JP5026826B2 - 昇圧回路と電源装置と画像形成装置 - Google Patents
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Description
そのような電磁誘導加熱装置(IH装置)の電圧共振回路においてはQ倍の電圧を発生する。
上記クオリティファクター(Quality factor:Q)は、電圧共振回路の良さを示す目安として用いられており、電圧共振回路の周波数ω0、コイルのインダクタンスL、コンデンサの静電容量C、それらの等価抵抗の抵抗値Rとすると、Qは、次の(イ)(ロ)の各式による演算処理によって求められる。
(イ)Q=ω0L/R
(ロ)Q=1/R・1/ω0C
例えば、直列共振時において、コイル又はコンデンサの電圧が電源電圧のQ倍になる。
図14に示すように、IGBTは、MOS型FET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:MOSFET)110をゲート部に組み込んだバイポーラトランジスタであり、ゲート端子Gとエミッタ端子E間の電圧で駆動し、入力信号によってオンとオフができる自己消弧形であり、大電力のスイッチングが可能な半導体素子である。
入力電圧111に対して、図15に示すように、ゲート端子Gの電圧112とコレクタ端子Cの電圧113が変化する。
しかし、IGBTは、FETと比較すると比較的大きな電力をスイッチングできるが、スイッチング速度は比較的遅い。
したがって、上記IGBTが多く用いられる。
従来の電磁誘導加熱装置における電磁誘導加熱のためのコイル構成では、共振電圧を高くするには、インダクタンス成分もしくはコンデンサ成分を変えることによってのみ、共振電圧の波高値(「共振波高値」という)を変えられる。
ところで、共振波高値を高くするには共振時間を短くすればよいが、電磁誘導加熱に用いられる電子スイッチのIGBTは、スイッチング速度の上限に限界があり、素早くスイッチングできないという問題があった。
また、スイッチング速度を無理に早くするとスイッチング損失が大きくなるという問題があった。
さらに、共振波高値、つまりQの値を高くするということは、波形のせん鋭度も高くなり、少しの周波数変化にもQが変化して制御が難しくなるという問題があった。
同図の(a)は、共振期間が長く共振が実現していない状態であり、重なりの部分でノイズが発生して損失大の場合の波形例である。
同図の(b)は、共振が実現している状態であり、効率よく駆動する場合の波形例である。
同図の(c)は、共振は実現しているが、共振期間が短い状態であり、共振期間が短く波形のせん鋭度が高く制御が難しい。また、コイルに大きな電圧が掛かって発熱して損失大であり、IGBTのボディダイオードへ流れ、電流が大きく損失大の場合の波形例である。
この発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、電磁誘導加熱におけるスイッチング損失を少なくし、且つ共振波高値を高くして被加熱体の加熱時間を短縮することを目的とする。
さらに、上記のような昇圧回路において、上記スイッチ手段のONとOFFのスイッチングのタイミングを制御する手段を設けるとよい。
さらにまた、上記のような昇圧回路において、上記スイッチ手段を、絶縁ゲートバイポーラトランジスタにするとよい。
また、上記のような昇圧回路を備えた電源装置を提供する。
さらに、上記のような電源装置において、交流電圧を整流して上記直流電圧を生成する整流回路を設けるとよい。
さらにまた、上記のような電源装置を備え、上記被加熱体として、記録媒体上のトナー像をその記録媒体に定着する定着ローラを有する画像形成装置を提供する。
まず、この発明の実施例の説明の前に、一般的な電磁誘導加熱システムについて説明する。
図11は、この発明の参考となる一般的な電磁誘導加熱システムの機能構成を示すブロック図である。
この電磁誘導加熱システム90は、IHクッキングヒーターである。IHクッキングヒーターのトッププレート(図示省略)の下には、加熱コイル94があり、その加熱コイル94によって被加熱体の鍋(ここでは、鉄、アルミニュウム、ステンレス等の材料で製造された鍋)95を電磁誘導加熱せしめて水を温める場合を説明する。
この擬似高周波は、インバータ電源である高周波インバータ93により、商用周波数60Hz又は50HzのAC100Vの商用電源51から供給される交流電流を整流器92によって整流して直流電流を作り出し、高周波インバータ93に供給する。
上記うず電流とは、ジュール熱損失のことである。その他にはヒステリシス損もあるが、無視できるレベルである。また、加熱コイル94の電流と反対の向きのうず電流も発生する。
このようにして、被加熱体の鍋95の底に発生したうず電流によって鍋底自身が発熱する。これが直接加熱と呼ばれる理由である。その際の発熱量は次式に基づいて求めることができる。
この鍋底の自己発熱の熱が、鍋95の中の水に熱伝達されることにより、鍋95の中の水は温められ、お湯となる。
また、上述のような電磁誘導加熱システムは、最近ではOA機器でも採用され、例えば、複写機を含む画像形成装置では、トナー定着工程に従来ハロゲンヒーター等が採用されていたが、上述のような電磁誘導加熱システムを使うことにより、細かく温度制御ができ、立ち上げ時間短縮などの省エネにも効果的である。
この電磁誘導加熱装置1′における電磁誘導加熱の基本動作について説明する。
(1)商用電源4のAC100V(商用電圧)を整流回路2によってダイレクトで整流してDC141Vを作る。
(2)DC141Vを、電磁誘導加熱制御部(IH制御部(「マイコン制御部」ともいう))6とドライブ回路7を有するインバータ回路3′によって600V0−p、50A0−p、20KHZから40KHZの擬似高周波電圧に変換する。
(4)IH制御部6がドライブ回路7を介してIGBT5をON・OFFする。
(5)上記(4)の動作は電圧共振である。
(6)ダイオードD1はIGBT5のボディーダイオードである。
(7)IH制御部6がIH制御を行い、共振点追従制御と電流保護と電圧保護を行う。
図13は、電磁誘導加熱の原理の説明に供する図である。
(1)コイル100に対して電源101から交流電流を供給すると、コイル100中に流れるコイル電流によって磁界が発生する。
(2)コイル100に磁界が発生すると、コイル100内の被加熱物である金属円柱102内にも磁界ができる。
(3)金属円柱102内にはこの磁界を打消すような方向に電流(これを「うず電流」という)が流れる。このうず電流は金属円柱102の表面に近いほど多く流れる(このように、高周波電流が導体を流れる時、電流密度が導体の表面で高く、表面から離れると低くなる現象のことを、「表皮効果」と呼び、周波数が高くなるほど電流が表面へ集中するので、導体の交流抵抗は高くなる)。
(5)金属円柱102は表面からどんどん昇温していくが、同時に放熱も始まる。
(6)金属円柱102の中心部は、表面近くで発生した熱の伝導を受け、表面より少し遅れて加熱されていく。
次に、この発明の画像形成装置の一実施例を説明する。
図2は、この発明の一実施例である電子写真方式の画像形成装置の構成を概念的に示す断面図であり、この発明に係る昇圧装置と電源装置による電磁誘導加熱を用いた定着装置を採用している。
この画像形成装置は主に、原稿を読み取る読み取りユニット11、画像を形成する画像形成部12、自動原稿搬送装置(ADF)13、ADF13から送り出される原稿をスタックする原稿排紙トレイ14、給紙カセット15〜18を備える給紙部19、記録用紙をスタックする排紙部(排紙トレイ20)から構成されている。
コンタクトガラス24上に載置された原稿Dの画像は、画像形成部12とコンタクトガラス24の間に位置する読み取り装置25によって読み取る。
画像読み取り終了後、原稿Dを原稿搬送ベルト23の回転により矢印B2方向へ搬送して排紙トレイ14上へ排出する。
このように、原稿Dを1枚ずつコンタクトガラス14上へ給送して原稿画像を読み取りユニット11によって読み取る。
感光体30は、図において時計方向に回転駆動し、帯電装置31によって表面を所定の電位に帯電させる。
また、書き込みユニット32からは、読み取り装置25によって読み取った画像情報に応じて光変調したレーザ光Lを照射し、帯電させた感光体30の表面をこのレーザ光Lで露光し、これによって感光体30の表面に静電潜像を形成する。
画像形成部12の下部に配置した複数の給紙カセット15〜18には、紙等の記録媒体Pを収容してあり、いずれかの給紙カセット15〜18から記録媒体Pを矢印B3方向へ送り出し、その記録媒体Pの表面に、上述のように感光体30の表面に形成したトナー像を転写する。
定着装置36を通った記録媒体Pを排出ローラ対37によって搬送し、矢印B5で示すように排紙トレイ20へ排出し、スタックする。
上記定着装置36は、電磁誘導加熱装置1の電磁誘導により加熱される発熱ローラの定着ローラ40と、定着ローラ40と軸線が平行となるように配置した加圧ローラ41等から構成されている。
また、定着ローラ40は、例えば、磁性金属製の芯金を、耐熱性を有するシリコーンゴムをソリッド状または発泡状にして被覆して構成する。
一方、加圧ローラ41は、例えば、熱伝導性の高い銅やアルミを含む金属製の円筒部材からなる芯金の表面に、耐熱性でかつトナー離型性の高い弾性部材を設けて構成する。
上記芯金には、ステンレススチールを含む金属を使用するとよい。
上述した定着ローラ40と加圧ローラ41は、それらの回転時における接触部位が未定着のトナーが載った記録媒体を通過させて加圧、加熱するニップ部を形成している。
この電磁誘導加熱装置1は、整流回路2とインバータ回路3とからなり、定着装置36内において、磁気結合コイルL1と被加熱体である定着ローラ40との間にギャップを設けて配置されている。
整流回路2は、商用電源4と、平滑用フィルタコイルL2と、ノイズフィルタ用コンデンサCと、コンデンサC2と、カレントトランスCT等からなる。
上記平滑用フィルタコイルL2とコンデンサC2とにより、LCフィルターを構成している。
平滑用フィルタコイルL2とコンデンサC2とでローパスフィルタを構成する。
この整流回路2は、商用電源4の100V(50HZ/60HZ)の交流電圧を約141Vの直流(DC)電圧へ変換してインバータ回路3へ供給する。
カレントトランスCTは、商用電源4の電流を検知するためのものであり、ここでAC100Vの電流を検知して異常があれば保護回路を働かせる。
磁気結合コイルL1は、コイルLaとコイルLbを和動接続しており、コイルLbによる加熱用コイルと、コイルLaとLbによる共振用コイルの二役を兼ねている。
IGBT5は、直流電圧を擬似高周波交流電圧に変換するスイッチ手段である。
IH制御部6とドライブ回路7は、磁気結合コイルL1を共振状態にするようにIGBT5の擬似高周波の値を制御する手段の機能を果たす。
ドライブ回路7は、トーテムポール回路が代表される回路であり、IH制御部6からの指示に基づいてIGBT5のスイッチングのONとOFFを切り換える駆動を制御する。
このインバータ回路3は、整流回路2から供給される直流電圧をIGBT5によって擬似高周波化(例えば、20KHZ〜60KHZ)し、IH制御部6及びドライブ回路7の制御によってIGBT5のONとOFFのスイッチングを切り替え、磁気結合コイルL1と共振用コンデンサC1とに擬似高周波を供給し、磁気結合コイルL1の磁界の発生と、共振用コンデンサC1の共振とにより、定着ローラ40を電磁誘導加熱する。
図1に示した磁気結合コイルL1と、共振用コンデンサC1と、スイッチング素子のIGBT5とからなる共振回路の構成によって、定着ローラ40の加熱を効率よく行う。
そして、磁気結合コイルL1へ電流が流れると、定着ローラ40に渦電流が流れ、その渦電流と、定着ローラ40の金属抵抗とによってi^2・R(R:抵抗)の電力が発生し、ジュール熱が発生し、定着ローラ40が加熱する。
電磁誘導加熱は、例えば、AC100V、60Hz/50Hzでも可能であるが、より早く加熱するには電圧と周波数を上げることによって実現する。
そのために、インバータ回路3を設けている。
インバータ回路3は、共振兼加熱コイルである磁気結合コイルL1と、共振用コンデンサC1からなる電圧共振回路(「LC共振回路」ともいう)により、整流回路2からの直流電圧からQ倍の共振波形をつくることができる。
この実施例の電磁誘導加熱装置1では、コスト的にも、また共振周波数やQにも影響のない昇圧手段、和動接続を使ったコイル構成にしている。
そこで、インダクタンス値を変えないで昇圧させて定着ローラ40の渦電流を増やすので、IGBT5のスイッチング損失を少なくし、波高値を高くして加熱時間を短縮することができる。
このように、電磁誘導加熱手段に上記コイル構成を用いることにより、共振周波数を変えることなく容易に短時間で効率良く被加熱物を温めることができる。
図3は、複数のコイルを和動接続した加熱コイルの回路図である。
同図の(a)は、上述した和動接続を使った加熱用と共振用の両機能を兼ねた磁気結合コイルの構成例であり、同図の(b)は従来の加熱コイルの構成例である。
同図の(a)に示す磁気結合コイルにおいて、発熱量はコイル1ターン(1回)当たりの誘導起電力で決定される。
ここで、同図の(b)に示す従来の加熱コイルでは、e=誘導起電力、N=巻き数、L=インダクタンス、φ=磁束、I=電流とすると、誘導起電力e=−N・Δφ/Δt、誘導起電力e=−L・ΔI/Δt、インダクタンスL=N・Δφ/ΔIとなり、誘導起電力eは巻き数NとインダクタンスLに正比例する。
従来の電磁誘導加熱装置は、同図の(b)に示すような加熱コイルとコンデンサの共振回路を設けて駆動しているので、インダクタンスが変わると、上記数1に示したように、周波数が変動してしまう。そして、この共振周波数から著しくずれると駆動効率が著しく低下する。
また、このようなコイル構成にすれば、インダクタンス値を変えることなくLa:Lbのインダクタンス比でn倍の昇圧をすることができ、誘導起電力を高めることができる。
さらに、絶縁型トランスのように構造が複雑にならないので、回路を安価に製造することができる。
ここで、LC共振回路はf0近傍で駆動することによって高効率駆動する。
図4は、LC共振回路におけるインピーダンスとQの変化例を示す波形図である。
同図の(a)が加熱コイルのインピーダンスを、同図の(b)がQ(Quality factor)をそれぞれ示す。
LC共振回路で一旦LC定数を決めてしまうと、数1から共振周波数が決まり、駆動周波数が決まる。また、加熱(エネルギー)は電磁束で決まる。さらに、電磁束は金属で流れる電流で決まる。そして、電流はIGBTのVce0−pと金属抵抗値で決まる。
図5乃至図7は、この発明の参考技術の加熱コイルの構成を示す図である。
図5は、被加熱体としての定着ローラ40′を加熱する加熱コイル50、IGBT51,52、共振コンデンサ53等からなる回路構成を示し、図6は、被加熱体としての定着ローラ40′を加熱する加熱コイル60、IGBT61〜63、ダイオードD2〜D5、共振コンデンサ64等からなる回路構成を示し、図7は、被加熱体としての定着ローラ40′を加熱する加熱コイル70、IGBT71、共振コンデンサ72、ダイオードD6からなる回路構成を示している。
上述した各図中の各回路において、それぞれの加熱コイルのインダクタンスLを大きくし、またはキャパシタンスCを小さくすれば加熱コイルの金属円柱内に発生した磁界とその磁界を打ち消す方向に流れるうず電流とによってQの値を上げることができる。
また、Qを高くするというのは、共振波形を鋭くするように制御することから考えれば大変困難なことである。また、周波数が少しでも動けば昇圧比が大きく変わることも考えられる。
さらに、加熱コイルのインダクタンスLの値を増加させるということはスペースの制限から限度がある。
ここで、Qを変えずに共振電圧Vce0−pを高くする方法として、共振電圧にDCバイアスを掛けて下駄を履かせて共振電圧をあげる方法、例えば、電気二重層コンデンサなどを利用したものがある。しかし、電磁誘導加熱装置に電力を供給する電源の他にもコンデンサへの充放電電源が必要になり、コストが上昇する。
図9は、図8に示す加熱コイルを使って電磁誘導加熱するための回路図である。これは、図8に示した加熱コイルLcと平滑用フィルタコイルLdとを和動接続し、IGBT80を設けてなる回路構成である。
図10は、図8に示す加熱コイルを使って電磁誘導加熱するための回路の他の構成例を示す回路図である。これは、図9に示した回路構成に共振コンデンサ81を設けている。
このコイル構成を用いればインダクタンスLの値を変えることなくLc:Ldのインダクタンス比でn倍の昇圧をすることができる。
Claims (7)
- 直流電圧から擬似高周波の交流電圧を生成するスイッチ手段と、該スイッチ手段のONとOFFのスイッチングによって生成される擬似高周波の交流電圧の印加によって磁力線を発生し、該磁力線に基づいて被加熱体に対して電磁誘導加熱する第1のコイルと該第1のコイルと直列に和動接続された第2のコイルとからなるコイルと、該コイルに並列に接続された共振用コンデンサとを有し、前記第1のコイルと前記第2のコイルとが直列に和動接続された接続点に、前記直流電圧を印加するようにしたことを特徴とする昇圧回路。
- 前記第1のコイルと前記第2のコイルのインダクタンスに基いて求められる相互インダクタンスによって前記コイルの誘導起電力を決定することを特徴とする請求項1記載の昇圧回路。
- 請求項1又は2に記載の昇圧回路において、
前記スイッチ手段のONとOFFのスイッチングのタイミングを制御する手段を設けたことを特徴とする昇圧回路。 - 前記スイッチ手段は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の昇圧回路。
- 請求項1から4のいずれか一項に記載の昇圧回路を備えたことを特徴とする電源装置。
- 請求項5に記載の電源装置において、
交流電圧を整流して前記直流電圧を生成する整流回路を設けたことを特徴とする電源装置。 - 請求項5又は6に記載の電源装置を備え、
前記被加熱体として、記録媒体上のトナー像を該記録媒体に定着する定着ローラを有することを特徴とする画像形成装置。
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