(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態によるエジェクタ式冷凍サイクルを説明する。図1は第1実施形態によるエジェクタ式冷凍サイクル10を車両用冷凍サイクル装置に適用した例を示す。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10において、冷媒を吸入圧縮する圧縮機11は、電磁クラッチ11a、ベルト等を介して図示しない車両走行用エンジンにより回転駆動される。
この圧縮機11としては、吐出容量の変化により冷媒吐出能力を調整できる可変容量型圧縮機、あるいは電磁クラッチ11aの断続により圧縮機作動の稼働率を変化させて冷媒吐出能力を調整する固定容量型圧縮機のいずれを使用してもよい。また、圧縮機11として電動圧縮機を使用すれば、電動モータの回転数調整により冷媒吐出能力を調整できる。
この圧縮機11の冷媒吐出側には放熱器12が配置されている。放熱器12は圧縮機11から吐出された高圧冷媒と図示しない冷却ファンにより送風される外気(車室外空気)との間で熱交換を行って高圧冷媒を冷却する。
ここで、エジェクタ式冷凍サイクル10の冷媒として、本実施形態ではフロン系、HC系等の冷媒のように高圧圧力が臨界圧力を超えない冷媒を用いて、蒸気圧縮式の亜臨界サイクルを構成している。このため、放熱器12は冷媒を凝縮する凝縮器として作用する。
放熱器12の出口側には受液器12aが設けられている。この受液器12aは周知のように縦長のタンク形状のものであり、冷媒の気液を分離してサイクル内の余剰液冷媒を溜める気液分離器を構成する。受液器12aの出口にはタンク形状内部の下部側から液冷媒を導出するようになっている。なお、受液器12aは本例では放熱器12と一体的に設けられている。
また、放熱器12として、冷媒流れ上流側に位置する凝縮用熱交換部と、この凝縮用熱交換部からの冷媒を導入して冷媒の気液を分離する受液器12aと、この受液器12aからの飽和液冷媒を過冷却する過冷却用熱交換部とを有する公知の構成を採用してもよい。
受液器12aの出口側には温度式膨張弁13が配置されている。この温度式膨張弁13は受液器12aからの液冷媒を減圧する減圧手段であって、圧縮機11の吸入側通路に配置された感温部13aを有している。
温度式膨張弁13は周知のように、圧縮機11の吸入側冷媒(後述の蒸発器出口側冷媒)の温度と圧力とに基づいて圧縮機吸入側冷媒の過熱度を検出し、圧縮機吸入側冷媒の過熱度が予め設定された所定値となるように弁開度(冷媒流量)を調整するものである。
温度式膨張弁13の出口側にエジェクタ14が配置されている。このエジェクタ14は冷媒を減圧する減圧手段であるとともに、高速で噴出する冷媒流の吸引作用(巻き込み作用)によって冷媒の循環を行う流体輸送を冷媒循環手段(運動量輸送式ポンプ)でもある。
エジェクタ14には、膨張弁13通過後の冷媒(中間圧冷媒)の通路面積を小さく絞って、冷媒をさらに減圧膨張させるノズル部14aと、ノズル部14aの冷媒噴出口と同一空間に配置され、後述する第2蒸発器18からの気相冷媒を吸引する冷媒吸引口14bが備えられている。
さらに、ノズル部14aおよび冷媒吸引口14bの冷媒流れ下流側部位には、ノズル部14aからの高速度の冷媒流と冷媒吸引口14bの吸引冷媒とを混合する混合部14cが設けられている。
そして、混合部14cの冷媒流れ下流側に昇圧部をなすディフューザ部14dが配置されている。このディフューザ部14dは冷媒の通路面積を徐々に大きくする形状に形成されており、冷媒流れを減速して冷媒圧力を上昇させる作用、つまり、冷媒の速度エネルギーを圧力エネルギーに変換する作用を果たす。
エジェクタ14のディフューザ部14dの出口側に第1蒸発器15が接続され、この第1蒸発器15の出口側は圧縮機11の吸入側に接続される。
一方、エジェクタ14の入口側(温度式膨張弁13の出口側とエジェクタ14の入口側との間の中間部位)から冷媒分岐通路16が分岐され、この冷媒分岐通路16の下流側はエジェクタ14の冷媒吸引口14bに接続される。Zは冷媒分岐通路16の分岐点を示す。
この冷媒分岐通路16には絞り機構17が配置され、この絞り機構17よりも冷媒流れ下流側には第2蒸発器18が配置されている。絞り機構17は第2蒸発器18への冷媒流量の調節作用をなす減圧手段であって、具体的には固定絞りであるキャピラリチューブで構成している。
本実施形態では、2つの蒸発器15、18を後述の構成により一体構造に組み付けるようになっている。この2つの蒸発器15、18を図示しないケース内に収納し、そして、このケース内に構成される空気通路に共通の電動送風機19により空気(被冷却空気)を矢印Aのごとく送風し、この送風空気を2つの蒸発器15、18で冷却するようになっている。
2つの蒸発器15、18で冷却された冷風を共通の冷却対象空間(図示せず)に送り込み、これにより、2つの蒸発器15、18にて共通の冷却対象空間を冷却するようになっている。ここで、2つの蒸発器15、18のうち、エジェクタ14下流側の主流路に接続される第1蒸発器15を空気流れAの上流側(風上側)に配置し、エジェクタ14の冷媒吸引口14bに接続される第2蒸発器18を空気流れAの下流側(風下側)に配置している。
なお、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を車両空調用冷凍サイクル装置に適用する場合は車室内空間が冷却対象空間となる。また、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を冷凍車用冷凍サイクル装置に適用する場合は冷凍車の冷凍冷蔵庫内空間が冷却対象空間となる。
ところで、本実施形態では、エジェクタ14、第1、第2蒸発器15、18および絞り機構17を1つの一体化ユニット20として組み付けている。次に、この一体化ユニット20の具体例を説明する。
図2はこの一体化ユニット20の分解斜視図、図3は一体化ユニット20の冷媒流路構成を示す概略斜視図である。本例では、2つの蒸発器15、18が完全に1つの蒸発器構造として一体化されるようになっている。そのため、第1蒸発器15は1つの蒸発器構造のうち空気流れAの上流側領域を構成し、そして、第2蒸発器18は1つの蒸発器構造のうち空気流れAの下流側領域を構成するようになっている。
第1蒸発器15および第2蒸発器18の基本的構成は同一であり、それぞれ熱交換コア部15a、18aと、この熱交換コア部15a、18aの上下両側に位置するタンク部15b、15c、18b、18cとを備えている。
ここで、熱交換コア部15a、18aは、それぞれ上下方向に延びる複数のチューブ21を備える。これら複数のチューブ21の間には、被熱交換媒体、この実施形態では冷却される空気が通る通路が形成される。これら複数のチューブ21相互間には、フィン22を配置し、チューブ21とフィン22とを接合することができる。
熱交換コア部15a、18aは、チューブ21とフィン22との積層構造からなる。このチューブ21とフィン22は熱交換コア部15a、18aの左右方向に交互に積層配置される。他の実施形態では、フィン22を備えない構成を採用することができる。
なお、図2、図3では、チューブ21とフィン22の積層構造の一部のみ図示しているが、熱交換コア部15a、18aの全域にチューブ21とフィン22の積層構造が構成され、この積層構造の空隙部を電動送風機19の送風空気が通過するようになっている。
チューブ21は冷媒通路を構成するもので、断面形状が空気流れ方向Aに沿って扁平な扁平チューブよりなる。フィン22は薄板材を波状に曲げ成形したコルゲートフィンであり、チューブ21の平坦な外面側に接合され空気側伝熱面積を拡大する。
熱交換コア部15aのチューブ21と熱交換コア部18aのチューブ21は互いに独立した冷媒通路を構成し、第1蒸発器15の上下両側のタンク部15b、15cと、第2蒸発器18の上下両側のタンク部18b、18cは互いに独立した冷媒通路空間を構成する。
ここで、第1蒸発器15のタンク部15b、15cおよび第2蒸発器18のタンク部18b、18cは、いずれも複数のチューブ21の配列方向に細長く延びる形状になっている。チューブ21の配列方向は図2、図3の左右方向であり、空気流れ方向Aと直交する方向である。
第1蒸発器15の上下両側のタンク部15b、15cは熱交換コア部15aのチューブ21の上下両端部が挿入され、接合されるチューブ嵌合穴部(図示せず)を有し、チューブ21の上下両端部がタンク部15b、15cの内部空間に連通するようになっている。
同様に、第2蒸発器18の上下両側のタンク部18b、18cは熱交換コア部18aのチューブ21の上下両端部が挿入され、接合されるチューブ嵌合穴部(図示せず)を有し、チューブ21の上下両端部がタンク部18b、18cの内部空間に連通するようになっている。
これにより、上下両側のタンク部15b、15c、18b、18cは、それぞれ対応する熱交換コア部15a、18aの複数のチューブ21へ冷媒流れを分配したり、複数のチューブ21からの冷媒流れを集合する役割を果たす。
図4は蒸発器上側タンク部のうち、図2、図3に示す接続ブロック23側の要部断面図、図5は蒸発器上側タンク部のうち、接続ブロック23と反対側の要部断面図、図6は図5のB−B拡大断面図である。
本例では、2つの上側タンク15b、18bを、タンク長手方向(チューブ配列方向)に延びるチューブ側(底面側)半割れ部材24と反チューブ側(上面側)半割れ部材25とに分割し、この2つの半割れ部材24、25を組み合わせて一体に接合することにより、タンク長手方向(チューブ配列方向)に延びる2つの筒形状を空気流れ方向Aの前後に並んで形成する。この2つの筒形状の長手方向側面部(図5の右端部)をキャップ26で閉塞する。これによって、2つの上側タンク15b、18bが構成される。
チューブ側半割れ部材24は、2つの上側タンク15b、18bのそれぞれのチューブ側半割れ部を一体成形した略W字状断面形状を有し、また、反チューブ側半割れ部材25は2つの上側タンク15b、18bのそれぞれの反チューブ側半割れ部を一体成形した略M字状断面形状を有している。
図示を省略しているが、2つの下側タンク15c、18cも、2つの上側タンク15b、18bと同様に、チューブ側半割れ部材、反チューブ側半割れ部材およびキャップによって構成される。
なお、チューブ21、フィン22、タンク部15b、15c、18b、18c等の蒸発器構成部品の具体的材質としては、熱伝導性やろう付け性に優れた金属であるアルミニウムが好適であり、このアルミニウム材にて各部品を成形することにより、第1、第2蒸発器15、18の全体構成を一体ろう付けにて組み付けることができる。
本実施形態では、図2、図3に示す絞り機構17を構成するキャピラリチューブおよび冷媒通路の接続ブロック23もろう付けにて第1、第2蒸発器15、18と一体に組み付けるようになっている。
これに対し、エジェクタ14はノズル部14aに高精度な微小通路を形成しているので、エジェクタ14をろう付けすると、ろう付け時の高温度(アルミニウムのろう付け温度:600℃付近)にてノズル部14aが熱変形して、ノズル部14aの通路形状、寸法等を初期の設計通りに維持できないという不具合が生じる。
そこで、エジェクタ14については、第1、第2蒸発器15、18、キャピラリチューブ17および接続ブロック23の一体ろう付けを行った後に、蒸発器側に組み付けするようにしてある。
次に、エジェクタ14、キャピラリチューブ17および接続ブロック23の組み付け構造をより具体的に説明する。
キャピラリチューブ17および接続ブロック23は、蒸発器部品と同様にアルミニウム材にて成形される。キャピラリチューブ17は、2つの上側タンク15b、18bのうち反チューブ側半割れ部材25の略M字状断面の中央部に形成される谷間形状部の上に載せられ、キャピラリチューブ17の外面が上側タンク15b、18bの外面に接触した状態で上側タンク15b、18bに一体ろう付けされる。
図5に示すように、キャピラリチューブ17の出口側端部(右側端部)はU状に曲げられて上側タンク18bの長手方向の他方の側面を閉塞するキャップ26の貫通穴26aに挿入され、上側タンク18bの右側空間27内に開口している。なお、キャピラリチューブ17の外周面とキャップ26の貫通穴26aとの間はろう付けによりシール接合される。
接続ブロック23は、図2に示すように、介在プレート28を挟んで、第1、第2蒸発器15、18の上側タンク15b、18bの長手方向の一方の側面部にろう付け固定される部材であって、図3に示す一体化ユニット20の1つの冷媒入口29と1つの冷媒出口30とを構成する。
従って、介在プレート28も、蒸発器構成部品、キャピラリチューブ17および接続ブロック23と同様にアルミニウム材にて成形される。介在プレート28は接続ブロック23と共同して、後述する冷媒通路を構成するとともに、エジェクタ14の長手方向の一端部(ノズル部14a側の一端部)を保持固定する役割を果たす部材である。
図7、図8に示すように、接続ブロック23には1つの冷媒入口29と1つの冷媒出口30とを設けるとともに、エジェクタ14を蒸発器タンク内に挿入するための専用の穴部31を設けている。
このエジェクタ挿入用の専用の穴部31は円形穴であって、第2蒸発器18の上側タンク部18bのうち左側タンク空間32の側面部に対向するように開口している。ここで、左側タンク空間32は冷媒集合側タンク空間を構成する。
介在プレート28には、穴部31と同心状に対向する円筒部33が形成されている。この円筒部33は、図4、図7に示すように、介在プレート28の平板状の基板部から上側タンク部18bの左側タンク空間32内へ円筒状に突出し、その突出先端部に内径方向へリング状に折曲したフランジ部33aを一体成形したものである。
このフランジ部33aの内径は、エジェクタ14の先端部のディフューザ部14dの最大外径部よりも若干量大きくなるように設定して、エジェクタ14の先端部を接続ブロック23の穴部31および介在プレート28の円筒部33内を通して上側タンク部18bの左側タンク空間32内へ挿入できるようになっている。
図4に示すように、エジェクタ14の長手方向のうち、入口側(ノズル部14a側)端部の外周面にはOリング34a装着用の溝部14eが径方向外側へリング状に突出するように形成され、この溝部14eが介在プレート28の円筒部33先端部のフランジ部33aに係止されるようになっている。すなわち、Oリング溝部14eと介在プレート28のフランジ部33aとの係止により、エジェクタ14の挿入位置を規定できるようになっている。
そして、Oリング34aが円筒部33の内周面に弾性的に圧接することにより、エジェクタ14の入口側外周面をシールすることができ、後述する主通路29aが左側タンク空間32内に直接連通することを防止する。
また、フランジ部33aの円周方向の所定位置の1箇所に溝部33b(図7)を形成し、この溝部33bにエジェクタ14の外周面において長手方向に延びる凸部(図示せず)を嵌合することにより、エジェクタ14の回転を防止して、エジェクタ14の円周方向の組み付け位置を規定できるようになっている。
図7、図8に示すように、接続ブロック23のうち、介在プレート28側の面には「くの字状」に曲がった凹状の溝部35が形成され、この凹状の溝部35の一端部に冷媒入口29が連通している。そして、この凹状の溝部35の他端部寄りの中間部に穴部31と、介在プレート28の円筒部33が連通する。
介在プレート28には、図7に示すように、接続ブロック23の凹状溝部35に対向する凹状溝部36が形成され、この両凹状溝部35、36の組み合わせによって冷媒通路断面積を増大している。なお、凹状溝部36の凹形状は図2に図示されている。
接続ブロック23の凹状溝部35によって形成される冷媒通路のうち、介在プレート28の円筒部33へ向かう通路部によって主通路29aが形成される。従って、円筒部33の内側開口部は主通路29aと連通する主通路側開口部37(図4)を構成する。
そして、凹状の溝部35によって形成される冷媒通路のうち、円筒部33の対向位置よりも更に他端部35a側の通路部によって分岐通路16が形成される。一方、介在プレート28のうち、接続ブロック23の分岐通路16に対向する部位に分岐通路側開口部38が円形状で開口して分岐通路16と連通する。
この開口部38にはキャピラリチューブ17の入口側端部(図2の左側端部)がろう付けによりシール接合される。
また、介在プレート28には、接続ブロック23の冷媒出口30および第1蒸発器15の上側タンク15bの左側空間(冷媒流れの出口部に位置する空間部)39の側面部に対向する部位に冷媒出口側開口部40が開口しており、この開口部40により左側空間39を冷媒出口30に連通させる。
介在プレート28から蒸発器側に突出する複数の第1爪部41を上側タンク15b、18bにかしめ固定することにより、介在プレート28を蒸発器側にろう付け前に仮固定することができる。一方、介在プレート28から接続ブロック23側に突出する複数の第2爪部42を接続ブロック23にかしめ固定することにより、接続ブロック23を介在プレート28を介して蒸発器側にろう付け前に仮固定することができる。
エジェクタ固定板43は、第2蒸発器18の上側タンク18bの内部空間の長手方向の略中央部に配置され上側タンク18bの内壁面にろう付けされる部材である。このエジェクタ固定板43は、上側タンク18bの内部空間をタンク長手方向の2つの空間、すなわち、左側空間32と右側空間27とに仕切る役割を果たす。
このエジェクタ固定板43は、図4、図5、図9に示すように円筒部43aが一体成形され、この円筒部43aの内周側にエジェクタ14のディフューザ部14dを嵌合して固定するとともに、上側タンク18bの内部空間を左側空間32と右側空間27とに仕切る役割を果たす。円筒部43aとディフューザ部14dとの嵌合部はOリング34b(図4)によりシールされる。
エジェクタ固定板43から上方へ突出する爪部43b(図9)は上側タンク18bの上面のスリット状穴部44(図5)を貫通し、上側タンク18bにかしめ固定される。これにより、エジェクタ固定板43を上側タンク18bにろう付け前に仮固定できる。
上側タンク18b内の右側空間27の上下方向の略中央部には仕切り板45が配置されている。この仕切り板45は図11に示すように上側タンク18bの長手方向に延びる全体として概略板状の部材であり、上側タンク18bの内壁面にろう付けされる。
上側タンク18b内の右側空間27はこの仕切り板45によってさらに上下方向の2つの空間、すなわち、上側空間27aと下側空間27bとに仕切られている。
仕切り板45の長手方向端部のうち、キャピラリチューブ17の出口端部側の端部(図5、図11の右端部)は上方へ向かって直角に屈曲した屈曲部45aが形成され、この屈曲部45aの先端部から上方へ突出する爪部45bが形成される。この爪部45bは上側タンク18bの上面のスリット状穴部46(図5)を貫通して上側タンク18bにかしめ固定される。
これにより、仕切り板45を上側タンク18bに対してろう付け前に仮固定できる。また、仕切り板45の屈曲部45aとキャピラリチューブ17の出口端部との間に、図5に示す所定の間隔を設定することにより、キャピラリチューブ17の出口端部は右側空間27の下側空間(冷媒分配側空間)27bに連通する。
仕切り板45の屈曲部45aの屈曲内側に三角状に突出するリブ45c(図11)が打ち出し成形されている。これにより、仕切り板45の屈曲部45aにおける剛性を確保して、屈曲角度が変化してしまうことを防止している。
仕切り板45の長手方向端部のうち、エジェクタ固定板43側の端部(図5、図11の左端部)には下方へ向かって直角に屈曲した屈曲部45dが形成され、この屈曲部45dはエジェクタ固定板43および上側タンク18bのチューブ側半割れ部材24に接触して、この両者43、24にろう付けされる。
エジェクタ14の長手方向の先端部(ディフューザ部14dの出口部)はエジェクタ固定板43の円筒部43a内を貫通して上側タンク18b内の右側空間27の上側空間27a内に突き出して、ディフューザ部14dの出口部が上側空間27a内に直接連通する。
ここで、仕切り板45には、屈曲部45dに隣接して下方への円弧状凹部45eが形成され、この円弧状凹部45e上にエジェクタ14のディフューザ部14dの出口側下部が嵌合し、更に、この円弧状凹部45eに連続してガイド部45fが仕切り板45に形成されている。このガイド部45fは傾斜円弧形状であり、ディフューザ部14dの出口部から流出する冷媒流れをスムースにガイドするものである。
図5に示すように、第1蒸発器15の上側タンク15bの内部空間の長手方向の略中央部には仕切板47が配置され、この仕切板47によって上側タンク15bの内部空間が長手方向の2つの空間、すなわち、左側空間39と右側空間48とに仕切られている。
第1蒸発器15の上側タンク15bの右側空間(冷媒分配側空間)48は連通穴部49(図5、図6)を介して上側タンク18b内の右側空間27の上側空間27aに連通している。この連通穴部49は図5に示すようにタンク長手方向に沿って複数個(図示の例では4個)形成される。
この連通穴部49は図6に示すように2つの上側タンク15b、18bの結合部に形成されるものである。より具体的には、2つの上側タンク15b、18bのチューブ側半割れ部材24のうち略W字状断面の中央部に形成される平板面50と、2つの上側タンク15b、18bの反チューブ側半割れ部材25のうち略M字状断面の中央部に形成される平板面51とをろう付けにより接合するに際して、反チューブ側半割れ部材25の平板面51に上方への凹形状を複数形成して、この凹形状とチューブ側半割れ部材24の平板面50とで囲まれてできる空間によって連通穴部49が形成される。
図4は接続ブロック23のエジェクタ挿入用穴部31および介在プレート28の円筒部33の穴形状(主通路側開口部37)を通過してエジェクタ14を上側タンク18bの内部に挿入した(差し込んだ)状態を示しており、このエジェクタ14の挿入作業終了後に、接続ブロック23のエジェクタ挿入用穴部31内にスペーサ52を差し込み、さらに、円柱状のプラグ53の外周面の雄ネジ53aをエジェクタ挿入用穴部31の内周面の雌ネジに螺合する。
スペーサ52は図10に示すようにリング状の本体部52aから垂直(エジェクタ長手方向)に突き出す突出片52bを一体成形している。この突出片52bをエジェクタ14の長手方向の入口側端部(図4の左端部)と当接することで、エジェクタ14の長手方向の固定を行う。
ここで、突出片52bは本体部52aの円周方向の一部のみから突き出す形状であるため、突出片52bを図4に示すようにエジェクタ挿入用穴部31のうち冷媒入口29と反対側部位に配置することにより、接続ブロック23の主通路29aと介在プレート28の円筒部33内側の主通路側開口部37との間の冷媒流れの妨げとならない。
また、スペーサ52の本体部52aをリング状に形成しているため、このリング状の中心穴52cの周縁部を把持して穴部31内へ差し込むことによりスペーサ52の組み付けを容易に行うことができる。
プラグ53はその外側端面に工具係止用の六角形状等の係止凹部53b(図2、図4)を有し、そして、雄ネジ53aよりも先端側外周面にOリング34cを配置し、このOリング34cを接続ブロック23のエジェクタ挿入用穴部31の内周面に弾性的に圧接することにより、プラグ53とエジェクタ挿入用穴部31との間をシールするようになっている。
一方、図5、図6に示すように、上側タンク18b内の右側空間27の下側空間27bの上下方向の略中央部には冷媒貯留板55が配置されている。この冷媒貯留板55は上側タンク18bの内壁面にろう付けされる部材であり、図12に示すように断面山形にて上側タンク18bの長手方向に延びる板状部材である。冷媒貯留板55の断面山形の頂部には、矩形状に打ち抜かれた穴部55aが上側タンク18bの長手方向に複数個設けられている。
下側空間27bは図5に示すように複数のチューブ21の上端開口部へ冷媒を分配する分配側タンク空間部を構成している。そこで、冷媒貯留板55はその断面山形形状の両側部に形成される谷部56(図6)にキャピラリチューブ17からの気液2相冷媒の液冷媒を溜めて、この液冷媒を複数の矩形状穴部55aから落下させ、複数のチューブ21の上端開口部へ冷媒を均一に分配する。
なお、図8に示すように接続ブロック23において蒸発器15、18のタンク15b、18bと反対側面(外側面)のうち、冷媒入口29と冷媒出口30との中間部位には2つのネジ穴57が開けてあり、このネジ穴57を使用して、冷凍サイクル部品、具体的には、温度式膨張弁13と接続ブロック23とをネジ止め結合できるようになっている。
ところで、本実施形態において、キャピラリチューブ17、接続ブロック23、介在プレート28、エジェクタ固定板43、仕切り板45および冷媒貯留板55はいずれも蒸発器15、18と一体ろう付けされる部品であるため、蒸発器部品(チューブ21、フィン22、タンク部15b、15c、18b、18c等)と同様にアルミニウム材にて成形される。
これに対し、スペーサ52およびプラグ53は、蒸発器15、18の一体ろう付け後に組み付けられるエジェクタ14の組み付けのための部品であるから、ろう付けを考慮した材質とする必要がなく、アルミニウム材に限定されない。したがって、スペーサ52およびプラグ53の材質はアルミニウム材を含む種々な金属を使用でき、また、樹脂材を使用することもできる。
また、エジェクタ14のうち、ノズル部14aはステンレス、黄銅等の材質で形成され、ノズル部14a以外の部分(冷媒吸引口14bを形成するハウジング部分、混合部14c、ディフューザ部14d等)は銅、アルミニウムといった金属材にて構成するが、樹脂(非金属材)で構成してもよい。
以上のごとく構成される一体化ユニット20全体の冷媒流路を図3〜図5により具体的に説明すると、接続ブロック23の冷媒入口29は主通路29aと分岐通路16とに分岐される。主通路29aの冷媒は介在プレート28の円筒部33内側の主通路側開口部37を通過したのち、エジェクタ14(ノズル部14a→混合部14c→ディフューザ部14d)を通過して減圧され、この減圧後の低圧冷媒は風下側に位置する第2蒸発器18の上側タンク18b内の右側空間27の上側空間27aに流入する。
その後、この冷媒は複数個の連通穴部49を経て矢印aのように風上側に位置する第1蒸発器15の上側タンク15bの右側空間48に流入する。
この右側空間48の冷媒は風上側熱交換コア部15aの右側部の複数のチューブ21に分配され、この複数のチューブ21を矢印bのように下降して下側タンク15c内の右側部に流入する。この下側タンク15c内には仕切板が設けてないので、この下側タンク15cの右側部から冷媒は矢印cのように左側部へと移動する。
この下側タンク15cの左側部の冷媒は風上側熱交換コア部15aの左側部の複数のチューブ21を矢印dのように上昇して上側タンク15bの左側空間39に流入し、さらに、ここから冷媒は矢印eのように接続ブロック23の冷媒出口30へと流れる。
これに対し、接続ブロック23の分岐通路16の冷媒はまずキャピラリチューブ17を通過して減圧され、この減圧後の低圧冷媒(気液2相状態の冷媒)は矢印fのように第2蒸発器18の上側タンク18bの右側空間27の下側空間27bに流入する。
この下側空間27bに流入した冷媒のうち液冷媒は一旦、冷媒貯留板55の山形形状の左右両側に位置する谷部56(図6)に溜まり、冷媒貯留板55の山形形状の頂部付近の矩形状穴部55aから液冷媒が溢れ出て下方へ落下する。
この矩形状穴部55aから落下した液冷媒を含む気液2相冷媒は風下側熱交換コア部18aの右側部の複数のチューブ21を矢印gのように下降して下側タンク18c内の右側部に流入する。この下側タンク18c内には仕切板が設けてないので、この下側タンク18cの右側部から冷媒は矢印hのように左側部へと移動する。
この下側タンク18cの左側部の冷媒は風下側熱交換コア部18aの左側部の複数のチューブ21を矢印iのように上昇して上側タンク18bの左側空間32に流入する。この左側空間32にエジェクタ14の冷媒吸引口14bが連通しているので、この左側空間32内の冷媒は冷媒吸引口14bからエジェクタ14内に吸引される。
一体化ユニット20は以上のような冷媒流路構成を持つため、一体化ユニット20全体として冷媒入口29は接続ブロック23に1つ設けるだけでよく、また冷媒出口30も接続ブロック23に1つ設けるだけでよい。
次に、第1実施形態の作動を説明する。圧縮機11を車両エンジンにより駆動すると、圧縮機11で圧縮され吐出された高温高圧状態の冷媒は放熱器12に流入する。放熱器12では高温の冷媒が外気により冷却されて凝縮する。放熱器12から流出した高圧冷媒は受液器12a内に流入し、この受液器12a内にて冷媒の気液が分離され、液冷媒が受液器12aから導出され膨張弁13を通過する。
この膨張弁13では、第1蒸発器15の出口冷媒(圧縮機吸入冷媒)の過熱度が所定値となるように弁開度(冷媒流量)が調整され、高圧冷媒が減圧される。この膨張弁13通過後の冷媒(中間圧冷媒)は一体化ユニット20の接続ブロック23に設けられた1つの冷媒入口29に流入する。
ここで、冷媒流れは、接続ブロック23の主通路29aからエジェクタ14に向かう冷媒流れと、接続ブロック23の冷媒分岐通路16からキャピラリチューブ17に向かう冷媒流れとに分流する。
そして、エジェクタ14に流入した冷媒流れはノズル部14aで減圧され膨張する。従って、ノズル部14aで冷媒の圧力エネルギーが速度エネルギーに変換され、このノズル部14aの噴出口から冷媒は高速度となって噴出する。この際の冷媒圧力低下により、冷媒吸引口14bから分岐冷媒通路16の第2蒸発器18通過後の冷媒(気相冷媒)を吸引する。
ノズル部14aから噴出した冷媒と冷媒吸引口14bに吸引された冷媒は、ノズル部14a下流側の混合部14cで混合してディフューザ部14dに流入する。このディフューザ部14dでは通路面積の拡大により、冷媒の速度(膨張)エネルギーが圧力エネルギーに変換されるため、冷媒の圧力が上昇する。
そして、エジェクタ14のディフューザ部14dから流出した冷媒は第1蒸発器15における図3の矢印a〜eの冷媒流路にて冷媒が流れる。この間に、第1蒸発器15の熱交換コア部15aでは、低温の低圧冷媒が矢印A方向の送風空気から吸熱して蒸発する。この蒸発後の気相冷媒は、1つの冷媒出口30から圧縮機11に吸入され、再び圧縮される。
一方、冷媒分岐通路16に流入した冷媒流れはキャピラリチューブ17で減圧されて低圧冷媒となり、この低圧冷媒が第2蒸発器18における図2の矢印f〜iの冷媒流路にて冷媒が流れる。この間に、第2蒸発器18の熱交換コア部18aでは、低温の低圧冷媒が、第1蒸発器15通過後の送風空気から吸熱して蒸発する。この蒸発後の気相冷媒は冷媒吸引口14bからエジェクタ14内に吸引される。
以上のごとく、本実施形態によると、エジェクタ14のディフューザ部14dの下流側冷媒を第1蒸発器15に供給するととともに、分岐通路16側の冷媒をキャピラリチューブ(絞り機構)17aを通して第2蒸発器18にも供給できるので、第1、第2蒸発器15、18で同時に冷却作用を発揮できる。そのため、第1、第2蒸発器15、18の両方で冷却された冷風を冷却対象空間に吹き出して、冷却対象空間を冷房(冷却)できる。
その際に、第1蒸発器15の冷媒蒸発圧力はディフューザ部14dで昇圧した後の圧力であり、一方、第2蒸発器18の出口側はエジェクタ14の冷媒吸引口14bに接続されているから、ノズル部14aでの減圧直後の最も低い圧力を第2蒸発器18に作用させることができる。
これにより、第1蒸発器15の冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)よりも第2蒸発器18の冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)を低くすることができる。そして、送風空気の流れ方向Aに対して冷媒蒸発温度が高い第1蒸発器15を上流側に配置し、冷媒蒸発温度が低い第2蒸発器18を下流側に配置しているから、第1蒸発器15における冷媒蒸発温度と送風空気との温度差および第2蒸発器18における冷媒蒸発温度と送風空気との温度差を両方とも確保できる。
このため、第1、第2蒸発器15、18の冷却性能を両方とも有効に発揮できる。従って、共通の冷却対象空間に対する冷却性能を第1、第2蒸発器15、18の組み合わせにて効果的に向上できる。また、ディフューザ部14dでの昇圧作用により圧縮機11の吸入圧を上昇して、圧縮機11の駆動動力を低減できる。
また、第2蒸発器18側の冷媒流量をエジェクタ14の機能に依存することなく、キャピラリチューブ(絞り機構)17にて独立に調整でき、第1蒸発器15への冷媒流量はエジェクタ14の絞り特性により調整できる。このため、第1、第2蒸発器15、18への冷媒流量をそれぞれの熱負荷に対応して容易に調整できる。
ところで、サイクル熱負荷が小さい条件では、サイクルの高低圧差が小さくなって、エジェクタ14の入力が小さくなり、エジェクタ14の冷媒吸引能力が低下するという現象が発生する。このため、第2蒸発器18の冷媒流量の減少が発生して、第2蒸発器18の冷却性能を確保しにくいという問題がある。
そこで、本実施形態では、エジェクタ14の上流部で膨張弁13通過後の冷媒を分岐し、この分岐冷媒を冷媒分岐通路16を通して冷媒吸引口14bに吸引させることにより、冷媒分岐通路16をエジェクタ14に対して並列的な接続関係としている。
これにより、冷媒分岐通路16にエジェクタ14の冷媒吸引能力だけでなく、圧縮機11の冷媒吸入、吐出能力をも利用して冷媒を供給できる。このため、低熱負荷条件下において、エジェクタ14の入力低下→エジェクタ14の冷媒吸引能力の低下という現象が発生しても、第2蒸発器18側の冷媒流量の減少度合いを小さくできる。よって、低熱負荷条件でも、第2蒸発器18の冷却性能を確保しやすい。
ところで、本実施形態によると、エジェクタ14、第1、第2蒸発器15、18、および固定絞りをなすキャピラリチューブ17を図2に示すように1つの構造体、すなわち一体化ユニット20として組み付け、それにより、一体化ユニット20全体として冷媒入口29および冷媒出口30をそれぞれ1つ設けるだけで済むようにしている。
その結果、エジェクタ式冷凍サイクル10の車両への搭載時には、上記各種部品14、15、18、17を内蔵する一体化ユニット20全体として、1つの冷媒入口29を膨張弁13の出口側に接続し、1つの冷媒出口30を圧縮機11の吸入側に接続するだけで、配管接続作業を終了できる。
これと同時に、エジェクタ14を蒸発器タンク18bの内部に挿入する構造になっているから、蒸発器タンク内部空間をエジェクタ14の搭載スペースとして有効利用でき、エジェクタ14と蒸発器15、18との一体化ユニット20の搭載スペースを縮小できる。
また、キャピラリチューブ17を2つの上側タンク15b、18bのうち反チューブ側半割れ部材25の略M字状断面の中央部に形成される谷間形状部に配置しているから、デッドスペースである谷間形状部をキャピラリチューブ17の搭載スペースとして有効利用でき、一体化ユニット20の搭載スペースを低減できる。
そのため、エジェクタ14、第1蒸発器15、第2蒸発器18、キャピラリチューブ17をそれぞれ独立の部品として構成し、これらの部品のそれぞれを独自に車体などのシャーシ部品に固定し、これら各部品相互間をそれぞれ配管結合する別体構成を採用する場合と比較して、複数の蒸発器15、18を有するエジェクタ式冷凍サイクル10の車両への搭載性を大幅に向上できる。そして、別体構成を採用する場合と比較して、サイクル部品点数を減少してコスト低減を図ることができる。
さらに、本実施形態では、このような車両への搭載性およびコスト上の利点を生かしつつ、次のような冷却性能向上効果を発揮できる。すなわち、キャピラリチューブ17の外面が第1蒸発器15の上側タンク15bのうち左側空間39の外面に接触しているので、キャピラリチューブ17内を流れる中間圧冷媒と、第1蒸発器15の上側タンク15bの左側空間39を流れる冷媒との熱交換が行われる。
このため、冷媒分岐通路16を通過する冷媒が第1蒸発器15の上側タンク15bの左側空間39を流れる冷媒によって冷却されるので、第2蒸発器18における冷媒入口・出口間の冷媒のエンタルピ差(冷却能力)を増大させることができ、第2蒸発器18の冷却性能を向上できる。
すなわち、本実施形態におけるキャピラリチューブ17と上側タンク15bは、上述の先願例における内部熱交換器(冷媒分岐通路を通過する高温の高圧冷媒と第1蒸発器下流側の低温の低圧冷媒との熱交換を行う内部熱交換器)と同等の役割を果たしている。
このため、上述の先願例のように別個に内部熱交換器を設ける場合と比較して、車両への搭載性の悪化およびコストの悪化を招くことなく、第2蒸発器18の冷却性能を向上できる。
さらに、一体化ユニット20の採用により次のごとき冷却性能向上等の付随効果をも発揮できる。
(1)一体化ユニット20によると、上記各種部品14、15、18、17相互間の接続通路長さを微少量に短縮できるので、冷媒流路の圧損を低減できると同時に、低圧冷媒と周辺雰囲気との熱交換を効果的に縮小できる。これにより、第1、第2蒸発器15、18の冷却性能を向上できる。
(2)特に、第2蒸発器18では、その出口側とエジェクタ冷媒吸引口14bとの間の接続配管の廃止による圧損低減分だけ第2蒸発器18の蒸発圧力を引き下げることができるので、第2蒸発器18の冷却性能を圧縮機動力の増加なしで効果的に向上できる。
すなわち、第2蒸発器18のタンクのうち、冷媒流れの出口部に位置して冷媒流れを集合する空間部32にエジェクタ14を挿入しているから、エジェクタ14の冷媒吸引口14bを空間部32に直接連通(開口)することにより、風下側の第2蒸発器18で蒸発した冷媒を冷媒吸引口14bに直接吸引することができる。
このため、冷媒吸引口14bへの冷媒吸引通路のための配管類が不要となり、冷媒通路構成を簡素化できるとともに、吸引冷媒流の圧損を低減して第2蒸発器18の冷却性能を向上できる。
(3)エジェクタ14を蒸発器タンク18bの内部に挿入する構造になっているから、また、エジェクタ14を蒸発器タンク部内の低温雰囲気に配置でき、エジェクタ14の断熱処理(断熱材の貼り付け)を廃止できる。
しかも、第1、第2蒸発器15、18を一体ろう付けした後に、エジェクタ14を蒸発器タンク18bの内部に挿入するから、ろう付け時の高温によってエジェクタノズル部14aの熱変形による寸法精度の悪化等の不具合を回避できる。
(4)エジェクタ14の挿入用の穴部31をネジ止め式のプラグ53により密封するから、プラグ53を脱着することで、エジェクタ14の脱着、交換も容易に行うことができる。
(5)1つの接続ブロック23に、冷媒入口29と冷媒出口30を形成するとともにエジェクタ14挿入用の穴部31を形成するから、低コストで穴部31を形成できる。
(6)この1つの接続ブロック23内に溝部35を形成して、冷媒通路25a、16を形成するから、冷媒通路形成部材の役割を1つの接続ブロック23に兼務させることができ、低コスト化と小型化を図ることができる。
(7)より具体的には、接続ブロック23と介在プレート28とを組み合わせて冷媒通路25a、16を形成するから、この冷媒通路25a、16が図7に例示する「くの字状」の曲げ形状のような複雑な形状であっても、両部材24、44の組み合わせにて冷媒通路25a、16を容易に形成できる。
(8)接続ブロック23の溝部35により、冷媒入口29をエジェクタノズル部14aの入口側に接続する主冷媒通路25aと冷媒入口29をキャピラリチューブ17の入口側に接続する分岐通路16とを形成し、かつ、分岐通路16におけるキャピラリチューブ17の入口側への接続位置を、主冷媒通路25aにおけるエジェクタノズル部14aの入口側への接続位置よりも冷媒流れの下流側にしている。
これによると、冷媒入口29からの冷媒流れのうち、密度が大きくて慣性力が大きい液冷媒が、エジェクタノズル部14aの入口側よりもキャピラリチューブ17入口側へ流入しやすくなる。その結果、キャピラリチューブ17による冷媒流量制御機能を良好に発揮できる。
(9)介在プレート28に円筒部33を形成し、この円筒部33にエジェクタ14を嵌合し固定するとともに、タンク18b内にエジェクタ固定板43を配置して、このエジェクタ固定板43の円筒部43aにもエジェクタ14を嵌合し固定している。
これによると、エジェクタ14の長手方向の2箇所を蒸発器タンク18b側に固定することができ、エジェクタ14を安定的に固定できる。しかも、エジェクタ14の挿入作業時に、円筒部33、円筒部43aがエジェクタ挿入のガイドを行うので、細長形状をなすエジェクタ14の挿入作業も容易に行うことができる。
ここで、介在プレート28の円筒部33およびエジェクタ固定板43はエジェクタ挿入用穴部31と同軸線上に位置するエジェクタ固定機構を構成するものであって、本実施形態では、エジェクタ固定機構をエジェクタ14の長手方向の2箇所に構成しているが、ジェクタ固定機構をエジェクタ14の長手方向の1箇所のみにすることも可能である。
(10)介在プレート28の円筒部33に溝部33bを設け、この溝部33bにエジェクタ14側の凸部(図示せず)を嵌合してエジェクタ14の回転を防止するので、エジェクタ円周方向の組み付け位置を規定できる。これにより、エジェクタ14の冷媒吸引口14bの位置を常に冷媒流路構成上の所定の好適位置に固定できる。
なお、本実施形態では、介在プレート28の円筒部33の溝部33bとエジェクタ14側の凸部との組み合わせにて、エジェクタ14の円周方向の組み付け位置を規定する回転防止手段を構成しているが、介在プレート28の円筒部33とエジェクタ14との嵌合部でなく、エジェクタ固定板43の円筒部43aとエジェクタ14との嵌合部に上記回転防止手段を設けるようにしてもよい。
また、介在プレート28側およびエジェクタ固定板43側の両方に上記回転防止手段を設けるようにしてもよい。
(11)蒸発器タンクの長手方向側面部のうち、冷媒入口29が配置される側面部にエジェクタ14挿入用の穴部31を配置するから、冷媒入口29からの冷媒を短い通路長さにてエジェクタノズル部14aに導入できる。このため、冷媒入口29からの冷媒を少ない圧損にてエジェクタノズル部14aに導入できる。
(12)図2において、矢印Xの範囲内のチューブ21は、エジェクタ固定板43の左側に配置されタンク18bの左側空間32に連通する冷媒出口側通路(図3の矢印iの冷媒通路)を構成し、これに対し、矢印Yの範囲内のチューブ21は、エジェクタ固定板43の右側に配置されタンク18bの右側空間27の下側空間27bに連通する冷媒入口側通路(図3の矢印gの冷媒通路)を構成している。そして、タンク18bの左側空間32に連通する矢印Xの冷媒出口側チューブ21の本数(合計通路断面積)を、タンク18bの右側空間27の下側空間27bに連通する矢印Yの冷媒入口側チューブ21の本数(合計通路断面積)よりも多くしている。
これにより、左側空間32の長手方向長さが右側空間27の長手方向長さよりも大きくなるので、エジェクタ14の長手方向の挿入スペースを拡大でき、エジェクタ14の長さを増大してエジェクタ性能を向上できる。
また、矢印Xの冷媒出口側チューブ21を流れる冷媒の乾き度は矢印Yの冷媒入口側チューブ21を流れ冷媒の乾き度よりも大きくなっており、その乾き度増加に応じて冷媒の比体積が増大するので、冷媒流れの圧損が増大する傾向となる。しかし、本実施形態では、上記のごとく、矢印Xの冷媒出口側チューブ21の本数を矢印Yの冷媒入口側チューブ21の本数よりも多くしているので、矢印Xの冷媒出口側チューブ21の合計通路断面積が矢印Yの冷媒入口側チューブ21の合計通路断面積よりも大きくなり、冷媒流れの圧損の増大を回避できる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、キャピラリチューブ17の外面が第1、第2蒸発器15、18の上側タンク15b、18bの外面に接触しているが、本第2実施形態では、図13に示すように、キャピラリチューブ17の外面が第1蒸発器15の上側タンク15bの外面のみに接触している。
図13は本実施形態における蒸発器上側タンク部の空気流れ方向の断面図であり、上記第1実施形態における図6に相当する図である。本実施形態では、キャピラリチューブ17の外面と第2蒸発器18の上側タンク18bの外面との間に隙間70が形成されている。
この隙間70の形成方法としては、例えば、キャピラリチューブ17を上側タンク15bに一体ろう付けする際にキャピラリチューブ17の外面と第2蒸発器18の上側タンク18bの外面との間に図示しない隙間保持具を挟んでおき、ろう付け後に隙間保持具を取り外すことによって隙間70を形成できる。
ところで、上記第1実施形態では、キャピラリチューブ17の外面が上側タンク15bの左側空間39の外面と接するのみならず、上側タンク15bの右側空間48の外面、上側タンク18bの左側空間32の外面、および、上側タンク18bの右側空間27の外面とも接触している。
このため、キャピラリチューブ17内を流れる中間圧冷媒が上側タンク15b、18b内のうち上側タンク15bの左側空間39を流れる乾き度の大きい冷媒(蒸発後の冷媒)のみと熱交換するのみならず、上側タンク15bの右側空間48、上側タンク18bの左側空間32、および、上側タンク18bの右側空間27を流れる乾き度の小さい冷媒(蒸発途中の冷媒)とも熱交換する。
この結果、上側タンク15bの左側空間39を流れる冷媒のみと熱交換する場合と比較して各空間48、32、27を流れる冷媒の乾き度が大きくなってしまうので、各空間48、32、27よりも冷媒流れ下流側の冷媒流路において送風空気からの吸熱量が低下してしまい、第1、第2蒸発器15、18の冷却性能が低下してしまう。
より具体的には、上側タンク15bの右側空間48および上側タンク18bの左側空間32を流れる冷媒の乾き度が大きくなると、図2の矢印b、dの冷媒流路において送風空気からの吸熱量が低下してしまう。また、上側タンク18bの右側空間27を流れる冷媒の乾き度が大きくなると、図2の矢印g、i、b、dの冷媒流路において送風空気からの吸熱量が低下してしまう。
そこで、本実施形態では、キャピラリチューブ17の外面が第1蒸発器15の上側タンク15bの外面のみに接触しているので、キャピラリチューブ17内を流れる中間圧冷媒が上側タンク18bの左側空間32および右側空間27を流れる乾き度の小さい冷媒と熱交換することを回避できる。このため、上記第1実施形態と比較して、第1、第2蒸発器15、18の冷却性能を向上できる。
なお、本実施形態では、キャピラリチューブ17の外面が上側タンク15bの左側空間39の外面および右側空間48の外面と接し、かつ、ろう付けされているが、キャピラリチューブ17の外面が上側タンク15bの左側空間39の外面のみとろう付けされるようにしてもよい。
この場合には、キャピラリチューブ17の外面と上側タンク15bの右側空間48の外面との接触面積を低減できるので、キャピラリチューブ17内を流れる中間圧冷媒が上側タンク15bの右側空間48を流れる乾き度の小さい冷媒と熱交換することを抑制できる。この結果、第2蒸発器18の冷却性能をより向上できる。
(第3実施形態)
上記第2実施形態では、キャピラリチューブ17の外面が第1蒸発器15の上側タンク15bの外面に接触しているが、本第3実施形態では、図14に示すように、キャピラリチューブ17が第1蒸発器15の上側タンク15b内に挿入されている。
図14は本実施形態における蒸発器上側タンク部の空気流れ方向の断面図であり、上記第2実施形態における図13に相当する図である。図15は図14におけるC−C断面図である。
本実施形態におけるキャピラリチューブ17は、第1蒸発器15の上側タンク15bをタンク長手方向(図15の左右方向)に貫通するように、上側タンク15b内に挿入されている。
これにより、キャピラリチューブ17の外面が第1蒸発器15の上側タンク15bの左側空間39を流れる冷媒と直接接触するので、キャピラリチューブ17の外面がタンク15b、15cの外面と接触している場合と比較して、キャピラリチューブ17内を流れる冷媒と、第1蒸発器15の上側タンク15bの左側空間39を流れる冷媒との間の熱抵抗を低減できる。
このため、キャピラリチューブ17内を流れる冷媒と、第1蒸発器15の上側タンク15bの左側空間39を流れる冷媒との熱交換を促進できるので、第2蒸発器18の冷却性能をより向上できる。
また、キャピラリチューブ17の外面が上側タンク15bの左側空間39を流れる冷媒と直接接触することにより、キャピラリチューブ17の外面側に上側タンク15b内を流れる冷媒の圧力が作用する。したがって、キャピラリチューブ17内外の圧力差がキャピラリチューブ17内を流れる冷媒と上側タンク15b内を流れる冷媒との圧力差になる。
このため、キャピラリチューブ17が上側タンク15b外部に配置されている場合、すなわち、キャピラリチューブ17内外の圧力差がキャピラリチューブ17内を流れる冷媒とキャピラリチューブ17外部の空気(大気圧)との圧力差である場合と比較して、キャピラリチューブ17内外の圧力差を低減できる。
このため、キャピラリチューブ17が上側タンク15b外部に配置されている場合と比較して、キャピラリチューブ17の耐圧強度を低減できるので、本実施形態では、上記第2実施形態と比較して、キャピラリチューブ17の板厚を薄肉化している。
このように、キャピラリチューブ17の板厚を薄肉化することにより、キャピラリチューブ17内を流れる冷媒と上側タンク15bの左側空間39を流れる冷媒を流れる冷媒との間の熱抵抗をより低減できる。
この結果、キャピラリチューブ17内を流れる冷媒と上側タンク15bの左側空間39を流れる冷媒との熱交換をより促進できるので、第2蒸発器18の冷却性能を一層向上できる。
(第4実施形態)
上記第3実施形態では、キャピラリチューブ17が第1蒸発器15の上側タンク15bをタンク長手方向に貫通するよう上側タンク15b内に挿入されているが、本第4実施形態では、図16に示すように、キャピラリチューブ17が第1蒸発器15の上側タンク15bのうち左側空間39のみに挿入されている。
図16は本実施形態における蒸発器上側タンク部の断面図であり、上記第3実施形態における図15に相当する図である。
本実施形態では、キャピラリチューブ17のうち出口側端部(図16の左端部)から長手方向中間部までの部位が上側タンク15bの左側空間39に挿入され、キャピラリチューブ17の長手方向中間部が上側タンク15bの外部に突出している。
より具体的には、上側タンク15bの左側空間39部分の短手方向側面部(図16の上端部)に貫通穴71を形成し、キャピラリチューブ17の長手方向中間部をこの貫通穴71から空気流れ上流側(図16の上方側)に向けて上側タンク15bの外部に突出させている。
そして、キャピラリチューブ17の中間部から出口側端部(図16の右端部)までの部位が上側タンク15bの外部にて上側タンク15bの外面に沿って延びている。本例では、キャピラリチューブ17の中間部から出口側端部までの部位は上側タンク15bの外面に接触している。
このように、本実施形態では、キャピラリチューブ17が第1蒸発器15の上側タンク15bのうち左側空間39のみに挿入されているので、キャピラリチューブ17内を流れる中間圧冷媒が上側タンク15bの右側空間48を流れる乾き度の小さい冷媒と熱交換することを抑制できる。この結果、上記第3実施形態と比較して、第2蒸発器18の冷却性能をより向上できる。
なお、本実施形態では、上側タンク15bの左側空間39部分の短手方向側面部(図16の上端部)に貫通穴71を形成し、キャピラリチューブ17の長手方向中間部をこの貫通穴71から空気流れ上流側(図16の上方側)に向けて上側タンク15bの外部に突出させているが、上側タンク15bの貫通穴71を上側タンク15bの上面部(図16の紙面手前側の面)に形成し、キャピラリチューブ17の長手方向中間部を貫通穴71から上方側(図16の紙面手前側)に向けて上側タンク15bの外部に突出させてもよい。
また、本実施形態では、キャピラリチューブ17の中間部から出口側端部までの部位が上側タンク15bの外面に接触しているが、当該部位を上側タンク15bの外面と所定寸法の隙間を介して離間させてもよい。
この場合には、当該部位を上側タンク15bの外面と接触させる場合と比較して、キャピラリチューブ17内を流れる中間圧冷媒が上側タンク15bの右側空間48を流れる乾き度の小さい冷媒と熱交換することをより抑制できるので、第2蒸発器18の冷却性能をより向上できる。
(第5実施形態)
上記各実施形態では、エジェクタ14のディフューザ部14dの出口側と圧縮機11の吸入側ろの間に第1蒸発器15を接続し、送風空気を第1、第2蒸発器15、18で冷却するようになっているが、本第5実施形態では、図17に示すように、第1第1蒸発器15を廃止し、送風空気を第2蒸発器18のみで冷却するようになっている。
図17は本実施形態による車両用エジェクタ式冷凍サイクルの冷媒回路図である。本実施形態では、第2蒸発器18とキャピラリチューブ17のみを一体化し、エジェクタ14を別体として構成している。すなわち、本実施形態では、上記各実施形態のような一体化ユニット20を構成していない。
キャピラリチューブ17の外面は第2蒸発器18の上側タンク18bのうち左側空間(冷媒流れの出口部に位置する空間部)32の外面に接触している。これにより、キャピラリチューブ17内を流れる中間圧冷媒と、第2蒸発器18の上側タンク18bの左側空間32を流れる冷媒との熱交換が行われる。
このため、冷媒分岐通路16を通過する冷媒が上側タンク18bの左側空間32を流れる冷媒によって冷却されるので、第2蒸発器18における冷媒入口・出口間の冷媒のエンタルピ差(冷却能力)を増大させることができ、第2蒸発器18の冷却性能を向上できる。
すなわち、本実施形態におけるキャピラリチューブ17と上側タンク18bは、冷媒分岐通路16を通過する高温の高圧冷媒と第2蒸発器18下流側の低温の低圧冷媒との熱交換を行う内部熱交換器の役割を果たしている。
このため、別個に内部熱交換器を設ける場合と比較して、車両への搭載性の悪化およびコストの悪化を招くことなく、第2蒸発器18の冷却性能を向上できる。
(他の実施形態)
なお、上記第1〜第4実施形態では、エジェクタ14、第1、第2蒸発器15、18およびキャピラリチューブ17を1つの一体化ユニット20として組み付けているが、必ずしもこれらを一体化ユニット20として組み付ける必要はなく、第1蒸発器15とキャピラリチューブ17のみを一体化し、エジェクタ14、第2蒸発器18を別体として構成してもよい。
また、上記第1〜第4実施形態では、キャピラリチューブ17を第1蒸発器15の上側タンク15b等に一体ろう付けして固定しているが、必ずしも一体ろう付けする必要はなく、ねじ等の機械的結合手段によってキャピラリチューブ17を第1蒸発器15の上側タンク15b等に固定してもよい。
なお、一体ろう付けして固定する場合には、シールを要する部位がろう付けによりシール接合されるのであるが、機械的結合手段によって固定する場合には、シールを要する部位にシール材を介在させることによってシール性を確保する必要がある。
また、上記各実施形態では、車両用の冷凍サイクルについて説明したが、車両用に限らず、定置用等の冷凍サイクルに対しても本発明を同様に適用できることはもちろんである。