以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明に係る画像形成装置を前方側から見た斜視説明図である。
この画像形成装置は、装置本体1と、装置本体1に装着された用紙を装填するための給紙トレイ2と、装置本体1に着脱自在に装着されて画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ3とを備えている。さらに、装置本体1の前面の一端部側(給排紙トレイ部の側方)には、第1液体収容手段であるインクカートリッジを装填するためのカートリッジ装填部4を有し、このカートリッジ装填部4の上面は操作ボタンや表示器などを設ける操作/表示部5としている。
このカートリッジ装填部4には、色の異なる色材である記録液(インク)、例えば黒(K)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクをそれぞれ収容した複数の記録液カートリッジであるインクカートリッジ(メインタンク)10k、10c、10m、10y(色を区別しないときは「インクカートリッジ10」という。)を、装置本体1の前面側から後方側に向って挿入して装填可能とし、このカートリッジ装填部4の前面側には、インクカートリッジ10を着脱するときに開く前カバー(カートリッジカバー)6を開閉可能に設けている。
次に、このインクジェット記録装置の機構部について図2及び図3を参照して説明する。なお、図2は同機構部の概要を示す側面模式的説明図、図3は同じく要部平面説明図である。
フレーム21を構成する左右の側板21A、21Bに横架した主ガイド部材である主ガイドロッド31と従ガイドロッド32とでキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して図3で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
このキャリッジ33には、前述したようにイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個の液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッド34を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向(用紙送り方向)に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
記録ヘッド34を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。
また、キャリッジ33には、各記録ヘッド34に各色のインクを供給するための第2液体収容手段である各色のヘッドタンク35を搭載している。この各色のヘッドタンク35には各色の可撓性を有する供給チューブ36を介して、前述したように、カートリッジ装填部4に装着された各色のインクカートリッジ10から各色のインクが補充供給される。このカートリッジ装填部4にはインクカートリッジ10内のインクを送液するための送液手段である供給ポンプユニット24が設けられている。
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。さらに、搬送ベルト51の裏側には、記録ヘッド34による印写領域に対応してガイド部材57を配置している。
この搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって図3のベルト搬送方向に周回移動する。
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロ63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
さらに、図3に示すように、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む維持回復機構81を配置している。
この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a〜82d(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84などを備えている。ここでは、キャップ82aを吸引及び保湿用キャップとし、他のキャップ82b〜82dは保湿用キャップとしている。
そして、この維持回復機構81による維持回復動作で生じる記録液の廃液、キャップ82に排出されたインク、あるいはワイパーブレード83に付着してワイパークリーナ85で除去されたインク、空吐出受け84に空吐出されたインクは図示しない廃液タンクに排出されて収容される。
また、図3に示すように、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
このように構成した画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、図示しない制御部のACバイアス供給部から帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ33は維持回復機構81側に移動されて、キャップ82で記録ヘッド34がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ82で記録ヘッド34をキャッピングした状態で図示しない吸引ポンプによってノズルから記録液を吸引し(「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という。)し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。これによって、記録ヘッド34の安定した吐出性能を維持する。
次に、この画像形成装置における維持回復機構81の構成の概要について図4ないし図6を参照して説明する。なお、図4は同維持回復機構の模式的概略構成図、図5は図4の右側面説明図、図6は同じく要部平面説明図である。
この維持回復機構81は、維持装置フレーム111に、キャップ保持機構である2つのキャップホルダ112A、112Bと、清浄化手段としての弾性体を含むワイピング部材であるワイパーブレード93と、キャリッジロック115とがそれぞれ昇降可能(上下動可能)に保持されている。また、ワイパーブレード83とキャップホルダ112Aとの間には空吐出受け84が配置され、ワイパーブレード83のクリーニングを行なうために、フレーム111の外側からワイパーブレード83を空吐出受け84の清掃部材であるワイパークリーナ85側に押し付けるための清掃部材であるクリーナコロ86を含むクリーナ手段であるワイパークリーナ118が揺動可能に保持されている。
キャップホルダ112A、112B(区別しないときは「キャップホルダ112」という。)には、それぞれ、2つの記録ヘッド34のノズル面をそれぞれキャッピングする2つのキャップ82aと82b、キャップ82cと82dを保持している。
ここで、印字領域に最も近い側のキャップホルダ112Aに保持したキャップ82aには可撓性チューブ119を介して吸引手段であるチュービングポンプ(吸引ポンプ)120を接続し、その他のキャップ82b、82c、82dはチュービングポンプ120を接続していない。すなわち、キャップ82aのみを吸引(回復)及び保湿用キャップ(以下単に「吸引用キャップ」という。)とし、その他のキャップ82b、82c、82dはいずれも単なる保湿用キャップとしている。したがって、記録ヘッド34の回復動作を行うときには、回復動作を行う記録ヘッド34を吸引用キャップ82aによってキャッピング可能な位置に選択的に移動させる。
また、これらのキャップホルダ112A、112Bの下方にはフレーム111に回転自在に支持したカム軸121を配置し、このカム軸121には、キャップホルダ112A、112Bを昇降させるためのキャップカム122A、122Bと、ワイパーブレード93を昇降させるためのワイパーカム124、キャリッジロック115をキャリッジロックアーム117を介して昇降させるためのキャリッジロックカム125と、ワイパークリーナ118を揺動させるためのクリーナカム128をそれぞれ設けている。
ここで、キャップ82はキャップカム122A、122Bにより昇降させられる。ワイパーブレード83はワイパーカム124により昇降させられ、下降時にワイパークリーナ118が進出して、このワイパークリーナ118のクリーナコロ96と空吐出受け84のワイパークリーナ85とに挟まれながら下降することで、ワイパーブレード83に付着したインクが空吐出受け84内に掻き落とされる。
キャリッジロック115は図示しない圧縮バネによって上方(ロック方向)に付勢されて、キャリッジロックカム125で駆動されるキャリッジロックアーム117を介して昇降させられる。
そして、チュービングポンプ120及びカム軸121を回転駆動するために、モータ131の回転をモータ軸131aに設けたモータギヤ132に、チュービングポンプ120のポンプ軸120aに設けたポンプギヤ133を噛み合わせ、更にこのポンプギヤ133と一体の中間ギヤ134に中間ギヤ135を介して一方向クラッチ137付きの中間ギヤ136を噛み合わせ、この中間ギヤ136と同軸の中間ギヤ138に中間ギヤ139を介してカム軸121に固定したカムギヤ140を噛み合わせている。なお、クラッチ137付きの中間ギヤ136、138の回転軸である中間軸141はフレーム111にて回転可能に保持している。
また、カム軸121にはホームポジションを検出するためのホームポジションセンサ用カム142を設け、この維持回復機構81に設けた図示しないホームポジションセンサにてキャップ82が最下端に来たときにホームポジションレバー(不図示)を作動させ、センサが開状態になってモータ131(ポンプ120以外)のホームポジションを検知する。なお、電源オン時には、キャップ82(キャップホルダ112)の位置に関係なく上下(昇降)し、移動開始までは位置検出を行わず、キャップ92のホーム位置(上昇途中)を検知した後に、定められた量を移動して最下端へ移動する。その後、キャリッジが左右に移動して位置検知後キャップ位置に戻り、記録ヘッド34がキャッピングされる。
次に、記録ヘッドを構成する液体吐出ヘッドの一例について図7及び図8を参照して説明する。なお、図7は同ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図、図8は同ヘッドの液室短手方向(ノズルの並び方向)の断面説明図である。
この液体吐出ヘッドは、例えば単結晶シリコン基板を異方性エッチングして形成した流路板201と、この流路板201の下面に接合した例えばニッケル電鋳で形成した振動板202と、流路板201の上面に接合したノズル板203とを接合して積層し、これらによって液滴(インク滴)を吐出するノズル204が連通する流路であるノズル連通路205及び液室206、液室206にインクを供給するための共通液室208に連通するインク供給口209などを形成している。
また、振動板202を変形させて液室206内のインクを加圧するための圧力発生手段(アクチュエータ手段)である電気機械変換素子としての2列(図7では1列のみ図示)の積層型圧電素子221と、この圧電素子221を接合固定するベース基板222とを備えている。なお、圧電素子221の間には支柱部223を設けている。この支柱部223は圧電素子部材をハーフカットダイシングなどで分割加工することで圧電素子221と同時に形成した部分であるが、駆動電圧を印加しないので単なる支柱となる。
また、圧電素子221には図示しない駆動回路(駆動IC)に接続するためのFPCケーブル226を接続している。
そして、振動板202の周縁部をフレーム部材230に接合し、このフレーム部材130には、圧電素子121及びベース基板122などで構成されるアクチュエータユニットを収納する貫通部231及び共通液室208となる凹部、この共通液室208に外部からインクを供給するためのインク供給穴232を形成している。このフレーム部材230は、例えばエポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂或いはポリフェニレンサルファイトで射出成形により形成している。
ここで、流路板201は、例えば結晶面方位(110)の単結晶シリコン基板を水酸化カリウム水溶液(KOH)などのアルカリ性エッチング液を用いて異方性エッチングすることで、ノズル連通路205、液室206となる凹部や穴部を形成したものであるが、単結晶シリコン基板に限られるものではなく、その他のステンレス基板や感光性樹脂などを用いることもできる。
振動板202は、ニッケルの金属プレートから形成したもので、例えばエレクトロフォーミング法(電鋳法)で作製しているが、この他、金属板や金属と樹脂板との接合部材などを用いることもできる。この振動板202に圧電素子221及び支柱部223を接着剤接合し、更にフレーム部材230を接着剤接合している。
ノズル板203は各液室206に対応して直径10〜30μmのノズル204を形成し、流路板201に接着剤接合している。このノズル板203は、金属部材からなるノズル形成部材の表面に所要の層を介して最表面に撥水層を形成したものである。なお、このノズル板203の表面がノズル面となる。
圧電素子221は、圧電材料251と内部電極252とを交互に積層した積層型圧電素子(ここではPZT)である。この圧電素子221の交互に異なる端面に引き出された各内部電極252には個別電極253及び共通電極254が接続されている。なお、この実施形態では、圧電素子221の圧電方向としてd33方向の変位を用いて液室206内インクを加圧する構成としているが、圧電素子221の圧電方向としてd31方向の変位を用いて加圧液室206内インクを加圧する構成とすることもできる。
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば圧電素子221に印加する電圧を基準電位Veから下げることによって圧電素子221が収縮し、振動板202が下降して液室206の容積が膨張することで、液室206内にインクが流入し、その後圧電素子221に印加する電圧を上げて圧電素子221を積層方向に伸長させ、振動板202をノズル204方向に変形させて液室206の容積/体積を収縮させることにより、液室206内の記録液(インク)が加圧され、ノズル204から記録液の滴が吐出(噴射)される。
そして、圧電素子221に印加する電圧を基準電位Veに戻すことによって振動板202が初期位置に復元し、液室206が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室208から液室206内に記録液が充填される。そこで、ノズル204のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行うこともできる。
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図9を参照して説明する。なお、同図は同制御部の全体ブロック説明図である。
この制御部は、この画像形成装置全体の制御を司る、本発明に係る空吐出動作に関する制御をする手段などを兼ねたマイクロコンピュータで構成した主制御部301及び印刷制御を司るマイクロコンピュータで構成した印刷制御部302とを備えている。
そして、主制御部301は、通信回路300から入力される印刷処理の情報に基づいて用紙42に画像を形成するために、キャリッジ33を主走査方向に移動させる主走査モータ331や搬送ローラ52を回転駆動する副走査モータ332を主走査モータ駆動回路303及び副走査モータ304を介して駆動制御するとともに、印刷制御部302に対して印刷用データを送出するなどの制御を行う。
また、主制御部301には、キャリッジ33の位置を検出するキャリッジ位置検出回路305からの検出信号が入力され、主制御部301はこの検出信号に基づいてキャリッジ33の移動位置及び移動速度を制御する。キャリッジ位置検出回路305は、例えばキャリッジ33の走査方向に配置されたエンコーダシートのスリット数を、キャリッジ33に搭載されたフォトセンサで読み取って計数することで、キャリッジ33の位置を検出する。主走査モータ駆動回路303は、主制御部301から入力されるキャリッジ移動量、速度に応じて主走査モータ331を回転駆動させて、キャリッジ33を所定の位置に所定の速度で移動させる。
また、主制御部301には搬送ベルト51の移動量を検出する搬送量検出回路306からの検出信号が入力され、主制御部301はこの検出信号に基づいて搬送ベルト51の移動量及び移動速度を制御する。搬送量検出回路306は、例えば搬送ローラ52の回転軸に取り付けられた回転エンコーダシートのスリット数を、フォトセンサで読み取って計数することで搬送量、搬送速度を検出する。副走査モータ駆動回路304は、主制御部301から入力される搬送量に応じて副走査モータ332を回転駆動させて、搬送ローラ52を回転駆動して搬送ベルト51を所定の位置に所定の速度で移動させる。
主制御部301は、給紙コロ駆動回路307に給紙コロ駆動指令を与えることによって給紙コロ43を一回転させる。主制御部301は、維持回復機構駆動用モータ駆動回路308を介して維持回復機構81のモータ131を回転駆動することにより、キャップ82の昇降、ワイパーブレード83の昇降、吸引ポンプの駆動などを行わせる。
主制御部301は、インク供給モータ駆動回路311を介して供給ユニットのポンプを駆動するためのインク供給モータを駆動制御し、カートリッジ装填部4に装填されたインクカートリッジ10からヘッドタンク35に対してインクを補充供給する。このとき、主制御部301には、ヘッドタンク35が満タン状態にあることを検知するヘッドタンク満タンセンサ312からの検知信号に基づいて補充供給を制御する。
また、主制御部301は、カートリッジ通信回路314を通じて、カートリッジ装填部4に装着された各インクカートリッジ10に設けられる記憶手段である不揮発性メモリ316に記憶されている情報を取り込んで、所要の処理を行って、本体記憶手段である不揮発性メモリ(例えばEEPROM)315に格納保持する。
また、主制御部301には、環境温度、環境湿度を検知する環境センサ313からの検知信号が入力される。
印刷制御部302は、主制御部301からの信号とキャリッジ位置検出回路305及び搬送量検出回路306などからのキャリッジ位置や搬送量に基づいて、記録ヘッド31の液滴を吐出させるための圧力発生手段を駆動するためのデータを生成して、上述した画像データをシリアルデータでヘッド駆動回路310に転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、滴制御信号(マスク信号)などをヘッド駆動回路310に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動信号のパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動波形生成部及びヘッドドライバに与える駆動波形選択手段を含み、1の駆動パルス(駆動信号)或いは複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動信号群を複数含む駆動波形を生成してヘッド駆動回路310に対して出力する。
ヘッド駆動回路310は、シリアルに入力される記録ヘッド34の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部302から与えられる駆動波形を構成する駆動信号を選択的に記録ヘッド34の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド34を駆動する。このとき、駆動波形を構成する駆動信号群の駆動パルス(駆動信号)を選択することによって、大きさの異なる液滴を吐出させて大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
次に、この画像形成装置で使用する記録液について説明する。この画像形成装置で使用する記録液としては、色材として顔料、染料のいずれでも用いることができ、また、顔料と染料を混合して用いることもできる。
記録液に用いる顔料は、特に限定されるものではないが、例えば以下に挙げる顔料が好適に用いられる。また、これら顔料は複数種類を混合して用いても良い。
有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリレン系、イソインドレノン系、アニリンブラック、アゾメチン系、ローダミンBレーキ顔料、カーボンブラック等が挙げられる。
無機顔料として酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、紺青、カドミウムレッド、クロムイエロー、金属粉が挙げられる。
これらの顔料の粒子径は0.01〜0.30μmで用いることが好ましく、0.01μm以下では粒子径が染料に近づくため、耐光性、フェザリングが悪化してしまう。また、0.30μm以上では、吐出口の目詰まりやプリンタ内のフィルターでの目詰まりが発生し、吐出安定性を得ることができない。
ブラック顔料インクに使用されるカーボンブラックとしては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックで、一次粒径が、15〜40ミリミクロン、BET法による比表面積が、50〜300平方メートル/g、DBP吸油量が、40〜150ml/100g、揮発分が0.5〜10%、pH値が2〜9を有するものが好ましい。このようなものとしては、例えば、No.2300、No.900、MCF−88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B(以上、三菱化学製)、Raven700、同5750、同5250、同5000、同3500、同1255(以上、コロンビア製)、Regal400R、同330R、同660R、MogulL、Monarch700、同800、同880、同900、同1000、同1100、同1300、Monarch1400(以上、キャボット製)、カラーブラックFW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、同S150、同S160、同S170、プリンテックス35、同U、同V、同140U、同140V、スペシャルブラック6、同5、同4A、同4(以上、デグッサ製)等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
カラー顔料の具体例を以下に挙げる。
有機顔料としてアゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリレン系、イソインドレノン系、アニリンブラック、アゾメチン系、ローダミンBレーキ顔料、カーボンブラック等が挙げられ、無機顔料として酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、紺青、カドミウムレッド、クロムイエロー、金属粉等が挙げられる。
色別により具体的には以下のものが挙げられる。
イエローインクに使用できる顔料の例としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、同2、同3、同12、同13、同14、同16、同17、同73、同74、同75、同83、同93、同95、同97、同98、同114、同128、同129、同151、同154等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
マゼンタインクに使用できる顔料の例としては、例えば、C.I.ピグメントレッド5、同7、同12、同48(Ca)、同48(Mn)、同57(Ca)、同57:1、同112、同123、同168、同184、同202等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
シアンインクに使用できる顔料の例としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、同2、同3、同15:3、同15:34、同16、同22、同60、C.I.バットブルー4、同60等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
又、本発明に係る画像形成装置で使用する各インクに含有される顔料は、本発明のために新たに製造されたものでも使用可能である。
以上に挙げた顔料は高分子分散剤や界面活性剤を用いて水性媒体に分散させることでインクジェット用記録液とすることができる。このような有機顔料粉体を分散させるための分散剤としては、通常の水溶性樹脂や水溶性界面活性剤を用いることができる。
水溶性樹脂の具体例としては、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体等から選ばれた少なくとも2つ以上の単量体からなるブロック共重合体、あるいはランダム共重合体、又はこれらの塩等が挙げられる。これらの水溶性樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶なアルカリ可溶型樹脂であり、これらの中でも重量平均分子量3000〜20000のものが、インクジェット用記録液に用いた場合に、分散液の低粘度化が可能であり、かつ分散も容易であるという利点があるので特に好ましい。
高分子分散剤と自己分散型顔料を同時に使うことは、適度なドット径を得られるため好ましい組合せである。その理由は明らかでないが、次のように考えられる。つまり、高分子分散剤を含有することで記録紙への浸透が抑制される。その一方で、高分子分散剤を含有することで自己分散型顔料の凝集が抑えられるため、自己分散型顔料が横方向にスムーズに拡がることができる。そのため、広く薄くドットが拡がり、理想的なドットが形成できると考えられる。
また、分散剤として使用できる水溶性界面活性剤の具体例としては、下記のものが挙げられる。例えば、アニオン性界面活性剤としては、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルアリル及びアルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルアリルエーテルリン酸塩等が挙げられる。又、カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、テトラアルキルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。更に両性界面活性剤としては、ジメチルアルキルラウリルベタイン、アルキルグリシン、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、イミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。又、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。
また、顔料は親水性基を有する樹脂によって被覆し、マイクロカプセル化することで、分散性を与えることもできる。
水不溶性の顔料を有機高分子類で被覆してマイクロカプセル化する方法としては、従来公知のすべての方法を用いることが可能である。従来公知の方法として、化学的製法、物理的製法、物理化学的方法、機械的製法などが挙げられる。具体的には、次のような製法がある。
・界面重合法(2種のモノマーもしくは2種の反応物を、分散相と連続相に別々に溶解しておき、両者の界面において両物質を反応させて壁膜を形成させる方法);
・in−situ重合法(液体または気体のモノマーと触媒、もしくは反応性の物質2種を連続相核粒子側のどちらか一方から供給して反応を起こさせ壁膜を形成させる方法);
・液中硬化被膜法(芯物質粒子を含む高分子溶液の滴を硬化剤などにより、液中で不溶化して壁膜を形成する方法);
・コアセルベーション(相分離)法(芯物質粒子を分散している高分子分散液を、高分子濃度の高いコアセルベート(濃厚相)と希薄相に分離させ、壁膜を形成させる方法);
・液中乾燥法(芯物質を壁膜物質の溶液に分散した液を調製し、この分散液の連続相が混和しない液中に分散液を入れて、複合エマルションとし、壁膜物質を溶解している媒質を徐々に除くことで壁膜を形成させる方法);
・融解分散冷却法(加熱すると液状に溶融し常温では固化する壁膜物質を利用し、この物質を加熱液化し、その中に芯物質粒子を分散し、それを微細な粒子にして冷却し壁膜を形成させる方法);
・気中懸濁被覆法(粉体の芯物質粒子を流動床によって気中に懸濁し、気流中に浮遊させながら、壁膜物質のコーティング液を噴霧混合させて、壁膜を形成させる方法);
・スプレードライング法(カプセル化原液を噴霧してこれを熱風と接触させ、揮発分を蒸発乾燥させ壁膜を形成させる方法);
・酸析法(アニオン性基を含有する有機高分子化合物類のアニオン性基の少なくとも一部を塩基性化合物で中和することで水に対する溶解性を付与し色材と共に水性媒体中で混練した後、酸性化合物で中性または酸性にし有機化合物類を析出させ色材に固着せしめた後に中和し分散させる方法);
・転相乳化法(水に対して分散能を有するアニオン性有機高分子類と色材とを含有する混合体を有機溶媒相とし、前記有機溶媒相に水を投入するかもしくは、水に前記有機溶媒相を投入する方法)、などが挙げられる。
マイクロカプセルの壁膜物質を構成する材料として使用される有機高分子類(樹脂)としては、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリウレア、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、多糖類、ゼラチン、アラビアゴム、デキストラン、カゼイン、タンパク質、天然ゴム、カルボキシポリメチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸の重合体または共重合体、(メタ)アクリル酸エステルの重合体または共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アルギン酸ソーダ、脂肪酸、パラフィン、ミツロウ、水ロウ、硬化牛脂、カルナバロウ、アルブミンなどが挙げられる。
これらの中ではカルボン酸基またはスルホン酸基などのアニオン性基を有する有機高分子類を使用することが可能である。また、ノニオン性有機高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートまたはそれらの(共)重合体)、2−オキサゾリンのカチオン開環重合体などが挙げられる。特に、ポリビニルアルコールの完全ケン物は、水溶性が低く、熱水には解け易いが冷水には解けにくいという性質を有しており特に好ましい。
また、マイクロカプセルの壁膜物質を構成する有機高分子類の量は、有機顔料またはカーボンブラックなどの水不溶性の色材に対して1重量%以上20重量%以下である。有機高分子類の量を上記の範囲にすることによって、カプセル中の有機高分子類の含有率が比較的低いために、有機高分子類が顔料表面を被覆することに起因する顔料の発色性の低下を抑制することが可能となる。有機高分子類の量が1重量%未満ではカプセル化の効果を発揮しづらくなり、逆に20重量%を越えると、顔料の発色性の低下が著しくなる。さらに他の特性などを考慮すると有機高分子類の量は水不溶性の色材に対し5〜10重量%の範囲が好ましい。
すなわち、色材の一部が実質的に被覆されずに露出しているために発色性の低下を抑制することが可能となり、また、逆に、色材の一部が露出せずに実質的に被覆されているために顔料が被覆されている効果を同時に発揮することが可能となるのである。また、本発明に用いる有機高分子類の数平均分子量としては、カプセル製造面などから、2000以上であることが好ましい。ここで「実質的に露出」とは、例えば、ピンホール、亀裂などの欠陥などに伴う一部の露出ではなく、意図的に露出している状態を意味するものである。
さらに、色材として自己分散性の顔料である有機顔料または自己分散性のカーボンブラックを用いれば、カプセル中の有機高分子類の含有率が比較的低くても、顔料の分散性が向上するために、十分なインクの保存安定性を確保することが可能となる。
なお、マイクロカプセル化の方法によって、それに適した有機高分子類を選択することが好ましい。例えば、界面重合法による場合は、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、エポキシ樹脂などが適している。in−situ重合法による場合は、(メタ)アクリル酸エステルの重合体または共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミドなどが適している。液中硬化法による場合は、アルギン酸ソーダ、ポリビニルアルコール、ゼラチン、アルブミン、エポキシ樹脂などが適している。コアセルベーション法による場合は、ゼラチン、セルロース類、カゼインなどが適している。また、微細で、且つ均一なマイクロカプセル化顔料を得るためには、勿論前記以外にも従来公知のカプセル化法すべてを利用することが可能である。
マイクロカプセル化の方法として転相法または酸析法を選択する場合は、マイクロカプセルの壁膜物質を構成する有機高分子類としては、アニオン性有機高分子類を使用する。転相法は、水に対して自己分散能または溶解能を有するアニオン性有機高分子類と、自己分散性有機顔料または自己分散型カーボンブラックなどの色材との複合物または複合体、あるいは自己分散性有機顔料または自己分散型カーボンブラックなどの色材、硬化剤およびアニオン性有機高分子類との混合体を有機溶媒相とし、該有機溶媒相に水を投入するか、あるいは水中に該有機溶媒相を投入して、自己分散(転相乳化)化しながらマイクロカプセル化する方法である。上記転相法において、有機溶媒相中に、記録液用のビヒクルや添加剤を混入させて製造しても何等問題はない。特に、直接記録液用の分散液を製造できることからいえば、記録液の液媒体を混入させる方がより好ましい。
一方、酸析法は、アニオン性基含有有機高分子類のアニオン性基の一部または全部を塩基性化合物で中和し、自己分散性有機顔料または自己分散型カーボンブラックなどの色材と、水性媒体中で混練する工程および酸性化合物でpHを中性または酸性にしてアニオン性基含有有機高分子類を析出させて、顔料に固着する工程とからなる製法によって得られる含水ケーキを、塩基性化合物を用いてアニオン性基の一部または全部を中和することによりマイクロカプセル化する方法である。このようにすることによって、微細で顔料を多く含むアニオン性マイクロカプセル化顔料を含有する水性分散液を製造することができる。
また、上記に挙げたようなマイクロカプセル化の際に用いられる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルキルアルコール類;ベンゾール、トルオール、キシロールなどの芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;クロロホルム、二塩化エチレンなどの塩素化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類などが挙げられる。なお、上記の方法により調製したマイクロカプセルを遠心分離または濾過などによりこれらの溶剤中から一度分離して、これを水および必要な溶剤とともに撹拌、再分散を行い、目的とする記録液を得る。以上の如き方法で得られるカプセル化顔料の平均粒径は50nm〜180nmであることが好ましい。
このように樹脂被覆することによって顔料が印刷物にしっかりと付着することにより、印刷物の擦過性を向上させることができる。
記録液を所望の物性にするため、あるいは乾燥による記録ヘッドのノズルの詰まりを防止するためなどの目的で、色材の他に、水溶性有機溶媒を使用することが好ましい。水溶性有機溶媒には湿潤剤、浸透剤が含まれる。湿潤剤は乾燥による記録ヘッドのノズルの詰まりを防止することを目的に添加される。湿潤剤の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、グリセリン、1,2,6−へキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエ−テル額;N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノ−ル等の含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン等である。これらの溶媒は、水とともに単独もしくは複数混合して用いられる。
次に、記録液に用いられる染料としては、カラーインデックスにおいて酸性染料、直接性染料、塩基性染料、反応性染料、食用染料に分類される染料で耐水、耐光性が優れたものが用いられる。これら染料は複数種類を混合して用いても良いし、あるいは必要に応じて顔料等の他の色材と混合して用いても良い。着色剤は、記録液としての性質が阻害されない範囲で添加される。
(a)酸性染料及び食用染料として
C.I.アシッド・イエロー 17,23,42,44,79,142
C.I.アシッド・レッド 1,8,13,14,18,26,27,35,37,42,52,82,87,89,92,97,106,111,114,115,134,186,249,254,289
C.I.アシッド・ブルー 9,29,45,92,249
C.I.アシッド・ブラック 1,2,7,24,26,94
C.I.フード・イエロー 3,4
C.I.フード・レッド 7,9,14
C.I.フード・ブラック 1,2
(b)直接染料として
C.I.ダイレクト・イエロー 1,12,24,26,33,44,50,86,120,132,142,144
C.I.ダイレクト・レッド 1,4,9,13,17,20,28,31,39,80,81,83,89,225,227
C.I.ダイレクト・オレンジ 26,29,62,102
C.I.ダイレクト・ブルー 1,2,6,15,22,25,71,76,79,86,87,90,98,163,165,199,202
C.I.ダイレクト・ブラック 19,22,32,38,51,56,71,74,75,77,154,168,171
(c)塩基性染料として
C.I.ベーシック・イエロー 1,2,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,40,41,45,49,51,53,63,64,65,67,70,73,77,87,91
C.I.ベーシック・レッド 2,12,13,14,15,18,22,23,24,27,29,35,36,38,39,46,49,51,52,54,59,68,69,70,73,78,82,102,104,109,112
C.I.ベーシック・ブルー 1,3,5,7,9,21,22,26,35,41,45,47,54,62,65,66,67,69,75,77,78,89,92,93,105,117,120,122,124,129,137,141,147,155
C.I.ベーシック・ブラック 2,8
(d)反応性染料として
C.I.リアクティブ・ブラック 3,4,7,11,12,17
C.I.リアクティブ・イエロー 1,5,11,13,14,20,21,22,25,40,47,51,55,65,67
C.I.リアクティブ・レッド 1,14,17,25,26,32,37,44,46,55,60,66,74,79,96,97
C.I.リアクティブ・ブルー 1,2,7,14,15,23,32,35,38,41,63,80,95等が使用できる。
記録液を所望の物性にするため、あるいは乾燥による記録ヘッドのノズルの詰まりを防止するためなどの目的で、色材の他に、水溶性有機溶媒を使用することが好ましい。水溶性有機溶媒には湿潤剤、浸透剤が含まれる。湿潤剤は乾燥による記録ヘッドのノズルの詰まりを防止することを目的に添加される。湿潤剤の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、グリセリン、1,2,6−へキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエ−テル額;N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノ−ル等の含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン等である。これらの溶媒は、水とともに単独もしくは複数混合して用いられる。
また、浸透剤は記録液と被記録材の濡れ性を向上させ、浸透速度を調整する目的で添加される。浸透剤としては、下記一般式(I)〜(IV),(A)で表されるものが好ましい。すなわち、下記式(I)のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、式(II)のアセチレングリコール系界面活性剤、下記式(III)のポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤、式(IV)のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル系界面活性剤、(A)のフッ素系界面活性剤は、液の表面張力を低下させることができるので、濡れ性を向上させ、浸透速度を高めることができる。
(Rは分岐していても良い炭素数6〜14の炭化水素鎖、kは5〜20)
(Rは分岐していても良い炭素数6〜14の炭化水素鎖、nは5〜20)
(Rは炭素数6〜14の炭化水素鎖、m、nは20以下の数)
(mは、0〜10の整数、nは、1〜40の整数を表す)。
前記式(I)〜(IV)、(A)の化合物以外では、例えばジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体等のノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール類を用いることができるが、特にフッ素系界面活性剤が好ましい。
フッ素系界面活性剤の例としては、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物等が挙げられ、前記一般式(A)で示した構造のものが特に信頼性の観点からも特に好ましい。さらにフッ素系化合物として市販されているものを挙げると、サーフロンS−111,S−112,S−113,S121,S131,S132,S−141,S−145(旭硝子社製)、フルラードFC−93,FC−95,FC−98,FC−129,FC−135,FC−170C,FC−430,FC−431、FC−4430(住友スリーエム社製),メガファックF−470、F−1405、F−474(大日本インク化学工業社製)、ゾニールFS−300、FSN、FSN−100、FSO(デュポン社製)、エフトップEF−351,352,801,802(ジェムコ社製)等が簡単に入手でき本発明に用いることができる。この中でも,特に信頼性と発色向上に関して良好なゾニールFS−300,FSN,FSN−100,FSO(デュポン社製)が好適に使用できる。
また、記録液(インク)の表面張力は、20〜60mN/mであることが好ましく、火記録材の濡れ性と液滴の粒子化の両立の観点からは30〜50mN/mであることがさらに好ましい。
また、記録液(インク)の粘度は、1.0〜20.0cPであることが好ましく、吐出安定性の観点からは3.0〜10.0cPであることがさらに好ましい。
また、記録液(インク)のpHは、3〜11であることが好ましく、接液する金属部材の腐食防止の観点からは6〜10であることがさらに好ましい。
また、記録液には防腐防黴剤を含有することができる。防腐防黴剤を含有することによって、菌の繁殖を抑えることができ、保存安定性、画質安定性を高めることができる。防腐防黴剤としてはベンゾトリアゾール、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、イソチアゾリン系化合物、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が使用できる。
また、記録液には防錆剤を含有することができる。防錆剤を含有することによって、ヘッド等の接液する金属面に被膜を形成し、腐食を防ぐことができる。防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等が使用できる。
また、記録液には酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤を含有することによって、腐食の原因となるラジカル種が生じた場合にも酸化防止剤がラジカル種を消滅させることで腐食を防止することができる。
酸化防止剤としては、フェノール系化合物類、アミン系化合物類が代表的であるがフェノール系化合物類としては、ハイドロキノン、ガレート等の化合物、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のヒンダードフェノール系化合物が例示され、アミン系化合物類としては、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N’−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニルエチレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、4,4’−テトラメチル−ジアミノジフェニルメタン等が例示される。
また、後者としては、硫黄系化合物類、リン系化合物類が代表的であるが、硫黄系化合物としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルβ,β’−チオジブチレート、2−メルカプトベンゾイミダゾール、ジラウリルサルファイド等が例示され、リン系化合物類としては、トリフェニルフォスファイト、トリオクタデシルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイト、トリノニルフェニルフォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールフォスファイト等が例示される。
また、記録液にはpH調整剤を含有することができる。pH調整剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、ジエタノールアミン、トリエタノ−ルアミン等のアミン類、硼酸、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸等を用いることができる。
以下に具体的なインクの例について説明するが、これに限るものではない。
<製造例1インク>
(ブラックインク)
KM−9036(東洋インキ)(自己分散型顔料) 50重量%
グリセリン 10重量%
1,3−ブタンジオール 15重量%
2−エチル−1、3−ヘキサンジオール 2重量%
2−ピロリドン 2重量%
界面活性剤 1重量%
シリコーン消泡剤KS508(信越化学) 0.1重量%
イオン交換水 残量
上記処方のインク組成物を作製し、室温にて充分に攪拌した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターにて濾過を行ない、製造例1インクを得た。
<製造例2インク>
(ポリマー溶液Aの調整)
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー4.0g及びメルカプトエタノール0.4gを混合し、65℃に昇温した。次にスチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシルエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスメチルバレロニトリル2.4g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。滴下後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。反応終了後、フラスコ内にメチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50%のポリマー溶液800gを得た。このポリマー溶液の一部を乾燥し、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(標準:ポリスチレン、溶媒:テトラヒドロフラン)で測定したところ、重量平均分子量は15000であった。
(顔料含有ポリマー微粒子水分散体の調整)
ポリマー溶液A28gとC.I.ピグメントイエロー97を26g、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g及びイオン交換水13.6gを充分に攪拌した後、ロールミルを用いて混練した。得られたペーストをイオン交換水200gに投入し、充分に攪拌した後、エバポレータ用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、イエローポリマー微粒子の水分散体を得た。
(イエローインク)
イエローポリマー微粒子分散体 40重量%
グリセリン 8重量%
1、3−ブタンジオール 20重量%
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール 2重量%
界面活性剤 1.5重量%
シリコーン消泡剤KS508(信越化学社製) 0.1重量%
イオン交換水 残量
上記処方のインク組成物を作製し、室温にて充分に攪拌した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターにて濾過を行ない、製造例2インクを得た。
<製造例3インク>
(顔料含有ポリマー微粒子水分散体の調整)
顔料種をC.I.ピグメントレッド122に変えた他は同様にして、マゼンタポリマー微粒子の水分散体を得た。
(マゼンタインク)
マゼンタポリマー微粒子の分散体 50重量%
グリセリン 10重量%
1、3−ブタンジオール 18重量%
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール 2重量%
界面活性剤 1.5重量%
シリコーン消泡剤KS508(信越化学社製) 0.1重量%
イオン交換水 残量
上記処方のインク組成物を作製し、室温にて充分に攪拌した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターにて濾過を行ない、製造例3インクを得た。
<製造例4インク>
(顔料含有ポリマー微粒子水分散体の調整)
顔料種をC.I.ピグメントブルー15:3に変えた他は同様にして、シアンポリマー微粒子の水分散体を得た。
(シアンインク)
シアンポリマー微粒子分散体 40重量%
グリセリン 8重量%
1、3−ブタンジオール 20重量%
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール 2重量%
界面活性剤 1.5重量%
シリコーン消泡剤KS508(信越化学社製) 0.1重量%
イオン交換水 残量
上記処方のインク組成物を作製し、室温にて充分に攪拌した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターにて濾過を行ない、製造例4インクを得た。
上記製造例の各インクは、水分蒸発に伴う粘度上昇率(mPa・s/%)がインク全重量に対する水分蒸発率30%までは1.0以下であり、かつ、水分蒸発率30〜45%の間に粘度上昇率が50を越える点を持つこと、粘度上昇率が50を越える点での、インク中の着色剤の平均粒子径が、初期平均粒子径の5倍以下であり、かつ0.8μm以下となることが確認された。
次に、上記画像形成装置における本発明の第1実施形態について図10以降をも参照して説明する。
まず、記録ヘッドの配置と使用するインクの乾燥度(乾燥し易さ)について図10を参照して説明する。ここでは、同図に示すように、4つの記録ヘッド34を、印字領域に最も近い側から第1ヘッド34a、第2ヘッド34b、第3ヘッド34c、第4ヘッド34dとして順に配置する。
一方、インクとしてインクA、B、C、Dを使用し、インクAが相対的(インクA〜Dの内での意味)に最も乾燥度が高く、インクB、C、Dは略同じ乾燥度とする(A>B,C,D)。例えば、インクとして、顔料系ブラックインクと染料系カラーインク(Y、M、C)を使用する場合には、顔料系インクは染料系インクに対して相対的に粘度が高く、乾燥度が高くなるので、インクAとしては顔料系ブラックインクとする。また、インクA、B、C、Dのすべてを顔料系インクとした場合、インクAとしては相対的に乾燥度が高くなる色のインクとする。なお、乾燥度は、ある特定の環境下(温湿度下)である特定時間放置された場合のインク中から蒸発する水分量を放置される前の水分量に対する割合で定義されるものとする。つまり、ある特定の環境下である一定期間で蒸発する水分量が多いものを乾燥度が高いインク、少なくものを乾燥度が低いインクとする。
そして、ここでは、第1ヘッド34aには乾燥度が相対的に最も高いインクAを、第2ヘッド34bにはインクBを、第3ヘッド34cにはインクCを、第4ヘッド34dにはインクDを使用するものとする。
そこで、先ず、印字動作再開時の処理について図11を参照して説明する。この画像形成装置は記録ヘッド34をキャップ部材82でキャッピングした状態で待機しており、図9に示すように、印字命令受信すると、キャッピング状態からキャップ部材82が記録ヘッド34から離れるデキャップ動作を行った後、各記録ヘッド34について空吐出受け84に画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出動作を行い、その後印字動作を開始する。
次に、空吐出動作処理について図12に示すフロー図及び図13に示す説明図を参照して説明する。
この空吐出動作処理については、図13(a)に示すように基準位置(すべてのヘッドがキャッピングされている位置)からキャリッジ33を矢示方向に移動して、図13(b)に示すように、最も乾燥度の高いインクAを使用する第1ヘッド34aを空吐出位置(空吐出受け84に対向する位置)に移動させて当該第1ヘッド34aから空吐出を行う。なお、空吐出位置でキャリッジ33を一旦停止させた後空吐出させることにより、空吐出時のインクミストの飛散の範囲を狭めることができる(以下の空吐出も同様に、停止、空吐出としている。)。
次いで、キャリッジ33を矢示A方向(印字領域方向)に移動させて、図13(c)に示すように第2ヘッド34bを空吐出位置に移動させて当該第2ヘッド34bから空吐出を行い、同様に、キャリッジ33を矢示A方向に移動させて、図13(d)に示すように第3ヘッド34cを空吐出位置に移動させて当該第3ヘッド34cから空吐出を行い、更にキャリッジ33を矢示A方向に移動させて、図13(e)に示すように第4ヘッド34dを空吐出位置に移動させて当該第4ヘッド34dから空吐出を行う。その後、印字動作を開始するためにキャリッジ33を矢示A方向(印字領域方向)に移動させる。
このように、最も乾燥度の高いインクAを使用する第1ヘッド34aから空吐出が順次行われるので、最も乾燥度の高いインクAを使用する第1ヘッド34aは空吐出から印字開始動作までの時間が最も長くなる。これにより、第1ヘッド34aのノズルメニスカスが正常状態に復帰することができる。
つまり、図14に示すように、ノズル204が増粘・乾燥した状態で空吐出を行う場合、若干回復性が劣るとインク吐出異常、例えば吐出方向が曲がったりして、その結果ノズル204の周辺にインク400によるインク溜り401が形成される。このインク溜り401がノズル204まで達したときにノズルメニスカスを破壊して吐出不良となって印字品質を低下させてしまうことになる。
しかしながら、図15に示すように、ノズル204にはヘッドの液室方向への圧力(負圧)402が常に印加されている。したがって、図15(a)に示すようにインク溜り401が発生している状態を維持しておくと、同図(b)に示すように、負圧402によってインク溜り401で破壊されたノズルメニスカス403が正常な状態に回復する。
従来は使用環境によって放置状態でのインク乾燥・増粘が大きくなる場合があり、また個々のノズル性能のばらつきなどで空吐出動作による十分な回復が見込めない場合があるが、上記のように空吐出動作後印字開始動作までの時間を確保することによって、回復性の余裕度を向上させことができ、ノズル抜け、曲がりなどによる印字品質を低下させることはなくなる。この場合、乾燥度の高い記録液のヘッドから空吐出動作を行ってメニスカスの回復時間を確保しているので、空吐出量を増加するなど、廃液量の増加を伴う空吐出動作を行わないでも、安定した回復、滴吐出性能の維持を行うことができる。
つまり、この実施形態では、第1ヘッド84aのインクAは他のインクに比べて相対的に乾燥度が最も高いのでインク溜りを形成し易いが、印字開始までの時間をより長く確保できるので、実際に印字を開始するときにはノズルメニスカスは正常に回復し、吐出不良、印字不良を起こさなくなる。
このように、記録ヘッドがキャップ部材によるキャッピングがされている状態から印字を開始する間に、複数の記録ヘッドから順次空吐出動作を行うとき、相対的に乾燥度の最も高い記録液の記録ヘッドについて最初に空吐出動作を行う構成としたので、異常吐出する確率が高くなる、より乾燥の進んだ記録液のヘッドについて空吐出させてから印字動作開始までの時間が長くなり、廃液量の増加を伴う無駄な動作を行うことなく、空吐出(フラッシング)だけでノズル回復を行って、より安定した液滴吐出が可能になる。
次に、本発明の第2実施形態について図16以降をも参照して説明する。
まず、記録ヘッドの配置と使用するインクの乾燥度(乾燥し易さ)について図16を参照して説明する。ここでは、同図に示すように、4つの記録ヘッド34を、印字領域に最も近い側から第1ヘッド34a、第2ヘッド34b、第3ヘッド34c、第4ヘッド34dとして順に配置する。一方、インクとしてインクA、B、C、Dを使用し、インクAが最も乾燥度が高く、インクB、C、Dは略同じ乾燥度とする(A>B,C,D)。そして、第1ヘッド34aにはインクDを、第2ヘッド34bにはインクCを、第3ヘッド34cにはインクBを、第4ヘッド34dにはインクAを使用する、つまり、乾燥度が最も高いインクを使用する第4ヘッド34dは印字領域から最も離れた側に配置されるものとする。
そこで、この場合の空吐出動作処理について図17に示すフロー図及び図18に示す説明図を参照して説明する。
この空吐出動作処理については、図18(a)に示すように基準位置(すべてのヘッドがキャッピングされている位置)からキャリッジ33を矢示A方向(印字領域方向)に移動して、図18(b)に示すように、最も乾燥度の高いインクAを使用する第4ヘッド34dを空吐出位置(空吐出受け84に対向する位置)に移動させて当該第4ヘッド34dから空吐出を行う。
次いで、キャリッジ33を矢示B方向(印字領域と反対側の方向)に移動させて、図18(c)に示すように第3ヘッド34cを空吐出位置に移動させて当該第3ヘッド34cから空吐出を行い、同様に、キャリッジ33を同じ矢示B方向に移動させて、図18(d)に示すように第2ヘッド34bを空吐出位置に移動させて当該第2ヘッド34bから空吐出を行い、更にキャリッジ33を同じ矢示B方向に移動させて、図18(e)に示すように第1ヘッド34aを空吐出位置に移動させて当該第1ヘッド34aから空吐出を行う。その後、印字動作を開始するためにキャリッジ33を矢示A方向(印字領域方向)に移動させる。
このように、最も乾燥度の高いインクAを使用する第4ヘッド34dから空吐出が順次行われるので、最も乾燥度の高いインクAを使用する第4ヘッド34dは空吐出から印字開始動作までの時間が最も長くなる。これにより、第4ヘッド34dのノズルメニスカスが正常状態に復帰することができる。
さらに、乾燥度の最も高い記録液を使用するヘッドを印字領域から最も離れた側に配置しているので、印字開始までのキャリッジの加速度領域を有効に設定することができる。つまり、キャリッジの加減速及び印字領域が同じであれば、第1実施形態の場合よりもキャリッジの移動範囲(距離)を短くすることができる。
この点について図19を参照して説明すると、第2実施形態では、図19(a)に示すように、空吐出動作を最初に行う乾燥度の高い記録液を使用する第4ヘッド34dが印字領域から最も離れた位置に配置されて、第4ヘッド34dから順次第1ヘッド34aまで空吐出を行うことになるので、空吐出動作を最後に行うヘッドである第1ヘッド34aの空吐出が終了した時、キャリッジ33は印字領域に最も近い側の第1ヘッド34aが空吐出受け84に対向した位置にあり、この位置からキャリッジ33を速度プロファイル501に従って移動させることになる。この場合、キャリッジ33の移動範囲を確保するためにマシン本体幅は幅L1とすることになる。
これに対して、第1実施形態では、図19(b)に示すように、空吐出動作を最初に行う乾燥度の高い記録液を使用する第1ヘッド34aが印字領域に最も近い位置に配置されて、第1ヘッド34aから順次第4ヘッド34dまで空吐出を行うことになるので、空吐出動作を最後に行うヘッドである第4ヘッド34dの空吐出が終了した時、キャリッジ33は印字領域に最も遠い側の第4ヘッド34dが空吐出受け84に対向した位置にあり、この位置からキャリッジ33を速度プロファイル501に従って移動させることになる。この場合、キャリッジ33の移動範囲を確保するためにマシン本体幅は幅L2とすることになる。
つまり、第1実施形態の場合には第2実施形態の場合に比べて、空吐出動作が終了した段階で長さAだけキャリッジ33が印字領域側に移動していることになり、速度プロファイル501が第1実施形態及び第2実施形態で同じであるとすれば、キャリッジの移動範囲(マシン本体幅)は、第2実施形態では本体幅L1で済むのに対し、第1実施形態では本体幅L2(L2=L1+A)としなければならないことになる。
次に、本発明の第3実施形態について図20のフロー図を参照して説明する。
ここでは、空吐出動作処理との間に予め定めた待機時間の経過を待つ待機時間経過処理を行い、空吐出動作終了後待機時間が経過した時に印字動作を開始する。例えば、第1実施形態で言えば、最後の第4ヘッド34dの空吐出を行った後、待機時間が経過するまで待機してからキャリッジ33を印字領域へ移動して印字動作を開始する。これにより、負圧によるノズルメニスカス回復の余裕度が更に向上する。
次に、本発明の第4実施形態について図21及び図22を参照して参照して説明する。
先ず、図21を参照してキャッピング時間とインク粘度との関係を説明する。ここで、「キャッピング時間」とは、印字が終了してキャリッジ33がキャップ部材82によるキャップ位置まで戻り、キャップ部材82によってノズル面がキャッピングされた時からの経過時間であり、印字終了時間からの経過時間とほぼ同じである。
このキャッピング時間が長くなるに従ってインク粘度は上昇していき、例えば、相対的に乾燥度が高い高乾燥インクと乾燥度が低い低乾燥インクを用いた場合、キャッピング時間T1におけるインク粘度について高乾燥インクはη2、低乾燥インクはη1となり、キャッピング時間T2におけるインク粘度について高乾燥インクはη3、低乾燥インクはη2となる(図22(a))。なお、インク粘度は、η3>η2>η1の関係である。
そこで、図22(b)に示すように、例えば、インク粘度がη1、η2のような比較的低粘度の場合には、不完全な吐出回復によるインク溜り401は起きないので、すべてのヘッド34a〜34dの空吐出が完了した後の待機時間はゼロ(0)でも吐出不良・印字不良は起きない。これに対して、キャッピング時間(経過時間)が長くなり、インク粘度がη3のような高粘度になった場合には、不完全な吐出回復によるインク溜り401が起きる場合が生じるので、すべてのヘッド34a〜34dの空吐出が完了した後の待機時間を例えば3秒とすることで、吐出不良・印字不良を起こさないようにすることが可能になる。
また、図22(c)に示すように、キャッピング時間(経過時間)毎のインク粘度によって待機時間だけでなく、空吐出滴数や空吐出波形などの空吐出条件を変更して、空吐出動作によるノズル回復性を向上させることができる。
この例では、高乾燥インクについては、キャッピング時間T1のときには空吐出条件Aで空吐出動作を行い、キャッピング時間T2のときには空吐出条件Cで空吐出動作を行う。これに対して、低乾燥インクについては、キャッピング時間T1のときには空吐出条件Bで空吐出動作を行い、キャッピング時間T2のときには空吐出条件Aで空吐出動作を行う。空吐出滴数でみれば、空吐出条件A>B>Cの関係に設定し、空吐出波形(駆動電圧の高低:この点については後述する。)でみれば、空吐出条件A>B>Cの関係に設定して、空吐出動作を行う。なお、この場合、廃液量が吸引によるノズル回復で消費する廃液量を超えない範囲で空吐出条件を設定することが重要である。
このように、異なる空吐出条件で空吐出動作を行うことによって、使用する記録液の乾燥度に応じて廃液量の増加を伴わない適切な空吐出を行うことができる。
次に、本発明の第5実施形態について図23及び図24を参照して参照して説明する。
図23(a)に示すノズル断面において、キャッピングした状態で放置されるとき、ノズル表面(ノズル板203の液滴吐出面)から液室206方向へのインク粘度の変化は、同図(b)に示すように、ノズル表面側が最も高く、液室に向かうに従って急激に低下する。これは、ノズル表面ではインクが空気層に接していることから乾燥が進み易く増粘するが、液室方向に向かうにつれてインク(液体)の量が勝っていくので乾燥しにくく増粘しにくくなることによるものである。
したがって、放置後に空吐出動作でノズル乾燥・増粘状態を回復させる場合、単一の空吐出駆動波形では廃液量が多くなってしまうことがある。
そこで、ノズル204内におけるインク粘度の変化に合わせて、ノズル表面近くの増粘した領域のインクは、例えば図24(a)に示すように、相対的に波高値(駆動電圧値)VAが大きく、大きなト出力が得られる駆動波形で吐出させた後、比較的増粘していないノズル204内の液室に近いインクは、同図(b)に示すように、相対的に小さい波高値VB(VB<VA)の駆動波形で吐出させ回復させる。これによって、廃液量を低減させることができる。
このように、1つの記録ヘッドについて空吐出動作を行うときに2つ以上の異なる空吐出駆動波形で駆動することによって、廃液量を増加することなく、しかも乾燥が進んでいるノズル表面のインクを確実に吐出させて回復することができるようになる。
なお、前述した液体吐出ヘッドにおいては、基準電位Veから立ち下がる波形要素が液室を拡大する引き込み波形要素、立ち下がった状態から立ち下がる波形要素が液室を収縮させる収縮波形要素となり、他のパラメータが同じであれば、波高値が大きくなるほど、大きな滴を強い吐出力で吐出させることができる。したがって、上述したように波高値VAの駆動波形の方が波高値VBの駆動波形よりも大きな滴を強い吐出力で吐出させることができ、ノズル表面側の乾燥が進んで増粘しているインクでも吐出させることができる。
特に、上述した各実施形態を、上述したように、少なくとも水に分散する着色剤、湿潤剤、浸透性向上剤を含み、水分蒸発に伴う粘度上昇率(mPa・s/%)が記録液全重量に対する水分蒸発率30%までは1.0以下であり、かつ、水分蒸発率30〜45%の間に粘度上昇率が50を越える点を持つように構成されたインクは、ある程度水分が蒸発するとインク粘度上昇が急峻になり、それ以下ではインク粘度変化は緩やかであるため、放置後では図23(b)に示すようなインク粘度変化をしている。
このインク粘度変化は、粘度上昇率が50を越える点での、記録液中の着色剤の平均粒子径が、初期平均粒子径の5倍以下であり、かつ0.8μm以下となるように処方された記録液である場合により顕著になる。
そのため、ノズル表面はかなり増粘しておりインク曲がりが起こる確率が高くなる。そこで、このような記録液を使用する画像形成装置に本発明を適用することで、最適で無駄な廃液をださないノズル回復を行うことができるようになる。
なお、本発明に係る画像形成装置は、プリンタ単機能構成のものに限らず、プリンタ/ファクシミリ/複写などの複合機能を有する画像形成装置であっても良い。また、液体はインクに限るものではない。