以下、シートバックとして構成されたシート部材を有する自動車の実施形態例を図面に従って詳細に説明する。
図1乃至図3は、車室内の様子を明らかにした自動車の概略断面図である。これらの図における符号Frは、自動車の前進方向を示し、この前進方向Frに直交する、図1乃至図3の紙面に対して垂直な方向が車幅方向である。図4にはこの車幅方向を符号Wで示してある。本明細書における「前」又は「後」なる文言は、自動車の前進方向Frを基準とした前後を意味する。
図1に示した自動車の車体1、すなわちそのメインボデーは、それ自体周知のように、車体1の上部を構成するルーフパネル2と、車室Rの床面を構成するフロアパネル3と、車室Rの車幅方向各側部を構成するサイドパネル4などの各種のパネルから構成されており、図1乃至図3には一方のサイドパネル4だけが示されている。ルーフパネル2は、互いに一体に固着されたインナパネル2Aとアウタパネル2Bより成る。かかる車体1の後部開口にはバックドア5が配置され、このバックドア5は矢印A,B方向に回動開閉可能に車体1に支持されている。さらに、車体1の各サイドパネル4に形成されたドア開口7には、車体1に回動開閉可能に支持されたサイドドア9が配置され、その後方の窓開口8には窓ガラス10が配置されている。また、サイドパネル4の車室内側の面を、図示していない内装材によって覆い、ルーフパネル2のインナパネル2Aの車室内側の面を図示していない天井材によって覆うこともできる。
図1に示すように、車室R内には、フロントシートより成る座席20と、このフロントシート20よりも後方に配置されたリヤシートより成る座席11が配置され、この座席11は、図1に示すように、他の座席20と同じく、着座者の背部を支えるシートバック12と、着座者の尻部を支えるシートクッション13とを有して、シートバック12の上部には、ヘッドレスト82が着座可能に取り付けられている。図1には座席11に着座した着座者Pを二点鎖線で簡略化して示してある。
本例の自動車においては、シートバック12が、着座者を支えることのできる使用位置と、車室上部の非使用位置との間を移動可能に車室内に配置されたシート部材を構成している。シートクッション13も、後述するように、使用位置と非使用位置との間を回動可能にシートバック12に連結されている。図1は、シートクッション13とシートバック12が共にその使用位置を占めた状態を示しており、このときシートクッション13はほぼ水平な姿勢を保ち、シートバック12はシートクッション13に対してほぼ垂直に立ち上がった姿勢を占めている。
シートバック12が使用位置を占めたときに下部となるシートバック部分の車幅方向各側部には、そのシートバックのフレーム(図示せず)に固定されたヒンジピン15がそれぞれ設けられており、その各ヒンジピン15は、図4に示すように、シートバック12の車幅方向各側部よりも外方に突出している。またシートクッション13の車幅方向各側部には、クッションフレーム(図示せず)に固着されたブラケット14がそれぞれ設けられ、その各ブラケット14に形成された各孔が各ヒンジピン15にそれぞれ相対回転可能に嵌合している。
シートクッション13とシートバック12が図1に示した使用位置にあるとき、これらは、後述する第1及び第2のロック部材23,24と、これらがそれぞれ係合した第1及び第2のストライカ31,38によって、後述するように車体1に対してロックされており、この状態でシートクッション13は着座者Pの尻部を支え、シートバック12は着座者Pの背部を支える。
図1乃至図4に示すように、本例の自動車は、車室R内に配置された一対のシートアーム17を有し、その各シートアーム17は、その一端側に固定された枢ピンを介して車体1の各サイドパネル4に回動可能に支持されている。しかも、その各シートアーム17には、後述するように、シートバック12が各シートアーム17に対して移動できるように組み付けられている。
シートクッション13に対するロックを解除すると、シートクッション13は、ヒンジピン15のまわりに設けられた第1の付勢手段の一例である図示していないスパイラルスプリングの作用によって、シートバック12のヒンジピン15のまわりに、図1に矢印Cで示した方向に回動し、図2に示したように、使用位置にあるシートバック12に重なった位置を占める。このときのシートクッション12の位置が、その非使用位置である。
さらに、シートバック12に対するロックを解除すると、シートバック12と車体1との間に設けられた第2の付勢手段の一例である図示していないガスダンパステーの作用によって、シートバック12は、シートクッション13と共に、図2に矢印Eで示した前方に向けて移動し、図3に示すように車室Rの上部に持ち上がった位置を占める。このときのシートバック12の位置が、その非使用位置である。このとき、シートクッション13はシートバック12の上に重なって位置し、そのシートバック12が、図1に示した第3のロック部材61と第3のストライカ62によって、車体1に対してロックされ、シートバック12がシートクッション13と共にその非使用位置に保持される。第3のロック部材61と第3のストライカ62については後に詳しく説明する。
上述のように、シートバック12がシートクッション13と共に使用位置から非使用位置へ移動するとき、図2から判るように、シートアーム17は、枢ピン18の中心軸線を回動中心CLとして、矢印d方向に回動し、この回動に伴ってシートバック12がシートクッション13と共に矢印E方向に移動する。このときの作用については、後に詳しく説明する。シートアーム17の回動中心CLの車体1に対する位置は不動である。
図3に示したように、座席11を車室Rの上部に格納するので、その座席11の下方に大きな空間を確保でき、この空間に荷物(図示せず)を効率よく収納することができる。上述したところと逆の操作によって、座席11を図1に示した使用位置にもたらして、その座席11を使用することができる。すなわち、上述の第3のロック部材61によるロックを解除した上で、シートバック12を図3に矢印Fで示した方向に回動させて図2に示した位置にもたらし、次いでシートクッション13をヒンジピン15のまわりに図2に矢印Dで示した方向に回動させて、図1に示した位置にもたらす。このようにして、シートバック12とシートクッション13は再び使用位置を占め、このときそのシートクッション13とシートバック12は、それぞれ第1及び第2のロック部材23,24と、第1及び第2のストライカ31,38によって車体1に対してロックされる。
上述のように、本例の自動車は、車室R内に配置された座席11を具備し、その座席11は、着座者Pの背部を支えるシートバック12と、該着座者Pの尻部を支えるシートクッション13とを有し、該シートクッション13は、着座者Pが着座できる使用位置と、シートバック12に重なった状態の非使用位置との間を回動可能にシートバック12に連結され、該シートバック12は、着座者Pの背部を支えることのできる使用位置と、該シートバック12にシートクッション13が重なった状態で、該シートクッション13と共に、車室Rの上部に持ち上がった状態の非使用位置との間を移動可能に車室R内に配置されている。該シートバック12が非使用位置にあるとき、シートクッション13はシートバック12の上に重なった状態で位置し、そのシートクッション13とシートバック12は、ほぼ水平姿勢を保つように構成されている。このように、シート部材の一例であるシートバック12が、着座者Pを支えることのできる使用位置と、車室上部の非使用位置との間を移動可能に車室R内に配置されているのである。
ところで、図1乃至図4に示したシートバック12を各シートアーム17に一体に固定しても、シートバック12を、シートアーム17と共に、その回動中心CLのまわりに回動させて、該シートバック12を、使用位置と非使用位置との間を回動させるように構成することができる。ところが、このようにシートバック12を回動させると、その下端部は、回動中心CLを中心とした円弧e(図1乃至図3)を描いて回動し、その回転半径r(図2)は大きなものとなる。このため、先にも説明したように、使用位置を占めたシートバック12の前方に他の座席20が位置していて、その座席20のシートバック71と、これに支持されたヘッドレスト81が、図1に二点鎖線で示したように後方側に傾斜していると、シートバック12をシートアーム17の回動中心CLのまわりに回動させたとき、そのシートバック12が、シートクッション13を介して、他の座席20のシートバック71に突き当たってしまう。このため、他の座席20のシートバック71を図1に実線で示したように前方に向けて回動させてから、図2に示したシートバック12をシートクッション13と共に、図3に示した非使用位置に回動させなければならない。このようにシートバック12を格納するために、前方の座席20のシートバック71までも作動させなければならないため、その操作が煩雑なものとならざるを得ない。
そこで、本例の自動車においては、図1乃至図4及び図13に示すように、シートアーム17は、前述の枢ピン18が突設された基部72のほかに、その基部72に一体化されていて、内部が中空に形成された中空部73を有している。その中空部73の下部は開口している。図13に示すように、中空部73の内部に摺動部材74が矢印f,g方向に摺動可能に嵌合し、当該摺動部材74は、シートバック12の図示していないフレームに固着されている。このように、シートアーム17は、内部が中空な中空部73を有し、シートバック12より成るシート部材のフレームには、中空部73に摺動可能に嵌合した摺動部材74が固定されているのである。
また、図13に示すように、摺動部材74には、ロッド75が一体に固着され、このロッド75は、中空部73に固着された第1のばね受け76を摺動可能に貫通して、その中空部73内を延びている。かかるロッド75の先端には、第2のばね受け77が固定され、第1及び第2のばね受け76,77の間には圧縮コイルばね78が配置されている。これにより、摺動部材74は、シートアーム17の回動中心CLに向けて矢印f方向に付勢される。
また、摺動部材74はシートバック12に固定され、しかも、その摺動部材74は、シートアーム17に対して摺動可能であるため、シート部材の一例であるシートバック12は、図1乃至図4及び図13に矢印f,gで示すように、シートアーム17の回動中心CLに対して接近し、又は離間する向きに移動可能にシートアーム17に組み付けられる。なお、図13はシートバック12が図1及び図2に示した使用位置にあるときのシートアーム17の状態を示し、図14はシートバック12が図3に示した非使用位置にあるときのシートアーム17の状態を示している。
図13に関連して上に説明した各構成は、図4の車幅方向右側に位置するシートアーム17に対しても採用されている。その構成と作用は、図13に示した構成と、その作用と変りはないため、右側のシートアーム17に関連する構成と、その作用の説明は省略する。
一方、図1乃至図3及び図15の(a)に示すように、車室Rの側部を区画する各サイドパネル4には、シートアーム17の回動中心CLよりも後方の点CL1を中心とした円弧状のガイド溝79が形成されている。図15の(b)に示すように、各サイドパネル4の車室内側に、例えば樹脂より成る内装材80が配置されているときは、その各内装材80にガイド溝79がそれぞれ形成される。かかる各ガイド溝79に、シートバック12に突設されたヒンジピン15が摺動可能に嵌合している。シートバック12に設けられたヒンジピン15以外のピンを各ガイド溝79に摺動可能に嵌合することもできる。また、上述した点CL1を、以降、円弧の中心と称することにする。
シートバック12が、図2に示した使用位置から、図3に示した非使用位置へ向けて移動するとき、シートバック12に突設された各ヒンジピン15は、各ガイド溝79中を摺動する。このとき、シートアーム17の回動中心CLと、円弧状に延びる各ガイド溝79の円弧の中心CL1の位置はずれているが、前述のように、シートバック12はシートアーム17に対して、その回動中心CLに近づき、又は離れる向きに移動できるようにシートアーム17に組み付けられているので、各ヒンジピン15は、各ガイド溝79中を支障なく摺動することができる。シートバック12が図3に示した非使用位置から図2に示した使用位置へ移動するときも同様に各ヒンジピン15は支障なく各ガイド溝79中を摺動する。
ここで、図2、図3、図13及び図14に示したように、シートアーム17の回動中心CLと、シートバック12より成るシート部材との間の距離をシート距離SDと称することにする。前述のように、各ガイド溝79の円弧の中心CL1は、シートアーム17の回動中心CLよりも後方に位置しているので、シートバック12がシートクッション13と共に図2に示した使用位置から、図3に示した非使用位置へ移動するとき、その移動に伴って、シート距離SDは漸次短くなり、シートバック12が図3に示した非使用位置に至ったとき、シート距離SDは最も短くなる。以下に、このときの作用を詳しく説明する。
シートバック12が図2に示した使用位置にあるとき、シートバック12はシートアーム17の回動中心CLから最も離れている。このため、図13に示すように、シートバック12に固着された摺動部材74にロッド75を介して一体に固定された第2のばね受け77は、第1のばね受け76に最も接近し、圧縮コイルばね78は最大に圧縮変形している。
シートバック12が図3に示した非使用位置に向けて移動すると、ヒンジピン15がガイド溝79に案内されながら、シートバック12はシートアーム17の回動中心CLに近づく向きに少しずつ移動する。このため、そのシートバック12に、摺動部材74とロッド75を介して一体に連結された第2のばね受け77は、漸次第1のばね受け76から離れ、圧縮コイルばね78は少しずつ長くなる。シートバック12が図3に示した非使用位置に至ると、そのシートバック12は、シートアーム17の回動中心CLに最も近づく。このときのシートアーム17と、これに内設された部材と、シートバック12の位置関係は図14に示すとおりである。図14から判るように、シートバック12と一体の第2のばね受け77は、第1のばね受け76から最も大きく離間し、圧縮コイルばね78の全長が最長となる。このようにして、シートバック12が非使用位置に向けて移動するとき、シート距離SDが漸次短くなっていくのである。かかる構成により、非使用位置に至ったシートバック12の前後方向の位置を、シートアーム17とシートバック12を一体に固定して、そのシートバック12を回動中心CLのまわりに回動させ、該シートバック12を非使用位置にもたらしたときのシートバック12の前後方向の位置よりも、後方にずらすことができる。
逆に、シートバック12が図3に示した非使用位置から図2に示した使用位置へ移動するときは、その移動に伴って、シート距離SDは漸次長くなり、シートバック12が使用位置に至ったとき、シート距離SDは最も長くなる。シートバック12が非使用位置から使用位置へ向けて移動するとき、各ヒンジピン15が各ガイド溝79に案内されて、シートバック12は漸次、シートアーム17の回動中心CLから離れるので、図14に示した第2のばね受け77は、少しずつ第1のばね受け76に近づき、圧縮コイルばね78の圧縮量が増大する。シートバック12が図2に示した使用位置に至ったとき、シートバック12はシートアーム17の回動中心CLから最も大きく離れ、第2のばね受け77は、図13に示したように第2のばね受け76に最も近づき、圧縮コイルばね78が最大に圧縮される。このようにしてシートバック12が使用位置に近づくに従って、シート距離SDが漸次長くなっていく。
ガイド溝79より成るガイド手段が、シートバック12を、上述のようにシートアーム17の回動中心CLに対して接近させ、又は離間させるように案内するのである。
上述した構成により、シートバック12が使用位置を占めたときに最も下方となるシートバック12の下端部は、シートバック12が使用位置と非使用位置との間を移動するとき、図1乃至図3に示したように、円弧eよりも後方の軌跡hを描いて回動する。このため、シートバック12が使用位置と非使用位置との間を移動するとき、前方の座席20のシートバック71が図1に二点鎖線で示したように後方に大きく傾いていても、シートバック12がその前方のシートバック71に干渉することはない。このため、シートバック12を、使用位置と非使用位置の間を移動させるに先立って、前方の座席20のシートバック71を前方側に回動させる必要はなく、楽にシートバック12の回動操作を行うことができる。
上述のように、本例の自動車には、シートバック12より成るシート部材が使用位置から非使用位置へ移動するときは、その移動に伴って、シート距離SDが漸次短くなり、シート部材が非使用位置から使用位置へ移動するときは、その移動に伴って、シート距離SDが漸次長くなるように、該シート部材を案内するガイド手段が設けられている。しかも本例のガイド手段は、車体1又は該車体1の車室R内側に配置された内装材80に形成されたガイド溝79より成り、該ガイド溝79にシート部材に突設されたピン15が摺動可能に嵌合し、該シート部材が使用位置と非使用位置との間を移動する際に、ピン15がガイド溝79中を摺動することにより、シート距離SDが短くなり、又は長くなるように該ガイド溝79が形成されている。
また、シートアーム17の中空部73の内部に収容された圧縮コイルばね78は、シートバック12より成るシート部材が使用位置から非使用位置へと移動するとき、該シート部材をシートアーム17の回動中心CLに向けて付勢する付勢手段としての用をなす。第1及び第2のばね受け76,77の間に圧装された圧縮コイルばね78は、摺動部材74をシートアーム17の回動中心CLの側に向けて付勢し、これによりその摺動部材74に一体に連結されたシートバック12を、シートアーム17の回動中心CLに向けて付勢するのである。かかる付勢手段を設けることによって、シートバック12を使用位置から非使用位置へ向けて持ち上げるとき、そのシートバック12をばね力を利用して、楽にシートアーム17の回動中心CLの側に移動させることができる。
ところで、本例の自動車においては、図2に示したようにシートバック12とシートクッション13を折り畳んで、これらを図3に示した車室上部に持ち上げ、逆にそのシートバック12とシートクッション13を再び図2に示した位置に降ろすときの操作性を高める目的で、そのシートバック12に把手アーム16が設けられている。図1に示したように、着座者Pが座席11に着座したとき、その着座者Pの背部を支えるシートバック12の面をシートバック支え面12Aと称し、これとは反対側の面をシートバック背面12Bと称することにすると、把手アーム16は、このシートバック背面12Bの側に設けられている。しかも、シートバック12が図1に示した使用位置にあるときに下部となる把手アーム16の基端部が、ピン19を介して、シートバック12のシートバックフレームに回動可能に連結されている。また、図4に示すように、把手アーム16の自由端21の側には、孔22が形成され、この孔22によって把手アーム16用の把手部が構成されている。
座席11に着座者Pが着座して、その座席11を使用しているとき、把手アーム16は、通常、図1に破線で示したようにシートバック背面12Bに沿って位置する格納位置に収められている。このとき、把手アーム16は、図示していないロック装置によって、その格納位置に保持されている。このロック装置としては、シートバック背面12Bに回動可能に支持されたロック爪を用いることができ、そのロック爪によって、格納位置にある把手アーム16を押えて、これをロックし、当該ロック爪を回動することによって、そのロック爪を把手アーム16から離して該把手アーム16に対するロックを解除することができる。
シートバック12とシートクッション13を前述のように車室上部に持ち上げるときは、先ず図1に示したバックドア5を矢印A方向に回動させて、これを図2に示した開位置にもたらす。次いで、図2に二点鎖線で簡略化して示した操作者が、バックドア5を開くことにより開放された車体後部の開口から手を入れ、上述のロック爪を回動し、把手アーム16のロックを解除した上で、把手アーム16の孔22(図4)により構成された把手部に指を掛けて、該把手アーム16を、図1に矢印Gで示したように、その自由端21が後方に移動する向きに回動させ、その把手アーム16を図2に示した使用位置に回動させる。このとき、その把手アーム16は、シートバック12に設けられた図示していないストッパに当って、使用位置に保持される。把手アーム16が格納位置と使用位置の間の中間位置まで回動したときの様子を図1に二点鎖線で示してある。また、図4は、把手アーム16がこの中間位置まで回動したときの様子を示している。
把手アーム16を使用位置にもたらして、第1及び第2のロック部材23,24によるシートクッション13とシートバック12に対するロックを後述するように解除すると共に、シートクッション13を図2に示した非使用位置に回動させた後、操作者は、その把手アーム16の把手部を掴んだまま、これを車体1の前方側に軽く押せば、前述のガスダンパステーの作用により、シートバック12は、シートクッション13と共に、矢印E方向に回動し、図3に示した非使用位置に持ち上げられる。引き続き、操作者は、把手アーム16を矢印H方向に回動させて、これを格納位置に収め、前述のロック爪を回動して把手アーム16を格納位置にロックする。逆の操作によって、シートバック12をシートクッション13と共に楽にその使用位置に回動させることができる。
上述のように、把手アーム16は、シート部材の一例であるシートバック12に沿って位置する格納位置と、自由端21がシートバック12から離間して位置する使用位置との間を回動可能にシート部材に支持されている。より具体的に示すと、把手アーム16は、シートバック背面12Bに沿って位置する格納位置と、その把手アーム16の自由端21がシートバック背面12Bから離間して位置する使用位置との間を回動できるように、シートバック12が使用位置にあるときに下部となる把手アーム16の基端部が、シートバック12に回動可能に連結されているのである。これにより、操作者は、使用位置にある把手アーム16に手を掛けて楽にシートクッション13とシートバック12を車室上部に回動させ、或いはそのシートクッション13とシートバック12を楽に下方に回動させることができる。また、把手アーム16はシートバック背面12Bの側に設けられているので、図4に示すように把手アーム16を大型に構成しても、着座者の邪魔となることはない。このように把手アーム16のサイズを大きくすることにより、図2及び図3に示したように、操作者は楽な姿勢を保ったまま、その把手アーム16に手を掛けて、シートバック12とシートクッション13を回動させることができる。
前述のように、本例の自動車においては、車体1の後部に開閉可能に支持されたバックドア5を開き、操作者が、開放された車体後部の開口から手を入れて、シートバック12を、使用位置と非使用位置の間を移動させるように構成されている。その際、シートバック12が非使用位置に格納されたとき、そのシートバック12は最もシートアーム17の回動中心CLの側の位置、すなわち車体1の後方側の位置を占める。このため、操作者は車体後部の開口から手を入れて楽にシートバック12の回動操作を行うことができる。
シートアーム17をシートバック12に不動に固定し、そのシートバック12をシートアーム17の回動中心CLのまわりに回動させるように構成したとすると、非使用位置に至ったシートバック12が、図3に示したシートバック12よりも前方に位置することになるため、操作者は、車体後部の開口から体を車室内側に大きく倒し込んでシートバック12の回動操作をしなければならず、その操作性が低下するが、本例の自動車においては、このような不具合を阻止することができるのである。
ところで、図1及び図4に示すように、シートクッション13とシートバック12の車幅方向側部には、前述の第1及び第2のロック部材23,24が設けられている。図5は第1のロック部材23とこれに関連する構成を示す拡大図であり、図6は第2のロック部材24と、これに関連する構成を示す拡大図である。
図1、図4及び図5の(a)に示すように、第1のロック部材23は、ピン25を介してシートクッション13の図示していないクッションフレームに回動可能に支持されている。かかる第1のロック部材23に隣接して第1のポール26がピン27を介してシートクッション13のクッションフレームに回動可能に支持され、第1のロック部材23と第1のポール26には、引張ばねより成る第1のばね手段28の各端部がそれぞれ係止されている。
シートクッション13が図1に示した使用位置にあるとき、第1のポール26の爪部は、図5の(a)に示すように、第1のロック部材23に形成された切欠より成る係合部29に第1のばね手段28の作用により係合し、これによって第1のロック部材23の回動が禁止されている。このとき、第1のロック部材23に形成された係合凹部30に、車体1のサイドパネル4に固着された第1のストライカ31が係合している。これにより、シートクッション13が車体1に対してロックされる。このときの第1のロック部材23の位置が、その第1のロック部材23のロック位置であり、このときの第1のポール26の位置が、該第1のポール26の係合位置である。第1のストライカ31は、図7に示すように、その基端部81Aが車体1のサイドパネル4に固着されたほぼU字形に形成され、かかる第1のストライカ31の先端部81Bに第1のロック部材23の係合凹部30が係合するのである。
一方、図1、図4及び図6の(a)に示すように、第2のロック部材24も、ピン32を介してシートバック12の図示していないフレームに回動可能に支持されている。かかる第2のロック部材24に隣接して第2のポール33がピン34を介してシートバック12のフレームに回動可能に支持され、第2のロック部材24と第2のポール33には、引張ばねより成る第2のばね手段35の各端部がそれぞれ係止されている。
シートバック12が図1に示した使用位置にあるとき、第2のポール33の爪部は、図6の(a)に示すように、第2のロック部材24に形成された切欠より成る係合部36に第2のばね手段35の作用により係合し、これにより第2のロック部材24の回転が禁止されている。このとき、第2のロック部材24に形成された係合凹部37に、車体1のサイドパネル4に固着された第2のストライカ38が係合している。これによりシートバック12が車体1に対してロックされる。このときの第2のロック部材24の位置が、そのロック位置であり、このときの第2のポール33の位置が、該第2のポール33の係合位置である。第2のストライカ38も、図7に示したように、第1のストライカ31と実質的に同一の構造を有し、その基端部81Aが車体1のサイドパネル4に固着され、その先端部81Bに第2のロック部材24の係合凹部37が係合する。
上述のように、本例の自動車には、シートクッション13が使用位置にあるときに、車体1に固定された第1のストライカ31に係合して、該シートクッション13を車体1に対してロックする第1のロック部材23と、シートバック12が使用位置にあるときに、車体1に固定された第2のストライカ38に係合して、該シートバック12を車体1に対してロックする第2のロック部材24とが設けられている。
ここで、図5の(a)に矢印Iで示したように、第1のポール26がピン27のまわりに時計方向に回動すると、第1のポール26の爪部が第1のロック部材23の係合部29から外れる。このため、第1のロック部材23は、第1のばね手段28の引張作用によって、図5の(a)に矢印Kで示した方向にピン25のまわりに回動し、図5の(b)に示した位置を占める。これにより、第1のロック部材23の係合凹部30が第1のストライカ31から外れ、第1のロック部材23によるシートクッション13のロックが解除される。このときの第1のロック部材23の位置が、該第1のロック部材23のロック解除位置であり、このときの第1のポール26の位置が、その第1のポール26の係合解除位置である。
同様に、図6の(a)に矢印Jで示すように、第2のポール33がピン34のまわりに時計方向に回動すると、第2のポール33の爪部が第2のロック部材24の係合部36から外れる。このため、第2のロック部材24は、第2のばね手段35の引張作用によって、図6の(a)に矢印Lで示した方向にピン32のまわりに回動し、図6の(b)に示した位置を占める。これにより、第2のロック部材24の係合凹部37が第2のストライカ38から外れ、第2のロック部材23によるシートバック13のロックが解除される。このときの第2のロック部材24の位置が、該第2のロック部材24のロック解除位置であり、このときの第2のポール33の位置が、その第2のポールの係合解除位置である。
上述のように、第1のロック部材23は、その係合凹部30が第1のストライカ31に係合してシートクッション13を車体1に対してロックするロック位置と、該係合凹部30が第1のストライカか31ら外れて、車体1に対するシートクッション13のロックを解除するロック解除位置との間を回動可能にシートクッション13に支持され、第2のロック部材24は、その係合凹部37が第2のストライカ38に係合してシートバック12を車体1に対してロックするロック位置と、該係合凹部37が第2のストライカ38から外れて車体1に対するシートバック12のロックを解除するロック解除位置との間を回動可能にシートバック12に支持されている。
ここで、シートクッション13とシートバック12が図1に示した使用位置にロックされた状態で、操作者が、前述のように、把手アーム16をその格納位置から使用位置へ向けて回動させるとき、その把手アーム16が図1に二点鎖線で示した中間位置に至ったとき、図5の(b)に示したように、第1のポール26がその係合解除位置に回動して、第1のロック部材23がロック解除位置に回動し、シートクッション13のロックが解除される。次いで、把手アーム16が図2に示した使用位置に回動したとき、図6の(b)に示したように、第2のポール33がその係合解除位置に回動して、第2のロック部材24がロック解除位置に回動し、シートバック12のロックが解除される。このように、把手アーム16の回動に連動して第1及び第2のロック部材23,24のロックを解除させるロック解除手段が座席11に設けられている。このロック解除手段の具体的構成については、後に詳しく説明する。把手アーム16が、図1に二点鎖線で示した中間位置と、図2に示した使用位置との間の位置に至ったときに、第2のロック部材24がロック解除位置に回動して、シートバックのロックが解除されるように構成することもできる。
上述のロック解除手段を設けることによって、第1のロック部材23によるロックの解除と、第2のロック部材24によるロックの解除に時間差を持たせ、先ずシートクッション13に対するロックを解除し、次いでシートバック12に対するロックを解除することができる。このため、把手アーム16を使用位置へ向けて回動させるとき、先ず、シートクッション13を前述のスパイラルスプリングの作用により図2に示したシートバック12に重なった非使用位置に回動させ、次いで、シートバック12を前述のガスダンパステーの作用により図2に矢印Eで示した方向に回動させて、図3に示した非使用位置にもたらすことができる。シートクッション13とシートバック12を正しく折り畳みながら、シートバック12を車室上部の非使用位置に回動させることができるのである。
上述のように、本例の自動車においては、シートバック12が、第2のロック部材24によって、その使用位置にロックされ、かつシートクッション13が、第1のロック部材23によって、その使用位置にロックされた状態で、把手アーム16が格納位置から使用位置に向けて回動したとき、その回動に伴って、先ず第1のロック部材23によるロックが解除され、次いで第2のロック部材24によるロックが解除されるように、把手アーム16の回動と連動して、第1及び第2のロック部材23,24のロックを解除させるロック解除手段が座席11に設けられているのである。
次に、上述のロック解除手段の具体的構成を明らかにする。このロック解除手段は、前述の第1及び第2のポール26,33と第1及び第2のばね手段28,35を含んでいる。すなわち、ロック解除手段は、第1のロック部材23の係合部29に係合して該第1のロック部材23をそのロック位置に保持する係合位置と該第1のロック部材23の係合部29から外れて該第1のロック部材23がロック解除位置に回動することを許容する係合解除位置との間を回動可能にシートクッション13に支持された第1のポール26と、第2のロック部材24の係合部36に係合して該第2のロック部材24をそのロック位置に保持する係合位置と該第2のロック部材24の係合部36から外れて該第2のロック部材24がロック解除位置に回動することを許容する係合解除位置との間を回動可能にシートバック12に支持された第2のポール33と、第1のロック部材23をそのロック解除位置へ向けて回動付勢すると共に、該第1のロック部材23と第1のポール26が互いに係合する向きに該第1のロック部材23と第1のポール26を回動付勢する第1のばね手段28と、第2のロック部材24をそのロック解除位置へ向けて回動付勢すると共に、該第2のロック部材24と第2のポール33が互いに係合する向きに該第2のロック部材24と第2のポール33を回動付勢する第2のばね手段35とを有しているのである。
さらに、このロック解除手段は、図4に簡略化して示したタイムラグ発生装置39を有し、この装置39はシートバック12の内部に配置されている。図8は、タイムラグ発生装置39を簡略化して示す説明図である。図8に示すように、タイムラグ発生装置39は、シートバック12のフレームに固定されたガイドフレーム40と、そのガイドフレーム40に案内されながら、図8の(a)に示したホームポジションと、図8の(b)に示した作動位置との間を、矢印M,N方向に摺動可能なスライダ41を有している。このスライダ40と、前述の把手アーム16には、第1の連結手段の一例である第1のワイヤ42の各端部が固定係止され、第1のワイヤ42は、図4に示すようにシートバック12の内部を延びている。
図1及び図8の(a)にそれぞれ破線と実線で示したように、把手アーム16が格納位置にあるとき、スライダ41は、そのホームポジションを占め、把手アーム16が図2及び図8の(b)に示した使用位置に回動すると、スライダ41は、第1のワイヤ42に引かれて、その作動位置に移動する。再び、把手アーム16が格納位置に回動すると、スライダ41は第1のワイヤ42に押されて、図8の(a)に示したホームポジションに戻る。
上述のように、本例のロック解除手段は、ホームポジションと作動位置との間を移動可能にガイドフレーム40を介してシートバック12に支持されたスライダ41と、把手アーム16が格納位置にあるときにはスライダ41がそのホームポジションを占め、把手アーム16が使用位置に回動したときは、該スライダ41がその作動位置を占めるように、該スライダ41と把手アーム16とを連結する第1の連結手段とを有しており、その第1の連結手段は、その各端部が把手アーム16とスライダ41にそれぞれ固定された第1のワイヤ42により構成されている。
一方、図8に示すように、スライダ41に形成された貫通孔43には、第2の連結手段の一例である第2のワイヤ44が摺動可能に挿入されている。この第2のワイヤ44は、図4に示すように、シートバック12とシートクッション13の内部を延びると共に、その途中でシートクッション13の外部に出て、その側部に沿って延び、その一端部が、図4及び図5に示したように第1のポール26に固定係止されている。また、この第2のワイヤ44の他端側は、上述のように、図8に示したスライダ41に形成された貫通孔43に摺動可能に挿入され、かつその他端部に、貫通孔43の径よりも大径な小ブロック45が固定されている。図8の(a)に示した例では、把手アーム16が格納位置にあり、従ってスライダ41がそのホームポジションを占めているとき、小ブロック45はスライダ41に当接しているか、又は該スライダ41に近接している。
ここで、図1に示したように、シートバック12が、第2のロック部材24によって、その使用位置にロックされ、しかもシートクッション13が、第1のロック部材23によって、その使用位置にロックされた状態で、前述のように操作者が、把手アーム16をその格納位置から回動させ始めると、スライダ41は、第1のワイヤ42によって引かれて、図8の(a)に矢印Mで示した方向に摺動し始める。このとき、スライダ41は、第2のワイヤ44の他端部に固定された小ブロック45に当って、その第2のワイヤ44を図8と図5の(a)に矢印Oで示した方向に引く。これにより、図5の(a)に示した第1のポール26が矢印Iで示した方向に回動し始める。把手アーム16が図1及び図8の(a)に二点鎖線で示したように、格納位置と使用位置の間の中間位置まで回動し、スライダ41がそのホームポジションと作動位置の間の位置に至ると、図5の(b)に示したように、第1のポール26が第1のロック部材23の係合部29から外れ、係合解除位置に回動する。これにより、第1のロック部材23がそのロック解除位置に回動し、シートクッション13に対するロックが解除される。よって、シートクッション13は、前述のスパイラルスプリングの作用によって図1に示した使用位置から、図2に示した非使用位置に回動する。このとき、第2のロック部材24によるシートバック12に対するロックは未だ解除されておらず、シートバック12は図2に示した使用位置にロックされて停止している。シートバック12に対するロックの解除動作については後述する。
上述のように、本例のロック解除手段は、シートバック12が、第2のロック部材24によって、その使用位置にロックされ、かつシートクッション13が、第1のロック部材23によって、その使用位置にロックされた状態で、把手アーム16がその格納位置から回動し始めて該格納位置と使用位置との間の位置に至り、これに伴ってスライダ41がそのホームポジションと作動位置の間の位置に移動したとき、第1のポール26が第1のロック部材23の係合部29から外れて係合解除位置に回動し、第1のばね手段28の作用により第1のロック部材23がロック解除位置に回動することを許容するように、スライダ41と第1のポール26を連結する第2の連結手段を有している。しかも、この第2の連結手段は、一端部が第1のポール26に固定され、他端側がスライダ41に対して相対摺動可能に該スライダ41を貫通し、かつその他端部に小ブロック45が固定された第2のワイヤ44により構成されている。
また、本例のロック解除手段は、図4に簡略化して示すように、シートバック12の内部に設けられた複数の回動アーム(図4には示さず)を含む回動アーム装置46を有している。図9及び図10はこの回動アーム装置46を具体的に示す説明図である。図9及び図10に示すように、回動アーム装置46は、それぞれシートバック12のフレームに対してピン50,51を介して回動可能に支持された第1の回動アーム47と第2の回動アーム48を有している。第1の回動アーム47とシートバック12のフレームの側には、引張ばねより成る第3のばね手段49の各端部がそれぞれ係止されている。これによって、第1の回動アーム47は、図9及び図10における時計方向に回動付勢されるが、通常、図示していないストッパに当って、図9の(a)に示した初期位置に停止している。同じく、第2の回動アーム48とシートバック12のフレームの側には、引張ばねより成る第4のばね手段52の各端部が係止されている。その際、第2の回動アーム48が図9の(a)に示した初期位置にあるとき、第4のばね手段52はフリー状態にあり、第2の回動アーム48が第4のばね手段52により付勢されることはない。このようにして、第2の回動アーム48はその初期位置に保持される。
さらに、第1の回動アーム47には、図9の(a)に示すように、第3の連結手段の一例である第3のワイヤ53の一端部が固定係止され、その第3のワイヤ53は、図4に示すようにシートバック12の内部を延び、該第3のワイヤの他端側は、図8の(a)に示すように、スライダ41に形成された貫通孔54に摺動可能に嵌合し、その他端部に貫通孔54の径よりも大径な小ブロック55が固定されている。その際、図1に示したように、シートバック12が、第2のロック部材24によって、その使用位置にロックされ、かつシートクッション13が、第1のロック部材23によって、その使用位置にロックされていると共に、把手アーム16が格納位置を占めているとき、図8の(a)に示すように、第2のワイヤ44の他端部に固定された小ブロック45は、第3のワイヤ53の他端部に固定された小ブロック55よりも、ホームポジションを占めたスライダ41に近い位置を占めている。一方の小ブロック45と他方の小ブロック55の間に距離LMがあけられているのである。
また、図6に示すように、第2のポール33には、第4の連結手段の一例である第4のワイヤ56の一端部が固定係止され、この第4のワイヤ56の他端側は、図9の(a)に示すように、第2の回動アーム48に形成された貫通孔57に摺動可能に嵌合し、その他端部に貫通孔57の径よりも大径な小ブロック58が固定されている。第2のポール33が図6の(a)に示した係合位置にあり、かつ第2の回動アーム48が図9の(a)に示した初期位置にあるとき、小ブロック58はその第2の回動アーム48に当接するか、又は近接して位置している。
図1に示したように、シートバック12とシートクッション13がそれぞれ使用位置にあり、把手アーム16が格納位置を占めた状態で、操作者が把手アーム16をその格納位置から使用位置に向けて回動させ、これに伴ってスライダ41が、図8の(a)に示したホームポジションから図8の(b)に示した作動位置に向けて移動するとき、前述のように、スライダ41は、第2のワイヤ44の他端部に固定された小ブロック45に当って、先ずその第2のワイヤ44を矢印O方向に引き、これによって第1のポール26は第1のロック部材23の係合部29から外れ、第1のロック部材23が図5の(b)に示したロック解除位置に回動する。このように、把手アーム16を、図1及び図8の(a)に二点鎖線で示した格納位置と使用位置の間の中間位置まで回動させたとき、第1のロック部材23によるシートクッション13に対するロックが解除されるのであるが、このようにスライダ41が第2のワイヤ44を引き始めた後に、そのスライダ41は、第3のワイヤ53の他端部に固定された小ブロック55に当って、第3のワイヤ53を図8の(a)と図9の(a)に矢印Pで示した方向に引く。これにより、それまで図9の(a)に示した初期位置を占めていた第1の回動アーム47が、第3のワイヤ53に引かれて、矢印Q方向に回動し始め、次いでこの第1の回動アーム47は、初期位置を占めていた第2の回動アーム48に当り、図9の(b)に示すように、その第2の回動アーム48を矢印R方向に回動させる。このようにして第1の回動アーム47は、第2の回動アーム48を回動させた後、図9の(c)に示すように第2の回動アーム48を乗り越えて、第2の回動アーム48に対する押圧作用を解除する。把手アーム16が使用位置まで回動し、これに伴ってスライダ41が図8の(b)に示した作動位置に至ったとき、第1の回動アーム47は、図9の(c)に示した終端位置に至り、ここで停止する。第1の回動アーム47による第2の回動アーム48への押圧作用が解除されると、第2の回動アーム48は、第4のばね手段52の作用によって、図9の(b)に矢印Rで示した方向と逆方向に回動して、図9の(c)に示した初期位置に回動して停止する。
上述のように、第2の回動アーム48が第1の回動アーム47により押圧されて、その初期位置から回動するとき、該第2の回動アーム48は、第4のワイヤ56の他端部に固定された小ブロック58を加圧して、第4のワイヤ56を図6の(a)と図9の(b)に矢印Tで示した方向に引く。これにより、図6の(a)に示した第2のポール33がピン34のまわりに矢印J方向に回動してその爪部が第2のロック部材24の係合部36から外れる。これにより、前述のように、第2のロック部材24が図6の(b)に示したロック解除位置に回動し、シートバック12に対するロックが解除される。このようにして、そのシートバック12を図3に示した非使用位置に回動させることができる。
上述のように、スライダ41をそのホームポジションから作動位置へと移動させることにより、第3のワイヤ53を引き、これによって第1の回動アーム47と第2の回動アーム48を、その各初期位置から回動させ、第2の回動アーム48に当った第4のワイヤ56の小ブロック58を加圧して、第4のワイヤ56を引き、これに伴って第2のポール33を第2のロック部材24の係合部36から外してシートバック13に対するロックを解除するのである。その際、ホームポジションから作動位置に移動するスライダ41は、先ず第2のワイヤ44を引き、次いで第3のワイヤ53を引き、これらのワイヤ44,53を時間差をもって引き始めるので、先ずシートクッション13のロックが解除され、次いでシートバック12のロックが解除される。このため、前述のように、先ずシートクッション13が支障なく図2に示した非使用位置に回動し、次いでシートバック12が図3に示した非使用位置に回動することができる。
また、第1の回動アーム47が第2の回動アーム48を乗り越えた後、第2の回動アーム48は第4のばね手段52によって、図9の(c)に示した初期位置に回動するが、このとき第2の回動アーム48が第4のワイヤ56を加圧することはない。このため、第2のロック部材24は、図6の(b)に示したロック解除位置を占め、第1のポール26は、第2のロック部材24に当接した状態で係合解除位置に保持されている。このように、第2の回動アーム48がその初期位置へ回動しても、第4のワイヤ56は作動せず、図9の(c)に示すように、初期位置に戻った第2の回動アーム48と、第4のワイヤ56に固定された小ブロック58は互いに大きく離間している。
上述のように、本例のロック解除手段は、初期位置と終端位置との間を回動可能にシートバック12に支持された第1の回動アーム47と、スライダ41がそのホームポジションからその作動位置に向けて移動するとき、第1の回動アーム47がその初期位置から終端位置へ回動するように、スライダ41と第1の回動アーム47を連結する第3の連結手段と、第1の回動アーム47がその初期位置に回動する向きに該第1の回動アーム47を回動付勢する第3のばね手段49と、回動可能にシートバック12に支持された第2の回動アーム48と、該第2の回動アーム48がその初期位置に回動する向きに該第2の回動アーム48を回動付勢する第4のばね手段52と、シートバック12が、第2のロック部材24によって、その使用位置にロックされた状態で、把手アーム16がその格納位置から回動し始め、これに伴って初期位置から終端位置へと回動し始めた第1の回動アーム47が、初期位置を占めていた第2の回動アーム48を押圧して、該第2の回動アーム48を回動させるとき、第2のポール33が第2のロック部材24の係合部36から外れて係合解除位置に回動し、第2のばね手段35の作用により第2のロック部材24がロック解除位置に回動することを許容するが、該第2のロック部材24がロック解除位置を占めた状態で、第4のばね手段52の作用により第2の回動アーム8がその初期位置へと回動しても、第2のポール33がその係合解除位置に留まるように、該第2の回動アーム48と第2のポール33を連結する第4の連結手段とを具備している。
しかも、このロック解除手段においては、第1の回動アーム47がその初期位置から終端位置へ回動するとき、該第1の回動アーム47は、第2の回動アーム48を押圧して該第2の回動アーム48を回動させた後、該第2の回動アーム48を乗り越えて、当該第2の回動アーム48への押圧を解除し、これに伴って第2の回動アーム48は第4のばね手段52の作用によってその初期位置に回動するように、第1及び第2の回動アーム47,48の位置が設定されている。
その上、このロック解除手段においては、第2の連結手段と第3の連結手段とスライダ41は、シートバック12が、第2のロック部材24によって、その使用位置にロックされ、かつシートクッション13が、第1のロック部材23によって、その使用位置にロックされた状態で、把手アーム16が、その格納位置からその使用位置へ向けて回動し始め、スライダ41がそのホームポジションから作動位置へと移動するとき、先ず第1のポール26が第1のロック部材23の係合部29から外れ、次いで第2のポール33が第2のロック部材24の係合部36から外れるように、第1のポールの回動開始タイミングと第1の回動アーム48の回動開始タイミングを規制するように構成されている。
さらに、第3の連結手段は、一端部が第1の回動アーム47に固定され、他端側がスライダ41に対して相対摺動可能に該スライダ41を貫通し、かつその他端部に小ブロック55が固定された第3のワイヤ53より成り、第4の連結手段は、一端部が第2のポール33に固定され、他端側が第2の回動アーム48に対して相対摺動可能に該第2の回動アーム48を貫通し、かつその他端部に小ブロック58が固定された第4のワイヤ56により構成されている。
ところで、シートバック12をシートクッション13と共に図3に示した非使用位置に回動させた後、操作者は把手アーム16を矢印H方向に回動させて、これを格納位置に収めるのであるが、このように把手アーム16を格納位置に回動させるのに伴って、スライダ41は、第1のワイヤ42に押圧されて、図8の(b)に示した作動位置から図8の(c)に示したホームポジションに戻される。このため、スライダ41による第3のワイヤ53への拘束作用が解除されるので、第1の回動アーム47は、第3のばね手段49の作用により、図9の(c)に矢印Uで示した方向に回動して、図10の(a)に示した初期位置に戻り、第3のワイヤ53が図8の(c)に示した初期の位置に戻される。このときも、第1の回動アーム47は、図9の(c)に示すように初期位置に停止していた第2の回動アーム48を押圧して、これを矢印V方向に回動させ、次いでその第2の回動アーム48を乗り越えて図10の(a)に示した初期位置に回動する。しかも、第1の回動アーム47が第2の回動アーム48を乗り越えて、第1の回動アーム47による第2の回動アーム48への押圧作用が解除されると、第2の回動アーム48は、第4のばね手段52の作用により、矢印Vと反対の方向に回動して図10の(a)に示した初期位置に戻される。このように第2の回動アーム48が回動するとき、該第2の回動アーム48は第4のワイヤ56に固定された小ブロック58に当ることはなく、しかも第2のロック部材24は図6の(b)に示したロック解除位置を占め、第2のポール33は第2のロック部材24に当接した状態で係合解除位置に保持されているので、第2の回動アーム48が上述の如く回動しても、その第2の回動アーム48は、第4のワイヤ56に対して摺動するだけで、第4のワイヤ56が作動することはない。
上述の如く、第1の回動アーム47がその終端位置から初期位置に回動するときも、該第1の回動アーム47は、第2の回動アーム48を押圧して該第2の回動アーム48を回動させた後、該第2の回動アーム48を乗り越えてその初期位置に戻るように、第1及び第2の回動アームの位置が設定されているのである。
一方、図3に示した使用位置を占めていた把手アーム16を矢印H方向に回動させて、これを格納位置に収めるのに伴って、スライダ41が図8の(b)に示した作動位置から、図8の(c)に示したホームポジションに戻るとき、第1のロック部材23は図5の(b)に示したロック解除位置を占め、第1のポール26は第1のロック部材23に当接して、係合解除位置に保持されているので、スライダ41がそのホームポジションに戻るとき、そのスライダ41は第2のワイヤ44に対して摺動するだけで、第2のワイヤ44が作動することはない。このように、第2のワイヤ44より成る第2の連結手段は、第1のロック部材23がロック解除位置を占めた状態で、把手アーム16がその使用位置から格納位置へと回動し、これに伴ってスライダ41がそのホームポジションに戻っても、第1のポール26はその係合解除位置に留まるように、該スライダ41と第1のポール26を連結するのである。
ところで、シートバック12とシートクッション13を図3に示した車室上部の位置から下方に降ろすには、先ず、前述の図示していないロック爪を回動して、格納位置に収められている把手アーム16に対するロックを解除した後、把手アーム16を、矢印Hと反対の方向に回動させて、その把手アーム16を使用位置にもたらす。これにより、スライダ41は、再び図8の(d)に示した作動位置に移動する。これにより、それまで図8の(c)に示した位置にあった第3のワイヤ53が再び矢印P方向に引かれて図8の(d)に示した位置に移動する。このため、図10の(a)に示した初期位置にあった第1の回動アーム47は、再び矢印Q方向に回動して、第2の回動アーム48を矢印R方向に回動させた後、その第2の回動アーム48を乗り越えて、図10の(b)に示した終端位置に至り、ここで停止する。この場合も、第1の回動アーム47が第2の回動アーム48を乗り越えると、その第2の回動アーム48は第4のばね手段52の作用によって、図10の(b)に示した初期位置に戻る。このときも、第2の回動アーム48は、第4のワイヤ56に固定された小ブロック58を加圧することはなく、しかも第2のワイヤ44がスライダ41によって移動させられることはないので、第1及び第2のロック部材23,24は、共に図5及び図6の(b)に示したロック解除位置を占めたままである。
これに対し、把手アーム16をその格納位置から図3に示した使用位置に回動すると、シートバック12に設けられた第3のロック部材61(図1)が、後述するように車体に固定された第3のストライカ62から外れ、シートバック12に対するロックが解除される。
そこで、操作者は、使用位置を占めた把手アーム16を手で掴んで、シートクッション13と共にシートバック12を図3に矢印Fで示した方向に回動させ、そのシートバック12を図2に示した使用位置にもたらす。その際、シートバック12がその使用位置の直前の位置に至ったとき、図6の(b)に示した第2のロック部材24の当接部59が、図6の(a)に示した第2のストライカ38に当り、これによって、それまでロック解除位置を占めていた第2のロック部材24が、第2のばね手段35の作用に抗して、図6の(b)に矢印Wで示した方向に回動する。このため、シートバック12が使用位置に至ると、第2のロック部材24は図6の(a)に示したロック位置に回動し、その係合凹部37が第2のストライカ38に係合すると共に、第2のポール33が、第2のばね手段35の引張作用により、矢印Jと反対の方向に回動し、その爪部が第2のロック部材24の係合部36に係合する。第2のポール33がその係合位置に回動するのである。このようにして、シートバック12がその使用位置にロックされる。
上述のように、第2のロック部材24がそのロック解除位置からロック位置に回動し、これに伴って第2のポール33がその係合位置に回動するとき、第4のワイヤ56は、第2のポール33によって図6及び図10の(b)に矢印Xで示した方向に引かれるが、第2のポール33が係合解除位置を占めていたとき、第4のワイヤ56に固定された小ブロック58は、図10の(b)に示したように初期位置を占めた第2の回動アーム48から離間しているので、第4のワイヤ56が矢印X方向に引かれても、その第4のワイヤ56が第2の回動アーム48に対して摺動するだけで、第2の回動アーム48が回動することはない。第2のロック部材24がロック位置に回動し、第4のワイヤ56が矢印X方向に引かれることにより、これに固定された小ブロック58が図10の(c)に示すように第2の回動アーム48に当接するか、又は近接して位置するのである。このように、把手アーム16を使用位置にもたらしたまま、シートバック12を非使用位置から使用位置へと回動させるだけで、自動的にそのシートバック12を車体1に対してロックすることができる。
上述のように、シートバック12が非使用位置から使用位置に回動するとき、第2のロック部材24が第2のストライカ38に衝突して回動し、その係合凹部37が第2のストライカ38に係合し、かつ第2のばね手段35の作用により、第2のポール33が第2のロック部材24の係合部36に係合して、該シートバック12が車体1に対してロックされるのである。
次に、操作者は図2に示したように使用位置にある把手アーム16を車体の前方に向けて押圧して、矢印Gと反対の方向に回動させ、その把手アーム16を格納位置に収める。この動作に伴って、スライダ41は第1のワイヤ42に押圧されて図8の(d)に示した作動位置から図8の(c)に示したホームポジションに移動する。このとき、スライダ41は第2のワイヤ44に対して摺動するので、この第2のワイヤ44が作動することはなく、該ワイヤ44は、図8の(c)に示した位置に留まる。
これに対し、スライダ41が図8の(c)に示したホームポジションに戻るとき、図10の(c)に示した第1の回動アーム47は、第3のばね手段49の作用によって付勢され、矢印U方向に回動し、第2の回動アーム48を乗り越えて初期位置に戻る。これにより、第3のワイヤ53は、図8の(c)に示した初期位置に移動する。このときも、第2の回動アーム48は、第1の回動アーム47に押圧されて、矢印V方向に回動した後、第4のばね手段52の作用によって再びその初期位置に戻るが、このとき第2の回動アーム48が第4のワイヤ56に固定された小ブロック58を加圧することはなく、第4のワイヤ56は作動しない。
上述のように、把手アーム16を使用位置から格納位置に収めるとき、操作者はその把手アーム16を車体の前方に向けて押圧するのであるが、このときシートバック12は既に車体1に対してロックされているので、把手アーム16に加えた押圧力によって、シートバック12が図2に矢印Eで示した方向に回動することはない。このため、楽に把手アーム16をその格納位置に回動させることができる。
次いで、図2に示したシートクッション13を矢印D方向に回動させて、該シートクッション13を図1に示した使用位置にもたらすのであるが、シートクッション13がその使用位置の直前の位置に至ったとき、図5の(b)に示した第1のロック部材23の当接部60が、図5の(a)に示した第1のストライカ31に当り、これによって、それまでロック解除位置を占めていた第1のロック部材23が、第1のばね手段28の作用に抗して、矢印Y方向に回動する。このため、シートクッション13が使用位置に至ると、第1のロック部材23が図5の(a)に示したロック位置に回動して、その係合凹部30が第1のストライカ31に係合すると共に、第1のポール26が、第1のばね手段28の引張作用により、矢印Iと反対の方向に回動して、その爪部が第1のロック部材23の係合部29に係合する。第1のポール26がその係合位置に回動するのである。このようにして、シートクッション13がその使用位置にロックされる。
上述の如く、第1のポール26が係合位置に回動するとき、第2のワイヤ44は図5の(b)に矢印Zで示した方向に引かれるので、第1のロック部材23がロック位置に戻り、かつ第1のポール26が係合位置に回動したとき、第2のワイヤ44は、図8の(a)に示した初期位置に移動している。このようにして、全ての部材が、図1、図5の(a)、図6の(a)及び図8の(a)に示した位置に戻される。
上述のように、シートクッション13がその非使用位置から使用位置に回動するとき、第1のロック部材23が第1のストライカ31に衝突して回動し、その係合凹部30が第1のストライカ31に係合し、かつ第1のばね手段28の作用により第1のポール26が第1のロック部材23の係合部29に係合して、該シートクッション13が車体1に対してロックされるのである。
以上、車幅方向の一方の座席端部の側に設けられた第1及び第2のロック部材23,24と、これに関連する構成を説明したが、本例の自動車は、車幅方向の他の座席端部の側にも、第1及び第2のロック部材と、これに関連する構成要素を有している。これらは、前述の第1及び第2のロック部材23,24とこれに関連する構成と変りはないので、その説明を省略する。
また、シートクッション13とシートバック12の側部に配置された第1及び第2のロック部材23,24、第1及び第2のポール26,33並びにワイヤの一部は、図示していないカバーによって覆われていて、これらの部材に直に手を触れないようになっている。
次に、先に簡単に説明した第3のロック部材61と、これに関連する構成を説明する。
図1に示したように、第3のロック部材61は、シートバック12の内部に設けられている。図11は、非使用位置に持ち上げられたシートバック12とシートクッション13を仮想線で表わして、第3のロック部材61と、これに関連する構成を明らかにした図である。この第3のロック部材61は、シートバック12の基部の側に形成された空所SAに配置され、シートバック12に固定された基台63にピン64を介して矢印a,b方向に回動可能に支持されている。
一方、把手アーム16は、前述のピン19に固定され、そのピン19がシートバック12のシートバックフレームに回転可能に支持されている。図11においては、説明の便宜上、把手アーム16とピン19を離して示してある。このピン19に、第1のリンク65の基端部が固定され、その第1のリンク65の先端部には、連結ピン66を介して第2のリンク67の一端側が相対回動可能に連結されている。この第2のリンク67の他端側は、他の連結ピン68を介して第3のロック部材61に相対回動可能に連結されている。
把手アーム16が図11に実線で示したように格納位置に収められているとき、第1及び第2のリンク65,67と第3のロック部材61も図11に実線で示した位置を占め、このとき第3のロック部材61に形成された係合凹部69が、車体を構成するルーフパネル2のインナパネル2A(図1)に固定された第3のストライカ62に係合し、これによってシートバック12がシートクッション13と共に、その非使用位置にロックされる。第3のストライカ62の一部が、シートバック12の空所SAの開口OPを通して、その空所に入り込み、その第3のストライカ部分に第3のロック部材61が係合するのである。このときの第3のロック部材61の位置が、その第3のロック部材61のロック位置である。第3のストライカ62も、図7に示したように、第1及び第2のストライカ31,38と実質的に同一の形状を有し、その基端部81Aがルーフパネルのインナパネルに固着され、その先端部81Bに第3のロック部材61が係合する。
把手アーム16を、図11に破線で示したように、使用位置に回動すると、この把手アーム16の動きに伴ってピン19が回転するので、そのピン19に固定された第1のリンク65が矢印c方向に回動して破線で示した位置を占める。これに伴って、第2のリンク67も破線で示した位置へ移動し、第3のロック部材61が矢印a方向に回動する。これによって、第3のロック部材61の係合凹部69が、図11に破線で示すように第3のストライカ62から外れ、シートバック12に対するロックが解除される。このときの第3のロック部材61の位置が、該第3のロック部材61のロック解除位置である。このように、シートバック12に対するロックを解除することにより、操作者は、先に説明したように、使用位置を占めた把手アーム16を掴んで、シートバック12をシートクッション13と共に、図2に示した使用位置に回動させることができる。
再び、シートバック12をシートクッション13と共に図3及び図11に示した非使用位置にもたらし、把手アーム16を図11に実線で示した格納位置に収めると、第1及び第2のリンク65,67が実線で示した位置に移動し、これに伴って第3のロック部材62が矢印b方向に回動してロック位置に至り、その係合凹部69が第3のストライカ62に係合して、シートバック12が非使用位置にロックされる。
第1及び第2のリンク65,67と、連結ピン66,68は、把手アーム16の回動に連動して、第3のロック部材61を回動させる連動手段の一例を示している。
上述のように、本例の自動車は、シートバック12より成るシート部材がその非使用位置にあるとき、車体1に固定されたストライカ62に係合して、該シート部材を車体1に対してロックするロック部材61を有し、該ロック部材61は、その係合凹部69がストライカ62に係合してシート部材をその非使用位置にロックするロック位置と、該係合凹部69がストライカ62から外れて、車体1に対するシート部材のロックを解除するロック解除位置との間を回動可能にシートバック12に支持され、把手アーム16がその使用位置にあるとき、ロック部材61はそのロック解除位置を占め、該把手アーム16がその格納位置に回動したとき、ロック部材61はそのロック位置を占めるように、把手アーム16の回動に連動して、ロック部材61を回動させる連動手段がシートバック12より成るシート部材に設けられている。
ところで、図2に示したように互いに折り畳んだシートバック12をシートクッション13と共に、図3に示した非使用位置に回動させるとき、前述のように、図示していないガスダンパステーの付勢力を利用する。その際、気温が低いときには、ガスダンパステーの内部の圧力が低下するため、シートバック12をシートクッション13と共に図3に示した非使用位置まで回動させきれずに、これらがその直前の位置で停止してしまうことがある。シートバック12をシートクッション13と共に専ら操作者の力だけでその非使用位置に持ち上げ、或いはガスダンパステー以外のばねの力を用いて、シートバック12を非使用位置に持ち上げるように構成したときも同様な事態が発生することがある。このような場合、非使用位置の直前の位置まで持ち上げられたシートバック12とシートクッション13を、操作者の人力だけで非使用位置まで持ち上げることは容易ではない。
そこで、本例の自動車においては、操作者が使用位置にある把手アーム16を掴んで、シートバック12をシートクッション13と共に非使用位置の直前の位置まで持ち上げた時、そのシートバック12とシートクッション13が停止してしまった場合、把手アーム16を格納位置に回動させるだけで、シートバック12がシートクッション13と共に自然にその非使用位置まで回動するように構成されている。その具体的構成は以下のとおりである。
図12の(a)は、使用位置を占めた把手アームを掴んで、シートバック12を非使用位置に持ち上げるとき、該シートバック12がその非使用位置の直前の位置に至って停止したときの様子を示している。この図には、把手アームは示されていないが、このとき把手アーム16は図3に示した使用位置を占めている。この状態で、操作者が把手アーム16を図3に矢印Hで示した方向に回動すると、図12の(b)に示すように、第3のストライカ61がわずかに矢印b方向に回動して、その係合凹部69の近傍の案内面70が第3のストライカ62に当接する。この状態で、さらに把手アームをその格納位置に向けて回動させると、第3のロック部材61は、さらに矢印b方向に回動するが、このとき案内面70は第3のストライカ62に摺接するので、シートバック12はシートクッション13と共にその非使用位置へ向けて回動し、第3のロック部材61の係合凹部69が図11に実線で示したように第3のストライカ62に係合する。このとき、シートバック12はシートクッション13と共にその非使用位置にもたらされる。このように、把手アーム16をその使用位置から格納位置に回動させるだけで、非使用位置の直前の位置で停止したシートバック12をその非使用位置に持ち上げることができ、容易にシートバック12を非使用位置に回動させることができる。
上述のように、本例の自動車においては、把手アーム16を使用位置にもたらした状態で、シートバック12より成るシート部材をその使用位置から非使用位置へ向けて回動させ、該シート部材が非使用位置の直前の位置まで回動して停止した際、把手アーム16をその使用位置から格納位置へ向けて回動させてロック部材61をロック解除位置からロック位置へ向けて回動させたとき、ストライカ62に摺接しながらロック部材61の係合凹部69をストライカ62に係合させる案内面70がロック部材61に形成されているのである。
図11には1つの第3のロック部材61を示したが、車幅方向に互いに間隔をあけて複数の第3のロック部材を設け、その各ロック部材を、把手アーム16の回動に連動して上述の如く作動させるように構成すれば、非使用位置を占めたシートバック12をより安定した状態でロックすることができる。
以上、車室上部の非使用位置に持ち上げられて、その非使用位置にロックされるシート部材が、着座者の背部を支えるシートバック12である例を示したが、そのシート部材が、着座者の尻部を支えるシートクッションであるときも、本発明を支障なく適用することができる。