」に準拠し、フラジール形試験機を用いて、試験片を通過する空気量(cm3/cm2・s)、すなわち通気性(cm3/cm2/s)を測定した。
目付16g/m2のサーマルボンドタイプ不織布(ナイロン/ポリエステル=85/15)の片面に、共重合ポリエステルホットメルト樹脂を、ドット加工により、目付9.5g/m2(ドットポイント30×30千鳥/in2)で積層したものに、ナノファイバー層(B)として、エレクトロスピニング法によって作製した、目付2g/m2の不織布を結合することにより、積層シートA’を作製した。
次に、積層シートA’のナノファイバー層(B)側に、共重合ポリエステルホットメルト樹脂を、ドット加工により、目付9g/m2(ドットポイント450ランダム/in2)で積層し、積層シートAを得た。
得られた積層シートAについて性能評価を行なった。その評価結果を表1に示す。
目付16g/m2のサーマルボンドタイプ不織布(ナイロン/ポリエステル=85/15)の片面に、共重合ポリエステルホットメルト樹脂を、ドット加工により、目付9.5g/m2(ドットポイント30×30千鳥/in2)で積層したものに、ナノファイバー層(B)として、エレクトロスピニング法によって作製した、目付3g/m2の不織布を結合することにより、積層シートB’を作製した。
次に、積層シートB’のナノファイバー層(B)側に、共重合ポリエステルホットメルト樹脂を、ドット加工により、目付9g/m2(ドットポイント450ランダム/in2)で積層し、積層シートBを得た。
得られた積層シートBについて性能評価を行なった。その評価結果を表1に示す。
サーマルボンドタイプ不織布(ナイロン/ポリエステル=85/15)目付16g/m2の片面に共重合ポリエステルホットメルト樹脂をドット加工により目付10g/m2ドットポイント330ランダム/in2積層したものと、ポリエステルエラストマーフィルム(厚み:15μm)とを接着した。その積層シートC’のフィルム側に共重合ポリエステルホットメルト樹脂をドット加工により目付9g/m2(ドットポイント117ランダム/in2)で積層させ、積層シートCを得た。
得られた積層シートCについて性能評価を行なった。その評価結果を表1に示す。
次に、実施例1、2及び比較例1で得られた積層シートA〜Cを芯地として用い、そのホットメルト接着剤側に、表1に示す表地と、表地接着条件:熱プレス機(JR600)、130℃×6.9N/cm×10secで、接着一体化し、得られた生地について、初期、洗濯(条件:洗い10分、すすぎ3分×2回、脱水1分)3回後、パークレンの商業ドライ3回後、及び石油系の商業ドライ3回後における剥離強力(cN/2.5cm巾)を測定し、接着性評価した。また、生地の風合い、音、重さも、良い(○)、普通(△)、悪い(×)との3段階で、官能評価した。その評価結果を、積層シート単体の物性評価と共に、表1に示す。
また、実施例1、2の積層シートは、いずれも、通気度が0とはならないが、防風性があるといえる値であり、透湿度も、十分な値である。さらに、全体の目付に関しては、比較例1に比べ、軽い。
その結果、本発明の積層シートは、好適な防風性(或いは通気性)と優れた防水透湿性を有することが明らかであり、機能性芯地として、好適に用いることができる。
Claims (10)
- 不織布(A)の片面に、エレクトロスピニング法によって形成されたナノファイバー層(B)と、非全面的な状態でドット状に塗布されたホットメルト接着剤(C)とを順次積層してなる積層シートであって、
不織布(A)は、ポリアミド、ポリエステル、アクリル、レーヨン、綿および羊毛からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維材料から形成され、
ナノファイバー層(B)は、ポリウレタン、メタ系アラミドおよびポリエステル(但し、ポリ乳酸を除く。)からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂材料から形成される単位繊維で構成され、且つ、
不織布(A)とナノファイバー層(B)との間に、非全面的な状態でドット状にホットメルト接着剤(C’)が塗布されていることを特徴とする積層シート。 - 不織布(A)の他の片面に、非全面的な状態でドット状にホットメルト接着剤(C”)が塗布されていることを特徴とする請求項1に記載の積層シート。
- 前記単位繊維の繊維径は、200〜800nmであることを特徴とする請求項1に記載の積層シート。
- ナノファイバー層(B)の積層量は、0.5〜10g/m2であることを特徴とする請求項1に記載の積層シート。
- JIS L1099の塩化カルシウム法(A−1法)による透湿度が3000〜20000(g/m2・24h)、及びJIS L1018による通気性が0〜20(cm3/cm2/s)の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層シート。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の積層シートを製造する方法であって、下記の(I)〜(III)の工程を含むことを特徴とする積層シートの製造方法。
(I):不織布(A)を準備し、その片面上に、ドット加工法により、ホットメルト接着剤(C’)を非全面的な状態で積層する工程
(II):不織布(A)のホットメルト接着剤(C’)側に、エレクトロスピニング法により、ナノファイバー層(B)を形成させる工程
(III):ナノファイバー層(B)に、ドット加工法により、ホットメルト接着剤(C)を非全面的な状態で塗布する工程 - 請求項1〜5のいずれかに記載の積層シートを芯地として用い、そのホットメルト接着剤(C)側に表地生地と接着一体化してなる生地。
- 請求項2に記載の積層シートを芯地として用い、そのホットメルト接着剤(C”)側に裏地生地と接着一体化してなる生地。
- 前記(I)〜(III)の工程に加え、下記の(IV)の工程を含むことを特徴とする請求項7に記載の生地の製造方法。
(IV):積層シートのホットメルト接着剤(C)側に、熱プレスにより、表地生地を接着一体化する工程 - 前記(I)〜(IV)の工程に加え、下記の(V)の工程を含むことを特徴とする請求項8に記載の生地の製造方法。
(V):積層シートのホットメルト接着剤(C”)側に、熱プレスにより、裏地生地を接着一体化する工程
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