(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図9に基づいて説明する。本実施形態は、本発明による冷媒蒸発器をエジェクタ式冷凍サイクルに適用した例である。
図1は第1実施形態によるエジェクタ式冷凍サイクル10を車両用冷凍サイクル装置に適用した例を示す。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10において、冷媒を吸入圧縮する圧縮機11は、電磁クラッチ11a、ベルト等を介して図示しない車両走行用エンジンにより回転駆動される。
この圧縮機11としては、吐出容量の変化により冷媒吐出能力を調整できる可変容量型圧縮機、あるいは電磁クラッチ11aの断続により圧縮機作動の稼働率を変化させて冷媒吐出能力を調整する固定容量型圧縮機のいずれを使用してもよい。また、圧縮機11として電動圧縮機を使用すれば、電動モータの回転数調整により冷媒吐出能力を調整できる。
この圧縮機11の冷媒吐出側には放熱器12が配置されている。放熱器12は圧縮機11から吐出された高圧冷媒と図示しない冷却ファンにより送風される外気(車室外空気)との間で熱交換を行って高圧冷媒を冷却する。
ここで、エジェクタ式冷凍サイクル10の冷媒として、本実施形態ではフロン系、HC系等の冷媒のように高圧圧力が臨界圧力を超えない冷媒を用いて、蒸気圧縮式の亜臨界サイクルを構成している。このため、放熱器12は冷媒を凝縮する凝縮器として作用する。
放熱器12の出口側には受液器12aが設けられている。この受液器12aは周知のように縦長のタンク形状のものであり、冷媒の気液を分離してサイクル内の余剰液相冷媒を溜める気液分離器を構成する。受液器12aの出口にはタンク形状内部の下部側から液相冷媒を導出するようになっている。なお、受液器12aは本例では放熱器12と一体的に設けられている。
また、放熱器12として、冷媒流れ上流側に位置する凝縮用熱交換部と、この凝縮用熱交換部からの冷媒を導入して冷媒の気液を分離する受液器12aと、この受液器12aからの飽和液相冷媒を過冷却する過冷却用熱交換部とを有する公知の構成を採用してもよい。
受液器12aの出口側には温度式膨張弁13が配置されている。この温度式膨張弁13は受液器12aからの液相冷媒を減圧する減圧手段であって、圧縮機11の吸入側通路に配置された感温部13aを有している。
温度式膨張弁13は周知のように、圧縮機11の吸入側冷媒(後述の蒸発器出口側冷媒)の温度と圧力とに基づいて圧縮機吸入側冷媒の過熱度を検出し、圧縮機吸入側冷媒の過熱度が予め設定された所定値となるように弁開度(冷媒流量)を調整するものである。
温度式膨張弁13の出口側にエジェクタ14が配置されている。このエジェクタ14は冷媒を減圧する減圧手段であるとともに、高速で噴出する冷媒流の吸引作用(巻き込み作用)によって冷媒の循環を行う流体輸送を冷媒循環手段(運動量輸送式ポンプ)でもある。
エジェクタ14には、膨張弁13通過後の冷媒(中間圧冷媒)の通路面積を小さく絞って、冷媒をさらに減圧膨張させるノズル部14aと、ノズル部14aの冷媒噴出口と同一空間に配置され、後述する第2蒸発器18からの気相冷媒を吸引する冷媒吸引口14bが備えられている。
さらに、ノズル部14aおよび冷媒吸引口14bの冷媒流れ下流側部位には、ノズル部14aからの高速度の冷媒流と冷媒吸引口14bの吸引冷媒とを混合する混合部14cが設けられている。
そして、混合部14cの冷媒流れ下流側に昇圧部をなすディフューザ部14dが配置されている。このディフューザ部14dは冷媒の通路面積を徐々に大きくする形状に形成されており、冷媒流れを減速して冷媒圧力を上昇させる作用、つまり、冷媒の速度エネルギーを圧力エネルギーに変換する作用を果たす。
エジェクタ14のディフューザ部14dの出口側に第1蒸発器15が接続され、この第1蒸発器15の出口側は圧縮機11の吸入側に接続される。
一方、エジェクタ14の入口側(温度式膨張弁13の出口側とエジェクタ14の入口側との間の中間部位)から冷媒分岐通路16が分岐され、この冷媒分岐通路16の下流側はエジェクタ14の冷媒吸引口14bに接続される。Zは冷媒分岐通路16の分岐点を示す。
この冷媒分岐通路16には絞り機構17が配置され、この絞り機構17よりも冷媒流れ下流側には第2蒸発器18が配置されている。絞り機構17は第2蒸発器18への冷媒流量の調節作用をなす減圧手段であって、具体的にはキャピラリチューブやオリフィスのような固定絞りで構成できる。
本実施形態では、2つの蒸発器15、18を後述の構成により一体構造に組み付けるようになっている。この2つの蒸発器15、18を図示しないケース内に収納し、そして、このケース内に構成される空気通路に共通の電動送風機19により空気(被冷却空気)を矢印Aのごとく送風し、この送風空気を2つの蒸発器15、18で冷却するようになっている。
2つの蒸発器15、18で冷却された冷風を共通の冷却対象空間(図示せず)に送り込み、これにより、2つの蒸発器15、18にて共通の冷却対象空間を冷却するようになっている。ここで、2つの蒸発器15、18のうち、エジェクタ14下流側の主流路に接続される第1蒸発器15を空気流れAの上流側(風上側)に配置し、エジェクタ14の冷媒吸引口14bに接続される第2蒸発器18を空気流れAの下流側(風下側)に配置している。
なお、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を車両空調用冷凍サイクル装置に適用する場合は車室内空間が冷却対象空間となる。また、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を冷凍車用冷凍サイクル装置に適用する場合は冷凍車の冷凍冷蔵庫内空間が冷却対象空間となる。
ところで、本実施形態では、エジェクタ14、第1、第2蒸発器15、18および絞り機構17を1つの一体化ユニット20として組み付けている。次に、この一体化ユニット20の具体例を図2〜図4により説明すると、図2はこの一体化ユニット20の全体構成の概要を示す斜視図で、図3は第1、第2蒸発器15、18の上側タンク部の長手方向(水平方向)断面図で、図4は図3におけるB−B断面図である。
本例では、2つの蒸発器15、18が完全に1つの蒸発器構造として一体化されるようになっている。そのため、第1蒸発器15は1つの蒸発器構造のうち空気流れAの上流側領域を構成し、そして、第2蒸発器18は1つの蒸発器構造のうち空気流れAの下流側領域を構成するようになっている。
第1蒸発器15および第2蒸発器18の基本的構成は同一であり、それぞれ熱交換コア部15a、18aと、この熱交換コア部15a、18aの上下両側に位置するタンク部15b、15c、18b、18cとを備えている。
ここで、熱交換コア部15a、18aは、それぞれ上下方向(重力方向)に延びる複数のチューブ21を備える。これら複数のチューブ21の間には、被熱交換媒体、この実施形態では冷却される空気が通る通路が形成される。これら複数のチューブ21相互間には、フィン22を配置し、チューブ21とフィン22とを接合することができる。
熱交換コア部15a、18aは、チューブ21とフィン22との積層構造からなる。このチューブ21とフィン22は熱交換コア部15a、18aの左右方向に交互に積層配置される。他の実施形態では、フィン22を備えない構成を採用することができる。
なお、図2では、チューブ21とフィン22の積層構造の一部のみ図示しているが、熱交換コア部15a、18aの全域にチューブ21とフィン22の積層構造が構成され、この積層構造の空隙部を電動送風機19の送風空気が通過するようになっている。
チューブ21は冷媒通路を構成するもので、断面形状が空気流れ方向Aに沿って扁平な扁平チューブよりなる。フィン22は薄板材を波状に曲げ成形したコルゲートフィンであり、チューブ21の平坦な外面側に接合され空気側伝熱面積を拡大する。
熱交換コア部15aのチューブ21と熱交換コア部18aのチューブ21は互いに独立した冷媒通路を構成し、第1蒸発器15の上下両側のタンク部15b、15cと、第2蒸発器18の上下両側のタンク部18b、18cは互いに独立した冷媒通路空間を構成する。
ここで、第1蒸発器15のタンク部15b、15cおよび第2蒸発器18のタンク部18b、18cは、いずれも複数のチューブ21の配列方向に細長く延びる形状になっている。チューブ21の配列方向は図2の左右方向であり、空気流れ方向Aと直交する方向である。
第1蒸発器15の上下両側のタンク部15b、15cは熱交換コア部15aのチューブ21の上下両端部が挿入され、接合されるチューブ嵌合穴部(図示せず)を有し、チューブ21の上下両端部がタンク部15b、15cの内部空間に連通するようになっている。
同様に、第2蒸発器18の上下両側のタンク部18b、18cは熱交換コア部18aのチューブ21の上下両端部が挿入され、接合されるチューブ嵌合穴部(図示せず)を有し、チューブ21の上下両端部がタンク部18b、18cの内部空間に連通するようになっている。
これにより、上下両側のタンク部15b、15c、18b、18cは、それぞれ対応する熱交換コア部15a、18aの複数のチューブ21へ冷媒流れを分配したり、複数のチューブ21からの冷媒流れを集合する役割を果たす。
本例では、2つの上側タンク15b、18bを、チューブ側(底面側)半割れ部材23、反チューブ側(上面側)半割れ部材24およびキャップ25、26に分割して成形している。
より具体的には、チューブ側半割れ部材23は2つの上側タンク15b、18bのそれぞれのチューブ側(底面側)半割れ部を一体成形した略W字状断面を有し、反チューブ側半割れ部材24は2つの上側タンク15b、18bのそれぞれの反チューブ側(上面側)半割れ部を一体成形した略M字状断面を有している。
チューブ側半割れ部材23の略W字状断面の中央には平面部23aが形成されており、反チューブ側半割れ部材24の略M字状断面の中央には平面部24aが形成されている。そして、チューブ側半割れ部材23と反チューブ側半割れ部材24とを上下方向に組み合わせると、平面部23aと平面部24aとが密接して2つの筒形状を形成する。さらに、この2つの筒形状の長手方向両端部(図2の左右端部)をキャップ25、26で閉塞することによって、2つの上側タンク15b、18bを構成している。
第1蒸発器15の上側タンク15bの内部空間の長手方向の略中央部には仕切板27が配置され、この仕切板27によって上側タンク15bの内部空間が長手方向の2つの空間、すなわち、左側空間28と右側空間29とに仕切られている。
第2蒸発器18の上側タンク18bの内部空間の長手方向の略中央部には仕切板30が配置され、この仕切板30によって上側タンク18bの内部空間が長手方向の2つの空間、すなわち、左側空間31と右側空間32とに仕切られている。
なお、チューブ21、フィン22、タンク部15b、15c、18b、18c等の蒸発器構成部品の具体的材質としては、熱伝導性やろう付け性に優れた金属であるアルミニウムが好適であり、このアルミニウム材にて各部品を成形することにより、第1、第2蒸発器15、18の全体構成を一体ろう付けにて組み付けることができる。
本実施形態では、絞り機構17を構成するキャピラリチューブ17aもろう付けにて第2蒸発器18と一体に組み付けるようになっている。
これに対し、エジェクタ14はノズル部14aに高精度な微小通路を形成しているので、エジェクタ14をろう付けすると、ろう付け時の高温度(アルミニウムのろう付け温度:600℃付近)にてノズル部14aが熱変形して、ノズル部14aの通路形状、寸法等を所期の設計通りに維持できないという不具合が生じる。
そこで、エジェクタ14については、第1、第2蒸発器15、18およびキャピラリチューブ17aの一体ろう付けを行った後に、蒸発器側に組み付けするようにしてある。
より具体的に、エジェクタ14およびキャピラリチューブ17aの組み付け構造を説明すると、キャピラリチューブ17aは、蒸発器部品と同様にアルミニウム材にて成形される。キャピラリチューブ17aの下流端部17bは、図3に示すように第2蒸発器18の上側タンク18bの側面に設けられた貫通穴33を貫通して上側タンク18bの右側空間32内に開口している。
エジェクタ14のうち、ノズル部14aはステンレス、黄銅等の材質で形成され、ノズル部14a以外の部分(冷媒吸引口14bを形成するハウジング部分、混合部14c、ディフューザ部14d等)は銅、アルミニウムといった金属材にて構成するが、樹脂(非金属材)で構成してもよい。
エジェクタ14は、第1、第2蒸発器15、18等を一体ろう付けする組み付け工程(ろう付け工程)の終了後に、上側タンク18bの長手方向一端部(図2の左端部)のキャップ25のうち上側タンク18b側の部位に形成される貫通穴25aを貫通して上側タンク18bの内部に差し込む。
ここで、エジェクタ14の長手方向の先端部14eは図1のディフューザ部14dの出口部に相当する部分であり、このエジェクタ先端部14eは上側タンク18bの長手方向他端部(図2の右端部)のキャップ26のうち上側タンク18b側の部位に形成される貫通穴26aに挿入され、図示しないOリングを用いてシール固定される。
そして、エジェクタ先端部にU字管34の一端部が接続され、U字管34の他端部がキャップ26のうち上側タンク15b側の部位に形成される貫通穴26bに挿入される。これにより、エジェクタ先端部は第1蒸発器15の上側タンク15bの右側空間29に連通する。
なお、U字管34は蒸発器部品と同様にアルミニウム材にて成形されるものであり、ろう付けにて第1、第2蒸発器15、18と一体に組み付けるようになっている。
エジェクタ14の長手方向の左端部(図3の左端部)は図1のノズル部14aの入口部に相当する部分であり、この左端部は図示しないOリングを用いてキャップ25の貫通穴25aにシール固定される。なお、エジェクタ14の長手方向の固定は、例えば、図示しないねじ止め固定手段を用いて行えばよい。
また、エジェクタ14の冷媒吸引口14bは第2蒸発器18の上側タンク18bの左側空間31に連通するようになっている。
本実施形態では、第2蒸発器18の上側タンク部18bの左側空間31が複数のチューブ21からの冷媒を集合させる集合タンクとしての役割を果たし、第2蒸発器18の上側タンク部18bの右側空間32が冷媒を複数のチューブ21へ分配する分配タンクとしての役割を果たしている。
図5は第2蒸発器18の上側タンク部18bの右側空間32部分の斜視図であり、上側タンク部18bの一部を切断した状態を図示している。
上側タンク18b内の右側空間32には仕切り部材35が配置されている。この仕切り部材35は、右側空間32を、上側タンク部18bに流入した冷媒を一旦溜める貯留空間36と、貯留空間36から流出した冷媒を複数のチューブ21に分配する分配空間37とに仕切る役割を果たす部材である。
なお、貯留空間36は右側空間32のうち冷媒が流入する側の空間であり、本発明における第1空間に該当するものである。分配空間37は右側空間32のうちチューブ21の入口側端部21a側の空間であり、本発明における第2空間に該当するものである。
本例における仕切り部材35は、第2蒸発器18の複数のチューブ21に対する冷媒の分配を均一化する役割をも果たすものである。
仕切り部材35は、本例では、断面が略V字形状であって、タンク長手方向に延びる形状を有しており、略V字形状の両端部が上方側を向くように配置されている。仕切り部材35の略V字形状の両端部は上側タンク18bの内壁面、より具体的には、上側タンク18bの反チューブ側半割れ部材24の内壁面に当接する。
ここで、図4に示すように、仕切り部材35はキャピラリチューブ17aの下方に配置されるので、キャピラリチューブ17aの下流端部17bは貯留空間36内に開口している。
本例では、仕切り部材35は、1つの第1部材38と2つの第2部材39とに分割して成形されている。
図6は第1部材38の単体斜視図であり、図7は第2部材39の単体斜視図である。第1、第2部材38、39はいずれもアルミニウム材にて成形されており、上側タンク18bと一体ろう付けされる。
第1部材38はアルミニウム材からなる断面略V字状の部材であり、矩形状薄板の短手方向両端部側を同一方向側(図6の上方側)に斜めに曲げ成形して形成されるものである。
より具体的には、第1部材38の短手方向中央部にはチューブ21の入口側端部21aと対向する底面部38aが形成され、第1部材38の短手方向両端部側には底面部38aに対して傾斜した傾斜部38b、38cが形成されている。
さらに、第1部材38には、第1部材38の短手方向に延びる溝部38dが短手方向全域にわたって形成されている。この溝部38dは第1部材38の内方側から外方側に向かって打ち出し成形されており、第1部材38の長手方向に多数個配置されている。
第2部材39はアルミニウム材からなる矩形状薄板であり、第2部材39の長手方向が第1部材38の長手方向を向き、かつ、第2部材39の平板面の一部が第1部材38の傾斜部38b、38cの内側の面に密着して配置される。
第2部材39には打ち抜き成形された貫通穴39aが第2部材39の長手方向に多数個形成されている。この貫通穴39aは第1部材38の多数個の溝部38dに対応して形成されており、第1部材38の多数個の溝部38dの両端部にそれぞれ配置される。
本例では、溝部38dの両端部が貫通穴39aの下部をわずかに塞ぐように配置されている。貫通穴39aの上縁部と溝部38dの両端部とで囲まれて形成される開口部40によって貯留空間36と分配空間37とが連通する。なお、開口部40は本発明における気相冷媒流通部に該当するものである。
貯留空間36のうち最低部位、すなわち、仕切り部材35の底面部38aから開口部40の下縁部までの谷状の空間は液相冷媒を溜める液相冷媒貯留部41を構成している。また、貯留空間36のうち残余の空間、すなわち、液相冷媒貯留部41よりも上方の空間は気相冷媒を溜める気相冷媒貯留部42を構成している。
仕切り部材35の第1部材38の溝部38dと第2部材39とで囲まれて形成される空間は液相冷媒流路43を形成している。より具体的には、液相冷媒流路43は、仕切り部材35の底面部38aと開口部40との間にて仕切り部材35に沿って細長く延びるように形成されている。
液相冷媒流路43の一端部(本例では下端部)は液相冷媒貯留部41の最低部にて開口し、液相冷媒流路43の他端部(本例では上端部)は開口部40の下縁部近傍にて開口している。
ここで、仕切り部材35の上側タンク18bへの組み付け手順を説明する。まず、第1部材38と第2部材39の一部同士をかしめることによって仮固定したのちに、第2部材39の一端部(本例では上端部)と上側タンク18bの反チューブ側半割れ部材24の一部同士をかしめることによって仮固定する。
そして、反チューブ側半割れ部材24と上側タンク18bのチューブ側半割れ部材23の一部同士をかしめることによって仮固定したのちに、第1、第2蒸発器15、18のその他の構成部品とともに一体ろう付けすることによって、仕切り部材35を上側タンク18bに組み付けることができる。
以上の構成において一体化ユニット20全体の冷媒流路を図2、図3により具体的に説明すると、膨張弁13通過後の冷媒(中間圧冷媒)のうち分岐点Zにてエジェクタ14の入口側へ流れる冷媒はまず、エジェクタ14(ノズル部14a→混合部14c→ディフューザ部14d)を通過して減圧され、この減圧後の低圧冷媒はU字管34を経て矢印aのように第1蒸発器15の上側タンク15bの右側空間29に流入する。
この右側空間32の冷媒は熱交換コア部15aの右側部の複数のチューブ21を矢印bのように下降して下側タンク15c内の右側部に流入する。この下側タンク15c内には仕切板を設けてないので、この下側タンク15cの右側部から冷媒は矢印cのように左側部へと移動する。
この下側タンク15cの左側部の冷媒は熱交換コア部15aの左側部の複数のチューブ21を矢印dのように上昇して上側タンク15bの左側空間28に流入し、さらに、ここから冷媒は矢印eのように上側タンク15bの冷媒出口44(図3)へと流れる。
これに対し、分岐通路16の冷媒はまずキャピラリチューブ17aを通過して減圧され、この減圧後の低圧冷媒は矢印fのようにキャピラリチューブ17aの下流端部17b(図3、図4)から第2蒸発器18の上側タンク18bの右側空間32に流入する。
この右側空間32の冷媒は熱交換コア部18aの右側部の複数のチューブ21を矢印gのように下降して下側タンク18c内の右側部に流入する。この下側タンク18c内には仕切板が設けてないので、この下側タンク18cの右側部から冷媒は矢印hのように左側部へと移動する。
この下側タンク18cの左側部の冷媒は熱交換コア部18aの左側部の複数のチューブ21を矢印iのように上昇して上側タンク18bの左側空間31に流入する。この左側空間31にエジェクタ14の冷媒吸引口14bが連通しているので、この左側空間31内の冷媒は冷媒吸引口14bからエジェクタ14内に吸引される。
次に、第1実施形態の作動を説明する。圧縮機11を車両エンジンにより駆動すると、圧縮機11で圧縮され吐出された高温高圧状態の冷媒は放熱器12に流入する。放熱器12では高温の冷媒が外気により冷却されて凝縮する。放熱器12から流出した高圧冷媒は受液器12a内に流入し、この受液器12a内にて冷媒の気液が分離され、液相冷媒が受液器12aから導出され膨張弁13を通過する。
この膨張弁13では、第1蒸発器15の出口冷媒(圧縮機吸入冷媒)の過熱度が所定値となるように弁開度(冷媒流量)が調整され、高圧冷媒が減圧される。この膨張弁13通過後の冷媒(中間圧冷媒)の流れは分岐点Zにてエジェクタ14に向かう冷媒流れと、冷媒分岐通路16を通じてキャピラリチューブ17aに向かう冷媒流れとに分流する。
そして、エジェクタ14に流入した冷媒流れはノズル部14aで減圧され膨張する。従って、ノズル部14aで冷媒の圧力エネルギーが速度エネルギーに変換され、このノズル部14aの噴出口から冷媒は高速度となって噴出する。この際の冷媒圧力低下により、冷媒吸引口14bから分岐冷媒通路16の第2蒸発器18通過後の冷媒(気相冷媒)を吸引する。
ノズル部14aから噴出した冷媒と冷媒吸引口14bに吸引された冷媒は、ノズル部14a下流側の混合部14cで混合してディフューザ部14dに流入する。このディフューザ部14dでは通路面積の拡大により、冷媒の速度(膨張)エネルギーが圧力エネルギーに変換されるため、冷媒の圧力が上昇する。
そして、エジェクタ14のディフューザ部14dから流出した冷媒は第1蒸発器15における図2の矢印a〜eの冷媒流路にて冷媒が流れる。この間に、第1蒸発器15の熱交換コア部15aでは、低温の低圧冷媒が矢印A方向の送風空気から吸熱して蒸発する。この蒸発後の気相冷媒は、冷媒出口44から圧縮機11に吸入され、再び圧縮される。
一方、冷媒分岐通路16に流入した冷媒流れはキャピラリチューブ17aで減圧されて低圧冷媒となり、この低圧冷媒が第2蒸発器18における図2の矢印f〜iの冷媒流路にて冷媒が流れる。この間に、第2蒸発器18の熱交換コア部18aでは、低温の低圧冷媒が、第1蒸発器15通過後の送風空気から吸熱して蒸発する。この蒸発後の気相冷媒は冷媒吸引口14bからエジェクタ14内に吸引される。
以上のごとく、本実施形態によると、エジェクタ14のディフューザ部14dの下流側冷媒を第1蒸発器15に供給するととともに、分岐通路16側の冷媒をキャピラリチューブ(絞り機構)17aを通して第2蒸発器18にも供給できるので、第1、第2蒸発器15、18で同時に冷却作用を発揮できる。そのため、第1、第2蒸発器15、18の両方で冷却された冷風を冷却対象空間に吹き出して、冷却対象空間を冷房(冷却)できる。
その際に、第1蒸発器15の冷媒蒸発圧力はディフューザ部14dで昇圧した後の圧力であり、一方、第2蒸発器18の出口側はエジェクタ14の冷媒吸引口14bに接続されているから、ノズル部14aでの減圧直後の最も低い圧力を第2蒸発器18に作用させることができる。
これにより、第1蒸発器15の冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)よりも第2蒸発器18の冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)を低くすることができる。そして、送風空気の流れ方向Aに対して冷媒蒸発温度が高い第1蒸発器15を上流側に配置し、冷媒蒸発温度が低い第2蒸発器18を下流側に配置しているから、第1蒸発器15における冷媒蒸発温度と送風空気との温度差および第2蒸発器18における冷媒蒸発温度と送風空気との温度差を両方とも確保できる。
このため、第1、第2蒸発器15、18の冷却性能を両方とも有効に発揮できる。従って、共通の冷却対象空間に対する冷却性能を第1、第2蒸発器15、18の組み合わせにて効果的に向上できる。また、ディフューザ部14dでの昇圧作用により圧縮機11の吸入圧を上昇して、圧縮機11の駆動動力を低減できる。
また、第2蒸発器18側の冷媒流量をエジェクタ14の機能に依存することなく、キャピラリチューブ(絞り機構)17にて独立に調整でき、第1蒸発器15への冷媒流量はエジェクタ14の絞り特性により調整できる。このため、第1、第2蒸発器15、18への冷媒流量をそれぞれの熱負荷に対応して容易に調整できる。
また、エジェクタ14の上流部で膨張弁13通過後の冷媒を分岐し、この分岐冷媒を冷媒分岐通路16を通して冷媒吸引口14bに吸引させるので、冷媒分岐通路16をエジェクタ14に対して並列的な接続関係にすることができる。
このため、冷媒分岐通路16にエジェクタ14の冷媒吸引能力だけでなく、圧縮機11の冷媒吸入、吐出能力をも利用して冷媒を供給できる。このため、サイクル熱負荷が小さい条件下でサイクルの高低圧差が小さくなって、エジェクタ14の入力が小さくなった場合において、第2蒸発器18側の冷媒流量の減少度合いを小さくできる。この結果、低熱負荷条件でも、第2蒸発器18の冷却性能を確保しやすい。
ところで、上述のように、本実施形態におけるエジェクタ式冷凍サイクル10では、膨張弁13通過後の気液二相状態の冷媒(中間圧冷媒)の流れは分岐点Zからエジェクタ14に向かう冷媒流れと、分岐点Zから冷媒分岐通路16を通じてキャピラリチューブ17aに向かう冷媒流れとに分流する。
このため、キャピラリチューブ17aから第2蒸発器18の上側タンク18bの右側空間32に流入する冷媒(矢印f)の流量が少なくなるので、複数のチューブ21のうちキャピラリチューブ17aの下流端部17bから離れたチューブ21には冷媒が到達しにくい。
この結果、複数のチューブ21に対する冷媒の分配が不均一になりやすく、第2蒸発器18で冷却された冷風の温度分布が不均一になりやすい。
そこで、本実施形態では、仕切り部材35によって複数のチューブ21に対する冷媒の分配を均一化している。すなわち、図4に示すように、キャピラリチューブ17aの下流端部17bから右側空間32の貯留空間36に流入する気液二相冷媒(矢印f)のうち、比重の大きい液相冷媒は重力方向下方側の液相冷媒貯留部41に一旦溜まり、比重の小さい気相冷媒は重力方向上方側の気相冷媒貯留部42に一旦溜まる。
気相冷媒貯留部42に一旦溜まった気相冷媒は、矢印jのように開口部40を通じて分配空間37に流入するが、この気相冷媒の流れによって開口部40周縁部の静圧が低下する。
一方、液相冷媒貯留部41に一旦溜まった液相冷媒45は、液相冷媒流路43での毛細管現象と開口部40周縁部の静圧の低下とによって、矢印kのように吸い上げられて液相冷媒流路43内を吸い上げられて上昇し、液相冷媒流路43の出口端部(上端部)、すなわち、開口部40の下縁部近傍に導かれる。
開口部40の下縁部近傍に導かれた液相冷媒は開口部40における気相冷媒の流れによってミスト化され、分配空間37へ向かって噴霧される。そして、ミスト状の液相冷媒は分配空間37内に拡散したのち、気相冷媒とともに複数のチューブ21の入口側端部21aに流入する。
このように、本実施形態では、ミスト状の液相冷媒が分配空間37内に拡散するので、液相冷媒が液状のままで複数のチューブ21に分配される場合と比較して、複数のチューブ21に対する冷媒の分配を均一化できる。このため、第2蒸発器18で冷却された冷風の温度分布を均一化できる。
ここで、液相冷媒流路43および開口部40を複数のチューブ21の配列方向(上側タンク18bの長手方向)に多数個配置しているので、分配空間37の長手方向全域にわたってミスト状の液相冷媒を噴霧することができる。
このため、分配空間37内において、液相冷媒をより広い範囲に拡散させることができるので、複数のチューブ21に対する冷媒の分配をより均一化できる。
図8は、開口部40の水力直径(mm)と、液相冷媒の質量流量のバラツキ(%)との関係を示すグラフである。なお、水力直径とは、通路断面積をぬれふち長さで除した値である。
また、液相冷媒の質量流量のバラツキとは、複数のチューブ21に対する冷媒の分配の均一性を表す値であり、液相冷媒の質量流量のバラツキが小さいほど複数のチューブ21に対する冷媒の分配が均一であることを意味する。具体的には、次の数式1で表される値である。
液相冷媒の質量流量のバラツキ=|任意チューブの質量流量−全チューブの平均質量流量|/全チューブの平均質量流量×100 …(数式1)
なお、図8のグラフは、開口部40と液相冷媒流路43の出口端部との距離が3mmの場合における測定結果である。ちなみに、開口部40と液相冷媒流路43の出口端部との距離について具体的に説明すると、本実施形態では、開口部40の下縁部が第1部材38の溝部38dの両端面で形成されており、液相冷媒流路43の出口端部は第2部材39の貫通穴39aの下縁部に位置している。
したがって、本実施形態においては、第1部材38の溝部38dの両端面から第2部材39の貫通穴39aの下縁部までを第2部材39の平板面に沿って測った距離が、開口部40と液相冷媒流路43の出口端部との距離である。
図8の実線mは、冷房低負荷時での測定結果であり、具体的には、冷却対象空間温度15℃、冷却対象空間湿度80%、冷媒流量75kg/hの条件下での測定結果である。図8の実線nは、冷房高負荷時での測定結果であり、具体的には、冷却対象空間温度42℃、冷却対象空間湿度50%、冷媒流量180kg/hの条件下での測定結果である。
図8からわかるように、開口部40の水力直径を0.8mm以上、5mm以下の範囲に設定すれば、冷房低負荷時から冷房高負荷時までの条件において、液相冷媒の質量流量のバラツキを5%以下にすることができる。
つまり、開口部40の水力直径が5mmより大きいと、低流量時(冷媒流量が約25kg/h)のときに噴霧流状態を保持することが困難になるので、水力直径を5mm以下に設定するのが好ましい。
一方、開口部40の水力直径が0.8mm未満であると加工性が困難であるとともに、開口部40に異物が詰まりやすくなるので、開口部40の水力直径を0.8mm以上に設定するのが好ましい。
図9は、開口部40と液相冷媒流路43の出口端部との距離(mm)と、液相冷媒の質量流量のバラツキ(%)との関係を示すグラフである。なお、図9のグラフは、開口部40の水力直径が3mmの場合における測定結果である。
図9の実線pは、冷房低負荷時での測定結果であり、具体的には、冷却対象空間温度15℃、冷却対象空間湿度80%、冷媒流量75kg/hの条件下での測定結果である。図9の実線qは、冷房高負荷時での測定結果であり、具体的には、冷却対象空間温度42℃、冷却対象空間湿度50%、冷媒流量180kg/hの条件下での測定結果である。
図9からわかるように、開口部40と液相冷媒流路43の出口端部との距離を5mm以下に設定すれば、低負荷時から高負荷時までの条件において、液相冷媒の質量流量のバラツキを5%以下にすることができる。
なお、本発明者のより詳細な検討によると、液相冷媒流路43の出口断面積を開口部40の開口面積以下に設定すれば、液相冷媒貯留部41に一旦溜まった液相冷媒45を、毛細管現象と開口部40周縁部の静圧の低下とによって効果的に吸い上げることができることがわかっている。
さらに、液相冷媒貯留部41の深さ(重力方向寸法)を3mm以上、30mm以下に設定すれば、上側タンク18bの体格の大型化を抑制しつつ、液相冷媒貯留部41に液相冷媒を良好に貯留できることがわかっている。
なお、本実施形態においては、液相冷媒貯留部41の深さは、第1、第2蒸発器15、18を車両搭載時の姿勢にした状態で液相冷媒貯留部41の最低部から開口部40の下縁部までを重力方向に測った寸法である。
つまり、液相冷媒貯留部41の深さが大きいほど液相冷媒の貯留性が向上するのであるが、車両搭載上のスペースの制約を考慮すると液相冷媒貯留部41の深さを30mm以下に抑えるのが好ましい。
一方、液相冷媒貯留部41の深さが3mm未満であると、車両の姿勢が傾いて第1、第2蒸発器15、18が傾いたときに液相冷媒をほとんど貯留できなくなってしまうので、液相冷媒貯留部41の深さを3mm以上に設定するのが好ましい。
上述のように、本例における仕切り部材35は上側タンク部18b内の右側空間32を貯留空間36と分配空間37とに仕切る役割を果たすとともに、第2蒸発器18の複数のチューブ21に対する冷媒の分配を均一化する役割をも果たしている。
換言すれば、本例における仕切り部材35は、右側空間32を貯留空間36と分配空間37とに仕切る部材と、冷媒の分配を均一化するための部材とを一体化したものである。
このため、これらの部材を別体で設ける場合と比較して、部材の体格をコンパクト化できるとともに、部品点数を削減できる。このため、上側タンク部18bの体格の大型化を抑制できるとともに、コストの低減を図ることができる。
さらに、仕切り部材35は1つの第1部材38と2つの第2部材39とで構成された簡素な構造であるから、仕切り部材35を設けることに伴うコストの上昇を抑制できる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、1つの開口部40の周縁部に1つの液相冷媒流路43の出口端部(上端部)が配置されているが、本第2実施形態では、図10に示すように、1つの開口部40の下縁部近傍に複数個の液相冷媒流路43の出口端部(上端部)が配置されている。
図10は、本実施形態による仕切り部材35の第1部材38の単体斜視図である。本実施形態による第1部材38の多数個の溝部38dは、3つの溝部38dの両端部が一箇所に集まるように形成されている。
図示を省略しているが、仕切り部材35の第2部材39の貫通穴39aが、この3つの溝部38dの両端部が集合する部位にそれぞれ配置されている。
本実施形態では、液相冷媒貯留部41に一旦溜まった液相冷媒45は、3つの液相冷媒流路43を通じて開口部40の下縁部近傍に導かれることとなる。この結果、上記第1実施形態と同様と同様の効果を発揮することができる。
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、仕切り部材35を断面略V字状に形成しているが、本第3実施形態では、図11に示すように、仕切り部材35を断面平板状に形成している。
図11は、本実施形態による上側タンク15b、18bの断面図であり、図12は本実施形態による仕切り部材35の第1部材38の単体斜視図である。本実施形態による仕切り部材35は、1つの第1部材38と1つの第2部材39とに分割して成形されている。
第1部材38は全体としてタンク長手方向に延びる矩形平板形状を有しており、第1部材38の短手方向に延びる溝部38dが短手方向全域にわたって形成されている。この溝部38dは第1部材38の一方の面(図12の紙面奥側の面)から他方の面(図12の紙面手前側の面)に向かって打ち出し成形されており、第1部材38の長手方向に多数個配置されている。
第2部材39は上記第1実施形態と同様の形状を有しており、第2部材39の長手方向が第1部材38の長手方向を向き、かつ、第2部材39の平板面の一部が第1部材38の一方の面に密着して配置される。
第2部材39の貫通穴39aは、第1部材38の多数個の溝部38dの一端部にそれぞれ配置される。本例では、溝部38dの一端部が貫通穴39aの下部をわずかに塞ぐように配置されている。
これにより、上記第1実施形態と同様に、第2部材39の貫通穴39aの上縁部と第1部材38の溝部38dの一端部とで囲まれて開口部40が形成される。また、仕切り部材35の第1部材38の溝部38dと第2部材39とで囲まれて形成される空間が液相冷媒流路43を形成する。
本実施形態においても、気相冷媒貯留部42に一旦溜まった気相冷媒が開口部40を通じて分配空間37に流入し、液相冷媒貯留部41に一旦溜まった液相冷媒45が液相冷媒流路43内を吸い上げられて上昇して開口部40の下縁部近傍に導かれ、開口部40における気相冷媒の流れによってミスト化され、分配空間37へ向かって噴霧される。
この結果、上記第1実施形態と同様と同様の効果を発揮することができる。
(第4実施形態)
上記第1実施形態では、仕切り部材35を第2蒸発器18の上側タンク18b内に配置しているが、本第4実施形態では、仕切り部材35を第2蒸発器18の下側タンク18c内に配置している。
本実施形態は、本発明による冷媒蒸発器を膨張弁サイクル50に適用した例である。ここで、膨張弁サイクルとは、周知のごとく、圧縮機、放熱器、膨張弁および蒸発器を順次接続した閉回路からなる冷凍サイクルである。
図13は本実施形態による膨張弁サイクルを示す。膨張弁13の出口側に第2蒸発器18が接続され、この第2蒸発器18の出口側は第1蒸発器15に接続される。そして、第1蒸発器15の出口側は圧縮機11の吸入側に接続される。
図14は本実施形態による一体化ユニット20の全体構成の概要を示す斜視図で、図15は第1、第2蒸発器15、18の下側タンク部の短手方向(垂直方向)断面図で、図16は第2蒸発器18の下側タンク18cの斜視図であり、下側タンク18cの一部を切断した状態を図示している。
本実施形態では、第1蒸発器15の上側タンク15bの内部空間が長手方向に仕切られておらず、第2蒸発器18の上側タンク18bの内部空間も長手方向に仕切られていない。第1蒸発器15の上側タンク15bの内部空間は、タンク長手方向のほぼ全域にわたって、第2蒸発器18の上側タンク18bの内部空間と連通している。
膨張弁13の下流端部は、第2蒸発器18の下側タンク18cの側面を貫通して下側タンク18c内に開口している。
第1、第2蒸発器15、18の下側タンク15c、18cは、上側タンク15b、18bと同様に、チューブ側(上面側)半割れ部材51、反チューブ側(底面側)半割れ部材52およびキャップ(図示せず)に分割して成形している。
本実施形態における仕切り部材35は下側タンク18c内に配置され、下側タンク18cの内部空間を貯留空間36と分配空間37とに仕切っている。本実施形態では、貯留空間36は仕切り部材35の下側に形成される空間であり、分配空間37は仕切り部材35の下側に形成される空間である。
本実施形態における仕切り部材35は、上記第1実施形態と同様に、断面が略V字形状であって、タンク長手方向に延びる形状を有しており、略V字形状の両端部が上方側を向くように配置されている。仕切り部材35の略V字形状の両端部は下側タンク18cの内壁面、より具体的には、下側タンク18cのチューブ側半割れ部材51の内壁面に当接する。
なお、図示を省略しているが、膨張弁13の下流端部は貯留空間36内に開口している。
仕切り部材35は、上記第1実施形態と同様に、1つの第1部材38と2つの第2部材39とに分割して成形される。図17は本実施形態による第1部材38の単体斜視図である。
本実施形態における第1部材38は全体として上記第1実施形態と同様の形状を有しているが、溝部38dの打ち出し方向のみが上記第1実施形態と相違する。すなわち、溝部38dが第1部材38の外方側から内方側に向かって打ち出し成形されている。
本実施形態における第2部材39は上記第1実施形態と同様の形状を有している。上記第1実施形態では、第2部材39の平板面の一部が第1部材38の傾斜部38b、38cの「内側」の面に密着して配置されているが、本実施形態では、第2部材39の平板面の一部は、第1部材38の傾斜部38b、38cの「外側」の面に密着して配置されている。
本実施形態においても、溝部38dの両端部が貫通穴39aの下部をわずかに塞ぐように配置されているので、貫通穴39aの上縁部と溝部38dの両端部とで囲まれて開口部40が形成され、開口部40によって貯留空間36と分配空間37とが連通する。
また、仕切り部材35の第1部材38の溝部38dと第2部材39とで囲まれて液相冷媒流路43が形成され、液相冷媒流路43の一端部(下端部)が貯留空間36の液相冷媒貯留部41の最低部にて開口している。
本実施形態では、液相冷媒貯留部41は貯留空間36のうち下側タンク18cの底部から開口部40の下縁部までの空間によって構成され、気相冷媒貯留部42が貯留空間36のうち残余の空間、すなわち、液相冷媒貯留部41の上方空間によって構成されている。
仕切り部材35の下側タンク18cへの組み付け手順については、上記第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
以上の構成において一体化ユニット20全体の冷媒流路を図14により具体的に説明すると、膨張弁13通過後の冷媒(中間圧冷媒)は矢印rのように第2蒸発器18の下側タンク18c内に流入する。
この下側タンク18c内の冷媒は熱交換コア部18aの複数のチューブ21を矢印sのように下降して上側タンク18b内に流入する。この上側タンク18bの内部空間は第1蒸発器15の上側タンク15bの内部空間と全面的に連通しているので、この上側タンク18bの内部空間から冷媒は矢印tのように第1蒸発器15の上側タンク15bの内部空間へと移動する。
この上側タンク15b内の冷媒は熱交換コア部15aの複数のチューブ21を矢印uのように下降して第1蒸発器15の下側タンク15c内に流入し、さらに、ここから冷媒は矢印vのように上側タンク15bの冷媒出口へと流れる。
ところで、本実施形態では、図15に示すように、膨張弁13の下流側端部から下側タンク18cの貯留空間36に流入する気液二相冷媒のうち液相冷媒は、液相冷媒貯留部41に一旦溜まり、気相冷媒は気相冷媒貯留部42に一旦溜まる。
気相冷媒貯留部42に一旦溜まった気相冷媒は、矢印wのように開口部40を通じて分配空間37に流入し、開口部40周縁部の静圧が低下する。
一方、液相冷媒貯留部41に一旦溜まった液相冷媒45は、液相冷媒流路43での毛細管現象と開口部40周縁部の静圧の低下とによって、矢印xのように液相冷媒流路43内を吸い上げられて上昇し、液相冷媒流路43の出口端部(上端部)、すなわち、開口部40の下縁部近傍に導かれ、開口部40における気相冷媒の流れによってミスト化され、分配空間37へ向かって噴霧される。
そして、ミスト状の液相冷媒は分配空間37内に拡散したのち、気相冷媒とともに複数のチューブ21の入口側端部21a内に流入する。
このように、本実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、複数のチューブ21に対する冷媒の分配を均一化できる。
(第5実施形態)
本第5実施形態では、図18に示すように、上記第1実施形態に対して内部熱交換器53を追加している。
内部熱交換器53は、高圧側通路53aを通過する放熱器12流出冷媒と低圧側通路53bを通過する圧縮機11吸入冷媒と熱交換させて、放熱器12流出冷媒を放熱させるものである。これにより、第1、第2蒸発器15、18における冷媒入口・出口間の冷媒のエンタルピ差を増大させて、サイクル効率(COP)を向上させることができる。
このように構成されるエジェクタ式冷凍サイクル10に対しても、本発明を適用できる。
(第6実施形態)
第1実施形態では、放熱器12の出口側に受液器12aを配置し、この受液器12aの出口側に膨張弁13を配置する膨張弁式のサイクル構成にしているが、本第6実施形態では、図19に示すように、第1蒸発器15の出口側に冷媒の気液を分離して余剰冷媒を液として蓄える気液分離器であるアキュムレータ54を設け、このアキュムレータ54から気相冷媒を圧縮機11の吸入側へ導出するようにしている。
このアキュムレータ式のサイクル構成では、アキュムレータ54内に気相冷媒と液相冷媒の気液界面が形成されるから、第1実施形態のように第1蒸発器15の出口冷媒の過熱度制御を膨張弁13で行う必要がない。
従って、アキュムレータ式のサイクル構成では、受液器12aおよび膨張弁13を廃止することになるので、一体化ユニット20の冷媒入口を放熱器12の出口側に直接接続すればよい。そして、一体化ユニット20の冷媒出口をアキュムレータの入口側に接続し、アキュムレータの出口側を圧縮機11の吸入側に接続すればよい。
このように構成されるエジェクタ式冷凍サイクル10に対しても、本発明を適用できる。
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、第1蒸発器15と第2蒸発器18のタンク部15b、15c、18b、18cを第1蒸発器15の上下両側に配置している、すなわち、第1蒸発器15と第2蒸発器18とを重力方向と平行に配置しているが、第1蒸発器15と第2蒸発器18とを重力方向に対して傾斜して配置するようにしてもよい。
この場合においては、仕切り部材35を第1、第2蒸発器15、18とともに傾斜させると開口部40から液相冷媒が溢れやすくなって液相冷媒を溜める効果が減少してしまうので、仕切り部材35を傾斜させずに上記各実施形態と同様の角度で配置するのが好ましい。
(2)上記各実施形態では、仕切り部材35の略V字形状の両端部を上側タンク18bの内壁面に当接させているが、略V字形状の両端部を上側タンク18bの内壁面に当接させず、略V字形状の両端部以外の部位を上側タンク18bの内壁面に当接させてもよい。
例えば、略V字形状の両端部を上側タンク18bの内壁面から離間させ、略V字形状の両端部以外の部位に上側タンク18bの内壁面に向かって突き出すリブを形成し、このリブを上側タンク18bの内壁面に当接させてもよい。
(3)上記各実施形態では、仕切り部材35に気相冷媒流通部をなす開口部40と、液相冷媒流路43を一体に形成しているが、仕切り部材35とは別個に気相冷媒流通部と液相冷媒流路を設けるようにしてもよい。
例えば、上記第4実施形態において、仕切り部材を水平方向に延びる単純な平板で構成し、気相冷媒流通部と液相冷媒流路とを仕切り部材と別体の管状部材によって構成してもよい。
(4)上記第1実施形態では、一体化ユニット20の各部材を一体に組み付けるに際して、エジェクタ14を除く他の部材、すなわち、第1蒸発器15、第2蒸発器18、キャピラリチューブ17a等を一体ろう付けしているが、これらの部材の一体組み付けは、ろう付け以外に、ねじ止め、かしめ、溶接、接着等の種々な固定手段を用いて行うことができる。
また、上記第1実施形態では、エジェクタ14の固定手段としてねじ止めを例示しているが、熱変形の恐れのない固定手段であれば、ねじ止め以外の手段を用いることができる。具体的には、かしめ、接着等の固定手段を用いてエジェクタ14の固定を行ってもよい。
(5)上記各実施形態では、冷媒として高圧圧力が臨界圧力を超えないフロン系、HC系等の冷媒を用いる蒸気圧縮式の亜臨界サイクルについて説明したが、冷媒として二酸化炭素(CO2)のように高圧圧力が臨界圧力を超える冷媒を用いる蒸気圧縮式の超臨界サイクルに本発明を適用してもよい。
但し、超臨界サイクルでは、圧縮機吐出冷媒が放熱器12にて超臨界状態のまま放熱するのみであり、凝縮しないので、高圧側に配置される受液器12aでは冷媒の気液分離作用および余剰液相冷媒の貯留作用を発揮できない。そこで、超臨界サイクルでは、図19に示すように第1蒸発器15の出口側に低圧側気液分離器をなすアキュムレータ54を配置する構成を採用すればよい。
(6)上記第1実施形態では、絞り機構17をキャピラリチューブ17aまたはオリフィスのような固定絞り穴17bで構成しているが、絞り機構17を電動アクチュエータにより弁開度(通路絞り開度)が調整可能になっている電気制御弁で構成してもよい。また、絞り機構17をキャピラリチューブ17aや固定絞り穴17bのごとき固定絞りと電磁弁との組み合わせで構成してもよい。
(7)上記第1実施形態では、エジェクタ14として、通路面積が一定のノズル部14aを有する固定エジェクタを例示しているが、エジェクタ14として、通路面積を調整可能な可変ノズル部を有する可変エジェクタを用いてもよい。
なお、可変ノズル部の具体例としては、例えば、可変ノズル部の通路内にニードルを挿入し、このニードルの位置を電気的アクチュエータにより制御して通路面積を調整する機構とすればよい。
(8)上記各実施形態では、車室内冷房用と冷凍冷蔵庫内の冷却とを行う冷凍サイクルに本発明を適用した例を示したが、冷媒蒸発温度が高温側となる第1蒸発器15と冷媒蒸発温度が低温側となる第2蒸発器18の両方をともに車室内の異なる領域(例えば、車室内前席側領域と車室内後席側領域)の冷房に用いてもよい。
また、冷媒蒸発温度が高温側となる第1蒸発器15と冷媒蒸発温度が低温側となる第2蒸発器18の両方をともに冷凍冷蔵庫内の冷却に用いてもよい。つまり、冷媒蒸発温度が高温側となる第1蒸発器15により冷凍冷蔵庫内の冷蔵室を冷却し、冷媒蒸発温度が低温側となる第2蒸発器18により冷凍冷蔵庫内の冷凍室を冷却するようにしてもよい。
(9)上記第1実施形態では、温度式膨張弁13と感温部13aとを、エジェクタ式冷凍サイクル用ユニット20とは別体として構成しているが、エジェクタ式冷凍サイクル用ユニット20に、温度式膨張弁13と感温部13aとを一体的に組みつけてもよい。
(10)上記各実施形態では、車両用の冷凍サイクルについて説明したが、車両用に限らず、定置用等の冷凍サイクルに対しても本発明を同様に適用できることはもちろんである。