JP5019515B2 - 定着装置及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
しかし、このような電子写真方式の画像形成装置における消費電力の約半分以上は、熱定着方式においてトナーを加熱することに消費されている。一方、近年における環境問題対策の観点からみれば、低消費電力(省エネルギー)の定着装置が望まれている。即ち、トナーを定着するためにトナーを加熱する温度を今までよりも極端に低下させること、又はトナーを加熱することを必要としない定着方法が望まれている。特に、トナーを全く加熱することなくトナーを記録媒体に定着させる非加熱定着方法が、低消費電力の点で理想的である。
しかしながら、上記特許文献1の湿式定着方法においては、水に不溶又は難溶な有機化合物が、水に分散混合された水中油滴型の定着剤を用いているため、多量の定着剤を未定着トナーに付与した場合には、転写紙などの記録媒体(被定着物)が、定着剤の水分を吸収し、記録媒体にシワやカールが発生する。これにより、画像形成装置に必要とされる安定かつ高速な記録媒体の搬送を著しく損なうこととなる。そこで、乾燥装置を用いて、定着剤に含まれる多量の水を蒸発させることにより、記録媒体に付与された定着剤から水分を除去しようとすると、熱定着方式を用いる画像形成装置の消費電力に匹敵する電力を必要とすることとなる。
しかし、この従来技術では、具体的な定着液塗布領域の変更手段として、長手方向の長さの異なる複数の塗布ローラを用いるか、または、塗布ローラへ定着液を供給する離接可能な長手方向の長さの異なる複数の供給ローラを用いる構成である。これらの技術では、記録媒体のサイズ分の複数のローラが必要となり、定着部の小型化が容易ではなくなり、また、記録媒体内においても、余白部への付与による定着液の無駄は防止できない。
しかし、カラー画像のごとく、画像により記録媒体上のトナー層の厚みが単色画像よりも厚くなる場合、単に、非画像部の定着液付与量を下げる構成では、トナー層全てを定着液で濡らすほどの付与量が確保できるとは限らず、定着不良を発生する恐れがある。逆に、画像部への定着液付与量を最も厚いトナー層の厚みに最適となるように合わせてしまうと、単色画像やハーフトーン画像のごとく、トナー層が薄い領域において、トナー量に対し過剰な定着液が付与されてしまい、トナー層にタック感が強くなり、印刷後の紙どうしのブロッキング(印刷紙を重ねたときの紙どうしの張り付き不具合)や画像のにじみを発生する可能性がある。
上記定着液をフォーム化するフォーム状定着液発生手段と、上記フォーム状定着液を上記記録媒体上の樹脂微粒子層に付与する塗布ローラと、上記塗布ローラに上記フォーム状定着液を供給するフォーム状定着液供給手段と、上記塗布ローラとの間にギャップを有して設けられ、上記塗布ローラ上のフォーム状定着液層の厚みを可変するブレードとを有し、上記記録媒体上の樹脂微粒子層の厚みに応じて、上記塗布ローラ上のフォーム状定着液層の厚みを上記ブレードにより可変して、該樹脂微粒子層の厚みが大きい程、上記ギャップを広くして該フォーム状定着液層の厚みを大きくすることである。
このように構成することにより、記録媒体上に形成された色材を含有する樹脂微粒子層の厚みに応じて、フォーム状定着液の塗布量を制御することができるため、厚い樹脂微粒子層や薄い樹脂微粒子層に適する定着液の付与が可能となり、定着不良やタック感の発生を抑制することができ、良好な定着を行うことが可能となる。
このような構成によれば、記録媒体の搬送方向に直角な方向にフォーム状定着液の付与量を細かく制御することが可能となり、定着の信頼性が向上する。
このような構成によれば、機械的に複雑な機構を設けることなく、フォーム状定着液の付与量を制御することが可能となり、定着装置の小型化が容易となる。
このような構成によれば、各フォーム状定着液供給手段を個別にON/OFFすることにより、分割して制御することができるので、小型化が容易であり、かつ、信頼性の高い定着を行うことが可能となる。
(請求項3に対応)
このような構成によれば、仕切り板を設けることにより、塗布ローラの長手方向の他のブロックへフォーム状定着液が漏れなくなり、塗布ローラ上におけるフォーム状定着液層の厚み制御の信頼性が更に向上する。
このような構成によれば、複数個に分割して配置されたブレードにより、複数の制御を個別に、かつ同時に行うことができるので、フォーム状定着液の正確な膜厚制御が可能となる。
このような構成によれば、複数個に分割された各制御ブロックごとに、記録媒体上の樹脂微粒子層を確実に定着することができる。
このような構成によれば、極めて安定したフォーム状定着液を生成することが可能であり、フォーム状定着液層の厚み制御を容易に行うことができる。
このような構成によれば、定着液のフォーム化に必要な優れた起泡性が得られ、本発明の定着装置におけるフォーム状定着液層の厚みを可変するブレードに最も適する定着液となる。
このような構成により、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。
このような構成により、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。
このような構成により、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。
その結果、本発明は、接触塗布において塗布部材へのオフセットを防止することにより、記録媒体上の樹脂微粒子を乱すことがなく微量塗布を達成することができるので、紙等の記録媒体がカールし難く、且つ、定着応答性に優れる定着が可能となる。更に、記録媒体上の色材を含有する樹脂微粒子層の厚みに応じてフォーム状定着液の付与量を可変することが可能となり、定着不良やタック感の発生がなく、良好な定着を行うことが可能となる。
本発明は、気泡を大量に含有したフォーム状(泡状)の液体は極めてかさ密度が低いこと、及び大量の気泡を含有することで流体としての性質である液面の表面張力や液体内部の流動性の影響が極めて小さくなること、に着目した発明である。
このため、塗布ローラ7上の定着液層の厚みがトナー層3と同等かそれ以下の薄い層である場合には、未定着のトナー粒子3aを塗布ローラ7の表面に引っ張り込むように表面張力が強く働き、また、上記内部流Bも塗布ローラ面に沿ってトナー粒子3aを運ぶように働くため、塗布ローラ7に未定着のトナー粒子3aが固着して、トナーオフセット4が生じてしまう。塗布ローラ7上の定着液層がトナー層3よりも2倍以上に厚くなるに従って、この液体の表面張力や内部流Bの影響はトナー層3へ及び難くなるため、塗布ローラ7上の定着液層が厚い場合は、トナーオフセット4が低減する。逆に、樹脂微粒子のオフセットが生じない均一塗布には、塗布ローラ7の表面に定着液層をある程度厚くする必要があることを意味している。
図2に示すごとく、定着液5をフォーム状とし、空気を十分に取り入れることで、かさ密度(定着液の重量をその体積で割った値)の低い定着液5fを使用すれば、塗布時は塗布ローラ7上の定着液層の厚みが厚くて体積が大きくても、かさ密度が低いために、紙等の記録媒体2に付着する定着液の実質の質量を小さくすることができ、トナーオフセット4が生じることなく記録媒体2に定着液を微量塗布することができ、本発明の目的を達成することが可能である。
このような構成とすることで、図4(a)に示すように、定着液5fの塗布時には体積が大きい状態で塗布しても、かさ密度が低く塗布重量が小さいため、その後に気泡が破泡してしまえば、図4(b)に示すように、実質的な塗布量を極めて少なくすることができる。なお、本発明における「フォーム状」とは、液体中に気泡が大量に分散し、液体が圧縮性を帯びた状態を意味する。
更に、フォーム状の定着液5fは、記録媒体上の樹脂微粒子層への塗布時にフォーム状となっていればよく、保存容器内でフォーム状である必要はない。保存容器中では気泡を含有しない液体で、容器から液体を供給する時点や、樹脂微粒子層へ塗布するまでの液体の供給経路でフォーム状にする手段を設ける構成が望ましい。これは、保存容器内では液体であって、容器から液体を取り出した後にフォーム状とする構成の方が、容器の小型化ができるという大きな利点を有するためである。
次に、本発明の定着装置について、図5を参照しながら説明する。図5は定着装置の概略図であり、フォーム状定着液を接触付与手段の塗布ローラにて付与する様子を示す。
この定着装置は、図5に示されているように、撹拌等により定着液を起泡させてフォーム化を行うフォーム状定着液発生手段11と、フォーム化された定着液を供給するチューブ等の供給手段12と、塗布ローラ17上でフォーム状定着液を均一にするための撹拌ローラ15と、塗布ローラ17との間に微小ギャップが形成され、フォーム状定着液層の膜厚を制御する膜厚制御ブレード16と、塗布ローラ17と加圧ローラ18から成る接触付与手段20を備えている。
上記塗布ローラ17上にはフォーム状の定着液の層が形成されて、記録媒体2上に画像を形成する樹脂微粒子(トナー粒子)は塗布ローラ17上にはオフセットされない。仮に、フォーム状の定着液が、樹脂微粒子の層や記録媒体に厚く塗布されたとしても、フォーム状の定着液のかさ密度が極めて低いため、所定の泡沫時間経過後に含有している気泡が破泡することで、軟化剤を含有した液体を樹脂微粒子の層へ微量塗布することができる。
なお、塗布ローラ17に代わりに、塗布ベルトを用いてもよい。
さて、形成される画像がカラーである場合、図6に示すごとく、紙等の記録媒体2上の未定着トナー層の厚みは、単色トナー層21に比べ、2色重ねトナー層22、多色重ねトナー層23の順に厚くなり、およそ、シャドー系多色トナー層の厚みは単色トナー層21の厚みの2倍程度となる。従って、塗布ローラ17上のフォーム状定着液の膜厚を、単色トナー層21のトナー粒子を全て定着液で濡らすのに必要な量に調整した場合、多色重ねトナー層23の部分では、このトナー層の半分程度のトナー粒子しか濡らすことができず、多色重ねトナー層23の部分は定着不良となる。
逆に、多色重ねトナー層23の全てのトナー粒子を濡らす程度に、塗布ローラ17上のフォーム状定着液の膜厚を調整して定着液を付与した場合、単色トナー層21のトナー粒子は過剰に定着液に濡れてしまい、トナー中の樹脂が軟化しすぎてトナー層にタック感が発生してしまう不具合がある。
なお、液状定着液では塗布ローラ17の表面に滴下した場合、滴下部分から面内に広がり易いが、フォーム状定着液では、通常の液体とは異なり、表面張力や流動性が抑制されているため、塗布ローラ17の表面上に部分的にフォーム状定着液を付着させた場合、その付着幅が維持され、極めて面内に広がり難く、本発明のごとく、分割ブロック毎に塗布ローラ17への定着液の膜厚を変えることが、液状定着液の場合よりも極めて容易であるという、大きな特徴を有する。
更に、図8(b)に示すごとく、記録媒体2の搬送方向に平行な方向の領域31〜35に対しても、定着液供給口13のON/OFF制御や膜厚制御ブレード16のギャップ制御を行うことにより、トナー層の厚みに応じてさらに細かく、塗布ローラ17上のフォーム状定着液の厚みを制御することができる。
なお、記録媒体2の搬送方向に平行な方向に対して制御することは、搬送速度が速いほど困難であるが、液状定着液に比べて、フォーム状定着液は表面張力や流動性が抑制されているため、定着液の制御応答性に優れ、搬送速度が速くても十分制御に追随することが可能である。
〔実施例1〕
本発明の実施例1による定着装置(請求項1、2に対応)は、図9に示されているように、フォーム状定着液発生手段11から塗布ローラ17への供給口13が、長手方向に延びる一つの開口部をもつ供給手段12から成り、フォーム状定着液の膜厚を制御する膜厚制御ブレードが、分割形制御ブレード16aとして構成されるものである。この分割形制御ブレード16aの個々のブレードと塗布ローラ17との間には、それぞれギャップが設けられており、個々のブレードはアクチュエータ(図示を省略)にそれぞれ連結され、塗布ローラ17面に対して個別に移動され、該塗布ローラ17と分割形制御ブレード16aの個々のブレードとの間のギャップを変更できるように構成されている。
記録媒体の搬送方向に対して直角な方向、又は平行な方向に(図7(b)、図8を参照)、フォーム状定着液の付与量を変化させる場合、付与量を多くしたい領域では、分割形制御ブレード16aと塗布ローラ17とのギャップを広くして、塗布ローラ17上のフォーム状定着液層の膜厚を厚くし、付与量を少なくしたい領域ではギャップを狭くして、塗布ローラ17上のフォーム状定着液層の膜厚を薄くすることにより、該記録媒体上のトナー層の厚みに応じた付与が可能となる。
上記分割形制御ブレード16aの分割幅は、細かいほど精緻な定着液付与量の制御が可能となるが、定着装置の製造コストが高くなる恐れがあり、中小規模のオフィスなどの普及帯への画像形成装置に本発明の定着装置を組み込む場合、コストを抑制するため分割個数は、A4版縦に対して4〜6個の分割が望ましい。なお、分割形制御ブレード16aと塗布ローラ17とのギャップ制御は、画像形成装置へ入力される画像信号に応じて設定される。
本発明の参考例による定着装置は、図10に示されているように、膜厚制御ブレード16が一体であり、塗布ローラ17へのフォーム状定着液の供給手段12が、複数個の供給口から成る個別供給口13aを備えるものである。この個別供給口13aは、弁(図示を省略)によりフォーム状定着液の供給を個別にON/OFFすることができる構成である。記録媒体の搬送方向に対して直角な方向、又は平行な方向に(図7(b)、図8を参照)、該記録媒体上のトナー層の厚みに応じて、個別供給口13aからのフォーム状定着液の供給をON/OFF制御する。
本発明に用いる定着液はフォーム化しているため、通常の流動性を有する液体とは異なる挙動を示す。即ち、フォーム内の泡同士の結合が強いため、極めて流動性が抑制され、塗布ローラ17上にフォーム状定着液を滴下しても、塗布ローラ17の長手方向に拡散し難く、膜厚制御ブレード16が一体であっても、滴下した領域近傍のみの塗布ローラ17上にフォーム状定着液層が形成される。これは、通常の液状定着液では起こり得ない挙動である。
そこで、フォーム状定着液の供給量を制御する場合、画像形成装置にて1枚の印刷に必要なフォーム状定着液量を、塗布ローラ17に1枚印刷する毎に供給することが望ましい。このようにすることにより、印刷終了時に塗布ローラ17上への残留定着液が抑制される。なお、上記個別供給口13aから供給されるフォーム状定着液をON/OFFするための弁としては、電磁弁などを適用することができる。
本発明の実施例2による定着装置(請求項3に対応)は、図11に示されているように、上記参考例の定着装置(図10を参照)において、塗布ローラ17の外周面に仕切り板19を設けた構成である。
上記参考例の定着装置では、塗布ローラ17上において、フォーム状定着液層は個別供給口13aの近傍しか形成されないのであるが、この定着装置を組み込んだ画像形成装置にて多数枚の印刷を連続して行った場合、一つの供給口にて形成されるフォーム状定着液層は、塗布ローラ17の長手方向に徐々に広がる恐れがある。これを防止するため、個別供給口13aの各供給口のピッチに沿って、塗布ローラ17の外周面に仕切り板19を設ける。フォーム状定着液は流動性が極めて小さいため、仕切り板19は必ずしも塗布ローラ17に密着する必要はなく、空隙があっても構わない。
本発明の実施例3による定着装置(請求項4に対応)は、図12に示されているように、上記参考例の定着装置(図10を参照)において、一体であった膜厚制御ブレード16を、上記実施例1の定着装置(図9を参照)のごとく分割形制御ブレード16aとしたものである。
このようにすることで、個別供給口13aのON/OFF制御と、分割形制御ブレード16aのギャップ制御とを組み合わせることができるので、塗布ローラ17上でのフォーム状定着液層のより細かな膜厚制御が可能となる。更に、記録媒体の搬送速度が高速化しても、フォーム状定着液の付与量制御を二重に行っているため、応答性が向上して高速化に追随することが可能となる。
本発明の実施例4による定着装置は、図13に示されているように、上記実施例3の定着装置(図12を参照)において、更に、仕切り板19を設けた構成である。仕切り板19を設けたことで、塗布ローラ17上でのフォーム状定着液の長手方向への拡散が抑制され、より精緻なフォーム状定着液層の膜厚制御が可能となる。
本発明の実施例5による定着装置は、図14及び図15に示されているように、定着液のフォーム化手段として、高圧密閉容器に封入した定着液を噴射する手段を用いるものである。
上記実施例1〜4では、全て、定着液のフォーム化手段が攪拌等の手段であるが、この実施例5の定着装置は、図14及び図15に示すように、定着液を液化ガスとともに高圧密閉容器36に封入し、噴射によりフォーム化させる手段(ノズル等)37を用いるものである。これは、複数個の高圧密閉容器36,36…を用いて、記録媒体の搬送方向に対して該記録媒体上のトナー層の厚みに応じて、これらの高圧密閉容器36,36…のアクチュエータ38,38…を個別に駆動することにより、付与量を制御することができる。
また、上記実施例1〜4では、膜厚制御ブレード16の面を塗布ローラ17にギャップを設けて配置していたが、図14に示すように、膜厚制御ブレード16を塗布ローラ17の面にカウンター状に配置しても構わない。この場合にも、膜厚制御ブレード16の先端と塗布ローラ17の面との間にはギャップを設けている。
次に、定着液の処方について説明する。フォーム状の定着液は、上述したように、軟化剤を含有した液体中に気泡を含有した構成である。軟化剤を含有した液体は、気泡を安定して含有するが、なるべく均一な大きさの気泡からなる気泡層を構成するフォーム状とするため、起泡剤及び増泡剤を有することが望ましい。また、粘度はある程度高い方が、気泡が安定して液体中に分散するため、増粘剤を含有することが望ましい。
起泡剤としては、脂肪酸塩が望ましい。脂肪酸塩は界面活性を有するため、水を含有する定着液の表面張力を下げ、定着液を発泡し易くするとともに、泡表面で脂肪酸塩が層状ラメラ構造をとるため、泡壁(プラトー境界)が他の界面活性剤よりも強くなり、泡沫安定性が極めて高くなる。また、脂肪酸塩の起泡性を効果的にするため、定着液には水を含有することが望ましい。脂肪酸としては、大気中での長期安定性の観点から酸化に強い飽和脂肪酸が望ましい。但し、飽和脂肪酸塩を含有する定着液に若干の不飽和脂肪酸塩を含有することで、脂肪酸塩の水に対する溶解・分散性を助け、5℃〜15℃までの低い気温において、優れた起泡性を有することができ、広い環境温度範囲において定着を安定させることが可能となる。また、定着液を長期間放置した場合でも、定着液中の脂肪酸塩の分離を防止することができる。
また、オフセット防止のためには、塗布部でのフォーム状定着液層の厚みは、樹脂微粒子層の厚みより厚いことが望ましい。また、気泡が樹脂微粒子へ付着し易くするためには、樹脂微粒子よりも大きいことが望ましい。樹脂微粒子がトナー粒子の場合、乾式電子写真方式でのトナー粒子は4〜10μm程度の大きさであり、紙媒体上の未定着トナー層は10〜30μm程度であることから、軟化剤を含有する液体に含有する気泡の大きさは、5μm〜30μm程度が望ましい。
また、軟化剤については、人体に対する安全性の観点から、その急性経口毒性LD50が3g/kgよりも大きいこと、更に好ましくは5g/kgであることが好ましい。脂肪族エステルは、化粧品原料として多用されているように、人体に対する安全性が高い。
更に、記録媒体に対するトナーの定着は、密封された環境において頻繁に使用される機器で行われ、軟化剤はトナーの記録媒体への定着後にもトナー中に残留するため、記録媒体に対するトナーの定着は、揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の発生を伴わないことが好ましい。すなわち、軟化剤は揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の原因となる物質を含まないことが好ましい。脂肪族エステルは、一般に汎用される有機溶剤(トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチルなど)と比較して、高い沸点及び低い揮発性を有し、刺激臭を持たない。
よって、本発明における定着液において、好ましくは、上記の飽和脂肪族エステルの一般式は、
R1COOR2
で表される化合物を含み、R1は、炭素数が11以上14以下のアルキル基であり、R2は、炭素数が1以上6以下の直鎖型もしくは分岐型アルキル基である。
上記の飽和脂肪族エステルが、一般式R1COOR2で表される化合物を含み、R1は、炭素数が11以上14以下のアルキル基であり、R2は、炭素数が1以上6以下の直鎖型もしくは分岐型のアルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。また、上記の化合物は、臭気指数が10以下であり、不快臭や刺激臭を有していない。
よって、本発明における定着液において、好ましくは、上記の脂肪族ジカルボン酸エステルの一般式は、
R3(COOR4)2
で表される化合物を含み、R3は、炭素数が3以上8以下のアルキレン基であり、R4は、炭素数が3以上5以下の直鎖型又は分岐型アルキル基である。
上記の脂肪族ジカルボン酸エステルが、一般式R3(COOR4)2で表される化合物を含み、R3は、炭素数が3以上8以下のアルキレン基であり、R4は、炭素数が3以上5以下の直鎖型又は分岐型アルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。また、上記の化合物は、臭気指数が10以下であり、不快臭や刺激臭を有していない。
本発明における定着液において、好ましくは、上記の脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルの一般式は、
R5(COOR6−O−R7)2
で表される化合物を含み、R5は、炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、R6は、炭素数が2以上4以下のアルキレン基であり、R7は、炭素数が1以上4以下のアルキル基である。
上記の脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルは、一般式R5(COOR6−O−R7)2で表される化合物を含み、R5は、炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、R6は、炭素数が2以上4以下のアルキレン基であり、R7は、炭素数が1以上4以下のアルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。また、上記の化合物は、臭気指数が10以下であり、不快臭や刺激臭を有していない。
なお、定着の対象となる樹脂を含有する微粒子は、トナーに限定されず、色材及び樹脂を含有する微粒子であれば何れでもよい。
また、トナーは、メチル基を有する疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンのような疎水性微粒子をトナーの粒子の表面に固着させることによって、撥水性処理されていることが好ましい。記録媒体は、特に限定されず、例えば、紙、布、及び液体透過層を有するOHP用シートのようなプラスチックフィルムなどが挙げられる。本発明における油性とは、室温(20℃)における水に対する溶解度が、0.1重量%以下である性質を意味する。
なお、定着中での軟化剤を溶解もしくはマイクロエマルジョン分散させるための方法としては、例えば、回転羽根によるホモミキサーやホモジナイザーのような機械的に攪拌する手段、及び超音波ホモジナイザーのような振動を与える手段が挙げられる。いずれにしても、強いせん断応力を定着液中の軟化剤に加えることで溶解もしくはマイクロエマルジョン分散させる。
次に、塗布ローラ上のフォーム状定着液の膜厚を制御する具体的な方法について、図16を参照しながら説明する。図16は具体的な動作フローを示す。
画像形成装置のスキャナー画像データやPCからの入力画像データに基づき(ステップS1,S2)、画像形成装置内の画像処理プロセッサーを用いて、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の各色情報に分解し、2値データへと展開する(ステップS3)。その2値データに基づき、各色ごとの記録媒体上に必要なトナー層の厚みを算出する(ステップS3)。その算出データをもとに、各分割ブロック内のトナー層の厚みを算出し(ステップS4)、トナー厚みと定着に必要な定着液付与量を換算テーブルに基づき算出する(ステップS5)。
次に、本発明の定着装置が適用される画像形成装置について、図17を参照しながら説明する。図17(a)はカラー電子写真のタンデム方式の画像形成装置全体の概略図であり、図17(b)はこの画像形成装置の1つの画像形成ユニットの概略図である。
画像形成装置は、例えば複写機やプリンター等であって、図17(a)に示されているように、トナー像担持体として中間転写ベルト41を有する。この中間転写ベルト41は、3つの支持ローラ42〜44に張架されており、図中の矢印Cの方向に回転する。この中間転写ベルト41に対しては、ブラック(BK)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各画像形成ユニット45〜48が配列されている。これら画像形成ユニットの上方には、露光装置(図示を省略)が配置されている。例えば、画像形成装置が複写機である場合には、スキャナで原稿の画像情報を読み込み、この画像情報に応じて、各感光体ドラム上に静電潜像を書き込むための各露光L1〜L4が露光装置により照射される。中間転写ベルト41を挟んで、該中間転写ベルト41の支持ローラ44に対向する位置には、二次転写装置49が設けられている。この二次転写装置49は、2つの支持ローラ50,51の間に張架された二次転写ベルト52で構成されている。なお、二次転写装置49としては、転写ベルト以外に転写ローラを用いてもよい。また、中間転写ベルト41を挟んで、該中間転写ベルト41の支持ローラ42に対向する位置には、ベルトクリーニング装置53が配置されている。このベルトクリーニング装置53は、中間転写ベルト41上に残留するトナーを除去するために配置されている。
即ち、記録紙54に転写された未定着のトナー像には、露光装置からの画像情報(例えば、カラー画像又は黒ベタ画像情報)に基づいて、フォーム状定着液層の膜厚を制御する本発明の定着装置から、フォーム状定着液が付与される。このフォーム状定着液には、トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる部剤(軟化剤)が含まれており、記録紙54上に転写された未定着のトナー像を該記録紙に定着させる。
次に、画像形成装置の画像形成ユニットについて、図17(b)を参照しながら説明する。
画像形成ユニット45〜48には、感光体ドラム56の周辺に、帯電装置57、露光装置(図示を省略)、現像装置58、クリーニング装置59、及び除電装置60が配置されている。また、中間転写ベルト41を介して、感光体ドラム56に対向する位置に、一次転写装置61が設けられている。
上記帯電装置57は、帯電ローラを採用した接触帯電方式の帯電装置である。この帯電装置57は、帯電ローラを感光体ドラム56に接触させて、感光体ドラム56に電圧を印加することにより、感光体ドラム56の表面を一様に帯電する。該帯電装置57としては、非接触のスコロトロン等を採用した非接触帯電方式の帯電装置を採用することもできる。
上記露光装置(図示を省略)は、画像情報に応じて感光体ドラム上に静電潜像を書き込むための露光Lを照射するものである。
更に、上記一次転写装置61は、感光体ドラム56上で可視化されたトナーを中間転写ベルト41に転写する。ここでは、一次転写装置61として転写ローラを採用しており、転写ローラを中間転写ベルト41を挟んで感光体ドラム56に押し当てている。一次転写装置61としては、導電性ブラシ、非接触のコロナチャージャー等を採用することもできる。
更に、除電装置60はランプで構成されており、光を照射して感光体ドラム56の表面電位を初期化する。
なお、本発明における「タック感が少ない」とは、市販タックメータを用い、加重10g重における色材含有樹脂微粒子層の定着面の引張り力を測定し、引っ張り力がおおよそ0.01N以下であることを意味する。
また、本発明における「定着性良好である」とは、色材含有樹脂微粒子層の定着面を白色のウエスにより一定加重で一定回数擦り、ウエス面の汚れが光学濃度0.3以下であることを意味する。
次に、本発明における定着液及び定着の具体例について説明する。
[定着液の処方]
〈軟化剤を含有する液体〉
希釈溶媒:イオン交換水 65wt%
軟化剤:コハク酸ジエトキシエチル(クローダ社 クローダDES) 10wt%
増粘剤:プロピレングリコール 10wt%
増泡剤:ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(コミカドDEA) 2wt%
起泡剤:パルミチン酸カリウム 5wt%
ミリスチン酸カリウム 3wt%
ステアリン酸カリウム 2wt%
分散剤:POE(20)ラウリルソルビタン 2wt%
(花王 レオドールTW−S120V)
ポリエチレングリコールモノステアレート 1wt%
(花王 エマノーン3199)
なお、分散剤は、軟化剤の希釈溶媒への溶解性を助長するために用いた。
上記成分比にて、先ずは、液温90℃にて軟化剤を除いて混合攪拌し溶液を作製した。次に、軟化剤を混合し、軟化剤が溶解した定着液(フォーム化する前の原液)を作製した。
大きな泡生成手段と、その泡を基に微細な泡を生成する手段を組み合わせた。
〈大きな泡生成手段〉
液が空気を巻き込みながら微細孔シートを通過する構成とした。
液状定着液の保存容器:PET樹脂からなるボトル
液供給ポンプ:チューブポンプ(チューブ内径2mm、チューブ材質:シリコーンゴム)
供給流路:内径2mmのシリコーンゴムチューブ
大きな泡を作るための微細孔シート:#400のステンレス製メッシュシート(開口部約40μm)
〈大きな泡から微細な泡を生成する手段〉
内側円筒が回転する2重円筒内に大きな泡を搬送し、2重円筒の内側円筒は回転軸に固定され、回転駆動モーターにより回転する。この2重円筒の材質はPET樹脂とし、外側円筒の内径を10mm、長さを120mmとし、内側円の筒外形を8mm、長さを100mmとした。
回転数は、1000〜2000rpmの範囲で可変とした。
図13に示された上記実施例4の定着装置の構成を基にした。
フォーム状定着液発生手段11から個別供給口13aまでは、ポリプロピレン製チューブを用いた1つのチューブポンプで供給し、この個別供給口13aに電磁弁を設けた。塗布ローラ17は表面をフッ素樹脂コートした直径30mm、長さ240mmのアルミ製ローラとした。
分割形制御ブレード16aは、厚み1mm、長さ20mm、高さ20mmのガラス製とし、それぞれマイクロモータによるアクチュエータに繋がったアルミ製支持体に接着し、塗布ローラ17の長手方向に隙間0.1mmで11個並べた。この塗布ローラ17とガラス製の分割形制御ブレード16aとのギャップは、30μm〜100μmの範囲で個別に制御可能とした。
さらに、厚み0.1mmのPETフィルムによる仕切り板19を20mm間隔で供給口ごとに並べた。
プリンターとしてIpsioColorCX8800(リコー社製)を用い、紙の長手方向に対し、両側余白30mm、左半分モノクロ文書、右半分フルカラー写真画像であるテストチャート画像データを用いて、未定着トナーのカラー画像をPPC用紙(リコーT−6200 A4サイズ)に形成した。この未定着トナー画像が形成された用紙を上記定着装置に搬送し、予め画像データに基づいて、余白部、モノクロ文書部、フルカラー部のトナー層の厚みに応じて、供給口の開閉と分割形制御ブレードのギャップを制御した状態で定着を行った。比較のため、本発明による制御を行わない定着も実施した。その実施結果を表1に示す。
上記表1に示すように、紙の搬送方向に沿って、画像データに基づくトナー層の厚みに応じて、塗布ローラ上のフォーム状定着液層の厚みを変化させたことにより、良好な定着が可能となった。
5…定着液 5f…フォーム状定着液
7…塗布ローラ 11…フォーム状定着液発生手段
12…供給手段 13…定着液供給口
13a…個別供給口 15…攪拌ローラ
16…膜厚制御ブレード 16a…分割形制御ブレード
17…塗布ローラ 18…加圧ローラ
19…仕切り板 20…接触付与手段
36…高圧密閉容器 37…フォーム化手段(ノズル等)
38…アクチュエータ 45〜48…画像形成ユニット
49…二次転写装置 61…一次転写装置
Claims (6)
- 記録媒体上に形成された色材を含有する樹脂微粒子層を、樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させることで該樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有する定着液により、該記録媒体に定着させる定着装置であって、
上記定着液をフォーム化するフォーム状定着液発生手段と、
上記フォーム状定着液を上記記録媒体上の樹脂微粒子層に付与する塗布ローラと、
上記塗布ローラに上記フォーム状定着液を供給するフォーム状定着液供給手段と、
上記塗布ローラとの間にギャップを有して設けられ、上記塗布ローラ上のフォーム状定着液層の厚みを可変するブレードとを有し、
上記記録媒体上の樹脂微粒子層の厚みに応じて、上記塗布ローラ上のフォーム状定着液層の厚みを上記ブレードにより可変して、該樹脂微粒子層の厚みが大きい程、上記ギャップを広くして該フォーム状定着液層の厚みを大きくすることを特徴とする定着装置。 - 上記ブレードは、上記塗布ローラの長手方向に複数個に分割して配置され、上記記録媒体上の樹脂微粒子層の厚みに応じて、分割されたブレードごとに上記塗布ローラ上のフォーム状定着液層の厚みを可変することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
- 上記塗布ローラは長手方向に仕切り板でブロックごとに区切られ、各ブロックごとにフォーム状定着液の供給量が可変されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置。
- 上記ブレードは、上記塗布ローラの長手方向に複数個に分割して配置され、上記記録媒体の幅、又は該記録媒体上の樹脂微粒子層による画像幅に応じて、個別に可変して上記塗布ローラ上のフォーム状定着液層の厚みを変化させることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の定着装置。
- 上記塗布ローラの長手方向に複数個に分割されたブロックごとに、最大の樹脂微粒子層の厚みに合わせて、上記塗布ローラ上のフォーム状定着液層の厚みを可変することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の定着装置。
- 樹脂微粒子が色材を含有したトナーで静電記録プロセスにより記録媒体上に未定着トナー画像を形成する画像形成手段と、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の定着装置により、上記未定着トナー画像を記録媒体に定着させることを特徴とする画像形成装置。
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