ところで、前記横スライド機構は、通常、前記座部を横方向の所定位置でロックする横ロック機構と、該横ロック機構を操作する横ロック操作部とを有しているが、この場合、前後移動規制機構が設けられていると、次のような問題が生じる。
すなわち、所定の前後位置で後方への移動が規制された場合に、さらに座部を後方へ移動させるには、一旦座部の外端が横方向の所定範囲外となるまで横方向へスライドさせた後、後方へ移動させる必要があるが、この場合、前後位置で後方への移動が規制されたときに、横ロック操作部を操作して横ロック機構による横ロックを解除する必要があり、操作が煩雑となる。
そこで、本発明は、前後移動規制機構により後方への移動が規制されたときに、横方向への移動を速やかに行うことが可能な車両用シートスライド装置を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
まず、本願の請求項1に記載の発明は、座部を車両前後方向に移動可能とする前後スライド機構と、該座部を横方向に移動可能とする横スライド機構とを備え、前記座部が横スライド機構による横スライド範囲の一端側に移動したときに、該座部の一側端の後方に車両部材が位置することとなる車両用シートスライド装置であって、前記横スライド機構は、前記座部を横方向の所定位置でロックする横ロック機構と、該横ロック機構を操作する横ロック操作部とを有していると共に、前記座部の前記一側端が前記車両部材の前方となる横方向の所定範囲内に位置する状態で該座部を後方へ移動させたときに、該座部の後端が前後方向の所定位置よりも後方に移動するのを規制する前後移動規制手段が設けられており、かつ、前記横ロック機構によりロックされた状態で前後移動規制手段により座部の後方への移動が規制されたときに、該横ロック機構によるロックを解除する強制ロック解除手段が設けられていることを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の車両用シートスライド装置において、前記座部の前記一側端が横方向の所定範囲外に位置し、かつ座部の後端が前記前後方向の所定位置よりも後方に位置する状態で該座部を前記横方向の所定範囲側へ移動させたときに、該座部の前記一側端が前記横方向の所定範囲内に進入するのを規制する横移動規制手段が設けられていることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の車両用シートスライド装置において、前記横ロック操作部は、ロック位置とロック解除位置との間で移動可能に構成されていると共に、前記強制ロック解除手段によりロックが解除されているときは、ロック解除位置に保持されるように構成されていることを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両用シートスライド装置において、前記前後スライド機構は、前記座部の前後移動をロックする前後ロック機構と、該前後ロック機構を操作する前後ロック操作部とを有しており、該前後ロック操作部は、前記横ロック操作部の近傍に配置されていることを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項1から請求項4のいずれかに記載の車両用シートスライド装置において、前記横ロック機構は、前記前後移動規制手段により座部の後方への移動が規制された状態で、該座部が横方向に所定距離移動したときに、ロック解除状態からロック状態に移行するように構成されていることを特徴とする。
また、請求項6に記載の発明は、前記請求項1から請求項5のいずれかに記載の車両用シートスライド装置において、前記前後スライド機構及び横スライド機構は、車両前後方向及び横方向に延設された前後スライドレール及び横スライドレールで構成されていると共に、該前後スライドレールはフロア上に配設されていると共に、横スライドレールは該前後スライドレール上に配設されていることを特徴とする。
また、請求項7に記載の発明は、前記請求項1から請求項6のいずれかに記載の車両用シートスライド装置において、前記前後移動規制手段は、前記フロア及び座部側に設けられ、座部の一側端が前記横方向の所定範囲内に位置する状態で該座部を後方へ移動させるときに、互いに当接することにより、該座部の後端が前記前後方向の所定位置よりも後方に移動するのを規制する一対の前後移動規制部材により構成されていることを特徴とする。
次に、本発明の効果について説明する。
まず、請求項1に記載の発明によれば、座部が前後スライド機構及び横スライド機構により前後方向及び車幅方向に移動可能となる。
また、横ロック機構により前記座部を横方向の所定位置でロックすることができると共に、横ロック操作部を操作することにより、ロックを解除することができる。
また、座部の一側端が横方向の所定範囲内に位置する状態で該座部を前側から後方へ移動させようとすると、前後移動規制手段により、該座部の後端が所定の前後位置よりも後方に移動するのが規制されることとなる。したがって、座部を後方に移動させたときに例えばリヤホイールハウスのトリム等の車両部材に当接するのを防止することができる。特に、前後方向移動時には、足で床面を前後に蹴ることにより横方向移動時と比べて大きな力が加わりやすく、リヤホイールハウスのトリム等に当接した場合、トリム等の破損を起こしやすいが、そのような破損を良好に防止することができる。
その場合に、前記前後移動規制手段により座部の後方への移動が規制されると、強制ロック解除手段により、前記横ロック機構によるロックが解除されることとなる。したがって、横ロック操作部を操作しなくても、速やかに座部を横方向に移動させることが可能となる。
また、請求項2に記載の発明によれば、前記座部の前記一側端が横方向の所定範囲外に位置し、かつ座部の後端が前記所定の前後位置よりも後方に位置する状態で該座部を前記横方向の所定範囲側へ移動させるときに、横移動規制手段により、該座部の前記一側端が前記横方向の所定範囲内に進入するのが規制されることとなる。すなわち、前後方向及び横方向の両方向についてスライド規制が実現されることとなる。
また、請求項3に記載の発明によれば、前記横ロック操作部は、前記強制ロック解除手段によりロックが解除されているときには、ロック解除位置に保持されることとなる。したがって、ロック解除状態であることを容易に認識することができる。
また、請求項4に記載の発明によれば、前後ロック機構により前記座部の前後移動をロックすることができると共に、前後ロック操作部を操作することにより、ロックを解除することができる。
その場合に、前記前後ロック操作部は、前記横ロック操作部近傍に配置されているから、前後ロック操作部を操作して前後スライド中に前後移動が規制された場合、横ロック操作部の操作に容易に移行することができる。
また、請求項5に記載の発明によれば、前記横ロック機構は、前記前後移動規制手段により座部の後方への移動が規制された状態で、該座部が横方向に所定距離移動したときに、ロック解除状態からロック状態に移行することとなる。したがって、例えば車両の姿勢変化等が生じたときでも、座部が不意に横方向に大きく移動するのが防止されることとなる。
また、請求項6に記載の発明によれば、前記前後スライド機構及び横スライド機構が車両前後方向及び横方向に延設された前後スライドレール及び横スライドレールで構成されている場合に、該前後スライドレールはフロア上に配設されていると共に、横スライドレールは該前後スライドレール上に配設されているので、前後スライドレールを容易に前後に延長することができる。したがって、座部の前後方向移動量を容易に拡大することができる。
また、請求項7に記載の発明によれば、フロア側及び座部側にそれぞれ規制部材を設けるだけで前後移動を規制することができる。つまり、簡易な構成で前後移動規制手段を実現することができる。
以下、本発明の実施の形態に係る車両用シートスライド装置について説明する。
図1、図2(シートクッション40(座部)が最前方位置でかつ最外方位置に位置した状態を示している)に示すように、本実施の形態に係る車両1のフロア2上には、リヤシート3が配設されている。また、車体側部には、このリヤシート3の側方において、乗降用開口部4が設けられていると共に、該開口部4の後方において、後輪5を収容するリヤホイールハウス6が車室内に膨出して設けられている。リヤホイールハウス6及びその上方の車体内面には、トリム7が取り付けられている。このトリム7は樹脂等を用いて成形されている。
このリヤシート3は、フロア2に前後方向に設けられた前後スライド機構10と、該前後スライド機構10上により前後方向に移動可能に支持されたシート基部20と、該シート基部20上に設けられた横スライド機構30と、該横スライド機構30により車幅方向に移動可能に支持されたシートクッション40と、該クッション40の後端部に下端部が支持されたシートバック50とを有している。
前後スライド機構10は、図3、図4に示すように、フロア2に固定され、車両前後方向に延びる左右一対のロアレール11,11と、ローラ及びボールを介して該ロアレール11,11に前後方向に摺動可能に支持された左右一対のアッパレール12,12と、アッパレール12,12をロアレール11,11に対して移動不能にロックする前後ロック機構60と、該前後ロック機構60を操作する前後ロック操作レバー61とを有している。なお、ロアレール11,11の上面はカバー部材13,13により覆われている。
シート基部20は、アッパレール12,12の前端部及び後端部に形成された上方延出部に前端部及び後端部が固定されたベースフレーム21,21と、該ベースフレーム21,21に固定されたカバー部材22,22とを有している。
横スライド機構30は、図5、図6に示すように、シート基部20のベースフレーム21,21の前部上面及び後部上面に固定され、車幅方向に延びる前後一対のロアレール31,31と、図示しないローラ及びボールを介して該ロアレール31,31に車幅方向に摺動可能に支持された前後一対のアッパレール32,32と、アッパレール32,32をロアレール31,31に対して移動不能にロックする横ロック機構80と、該横ロック機構80を操作する横ロック操作レバー81とを有している。この横ロック操作レバー81の操作部81aと、前記前後ロック操作レバー61の操作部61aとは、持ち替えが容易となるように、近接して配置されている。
シートクッション40は、図3、図4に示すように、横スライド機構30の前後のアッパレール32,32の左右の端部に前部及び後部の下部がそれぞれ固定された左右のサイドフレーム41,41と、該左右のサイドフレーム41,41の間において、横スライド機構30の前後のアッパレール31,31の上方でそれぞれ車幅方向に延び、該アッパレール31,31に固着されると共に両サイドフレーム41,41を連結する断面コ字状のフロントフレーム42及びリヤフレーム43と、該左右のサイドフレーム41,41の前後方向中間よりもやや前方で車幅方向に延び、両サイドフレーム41,41を連結するクロスフレーム44と、左右のサイドフレーム41,41に固定されたクッション材45(図1参照)と、該クッション材45の左右の側部の下方にそれぞれ配設され、前記シート基部20、横スライド機構30、シートバック50の下部を側方から覆うカバー部材46とを有している。このカバー部材46は樹脂で成形されている。
ここで、前後ロック機構60について詳しく説明する。図3、図4に示すように、この前後ロック機構60は、シートクッション40の左右のサイドフレーム41,41間において前記クロスフレーム44よりも後方で車幅方向に延び、左右の端部が該フレーム44に対して回動可能にかつ車幅方向に移動不能に支持された回動軸62と、略L字状とされて、該回動軸62に車幅方向内側のサイドフレーム41,41近傍で屈曲部が固定され、前端部に前記前後ロック操作レバー61の後端部が固着された揺動部材63と、回動軸62に前端部が左右のサイドフレーム41,41の車幅方向中間付近で固着され、後方にほぼ水平に延びるレバー部材64と、前記シートクッション40のクロスフレーム44と前記揺動部材62の上端部とを前後に連結し、該揺動部材62を図4において反時計回り方向に付勢するバネ部材65と、該揺動部材62の反時計回り方向への所定量以上の揺動を規制するストッパ66と、前記シート基部20の左右のベースフレーム21,21間において前記回動軸62の下方で車幅方向に延び、左右の端部が該ベースフレーム21,21に固定された支持軸67と、前後に長い形状とされ、後端部が前記レバー部材64の下方に位置し、前後方向中間部が該支持軸67に左右のベースフレーム21,21のシート内方側近傍でそれぞれ回動可能にかつ車幅方向に移動不能に支持された左右の揺動部材68、68と、該揺動部材68,68を図4において反時計回り方向に付勢するバネ部材(図示していないが支持軸67上に設けらている)と、左右の揺動部材68,68の後端部間で車幅方向に延び左右の端部が該後端部に固着された連結棒69と、左右の揺動部材68,68の前部下部に固着され、前後方向に一定間隔で下方に突出する突起を有する櫛歯部材70と、前記前後スライド機構10のロアレール11の上面部に、その前端部近傍から後端部近傍に渡って前記櫛歯部材70の突起の前後間隔と等間隔で形成され、該突起と係合可能な孔部(図示せず)とを有している。
そして、前後ロック操作レバー61を操作すると、すなわち該操作レバー61の前端部を符号aで示すように上方に引き上げると、揺動部材63の前端部が符号bで示すように引き上げられることにより、該揺動部材63及びレバー部材64が回動軸62を中心として符号cで示すように回動する。また、このとき、レバー部材64の後端部が連結棒69に当接してレバー部材64を符号dで示すように下方に押し下げることにより、揺動部材63が支持軸62を中心として、図4において時計回り方向に揺動する。つまり、揺動部材63の前端部側が符号eで示すように上方に移動し、その結果、櫛歯部材70の突起とロアレール11の孔部との係合が解除され、ロックが解除される。そして、前後ロック操作レバー61をこの状態で維持することにより、アッパレール12より上方のシート基部20、シートクッション40及びシートバック50が、前後方向に移動可能となる。
そして、前後方向に移動させた後、前後ロック操作レバー61から手を離すと、バネ部材65により揺動部材63が図4において反時計回り方向に付勢されていることにより、該揺動部材63はストッパ66に当接した状態まで反時計回りに回動し、初期位置に復帰する。また、シート基部20側の揺動部材68は、図示しないバネ部材65により反時計回り方向に付勢されていることにより、該揺動部材68は櫛歯部材70がロアレール11の上面部に当接するまで反時計回りに回動する。そして、この状態で、シート3を若干前後に移動させると、櫛歯部材70の突起とロアレール11の孔部との前後位置が一致したときに、揺動部材68がさらに反時計回りに微量揺動して、櫛歯部材70の突起とロアレール11の孔部とが係合し、アッパレール12とロアレール11とがロックされることとなる。
次に、前記横ロック機構80について詳しく説明する。図5、図6に示すように、この横ロック機構80は、シートクッション40の前記クロスフレーム44の下方で車幅方向に延びると共に、該クロスフレーム44に下垂状態で固着された左右一対のブラケット47,47の下部に回動可能にかつ車幅方向に移動不能に支持された回動軸82と、該回動軸82における車幅方向内側のサイドフレーム41側に固定され、前記横ロック操作レバー81の後端部に形成された歯部81bと噛み合うギヤ83と、前記回動軸82の他方の端部側に固着されたレバー部材84と、シートクッション40のリヤフレーム43の前壁に前後に揺動可能に支持され、車幅方向に一定間隔で後方に突出する突起を有する櫛歯部材85と、横スライド機構30のアッパレール32の前壁における前記櫛歯部材85の突起に対応する位置に形成された孔部と、ロアレール31の前面部にその車幅方向一端部近傍から他端部近傍に渡って前記櫛歯部材85の突起の車幅方向間隔と等間隔で形成され、該突起と係合可能な多数の孔部と、前記レバー部材84の先端部と櫛歯部材85の縦壁の下端部とを弛みなく連結する連結ケーブル86と、横ロック操作レバー81を図6において反時計回り方向に付勢するバネ部材87(図示せず)と、横ロック操作レバー81の反時計回り方向への所定量以上の揺動を規制するストッパ88と、横ロック操作レバー81の時計回り方向への所定量以上の揺動を規制するストッパ89とを有している。
そして、横ロック操作レバー81を操作すると、すなわち該操作レバー81の前端部を符号fで示すように上方に引き上げると、該操作レバー81が支持軸90を中心として回動することにより、該操作レバー81の後端部の歯部81b側が符号fで示すように前方下方に移動し、その結果、ギヤ部材83が符号hで示すように回動する。また、このとき、ギヤ部材83と固着された回動軸82、及び該回動軸82に固着されたレバー部材84が同方向に回動することとなる。その結果、連結ケーブル86を介して、櫛歯部材85が符号iで示すように回動して、櫛歯部材85の突起とロアレール31の孔部との係合が解除され、ロックが解除される。そして、横ロック操作レバー81をこの状態で維持することにより、アッパレール32より上方のシートクッション40及びシートバック50が、前後方向に移動可能となる。
そして、車幅方向に移動させた後、横ロック操作レバー81から手を離すと、バネ部材87により横ロック操作レバー81が図6において反時計回り方向に付勢されていることにより、該横ロック操作レバー81はストッパ88に当接した状態まで反時計回りに回動し、初期位置に復帰する。また、これに伴って他の部材も初期位置方向へ移動し、櫛歯部材85がロアレール31の前面部に当接するまで反時計回りに回動する。そして、この状態で、シートクッション40を若干車幅方向に移動させると、櫛歯部材85の突起とロアレール31の孔部との前後位置が一致したときに、櫛歯部材85がさらに符号iで示すように微量揺動して、櫛歯部材85の突起とロアレール31の孔部とが係合し、アッパレール32とロアレール31とがロックされることとなる。
ところで、図7(シートバック50等の記載は省略して簡略化している。図8〜図12において同じ)に示すように、シートクッション40が最前方位置でかつ最外方位置に位置した状態では、シートクッション40の外端(一側端)が、リヤホイールハウス6のトリム7の前方に位置している。したがって、シートクッション40を後方に移動させると、クッション40のカバー部材46とリヤホイールハウス6のトリム7とが当接する虞がある。また、図8に示すように、シートクッション40が最後方位置でかつ最内方位置に位置した状態では、シートクッション40が、リヤホイールハウス6のトリム7の側方に位置している。したがって、シートクッション40を横方向(外側)に移動させると、クッション40のカバー部材46とリヤホイールハウス6のトリム7とが当接する虞がある。そこで、本実施の形態においては、このような当接を防止するため、シートクッション40の車両前後方向及び横方向への移動を規制する移動規制機構を設けている。
すなわち、横スライド機構30のアッパレール32の前面の車幅方向ほぼ中央には、正面視で略U字状のゲート状部材101が配設されている。
ここで、前記ゲート状部材101は、アッパレール32の前面部にヒンジ部材103を介して上端部を中心として前後に揺動可能に支持されている。また、該ゲート状部材101の側辺部と前記横ロック操作レバー81とはリンク部材104を介して連結されている。詳しくは、リンク部材104は、前端部が、ゲート状部材101の側辺部に車幅方向に設けられた軸に回動可能に支持され、かつ、後端部が、横ロック操作レバー81の後部側車幅方向に設けられた軸に回動可能に支持されている。そして、ゲート状部材101が揺動すると、これに連動して横ロック操作レバー81がリンク部材104を介して支軸82を中心として揺動するようになっている。なお、横ロック操作レバー81の時計回り方向の揺動は、前述のようにストッパ85により規制されるようになっており、その結果、ゲート状部材101の前方への揺動も所定位置で規制されることとなる。
また、フロア2には、平面視で略L字状のボックス部材102がフロア2の上面から突出するように設けられている。このボックス部材102の高さ及びゲート状部材101の高さ(上下長)は、ボックス部材102の上端部とゲート状部材101の下端部とが正面視及び側面視で所定量重なるように設定されている。
ここで、ボックス部材102は、ゲート状部材101が前述の位置に設けられていることを条件として、以下のような位置に設けられている。すなわち、前後方向においては、ゲート状部材101が後方移動中にボックス部材102の前面に当接したときに(当接によりゲート状部材101が上端部を中心として前方に最大限揺動した状態)、シートクッション40の後端が所定の前後位置L1に位置することとなる位置に設けられている。ここで、この所定の前後位置L1は、シートクッション40の後端がトリム7の傾斜する前面に対して所定の間隔を確保可能な位置に設定されている。
一方、横方向においては、ゲート状部材101がボックス部材102の内方から外方に向かって移動中にボックス部材102の側面(車幅方向内側の側面)に当接したときに、シートクッション40の外端が所定の横範囲W1の内端に位置することとなる位置に設けられている。ここで、この所定の横範囲W1の内端は、シートクッション40の外端がトリム7の側面に対して所定の間隔を確保可能な位置に設定されている。
次に、本実施の形態に係るシートスライド装置の作用について説明する。
図7は、図1と同様の状態を簡略化したものであり、シートクッション40が最前方位置でかつ最外方位置に位置した状態を示している。この状態から、横方向(車幅方向内方)に移動させると、図8に示すように、シートクッション40を最前方位置でかつ最内方位置に位置させることができる。そして、この状態から後方に移動させると、図9に示すように、シートクッション40を最後方位置でかつ最内方位置に位置させることができる。
一方、図7に示すようにシートクッション40の外端が横方向の所定範囲W1内にある状態で、該シートクッション40を後方へ移動させると、図10に示すようにフロア2側及びシートクッション40側に設けられたゲート状部材101とボックス状部材102とが当接し、シートクッション40の後端が所定の前後位置L1よりも後方に移動するのが規制されることとなる。しがって、シートクッション40を後方に移動させたときにリヤホイールハウス6のトリム7に当接するのを防止することができる。特に、後方移動時には、足で床面を前後に蹴ることにより横方向移動時と比べて大きな力が加わりやすく、シートクッション40のカバー部材46がリヤホイールハウス6のトリム7に当接した場合、トリム7等の破損を起こす虞があるが、そのような破損を良好に防止することができる。また、ゲート状部材101及びボックス状部材102を設けるだけで前後移動規制を行うことができる。つまり、前後移動規制を簡素な構造で実現することができる。
そして、この状態から例えばシートクッション40を最後方位置でかつ最内方位置に移動させるには、図11に示すように、まず、シートクッション40を最内方位置まで横方向に移動させる。次いで、この状態からシートクッション40を、図9に示すように、最後方位置まで移動させる。
そして、この状態からシートクッション40を横方向外側に移動させると、図12に示すように、ゲート状部材101とボックス状部材102とが当接し、シートクッション40の一側端が横方向の所定範囲W1内に進入するのが規制されることとなる。しがって、シートクッション40を横方向に移動させたときにリヤホイールハウス6のトリム7に当接するのを防止することができる。また、ゲート状部材101及びボックス状部材102を設けるだけで横移動規制を行うことができる。つまり、前後移動規制及び横移動規制を簡素な構造で実現することができる。
また、前後スライド機構10をフロア2に設けるので、該機構10を容易に前後に大型化することができる。したがって、シートクッション40の前後移動範囲を容易に拡大することができる。
また、前記ゲート状部材101及びボックス状部材102は、前後方向に平行に延設された一対のレール11,11,12,12の間に配置されているから、レール11,11,12,12の外側に配置されている場合よりも、ゲート状部材101及びボックス状部材102が目立ちにくくなる。したがって、車室内の美観を損なうのが防止される。
また、図7〜図12でわかるように、シートクッション40の前後移動範囲は、該クッション40が最前方位置にあるときの後部側と最後方位置にあるときの前部側とが平面視で重なるように設定されていると共に、フロア2側のボックス部材102は、この重なる範囲に位置するように設けられているから、該ボックス部材102がシートクッション40により上方から覆い隠されることとなる。したがって、車室内の美観を損なうのが防止される。また、歩行の邪魔になることもない。
そして、特に、本実施の形態においては、前記ゲート状部材101は、ヒンジ部材103を介して上端部を中心として前後に揺動可能に支持されていると共に、該ゲート状部材101と前記横ロック操作レバー81とはリンク部材104を介して連結されているので、シートクッション40を後方移動中に図13に示すようにゲート状部材101がボックス部材102に当接した後、さらに後方に移動させると、図14に示すよようにゲート状部材101が前方に揺動し、これに連動して横ロック操作レバー81がリンク部材104を介して支軸82を中心としてロック解除方向に揺動することとなる。なお、横ロック操作レバー81の時計回り方向の揺動は、前述のようにストッパ85により規制されるようになっており、その結果、ゲート状部材101の前方への揺動も所定位置で規制されることとなる。
すなわち、ゲート状部材101とボックス部材102との当接によりシートクッション40の後方への移動が規制されたときに、横ロック機構30によるロックが解除されることとなる(強制ロック解除手段)。したがって、横ロック操作レバー81を操作しなくても、速やかにクッション40を車幅方向に移動させることができる。そして、クッション40の外側端が車幅方向の所定範囲から外れた位置まで該クッション40を車幅方向に移動させると、ゲート状部材101とボックス部材102の前面部とが当接しなくなるので、後方に移動させることが可能となる。
その場合に、前記横ロック操作レバー81は、強制ロック解除されているときには、ゲート状部材101がボックス部材102の前面部に当接して前方に揺動していることにより、図14に示すロック解除位置(最上方位置)に保持されることとなる。したがって、横ロック解除状態であることを乗員が容易に認識することができる。
また、前記前後ロック操作レバー61の操作部61aは、前記横ロック操作レバー81の操作部81a近傍に配置されているから、前後ロック操作レバー61を操作して前後スライド中に前後移動が規制されたときに、横ロック操作レバー81の操作に容易に移行することができる。
一方、図10に示すようにゲート状部材101及びボックス部材102によりクッション40の後方への移動が規制された状態から、クッションが40が横方向に移動すると、ゲート状部材101とボックス部材102の前面部との当接が解除されることにより、ゲート状部材101がバネ部材87の付勢力により反時計回り方向に揺動し横ロック機構30が解除状態からロック状態に移行することとなる。したがって、ロック解除中に例えば車両の姿勢変化等が生じ、その影響でクッション40が横方向に移動し始めた場合でも、自動的にロック状態に移行することとなり、クッション40が横方向に大きく移動するのが防止されることとなる。
次に、第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態においては、前記ボックス部材が所定の条件においてフロア2面よりも下方に退避可能に構成されていると共に、シートクション及びシートバックが所定の領域にあるときに、該ボックス部材を自動的に下方に退避させる退避機構110が設けられている。以下、詳しく説明する。
すなわち、図15〜図17に示すように、フロア2には、ボックス部材112が配置される位置において、該ボックス部材112と平面視でほぼ同形状の略L字状の孔部が設けられると共に、該孔部には、ボックス部材112が嵌る箱状の受け部材113が取り付けられている。この受け部材113の底面とボックス部材113の下面との間には、ボックス部材113を上方に付勢するバネ部材114…114が設けられている。また、受け部材113の前壁及び左右の側壁には、上下に延びる溝部113a…113aが形成されていると共に、ボックス部材112の下部には該溝部113aに対応する位置において該溝部113aに係合する凸部112aが形成されている。受け部材113の溝部の上端位置は、ボックス部材112が最上方位置に移動したときに、ボックス部材112の上端部とゲート状部材111の下端部とが正面視及び側面視で所定量重なることとなる位置に設定されている。一方、溝部113aの下端位置は、ボックス部材112が最下方位置に移動したときに、その上面部がフロア面とほぼ同じ高さとなる位置に設定されている。
また、フロア2には、前記ボックス部材112よりも後方において、前後に長い孔部が設けられると共に、該孔部には、前後に長い受け部材115が取り付けられている。そして、この受け部材115の後部側には、側面視で台形状の部材116が嵌めこまれていると共に、この受け部材115の底面と台形状部材116の下面との間には、台形状部材116を上方に付勢するバネ部材117…117が設けられている。なお、このバネ部材117…117の付勢力は、前記ボックス部材112用のバネ部材114よりも小さくされている。また、受け部材115の左右の側壁には、上下に延びる溝部115aが形成されていると共に、台形状部材116の下部には該溝部115aに対応する位置において該溝部115aに係合する凸部116aが形成されている。受け部材115の溝部115aの上端位置は、台形状部材116が最上方位置に移動したときに、その上面部がフロア2面とほぼ同じ高さとなる位置に設定されている。
ボックス部材112と台形状部材116とは、端部を除き被覆されたケーブル部材118によって連結されている。このケーブル部材118の被覆は、受け部材113の壁部、フロア2下面、受け部材115等に固定されている。また、ケーブル部材118のボックス部材112側は、受け部材113の底壁部を上下に貫通し、芯線118aのみが上下方向に延びた状態でボックス部材112の下面に固着されている。一方、ケーブル部材118の台形状部材116側は、受け部材117の側壁部の上部を車幅方向に貫通し、貫通した後、下方に折曲し、芯線118aのみが上下方向に延びた状態で台形状部材116の上面側に固着されている。
また、横スライド機構30の後側のロアレール31の下面部には、前記受け部材115の上方において、上下に延び、下端部が受け部材115内に嵌るバー部材119が固着されている。このバー部材119の下端部には、前記台形状部材116の傾斜面とほぼ同じ角度の傾斜面が形成されている。
次に、この退避機構110によるボックス部材111の退避動作について説明する。なお、シートクッション40の外端が横方向の所定範囲内にないものとして説明する。
すなわち、シートクッション40が、図16に示すようにバー部材119が受け部材115の溝部の前部側に位置し、台形状部材116に当接しない前後位置にあるときには、次のようになる。ここで、ボックス部材112及び台形状部材116はそれぞれバネ部材114…114,117,117により上方に付勢されていることにより、ケーブル部材118の芯線118aを介して相互に相手側に引っ張られることとなるが、前述のようにボックス部材112を上方に付勢する付勢力の方が台形状部材116を上方に付勢する付勢力よりも大きいことから、ボックス部材112が最上方位置まで移動し、台形状部材116が最下方位置に移動することとなる。
一方、シートクッション40が図18に示すように後方に移動して、仮想線で示すように台形状部材116の傾斜面とバー部材119の傾斜面とが当接し始めると、バー部材119により台形状部材116がバネ部材117の付勢力に抗して下方へ徐々に押し下げられると共に、ケーブル部材118の芯線118aが台形状部材116側に引き寄せられることにより、ボックス部材116が徐々に下方に移動する。そして、シートクッション40がさらに後方に移動して、バー部材119の下端が台形状部材116の上面部に達したときに、台形状部材116が最下方位置に達すると共に、ボックス部材116も最下方位置に達することとなる。つまり、ボックス部材116がフロア面の下方に退避したこととなる。ここで、このようにボックス部材116がフロア面の下方に退避することとなるときのシートクッション40の前後位置は、少なくともシートクッション40の前端がボックス部材112の前端よりも後方となる前にボックス部材112が退避完了することとなる位置に設定されている。したがって、さらにシートクッション40を後方に移動させたときに、フロア2の上面から上方にボックス部材112が突出することがなく、乗員の移動の邪魔になることがなく、また着座しているときにも足を置く邪魔になることがない。また、このように、比較的簡単な構成で退避機構110を構成することができる。
なお、第2の実施の形態においては、退避機構110を機械式に構成したが、電気式に構成してもよい。この場合、例えば、例えばシートクッションの位置を検出する位置センサ(例えば磁気センサ)と、該位置センサで検出された位置に基づいて制御されるモータ等を設け、該モータによりボックス部材を上下させるようにしてもよい。
また、前記各実施の形態においては、リヤシート3に対して本発明を適用したが、例えば3列シートのセカンドシートに対しても適用可能である。
また、前記各実施の形態においては、前後スライドレールが、車両前後方向に延びているが、車両前後方向に対して若干傾斜しているものに対しても適用可能である。
また、前記各実施の形態においては、ボックス部材の前面は、車幅方向に延びているが、リヤホイールハウスのトリムの前面の傾斜(車幅方向内側ほど後方となっている)にあわせて傾斜させてもよい。こうすることにより、クッション側ゲート状部材とボックス部材との当接位置が横方向内方側ほど後方となるので、内方側においてはシートクッションをより後方にまでスライドさせることができるようになる。
また、前記各実施の形態においては、前後移動規制部材及び横移動規制部材は、一つのゲート状部材、ボックス部材によりそれぞれ一体として構成されているが、別体としてもよい。そして、特に、第2の実施の形態においては、少なくともフロア側のボックス部材を前後移動規制用及び横移動規制用として分離させ、独立して退避可能に構成してもよい。こうすることにより、シートクッションが最後方位置にあるときに、横方向の所定範囲側へ横方向に移動させても、横方向の所定範囲内への進入を規制することができるようになる。