ところで、特許文献1に図示されたエジェクタ式冷凍サイクル(特許文献1の第2図参照)の構成によると、エジェクタを第1、2蒸発器の外部に配置してエジェクタと第1、2蒸発器とをユニット化している。しかしながら、このようなユニット化では、第1、2蒸発器の外部にエジェクタを配置するためのスペースが必要となるので、エジェクタ式冷凍サイクルの小型化効果が不充分となってしまう。
そこで、本出願人は、先に特願2006−12462号(以下、先願例という。)にて、エジェクタを第2蒸発器の冷媒集合用のヘッダタンク内に配置したエジェクタ式冷凍サイクル用の蒸発器ユニットを提案している。そして、この蒸発器ユニットをエジェクタ式冷凍サイクルに適用することで、エジェクタ式冷凍サイクルの充分な小型化を図っている。
さらに、先願例の蒸発器ユニットでは、エジェクタの冷媒吸引口をヘッダタンクの内部空間に直接開口させて、配管等を介することなくヘッダタンク内部空間の冷媒を直接吸引させている。これにより、配管等を介して吸引する場合に対して、吸引時の圧力損失を低減させている。
ところが、先願例の蒸発器ユニットを複数個用意して、これらの蒸発器ユニットを適用したサイクルを実際に作動させると、適用した蒸発器ユニットによってエジェクタ式冷凍サイクルの性能にバラツキが発生してしまうことがあった。そこで、本発明者がその原因について調査したところ、ヘッダタンク内における冷媒吸引口の開口位置が蒸発器ユニット毎に異なっていたことが原因であると判明した。
その理由は、ヘッダタンク内の内部空間では、必ずしも冷媒の状態が均一化しておらず、例えば、ヘッダタンク内の一部分に液相冷媒が偏在して、他の部分に気相冷媒が偏在しているような状態となる。そのため、ヘッダタンク内における冷媒吸引口の開口位置が異なってしまうと吸引される冷媒の気液割合が変わるので、冷媒吸引性能が変化してエジェクタ式冷凍サイクルの性能を変化させてしまうからである。
このような、冷媒吸引性能の変化を抑制するためには、ヘッダタンク内における冷媒吸引口の開口位置が蒸発器ユニット毎に異ならないように、例えば、ヘッダタンク内にエジェクタを配置する際の位置決め手段等を設けることが考えられる。しかしながら、位置決め手段等を設けることはコストアップの要因になるとともに、ヘッダタンク内の内部空間容積を縮小させて内部を通過する冷媒の圧力損失を増加させる要因にもなる。
本発明は上記点に鑑み、流体吸引性能の変化が抑制されたエジェクタを提供することを第1の目的とする。
また、本発明は、エジェクタの流体吸引性能の変化が抑制されたエジェクタ式冷凍サイクル用の蒸発器ユニットを提供することを第2の目的とする。
さらに、本発明は、エジェクタの流体吸引性能の変化が抑制されたエジェクタ式冷凍サイクルを提供することを第3の目的とする。
本発明は、以下の解析的知見に基づいて案出されたものである。本発明者は、エジェクタの流体吸引性能を変化させる要因を調査するために、後述する実施形態と同一構成のエジェクタ式冷凍サイクルにおいて、蒸発器ユニット(20)に搭載するエジェクタ(14)の冷媒吸引口(14b)の配置等を変更して、冷媒吸引時の圧力損失を数値解析計算によって算出した。
なお、冷媒吸引時の圧力損失とは、サイクルの通常運転時の冷媒吸引口(14b)からエジェクタ(14)冷媒流出口まで間の圧力損失である。まず、数値解析計算を行った各条件の冷媒吸引口(14b)の配置、数、開口形状、合計開口面積等を図6により説明する。なお、この調査のエジェクタ(14)の冷媒吸引口(14b)は流体吸引口と同じ意味である。
条件A:エジェクタ(14)のボデー部(140)のうち、ノズル部(14a)側端部に冷媒吸引口(14b)を4個設けている。冷媒吸引口(14b)はエジェクタ(14)の軸周りに均等な間隔で配置されており、開口方向は後述する実施形態の図2に示す矢印の上下前後方向に向いている。また、各冷媒吸引口(14b)の開口形状は同一の円形形状で、開口面積は1つあたり約20mm2である。従って、合計開口面積は20mm2×4=80mm2である。
条件B:条件Aに対して、冷媒吸引口(14b)の位置をエジェクタ(14)の軸周りに45°回転させて配置したものである。従って、冷媒吸引口(14b)の数、開口形状、合計開口面積は条件Aと同じである。
条件C:条件Aに対して、冷媒吸引口(14b)の軸周りの配置列をエジェクタ(14)の軸方向に沿って並列に2列配置したものである。冷媒吸引口(14b)は各配置列に4つ設けられており、合計8つである。従って、合計開口面積は160mm2である。冷媒吸引口(14b)の開口形状は条件Aと同じである。
条件D:条件Aに対して、円形形状の冷媒吸引口(14b)の開口面積を1つあたり10mm2となるように縮小したものである。従って、合計開口面積は40mm2である。なお、冷媒吸引口(14b)の配置、数は条件Aと同じである。
条件E:条件Aに対して、冷媒吸引口(14b)の開口形状を不均一にしたものである。つまり、いずれの冷媒吸引口(14b)の開口形状も円形であるが、下側の冷媒吸引口(14b)の開口面積を他の冷媒吸引口(14b)の開口面積よりも拡大して、合計開口面積が80mm2になるようにしている。なお、冷媒吸引口(14b)の配置、数は条件Aと同じである。
条件F:条件Fに対して、上側の冷媒吸引口(14b)の開口面積を他の冷媒吸引口(14b)の開口面積よりも拡大して、合計開口面積が80mm2になるようにしている。なお、冷媒吸引口(14b)の配置、数は条件Aと同じである。
条件G:条件Aに対して、冷媒吸引口(14b)をボデー部(140)のうちノズル部(14a)の先端側に近い部位の軸周りに配置している。なお、冷媒吸引口(14b)の数、開口形状、合計開口面積は条件Aと同じである。
条件H:条件Gよりも、さらに、冷媒吸引口(14b)をノズル部(14a)の先端側に近い部位の軸周りに配置している。冷媒吸引口(14b)の数、開口形状、合計開口面積は条件Aと同じである。
なお、この調査に用いたエジェクタ(14)では、ボデー部(140)の内部に配置されるノズル部(14a)外側面が冷媒(作動流体)の流れ方向に向かって尖ったテーパ面(14h)になっており、この条件Hでは、冷媒吸引口(14b)は、作動流体の流れ方向に垂直な方向から見て、テーパ面(14h)の一部と重なるように配置されている。
つまり、作動流体の流れ方向に垂直な方向から冷媒吸引口(14b)を見ると、冷媒吸引口(14b)からテーパ面(14h)が見えるように配置されている。
条件I:条件Aに対して、各冷媒吸引口(14b)の開口形状をエジェクタ(14)の軸方向(作動流の流れ方向)に延びる長穴形状に変更したものである。なお、各冷媒吸引口(14b)の開口面積は1つあたり20mm2となっているので、合計開口面積は80mm2である。さらに、冷媒吸引口(14b)の配置、数も条件Aと同じである。
条件J:条件Aに対して、条件Iと同様に、各冷媒吸引口(14b)の開口形状をエジェクタ(14)の軸方向に延びる長穴形状に変更し、各冷媒吸引口(14b)の開口面積は1つあたり70mm2程度に拡大して、合計開口面積は280mm2としたものである。ある。さらに、条件Hと同様に、冷媒吸引口(14b)は、作動流体の流れ方向に垂直な方向から見て、テーパ面(14h)の一部と重なるように配置されている。
次に、図7により、上記の数値解析計算結果を説明する。図7は、各条件における冷媒吸引時の圧力損失および合計開口面積を示すグラフである。
上記の条件のうち、条件AおよびBの数値解析計算結果を比較すると、図7に示すように、冷媒吸引時の圧力損失が同等になっている。従って、冷媒吸引口(14b)を複数設けることで、冷媒吸引口(14b)の配置がエジェクタ(14)の軸周り方向にずれても、冷媒吸引時の圧力損失が変化しにくいことが判った。
このことは、流体吸引口(14b)を複数設けることで、流体吸引口(14b)の配置がエジェクタ(14)の軸周り方向にずれても、エジェクタ(14)の流体吸引性能が変化しにくいことを意味する。
従って、本発明では、高圧流体を減圧膨張させるノズル部(14a)と、ノズル部(14a)を収納するボデー部(140)と、ボデー部(140)に形成されて、ノズル部(14a)から噴射される高速度の作動流体によって内部に流体が吸引される流体吸引口(14b)と、さらに、複数の部材をろう付け接合することによって形成されて、流体吸引口(14b)に吸引される流体が導入されるタンクを形成するタンク部材(18b)とを備え、ノズル部(14a)およびボデー部(140)は、タンク部材(18b)に設けられた開口部を通して、タンク部材(18b)の外側から、タンク部材(18b)の内部に組み付け可能な部品として構成されており、流体吸引口(14b)は、タンク部材(18b)の内部空間のうちボデー部(140)の外側に位置付けられる外側空間から直接流体を吸引するようになっているとともに、複数個設けられており、
タンク部材(18b)の内部には、ボデー部(140)の外側面を固定するセパレータ(18f)が配置されており、タンク部材(18b)とセパレータ(18f)はろう付け接合されているエジェクタを第1の特徴とする。
これによれば、流体吸引口(14b)が複数個設けられているので、流体吸引口(14b)がボデー部(140)の外側空間から直接流体を吸引する際に、流体吸引口(14b)の開口位置がエジェクタ(14)の軸周り方向にずれても、流体吸引時の圧力損失の変化を抑制できる。その結果、流体吸引性能の変化が抑制されたエジェクタを提供できる。
なお、本発明の流体吸引口(14b)がタンク部材(18b)の内部空間のうちボデー部(140)の外側に位置付けられる外側空間から直接流体を吸引するようになっているとは、流体吸引口(14b)がタンク部材(18b)の内部空間のうちボデー部(140)の外側に位置付けられる外側空間に直接開口して、配管等を介することなく、ボデー部(140)の外側空間の流体を吸引できるようになっていることを意味する。
また、第1の特徴のエジェクタにおいて、ボデー部(140)は筒状であり、タンク部材(18b)は筒状であり、ボデー部(140)は、その長手方向がタンク部材(18b)の長手方向に沿って延びるように配置されていてもよい。
さらに、第1の特徴のエジェクタにおいて、ボデー部(140)とセパレータ(18f)との間には、流体の漏れを阻止するシール部材であって、ボデー部(140)とセパレータ(18f)との位置ずれを許容するシール部材(30a、30b)が配置されていてもよい。
さらに、第1の特徴のエジェクタにおいて、タンク部材(18b)は筒状であって、その軸方向一端にボデー部(140)を受け入れる開口部が開設されているとともに、その筒壁には軸方向に沿って並んで配置された複数の流体導入口が開設されていてもよい。
さらに、上記の条件A、CおよびDの数値解析計算結果を比較すると、図7に示すように、合計開口面積が条件D→A→Cの順で大きくなるほど、冷媒吸引時の圧力損失が条件C→A→Dの順で小さくなっている。
つまり、合計開口面積を拡大すれば、流体吸引時の圧力損失を小さくすることができる。本発明のように流体吸引口(14b)を複数個設ければ、1個設ける場合に対して、合計開口面積を拡大しやすいので、流体吸引時の圧力損失を低減しやすい。
次に、上記の条件AとBおよびEとFの数値解析計算結果を比較すると、図7に示すように、合計開口面積が同一の条件であっても各冷媒吸引口(14b)の開口形状が不均一になっている場合は、冷媒吸引口(14b)の配置がエジェクタ(14)の軸周り方向にずれると冷媒吸引時の圧力損失が変化してしまうことが判った。
そこで、上述の第1の特徴のエジェクタにおいて、複数個設けられた流体吸引口(14b)の開口形状は、互いに同一の形状となっていてもよい。これによれば、流体吸引口(14b)の開口形状が同一の形状になっているので、より一層、流体吸引時の圧力損失の変化を抑制することができる。
また、上記の第1の特徴のエジェクタにおいて、ボデー部(140)は、筒状の形状になっており、流体吸引口(14b)は、ボデー部(140)の筒壁に周方向に沿って配置されていてもよい。これによれば、流体吸引口(14b)の配置がエジェクタ(14)の軸方向にずれることを抑制できるので、より一層、流体吸引時の圧力損失の変化を抑制することができる。
さらに、流体吸引口(14b)がボデー部(140)の筒壁に周方向に沿って配置されている第1の特徴のエジェクタにおいて、流体吸引口(14b)は、ボデー部(140)の軸周りに略均等な間隔で配置されていてもよい。
なお、本発明の軸周りに略均等な間隔で配置されているとは、軸周りに完全に均等な間隔で配置されていることのみを意味するものではなく、流体吸引口(14b)をボデー部(140)に形成する際の加工誤差等によって均等な間隔から微小にずれて配置されているものも含む意味である。
次に、上記の条件A、GおよびHの数値解析計算結果を比較すると、図7に示すように、冷媒吸引口(14b)を、条件A→G→Hの順で、ノズル部(14a)側端部からノズル部(14a)の先端側に近づけて配置するほど、流体吸引時の圧力損失が小さくなっている。
そこで、本発明では、高圧流体を減圧膨張させるノズル部(14a)と、ノズル部(14a)を収納するボデー部(140)と、ボデー部(140)に形成されて、ノズル部(14a)から噴射される高速度の作動流体によって内部に流体が吸引される流体吸引口(14b)と、さらに、複数の部材をろう付け接合することによって形成されて、流体吸引口(14b)に吸引される流体が導入されるタンクを形成するタンク部材(18b)とを備え、ノズル部(14a)およびボデー部(140)は、タンク部材(18b)に設けられた開口部を通して、タンク部材(18b)の外側から、タンク部材(18b)の内部に組み付け可能な部品として構成されており、流体吸引口(14b)は、タンク部材(18b)の内部空間のうちボデー部(140)の外側に位置付けられる外側空間から直接流体を吸引するようになっているとともに、複数個設けられており、
ボデー部(140)の内部には、ボデー部(140)の内側面とノズル部(14a)の外側面との間に形成される空間によって、流体吸引口(14b)から吸引された流体が通過する流体通路(14i)が形成され、流体通路(14i)を形成する外側面には、前記作動流体の流れ方向に向かって尖ったテーパ面(14h)が設けられており、流体吸引口(14b)は、作動流体の流れ方向に垂直な方向から見て、テーパ面(14h)の少なくとも一部と重なるように配置されているエジェクタを第2の特徴とする。
これによれば、前述した第1の特徴と同様に、流体吸引時の圧力損失の変化を抑制できるので、流体吸引性能の変化が抑制されたエジェクタを提供できる。
これに加えて、第2の特徴によれば、流体吸引口(14b)が、作動流体の流れ方向に垂直な方向から見て、テーパ面(14h)の少なくとも一部と重なるように配置されているので、流体吸引口(14b)をノズル部(14a)の先端側に近づけて配置することができる。その結果、流体吸引時の圧力損失を小さくすることができる。
また、上述の第1の特徴及び第2の特徴のエジェクタにおいて、流体吸引口(14b)は、円形状になっていてもよいし、ボデー部(140)の軸方向に延びる長穴形状になっていてもよい。
流体吸引口(14b)を円形状とすれば、ボデー部(140)に流体吸引口(14b)を容易に設けることができる。また、ボデー部(140)の軸方向に延びる長穴形状とすれば、円形状にする場合に対して、各流体吸引口(14b)間の間隔を広げることができるので、複数の流体吸引口(14b)を設けてもボデー部(140)の強度を弱めることを抑制できる。
ここで、上記の条件AおよびIを比較すると、円形状に対して、長穴形状を採用すると、同一合計開口面積の場合には冷媒吸引時の圧力損失が増加してしまうものの、条件Jのように、合計開口面積を拡大し、さらに、冷媒吸引口(14b)をノズル部(14a)の先端側に近づけて配置すれば充分に圧力損失を低減させることができる。
また、本発明では、高圧流体を減圧膨張させるノズル部(14a)と、
ノズル部(14a)を収納するボデー部(140)と、
ボデー部(140)に形成されて、ノズル部(14a)から噴射される高速度の作動流体によって内部に流体が吸引される流体吸引口(14b)と、
複数の部材をろう付け接合することによって形成されて、流体吸引口(14b)に吸引される流体が導入されるタンクを形成するタンク部材(18b)とを有するエジェクタ(14)を備えており、
ノズル部(14a)およびボデー部(140)は、タンク部材(18b)に設けられた開口部を通して、タンク部材(18b)の外側から、タンク部材(18b)の内部に組み付け可能な部品として構成されており、
流体吸引口(14b)は、タンク部材(18b)の内部空間のうちボデー部(140)の外側に位置付けられる外側空間から直接流体を吸引するようになっているとともに、複数個設けられており、
さらに、エジェクタ(14)から流出した冷媒を蒸発させる第1蒸発器(15)と、流体吸引口(14b)に吸引される冷媒を蒸発させる第2蒸発器(18)とを備え、
タンク部材は、第1蒸発器(15)および第2蒸発器(18)のうちいずれか一方において、冷媒を集合させるヘッダタンクの機能を兼ね備えるヘッダタンク機能付タンク部材(18b)である蒸発器ユニットを第3の特徴とする。
これによれば、タンク部材が蒸発器用のヘッダ機能付タンク部材(18b)になっており、流体吸引口(14b)がヘッダ機能付タンク部材(18b)の内部空間から直接流体を吸引するようになっているので、蒸発器用のヘッダ機能付タンク部材(18b)内部へエジェクタを組み付ける構成において、エジェクタの流体吸引性能の変化が抑制されたエジェクタ式冷凍サイクル用の蒸発器ユニットを提供することができる。
また、本発明では、上記第3の特徴の蒸発器ユニット(20)を備えるエジェクタ式冷凍サイクルを第4の特徴とする。これによれば、第3の特徴の蒸発器ユニット(20)を備えているので、エジェクタの流体吸引性能の変化が抑制されたエジェクタ式冷凍サイクルを提供することができる。
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
以下、本発明のエジェクタ、このエジェクタを適用した蒸発器ユニット、並びに、このエジェクタおよび蒸発器ユニットを適用したエジェクタ式冷凍サイクルの一実施形態を説明する。なお、この蒸発器ユニットは、エジェクタ式冷凍サイクル用ユニット、あるいは、エジェクタ付き蒸発器ユニットとも呼ばれ得るものである。
図1〜図4は本発明の一実施形態を示すもので、図1は本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を車両用冷凍サイクル装置に適用した例の全体構成図を示す。まず、エジェクタ式冷凍サイクル10において、冷媒を吸入して圧縮する圧縮機11は、電磁クラッチ11a、ベルト等を介して図示しない車両走行用エンジンにより回転駆動される。
この圧縮機11としては、吐出容量の変化により冷媒吐出能力を調整できる可変容量型圧縮機、あるいは電磁クラッチ11aの断続により圧縮機作動の稼働率を変化させて冷媒吐出能力を調整する固定容量型圧縮機のいずれを採用してもよい。また、圧縮機11として電動圧縮機を使用すれば、電動モータの回転数調整により冷媒吐出能力を調整できる。
圧縮機11の冷媒吐出側には放熱器12が接続されている。放熱器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と図示しない冷却ファンにより送風される外気(車室外空気)とを熱交換させて、高圧冷媒を冷却するものである。
なお、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクルでは、冷媒として、フロン系、HC系等の冷媒を採用しており、高圧側冷媒圧力が臨界圧力を超えない亜臨界サイクルを構成している。従って、放熱器12は冷媒を凝縮する凝縮器として作用する。
放熱器12の出口側には受液器12aが設けられており、この受液器12aは縦長のタンク形状のもので、冷媒の気液を分離してサイクル内の余剰液相冷媒を溜める気液分離器である。また、受液器12aの底部側には液相冷媒を流出させる冷媒出口が設けられている。なお、本実施形態では受液器12aは放熱器12と一体的に設けられている。
また、放熱器12として、冷媒流れ上流側に位置する凝縮用熱交換部と、この凝縮用熱交換部からの冷媒を導入して冷媒の気液を分離する受液器12aと、この受液器12aからの飽和液相冷媒を過冷却する過冷却用熱交換部とを有する、いわゆるサブクールタイプの凝縮器を採用してもよい。
受液器12aの冷媒出口側には温度式膨張弁13が接続されている。この温度式膨張弁13は受液器12aから流出した高圧液相冷媒を中間圧に減圧するとともに、温度式膨張弁13から流出する冷媒の流量を調整するものである。
具体的には、本実施形態の温度式膨張弁13は、圧縮機11の吸入側通路に配置された感温部13aを有しており、圧縮機11の吸入側冷媒の温度と圧力とに基づいて圧縮機吸入側冷媒の過熱度を検出し、圧縮機吸入側冷媒の過熱度が予め設定された所定値となるように弁開度(冷媒流量)を調整している。
温度式膨張弁13の下流側は、蒸発器ユニット20の冷媒流入口25へ接続される。蒸発器ユニット20は、エジェクタ14、第1蒸発器15、第2蒸発器18および絞り機構17を一体に構成(ユニット化)したもので、図1の破線内部に示すような内部構成になっている。
なお、図1に示された蒸発器ユニット20の内部構成は、図示の都合上、概略的に示されており、後述するエジェクタ14の冷媒吸引口14bが1個のみ示されているが、本実施形態の冷媒吸引口14bは、後述するように複数個設けられている。
蒸発器ユニット20の内部には、温度式膨張弁13から蒸発器ユニット20へ流入した冷媒の流れを分岐する分岐点Zが配置されており、分岐点Zにおいて冷媒の流れが分流される。そして、分流された一方の冷媒は冷媒通路16aへ流入し、他方の冷媒は分岐通路16bへ流入する。
冷媒通路16aの下流側は、蒸発器ユニット20の内部において、エジェクタ14(具体的には、ノズル部14a入口側)に接続される。エジェクタ14は冷媒を減圧する減圧手段であるとともに、高速で噴射する冷媒流の吸引作用によって冷媒の循環を行う冷媒循環手段でもある。
このエジェクタ14は、冷媒通路16aから流入した中間圧の冷媒の通路面積を小さく絞って冷媒をさらに減圧膨張させるノズル部14aと、ノズル部14aの冷媒噴射口14eと連通するように配置されて、後述する第2蒸発器18から流出した冷媒を吸引する複数個の冷媒吸引口14bを有している。
さらに、エジェクタ14は、ノズル部14aおよび冷媒吸引口14bの下流側にノズル部14aの冷媒噴射口14eから噴射された高速度の冷媒流と冷媒吸引口14bから吸引された吸引冷媒とを混合する混合部14cを有し、混合部14cの下流側に昇圧部をなすディフューザ部14dを有している。
このディフューザ部14dは冷媒の通路面積を徐々に大きくする形状に形成されており、冷媒流れを減速して冷媒圧力を上昇させる作用、つまり、冷媒の速度エネルギーを圧力エネルギーに変換する作用を果たす。また、ディフューザ部14dの出口側は、蒸発器ユニット20の内部において、第1蒸発器15に接続される。
なお、蒸発器ユニット20内部におけるエジェクタ14の具体的配置およびエジェクタ14の具体的形状の詳細は後述する。
第1蒸発器15は、エジェクタ14のディフューザ部14dから流出した冷媒と送風ファン19によって送風された空気との間で熱交換を行って、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる吸熱用熱交換器である。送風ファン19はモータ19aによって駆動される電動ファンであり、モータ19aは空調制御装置(図示せず)から出力される制御電圧によって回転駆動される。
さらに、第1蒸発器15の出口側は、蒸発器ユニット20の冷媒流出口26に接続されており、冷媒流出口26は圧縮機11の冷媒吸引側に接続される。
次に、分岐通路16bの下流側は、蒸発器ユニット20の内部において、絞り機構17を介して第2蒸発器18に接続される。絞り機構17は第2蒸発器18に流入する冷媒を減圧する減圧手段であるとともに、第2蒸発器18に流入する冷媒の流量調整を行う流量調整手段でもある。なお、本実施形態では、後述するように絞り機構17をキャピラリチューブで構成しているが、オリフィス等の固定絞りで構成することもできる。
第2蒸発器18は、絞り機構17から流出した冷媒と送風ファン19送風空気との間で熱交換を行って、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる吸熱用熱交換器である。ここで、第1蒸発器15は送風ファン19によって送風された空気の流れ方向の上流側(風上側)に配置され、第2蒸発器18は空気の流れ方向の下流側(風下側)に配置されている。
従って、送風ファン19より送風された空気は、矢印Y方向に流れ、まず、第1蒸発器15でディフューザ部14dから流出した冷媒と熱交換して冷却され、次に第2蒸発器18で絞り手段17から流出した冷媒と熱交換して冷却されるようになっている。これにより、第1蒸発器15と第2蒸発器18にて同一の冷却対象空間(図示せず)を冷却することができるようになっている。
例えば、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を車両用空調装置に適用すれば車室内空間が冷却対象空間となり、車両用冷凍装置に適用すれば冷凍庫内空間が冷却対象空間となる。また、第1、2蒸発器15、18は上記の如く配置されているので、第1蒸発器15は風上側熱交換器、第2蒸発器18は風下側熱交換器とも呼ばれ得る。
そして、第2蒸発器18の出口側は、蒸発器ユニット20の内部において、エジェクタ14の冷媒吸引口14bに接続される。
次に、上述の蒸発器ユニット20の内部構成を実現する、蒸発器ユニット20の具体的構造を図2により説明する。図2は、蒸発器ユニット20の分解斜視図である。図2の上下左右の各矢印の方向は、蒸発器ユニット20を車両に搭載した状態の方向であり、矢印Yに示す送風ファン19送風空気の流れ方向風上側が前方、風下側が後方となる。
まず、本実施形態では、第1蒸発器15および第2蒸発器18が完全に1つの蒸発器構造として一体化されている。そのため、第1蒸発器15および第2蒸発器18は、送風ファン19送風空気の流れ方向(矢印Y方向)から見ると重なるように配置され、風上側に第1蒸発器15が配置され、風下側に第2蒸発器が配置されている。
また、第1蒸発器15および第2蒸発器18の基本的構成は同一であり、それぞれ内部を通過する冷媒と送風ファン19送風空気とを熱交換させる熱交換コア部15a、18aを備えている。熱交換コア部15a、18aは上下方向に延びる複数のチューブ21と、この複数のチューブ21相互間に配置されるフィン22とを有している。
チューブ21は、内部を冷媒が通過する管であり、断面形状が空気流れ方向Yに沿って扁平な扁平チューブである。フィン22は、空気側伝熱面積を拡大して空気と冷媒との熱交換を促進するもので、薄板材を波状に曲げ成形したコルゲートフィンである。
チューブ21は左右方向に複数本配置されており、隣り合うチューブ21間にフィン22が配置される。具体的には、フィン22は、隣接するチューブ21の平坦な外側面(扁平面)に接合されている。従って、熱交換コア部15a、18aは、チューブ21およびフィン22が左右方向に積層された積層構造によって構成される。
なお、図2では、チューブ21とフィン22の積層構造の一部のみ図示しているが、第1蒸発器15および第2蒸発器18の全域にチューブ21とフィン22の積層構造が構成される。また、この積層構造の空隙部を送風ファン19送風空気が矢印Y方向に通過するようになっている。もちろん、第1蒸発器15および第2蒸発器18は、フィン22を有することなく構成されてもよい。
第1蒸発器15および第2蒸発器18の上側にはそれぞれヘッダタンク15b、18bが配置され、下側にはそれぞれヘッダタンク15c、18cが配置されている。これらのヘッダダンク15b…18cはチューブ21の長手方向(図2の上下方向)両端部に接続されて冷媒の集合・分配を行うものである。
ヘッダタンク15b…18cは、いわゆる分割タイプのヘッダタンクになっており、チューブ21が接続されるプレート部材と、このプレート部材に組み合わされるタンク部材とを有して筒状に構成される。例えば、上側の2つのヘッダタンク15b、18bは、図2に示すように、それぞれプレート部材15d、18dおよびタンク部材15e、18eを組み合わせて構成される。
各プレート部材には、チューブ21の上側または下側端部が挿入されて接合されるチューブ嵌合穴部(図示せず)が形成されており、このチューブ嵌合穴を介してチューブ21と、それぞれのヘッダタンク15b…18cの内部空間とが連通する。また、第1、2蒸発器15、18のチューブ21は互いに独立した冷媒通路を構成しているので、それぞれのヘッダタンク15b…18cの内部空間も互いに独立した空間を構成する。
なお、本実施形態では、上側の2つのヘッダタンク15b、18bが隣接しているので、プレート部材15d、18d同士、および、タンク部材15e、18e同士を一体に形成して、これらを組み合わせることで、ヘッダタンク15b、18bを一体に形成している。下側の2つのヘッダタンク15c、18cも同様である。もちろん、これらのヘッダタンク15b…18cをそれぞれ独立の部材として形成してもよい。
さらに、上側の2つのヘッダタンク15b、18bの内部には、それぞれ、セパレータ15f、18fが配置されている。セパレータ15f、18fは、ヘッダタンク15b、18bの内壁面に接合されて、ヘッダタンク15b、18bの内部空間を仕切る仕切板である。
具体的には、ヘッダタンク15bには、セパレータ15fが配置されて、左側の内部空間Kの容積と右側の内部空間Lの容積が略同等になるようにヘッダタンク15bの内部空間を仕切っている。また、ヘッダタンク18bには、セパレータ18fが配置されて、左側の内部空間Mの容積と右側の内部空間Nの容積が略同等になるようにヘッダタンク18bの内部空間を仕切っている。
ヘッダタンク18bの左側の内部空間Mには、前述のエジェクタ14がヘッダタンク18bの長手方向(左右方向)に沿って延びるように配置されている。このエジェクタ14は、ノズル部14aの入口側が後述する接続ブロック23と連通するように配置される。
さらに、エジェクタ14の流出側(具体的にはディフューザ部14dの冷媒出口側)は、セパレータ18fに設けられた貫通穴18gを貫通するように配置されて、ヘッダタンク18bの右側の内部空間Nと連通している。その他の蒸発器ユニット20内部におけるエジェクタ14の具体的配置およびエジェクタ14の具体的形状の詳細は後述する。
次に、内部空間Nには、内部空間Nを上下に分割する上下仕切板27が配置されており、エジェクタ14の流出側は内部空間Nの上側空間N1と連通している。また、この上側空間N1は図示しない連通路を介してヘッダタンク15bの右側の内部空間Lと連通している。さらに、内部空間Nの下側空間N2は、ヘッダタンク18bの右側端部の固定絞り接続穴18hを介して、固定絞り17の出口側端部と接続されている。
なお、本実施形態において絞り機構17を構成するキャピラリチューブは、ヘッダダンク15b、18bの長手方向に沿って延びる形状になっており、ヘッダタンク15bの外側面とヘッダタンク18bの外側面との間に形成される谷部に接合されている。従って、絞り機構17の入口側端部は、ヘッダタンク15b、18bの左側端部に配置されることになる。
また、上側の2つのヘッダタンク15b、18bの左側端部(内部空間K、Mの左側端部)には、蒸発器ユニット20の冷媒吸入口25および冷媒流出口26を構成する接続ブロック23が接合されている。
この接続ブロック23は、ブロック部23aとプレート部23bとを有して構成されており、ブロック部23aおよびプレート部23bのそれぞれの対向面には溝部が構成されている。従って、ブロック部23aおよびプレート部23bを一体に固定すると、溝部によって接続ブロック23内部に冷媒通路が形成される。
この冷媒通路は、冷媒流入口25へ流入した冷媒を、ヘッダタンク18bの内部空間Mに配置されたエジェクタ14のノズル部14a入口側およびヘッダタンク15b、18bの外側面に接合された絞り機構17入口側へ導く通路を構成する。従って、前述の分岐点Z、冷媒通路16aおよび分岐通路16bが、接続ブロック23内部に形成された冷媒通路によって構成される。
また、接続ブロック23に形成された冷媒流出口26は、接続ブロック23の厚み方向(左右方向)に貫通する貫通穴によって内部空間Kと連通している。
なお、上側の2つのヘッダタンク15b、18bの右側端部(内部空間L、Nの左側端部)および下側の2つのヘッダタンク15c、18cの両端部には、各ヘッダタンク15b…18cを閉塞するタンクキャップが接合されている。
次に、蒸発器ユニット20内部におけるエジェクタ14の具体的配置およびエジェクタ14の具体的形状の詳細を図3により説明する。なお、図3は、第1、2蒸発器15、18の上側のヘッダタンク15b、18bの水平方向断面図である。
まず、主に内部空間Mに配置されるエジェクタ14は、ヘッダタンク18bの長手方向(左右方向)に沿って延びるボデー部140を有している。ボデー部140はアルミニウム材にて形成されており、中央に細軸部141が設けられた筒状の形状になっている。具体的には、ボデー部140は、図示実施形態のように円筒状に形成することができる。
ボデー部140の内部空間のうち、細軸部141の左側(接続ブロック23側)にはノズル部14aが収容されるノズル部収容空間が形成され、細軸部141には混合部14cが形成され、細軸部141の右側(内部空間N側)にはディフューザ部14dが形成されている。
また、ボデー部140の外側面のうち、ノズル部収容空間側(接続ブロック23側)端部は、接続ブロック23のプレート部23bにOリング30aを介してシール固定され、さらに、ディフューザ部14d側(内部空間N側)端部は、セパレータ18fに設けられた貫通穴18gにOリング30bを介してシール固定されている。
ここで、Oリング30a、30bは、ボデー部140とヘッダタンク18bとの間に配置され、流体の漏れを阻止するシール部材であって、ボデー部140とヘッダタンク18bとの軸方向への位置ずれを許容するシール部材である。この構成は、ボデー部140をヘッダタンクとは別部品として構成し、組み付ける構成を可能とする。
また、エジェクタ14は棒状の外形を呈するように構成され、その両端部がOリング30a、30bによってヘッダタンク18b内に支持されることになる。この構成は、ヘッダタンク18b内に所要のタンク容積を与えることを可能とする。
つまり、エジェクタ14の駆動流となる冷媒の流れ方向に沿って細長い形状となるエジェクタ14を安定的に支持し、しかも複数の冷媒吸引口14bをヘッダタンク長手方向に垂直な断面においてタンク内の中央側に位置付けることを可能とする。
ノズル部収容空間に収容されるノズル部14aは、ステンレスにて形成されており、接続ブロック23側(左側)に太軸部14fを有し、混合部14c側(右側)に細軸部14gを有する略円筒状の形状になっている。太軸部14fはボデー部140の内側面に固定される固定部を形成するとともに、太軸部14fの左側端面には冷媒入口部が形成されている。
なお、本実施形態では、ノズル部14aの太軸部14fをボデー部140のノズル部収容空間の内部に圧入で固定されており、固定部から冷媒が漏れないようになっている。もちろん、固定部から冷媒が漏れないようになっていれば、接着、溶接、圧接、はんだ付け等の接合手段で接合・固定してもよい。
ノズル部14aとボデー部140とは、互いの軸心を所定の精度で一致させることが望ましいため、互いの軸心を一致させた状態で固定されており、ひとつの部品として構成される。
また、ノズル部14aの細軸部14gは冷媒の流れ方向(図3では左方向)に向かって尖ったテーパ面14hを有している。このテーパ面14hの先端部には、冷媒が噴射される冷媒噴射孔14eが形成されている。さらに、ボデー部140の内側面と細軸部14gの外側面との間には、冷媒吸引口14bから吸引された流体が通過する流体通路14iが形成される。
冷媒吸引口14bは、ボデー部140の外側空間(本実施形態では、ヘッダタンク18bの内部空間M)と流体通路14iとを連通させるように、ボデー部140に設けられている。つまり、冷媒吸引口14bは内部空間Mに直接開口しており、内部空間Mから直接冷媒を吸引することができる。
さらに、この冷媒吸引口14bは、複数個(本実施形態では、4個)設けられており、ボデー部140の筒壁に周方向に沿って、軸周りに均等に配置されている。具体的には、図2に示す前後上下の各方向に向かって開口するように配置されている。
また、複数個設けられた冷媒吸引口14bの開口形状は、互いに同一な形状で、ボデー部140の軸方向に延びる長穴形状になっている。さらに、各冷媒吸引口14bは冷媒の流れ方向(ボデー部140の軸方向)に垂直な方向から見て、ノズル部14aのテーパ面14hの少なくとも一部と重なる位置に設けられている。つまり、本実施形態の冷媒吸引口14bは前述の数値解析計算で用いた条件Jの形状と同様である。
蒸発器ユニット20の具体的構成は上記のようになっており、第1蒸発器15、第2蒸発器18、絞り機構17および接続ブロック23等のエジェクタ14を除く蒸発器ユニット20構成部品の材質として、熱伝導性やろう付け性に優れた金属であるアルミニウムを採用している。そして、これらの各構成部品をろう付け接合により一体に接合している。
ところで、エジェクタ14をろう付け接合すると、ろう付け時の高温度(アルミニウムのろう付け温度:600℃付近)にてノズル部14aが熱変形するおそれや、ろう付け工程における不純物の付着のおそれがあるため、ノズル部14aの通路形状、寸法等を所期の設計通りに維持できないという不具合が生じる。
そこで、エジェクタ14については、第1蒸発器15、第2蒸発器18、絞り機構17および接続ブロック23等の一体ろう付け接合を行った後に、第2蒸発器18のヘッダタンク18bの内部に組み付けている。
具体的には、第1蒸発器15、第2蒸発器18等をろう付け接合するろう付け工程の終了後に、接続ブロック23に設けたエジェクタ挿入穴28からエジェクタ14を挿入する。このエジェクタ挿入穴28は、図2、3に示すように、第2蒸発器18の上側のヘッダタンク18bの左側端部と連通するように開口しており、ヘッダタンク18bの長手方向から見るとヘッダタンク18bと完全に重なる位置に配置されている。
従って、冷媒吸引口14bに吸引される流体が導入されるタンクは、タンク部材としてのヘッダタンク18bによって形成されている。このヘッダタンク18bは、ろう付け部を介して接合された部材である。そして、ノズル部14aとボデー部140とは、ヘッダタンク18bに設けられた開口部を通して、ヘッダタンク18bの外側から、ヘッダタンク18bの内部に組み付け可能な部品として構成されている。
ヘッダタンク18bは、円筒状あるいは半円柱状と呼びうる筒状である。さらに、ヘッダタンク18bには、その軸方向一端にボデー部140を受け入れる開口部が開設されている。ボデー部140の軸心とヘッダタンク18bの軸心は、ほぼ一致するように配置されている。ボデー部140は、ヘッダタンク18bの内面からほぼ一様に離れて位置づけられている。
また、前述の如く、ヘッダタンク18bの筒壁には、第2蒸発器のチューブ21が接続された複数のチューブ嵌合穴が開設されている。これらチューブ嵌合穴は、軸方向(ヘッダタンク18b長手方向)に沿って並んで配置された冷媒導入口である。ヘッダタンク18bには、これら流体導入口から軸方向に広く分散して気液二相状態の冷媒が導入される。
ヘッダタンク18bは、導入された二相状態の冷媒にいくらかの気液分離作用を与え、蒸発器の重力に対する配置状態に依存する冷媒分布を生じる。この構成にあっても、ボデー部140に設けた冷媒吸引口14bは、配置状態に依存しない吸引性能を提供するために貢献する。
そして、ボデー部140のディフューザ部14d外側面がセパレータ18fを貫通するまで挿入して、さらに、エジェクタ14挿入後のエジェクタ挿入穴28にスペーサ28aを挿入した状態で、エジェクタ挿入穴28にプラグ29をネジ止めすることによってエジェクタ14を固定する。
このようにスペーサ28aを挿入することで、接続ブロック23内部に構成された冷媒通路16aを閉塞することなく、エジェクタ14を固定することができる。さらに、プラグ29はOリング30cによってエジェクタ挿入穴28にシール固定されるので、プラグ29とエジェクタ挿入穴28との間から冷媒が漏れることもない。
なお、本実施形態では、エジェクタ14のノズル部14aをステンレスで形成しているが、黄銅等の材質で形成してもよい。また、ボデー部140をアルミニウム材で形成しているが、ステンレス、銅、樹脂等の材質で形成してもよい。
次に、上記構成の蒸発器ユニット20内の冷媒流路を図4により説明する。図4は、蒸発器ユニット20内の模式的な全体斜視図である。まず、接続ブロック23の冷媒流入口25から蒸発器ユニット20内部へ流入した冷媒流れは、分岐点Zで分岐されて一方の冷媒流れは矢印a方向に流れてエジェクタ14のノズル部14aに流入する。
そして、ノズル部14aに流入した冷媒は、エジェクタ14内(ノズル部14a→混合部14c→ディフューザ部14d)を通過して減圧され、この減圧後の低圧冷媒は第2蒸発器18の上側のヘッダタンク18bのうち、右側に形成された内部空間Nの上側空間N1へ流入する。
上側空間N1へ流入した冷媒は、連通路を介して第2蒸発器18のヘッダタンク15bの右側の内部空間Lへ流入して、第1蒸発器15の右側部の複数のチューブ21に分配される。そしてチューブ21を矢印bのように下降して第1蒸発器15の下側のヘッダタンク15cの内部空間に集合する。
ヘッダタンク15cの内部空間に集合した冷媒は矢印cのように左側に移動して、第1蒸発器15の左側部の複数のチューブ21に分配され、矢印dのように上昇して第1蒸発器15の上側のヘッダタンク15bの内部空間Kに流入する。内部空間Kに流入した冷媒は接続ブロック23の冷媒流出口26を介して矢印eのように蒸発器ユニット20から流出する。
分岐点Zで分岐された他方の冷媒流れは、接続ブロック23内部に構成された分岐通路16bを矢印f方向に流れて絞り機構17を構成するキャピラリチューブに流入する。そして、キャピラリチューブ内部を右側に移動しながら減圧され、この減圧後の低圧冷媒は第2蒸発器18の上側のヘッダタンク18bのうち、右側に形成された内部空間Nの下側空間N2へ流入する。
下側空間N2へ流入した冷媒は、第2蒸発器18の右側部の複数のチューブ21に分配される。そしてチューブ21を矢印gのように下降して第2蒸発器18の下側のヘッダタンク18cの内部空間に集合する。
ヘッダタンク18cの内部空間に集合した冷媒は矢印hのように左側に移動して、第2蒸発器18の左側部の複数のチューブ21に分配され、矢印iのように上昇して第2蒸発器18の上側のヘッダタンク15bの内部空間Mに流入する。内部空間Mに流入した冷媒は内部空間Mに直接開口している複数の冷媒吸引口14bからエジェクタ14内部へ吸引される。
次に、上記の構成において本実施形態の作動を説明する。圧縮機11を車両エンジンにより駆動すると、圧縮機11で圧縮され吐出された高温高圧状態の冷媒は放熱器12に流入する。放熱器12では高温の冷媒が外気により冷却されて凝縮する。放熱器12から流出した高圧冷媒は受液器12a内に流入し、この受液器12a内にて冷媒の気液が分離され、液相冷媒が受液器12aから導出され温度式膨張弁13を通過する。
この温度式膨張弁13では、第1蒸発器15の出口冷媒(圧縮機吸入冷媒)の過熱度が所定値となるように弁開度(冷媒流量)が調整され、高圧冷媒が減圧される。この温度式膨張弁13通過後の冷媒(中間圧冷媒)は分岐点Zで分岐されて冷媒通路16aと分岐通路16bに分流される。
冷媒通路16aを介してエジェクタ14に流入した冷媒流れはノズル部14aで減圧され膨張する。従って、ノズル部14aで冷媒の圧力エネルギーが速度エネルギーに変換され、冷媒はノズル部14aの冷媒噴射口14eから高速度となって噴射する。この際の冷媒の圧力低下により、冷媒吸引口14bから第2蒸発器18流出冷媒(気相冷媒)が吸引される。
冷媒噴射口14eから噴射した冷媒と冷媒吸引口14bに吸引された冷媒は、ノズル部14a下流側の混合部14cで混合してディフューザ部14dに流入する。このディフューザ部14dでは通路面積の拡大により、冷媒の速度(膨張)エネルギーが圧力エネルギーに変換されるため、冷媒の圧力が上昇する。
そして、エジェクタ14のディフューザ部14dから流出した流出冷媒は図4に示す矢印b→c→d→eの順に第1蒸発器15を通過する。この間に、冷媒は送風ファン19より送風された送風空気(矢印Y)から吸熱して蒸発する。この蒸発後の気相冷媒は、圧縮機11に吸入され、再び圧縮される。
一方、冷媒分岐通路16bに流入し、絞り機構17で低圧冷媒となった冷媒は図4に示す矢印g→h→iの順に第2蒸発器18を通過する。この間に、冷媒は送風ファン19より送風されて第1蒸発器15を通過した送風空気(矢印Y)から吸熱して蒸発する。蒸発後の気相冷媒は冷媒吸引口14bからエジェクタ14内に吸引される。
以上の如く、本実施形態のサイクルでは、エジェクタ14のディフューザ部14dの下流側冷媒を第1蒸発器15に供給するとともに、分岐通路16b側の冷媒を絞り機構17を介して第2蒸発器18に供給しているので、第1蒸発器15および第2蒸発器18で同時に冷却作用を発揮できる。
さらに、送風ファン19から送風された空気を第1蒸発器15→第2蒸発器18の順に通過させて同一の冷却対象空間を冷却できる。その際に、第1蒸発器15の冷媒蒸発圧力をディフューザ部14dで昇圧した後の圧力として、一方、第2蒸発器18のは冷媒吸引口14bに接続されるので、第2蒸発器18の冷媒蒸発圧力をノズル部14a減圧直後の最も低い圧力とすることができる。
従って、第1蒸発器15の冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)よりも第2蒸発器18の冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)を低くすることができる。その結果、第1蒸発器15および第2蒸発器18の冷媒蒸発温度と送風空気との温度差を確保して、効率的に送風空気を冷却できる。
さらに、第1蒸発器15下流側を圧縮機11吸入側に接続しているので、ディフューザ部14dで昇圧された冷媒を圧縮機11に吸入させることができる。その結果、圧縮機11の吸入圧を上昇させることができるので、圧縮機11の駆動動力を低減することもできる。
さらに、本実施形態では、本発明のエジェクタ14および蒸発器ユニット20を採用しているので、以下のような優れた効果を得ることができる。
まず、エジェクタ14の冷媒吸引口14bが、ボデー部140の外側空間(ヘッダタンク18bの内部空間M)から直接冷媒を吸引するようになっているので、先願例と同様の蒸発器ユニット20の小型化効果および冷媒吸引時の圧力損失低減効果を得ることができる。
さらに、冷媒吸引口14bが複数個(本実施形態では、4個)設けられているので、冷媒吸引口14bが内部空間Mから直接流体を吸引する際に、冷媒吸引口14bの開口位置がエジェクタ14の軸周り方向にずれても、冷媒吸引時の圧力損失の変化を抑制できる。これにより、エジェクタ14の冷媒吸引性能の変化を抑制できるので、蒸発器ユニット20によるエジェクタ式冷凍サイクルの性能バラツキを抑制できる。
また、エジェクタ14の冷媒吸引口14bを複数個設けているので、冷媒吸引口を1個設ける場合に対して、冷媒吸引口14bの合計開口面積を拡大しやすい。その結果、冷媒吸引時の圧力損失を低減しやすい。
さらに、前述の数値解析調査結果において説明したように複数個設けられた冷媒吸引口14bの開口形状は互いに同一形状となっており、さらに、ボデー部140の筒壁に周方向に沿って配置されており、ボデー部140の軸周りに均等に配置されているので、より一層、冷媒吸引時の圧力損失を低減できる。
さらに、冷媒吸引口14bが、冷媒の流れ方向に垂直な方向から見ると、ノズル部14aの外側に形成されたテーパ面14hと重なる位置に配置されているので、冷媒吸引口14bをノズル部14aの先端側の冷媒噴射口14eに近づけて配置することができる。その結果、より一層、流体吸引時の圧力損失を小さくすることができる。
さらに、冷媒吸引口14bの開口形状をボデー部140の軸方向に延びる長穴形状としているので、開口形状を円形状にする場合に対して、隣接する冷媒吸引口14b間の間隔を広げることができる。その結果、複数の冷媒吸引口14bを設けてもボデー部140の強度を弱めることがない。従って、ボデー部140にノズル部14aを圧入してもボデー部140の変形を抑制できる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の実施形態では、冷媒吸引口14bの開口形状をボデー部140の軸方向に延びる長穴形状としたが、ボデー部140の強度を弱めることのない範囲で冷媒吸引口14bの開口形状を円形状にしてもよい。円形状であれば、冷媒吸引口14bを容易に形成できるので、エジェクタ14および蒸発器ユニット20の低コスト化を図ることができる。
さらに、前述の数値解析調査結果において説明した条件Cのように、冷媒吸引口14bのボデー部140軸周りの配置列を複数にすれば、冷媒吸引口14bの開口形状が円形状であっても合計開口面積を拡大することができるので、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
例えば、図5(a)に示すように、配置列を2列として、列毎に冷媒吸引口14bの位置をエジェクタ14の軸周り方向に回転させた一に配置してもよい。さらに、ノズル部14a先端側の列に配置される冷媒吸引口14bは、冷媒の流れ方向に垂直な方向から見て、テーパ面14hの一部と重なる位置に配置してもよい。なお、図5(b)は前述の条件Cの冷媒吸引口14bを図5(a)と比較するために、側面図で示したものである。
また、図5(c)〜(e)に示すように冷媒吸引口14bの開口形状を矩形状、三角形状、スリット状に構成してもよい。つまり、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであれば、冷媒吸引口14bの配置、数、開口形状、合計開口面積を変更してもよい。
(2)上述の実施形態では、第2蒸発器18の上側ヘッダタンク18bにエジェクタ14を配置しているが、エジェクタ14を配置するヘッダタンクはこれに限定されない。
セパレータ15f、18fの配置および数の変更、ヘッダタンク内部空間の分割状態等により、蒸発器ユニット20内の冷媒流路が変更された場合は、エジェクタに吸引される冷媒を集合させるヘッダタンク内において冷媒吸引口14bが直接開口するように配置すればよい。
例えば、第1蒸発器15のヘッダタンク15b、15c内部を、上述の実施形態の内部空間Nの如く、上下に分割する上下仕切り板を設け、上側空間に本発明のエジェクタ14を配置するとともに、上側空間と第2蒸発器18のヘッダタンク18b、18cを連通させる。一方、第1蒸発器15を構成するチューブ21を下側空間にのみ連通させる。このような構成にすれば、第1蒸発器15の内部にエジェクタ14を配置することもできる。
(3)上述の実施形態では、第1蒸発器15、第2蒸発器18、絞り機構17および接続ブロック23等の一体ろう付け接合を行った後に、本発明のエジェクタ14を第2蒸発器18のヘッダタンク18bの内部に挿入しているが、本発明のエジェクタ14は、予め流体吸引口(冷媒吸引口)14bに吸引される流体が導入されるタンクを形成するタンク部材を備えてもよい。
この場合は、このタンク部材に、第1蒸発器15および第2蒸発器18のうちいずれか一方において冷媒を集合させるヘッダ部材を兼務させることができる。つまり、第1、2蒸発器を構成するチューブ21をタンク部材に直接接続すれば、上述の実施形態と同様の効果を有する蒸発器ユニットを構成できる。
なお、タンク部材にチューブ21を接続する場合は、エジェクタ14のろう付け接合時のノズル部14a熱変形等の不具合を抑制するために、タンク部材とチューブ21とを接着、スポット溶接、圧接等の手段で接合してもよい。また、ノズル部14aを耐熱変形性に優れる材料(例えば、インコネル)で構成して、タンク部材とチューブ21とをろう付け接合してもよい。
(4)上述の実施形態において、蒸発器ユニット20はエジェクタ14、第1蒸発器15および第2蒸発器18等を一体化して構成されているが、蒸発器ユニット20に他のエジェクタ式冷凍サイクル構成部品を一体化してもよい。例えば、蒸発器ユニットに温度式膨張弁13を一体的に組みつけてもよい。
(5)上述の実施形態では、蒸発器ユニット20の各部材を一体に組み付けるに際して、エジェクタ14を除く他の部材をアルミニウム材で形成した一体ろう付け接合しているが、これらの部材の一体組み付けは、ろう付け以外に、ねじ止め、かしめ、溶接、接着等の種々な固定手段を用いて行うことができる。
また、上述の実施形態では、エジェクタ14をヘッダタンク18b内に固定する際の固定手段としてプラグ29を用いたねじ止めを例示しているが、熱変形の恐れのない固定手段であれば、ねじ止め以外の手段を用いることができる。具体的には、かしめ、接着等の固定手段を用いてエジェクタ14の固定を行ってもよい。
(6)上述の実施形態では、第1蒸発器15および第2蒸発器18を近接配置して一体化することで、蒸発器ユニット20を構成しているが、蒸発器ユニット20は上述の実施形態の構成に限定されない。
例えば、所定ヘッダタンクの内部空間同士が連通するような配管を設け、さらに、空気流れYの上流側に第1蒸発器15が配置され、空気流れYの下流側に第2蒸発器18が配置され、第1蒸発器15を通過した空気が第2蒸発器18で冷却されるようになっていれば、第1蒸発器15と第2蒸発器18が間隔を開けて配置されていても本発明の蒸発器ユニットを構成できる。
(7)上述の実施形態では、冷媒として高圧圧力が臨界圧力を超えないフロン系、炭化水素系等の冷媒を用いる蒸気圧縮式の亜臨界サイクルについて説明したが、冷媒として二酸化炭素のように高圧圧力が臨界圧力を超える冷媒を採用してもよい。
但し、超臨界サイクルでは、放熱器12において圧縮機吐出冷媒が超臨界状態のまま放熱し、凝縮しないので受液器12aでは冷媒の気液を分離できない。そこで、受液器12aを廃止して、第1蒸発器15下流側かつ圧縮機11吸入側に低圧側気液分離器であるアキュムレータを配置するサイクル構成とすればよい。
さらに、超臨界サイクルでは、上述の実施形態の分岐点Zおよび分岐通路16bを廃止して、温度式膨張弁13の下流側をエジェクタ14のノズル部14aに接続し、第2蒸発器18にはアキュムレータで分離された液相冷媒を流入させるようにしてもよい。
(8)上述の実施形態では、絞り機構17を固定絞り機構であるキャピラリチューブで構成しているが、絞り機構17を電動アクチュエータにより弁開度(通路絞り開度)が調整可能になっている電気制御弁で構成してもよい。また、絞り機構17を固定絞りと電磁弁との組み合わせで構成してもよい。
(9)上述の各実施形態では、エジェクタ14として、通路面積が一定のノズル部14aを有する固定エジェクタを例示しているが、エジェクタ14として、通路面積を調整可能な可変ノズル部を有する可変エジェクタを用いてもよい。
なお、可変ノズル部の具体例としては、可変ノズル部の通路内にニードルを挿入し、このニードルの位置を電気的アクチュエータにより制御して通路面積を調整する機構とすればよい。
(10)上記の実施形態では、蒸発器ユニット20を室内側熱交換器として構成し、放熱器12を大気側へ放熱する室外熱交換器として構成しているが、逆に、蒸発器ユニット20を大気等の熱源から吸熱する室外側熱交換器として構成し、放熱器12を空気あるいは水等の被加熱流体を加熱する室内側熱交換器として構成するヒートポンプサイクルに本発明を適用してもよい。
(11)上述の各実施形態では、車両用の冷凍サイクルについて説明したが、車両用に限らず、定置用等の冷凍サイクルに対しても本発明を同様に適用できることはもちろんである。