JP5027476B2 - 組み合わせタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、車両用のタイヤの組み合わせに関し、詳しくは、車両側に蓄積される静電気を放出してラジオのノイズ発生を低減すると共にタイヤの転がり抵抗を低減して走行性能の向上との両立を図るものである。
車両用の空気入りタイヤでは、ウエットグリップ特性、コーナリング特性、高速特性、耐摩耗特性等が要求されている。
従来、タイヤにはトレッドゴム配合の補強材としてカーボンが配合されているが、転がり抵抗が高いため、転がり抵抗を低減できると共に背反するグリップ性も両立できるシリカをカーボンに代えて補強材として用いる場合がある。
しかしながら、カーボンに代えてシリカを補強材として配合する場合、シリカはカーボンと比較して電気抵抗値が高く導電性に劣る。そのため、シリカを配合したタイヤは車両内の静電気を路面に放出しにくくなり、静電気が車両内に蓄積されてラジオノイズ等の電波障害を引き起こすなど多くの電気的誤動作の発生原因となる。
そこで、本出願人は特開平9−71112号公報(特許文献1)において、車両の静電気を路面に放電することのできる空気入りタイヤTを提供している。該空気入りタイヤTでは、図4に示すように、トレッド部11に導電性を有するゴム材からなる体積固有抵抗の低い導電部材20を設け、該導電部材20の導電性ゴム層11bをトレッド部11のトレッドゴム本体11aの径方向内側に配置すると共に、貫通部21を導電性ゴム層11bから径方向外側に向けて突出させ、該貫通部21の先端をトレッド部11の外面のトレッド面11cに露出させている。
体積固有抵抗の低い該貫通部21の先端を路面に接触させ、車体に発生する静電気の電荷を図4の矢印30で示すように伝えて放電させることで、静電気を車両に蓄積させず、ラジオノイズ等の発生を防止している。
しかし、特許文献1の空気入りタイヤは、トレッド部に体積固有抵抗の低い導電部材を設けることでタイヤ全体の電気抵抗値を低くしているため、タイヤの製造工程が複雑でありコスト高となる。このため、すべてのタイヤに特許文献1の空気入りタイヤを用いるとタイヤの価格が高くなり、改善の余地がある。
特開平9−71112号公報
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、ラジオノイズの発生を抑制しつつ、タイヤの転がり抵抗を低くして燃費の悪化を防ぐことができるタイヤの組み合わせを提供することを課題としている。
前記課題を解決するため、本発明は、車両に装着される前後左右の4輪のタイヤからなり、前輪の左右2本のタイヤは電気抵抗値が1.0×10Ω以上の(絶縁)第1種タイヤとし、後輪の左右2本のタイヤは電気抵抗値が1.0×10Ω未満の(導電)第2種タイヤとし、
前記第2種タイヤは、トレッドゴム本体とスチールベルトとの間に設けられた導電性ゴム層と、該導電性ゴム層からトレッドゴム本体をタイヤ半径方向外側に貫通してトレッドゴム面に露出するように埋設される導電片とからなる導電部材を備え、またはトレッド部およびサイドウオール部の表面を導電性薄膜で覆っていることを特徴とする車両用の組み合わせタイヤを提供している。
車両に装着されたタイヤは通常地面と接触しており、車両内に蓄積された静電気はタイヤを通って地面に放出される。しかし、全てのタイヤに電気抵抗値が1.0×10Ω以上の第1種タイヤを用いた場合、静電気はタイヤを通りにくいため地面に放出できずラジオノイズが発生する。
一方、全てのタイヤを電気抵抗値が1.0×10Ω未満の第2種タイヤとした場合には、例えば特許文献1に示したように車両内に蓄積された静電気はタイヤのトレッド部に設けた導電部材から地面に放出されるので、ラジオノイズの発生は抑制される。しかし、電気抵抗値を低くして導電性を高める手段としてトレッド部に導電部材を設けた第2種タイヤは、第1種タイヤと比較して製造工程が複雑であり価格が高くなる。このため、全てのタイヤを導電部材を設けた第2種タイヤとすると、車両に装着する4輪のトータルのタイヤ価格が高くなる。
そこで、本発明では、前記したように、車両に装着されるタイヤのうち、後輪の左右2本のタイヤを電気抵抗値が1.0×10Ω未満の第2種タイヤとしている。後輪の2本でも第2種タイヤとすると、該第2種タイヤを介して車内に蓄積された静電気を地面に放出でき、ラジオのノイズの発生を防止することができる。
前記第1種および第2種タイヤともトレッドゴム配合の補強材としてシリカを配合し、
前記第2種タイヤはトレッド部の外周面に露出させた導電部材を設ける一方、
前記第1種タイヤには前記導電部材を設けず或いは前記導電性部材よりも低い導電性の導電部材を設けている。
前記のように、第1種、第2種タイヤとも、トレッドゴム配合の補強材としてカーボンに代えてシリカを配合した場合、転がり抵抗とグリップ性との両方を改善することができる。
その場合、シリカを補強材として配合したタイヤは電気抵抗値が1.0×10Ω以上となり静電気を地面に放出しにくくなる。このため、第2種タイヤにはそのトレッド部の外周面に露出させた導電部材を設けて、第2種タイヤの電気抵抗値を1.0×10Ω未満として、車内に蓄積された静電気を放出させている。
該導電部材は走行時に接地するトレッド面、特にトレッド面の幅方向の中央部に周方向に連続して設けることが好ましい。
一方、第1種タイヤには前記導電部材を装着していないため、タイヤの電気抵抗値は第2種タイヤよりも高く1.0×10Ω以上となる。
前記第1種および第2種タイヤのトレッドゴム本体の体積固有抵抗は1.0×10Ω・cm以上であり、前記第2種タイヤの導電部材の体積固有抵抗は1.0×10Ω・cm未満としてもよい。
前記構成とすることで、第2種タイヤの電気抵抗値は1.0×10Ω未満となり、第2種タイヤから車両内に蓄積された静電気を放出することができる
前記車両に装着される前後左右の4輪のタイヤは、前記のように前輪の2輪は前記第1種タイヤとし、後輪の2輪は前記第2種タイヤとし、同軸上に装着するタイヤは同一タイヤとしている。
このように、左右タイヤを同一種類のタイヤとすると、左右タイヤの摩耗量に差異が発生しにくくなり、走行性能を高めることができる。
FR車(フロントエンジン・リア駆動)のスポーツカータイプの場合、後輪タイヤのタイヤサイズは前輪タイヤよりも大きくし、トレッド幅も広くしている場合がある。該車両に装着するタイヤは、前輪タイヤは第1種タイヤとし、後輪タイヤは第2種タイヤとしている。
これは、第2種タイヤは電気抵抗値を低下させて導電性を高めるために、導電部材をトレッドに取り付けるが、トレッド幅が広いタイヤの方がその製造過程において導電部材を設置しやすいことに因る。
第2種タイヤの電気抵抗値を低下させるため、補強材としてシリカの代わり通常用いられている導電性を有するカーボンを配合してもよい。
即ち、第2種タイヤは補強材としてはカーボンを用いているタイヤとする一方、第1種タイヤは補強材としてシリカを用いているタイヤとしてもよい。
この場合、前記第2種タイヤのトレッドゴム本体の体積固有抵抗を1.0×10Ω・cm未満とする一方、第1種タイヤのトレッドゴム本体の体積固有抵抗を1.0×10Ω・cm以上としてもよい。
前記カーボン入りタイヤを第2種タイヤ、シリカ入りタイヤを第1種タイヤとして用いる場合、前輪タイヤ及び後輪タイヤのタイヤサイズやトレッド幅が同一である場合には、前輪タイヤはシリカ入りの第1種タイヤとし、後輪タイヤはカーボン入りの第2種タイヤとしている
これは、通常、車両のブレーキ性能は前輪タイヤで支配的になる場合が多いため、グリップ性がよいシリカ入りタイヤを前輪タイヤに用い、車両のブレーキ性能を向上することによる。
前述したように、本発明のタイヤの組み合わせによれば、装着されたタイヤのうち後輪の左右2本を電気抵抗値が1.0×10Ω未満の第2種タイヤとすることにより、車内に蓄積された静電気を第2種タイヤを介して地面に放出するので、ラジオノイズの発生を防止することができる。また、全てのタイヤを第2種タイヤとはせずに、電気抵抗値が第2種タイヤより高い1.0×10Ω以上の第1種タイヤを前輪の左右2本に装着することで、転がり抵抗を低く抑えて燃費の悪化を防ぐことができると共にタイヤの価格を安くすることができる。
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4は本発明の実施形態を示す。
図1は本実施形態の組み合わせタイヤを備えた自動車10を示し、前輪FL,FR,及び後輪RL,RRに空気入りタイヤTを装着している。
図2に示すように、前輪の左右FL、FRに装着する空気入りタイヤTは、電気抵抗値が1.0×10Ω以上の第1種タイヤT−1とし、後輪の左右RL、RRに装着する空気入りタイヤTは電気抵抗値が第1種タイヤより低い1.0×10Ω未満の第2種タイヤT−2としている。
第1種タイヤT−1と第2種タイヤT−2の構造について説明する。
本実施形態では第2種タイヤT−2としてトレッド部に導電部材を装着したタイヤを用い、第1種タイヤT−1として導電部材を有さないタイヤを用いている。これら第1種タイヤT−1と第2種タイヤT−2ともトレッドゴム配合の主たる補強材としてシリカを用いている。
図3は第1種タイヤT−1のタイヤ軸を含むタイヤ子午線断面図を示し、図4は特許文献1に示した第2種タイヤT−2のタイヤ軸を含むタイヤ子午線断面図を示す。
第1種タイヤT−1と第2種タイヤT−2とはトレッド部11の構造を相違させており、他の構成は同様である。
図3に示すように、トレッド部11と、該トレッド部11の両端から径方向内側に延在する一対のサイドウォール部12と、該サイドウォール部12の内側端でタイヤホイールのリム17と嵌合されるビード部13を備えている。
また、トレッド部11からサイドウォール部12を経てビード部13のビードコア16の周りで折り返されて係止されるカーカス14と、トレッド部11の内方かつカーカス14のタイヤ径方向外側に配置されたスチールベルト層15を備えている。
前記トレッド部11には、隆起部18と、凹溝部19とで構成するトレッドパターンが刻設されている。
第1種タイヤT−1と第2種タイヤT−2は、前記のように、トレッド部11の構造を相違させている。
第1種タイヤT−1のトレッド部11は、図3に示すようにタイヤ径方向外側のトレッドゴム本体11aからなる。
一方、第2種タイヤT−2は、図4に示すように導電部材20を備え、導電部材20は該トレッドゴム本体11aとスチールベルト層15との間に設けられた導電性ゴム層11bと、該導電性ゴム層11bからトレッドゴム本体11aを貫通してタイヤ半径方向外側に伸びてトレッド部11のトレッド面11cの一部をなす貫通部21と、前記トレッド部11のトレッド面に埋設される導電片22からなる。
図4の矢印30は車体に発生する静電気の電荷が、車体の一部として代表されるリム17からトレッド部11を経て放出される経路を表している。
第1種および第2種タイヤT−1,T−2とも、前記トレッドゴム本体11aは、ゴム成分として汎用されている天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、合成ポリイソプレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム等を1種あるいは2種以上用いている。
補強材として、前記のように、シリカを主成分とし、これにより、第1種タイヤT−1および第2種タイヤのトレッドゴム本体11aの電気抵抗値は1.0×10Ω以上となっている。
前記第2種タイヤT−2の導電部材20の導電性ゴム層11bには、カーボンからなる導電性付与剤がゴム成分に配合されたものから成形しており、カーボンの割合を調整することで導電部材20の体積固有抵抗を設定している。
本実施形態では、導電部材20に導電性付与剤としてカーボンを配合しており、第2種タイヤT−2の導電部材の電気抵抗値は1.0×10Ω未満となっている。
高導電性とする前記導電部材はカーボンの配合に変えて、あるいはカーボンと共に他の導電性フィラーを配合してもよい。該導電性フィラーとしては、Ag、Ni、Cu、Zn,Fe,Al,ステンレス、チタン、硫酸バリウム等が挙げられる。
さらに、前記導電性フィラーやカーボン等の電子導電剤に変えて、F-基、SO4-基を含む有機金属塩からなるイオン導電剤を配合してもよい。
さらには、導電性ゴム成分をゴム成分に配合してもよい。
また、第1種タイヤT−1と第2種タイヤT−2はタイヤサイズを相違させており、第1種タイヤT−1のトレッド幅は第2種タイヤT−2のトレッド幅より小としている。
前記のように、本実施形態のタイヤの組み合わせは、前輪タイヤFL,FRを電気抵抗値が1.0×10Ω以上の第1種タイヤT−1とし、後輪タイヤRL,RRを電気抵抗値が1.0×10Ω未満の第2種タイヤT−2としている。
前記タイヤの組み合わせにより、車両内に蓄積された静電気は、後輪タイヤである第2種タイヤT−2の導電部材20を通り、図4中の矢印30で示すように、車体→サイドウォール12→スチールベルト層15、導電性ゴム層11b→貫通部21を通って路面に放出される。このため、ラジオノイズの発生を防止することができる。
また、第1種タイヤからなる前輪タイヤは補強材としてシリカが配合されているため、転がり抵抗を低く抑えて燃費の悪化を防ぐことができる。また、価格の高い第2種タイヤT−2だけでなく価格が低い第1種タイヤT−1も装着しているので、全体として車両のタイヤの価格を下げることができる。
なお、第1種タイヤT−1は第2種タイヤT−2と同様の構造とし、第1種タイヤT−1にもトレッド部11に導電部材20を設けてもよく、この場合、第1種タイヤT−1の電気抵抗値が第2種タイヤT−2より大となるように設定される。
前記構成であっても、転がり抵抗を低く抑えて燃費の悪化を防ぐことができると共に、車両内に蓄積された静電気を第2種タイヤT−2を介して地面に放出することができる。
また、第1種タイヤT−1と第2種タイヤT−2のタイヤサイズとトレッド幅は同一でもよい。タイヤサイズとトレッド幅が同じであっても、車両内に蓄積された静電気を第2種タイヤT−2を介して地面に放出してラジオノイズの発生を防止することができると共に、転がり抵抗を低く抑えて燃費の悪化を防ぐことができる。
図5に第1実施形態の変形例を示し、第2種タイヤT−2は、トレッド部41及びサイドウォール部42の表面に、導電性薄膜43を敷設している。該導電性薄膜43はトレッド部41の溝44の表面も覆っている。
タイヤの全体構造は周知の構造で、トレッド部41からサイドウォール部42を経て、ビードコア46の回りを内側から外側に巻き上げられて係止されるカーカス層47を有する。カーカス層47の半径方向外方にベルト層48を備え、該ベルト層48は2以上の高弾性コードを平行に配置したプライからなる。
前記トレッド部41を構成するゴム組成物はカーボンブラックの配合量がゴム成分100質量部に対して50質量部以下で、且つゴム組成物全体の25質量%以下としている。前記サイドウォール部42を構成するゴム組成物はカーボンブラックの配合量がゴム成分100質量部に対して40質量部以下で且つゴム組成物全体の25質量%以下としている。前記導電性薄膜43を構成するゴム組成物はカーボンブラックの配合量がゴム成分100質量部に対して60質量部以下で、且つゴム組成物全体の35質量%以下としている。
前記構成の第2種タイヤT−2は、電気抵抗値が1.0×10Ω未満となるように導電性薄膜3の厚みや材質を調整している。
一方、第1種タイヤT−1には導電性薄膜43を設けず、電気抵抗値を1.0×10Ω以上としている。
前記第2種タイヤT−2を装着することにより、車両に蓄積された静電気は、タイヤリム45から、サイドウォール部42表面に敷設された導電性薄膜43c、トレッド部41表面に敷設された導電性薄膜43a、43bを通じて、地面に放出される。よって、ラジオノイズの発生を防止することができる。一方、トレッドゴム本体はヒステリヒスロスの少ない配合であるため、転がり抵抗を低く抑えて燃費の悪化を防ぐことができる。
他の構成および作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
図6に参考第2実施形態を示す。
参考第2実施形態は、第2種タイヤT−2に第1実施形態の導電部材20を設けていない点で相違する。
参考第2実施形態の第2種タイヤT−2は、図3に示す第1種タイヤT−1の構造と同様の構造とし、トレッドゴム本体の体積固有抵抗を1.0×10Ω・cm未満とするため、主たる補強材としてシリカに代えて導電性を有するカーボンを用いている。
第1種タイヤT−1は第1実施形態の第1種タイヤと同様に、主たる補強材としてシリカを用いたタイヤとしている。
図6に示すように、前輪FR,FLは第2種タイヤT−2とし、後輪RR、RLは第1種タイヤT−1としている。
後輪の第1種タイヤT−1のタイヤサイズとトレッド幅は前輪の第2種タイヤT−2よりも大きい。
前記のように、接地面積の大きい後輪にシリカ入りの転がり抵抗の小さい第1種タイヤT−1としていることで、転がり抵抗を小さくでき、燃費を改善することができる
図7は参考第2実施形態の変形例であるタイヤの組み合わせを示す。
参考第2実施形態と同様の第1種タイヤT−1、第2種タイヤT−2を用いて、前輪タイヤFR,FLを第1種タイヤT−1とし、後輪タイヤRR、RLを第2種タイヤT−2とし、タイヤサイズとトレッド幅は4輪とも同一としている。
前記構成とすると、グリップ性能が良い第1種タイヤT−1を前輪に装着することで、車両のブレーキ性能を向上させることができる。
図8(A)(B)は、第1種タイヤT−1と第2種タイヤT−2の他の組み合わせの参考例を示す。
図8(A)は、前輪タイヤFR,FL、右後輪タイヤRRは第1種タイヤT−1とし、左後輪タイヤRLは第2種タイヤT−2としている。
なお、第2種タイヤT−2を右後輪タイヤRRとし、第1種タイヤT−1を左後輪タイヤRLとしてもよい。
図8(B)は、右前輪タイヤFR、後輪タイヤRR,RLは第1種タイヤT−1とし、左前輪タイヤFLは第2種タイヤT−2を装着している。
なお、第2種タイヤT−2を右前輪タイヤFRとし、第1種タイヤT−1を左前輪タイヤFLとしてもよい。
以下に、本発明の実施例1、参考実施例2、3、4および比較例1、2、3のタイヤの組み合わせについて説明する。
実施例1、参考実施例2、3、4及び比較例1、2、3のいずれにおいても、前輪タイヤFL,FRは同一タイヤ、後輪タイヤRL,RRは前輪側と相違する同一タイヤとした。
前輪タイヤのタイヤサイズは225/45R18、リムサイズは18X7.5−JJであり、後輪タイヤのタイヤサイズは245/40R18、18X8.5−JJである。
すなわち、後輪タイヤは前輪タイヤよりもタイヤサイズ、リムサイズともに大きい。
タイヤ空気圧は200kPaとした。
空気入りタイヤは、補強材にシリカ等を配合した第1種タイヤT−1、第1種タイヤに導電部材を設けた第2種タイヤT−2A,補強材がカーボンのみからなり第1種タイヤと同様の構成である参考第2種タイヤT−2Bの3種類のタイヤのいずれかを使用した。
前記第1種タイヤT−1のトレッドゴム配合は、ゴム成分としてSBRを用い、カーボンブラックの他、シリカ、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、アロマオイル、硫黄等を配合し、該シリカの配合量はゴム成分を100質量部とすると80質量部とし、カーボンブラックの配合量はゴム成分を100質量部とすると、10質量部した。
これらのトレッドゴム本体の組成物を混練した後、押出し成形機で成形した。その後、180℃、10分加熱して、加硫成形した。
第2種タイヤT−2Aは、前記第1種タイヤT−1のトレッドゴム部の外周面に露出するように導電部材を設けた。該導電部材は、ゴム成分としてSBRを用い、該ゴム成分100質量部に対して100質量部のカーボンブラックを配合すると共に酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、アロマオイル、硫黄等を加えて混練し、該混練物を成形して導電部材を形成した。
参考第2種タイヤT−2Bのトレッドゴム配合は、シリカを除いて、第1種タイヤT−1と同様とし、カーボンブラックの配合量をゴム成分100質量部に対して80質量部とした。
(体積固有抵抗の測定方法)
前記導電部材およびトレッドゴムのそれぞれの体積固有抵抗は以下の方法で測定した。 導電部材では、前記ゴム組成物を調整して、加硫して加硫ゴムシートを作製した。このシートより、図9に示すゴム試験片60(a=1mm、b=20mm、L=70mm 総長A≧100mm)を作製した。該ゴム試験片60の表面に絶縁テープを貼り付けた後に所定の間隔をあけて電極61、61となる電導性ペーストを塗布した。
前記試料を温度23±2℃の条件下で48時間保持したあと、電極61、61間の抵抗値Rを同温度で測定し、Rv=(a×b×R)/Lの式に各数値を入れて、体積固有抵抗を算出した。
トレッドゴムも前記導電部材と同一の方法で体積固有抵抗を算出した。
算出した結果、第2種タイヤT−2Aの導電部材の体積固有抵抗は1.0×10Ω・cm未満の8.0×10Ω・cmであった。第2種タイヤT−2Aおよび第1種タイヤT−1のトレッドゴム本体の体積固有抵抗は1.0×10Ω・cm以上の1.6×10Ω・cmであった。参考第2種タイヤT−2Bのトレッドゴム本体の体積固有抵抗は1.0×10Ω・cm未満の2.3×10Ω・cmであった。
(電気抵抗値の測定方法)
前記空気入りタイヤTの電気抵抗値の測定は、図10に示すように、絶縁板51と、該絶縁板51に配された導電性の金属板52と、空気入りタイヤTを保持する導電性のタイヤ取付軸53と、電気抵抗測定器54とを具えた測定装置を用い、JATMA規定に準拠して測定した。
空気入りタイヤTは、予め表面の離型剤や汚れが十分に除去され、且つ十分に乾燥されるとともに、アルミニウム合金からなる導電性のリム(前輪18X7.5−JJ、後輪18X8.5−JJ)に装着され、かつ、内圧(200kPa)、荷重(前輪4.85kN,後輪5.13kN:最大負荷能力の80%の荷重)を負荷した。
試験環境温度(試験室温度)は25℃、湿度は50%に設定した。
金属板52は、表面を滑らかに研摩し、その電気抵抗値を10Ω以下に設定した。絶縁板51は、その電気抵抗値を1012Ω以上に設定した。
電気抵抗測定器54の測定範囲は、103〜1.6×1016Ωであり、測定値が得られるように100〜1000Vの電圧を印加した。
試験は下記の要領で行った。
(1)上述のように予め離型剤や汚れを十分に除去し、かつ、十分に乾燥した空気入りタイヤTに石けん水を用いてリムを装着した。
(2)空気入りタイヤTは、試験室内において2時間放置した後、タイヤ取付軸53に取り付けた。
(3)慣らし負荷作業、具体的には、空気入りタイヤTに前記荷重を0.5分間負荷し、解放後にさらに0.5分間負荷し、解放後にさらに2分間負荷した。
(4)その後、100〜1000Vの電圧が印加され、5分経過した時点で、電気抵抗測定器54によって、空気入りタイヤTの電気抵抗値を測定した。
(ラジオノイズおよび燃費評価方法)
2500ccのFR乗用車に前記組み合わせで空気入りタイヤを装着し、1名乗車で実車して、ラジオノイズと燃費について評価した。
ラジオノイズについてはノイズの有無を評価した。
燃費については、比較例、実施例共に同条件下で燃料流量計を装着した自動車を1000km走行させ、ガソリンの流量(すなわち消費量)を測定した。比較例1を100とした逆数の指数で表し、数字が高くなるほどガソリンの消費が少なく、燃費が良いことを示している。
実施例1、参考実施例2、3、4及び比較例1、2、3の構成及び評価結果を下記の表1、表2に示す。
なお、表1、表2のタイヤ仕様において、通電とは電気抵抗値が1.0×10Ω未満である第2種タイヤT−2を装着していることを示し、絶縁とは第1種タイヤT−1を装着していることを示す。
表1の第2種タイヤT−2は、第1種タイヤに導電部材を設けた第2種タイヤT−2Aであり、表2の第2種タイヤT−2は補強材がカーボンのみからなり第1種タイヤと同様の構成である参考第2種タイヤT−2Bである。
Figure 0005027476
Figure 0005027476
(実施例1)
後輪RL,RRには通電タイヤ、すなわちトレッド部に導電部材を設けた第2種タイヤT−2Aを装着し、前輪FL,FRには絶縁タイヤ、すなわち補強材にシリカを配合した第1種タイヤT−1を装着した。
成形されたタイヤにおいて第2種タイヤT−2Aの電気抵抗値は8.0×106Ωであった。
なお、第1種タイヤT−1には導電部材を設けておらず、第2種タイヤT−2Aと同様のトレッドゴム成分としており、電気抵抗値は1.6×109Ωであった。
参考実施例2)
前輪FL,FRには通電タイヤ、すなわち第1種タイヤに導電部材を設けた第2種タイヤT−2Aを装着し、後輪RL,RRには絶縁タイヤ、すなわち補強材にシリカ等を配合した第1種タイヤT−1を装着した。
参考実施例3)
後輪RL,RRには通電タイヤ、すなわち補強材がカーボンのみからなり第1種タイヤと同様の構成である参考第2種タイヤT−2Bを装着し、前輪FL,FRには絶縁タイヤ、すなわち補強材にシリカ等を配合し電気抵抗値が参考第2種タイヤT−2より高い1.0×10Ω以上である第1種タイヤT−1を装着した。
なお、参考第2種タイヤT−2Bの電気抵抗値は2.3×10Ωであった。
参考実施例4)
前輪タイヤFL,FRには通電タイヤ、すなわち補強材がカーボンのみからなり第1種タイヤと同様の構成である参考第2種タイヤT−2Bを装着し、後輪タイヤRL,RRには絶縁タイヤ、すなわち補強材にシリカを配合した第1種タイヤT−1を装着した。
(比較例1)
前後左右の全ての車輪FL,FR、RL,RRに通電タイヤ、すなわち第1種タイヤに導電部材を設けた電気抵抗値が1.0×10Ω未満の第2種タイヤT−2Aを装着した。
(比較例2)
前後左右の全ての車輪FL,FR、RL,RRに絶縁タイヤ、すなわち電気抵抗値が1.0×10Ω以上である第1種タイヤT−1を装着した。
(比較例3)
前後左右の全ての車輪FL,FR、RL,RRに通電タイヤ、すなわち補強材がカーボンのみからなり第1種タイヤと同様の構成である電気抵抗値が1.0×10Ω未満の第2種タイヤT−2Bを装着した。
表1に示すように、実施例1、参考実施例2はラジオノイズの発生を防止できることが確認できた。4輪のうち前輪、後輪のいずれかに通電タイヤ(第2種タイヤ)を装着して、電気抵抗値を下げているため、車体の静電気が放出されたためである。また比較例1に比べて燃費が向上していることが確認できた。
これに対し、比較例1において、全車輪を通電タイヤ(第2種タイヤT−2A)としても、ラジオノイズは発生しなかった。
一方、全車輪を絶縁タイヤ(第1種タイヤT−1)とした比較例2では、燃費は良くなるがラジオノイズが発生した。
上記結果により、第2種タイヤT−2Aを4輪全てに装着するのではなく、前輪または後輪に装着しても、ラジオノイズの発生を防止できると共に、燃費が向上することが確認できた。
また、表2に示すように通電タイヤが、補強材がカーボンのみからなり第1種タイヤT−1と同様の構成である参考第2種タイヤT−2Bであっても、参考実施例3、4はラジオノイズの発生を防止できることが確認できた。
さらに、後輪に絶縁タイヤ(第1種タイヤT−1)を装着した参考実施例4のほうが、参考実施例3よりも燃費が良いことが確認できた。後輪はタイヤサイズ、リムサイズ共に前輪より大きいので転がり抵抗が大きくなるが、後輪にシリカ配合タイヤを装着することで、タイヤの転がり抵抗は小さくなる方向に働き、燃費が良くなるためである。
これに対し、比較例3では、全車輪を第2種タイヤT−2Bとしたため、ラジオノイズは発生しないが、燃費が悪くなった。
本発明の第1実施形態であるタイヤを装着した自動車の斜視図である。 タイヤの組み合わせを示す図である。 第1種タイヤの断面図である。 第2種タイヤの断面図である。 第1実施形態の変形例を示す空気入りタイヤの赤道面右側の断面図である。 参考第2実施形態のタイヤの組み合わせを示す表である。 参考第2実施形態の変形例であるタイヤの組み合わせを示す表である。 (A)(B)は第1種タイヤと第2種タイヤ組み合わせた参考例を示す表である。 ゴム試験片を示す図面である。 タイヤの電気抵抗値の測定方法を示す図面である。
符号の説明
T 空気入りタイヤ
T−1 第1種タイヤ
T−2 第2種タイヤ
FL,FR 前輪タイヤ
RL,RR 後輪タイヤ
10 自動車
11 トレッド部
11a トレッドゴム本体
11b 導電性ゴム層
11c トレッド面
12 サイドウォール部
13 ビード部
14 カーカス
15 スチールベルト層
16 ビードコア
17 リム
20 導電部材

Claims (4)

  1. 車両に装着される前後左右の4輪のタイヤからなり、前輪の左右2本のタイヤは電気抵抗値が1.0×10Ω以上の(絶縁)第1種タイヤとし、後輪の左右2本のタイヤは電気抵抗値が1.0×10Ω未満の(導電)第2種タイヤとし、
    前記第2種タイヤは、トレッドゴム本体とスチールベルトとの間に設けられた導電性ゴム層と、該導電性ゴム層からトレッドゴム本体をタイヤ半径方向外側に貫通してトレッドゴム面に露出するように埋設される導電片とからなる導電部材を備え、またはトレッド部およびサイドウオール部の表面を導電性薄膜で覆っていることを特徴とする車両用の組み合わせタイヤ。
  2. 前記第2種タイヤはトレッドゴム配合の補強材としてはカーボンを用いる一方、前記第1種タイヤはトレッドゴム配合の補強材としてシリカを用いている請求項1に記載の車両用の組み合わせタイヤ。
  3. 前記第2種タイヤのトレッドゴム本体の体積固有抵抗は1.0×10 Ω・cm未満であり、前記第1種タイヤのトレッドゴム本体の体積固有抵抗が1.0×10 Ω・cm以上である請求項1または請求項2に記載の車両用の組み合わせタイヤ。
  4. 前記第1種タイヤのトレッド幅は第2種タイヤのトレッド幅より小としている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車両用組み合わせタイヤ。
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