図1は、本発明の実施の第1形態である画像形成装置1の構成を概略的に示す断面図である。図2は、図1に示す画像形成装置1の要部(後述のトナー像形成手段2)の構成を拡大して示す断面図である。図3は、図1に示す画像形成装置1の要部(後述の2次転写手段4および定着手段5)の構成を拡大して示す断面図である。
画像形成装置1は、トナー像形成手段2と、中間転写手段3と、2次転写手段4と、定着手段5と、記録媒体供給手段6とを含んで構成される。
トナー像形成手段2は、作像ユニット10y,10m,10c,10bを含み、これらは、各色相の画像情報に対応する静電潜像を形成し、該静電潜像を現像して、各色のトナー像を形成するものである。すなわち、作像ユニット10yはイエロー色の画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10mはマゼンタ色の画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10cはシアン色の画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10bはブラック色の画像情報に対応するトナー像を形成する。
作像ユニット10yは、感光体ドラム11yと、帯電ローラ12yと、光走査ユニット13と、現像装置14yと、ドラムクリーナ15yとを含んで構成される。
感光体ドラム11yは、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に支持され、図示しない円筒状、円柱状または薄膜シート状(好ましくは円筒状)の導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含んで構成される。感光体ドラム11yには、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、導電性基体であるアルミニウム素管と、アルミニウム素管の表面に形成される有機感光層とを含む、GND電位に接続される直径30mmの感光体ドラムが挙げられる。有機感光層は、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層して形成される。有機感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質とを1つの層に含むものであってもよい。有機感光層の層厚は、たとえば、20μmである。また有機感光層と感光体ドラムとの間に下地層を設けてもよい。さらに、有機感光層の表面に保護層を設けてもよい。感光体ドラムは、時計周りの方向に、たとえば、周速度100mm/sで回転駆動する。
帯電ローラ12yは、感光体ドラム11yの表面を所定の極性および電位に帯電させる。帯電ローラ12yに代えて、ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、スコロトロンといったコロナ帯電器などが使用できる。
光走査ユニット13は、帯電状態にある感光体ドラム11yの表面にイエロー色の画像情報に対応するレーザ光13yを照射し、感光体ドラム11yの表面に、イエロー色の画像情報に対応する静電潜像を形成する。レーザ光13yの光源には、半導体レーザなどが用いられる。
現像装置14yは、感光体ドラム11y表面に圧接し、図示しない固定磁極を内包しかつ軸線回りに回転駆動可能に設けられ、イエロー色トナー16yを感光体ドラム11y表面の静電潜像に供給する現像ローラ17yと、現像ローラ17yの表面に当接するように設けられ、現像ローラ17y表面のイエロー色トナー層を均一化(層規制)する現像ブレード18yと、イエロー色トナー16yを貯留するトナー貯留容器19yと、トナー貯留容器19yの内部に、互いに圧接しかつ軸線回りに回転駆動可能に設けられる撹拌ローラ20a,20bであって、撹拌ローラ20aが現像ローラ17yの表面に圧接しかつ現像ローラ17y表面にイエロー色トナー16yを供給する撹拌ローラ20a,20bとを含んで構成される。現像ローラ17yは、感光体ドラム11yに圧接(接触)する現像ニップ部でにおいて、感光体ドラム11yの回転駆動方向と同じ方向に回転駆動する。したがって、軸線回りの回転駆動方向としては、逆方向になる。この実施形態では、現像ローラ17yの周速度は、たとえば、感光体ドラム11yに対して1.5倍の150mm/sである。トナー貯留容器19y中のイエロー色トナー16yは、撹拌ローラ20a,20bによって現像ローラ17y表面に供給され、現像ブレード18yにより層厚を均一化された後、電位差などを利用して感光体ドラム11y表面の静電潜像にほぼ選択的に供給され、イエロー色の画像情報に対応するトナー像が形成される。なお、本実施の形態では、イエロー色トナー16yと磁性キャリアとを混合した2成分現像剤として用いられる。
ドラムクリーナ15yは、後述するように、感光体ドラム11y表面のイエロー色トナー像が中間転写ベルト21に中間転写された後に、該表面に残存するイエロー色トナーを除去、回収する。
作像ユニット10yによれば、感光体ドラム11yをその軸線回りに回転駆動させながら、まず帯電ローラ12yにより感光体ドラム11yの表面をたとえば−600Vに帯電する。次に、帯電状態にある感光体ドラム11yの表面に、光走査ユニット13からイエロー色の画像情報に対応する信号光を照射し、イエロー色の画像情報に対応する露光電位−70Vの静電潜像を形成する。次いで、感光体ドラム11yの表面に、現像ローラ16y表面に担持されるイエロー色トナー層が接触する。現像ローラ16yには現像電位として−240Vの直流電圧が印加されており、電位差により、静電潜像にイエロー色トナー16yが付着して現像され、感光体ドラム11yの表面にイエロー色のトナー像が形成される。このイエロー色トナー像は、後述するように、感光体ドラム11yの表面に接する中間転写ベルト21に中間転写される。感光体ドラム11yの表面に残留するイエロー色トナー16yはドラムクリーナ15yにより除去され、回収される。以後、同様のイエロー色トナー像作成動作が繰り返し実行される。
作像ユニット10m,10c,10bは、それぞれマゼンタ色トナー16m、シアン色トナー16cまたはブラック色トナー16bを使用する以外は、作像ユニット10yに類似の構造を有するので、同一の参照符号を付し、さらに各参照符号の末尾に、マゼンタ色を示す「m」、シアン色を示す「c」またはブラック色を示す「b」を付し、説明を省略する。なお、作像ユニット10y,10m,10c,10bは、中間転写ベルト21の移動方向(副操作方向)、すなわち矢符27の方向の上流側からこの順番で一列に配列される。
なお、各色トナー16y,16m,16c,16bは、結着樹脂、着色剤および離型剤を含有する。結着樹脂としては、後述する定着液34により軟化または膨潤する樹脂であれば特に制限されず、たとえば、ポリスチレン、スチレンの置換体の単独重合体、スチレン系共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタンなどが挙げられる。結着樹脂は、1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。このような結着樹脂の中でも、カラートナー用としては、保存性、耐久性、後述する定着液34による軟化または膨潤制御などの点から、軟化点が100〜150℃、ガラス転移点が50〜80℃の結着樹脂が好ましく、ポリエステルが特に好ましい。ポリエステルは入手容易な有機溶剤により軟化および/または膨潤しやすく、軟化または膨潤した状態で透明になる。したがって、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックのトナー像が重ね合わされた多色トナー像を定着液34にて定着すると、結着樹脂であるポリエステル自体は透明化するので、減法混色により充分な発色が得られる。また、熱定着用のトナーに用いられる結着樹脂よりも軟化点(分子量)および硬度の高い樹脂を用いても、定着液34による定着が可能である。軟化点および硬度の高い樹脂を用いれば、現像の際の負荷による劣化が防止され、長期間にわたって画質の劣化が少ない画像が得られる。
着色剤としては、従来から電子写真方式の画像形成技術において用いられるトナー用顔料および染料を使用できるけれども、定着液34による滲みを防止するために、定着液34に溶解しない顔料が好ましく、ニグロシン染料などの染料は好ましくない。顔料の具体例としては、たとえば、アゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体系顔料などの有機系顔料、カーボンブラック、酸化チタン、モリブデンレッド、クロムイエロー、チタンイエロー、酸化クロム、ベルリンブルーなどの無機系顔料、アルミニウム粉などの金属粉などが挙げられる。顔料は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
離型剤としては、各種ワックスを使用できる。ワックスとしては、定着液34により軟化または膨潤するものであれば特に制限なく使用できる。ワックスの具体例としては、たとえば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックスなどが挙げられる。
トナーは、結着樹脂、着色剤および離型剤の他に、帯電制御剤、流動性向上剤、定着促進剤、導電剤などの一般的なトナー用添加剤の1種または2種以上を含有することができる。
トナーの体積平均粒径は、特に制限されないけれども、2〜7μmとするのが好ましい。このような小粒径トナーを用いると、単位面積当りのトナーの表面積が大きくなり、定着液34との接触面積が増加して定着し易くなる。これによって、定着液34の使用量の低減化を図り得るとともに、トナー像の記録媒体への定着および定着後の乾燥を短時間で実施できる。また、トナーの体積平均粒径が適度に小さい場合には、記録媒体7に対する被覆率が高くなるので、低付着量での高画質化およびトナー消費量の低減化を達成でき、ひいては定着液34の消費量のさらなる低減化を達成できる。
トナーの体積平均粒径が2μm未満では、トナーの流動性が低下し、現像動作の際に、トナーの供給、撹拌および帯電が不充分になり、トナー量の不足、逆極トナーの増加などが起こり、高画質の画像が得られないおそれがある。一方、体積平均粒径が7μmを超えると、トナー粒子の中心まで軟化および/または膨潤し難い大粒径のトナー粒子が多くなるので、画像の記録媒体への定着性が低下するとともに、画像の発色が悪くなり、特にOHPへの定着の場合には、画像が暗くなる。
トナー自体の軟化点およびガラス転移点は特に制限されないけれども、軟化点が100〜130℃、ガラス転移点が50〜80℃であることが好ましい。このような軟化点の高いトナーは、現像時の負荷に対する耐久性を向上させるには好ましいけれども、熱定着方式では充分に定着および発色しない。ところが、本発明では、定着液34を用いて化学的にトナーを軟化および/または膨潤させるので、定着および発色が充分で、高品位な画像が得られる。
トナーは、公知の方法に従って製造できる。たとえば、結着樹脂に離型剤、着色剤などを分散して粉砕する方法、結着樹脂のモノマー溶液中に離型剤、着色剤などを分散させ、その後結着樹脂のモノマーを重合させる方法などが挙げられる。いずれの方法においても、トナーの表面積を大きくするために、トナーの形状が球形よりも不定形になるように調整するのが好ましい。これによって、定着液34と接触し易くなるので、定着液34の使用量を減らし、トナー像の定着および乾燥を短時間で実施できる。
各色トナー16y,16m,16c,16bは、そのまま1成分現像剤として用いてもよく、またはキャリアと混合して2成分現像剤として用いてもよい。
本実施の形態で用いられる各色トナー16y,16m,16c,16bは、顔料以外は次に示す同じ構成を有する。このトナーは、ガラス転移点60℃、軟化点120℃、体積平均粒径6μmであり、負帯電性の絶縁性非磁性トナーである。このトナーを用いて、X−Rite社製310による反射濃度測定値が1.4の画像濃度を得るには、5g/m2のトナー量が必要である。このトナーは、ガラス転移点60℃かつ軟化点120℃のポリエステル(結着樹脂)、ガラス転移点50℃かつ軟化点70℃の低分子ポリエチレンワックス(離型剤)および各色の顔料を含み、ワックス含有量がトナー全量の7重量%、顔料含有率がトナー全量の12重量%および残部が結着樹脂のポリエステルである。このトナーに含まれる低分子ポリエチレンワックスは、結着樹脂のポリエステルよりもガラス転移点および軟化点が低いワックスである。このようなワックスを用いれば、結着樹脂のガラス転移点よりも低い温度下でも、トナー同士の付着力、トナーと中間転写ベルト21または記録媒体7との付着力が増加するので、液状物である定着液34を付与する際に、定着液34によるトナーの流れ、凝集などが発生するのを抑制できる。さらに、トナー中のワックスが軟化すると、ワックスが存在する箇所からトナー内部に定着液34が浸透し易くなる。したがって、定着液34の付与時に短時間でトナー全体が軟化および/または膨潤し、記録媒体7への転写時に充分な定着強度が得られ、トナー像の重ね合わせによる発色も充分になる。
中間転写手段3は、中間転写ベルト21と、中間転写ローラ22y,22m,22c,22bと、支持ローラ23,24,25と、ベルトクリーナ26とを含んで構成される。
中間転写ベルト21は、支持ローラ23,24,25との間に張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルトであり、感光体ドラム11y,11m,11c,11bとほぼ同じ周速度で矢符27の方向に回転する。中間転写ベルト21には、たとえば、厚さ100μmのポリイミドフィルムの表面に、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)とPFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)とを8:2(重量比)の割合で含むフッ素樹脂組成物からなる厚さ20μmの被覆層を設けたものが挙げられる。ポリイミドフィルムおよび被覆層中には、中間転写ベルト1としての電気抵抗値を調整するために、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャネルブラック、グラファイトカーボンなどの導電材が配合される。被覆層表面が、トナー像担持面21aになる。なお、中間転写ベルト21の材料はこれだけに限定されず、定着液34を浸透しないものであれば特に制限なく使用できる。たとえば、導電性を付与したポリカーボネート、フッ素ゴムなどのフィルムに、PTFEおよび/またはPFAからなる被覆層を設けたものでもよい。
中間転写ベルト21のトナー像担持面21aは、感光体ドラム11y,11m,11c,11bにこの順番で圧接する。中間転写ベルト21の感光体ドラム11y,11m,11c,11bに圧接する位置が、各色相のトナー像の中間転写位置である。中間転写ベルト21を介して感光体ドラム11y,11m,11c,11bに対向する位置に、中間転写ローラ22y,22m,22c,22bが配置される。
中間転写ローラ22y,22m,22c,22bは、それぞれ、中間転写ベルト21におけるトナー像担持面21aの反対面に圧接し、かつ図示しない駆動手段によりその軸線回りに回転駆動可能に設けられ、たとえば、金属製軸体と、該金属製軸体の表面に被覆される導電性層とを含んで構成される。軸体は、たとえば、ステンレス鋼などの金属により形成される。軸体の直径は特に制限されないけれども、好ましくは8〜10mmである。導電性層は、導電性弾性体などにより形成される。導電性弾性体としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、カーボンブラックなどの導電性制御剤を含む、EPDM、発泡EPDM、発泡ウレタンなどが挙げられる。導電性層によって、中間転写ベルト21に高電圧が均一に印加される。
中間転写ローラ22y,22m,22c,22bには、感光体ドラム11y,11m,11c,11bの表面に形成されるトナー像を中間転写ベルト21上に転写するために、トナーの帯電極性とは逆極性の中間転写バイアスが定電圧制御によって印加される。これによって、感光体ドラム11y,11m,11c,11bに形成されるイエロー色、マゼンタ色、シアン色およびブラック色の各色相のトナー像が中間転写ベルト21のトナー像転写面21aに順次重ね合わさって転写され、多色トナー像が形成される。但し、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの色相の一部のみの画像情報が入力される場合には、作像ユニット10y,10m,10c,10bのうち、入力される画像情報の色相に対応する作像ユニットのみにおいてトナー像が形成される。
支持ローラ23,24,25には、たとえば、直径30mmで、肉厚が1mmのアルミニウム製円筒体が用いられる。中間転写ベルト21を介して、後述する2次転写ローラ28に圧接する支持ローラ24は、電気的に接地される。
ベルトクリーナ26は、中間転写ベルト21のトナー像転写面21a上のトナー像を後述の2次転写手段4において記録媒体7に転写した後に、トナー像転写面21a上に残存するトナーを除去する部材であり、中間転写ベルト21を介して支持ローラ25に対向するように設けられ、図示しない加圧手段により、中間転写ベルト21のトナー像転写面21aに圧接し、トナー像転写面21a上の残存トナーなどを掻き取るクリーニングブレード26aと、クリーニングブレード26aに掻き取られるトナーなどを貯留するトナー貯留容器26bとを含んで構成される。クリーニングブレード26aには、たとえば、弾性を有するゴム材料(たとえば、ウレタンゴム)などからなるブレードを使用できる。
中間転写手段3によれば、感光体ドラム11y,11m,11c,11b上に形成される各色のトナー像が、中間転写ベルト21のトナー像転写面21aの所定位置に重ね合わせて転写され、トナー像が形成される。このトナー像が転写手段5において記録媒体7に転写された後、トナー像転写面21a上の残存トナー、オフセットトナー、紙粉などがベルトクリーナ26により除去され、トナー像転写面21aには再度トナー像が転写される。
2次転写手段4は、中間転写ベルト21を介して支持ローラ24に圧接しかつ軸線方向に回転駆動可能に設けられる2次転写ローラ28を含んで構成される。2次転写ローラ28には、たとえば、直径10mmの芯金の外周に、厚さ4mmのウレタンゴム層を設けたものが用いられる。ウレタンゴム層には、導電性を付与するために、カーボンなどの導電剤が配合される。また、2次転写ローラ28は、たとえば、1N/cmの線圧で支持ローラ24に押圧される。中間転写ベルト21上のトナー像を、2次転写ローラ28により記録媒体7に転写する際に、2次転写ローラ28の芯金にはたとえば+1kVの電圧が印加される。
2次転写手段4によれば、多色トナー像を担持する中間転写ベルト21が、2次転写ローラ28と支持ローラ24との圧接部に搬送されるのに同期して、後述する記録媒体供給手段6から記録媒体7が送給され、中間転写ベルト21上の多色トナー像が記録媒体7の表面に押圧により転写される。多色トナー像が転写された記録媒体7は、定着手段5に搬送される。
定着手段5は、多色トナー像が転写された記録媒体7を後述の定着液付着手段33に向けて搬送する搬送ベルト30と、駆動ローラ31と、テンションローラ32と、定着液付着手段33とを含んで構成される。
搬送ベルト30は、駆動ローラ31とテンションローラ32との間に張架されてループ状の搬送経路を形成する無端ベルトである。搬送ベルト30には、たとえば、導電剤を混入して導電性を付与した厚さ100μmのポリイミドフィルムの少なくとも一方の表面に、PTFEからなる厚さ10μmの表面層を設けたものを使用できる。
駆動ローラ31は、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に設けられる。駆動ローラ31には、たとえば、アルミニウムなどの金属からなる中空ローラが使用できる。
テンションローラ32は、搬送ベルト30がたるまないように、搬送ベルト30に所定の張力を付与する。テンションローラ32には、たとえば、金属製軸体と、金属製軸体の表面に形成される被覆層とを含んで構成される。また、金属製軸体のみからなるものでもよい。中間転写ベルト21がたるまないように、中間転写ベルト21に所定の張力を付与する。金属製軸体の材料には、たとえばステンレス鋼が使用され、被覆層の材料にはたとえばフッ素ゴムが使用される。
定着液付与手段33は、記録媒体7のトナー像担持面における少なくとも画像形成領域全面に定着液34を付与するノズルアレイ35と、定着液34を貯留する定着液貯留槽36と、定着液貯留槽36からノズルアレイ35に定着液34を供給する定着液供給管37とを含んで構成される。
ノズルアレイ35は、電気的な制御信号に応じて、定着液34の微小液滴を記録媒体7のトナー担持面に向けて飛翔させる微小ノズル(不図示)を、複数配列した装置である。微小ノズルの配列ピッチは、微小ノズルから吐出される定着液34の微小液滴が、記録媒体7のトナー担持面の少なくとも画像形成領域全体を隙間無く被覆するように設定される。また、ノズルアレイ35によれば、微小液滴の直径を適宜変更することができる。液滴径を制御することにより、付与液滴数の密度(ドット数)が制御され、定着液34の付与量をたとえば1g/m2〜10g/m2の範囲で制御できる。たとえば、比重が1g/cm2の定着液34を、液滴径26μm、ピッチ30μmでトナー像が形成された画像部に付与すると、付与量(被覆量)は10g/m2になる。また、比重は同じで、液滴径58μm、ピッチ100μmで付与しても、付与量(被覆量)は10g/m2になる。さらに同比重で、液滴径30μm、ピッチ55μmで付与すると、付与量は4.7g/m2になる。このとき、トナー像が形成されない非画像部には、たとえば、定着液34の付与量が1g/m2になるように制御される。
定着液34の付与量は、トナー像からの距離に応じて、変化させるのが好ましい。すなわち、画像部には、トナーを定着するのに必要な量の定着液を付与する。画像部と非画像部との境界周辺には、記録媒体7の収縮が画像部と同等になるように、画像部よりも少ない量の定着液34を付与する。画像部から離れた非画像部では、定着液34の付与量をさらに少なくする。具体例を図4に示す。図4は、画像部からの距離と定着液34の付与量との関係を示すグラフである。なお、図4においては、画像部の縁からの距離を定着液34の微小液滴1つを1ドットとし、ドット数として示す。図4に示すように、画像部には8g/m2の定着液34を付与し、画像部と非画像部との境界部分に付与される微小液滴は5g/m2の割合で付与し、この画像部と非画像部との境界部分に付与されるに微小液滴から10ドットは2.5g/m2、その隣接50ドットは2g/m2、さらにその隣接100ドットは1g/m2の付与量にする。それより離れる部分は図示しないけれども、0.5g/m2になるように付与すればよい。このようにして、定着液34の付与量を画像部からの距離に応じて段階的に変化させることによって、記録媒体7におけるシワの発生を防止できるとともに、非画像部の多い画像では、定着液34の使用量をさらに低減できる。なお、画像部の縁からの距離および付与量は、使用されるトナー、トナー量、トナー像の面積などの画像条件に応じて広い範囲から適宜選択できるけれども、たとえば、画像部には、15〜5g/m2、境界部分には6〜3g/m2、境界部分から10ドットの部分には4〜2g/m2、その隣接50ドットには3〜1g/m2、さらにその隣接100ドットには2〜0.5g/m2の定着液34を付与すればよい。また、境界部分からのドット数も、上記の10ドット、その隣接50ドット、さらにその隣接100ドットというドット間隔に限定されず、画像条件に応じて適宜変更できる。すなわち、画像部から離れる程、定着液34の付与量を減らすのが重要である。
また、定着液34の微小液滴の液滴径は、トナーの体積平均粒径の5倍またはそれよりも小さい方が好ましい。一般に、定着液34の液滴の径が大きいと、液滴がトナー像に付着する瞬間にその周囲のトナーを凝集させるので、トナー像に微小なむらを生じる。液滴の径がトナーの平均粒径よりも著しく大きいと、凝集するトナーが多くなり、目視でもむらを確認できるほどになる。これは、トナー粒子の大きさと液滴の液量との相対的な関係で規定されるものと推測される。すなわち、液量が多いと、通常トナー粒子は液滴によって押し流されて凝集するけれども、トナー粒子が相対的に大きくなると、押し流されることがないと考えられる。したがって、液滴径をトナーの体積平均粒径の5倍以下に調整することによって、液滴がトナー像に付着する時のトナー粒子の凝集が抑制され、均一で高品位な画像が得られる。また、定着液34を微小液滴にして付与するという構成を採ることによって、少ない量の定着液34で、非画像部全域を被覆できる。その際に、非画像部に付着するかぶりトナーにも定着液34を付与できるので、かぶりトナーも記録媒体7に定着できる。これにより、かぶりトナーが手、衣服などに付着して汚染するのを防止できる。定着液34の微小液滴の液滴径は、たとえば、ノズルアレイ35を用いることによって適宜調整できる。ノズルアレイ35としては、ピエゾ素子(圧電素子)を用いる方式などの、インクジェットプリンタにおける方式が用いられるので、ピエゾ素子に印加する電圧を適宜調整することによって、液滴径を調整できる。
このようなノズルアレイ35を用いることによって、画像信号に基づいて、画像部と非画像部との定着液34の塗り分けを容易に実施できる。したがって、種々の定着液34の付与パターンが得られ、記録媒体7におけるシワ発生の防止および定着液34の消費量低減をより高い次元で両立できる。さらに、未定着のトナー像に非接触で定着液34を付与できるので、トナー像を乱すことがなく、高品位の画像が得られる。本実施の形態では、定着液34の画像部への付与量を10g/m2、非画像部への付与量を1g/m2に設定する。
定着液貯留槽36に貯留される定着液34は、図示しない補給制御手段によって、定着液供給管37を介してノズルアレイ35に供給される。
定着液34は、トナーを軟化または膨潤させる液状物である。定着液34は、好ましくは、トナーを軟化または膨潤させる作用を有する有機化合物(以後「トナー定着用有機化合物」と称す)と、トナー定着用有機化合物を溶解または分散できる液体とを含む。該液体としてはトナー定着用有機化合物を溶解または分散し得るものであれば特に制限されないけれども、水が好ましい。したがって、トナーを軟化および/または膨潤させる作用を有する液状物の好ましい具体例としては、水と、トナー定着用有機化合物とを含む組成物が挙げられる。水は粘度が小さいので、トナー粒子同士の界面、トナー粒子と記録媒体7との接触面などに浸透する。したがって、トナー定着用有機化合物がトナー粒子同士の界面、トナー粒子と記録媒体7との接触面などに運ばれ、トナーを瞬時に軟化および/または膨潤させる。トナー定着用有機化合物としては、たとえば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、フェノール、ベンジルアルコール、メチルベンジルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトンなどのケトン類、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルイソブチルエーテル、ジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、オクチルフェニルエーテルなどのエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、オレイン酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、コハク酸ジブチル、フタル酸ジエチル、酒石酸ジエチル、パルミチン酸エチル、ジオクチルフタレートなどが挙げられる。これらの中でも、エーテル類およびエステル類が好ましく、エステル類が特に好ましい。
定着液34における水の含有量は特に制限されないけれども、好ましくは定着液34全量の20重量%以上、さらに好ましくは20〜95重量%、特に好ましくは30〜90重量%である。20重量%未満では、定着液34としての浸透力が小さくなり、トナー量が多い場合に、表面のトナーのみが軟化および/または膨潤し、記録媒体7との接触面では軟化および/または膨潤が進まないので、トナーと記録媒体7との接着強度が低下し、充分な定着強度が得られない。95重量%を超えると、トナーの軟化および/または膨潤作用が低くなり、やはり充分な定着強度が得られない。一方、トナー定着用有機化合物の含有量も特に制限されないけれども、好ましくは定着液34全量の80重量%以下、さらに好ましくは5〜80重量%、特に好ましくは10〜70重量%である。
定着液34には、水およびトナー定着用有機化合物のほかに、トナー定着用有機化合物の水中での分散状態を保ち、定着液34のトナーとの濡れ性を向上させる界面活性剤を添加できる。界面活性剤としては公知のものを使用でき、たとえば、ラウリル硫酸エステルナトリウム塩などの高級アルコール硫酸エステル塩、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸金属塩、脂肪酸誘導体硫酸エステル塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性剤、四級アンモニウム塩、複素環アミンなどの陽イオン界面活性剤、アミノ酸エステル、アミノ酸などの両性イオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどが挙げられる。
さらに定着液34には、分散助剤として、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、モノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのカップリング剤を添加できる。
定着液34の溶媒として、水に代えてハイドロフルオロエーテル類を用いることもできる。ハイドロフルオロエーテル類も、トナー定着用有機化合物を軟化および/または膨潤させることができる。その具体例としては、たとえば、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテルなどが挙げられる。ハイドロフルオロエーテル類は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。ハイドロフルオロエーテル類の含有量は特に制限されないけれども、好ましくは定着液34全量を50〜99重量%、さらに好ましくは50〜95重量%、特に好ましくは60〜90重量%であり、残部がトナー定着用有機化合物である。
定着手段5によれば、搬送ベルト30に載置されて搬送される記録媒体7のトナー担持面の少なくとも画像形成領域全域に、ノズルアレイ35から吐出される定着液34の液滴が付与される。その際、画像形成領域のうち、画像部には非画像部よりも多い量の定着液34が付与される。記録媒体7のトナー担持面の多色トナー像が記録媒体7に定着され、画像が形成される。画像が形成された記録媒体7は、排紙ローラ38により、画像形成装置1の外部に設けられる排紙トレイ39に排出される。
記録媒体供給手段6は、記録媒体7を貯留する記録媒体カセット40と、記録媒体7を搬送路Pに1枚ずつ送給するピックアップローラ41と、中間転写ベルト21上の多色トナー像が2次転写ローラ28と支持ローラ24との圧接部に搬送されるのに同期して、2次転写ローラ28と支持ローラ24との圧接部に記録媒体7を送給する一対のレジストローラ42a,42bとを含んで構成される。
記録媒体供給手段6によれば、記録媒体カセット40内に貯留される記録媒体7が、ピックアップローラ41により1枚ずつ搬送路Pに送給され、さらに、レジストローラ42a,42bにより、2次転写ローラ28と支持ローラ24との圧接部に送給される。
画像形成装置1によれば、トナー像形成手段2により中間転写ベルト21上に形成される多色トナー像が、2次転写ローラ28と支持ローラ24との圧接部において、記録媒体7に転写され、記録媒体7の多色トナー像には、ノズルアレイ35から定着液34の液滴が付与され、多色トナー像が記録媒体7上に定着し、画像が形成される。
本実施の形態によれば、記録媒体7のトナー担持面において、少なくとも画像形成領域のうちの画像部には、非画像部よりも多い量の定着液34が付与される。これにより、画像部だけでなく、非画像部にも収縮が起こり、画像部と非画像部との収縮の差が小さくなるので、画像部のみの局所的な伸縮によるシワの発生を防止できる。
図5は、本発明の実施の第2形態である画像形成装置45の要部の構成を模式的に示す側面図である。図6は、定着液塗布ローラ50の構成を模式的に示す断面図である。
画像形成装置45は、画像形成装置1に類似の構造を有し、特にトナー像形成手段2および記録媒体供給手段6については同一の構造を有するので、図示および説明を省略する。また他の部分についても、同一の構造を有する部材には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
画像形成装置45は、中間転写ベルト21a上の多色トナー像を記録媒体7に転写する前に、多色トナー像に定着液34を付与すること、および、記録媒体7に多色トナー像を転写する際に、転写と同時に定着を行なうことを特徴とする。このような構成を採ることによって、記録媒体7上に担持されるトナー像に定着液34を付与する場合に比べて、さらに少量の定着液34で、トナー像を記録媒体7に定着できる。これは、トナーを軟化および/または膨潤させることなく、記録媒体7の内部に浸透する定着液34があるためと考えられる。
すなわち、画像形成装置45は、図示しないトナー像形成手段2(ただし感光体ドラム11y,11m,11c,11bを除く)と、中間転写手段3aと、定着液付着手段46と、転写定着手段47と、画像搬送手段48、図示しない記録媒体供給手段6とを含んで構成される。
中間転写手段3aは、中間転写ベルト49を構成する材料が、画像形成装置1における中間転写ベルト21と異なる以外は、画像形成装置1における中間転写手段3と同一の構成を有する。
中間転写ベルト49には、厚さ100μmのポリイミドフィルム表面に、厚さ500μmのシリコンゴム層およびPTFEとPFAとを8:2(重量比)の割合で含むフッ素樹脂組成物からなる厚さ20μmの被覆層を順次積層したベルトが用いられる。これに限定されず、導電性を付与したポリカーボネート、フッ素ゴムなどからなるフィルムに、PTFEおよび/またはPFAから成る被覆層を設けたものでもよい。
中間転写ベルト49のトナー担持面(被覆層表面)49aは、トナーとの付着力が非常に低いフッ素樹脂組成物によって形成されるので、トナー像を記録媒体7に転写定着する際に、トナー像の実質的に全量が記録媒体7に転写定着される。また、トナー担持面49aは、定着液34を浸透しないフッ素樹脂組成物によって形成されるので、付与される定着液34がそのままトナー担持面49a上に残り、浸透することがない。すなわち、必要最低限の付与量でトナー像を軟化および/または膨潤させ得るので、定着液34の使用量を低減できる。
中間転写ベルト49のトナー担持面49aは、その表面粗さの度合いで定着液34の付着量が変化するので、できるだけ平滑であることが望ましい。具体的には、トナー担持面49aの表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra)として、トナーの体積平均粒径の1/5以下であることが好ましく、1/20以下であることがさらに好ましい。1/5以下にすると、非画像部への定着液34の付着量を画像部の付着量の10重量%以下にできる。1/20以下にすると、非画像部への定着液34の付着量を画像部の付着量の5重量%以下にできる。さらに、表面粗さが1/100になっても、表面積は「0」ではないので、非画像部には画像部の1%程度の定着液34を付与できるけれども、中間転写ベルト49の製造コストなどを考慮すると、表面粗さは1/100以上であることが好ましい。したがって、トナー担持面49aの表面粗さは、Raとして、好ましくは1/100〜1/5、さらに好ましくは1/100〜1/20である。この範囲にすることによって、非画像部にも適量の定着液34を付与できる。
トナー担持面49aの定着液34に対する接触角は、絶対値として80度以下であることが好ましい。80度を超えると、定着液34が均一に付着せず、撥かれて大きな液滴を形成するので、記録媒体7におけるシワなどの発生を防止できないおそれがある。本実施の形態では、トナー担持面49aの接触角は70度である。
また、中間転写ベルト49には、弾性変形容易なシリコンゴム層が形成されるので、中間転写ベルト49のトナー担持面49aは記録媒体7の表面の凹凸に従って変形する。このため、記録媒体7の凹部にもトナー像を正確に転写でき、均一な転写定着像(画像)が得られる。
中間転写ベルト49を用いることによって、定着液34が中間転写ベルト49を介して記録媒体7に付与されるので、後述の定着液塗布ローラ50に紙繊維などの紙粉が付着しないという利点が得られる。これによって、たとえば、図示しない定着液溜を設け、定着液塗布ローラ50を定着液溜中の定着液34に浸漬しながら回転駆動させ、定着液塗布ローラ50の表面に定着液34を付着させ、除去ブレードにより定着液塗布ローラ50表面の定着液34の量を調整する場合に、定着液34に紙粉が混入せず、また除去ブレードへの紙粉の噛み込みによる定着液塗布ローラ50上の定着液層の不均一が生じることがないので、長期間にわたって高品質な画像を安定して得ることができる。
中間転写手段3aによれば、図示しないトナー像形成手段2(ただし感光体ドラム11y,11m,11c,11bを除く)により形成されるイエロー色、マゼンタ色、シアン色および黒色のトナー像が、中間転写ベルト49のトナー担持面49a上で重ね合わされ、多色トナー像が形成される。
定着液付着手段46は、支持ローラ23,24間を駆動する中間転写ベルト49のトナー担持面49aに圧接しかつ図示しない駆動手段により回転駆動可能に設けられる定着液塗布ローラ50を含んで構成される。
定着液塗布ローラ50は、トナー像に直接接触して定着液34を付与するものであり、芯金52と、芯金52の表面に、弾性変形可能でかつ定着液34の浸透保持が可能な材料からなる浸透制御層53と、浸透制御層53の表面に形成される多孔質膜54とを含んで構成される。芯金52の内部には定着液34が貯留され、定着液34を浸透制御層53に供給する定着液供給孔52aが所定の間隔を空けて複数個設けられる。また、多孔質膜54の厚さ、空孔率、材質などは、定着液34の組成などに応じて適宜変更できる。本実施の形態では、芯金52は、外径15mm、肉厚0.5mmであり、定着液供給孔52aは5mm間隔で設けられ、口径0.1mmである。浸透制御層53は2mmの厚さを有し、連続気泡を有するゴム発泡体からなる。ゴム発泡体に代えて、フェルトを使用できる。多孔質膜54は、厚さ50μm、空孔率80%のPTFE多孔質膜である。該PTFE多孔質膜中の孔の径0.5μmである。
定着液塗布ローラ50において、最外層である多孔質膜54の定着液34に対する接触角は、80度以下であることが好ましい。80度を超えると、定着液34が多孔質膜54を透過できず、定着液34をトナー像に付与できなくなる。本実施の形態では、多孔質膜54の接触角は60度である。
また、多孔質膜54の定着液34に対する接触角と、中間転写ベルト49(より正確にはPTFEとPFAとからなる被覆層)の定着液34に対する接触角との差が小さいことが好ましく、その差が20度以内であることがさらに好ましい。この範囲であれば、中間転写ベルト49のトナー担持面49aにおける非画像部にも、定着液34を均一に付与できる。ここで、接触角は、接触角測定装置(商品名:自動接触角測定器CA−V、協和界面科学(株)製)を用い、測定液適量2μlの条件下に測定される値である。
定着液塗布ローラ50への定着液34の補給は、たとえば、定着液塗布ローラそのものをカートリッジ方式で交換することにより行われる。また、画像形成装置45内に図示しない定着液貯留槽を設け、この定着液貯留槽から定着液34を補給してもよい。
定着液塗布ローラ50においては、芯金52の内部に貯留される定着液34が定着液供給孔52aから浸透制御層53に流入し、浸透制御層53および多孔質膜54を透過して表面に染み出し、トナー像に付与される。
定着液付着手段46によれば、中間転写ベルト49のトナー担持面49a上に形成される多色トナー像に、定着液塗布ローラ50により接触方式で定着液34を付与する。本実施の形態では、定着液34の付着量は、画像部で約5g/m2、非画像部で約0.5mg/m2である。これは、記録媒体7上のトナー像に付与する場合の約1/2である。定着液34の付与により、多色トナー像は軟化および/または膨潤する。
転写定着手段47は、図示しない加圧手段により中間転写ベルト49を介して支持ローラ24に押圧されかつ図示しない駆動手段により回転駆動可能に設けられる加圧ローラ51を含んで構成される。
加圧ローラ51には、芯金の周囲に、弾性層および表面層が順次形成されてなるローラを用いる。本実施の形態では、芯金の表面に、硬度50度(JIS−A)のシリコンゴムからなる厚さ3mmの弾性層、およびPFAからなる厚さ20μmの表面層を順次積層してなる、外径28mmのローラが用いられる。また、加圧ローラ51は、中間転写ベルト49および支持ローラ24に対して、5N/cmの押圧力で圧接される。加圧ローラ51には電圧は印加されない。
転写定着手段47によれば、定着液34の付与により軟化および/または膨潤したトナーからなるトナー像は、中間転写ベルト49のトナー担持面49aに担持された状態で、加圧ローラ51と支持ローラ24との圧接部に搬送される。それと同期して、記録媒体供給手段6からレジストローラ42a,42bを介して記録媒体7が同じ圧接部に送給される。そして、トナー像と記録媒体7とが押圧下に重ね合わされ、トナー像が記録媒体7に転写および定着される。転写定着の際には、トナー像が記録媒体7に押圧されて紙繊維内に強く入り込み、それと同時にトナー粒子同士が融合し、トナー像の表面が平滑になる。これにより、減法混色による発色性と表面の光沢性に優れる高品位のカラー画像が得られる。
画像搬送手段48は、画像形成装置1の定着手段5において、定着液付着手段33を含まない以外は同一の構成を有するので、同一の参照符号を付して説明を省略する。画像搬送手段48によれば、転写定着手段47において画像が形成された記録媒体7を搬送ベルト30に載置して搬送し、排紙ローラ38により、画像形成装置45の外部に設けられる排紙トレイ39に排出される。
画像形成装置45によれば、トナー像形成手段2により中間転写ベルト49上に形成される多色トナー像に定着液付着手段46から定着液34が付与され、多色トナー像が軟化および/または膨潤され、さらに加圧ローラ51と支持ローラ24との圧接部において、記録媒体7に転写定着されて画像が形成される。この記録媒体7は画像運搬手段48により画像形成装置45の外部の排紙トレイ39に排出される。
図7は、本発明の実施の第3形態である画像形成装置55の要部の構成を模式的に示す側面図である。
画像形成装置55は、画像形成装置1,45に類似の構造を有し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。また、同一部分については、図示および説明を省略する。
画像形成装置55は、中間転写ベルト21のトナー担持面21aに形成される多色トナー像を転写定着ローラ58に転写し、転写定着ローラ58上で多色トナー像を加熱しながら、該多色トナー像に定着液34を接触付与してトナーを軟化および/または膨潤させ、記録媒体7に転写し、多色トナー像の記録媒体7への転写および定着を同時に行なうことを特徴とする。
画像形成装置55は、トナー像形成手段(不図示)と、中間転写手段(中間転写ベルト21および支持ローラ24を除いて不図示)と、転写定着手段56と、画像搬送手段(不図示)と、記録媒体供給手段(不図示)を含むことを特徴とする。
トナー像形成手段は、画像形成装置1におけるトナー像形成手段2に類似の構造を有する。ただし、中間転写ベルト21の送り方向を矢符57の方向、すなわち画像形成装置1における送り方向とは反転させることに伴い、矢符57の方向の上流側から作像ユニット10y,10m,10c,10bが配置される。それに伴い、各作像ユニット内の各部材の回転駆動方向も逆回転になる。作像ユニット10y,10m,10c,10bの配置は、画像形成装置1におけるのとは逆になる。
中間転写手段も、画像形成装置1における中間転写手段3と類似の構造を有する。ただし、前述のように、中間転写ベルト21の送り方向を矢符57の方向に変更するので、ベルトクリーナ26が支持ローラ25ではなく、支持ローラ23の所で中間転写ベルト21のトナー担持面21aに当接するように設けられる。
転写定着手段56は、内部に加熱手段59を有しかつ図示しない駆動手段により矢符60の方向に回転駆動可能に設けられる転写定着ローラ58と、転写定着ローラ58の回転駆動方向上流側から順に設けられる、転写定着ローラ58に定着液34を付与する定着液付着手段61、加圧ローラ51、クリーニング手段62および温度センサ63とを含んで構成される。なお、転写定着ローラ58の回転駆動方向において、温度センサ63の下流側では、転写定着ローラ58と支持ローラ24とが中間転写ベルト21を介して圧接する。
転写定着ローラ58には、金属製の芯金の表面に、導電弾性層および表面層を順次形成したローラが用いられる。本実施の形態では、厚さ1mmの炭素鋼からなる芯金に、体積抵抗10−8〜10−9Ω・cmのシリコンゴムからなる厚さ3mmの導電弾性層を設け、さらにPFAからなる厚さ20μmの表面層を設けてなる外径30mmのロールが用いられる。転写定着ローラ58には、トナーの帯電電位とは逆電位の電圧、たとえば+1kVの電圧が印加され、静電的にトナーを引き付けて転写するように構成される。転写定着ローラ58の内部に設けられる加熱手段59には、たとえば、ハロゲンランプからなる加熱ヒータが用いられる。加熱手段59は、転写定着ローラ58の表面温度を検知する温度センサ63からの信号に基づいて、転写定着ローラ58の全表面温度が均一になるように加熱を行う。
この転写定着ローラ58によって、トナー粒子の集合体であるトナー像は、トナー粒子間の間隙がトナー粒子の溶融によって消失しない程度の温度、好ましくはトナー粒子に含まれる結着樹脂のガラス転移点以上、該結着樹脂の軟化点未満、特に好ましくは50〜130℃の温度に加熱される。これによって、次工程である定着液34の付与の際に、定着液34がトナー像の内部まで浸透してトナー像全体を軟化および/または膨潤させるので、トナー像と記録媒体7との付着力が一層向上する。なお、トナーが結着樹脂とともに結着樹脂よりも軟化点の低いワックスを含む場合は、トナーの加熱温度は、好ましくはワックスの軟化点〜結着樹脂の軟化点、さらに好ましくはワックスの軟化点〜結着樹脂のガラス転移点、特に好ましくはワックスの軟化点付近の温度である。ここで、ワックスの軟化点付近とは特に制限はないけれども、好ましくは軟化点±10℃、さらに好ましくは軟化点±5℃である。
転写定着ローラ58の表面温度は、トナーに含まれる結着樹脂およびワックスの種類に応じて適宜選択できるけれども、省エネルギーの観点からは、出来るだけ低いことが好ましい。具体的には、100℃以下であることが好ましい。100℃以下であれば、放熱による熱エネルギーの損失を小さくできる。さらに、画像形成装置55を起動した後の、昇温時に必要なエネルギーが少なく、かつ短時間で所定の温度に達するので、ウォームアップ時間を短縮できる。これにより、待機時間中の保温動作が不要になるので、装置全体としての省エネルギーを図り得る。また、100℃以下にガラス転移点および/または軟化点を有する結着樹脂、100℃以下に軟化点を有するワックスも多数知られているので、これらから選択してトナーを製造すればよい。
本実施の形態では、ガラス転移点が60℃であるポリエステルを結着樹脂として含有するトナーを用いるので、転写定着ローラ58の表面温度が68℃程度になるように、加熱手段59であるヒータを制御するのが好ましい。また、前記ポリエステル中に、軟化点70℃のワックスが分散したトナーを用いる場合には、転写定着ローラ58の表面温度は80℃程度にすればよい。
転写定着ローラ58と中間転写ベルト21との間には図示しない電圧印加手段により転写電界が印加され、中間転写ベルト21のトナー担持面21aに形成されるトナー像が静電的に転写定着ローラ58に転写される。転写定着ローラ58に転写されるトナー像は、転写定着ローラ58の内部の加熱手段59により加熱され、次工程の定着液34の付与に供される。
定着液付着手段61は、定着液34を貯留する定着液溜64と、転写定着ローラ58に圧接し、その一部が定着液溜64に貯留される定着液34中に浸漬しかつ図示しない駆動手段により矢符66の方向に回転駆動可能に設けられる定着液塗布ローラ65と、定着液塗布ローラ65の表面に圧接しかつ図示しない駆動手段により矢符68の方向に回転駆動可能に設けられ、定着液塗布ローラ65の表面に付着する定着液34を適量に規制する規制ローラ67と、一端を定着液溜64に固定されかつ他端が規制ローラ67の表面に圧接するように設けられ、規制ローラ67表面の定着液34を除去する除去ブレード69とを含んで構成される。なお、定着液塗布ローラ65と規制ローラ67とは、たとえば、単一のギア列により駆動され、一定の周速比で回転する。
定着液溜64には、図示しない定着液貯留槽から、定着液34の消費状況に応じて、定着液34の液面高さが一定になるように、定着液34が補充供給される。
定着液塗布ローラ65には、金属製の芯金の表面に、弾性層および親水性処理を施した多孔質層を順次積層してなるローラが使用される。また、これに限定されず、金属製の芯金表面に、弾性および親液性を有する材料からなる被覆層を設けたローラでも良い。このような材料としては、たとえば、アルミニウムなどの金属、親水性樹脂、EPDMなどのゴム材料が挙げられる。このような親液性の材料は、定着液34との親和性が大きいので、定着液塗布ローラ65の表面で定着液34を薄層として保持できる。このため、少量の定着液34を広い範囲に塗布できるので、定着液34の消費量を低減できるとともに、過剰な定着液34がトナー像に付着してトナーを押し流し、トナー像を乱すのをも防止できる。なお、本実施の形態では、径12mmの芯金の表面に、弾性を有するシリコンゴムからなる厚さ4mmの弾性層を積層し(この時点で外径20mm)、さらに多孔質PTFEからなりかつ親水性処理を施した厚さ10μmの多孔質層を積層してなるローラが使用される。また、本実施の形態では、定着液塗布ローラ63の転写定着ローラ58に対する圧接力は0.5N/cmである。また、本実施の形態では、定着液塗布ローラ65は、中間転写ベルト21の回転速度と等速度で回転駆動する。
規制ローラ67には、たとえば、金属製ローラが用いられる。本実施の形態では、外径12mmのステンレス鋼製ローラである。また本実施の形態では、規制ローラ67は、定着液塗布ローラ65の周速度に対して1/2の周速度で、定着液塗布ローラ65との圧接部で表面が逆方向に移動する方向、すなわち矢符68の方向に回転する。
除去ブレード69には、たとえば、金属製の板状物が用いられる。本実施の形態では、厚さ40mmのステンレス鋼製の板が用いられる。除去ブレード69は、その先端が規制ローラ67の表面に圧接し、規制ローラ67表面に付着する定着液34を除去する。
定着液付着手段61によれば、まず、定着液塗布ローラ65が定着液溜64の定着液34中を回転することにより、定着液塗布ローラ65の表面に定着液34が付着する。この定着液34は、規制ローラ67によりほぼ一定の厚さを有する薄層に形成され、定着液塗布ローラ65と転写定着ローラ58との圧接部において、転写定着ローラ58上のトナー像に付与される。トナー像は、転写定着ローラ58との接触面から加熱され、外周側から定着液34を付与され、加熱された状態で軟化および/または膨潤する。一方、規制ローラ67の表面に付着する余分な定着液34は、除去ブレード69により、規制ローラ67の表面から除去される。
このように、本実施の形態では、中間転写ベルト21とは別のトナー担持体(転写定着ローラ58)上でトナー像に定着液34を付与するので、中間転写ベルト21に定着液34が付着し難いという利点がある。また、中間転写ベルト21上ではなく、転写定着ローラ58上でトナー像を加熱するので、中間転写ベルト21の温度が上昇し難い。このため、トナー像形成手段の構成部材の温度上昇、トナー像形成過程中での定着液34によるトナーの変質などが防止され、長期間にわたって安定的に高品位の画像を得る事ができる。
また本実施の形態では、トナー像は、一方の面(転写定着ローラ58表面=トナー像の下層)から加熱され、かつ他方の面(転写定着ローラ58の外周側=トナー像の上層)から定着液34の付与を受けるので、記録媒体7に対して充分な付着力を示す程度に軟化および/または膨潤させることができ、記録媒体7への定着強度の高い画像が得られる。加熱だけでは、転写定着ローラ58に接する部分(トナー像の下層)ではトナーが充分軟化および/または膨潤するけれども、トナーの大部分は熱伝導性の低い結着樹脂であるため、トナー像の上層では温度が上がり難く、トナーが充分に軟化および/または膨潤せず、記録媒体7に対する付着力が不充分になるおそれがある。そのため、トナー像の上層から定着液34を付与することにより、トナー像全体が充分に軟化および/または膨潤し、トナー像の記録媒体7に対する付着力を高めることができる。これによって、定着画像を折り曲げても、定着画像が剥離しない、定着強度の高い画像が得られる。
加圧ローラ51は、転写定着ローラ58に、10N/cmの線圧で圧接される。転写定着ローラ58上の、加熱されかつ定着液34を付与されて軟化および/または膨潤した状態にあるトナー像が、加圧ローラ51と転写定着ローラ58との圧接部に搬送されるのに同期して、図示しない記録媒体供給手段から記録媒体7が送給され、加圧ローラ51による押圧を受けて、トナー像が記録媒体7に転写および定着され、画像が形成される。
クリーニング手段62は、トナー像を記録媒体7に転写した後の転写定着ローラ58の表面に残存するトナー、定着液34、紙粉などを除去し、清浄化する。
温度センサ63は、転写定着ローラ58の表面温度を検知し、その検知情報を信号として転写定着ローラ58内部の加熱手段59に伝達する。
転写定着手段56によれば、中間転写ベルト21上のトナー像を転写定着ローラ58に転写し、転写定着ローラ58上で加熱下にトナー像に定着液34を付与してトナーを軟化および/または膨潤させた後に、記録媒体7に転写および定着し、画像を形成する。
画像搬送手段は、画像形成装置45における画像搬送手段48と同一である。
記録媒体供給手段は、画像形成装置1における記録媒体供給手段6と同一である。
図8は、本発明の実施の第4形態である画像形成装置70の要部の構成を模式的に示す断面図である。
画像形成装置70は、画像形成装置55に類似の構造を有し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略し、同一部分については図示および説明を省略する。
画像形成装置70は、中間転写ベルト21から転写定着ローラ58に転写されるトナー像を、転写定着ローラ58内部に設けられる加熱手段59によって加熱した状態で、定着液34を付与するに際し、定着液付着手段72として、ノズルアレイ35を用いることを特徴とする。
画像形成装置70において、転写定着手段71は、内部に加熱手段59を有する転写定着ローラ58と、転写定着ローラ58の回転駆動方向上流側から順に設けられる、定着液付着手段72、加圧ローラ51、クリーニング手段62および温度センサ63とを含んで構成される。
定着液付着手段72は、ノズルアレイ35を含んで構成される。ノズルアレイ35には、画像形成装置1におけるノズルアレイ35と同じものが使用される。すなわちノズルアレイ35は、電気的な制御信号に応じて、定着液34の微小液滴を記録媒体7のトナー担持面に向けて飛翔させる微小ノズル(不図示)を、複数配列した装置である。微小ノズルの配列ピッチは、微小ノズルから吐出される定着液34の微小液滴が、記録媒体7のトナー担持面の少なくとも画像形成領域全体を隙間無く被覆するように設定される。また、ノズルアレイ35においては、微小液滴の直径を適宜変更することができる。液滴径を制御することにより、付与液滴数の密度(ドット数)が制御され、定着液34の付与量をたとえば1〜10g/m2の範囲で制御できる。たとえば、比重が1g/cm2の定着液34を、液滴径20μm、ピッチ30μmでトナー像が形成された画像部に付与すると、付与量(被覆量)は4.7g/m2になる。また、比重は同じで、液滴径45μm、ピッチ100μmで付与すると、付与量(被覆量)は4.8g/m2になる。
このようなノズルアレイ35としては、圧電素子を用いる方式などの、インクジェットプリンタで用いられる方式が挙げられる。
このようなノズルアレイ35を用いることによって、画像信号に基づいて、画像部と非画像部との定着液34の塗り分けを実施できる。本実施の形態では、定着液34の画像部への付与量を5g/m2、非画像部への付与量を0.5g/m2に設定する。なお、非画像部への定着液34の付与量は均一でもよいけれども、画像形成装置1のノズルアレイ35と同様に、画像部からの距離に応じて、非画像部における定着液34の付与量を変化させても良い。
定着液付着手段72によれば、転写定着ローラ58の表面において加熱状態にあるトナー像に向けて、ノズルアレイ35から定着液34の微小液滴が吐出され、トナー像に定着液34が付与される。
転写定着手段71によれば、中間転写ベルト21上のトナー像を転写定着ローラ58に転写し、転写定着ローラ58上で加熱下にトナー像に定着液34を付与してトナーを軟化および/または膨潤させた後に、記録媒体7に転写および定着し、画像を形成する。
図9は、本発明の実施の第5形態である画像形成装置75の要部の構成を模式的に示す断面図である。
画像形成装置75は、画像形成装置55に類似の構造を有し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略し、同一部分については図示および説明を省略する。
画像形成装置75は、中間転写ベルト21から転写定着ローラ58に転写されるトナー像を、転写定着ローラ58内部に設けられる加熱手段59によって加熱した状態で、定着液34を付与するに際し、定着液付着手段77として定着液霧化ユニット78を用いることを特徴とする。
画像形成装置75において、転写定着手段76は、内部に加熱手段59を有する転写定着ローラ58と、転写定着ローラ58の回転駆動方向上流側から順に設けられる、定着液付着手段77、加圧ローラ51、クリーニング手段62および温度センサ63とを含んで構成される。
定着液付着手段77は、定着液霧化ユニット78を含んで構成される。定着液霧化ユニット78は、導電性材料で構成される定着液霧化ユニット本体79と、本体79の下部に設けられ、定着液を貯留する定着液貯留部80と、定着液貯留部80に貯留される定着液34と接触または浸漬するように設けられる超音波振動子81と、定着液34を霧化するメッシュ82と、定着液34の霧化液滴を還流させる噴霧ダクト83と、噴霧ダクト83内に定着液34の霧化液滴の気流を発生させるファン84と、定着液34の霧化液滴を外方に向けて吐出する開口部85と、噴霧ダクト83を形成するための内部空間86と、本体79に電圧を印加する電源87とを含んで構成される。さらに、図示しないけれども、内部空間86の開口部85近傍にコロナチャージャーおよびファンを設け、定着液34の霧化液滴を開口部85から吐出することもできる。
定着液霧化ユニット78によれば、定着液貯留部80に貯留される定着液34に、超音波振動子81により高周波(本実施の形態では2.4MHzの高周波)が印加され、その振動により、定着液34は3μm程度の液滴になって噴霧ダクト83中に飛散する。液滴の中には、径1mm以上の大きな液滴も存在する。これらの液滴がファン84によりメッシュ82(本実施の形態では0.5mmピッチのステンレス鋼製メッシュ)に導かれ、それを通過して、微細な霧状の液滴になる。この霧状液滴はファン84による気流に乗って噴霧ダクト83内を還流し、開口部85の近傍に到達する。ここで、本体79には電源87によって、転写定着ローラ58に対して電位差が生じ、霧状液滴が転写定着ローラ58上のトナー像の帯電極性とは逆極性である正極性に帯電するように電圧が印加される。本実施の形態では、+50Vの電位差が生じるように電圧が印加される。このように、霧状液滴はトナー像とは逆極性に帯電し、しかも開口部85と転写定着ローラ58とでは+50Vの電位差があるので、霧状液滴は、電界力により開口部85から転写定着ローラ58に向けて付勢される。転写定着ローラ58上のトナー像を含めた画像形成領域に付着する。本実施の形態では、転写定着ローラ58上の非画像部には、1g/m2の割合で定着液34が付着する。なお、非画像部への定着液34の付着量は、転写定着ローラ58と定着液霧化ユニット78との間の電位差を適宜調整することによって、制御できる。記録媒体7の厚さ、吸水度などの特性に応じて、前記電位差を適宜調整することもできる。
一方、トナー像を形成するトナーは負極性に帯電するので、正極性に帯電する霧状液滴を引き寄せる。このため、トナー像が存在する画像部には、定着液34の付与量が非画像部よりも多くなるので、記録媒体7におけるシワの発生を防止できるとともに、定着液34の使用量を減らすことができる。
なお、定着液34の霧化液滴の液滴径は、トナーの体積平均粒径の5倍以下にするのが好ましい。これにより、定着液34の霧化液滴がトナー像に付着する瞬間に、トナーの流動、凝集などによってトナー像が乱れることを防止できる。さらに、液滴径が小さいと、電界力、電荷などにより液滴の進行経路を適宜変更できる。ここで、液滴径は、超音波振動子81の高周波出力、メッシュ82のピッチなどを適宜調整することによって、調整できる。
転写定着手段76によれば、中間転写ベルト21上のトナー像を転写定着ローラ58に転写し、転写定着ローラ58上で加熱下にトナー像に定着液34を霧化液滴として付与してトナーを軟化および/または膨潤させた後に、記録媒体7に転写および定着し、画像を形成する。
本実施の形態では、転写定着ローラ58上の加熱状態にあるトナー像に、定着液34の霧化液滴を付与するけれども、それに限定されず、たとえば、記録媒体7上のトナー像に、定着液34の霧化液滴を付与しても良い。
本実施の形態では、定着液34を霧化するために、超音波振動子81が用いられるけれども、それに限定されず、高速の気流(たとえば空気流)により定着液34を噴霧する方式などの、周知の霧化方式を採用しても良い。
本発明の画像形成装置において、トナーを軟化および/または膨潤させる定着液34を用いるけれども、それに限定されず、公知の接着成分、粘着成分などを含む定着液を用いる子ともできる。接着成分の具体例としては、たとえば、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、SBRゴムなどの高分子エラストマーを主成分とするゴム系接着剤、酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アクリル樹脂などの親水性合成樹脂を水中に分散させてなるエマルジョン接着剤などが挙げられる。この構成を採ることによって、トナーと記録媒体7との付着力が、トナーの軟化および/または膨潤だけではなく、接着成分または粘着成分によっても付与されるので、付着力を高め、トナー像の記録媒体8への定着強度を向上させ得る。
本発明の画像形成装置において、各ローラに用いられる材料、層構造、寸法などは、前述のものに限定されず、この電子写真方式の画像形成分野で常用されるものをそのまままたは適宜変更して用いることができる。ローラに代えて、ベルトなどの無端状部材を用いることもできる。また、中間転写ベルト、搬送ベルトなどは無端状部材とされるけれども、ローラ形態にすることもできる。
本発明の画像形成装置は、各実施の形態において、タンデム方式のカラー画像形成装置として示すけれども、それに限定されず、たとえば、中間転写ベルトが1回回転する毎に1色の画像を重ね合わせる、いわゆる4回転方式のカラー画像形成装置とすることもできる。また、カラー画像形成装置に限定されず、単色画像形成装置とすることもできる。
このような本発明の画像形成装置は、たとえば、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの2種以上の複合機として使用される。