以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明は繰り返さず省略する。
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態1の有機EL表示装置の断面図である。この有機EL表示装置はアクティブマトリックス駆動型であり、トップエミッション型の有機EL表示装置である。図1のように、有機EL表示装置には基板1上の画素領域41に、有機EL層に駆動電流を流すためのTFT30、及びTFT30の上にTFT30表面の凹凸を平坦化する平坦化膜15が形成されている。また平坦化膜15の上にはアノード電極16が形成され、平坦化膜15の一部に開けられた接続孔14でアノード電極16とTFT30のドレイン電極12とが電気的に接続されている。またアノード電極16上に開口部を有しアノード電極16の外周を覆うように分離膜17が平坦化膜15の上に形成され、その分離膜17の開口部には有機発光材料層(以下有機EL層)18がアノード電極16上に形成されている。有機EL層18を挟んでアノード電極16と反対側にはカソード電極19が形成されている。分離膜17およびカソード電極19の上部は、封止材21で密閉され、カソード電極19と封止材21との間の空間には不活性ガス20が封入されている。画素領域41と基板の外縁との間には表示領域外周部42があり、この部分には有機EL層の形成されないが下層に平坦化膜15、上層に分離膜17が積層された多層膜を有している。
本実施の形態1では平坦化膜15をアクリル樹脂として、分離膜17をアクリル樹脂よりも真空での水分の放出速度が大きいポリイミド樹脂を使用した。以上のように本実施の形態1の有機EL表示装置は、TFT30を有する基板1上に形成された平坦化膜15と、平坦化膜15上にTFT30と電気的に接続されたアノード電極16および有機EL層18を有する有機EL層部と、平坦化膜15上に有機EL層部の外周部を囲む分離膜17とを備え、分離膜17の材料は平坦化膜15の材料よりも真空中での水分の放出速度が大きい。
接続孔14でドレイン電極12と接続するアノード電極16は、平坦膜15側を反射金属膜16a、有機EL層18側を透明導電膜16bとする2層構造で、反射金属膜16aにはAl合金膜を用いた。またカソード電極19は透明導電膜からなり、有機EL層18の上から開口部内側側面を経て分離膜17の上面も覆うように形成されている。分離膜17の開口部は底面のアノード電極16側から上面方向に近づくにつれて開口面積が広くなるように形成されているため、開口部と有機EL層18の接する部分が鈍角となり、その部分でカソード電極19が断線することを防いでいる。また、アノード電極16側とカソード電極19とに挟まれた有機EL層18は、アノード電極16側から順にホール輸送層18a、発光層18b、電子輸送層18cが積層した構成となっている。
TFT30は、基板1上に窒化珪素膜2、酸化珪素膜3を順次積層した膜の上に、パターン加工されたポリシリコン膜7、その上を覆うゲート絶縁膜5、その上に形成されたゲート電極6、その上に形成された第1層間絶縁膜8を有している。ポリシリコン膜7のゲート絶縁膜5をはさんでゲート電極6の反対側に位置する領域はチャネル領域7aとなり、その一方側がソース領域7b、他方側がドレイン領域7cとなる。第1層間絶縁膜8にあけられた開口部を通じてソース領域7bはソース電極11と、ドレイン領域7cはドレイン電極12と接続している。第1層間絶縁膜8、ソース電極11、ドレイン電極12の上は第2層間絶縁膜13が覆っている。なお、第2層間絶縁膜13は平坦化膜15にあけられた接続孔14とおなじ位置に開口部が形成されている。なお、ソース電極11は他の回路や走査線に接続されるが図1には図示していない。上記のようにTFT30は平面の基板1上に、トランジスタ構造や電極が形成された部分と形成されない部分ができるため、上部に凹凸が生じることになる。
図2、図3はそれぞれ有機EL表示装置の表示領域最外部周辺を拡大した平面図である。有機EL表示装置は画素領域41がマトリックス上に配置された表示領域25と、表示領域25の外側にあり画素領域41のない表示領域外周部42とを有している。なお図1は表示領域25の最外周部に位置する画素の断面を示しており、図2、図3に記載の点線A―A‘の部分の断面図に相当する。表示領域においては図1の画素領域41の断面を有する構造が基板面に平行な方向に周期的に並んでいる。図2は画素領域41が縦横ともに揃ったマトリックスの配置になっている。図3は画素領域41が奇数行と偶数行で1画素の半分のピッチずれたマトリックスのデルタ配置になっている。本実施の形態1の有機EL表示装置は画素の配列が図2の縦横ともに揃った配置でも図3の奇数行と偶数行で1画素の半分のピッチずれたデルタ配置のどちらでも良い。
図4は、本実施の形態1の有機EL表示装置の構成を基板に垂直な方向から見た平面図である。基板1の上にデータライン37と電源ライン36が並行に周期的に並び、それらと垂直方向に選択ライン38が周期的に並んでいる。画素領域41にはそれら周期的に並ぶラインと接続されたTFT30、30b、保持容量35などを含む回路が形成される。スイッチ用TFT30bのソース/ドレイン電極の一方はデータライン37、ゲート電極は選択ライン38に接続され、ソース/ドレイン電極の他方は保持容量35およびTFT30のゲート電極に接続されている。また、電極の一方がTFT30bのソース/ドレイン電極に接続された保持容量35の他方の電極は、有機ELの発光を駆動する電流を調節する駆動用のTFT30のソース電極とともに電源ライン36に接続される。駆動用のTFT30のドレイン電極は接続孔14で、平坦化膜15を介してこれらの回路の上にあるアノード電極16に接続される。アノード電極16は、隣あう画素領域41間で相互に接続されず表示領域に島状に配列されている。アノード電極16の外周部は分離膜17が覆い、アノード電極16上の分離膜17の開口部40には、有機EL層18が形成され、さらに有機EL層18の上部及び分離膜17の上部はカソード電極19によって覆われている。分離膜17の開口部40には、アノード電極16、有機EL層18、カソード電極19が積層した有機EL部33となっている。カソード電極19は、表示領域にわたって繋がっており、接地電極に接続される。なお、図4では有機EL部33をダイオードの記号で示した。なお、図4には示していないが、データライン37の一方にはデータライン37に有機EL部33の発光強度を調節する信号を与える制御回路があり、また選択ライン38の一方には選択ライン38に発光させる画素を順次選択するための信号を与える走査回路があり、また電源ライン36の一方には、電源ライン36に有機EL部33が発光する際に必要な電流を流すための電源回路がある。
以上のように表面が凹凸のTFT30、30bがアノード電極16の下にあるため、平坦化膜15はこれらの凹凸を吸収し、アノード電極16はその表面が平坦化膜15の上に形成されることが望ましい。平滑膜の表面に凹凸が残った場合は、アノード電極や有機EL層に凹凸ができて、素子の寿命が低下するなどの問題が発生する。本実施の形態1では平坦化膜15は、アクリル樹脂を主成分とする材料の樹脂を塗布することで形成されたため、表面の平坦性に優れた平坦化膜15となった。
次に、以上の構成の有機EL表示装置の動作について簡単に説明する。図4において、選択ライン38の信号によって、スイッチ用TFT30bが通電状態になると、保持容量35にデータライン37から発光強度に応じた電流が流れ充電される。この電圧により駆動用TFT30のゲート電圧が調節され、駆動用TFT30のソース電極側に接続された電源ライン36からドレイン電極側に接続された有機EL部33に流れる電流が調節される。有機EL層18を上下方向から挟むカソード電極19とアノード電極16との間に電界を印加して有機EL層18に電流が流れると発光する。一般に発光強度は流れる電流量が多くなるほど大きくなる。スイッチ用TFT30bが遮断状態になっても保持容量35により駆動用TFT30のゲート電圧が維持されるので、有機EL部33は次に選択ライン38の信号でスイッチ用TFT30bが通電状態になるまでの期間は一定の発光強度が保たれる。以上のように、各画素の発光強度を調整した有機EL部がマトリックス状に配列されているので、2次元の表示が可能な有機EL表示装置として機能する。マトリックス状に並んだ画素を、赤、青、緑等の各色表示用の有機EL部とすることによりカラー表示が可能な有機EL表示装置とすることもできる。
図5は、本実施の形態1の有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図である。本実施の形態1の有機EL表示装置は、基板にTFT30を形成する工程、平坦化膜15を形成する工程、アノード電極16を形成する工程、分離膜17を形成する工程、有機EL層18を形成する工程、カソード電極19を形成する工程、封止材21で封止する工程が順次行われて製造される。
図5(a)は基板にTFT30を形成する工程の断面図である。基板にTFT30を形成する工程では、基板1上にCVD法などにより窒化珪素膜2、酸化珪素膜3、ポリシリコン膜7を順次形成する。ポリシリコン膜7には成膜時の不純物ガス導入や、成膜後のイオン注入などにより不純物を適量導入して導電性を付与する。ポリシリコン膜7はアモルファスシリコン膜を堆積後に、レーザアニールで結晶化したポリシリコン膜7でもよい。ポリシリコン膜7はドライエッチングなどの方法によりトランジスタのソース領域7b、チャネル領域7a、ドレイン領域7cの形状に加工する。これらの領域のポリシリコン膜7および酸化珪素膜3の上部に、酸化珪素からなるゲート絶縁膜5をCVD法などで形成し、その上にポリシリコン膜を形成する。このポリシリコン膜にも不純物を適量導入して導電性を付与しておく。少なくともゲート絶縁膜5をはさんでチャネル領域7aの反対側の領域にある膜を残すように、このポリシリコン膜をドライエッチングで加工することにより、ゲート電極6が形成される。つぎにゲート電極6とゲート絶縁膜5とを覆うように酸化珪素やホウ素、リンなどを添加した酸化珪素からなる第1層間絶縁膜8を成膜する。第1層間絶縁膜8はポリシリコン膜7のソース領域7b、ドレイン領域7cの部分をエッチングにより開口し、その開口部を通じてソース領域7b、ドレイン領域7cに達するソース電極11、ドレイン電極12を形成する。それらの電極、第1層間絶縁膜8を覆うように、窒化珪素などからなる第2層間絶縁膜13を形成する。第2層間絶縁膜13はドレイン電極12部分に開口部を有するようにエッチング加工する。この開口部はアノード電極16とドレイン電極12とが接続するための接続孔14となる。TFT30は以上のようにポリシリコン膜7、ゲート電極6ソース電極11、ドレイン電極12などの厚みを有するパターンが積層されるため、TFTの上の面には凹凸が生じる。
図5(b)は平坦化膜15を形成する工程の断面図である。平坦化膜15を形成する工程では、感光性のアクリル樹脂を塗布した後、接続孔14と重なる位置に開口部が形成されるように露光と現像とを行う。その後、アクリル樹脂を230℃で焼成する。アクリル樹脂は熱可塑性を有し、焼成時にアクリル樹脂の表面は平滑となり、TFT30の凹凸の表面形状の影響を低減することができる。
図5(c)はアノード電極16を形成する工程の断面図である。アノード電極16を形成する工程ではAl合金膜などの反射金属膜16a、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜16bをスパッタ法などで順次平坦化膜15上に成膜する。反射金属膜16a、透明導電膜16bは、接続孔14内にも付着して、ドレイン電極12と電気的に接続される。平坦化膜15の上の所定の領域に膜が残るように反射金属膜16a、透明導電膜16bは写真製版とウエットエッチング法により加工することで、ドレイン電極12と電気的に接続したアノード電極16が形成できる。
図5(d)は分離膜17を形成する工程の断面図である。分離膜17を形成する工程では、感光性のポリイミド樹脂を塗布した後、アノード電極16上に開口部を有しアノード電極16の外周および平坦化膜15を覆うような形状に露光と現像を行いパターン化する。その後、230℃で焼成してポリイミド樹脂を硬化させる。ポリイミド樹脂は画素と画素との間に配置され、アノード電極16とカソード電極19とを電気的に絶縁する。
図5(e)は有機EL層18を形成する工程の断面図である。有機EL層18を形成する工程では、まず、分離膜17の開口部にあるアノード電極16の表面の清浄度を高めるために、UV処理やキレート、オゾン水などによる洗浄処理を実施する。次いで、真空加熱脱水処理を200℃以下、例えば190℃の温度で実施した後、真空雰囲気を維持したまま有機EL層18を成膜する。その成膜時には、分離膜17の開口部にあわせた位置に開口部を有するメタルマスクを分離膜17の上部にかぶせた状態で成膜して、有機EL層18が分離膜17の開口部の内部のみに付着するようにする。分離膜17は、真空蒸着法で有機EL層18を形成する際に用いるメタルマスクと有機EL層18が形成されるアノード電極16の表面が接触しないようにするリブ材の役割も果たしている。有機EL層18は、ホール輸送層18a、発光層18bおよび電子輸送層18cを含む有機材料の層であり、電圧を印加することにより発光する性質を有する。ホール輸送層18aとして芳香族アミン誘導体は、発光層18bとしてはキナクリドン誘導体、電子輸送層18cとしてはキノリン系錯体、例えばアルミニウム錯体であるAlq3、などの既知の材料を用いることができる。
図5(f)はカソード電極19を形成する工程、および封止する工程の断面図である。カソード電極19を形成する工程では、有機EL層18を形成する工程が終了後に、真空雰囲気を維持したまま、透明導電膜からなるカソード電極19を、分離膜17の内部の有機EL層18の上部および分離膜17の上部に形成する。分離膜17の開口部はアノード電極16から離れるにつれて面積が大きくなるようにテーパ形状の断面を有し、分離膜17の開口部の側面が傾斜しているので、その側面にもカソード電極19が付着する。従って、有機EL層18の上部のカソード電極19と分離膜17の上のカソード電極19とは電気的に接続されている。
封止材21で封止する工程では、マトリックス上に配列した画素をカバーガラスなどからなる封止材21によって覆い、カソード電極19および分離膜17と封止材21との間に不活性ガスを導入する。その後に封止材21の周辺部を密着固定すれば、図1のような有機EL表示装置が得られる。
有機EL層18を形成する工程において真空加熱脱水処理を行うが、この処理が不十分となり平坦化膜15や分離膜17に水分が残ったままになると、その水分は後に封止される空間に水蒸気となって放出され、この水蒸気の影響で有機EL表示装置の寿命は著しく短くなることが知られている。従って、真空加熱脱水処理で平坦化膜15や分離膜17の水分を充分除去しておくことが、有機EL表示装置の信頼性を高め、寿命を長くするのに重要である。
本実施の形態1の分離膜17が平坦化膜15よりも真空中で水分の放出速度が大きい構成によれば、低温でも高速に脱水することが容易となり、信頼性が高く長寿命の有機EL表示装置を実現することができる。以下では、本実施の形態1における樹脂の吸水率および真空中での水分の放出速度の説明および、本実施の形態1の効果を確認した実験について説明する。
プラスチックの吸水率は日本工業規格のJISK7209において、一定寸法の試験片を液に浸漬して重量の増加比率で測定する方法が示されているが、質量の増加によって吸湿率を測定するためには被測定材料に充分な体積が必要である。しかしながら有機ELやLCDなどの表示装置に使用される有機樹脂材料は数ミクロンの薄膜での使用が前提であり、質量変化を得るほどの体積を得るためには大面積もしくは、積層により厚膜を得る必要がある。大面積サンプルでの質量測定や積層による物性変動などの諸問題があり、実際使用している状態での吸水率の測定は難しい。また、質量変化量では、昇温真空脱水による効果の検証も難しい。水分の放出の速さについても、同様に重量変化で規定することは難しい。
そこで本発明では樹脂の材料の真空中での水分の放出速度の大きさを相対的に比較するのに、昇温脱離分析法で得られる水分検出強度を比較する方法を用いた。
昇温脱離分析法で得られる水分検出強度は被測定試料のサイズや形状に依存するので以下のように、被測定の樹脂サンプル形状を統一した。被測定樹脂を基準となる基板(本発明ではシリコン基板)に形成する。基板上に形成する樹脂層の膜厚は、単一の樹脂層を形成する場合は膜厚を2ミクロンとして、樹脂を二層に積層する場合は各層の膜厚2ミクロンとして合計膜厚を4ミクロンとした。被測定樹脂サンプルのサイズは1平方センチメートルに統一した。基板は、ガラス基板でも可能であるが、シリコン基板に形成することが望ましい。なお、樹脂の膜厚、試料の大きさは変更可能であるが、比較すべき樹脂では統一する必要がある。
樹脂の材料の吸水率の相対的な比較を行うには、被測定樹脂1種につき後記の吸湿処理を行わない吸湿前のサンプルと吸湿処理を行った吸湿後のサンプルとの2サンプルを作製する。吸湿前のサンプルは、基板に樹脂を塗布、各樹脂の所定の温度で焼成後に乾燥窒素中にて保管したものである。吸湿後のサンプルは、吸湿させないサンプルと同じ手順で作製した後に、25℃の超純水に24時間浸漬させ、その後スピンドライヤーにて水切りを行う吸湿処理を経たものである。
昇温脱離分析装置の測定条件は、測定装置、昇温レート、保持時間は任意に変更しても良いが、比較する樹脂同士は同じ測定条件にしなければならない。また、測定上の誤差を低減するために吸湿前後の測定、比較すべき樹脂の測定は同日測定が望ましい。本実施の形態1で昇温脱離分析装置の測定条件は、測定開始真空度は3×10−9torr、昇温レートは20℃/分、到達温度は150℃、昇温脱離分析装置内で真空中に設置されてから昇温が始まるまでの昇温前期間は3分、昇温時間は2.5分、150℃での保持時間は10分と設定した。なお、測定装置には電子科学株式会社製のEMD−WA1000Sを使用した。
図6は上記の昇温脱離分析法で測定した樹脂の特性の例を示したグラフである。このうち図6(b)は測定時間tと測定温度Tmとの関係を示したグラフである。被測定試料の温度54は、昇温レートを一定にするための昇温前期間t1、設定温度150℃まで一定の昇温レートで昇温する昇温期間t2、150℃に到達後保持する150℃保持期間t3で設定されている。図6(a)は横軸を測定開始からの時間tとして縦軸を水分検出強度A(任意単位)としたグラフである。図6(a)において一点鎖線がシリコン基板の水分検出強度51で、実線が樹脂層を形成したシリコン基板の水分検出強度52を示している。シリコン基板の水分検出強度51は昇温前期間t1の間にも減少傾向を示し、昇温期間t2でさらに徐々に減少し、150℃の保持期間t3においても時間とともにわずかに減少する。一方、樹脂層を形成したシリコン基板の水分検出強度52は測定開始時の時点でシリコン基板の水分検出強度51より大きく、昇温前期間t1の間には減少傾向を示すが、昇温期間t2で増加し、保持期間t3に入ってすぐに最大となるがその後保持時間が長くなるにつれて減少する傾向を示している。シリコン基板の水分検出強度51は、シリコン基板や測定装置に基く水分検出強度と考えられるので、以下の樹脂の水分検出強度では樹脂層を形成したシリコン基板の水分検出強度52からシリコン基板の水分検出強度51を差し引いた差分を樹脂の水分検出強度Asとする。水分放出性に優れた樹脂の場合は、試料温度の低い状態から水分検出強度52が増大して、昇温時間t2の間に水分検出強度52がピークを経て減少を開始する。水分検出強度52は、脱離・放出される水分子量と比例しているので、水分検出強度52の大きさと検出される試料温度54で水分放出性、吸湿性の判断が可能となる。
以上の方法で、ポリイミドを主成分とする樹脂A(東レ株式会社製DL−1000)、アクリルを主成分とする樹脂B(JSR株式会社製PC−335)、アクリルを主成分とする樹脂C(JSR株式会社製PC−403)の3種類の樹脂の吸水率および真空中での水分の放出速度大きさを相対的に比較する実験をおこなった。
図7は上記の樹脂の吸湿前のサンプルと吸湿後のサンプルとで昇温脱離分析法による測定時間tと水分検出強度Asの関係を示したグラフである。図7(a)は樹脂Aの特性を示したグラフであり、点線は樹脂Aの吸湿前の水分検出強度60、実線は吸湿後の樹脂Aの吸湿後の水分検出強度61である。樹脂Aの水分検出強度は吸湿前、吸湿後とも昇温期間t2中に増加後にピークを経て減少するように変化するが、吸湿後は吸湿前に比べて、昇温前期間t1、昇温期間t2の間で大幅に大きくなっている。吸湿後の水分検出強度と吸湿前の水分検出強度との差は、吸湿処理によって樹脂に吸収された水分量にもとづいた差であり、この差の大きさで吸水率の大小を判断することができる。また、水分検出強度が昇温期間t2中にピークを有することから、そのピークの温度より低い温度で樹脂中から水分の脱離が活発で、ピークの温度にするまでに樹脂表面から真空中への脱離が減少するほど樹脂中の水分濃度が減少したことを示している。
また、図7(b)は樹脂Bの特性を示したグラフであり、点線は樹脂Bの吸湿前の水分検出強度70、実線は吸湿後の樹脂Bの吸湿後の水分検出強度71である。樹脂Bの水分検出強度は吸湿前、吸湿後とも昇温期間t2中は増加し、150℃保持期間t3中でピークを経たのち減少するように変化するが、吸湿後と吸湿前とは、昇温前期間t1から150℃保持期間t3までの間で大幅な変化はない。従って樹脂Bは樹脂Aに比べて吸水率が小さく、また高温にならないと水分の脱離が起こらないような水分の放出し難い樹脂である。
また、図7(c)は樹脂Cの特性を示したグラフであり、点線は樹脂Cの吸湿前の水分検出強度80、実線は吸湿後の樹脂Cの吸湿後の水分検出強度81である。樹脂Cの水分検出強度は吸湿前、吸湿後とも昇温期間t2中は増加し、150℃保持期間t3中でピークを経たのち減少するように変化するが、吸湿後と吸湿前とは、昇温前期間t1ではほとんど差がなく、昇温期間t2中に差が大きくなり、150℃保持期間t3の間も吸湿後のほうが吸湿前よりも大きい。従って樹脂Cは樹脂Aに比べて高温にならないと水分の脱離が起こらないような水分の放出し難い樹脂である。また樹脂Cは樹脂Bと比べて、温度と水分検出強度の変化の傾向は似ているが、吸水率がより大きい樹脂である。また、150℃保持期間t3では、いずれの樹脂の水分検出強度も減少する傾向を示すが、水分放出速度が大きい樹脂Aが樹脂Bおよび樹脂Cに比べて最も小さい値になっている。
図8は吸湿後の樹脂A、樹脂B、樹脂Cの測定時間tに対する水分検出強度Asを比較するグラフである。樹脂A、樹脂B、樹脂Cのそれぞれの水分検出強度Asは、昇温期間t2中または150℃保持期間t3中にピークを持つように変化している。これはピークの温度よりも高い温度の領域で水分の放出速度が低下したのではなく、水分の放出速度は温度の上昇とともに速くなるが、それぞれの樹脂中の水分の濃度が低下したために放出される水分が少なくなったためである。図8では樹脂Aの水分検出強度Asのピークは樹脂B、樹脂Cに比べて低い温度にある。また樹脂Aはピークの温度よりも低温側で樹脂Bや樹脂Cよりも水分検出強度が大きく、ピークの温度よりも高温側では樹脂Bや樹脂Cよりも水分検出強度が小さくなっている。従って、昇温脱離分析法において水分検出強度のピークが低い温度側にある樹脂Aはピークが高い温度側にある樹脂B、樹脂Cに比べて真空中での水分の放出速度が大きく、このため150℃保持期間t3中では樹脂B、樹脂Cに比べて水分濃度が低下していると考えられる。
次にこれらの樹脂を積層構造にした場合の水分放出性について説明する。試料は、樹脂A、樹脂B、樹脂C、から2つを選び、それらを上層/下層の2層のサンプルを作成した。上層、下層のそれぞれの膜厚を2ミクロンとし、合計膜厚を4ミクロンとした。図9は積層した樹脂の吸湿後のサンプルについて昇温脱離分析法による測定時間tと水分検出強度Asの関係を示したグラフである。図9(a)は、下層に樹脂Aを用いた場合の測定時間tに対する水分検出強度Asの関係を示すグラフである。図9(a)において実線は上層/下層が樹脂A/樹脂Aの水分検出強度62、一点鎖線は上層/下層が樹脂B/樹脂Aの水分検出強度63、点線は上層/下層が樹脂C/樹脂Aの上層水分検出強度64である。図9(b)は、下層に樹脂Bを用いた場合の測定時間tに対する水分検出強度Asの関係を示すグラフである。図9(b)において実線は上層/下層が樹脂A/樹脂Bの水分検出強度72、一点鎖線は上層/下層が樹脂B/樹脂Bの水分検出強度73、点線は上層/下層が樹脂C/樹脂Bの水分検出強度74である。図9(c)は、下層に樹脂Cを用いた場合の測定時間tに対する水分検出強度Asの関係を示すグラフである。実線は上層/下層が樹脂A/樹脂Cの水分検出強度82、一点鎖線は上層/下層が樹脂B/樹脂Cの水分検出強度83、点線は上層/下層が樹脂C/樹脂Cの水分検出強度である。
以上の図8のグラフから、いずれの組合せの積層膜でも、水分放出特性の温度変化の傾向が上層の水分放出特性に主に依存することがわかる。樹脂Bと樹脂Cとは水分検出強度の温度変化が似ているため、上層/下層が樹脂Bおよび樹脂Cのいずれかの組合せとした積層膜では、その温度変化は樹脂Bまたは樹脂Cと同様の傾向であり、その大きさは積層膜として膜厚が増加した分、増えている。また水分放出速度が大きい樹脂Aを下層として樹脂Bおよび樹脂Cのいずれかを上層とした積層膜では、その水分検出強度の温度変化および大きさは樹脂Bおよび樹脂Cのいずれかの単層膜とほぼ同じであった。一方、水分放出速度が大きい樹脂Aを上層とした積層膜では、水分検出強度の温度変化は樹脂Aのように、昇温期間t2中にピークがあるような変化を示し、150℃保持期間t3での水分検出強度の大きさは樹脂Bおよび樹脂Cのいずれかを上層とした積層膜と比べて小さくなっている。従って、樹脂Bまたは樹脂Cの上に、樹脂Bおよび樹脂Cよりも真空中での水分放出速度の大きい樹脂Aを積層すると、水分の放出が容易となることがわかった。
また、図10は樹脂Bまたは樹脂Cの単層膜と下層を樹脂Bまたは樹脂C、上層を樹脂Aとした2層膜との測定時間tに対する水分検出強度Asの関係を示すグラフである。なお、上述したように単層膜の膜厚は2ミクロン、2層膜の膜厚はそれぞれの2ミクロンの膜厚を合計した4ミクロンである。図10(a)は樹脂Bの単層膜の水分検出強度71と上層/下層が樹脂A/樹脂Bの水分検出強度72とを示したグラフであり、樹脂Bの単層膜に比べて上層/下層が樹脂A/樹脂Bの方が、水分検出強度のピークが低温にあり、真空中での水分の放出速度が大きいことがわかる。従ってピークより高温側の150℃保持期間t3では単層膜が樹脂Bよりも樹脂A/樹脂Bの方が水分濃度が減少し、水分検出強度は小さくなっている。また図10(b)は樹脂Cの単層膜の水分検出強度81と上層/下層が樹脂A/樹脂Cの水分検出強度82とを示したグラフであり、上記の樹脂Bの場合と同様に樹脂Cの上に樹脂Aを積層した方が、水分検出強度のピークが低温にあり、真空中での水分の放出速度が増大し、ピークより高温側の150℃保持期間t3で層中に含まれる水分濃度が減少していることがわかる。
以上の結果から、ある樹脂の上に、その樹脂層より昇温脱離分析法で低温側に水分検出強度のピークを有するような真空中での水分放出速度の大きい別の樹脂層を積層することにより、低温でも水分がぬけやすくできることがわかった。本発明はこのような現象を見出した結果なし得たものである。
次に樹脂の平坦性について説明する。図11は樹脂の平坦性を求めた試料の断面図である。ガラス基板1上に形成したSiO2などの厚膜をパターン加工して、少なくとも2本のライン状パターンを有する段差部92を形成する。段差部92は幅L=10ミクロンであるライン状のパターンが段差物間距離S=10ミクロンの間隔をおいて平行に並んだ形状で、段差部92の厚み、すなわち段差90は1ミクロンとした。初期値として段差90を触針式段差計で測定する。この試料上に、スピンコート法で樹脂AからDのそれぞれの樹脂93をそれぞれ平面上に2ミクロンになるように塗布して230℃で60分焼成した。その後平坦化された段差61を触針式段差計で測定し、段差部92のラインの上の樹脂93の表面の高さと、段差部92の2本の平行なラインの中間での樹脂93の表面の高さの差を段差91として測定した。段差90と段差91とから、平坦化率(%)=((段差90−段差91)/段差90)×100、という算式により平坦化率を求めた。平坦化率は数字が大きいほうがより平坦であることを示している。
樹脂92を樹脂A、樹脂B、樹脂C、樹脂Dで置き換えて平坦化率を測定した結果、樹脂Aで51.0%、樹脂Bで82.0%、樹脂Cで78.8%、樹脂Dで80.7%であった。従って、樹脂Aに比べて樹脂B、樹脂C、樹脂Dは平坦性の点で優れている。
以上の知見から、上層/下層が樹脂A/樹脂B、樹脂A/樹脂C、樹脂A/樹脂Dのようにすれば、下層は上層よりも平坦性に優れ、上層に下層よりも真空中で低温で水分放出速度が速い構成となる。本実施の形態1にあてはめれば、平坦化膜15は、アクリルを主成分とする樹脂(例えば樹脂Bや樹脂C)またはエポキシを主成分とする樹脂(例えば樹脂D)として、分離膜17をポリイミドを主成分とする樹脂(例えば樹脂A)とすることにより、平坦化膜15の表面の平坦性が優れることにより、アノード電極16の断線が生じにくく、また分離膜17の水分放出を促進する効果により、低温で速く脱水することができるようになる。
脱水処理を低温でも高速にする有機EL表示装置として、平坦化膜15を、水分放出速度の速いポリイミドを主成分とする樹脂やポリベンゾオキサゾールを主成分とする樹脂とする方法も考えられる。感光性のポリベンゾオキサゾールまたはポリイミドは、含有水分は少ないが、他の樹脂材料に比べ吸湿しやすい性質を有し、凹凸の平坦化度がアクリル樹脂に比べ劣る。そのため、平坦化度をポリイミドを主成分とする樹脂やポリベンゾオキサゾールを主成分とする樹脂とすると、凹凸の大きい部位で十分な平坦性が得られず有機EL層が断線しアノード電極とカソード電極が電気的に短絡、発光不良を生じやすくなる。
また、これらの材料は、平坦化膜上に形成するアノード電極をエッチングで形成した後レジスト除去する際に用いる有機アミンなどのレジスト剥離液に溶解してしまうため、剥離能力の弱いレジスト剥離液で処理する必要があり、アノード電極上でのレジスト残渣が懸念される。アノード電極上のレジスト残渣は有機EL層への電流供給を妨げ、部分的な暗発光部=ダークスポットや非発光画素の発生を生じる可能性がある。アクリル樹脂は有機アミンなどのレジスト剥離液の耐性もあるので、レジスト残渣が残りにくい。
以上のような実験結果と有機EL層の長寿命化に関する検討から見出した結果、本実施の形態1のように、TFTを有する基板上に形成された平坦化膜15と、平坦化膜15上にアノード電極16および有機EL層18を有する有機EL層部と、平坦化膜15上に有機EL層部の外周部を囲む分離膜17とを備えた有機EL表示装置において、分離膜17の材料は平坦化膜15の材料よりも真空中での水分の放出速度が低温で大きいことを特徴とする有機EL表示装置とした。これによって低温での脱水が速くなり、低温で真空脱水処理を行っても信頼性が高く、長寿命の有機EL表示装置を実現することができるという顕著な効果がある。
また平坦化膜15には分離膜17よりも塗布によって平坦性に優れた表面が得られる材料を用いたので、有機EL層部の断線の問題も起こりにくい。
また、アクリルを主成分とする樹脂Bまたは樹脂Cの代わりにエポキシを主成分とする樹脂を用いても良い。エポキシを主成分とする樹脂Dの水分放出速度について昇温脱離分析法を用いて評価すると、測定時間tに対する水分検出強度Asの関係は樹脂Bまたは樹脂Cと同様に、水分検出強度Asは昇温期間t2中は増加し、150℃保持期間t3中でピークを経たのち減少するように変化した。従って、樹脂Bまたは樹脂Cの替わりに樹脂Dを下層として上層を樹脂Aとしても真空中で低温での脱水を容易とすることができる。
以下では、本実施の形態1に係る実施例および比較例について説明する。
<実施例1>
スイッチ素子である薄膜トランジスタ100上に、第2層間絶縁膜13として窒化珪素膜をCVD法で成膜し、既存の写真製版技術とエッチング技術にて薄膜トランジスタ100のドレイン電極12と電気的に接続するための接続孔14を形成する。
その上部にTFT部の凹凸を平坦化、平滑化するために樹脂からなる平坦化膜15を形成する。平坦化膜15は感光性を有したアクリルを主体とする樹脂:樹脂Bを用いており、既存の写真製版技術により前記接続孔14を形成し、230℃で焼成を行う。
アノード電極16は、反射金属膜16aとしてAl合金膜と透明導電膜16bからなり、これらはスパッタ法にて連続して成膜され、既存の写真製版とエッチング技術により島状のアノード電極16を形成する。
次に、樹脂からなる分離膜17を前記アノード電極の外周部を覆うように形成する。分離膜17は感光性を有したポリイミドを主体とした樹脂:樹脂Aを用いており、既存の写真製版技術を用いて形成し、230℃で焼成した。分離膜17は、真空蒸着法で有機EL層18を形成する際に用いるメタルマスクと有機EL層18が形成されるアノード電極16の表面が接触しないようにするリブ材の役割も果たしている。
アノード電極16表面の清浄度を高めるために、UV処理やキレート、オゾン水などによる洗浄処理を実施する。
真空加熱脱水処理を約190℃で3時間実施した後、真空雰囲気を維持したまま有機EL層18を成膜する。有機EL層18は、ホール輸送層18a、発光層18bおよび電子輸送層18cを含む有機材料の層であり、電圧を印加することにより発光する性質を有する。
次に真空雰囲気を維持したまま、透明導電膜からなるカソード電極19を形成し、最後にカバーガラスもしくは保護層21を形成し、有機EL表示装置を得る。
以上の方法で作製した有機EL表示装置について以下のような劣化試験(以下、劣化試験R)を行った。劣化試験Rではまずを室温25℃、湿度50%、クリーン度:1000で維持されたクリーンルーム内で、有機EL表示装置のアノード電極とカソード電極間に5Vの電圧を印加させた場合の発光輝度を測定する。次いで炉内温度:60℃、湿度:45〜55度に設定された恒温炉で500時間保管する。保管後の有機EL表示装置を前記発光条件にて再度発光輝度を測定し保管前後の輝度低下(劣化)の有無を比較した。発光輝度の測定には、Radiant Imaging社製の照度・輝度測定システム:Prometoricを用い、撮像カメラは同社のProMetoric Color 1400を用いた。
以上の劣化試験Rで、実施例1の有機EL表示装置は輝度低下が保管前の10%以下と良好であった。
<実施例2>
平坦化膜15を感光性を有したアクリルを主体とする樹脂Bを用いて形成し、分離膜17は実施例1と同じともに感光性を有したポリイミドを主体とした樹脂Aを用いて作製した以外は上記の実施例1と同様にして有機EL表示装置を作製した。この有機EL表示装置について上記の劣化試験Rを行った結果、保管後の輝度低下は保管前の10%以下と良好であった。
<比較例1>
平坦化膜15と分離膜17ともに感光性を有するアクリルを主成分とする樹脂Bを用いて作製した以外は上記の実施例1と同様にして有機EL表示装置を作製した。この有機EL表示装置について上記の劣化試験Rを行った結果、保管後の輝度低下は保管前の25%以上50%以下であった。
<比較例2>
平坦化膜15と分離膜17ともに感光性を有するアクリルを主成分とする樹脂Cを用いて作製した以外は上記の実施例1と同様にして有機EL表示装置を作製した。この有機EL表示装置について上記の劣化試験Rを行った結果、保管後の輝度低下は保管前の25%以上50%以下であった。
<比較例3>
平坦化膜15と分離膜17ともに感光性を有するポリイミドを主成分とする樹脂Aを用いて作製した以外は上記の実施例1と同様にして有機EL表示装置を作製した。しかし、アノード電極16を既存の写真製版とエッチング技術により島状のアノード電極16を形成した後、レジスト除去処理で平坦化膜が溶解し、アノード電極16が剥離したため有機EL表示装置として表示させることができなかった。このため劣化試験Rは行えなかった。
(実施の形態2)
図12は本実施の形態2の有機EL表示装置の断面図である。本実施の形態2の有機EL表示装置は本実施の形態1の有機EL表示装置の構造を基本とするが、本実施の形態1の表示領域外周部42が下層を平坦化膜15、上層を分離膜17とする2層の樹脂層を有するのに対して、本実施の形態2の表示領域外周部42は樹脂層として平坦化膜15が無く分離膜17のみを有している点で異なっている。本実施の形態2は有機EL層部を有する表示領域を基板の一部に備えた有機EL表示装置である。平坦化膜15は表示領域25のみ存在し、従って平坦化膜15は側面を有するように基板の一部に形成されている。また、その表示領域25の外周は平坦化膜15と積層しない分離膜17によって囲まれている。分離膜17は平坦化膜15の上だけでなく平坦化膜15の側面も覆っている。また、分離膜17は平坦化膜15の側面から基板の外縁方向に向かって延在している。平坦化膜15はアクリルを主成分とする樹脂Bとして、分離膜17は樹脂Bよりも真空中での水分の放出速度が低温で大きいポリイミドを主成分とする樹脂Aを用いる。
本実施の形態2の有機EL表示装置の製造方法は、基本的に本実施の形態1の有機EL表示装置と同じであり、平坦化膜15を形成する工程において表示領域外周部42に平坦化膜15が付着しないようにパターン加工を行う点が異なっている。画素領域41は図1や図2と同様に、表示領域25にマトリックス状に配置され、基板1上で平坦化膜15が形成される領域この表示領域25であり、表示領域外周部42には平坦化膜15がなく分離膜17のみが形成される。
平坦化膜15を形成する工程では、平坦化膜15のパターン形成後に230℃で焼成するが、アクリルを主成分とする樹脂Aからなる平坦化膜15は熱可塑性を有するので、その側面は焼成時に変形して図12のように基板に近づくほど張り出したような斜面となる。このように平坦化膜15の側面は斜面となっているので、分離膜17を形成する工程では分離膜17を塗布した際に、平坦化膜15の側面は分離膜17によって覆われやすくなる。なお、平坦化膜15の側面は必ずしも傾斜面になっていなくても、分離膜17の厚さを平坦化膜15以上とすれば分離膜17によって平坦化膜15の側面を覆うことができる。また、分離膜17を形成する工程において分離膜17が平坦化膜15のパターンの外側まで連続するような形状に加工するので、表示領域25の外周が平坦化膜15と積層しない分離膜17で囲まれる。図には示していないが表示領域外周部42には基板1上に、有機EL素子を駆動・制御する信号が流れる走査線が有り、表示領域外周部42に形成した分離膜17によって、これらの走査線とカソード電極19と電気的に絶縁される。
以上のように、本実施の形態2の有機EL表示装置では、分離膜17は平坦化膜15の側面を覆うので、真空加熱脱水の際に平坦化膜15中の水分が側面からも分離膜17に水分が伝わり、平坦化膜15よりも真空中での水分の放出速度が低温で大きい分離膜17を経て水分が抜けるので真空加熱脱水を速めることが出来る。
また、分離膜17は平坦化膜15の側面から基板の外縁方向に向かって延在して、表示領域25の外周が平坦化膜15と積層しない分離膜17で囲まれるので、本実施の形態1のように平坦化膜15と積層した分離膜17で囲まれる構造と比較して、表示領域外周部42に平坦化膜15が無い分、平坦化膜15の含有水分が減少するので、有機EL層成膜直前の真空加熱脱水を速めることが出来る。
(実施の形態3)
図13は本実施の形態3の有機EL表示装置の断面図である。本実施の形態3の有機EL表示装置はボトムエミッション型の有機EL表示装置である。有機EL層部からの発光を基板1側に取り出して表示に用いるので、有機EL層部より基板1側はできるだけ発光をさえぎらないよう、TFT30は有機EL層部の直下からずらした位置に配置し、アノード電極16は透明電極のみで構成される点が、本実施の形態1の有機EL表示装置と異なる点である。また、カソード電極19には有機EL層部の発光を基板1側に反射するような金属を用いても良い。平坦化膜15も有機EL層部からの発光に対して透過率が高い材料からなることが好ましい。図13のように、平坦化膜15と分離膜17とが積層された構造を有するボトムエミッション型の有機EL表示装置においても、分離膜17の材料を平坦化膜15の材料よりも真空中での水分の放出速度が低温で大きくすると、低温で真空脱水処理を行っても信頼性が高く、長寿命の有機EL表示装置を実現することができる。
なお、以上の実施の形態1から3では、アクティブマトリックス型有機EL表示装置のスイッチ素子としてトップゲート型シングルゲートTFTを用いて説明したが、スイッチ機能を有する素子であればボトムゲート型TFTや薄膜ダイオード、有機トランジスタであっても良い。また、スイッチ素子を持たないパッシブマトリックス型の有機EL表示装置であっても良い。
また、実施の形態1および2では、アノード電極16は、反射金属膜16aと透明導電膜16bの2層構造で反射金属にAl合金膜を用いているが、例えば反射金属膜が銀および銀合金であっても良い。クロムなどの単層構造であっても良く、2層以上の多層膜であっても効果は変わらない。
また、以上の実施の形態1から3では、有機EL層18をホール輸送層18a、発光層18b、電子輸送層18cの積層構造で説明したが、発光層18bの単層、および発光層18bを含む多層膜であっても良い。また、有機EL素子の封止は、不活性ガス20と封止材21で行っているが例えば窒化珪素膜や樹脂などの積層構造で行っても良い。
1:基板、2:窒化珪素膜、3:酸化珪素膜、5:ゲート絶縁膜、6:ゲート電極、7:ポリシリコン膜、7a:チャネル領域、7b:ソース領域、7c:ドレイン領域、8:第1層間絶縁膜、11:ソース電極、12:ドレイン電極、13:第2層間絶縁膜、14:接続孔、15:平坦化膜、16:アノード電極、16a:反射金属膜、16b:透明導電膜、17:分離膜、18:有機EL層、18a:ホール輸送層、18b:発光層、18c:電子輸送層、19:カソード電極、20:不活性ガス、21:封止材、25:表示領域、30、30b:TFT、33:有機EL部、35:保持容量、36:電源ライン、37:データライン、38:選択ライン、40:分離膜の開口部、41:画素領域、42:表示領域外周部、43:突起部、44:平滑化膜側面、51:シリコンウェハの水分検出強度、52:樹脂の水分検出強度、53、吸湿後の樹脂水分検出強度、54:被測定物の温度、A:水分検出強度、As:検出強度の差分値、t:測定時間、t1:昇温前期間、t2:昇温期間、t3:150℃保持期間、Tm:被測定試料温度、51:シリコン基板の水分検出強度、52:樹脂層を形成したシリコン基板の水分検出強度、60:樹脂Aの吸湿前の水分検出強度、61:樹脂Aの吸湿後の水分検出強度、62:樹脂A/樹脂Aの水分検出強度、63:樹脂B/樹脂Aの水分検出強度、64:樹脂C/樹脂Aの水分検出強度、70:樹脂Bの吸湿前の水分検出強度、71:樹脂Bの吸湿後の水分検出強度、72:樹脂A/樹脂Bの水分検出強度、73:樹脂B/樹脂Bの水分検出強度、74:樹脂C/樹脂Bの水分検出強度、80:樹脂Cの吸湿前の水分検出強度、81:樹脂Cの吸湿後の水分検出強度、82:樹脂A/樹脂Cの水分検出強度、83:樹脂B/樹脂Cの水分検出強度、84:樹脂C/樹脂Cの水分検出強度、90:初期段差、91:平坦化された段差、92:段差部、93:樹脂、L:段差部幅、S:段差部間隔