以下、本発明の実施形態例を図面に従って詳細に説明する。
図1乃至図4は、車室内の様子を明らかにした自動車の概略断面図である。これらの図における符号Frは、自動車の前進方向を示し、この前進方向Frに直交する、図1乃至図4の紙面に対して垂直な方向が車幅方向である。図5にはこの車幅方向を符号Wで示してある。本明細書における「前」又は「後」なる文言は、自動車の前進方向Frを基準とした前後を意味する。
図1に示した自動車の車体1、すなわちそのメインボデーは、それ自体周知のように、車体1の上部を構成するルーフパネル2と、車室Rの床面を構成するフロアパネル3と、車室Rの車幅方向各側部を構成するサイドパネル4などの各種のパネルから構成されており、図1乃至図4には一方のサイドパネル4だけが示されている。かかる車体1の後部開口にはバックドア5が配置され、このバックドア5は図1に矢印A,Bで示す方向に回動開閉可能に車体1に支持されている。サイドパネル4の車室内側の面を、図示していない内装材によって覆い、ルーフパネル2の車室内側面を図示していない天井材で覆うこともできる。
図1に示すように、車室R内には、フロントシートより成る座席20と、このフロントシートよりも後方に配置されたリヤシートより成る座席11が配置され、この座席11は、図1に示すように、他の座席20と同じく、着座者の背部を支えるシートバック12と、着座者の尻部を支えるシートクッション13とを有している。前方の座席20のシートバック7は、図1に仮想線で示すように前方に傾動可能に支持されている。また、図1には座席11に着座した着座者Pを二点鎖線で簡略化して示してある。
図1は、シートクッション13とシートバック12が、共に着座者Pが着座できる使用位置を占めた状態を示しており、このときシートクッション13はほぼ水平な姿勢を保ち、シートバック12はシートクッション13に対してほぼ垂直に立ち上がった姿勢を占めている。図4は、シートバック12とシートクッション13が車室上部の非使用位置を占めたときの様子を示し、図2及び図3は、シートバック12とシートクッション13を非使用位置へ移動させるときの様子を示している。
シートバック12が図1に示した使用位置を占めたときに下部となるシートバック部分の車幅方向各側部には、その骨格を構成するシートバックフレーム(図1には示さず)に固定されたヒンジピン15がそれぞれ設けられている。またシートクッション13の車幅方向各側部には、その骨格を構成するクッションフレーム(図示せず)に固着されたブラケット14がそれぞれ設けられ、その各ブラケット14に形成された各孔が各ヒンジピン15にそれぞれ相対回転可能に嵌合し、これによって、シートクッション13がシートバック12に対して、ヒンジピン15のまわりに回動することが可能である。一方、図5にも示すように、シートバック12の車幅方向各側部の上部には、シートアーム17の一端部がそれぞれ固定され、その各シートアーム17の他端部は、枢ピン18を介して車体1の各サイドパネル4にそれぞれ回動可能に連結されている。
シートバック12が図1に示した使用位置にあるとき、このシートバック12は、着座用バックロック装置25のロック部材24と、これが係合したストライカ38によって、車体1に対してロックされている。図6は、着座用バックロック装置25と、これに関連する構成を示す拡大図である。図1及び図6の(a)に示すように、着座用バックロック装置25は、前述のロック部材24と、ポール33と、引張ばね35とを有し、ロック部材24は、ピン32を介してシートバック12の図示していないシートバックフレームに回動可能に支持されている。かかるロック部材24に隣接してポール33がピン34を介してシートバック12のシートバックフレームに回動可能に支持され、ロック部材24とポール33に、引張ばね35の各端部がそれぞれ係止されている。
シートバック12が図1に示した使用位置にあるとき、ポール33の爪部は、図6の(a)に示すように、ロック部材24に形成された切欠より成る係合部36に引張ばね35の作用により係合し、これによってロック部材24の回動が禁止されている。このとき、ロック部材24に形成された係合凹部37に、車体1のサイドパネル4に固着されたストライカ38が係合している。これによりシートバック12が車体1に対してロックされる。ストライカ38は、図7に示すように、その基端部31が車体1のサイドパネル4に固着されたほぼU字形に形成され、かかるストライカ38にロック部材24の係合凹部37が係合する。
一方、図1、図8及び図9に示すように、シートクッション13のクッションフレームにはガイドレール40が固着されている。このガイドレール40は、シートクッション13が使用位置を占めた状態で、そのシートクッション13の側部に沿ってほぼ前後方向に延びている。しかも、このガイドレール40は、図8及び図9に示したように、上壁部41と、底壁部42と、これらの壁部41,42に一体に固着された側壁部43と、ガイドレール40の前端側の端壁部44とから構成されている。このように、ガイドレール40は、ほぼU字形の横断面形状を有し、壁部41乃至44によって案内溝が区画されている。上壁部41と底壁部42と側壁部43とによって、車幅方向外方側が開口した案内溝が区画されているのである。その際、上壁部41の長さL1は、底壁部42の長さL2よりも長くなっていて、その上壁部41は底壁部42の後端よりも後方に突出している。
また、図1には示していない方のサイドパネルには、ガイド部材の一例であるガイドピン45が固着され、図9に示すように、このガイドピン45の先端部が、ガイドレール40の案内溝に摺動可能に嵌合し、シートクッション13が図1に示した使用位置を占めているとき、そのガイドピン45は、ガイドレール40の端壁部44の側に位置している。
図6の(a)に示したように、ロック部材24がストライカ38に係合し、しかもシートクッション13に固定されたガイドレール40の案内溝に、車体に固定されたガイドピン45が嵌合することにより、シートバック12とシートクッション13は、車体1に対してロックされ、図1に示したようにシートクッション13は着座者Pの尻部を支え、シートバック12は着座者Pの背部を支えることができる。
また、図1及び図5に示したように、シートバック12には把手アーム16が設けられている。図1に示したように、着座者Pが座席11に着座したとき、その着座者Pの背部を支えるシートバック12の面をシートバック支え面12Aと称し、これとは反対側の面をシートバック背面12Bと称することにすると、把手アーム16は、このシートバック背面12Bの側に設けられている。しかも、シートバック12が図1に示した使用位置にあるときに下部となる把手アーム16の基端部が、ピン19を介して、シートバック12のシートバックフレームに回動可能に連結されている。また、図5に示すように、把手アーム16の自由端21の側には、孔22が形成され、この孔22によって把手アーム16用の把手部が構成されている。座席11に着座者Pが着座して、その座席11を使用しているとき、把手アーム16は、通常、図1に破線で示したようにシートバック背面12Bに沿って位置する閉位置に収められている。
把手アーム16の基端部の側の先端と、前述のポール33には、図1乃至図5に示すように、シートバック内を延びるケーブル56の各端部がそれぞれ係止されている。
シートバック12とシートクッション13を車室上部の非使用位置に持ち上げるときは、先ずフロント側の座席20のシートバック7を図1に仮想線で示した位置に前倒させると共に、図1に示したバックドア5を矢印A方向に回動させて、これを図2に示した開位置にもたらす。次いで、図2に二点鎖線で簡略化して示した操作者OPが、バックドア5を開くことにより開放された車体後部の開口から手を入れ、把手アーム16のロックを解除した上で、把手アーム16の孔22(図5)に指を掛けて、該把手アーム16を、図1に矢印Gで示したように、その自由端21が後方に移動する向きに回動させ、その把手アーム16を図2に示した開位置に回動させる。このとき、その把手アーム16は、シートバック12に設けられた図示していないストッパに当って、開位置に保持される。
把手アーム16を上述のように開位置に回動させるとき、ケーブル56が、図6の(a)に矢印Tで示したように引かれるので、図6の(a)に矢印Jで示すように、ポール33がピン34のまわりに時計方向に回動し、ポール33の爪部がロック部材24の係合部36から外れる。このため、ロック部材24は、引張ばね35の作用によって、図6の(a)に矢印Lで示した方向にピン32のまわりに回動し、図6の(b)に示した位置を占める。これにより、ロック部材24の係合凹部37がストライカ38から外れ、ロック部材23によるシートバック13のロックが解除される。着座用バックロック装置25のロックが解除されるのである。
上述のようにシートバック12に対するロックを解除した後、操作者が把手アーム16を前方に向けて軽く押すと、シートバック12と車体1との間に設けられた図示していないガスダンパーステーの作用により、シートバック12は、図2及び図3に矢印Eで示したように、枢ピン18のまわりを、前方に向けて回動し、最終的に、車室Rの上部にてほぼ水平となった図4に示した非使用位置にもたらされる。
シートバック12が上述のように前方に向けて持ち上げられ、車室上部の非使用位置へと回動するとき、シートクッション13は、図2及び図3に示すように、シートバック12に対する角度αを漸次大きくしながら、シートバック12に対して回動し、最終的に図4に示したように、シートバック12の前方で、ほぼ水平となった非使用位置にもたらされる。次いで、図4に矢印Hで示すように、把手アーム16を閉位置に回動させると、図1に簡単に示した格納用クッションロック装置26のロック部材61がルーフパネル2に固着されたストライカ62に係合し、これによって、シートクッション13とシートバックがその非使用位置にロックされる。格納用クッションロック装置については後に詳しく説明する。
なお、本明細書におけるシートバック12に対するシートクッション13の角度αとは、図2及び図3から明らかなように、シートバック支え面12Aと、シートクッション13の着座者支え面13Aの側の角度を意味している。
上述のように、シートバック12とシートクッション13を車室Rの上部に格納すると、その下方に大きな空間を確保でき、この空間に図示していない荷物を効率よく収納することができる。その際、非使用位置を占めたシートバック12とシートクッション13は、上下に重なった状態で位置するのではなく、前後方向に水平となった状態で車室Rの上部に持ち上げられているので、図4に示したように、非使用位置を占めたシートバック12とシートクッション13の下方の車室内空間の高さhを従来よりも高くすることができる。このため、車室内の乗員に圧迫感を与えることはない。
シートバック12とシートクッション13を再び使用位置にもたらすには、把手アーム16を図4に矢印Hで示した方向と逆方向に回動させて、その把手アーム16を開位置にもたらす。これにより、図1に示した格納用クッションロック装置26のロック部材61がストライカ62から外れる。そこで、操作者が把手アーム16を掴んで、シートクッション13と共にシートバック12を枢ピン18のまわりに図4に矢印Fで示したように下方に向けて回動させれば、シートバック12とシートクッション13は、これらを使用位置から非使用位置にもたらしたときの動作と逆の動作を行いながら、図1に示した使用位置に移動する。シートクッション13が、シートバック12に対する角度αを漸次小さくしながら、その使用位置に戻されるのである。
シートバック12が図1に示した使用位置に至る直前の位置まで回動したとき、図6の(b)に示したロック部材24の当接部59が、図6の(a)に示したストライカ38に当り、これによって、ロック部材24が、引張ばね35の作用に抗して、図6の(b)に矢印WAで示した方向に回動する。このため、シートバック12が使用位置に至ると、ロック部材24は図6の(a)に示した位置に回動し、その係合凹部37がストライカ38に係合すると共に、ポール33が、引張ばね35の作用により、矢印Jと反対の方向に回動し、その爪部がロック部材24の係合部36に係合する。このようにして、シートバック12がその使用位置にロックされる。次いで、把手アーム16を図1に示した閉位置に回動させることによって、シートバック12とシートクッション13を使用位置にもたらす作業を終了する。
上述のように、本例の自動車においては、シートバック12とシートクッション13は、着座者Pが着座できる図1に示した使用位置と、シートクッション13とシートバック12が前後方向にほぼ水平となった状態で、車室Rの上部に持ち上げられた図4に示した非使用位置との間を作動可能に車体に支持されているのである。
しかも、シートバック12は、その使用位置と、前方に持ち上げられて、車室Rの上部にほぼ水平となった非使用位置との間を回動可能に、シートアーム17を介して、車体1に支持され、シートクッション13は、シートバック12がその使用位置から非使用位置へ回動するとき、シートバック12に対する角度αが漸次大きくなり、該シートバック12が非使用位置から使用位置へと回動するとき、シートバック12に対する角度αが漸次小さくなるように、該シートバック12にブラケット14とヒンジピン15を介して回動可能に連結され、該シートバック12とシートクッション13がその非使用位置を占めたとき、該シートクッション13がシートバック12よりも前方に位置するように構成されている。このように、シートクッション13は、シートバック12とシートアーム17を介して車体1に対して支持されているのである。
ところで、前述のように、本例の自動車は、シートクッション13に固定されたガイドレール40と、車体1に固定されたガイドピン45とを有しているが、以下にこれらの部材の具体的な作用を明らかにする。
先ず、シートバック12とシートクッション13が図1に示した使用位置にあるとき、前述のように、ガイドピン45は、ガイドレール40の案内溝に嵌合して、そのガイドレール40の端壁部44の側に位置している。次に、シートバック12が図2に矢印Eで示した方向に回動し始めると、車体1に固定されたガイドピン45は、ガイドレール40に対して、相対的にそのガイドレール40の後方に向けて摺動する。このため、図2及び図3に示すように、シートクッション13は、シートバック12に対する角度αが漸次大きくなるように、ガイドピン45によって案内され、遂には、そのガイドピン45が図3に示したように、ガイドレール40の案内溝から外れる。このとき、後述するストッパの作用により、シートバック12とシートクッション13はほぼ平坦となった状態に保持される。このためそのシートバック12とシートクッション13が図4に示した非使用位置に至ったとき、これらは前後方向にほぼ水平となった姿勢を保つことができる。
逆に、シートバック12をシートクッション13と共に図4に矢印Fで示したように下方に向けて回動させると、図3から判るように、ガイドピン45がガイドレール40の上壁部41に当接し、シートバック12をさらに下方に回動させると、ガイドピン45はガイドレール40の上壁部41を上方に向けて加圧しながら、ガイドレール40に対して、相対的にその案内溝を前方に向けて摺動する。このため、シートクッション13は、シートバック12に対する角度αを小さくしながら、シートバック12に対してヒンジピン15のまわりに回動する。シートクッション13は、角度αが小さくなるように、ガイドピン45により案内されるのである。このようにして、シートバック12とシートクッション13が図1に示した使用位置に戻されてロックされる。
上述のように、本例の自動車は、シートクッション13に固定されていて、案内溝を有するガイドレール40と、車体1に固定されたガイドピン45より成るガイド部材とを有し、シートバッ12が使用位置から非使用位置へ回動する際、該シートバック12がその使用位置と非使用位置との間の所定の位置に至るまで、ガイドピン45は、ガイドレール40の案内溝に嵌合して該ガイドレール40に対して相対的に摺動しながら、シートバック12とシートクッション13のなす角度αが漸次大きくなるように、該シートクッション13を案内し、シートバック12が非使用位置から使用位置へ回動する際には、該シートバック12がその非使用位置と使用位置との間の所定の位置に至った後に、ガイドピン45は、ガイドレール40の案内溝に嵌合して該ガイドレール40に対して相対的に摺動しながら、シートバック12とシートクッション13のなす角度αが漸次小さくなるように、該シートクッション13を案内するように構成されている。その際、図3から明らかなように、シートバック13が、その使用位置から非使用位置へ回動する際に、該シートバック12がその使用位置と非使用位置との間の上述した所定の位置に至った直後、又は当該シートバック12が、その非使用位置から使用位置へ回動する際に、該シートバック12がその非使用位置と使用位置との間の上述した所定の位置に至った直後に、ガイドピン45は、ガイドレール40の底壁部42の後端よりも後方に突出した上壁部41の部分に当接する。
車幅方向他側の座席端部にも、ガイドレールと着座用バックロック装置が設けられ、これらと、この他側のサイドパネルに固設されたガイドピン及びストライカとが協働して、前述したところと同じ動作が行われる。
図10は、シートバック12の骨格を構成するシートバックフレーム46と、シートクッション13のクッションフレームに固定されたブラケット14を示す概略図である。図10に示し、かつ先に説明したように、ブラケット14は、シートバックフレーム46に固着されたヒンジピン15のまわりに回動可能に該ヒンジピン15に嵌合している。
図10の(a)は、シートバック12とシートクッション13が図1に示した使用位置にあるときのシートバックフレーム46とブラケット14の状態を示している。このとき、シートバックフレーム46に固着されたストッパ48は、ブラケット14から離間している。なお、他の図においては、ストッパ48の図示は省略してある。
前述のように、シートバック12とシートクッション13が、図1に示した使用位置から図3に示した位置に作動するまでの間に、シートバック12とシートクッション13とのなす角度αが大きくなり、図3に示した状態では、シートバック12とシートクッション13がほぼ平坦な状態となる。このとき、図10の(b)に示したように、ブラケット14がストッパ48に当り、シートクッション13とシートバック12とのなす角度αがそれ以上大きくなることが禁止される。このため、シートバック12とシートクッション13が図4に示した非使用位置に回動したとき、これらは前後方向にほぼ水平となった状態で位置することができる。このように、座席11には、シートクッション13とシートバック12がほぼ平坦となった状態よりも該シートクッション13とシートバック12のなす角度αが大きくなることを禁止するストッパ48が設けられているのである。
次に、先に簡単に説明したロック部材61を有する格納用クッションロック装置26と、これに関連する構成を説明する。
図1に示したように、ロック部材61は、シートクッション13の前部に設けられている。図11は、非使用位置に持ち上げられたシートクッション13を仮想線で表わして、ロック部材61と、これに関連する構成を明らかにした図である。このロック部材61は、シートクッション13の前部の側に形成された空所SAに配置され、シートクッション13に固定された基台63にピン64を介して矢印a,b方向に回動可能に支持されている。
また、ロック部材61と、図1に示した把手アーム16の基端側の先端には、シートクッション13とシートバック12の内部を延びるケーブル65の各端部が係止されている。さらに、ロック部材61とシートクッション13には、引張ばね66の各端部がそれぞれ係止されている。
把手アーム16が閉位置にあるとき、図11に示したロック部材61は、引張ばね66によって引かれて、図11に実線で示したロック位置に保持されている。これに対して、把手アーム16が開位置に回動すると、ロック部材61は、ケーブル65を介して引かれて、引張ばね66の作用に抗して、図11に矢印aで示した方向に回動し、破線で示したアンロック位置を占める。
従って、把手アーム16を開位置に回動させて、シートクッション13を図11に示した非使用位置にもたらし、次いで把手アーム16を閉位置に回動させると、それまで図11に破線で示したアンロック位置にあったロック部材61は、実線で示したロック位置に回動して、車体1のルーフパネル2に固定されたストライカ62に係合する。これによりシートクッション13がシートバック12と共に非使用位置にロックされる。
シートクッション13とシートバック12を使用位置にもたらすべく、把手アーム16を再び開位置に回動させると、ロック部材61は図11に破線で示したアンロック位置に回動し、そのロック部材61とストライカ62との係合が解除される。これにより、シートクッション13とシートバック12と共にその使用位置へと回動させることができる。ストライカ62は、図7に示したストライカ31と同様な形状を有している。
図12乃至図14は、自動車の車室内に配置された座席11の他の例を示す概略説明図である。ここに示した座席11の基本構成は、先に説明した自動車の座席11の基本構成と変わりはない。すなわち、図12乃至図14に示した座席11も、着座者の背部を支えるシートバック12と、その着座者の尻部を支えるシートクッション13とを有し、シートバック12に固定された一対のシートアーム17が枢ピン18を介して車体に回動可能に支持されている。
また、ここに示した座席11においては、シートクッション13のクッションフレームにもピン14Aが突設され、そのピン14Aと、シートバック12のシートバックフレームに突設されたヒンジピン15とが、ブラケット14に形成された各孔に相対回転可能に嵌合している。シートバック12とシートクッション13の車幅方向他側の端部も同じく構成されている。これにより、シートクッション13はシートバックに対して回動可能に連結される。
さらに、シートバック12には、着座用バックロック装置25の他に、格納用バックロック装置125が設けられ、シートクッション13には、図1に示したガイドレール40及び格納用クッションロック装置26の代わりに、着座兼格納用クッションロック装置126が設けられている。図12乃至図14に示した座席11が配置される自動車の車体には、図1に示したガイドピン45も設けられていない。
また、図12乃至図14に示した座席11のシートバック12には、図1に示した把手アーム16の代わりに、第1の把手アーム116が回動可能に配置され、シートクッション13には第2の把手アーム216が回動可能に配置されている。第1の把手アーム116は、図示していないケーブルを介して、着座用バックロック25と、着座兼格納用クッションロック装置126に連結され、第2の把手アーム216も、図示していないケーブルを介して、格納用バックロック装置125と、着座兼格納用クッションロック装置126に連結されている。なお、図12乃至図14には、ロック装置25,125,126を簡略化して単なる四角のブロックで示してあるが、これらのロック装置25,125,126も、前述の着座用バックロック装置25と同様にロック部材とポールを有している。
図12は、シートバック12とシートクッション13が、着座者の着座できる使用位置を占めたときの様子を示している。このとき、シートクッション13に付設された着座兼格納用クッションロック装置126が、車体に固定された図示していないストライカに係合し、しかもシートバック12に付設された着座用バックロック装置25が、車体に固定された図示していないストライカに係合している。これにより、シートクッション13とシートバック12がその使用位置にロックされる。
ここで、図1乃至図4に示したバックドア(図12乃至図14には示さず)を開き、操作者がそのバックドア開口から手を入れて、図12に示した第1の把手アーム116を矢印方向に回動させる。これによって、着座用バックロック装置25によるロックと、着座兼格納用クッションロック装置126によるロックが解除される。シートバック12とシートクッション13の車体に対するロックが解除されるのである。このとき、ヒンジピン15のまわりに巻回された図示していないスパイラルスプリングより成るホップアップ用スプリングの作用によって、シートクッション13はヒンジピン15のまわりに矢印c方向に回動して、図12に二点鎖線で示すように、シートバック12のシートバック支え面12Aに重なった中間位置にもたらされる。
次いで、操作者が第1の把手116を掴んだまま、これを後方に軽く引くと、図示していないガスダンパーステーの作用で、シートバック12は、枢ピン18の中心軸線のまわりに回動して、シートクッション13と共に図12及び図13に矢印dで示す如く後方に持ち上げられ、遂には図14に示したように、車室上部にほぼ水平な状態に持ち上げられた非使用位置に回動する。このとき、格納用バックロック装置125が車体1のルーフパネル2に固定されたストライカ162に係合して、シートバック12がその非使用位置にロックされる。
最後に、シートクッション13を、ヒンジピン15のまわりに図14に矢印eで示した方向に回動させて図14に二点鎖線で示した非使用位置にもたらす。このとき、着座兼格納用クッションロック装置126が、ルーフ2に固着されたストライカ262に係合して、シートクッション13が非使用位置にロックされる。
上述のように、シートバック12とシートクッション13が車室上部の非使用位置に格納されるが、このときシートクッション13がシートバック12の後方に位置して、シートクッション13とシートバック12がほぼ水平な姿勢をとる。このため、このときの座席11の全厚さが薄くなり、その下方に大きな荷物収納空間を確保できると共に、車室内の乗員に圧迫感を与えることはない。
シートバック12とシートクッション13を使用位置に戻すには、操作者がバックドア開口から手を入れて、図14に二点鎖線で示したシートクッション13に付設された第2の把手アーム216を矢印方向に回動させる。これにより、着座兼格納用クッションロック装置126のロックが解除されると共に、格納用バックロック装置125のロックが解除される。このため、シートクッション13は前述のホップアップ用スプリングの作用で、シートバック12に重なった図14に実線で示した中間位置に戻される。このとき、座席11の全体としては、前述のガスダンパーステーの作用によって下方に落下することはない。
次いで、互いに重なったシートクッション13とシートバック12を、図13に矢印dで示した方向と逆方向に回動させてシートバック12を図12に示した使用位置にもたらし、さらにシートクッション13を矢印cと反対の方向に回動させて使用位置にもたらす。このとき、シートバック12は着座用バックロック装置25により車体にロックされ、シートクッション13は着座兼格納用クッションロック装置126によって車体にロックされる。
シートバック12とシートクッション13の車幅方向他側にも、上述した着座用バックロック装置25と、格納用バックロック装置と、着座兼格納用クッションロック装置126と同じく構成された各ロック装置が設けられている。
上述のように、図12乃至図14に示した自動車においても、その座席11のシートバック12とシートクッション13は、着座者が着座できる使用位置と、そのシートバック12とシートクッション13が前後方向にほぼ水平となった状態で、車室上部に持ち上げられた非使用位置との間を作動可能に車体に支持されている。しかも、本例の自動車においては、シートバック12は、その使用位置と、後方に持ち上げられて、車室上部にほぼ水平となった非使用位置との間を回動可能に車体1に支持され、シートクッション13は、使用位置と、非使用位置を占めたシートバック12よりも後方の非使用位置との間を回動可能であって、着座者の背部を支えるシートバック支え面12Aに重なった状態の中間位置にも回動可能にシートバック12に連結されている。かかる構成により、シートクッション13とシートバック12を車室上部の非使用位置にもたらせば、その下方に大きな空間を確保できると共に、乗員に圧迫感を与える不具合を阻止することができる。