JP5880844B2 - インクジェット記録用インク、インクカートリッジ、インクジェット記録方法、インクジェット記録装置及びインク記録物 - Google Patents

インクジェット記録用インク、インクカートリッジ、インクジェット記録方法、インクジェット記録装置及びインク記録物 Download PDF

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Description

本発明は、インクジェット記録用インク、インクカートリッジ、インクジェット記録方法、インクジェット記録装置及びインク記録物に関する。
近年、画像形成方法として、他の記録方式に比べてプロセスが簡単でかつフルカラー化が容易であり、簡略な構成の装置であっても高解像度の画像が得られる利点があることから、インクジェット記録方式が普及してきた。インクジェット記録方式は、インクジェット記録装置により少量のインクを飛翔させ、紙などの記録媒体に付着させて画像を形成する方式であり、パーソナルおよび産業用のプリンターや印刷まで用途が拡大してきている。
インクジェット記録装置には、着色剤として水溶性染料を使用した水系インクが主に用いられているが、前記染料インクは耐候性及び耐水性に劣るという欠点がある。このため、近年、水溶性染料に代えて顔料を使用する顔料インクの研究が進められている。しかし、前記顔料インクは、染料インクに比べて発色性やインクの吐出安定性、保存安定性がいまだ劣っている。また、OA用プリンタの高画質化技術の向上に伴って、顔料インクにおいても記録媒体として普通紙でも染料インクと同等の画像濃度が要求されている。しかし、顔料インクは、記録媒体として普通紙を使用する場合、紙中へ浸透することにより紙表面の顔料濃度が低くなり、画像濃度が低くなるという問題が生じている。高速印字化のために記録媒体に付着したインクの乾燥速度を早めるため、インクに浸透剤を添加して水を記録媒体中に浸透させることにより乾燥を早める手段がとられるが、この際水だけでなく顔料の記録媒体への浸透性も高くなってしまい、更に画像濃度が低下してしまうという現象が起こる。
画像濃度の向上については、様々な手法が提案されている。例えば、インクの水分蒸発に伴う粘度上昇率(mPa・s/%)が、全インク質量に対する水分蒸発量が30質量%までは5.0以下であり、かつ、水分蒸発量が30〜45質量%の間に粘度上昇率が50を超える点を持つように構成されたインクが提案されている(特許文献1参照)。この提案のインクによると、普通紙上にインクが着弾して水分が蒸発すると急激に増粘するため、高速で印字しても顔料の紙中への浸透が抑制され、高い画像濃度を示すとされている。
一方、インクジェットプリンタにおいて、溶媒が酸性側へシフトする(プロトン濃度が酸性側になる)と膨潤する高分子ゲル微小球(pH応答性樹脂)を含有するインクが提案されている(特許文献2参照)。つまり、インクが普通紙の紙面へ着弾した際に紙からプロトンの供給を受けてインクのpHがアルカリ側から酸性側へシフトすることを利用して、pH応答性樹脂を膨潤させ、インクの粘性を増加させることによって、顔料が紙中へ浸透するのを抑制して画像濃度を向上させることができるとされている。
前述のように画像濃度の向上を図るために特許文献1の手法を用いた場合、インクの水分が蒸発すると急激に増粘するため、インクジェット記録装置内、特にノズル中で水分の蒸発が起こると増粘によってインクの吐出安定性が低下したり、ノズル周辺にインクが固着したりする問題のあることが分かった。
一方、特許文献2の手法を用いた場合、インクジェット記録装置のノズル中で水分が蒸発しても増粘がなくインクの吐出安定性の低下は起こらず、pHがアルカリ側から酸性側へシフトすることで画像濃度を向上させることができるが、インクが紙面に着弾した際のインクのpH変動に伴う粘度変化が不十分であり、十分な画像濃度が得られず更に改善を要することが分かった。
本発明は、従来における前記諸問題を解決し以下の目的を達成することを課題とする。
すなわち、本発明は、インクが紙面(記録媒体)に着弾した際のインクのpH変動に伴う粘度変化が大きくて高い画像濃度が得られ、インクの保存安定性や、記録ヘッドからのインクの吐出安定性及び吐出回復性が良好な、インクジェット記録用インク、並びに該インクを用いたインクカートリッジ、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法及びインク記録物を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の構造単位を有する疎水性モノマーと、特定の構造単位を有するpH感受性モノマーと、特定の構造単位を有する親水性マクロモノマーとから合成される共重合体から成る高分子微粒子(以下、「pH応答性樹脂微粒子」と呼称することがある。)をインクジェット記録用インクの組成分として用いることにより、インクジェット記録用インクが普通紙などの記録媒体上に着弾した際にインクのpHの変化(酸性側へ変化)に応答して高分子微粒子の粒子径が大きくなり、インクの紙中への浸透が抑制されて高い画像濃度を得ることができることを見出し本発明に至った。
すなわち、上記課題は、水と、湿潤剤と、着色剤と、高分子微粒子とを少なくとも含有してなるインクジェット記録用インクであって、
前記高分子微粒子が、下記式(1)で表されるモノマーと、下記一般式(2)で表されるモノマーと、下記一般式(3)で表されるマクロモノマーとの共重合体から成ることを特徴とするインクジェット記録用インクにより解決される。
[一般式(2)中、Rは炭素数1乃至4のアルキル基を示す。]
[一般式(3)中、Rは炭素数1乃至4のアルキル基を示す。kは繰り返し単位の数を表し1〜100の整数を示す。]
また、上記課題は、請求項1乃至3の何れかに記載のインクジェット記録用インクを容器中に収容して成ることを特徴とするインクカートリッジにより解決される。
また、上記課題は、請求項1乃至3の何れかに記載のインクジェット記録用インクにインク飛翔手段を介して刺激を印加し、記録ヘッドから該インクを飛翔させて記録媒体に画像を記録するインク飛翔工程を少なくとも含むことを特徴とするインクジェット記録方法により解決される。
また、上記課題は、請求項1乃至3の何れかに記載のインクジェット記録用インクを記録ヘッドから飛翔させて記録媒体に画像を記録するインク飛翔手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置により解決される。
また、上記課題は、請求項1乃至3の何れかに記載のインクジェット記録用インクにより記録された画像を記録媒体上に有してなることを特徴とするインク記録物により解決される。
なお本発明において、前記(1)で表されるモノマーを「疎水性モノマー」、前記一般式(2)で表されるモノマーを「pH感受性モノマー」、前記一般式(3)で表されるマクロモノマーを「親水性マクロモノマー」と称することがある。また、高分子微粒子を「pH応答性高分子微粒子」と称することがある。
本発明のインクジェット記録用インクは、前記式(1)で表されるモノマーと、前記一般式(2)で表されるモノマーと、前記一般式(3)で表されるマクロモノマーとの共重合体から成る高分子微粒子を含有するため、インクジェット記録用インクが普通紙などの記録媒体上に着弾した際にpHの変化(pH値の低下:酸性側へ変化)に応答して高分子微粒子の粒子径が大きくなり、インクの紙中への浸透が抑制されて高い画像濃度を得ることができる。また、インクの保存安定性が良好であり、記録ヘッドからのインクの吐出安定性や吐出回復性も良好である。
本発明のインクジェット記録用インクを記録ヘッドから飛翔させて記録媒体に画像を記録するインク飛翔手段を有するインクジェット記録装置とし、インク飛翔手段を介して刺激を印加して記録ヘッドからインクを飛翔させて記録媒体に画像を記録すれば、インク吐出不良がなく、安定したインク吐出特性によって高い濃度の画像形成が実現できる。また、本発明のインクジェット記録用インクを容器中に収容してインクカートリッジとすれば、インクジェット記録装置に配備されるインクカートリッジ装填部への着脱が容易で、かつ長期間安定したインク供給が可能となる。本発明のインク記録物は、高画質で滲みがなく、経時安定性に優れ、各種の印字乃至画像の記録された資料等として各種用途に好適に使用することができる。
本発明のインクジェット記録用インクに用いる高分子微粒子の生成工程を説明するための模式図である。 本発明のインクジェット記録装置に配備される記録ヘッドの一例(2ヘッドタイプ)を示すノズル面から見た概略平面図である。 本発明のインクジェット記録装置に配備される記録ヘッドの別例(4ヘッドタイプ)を示すノズル面から見た概略平面図である。 維持回復装置を有する本発明のインクジェット記録装置の一例を示す前方側から見た斜視説明図である。 図4に示すインクジェット記録装置の機構部の全体構成を説明する概略構成図である。 図4に示すインクジェット記録装置の機構部の要部平面説明図である。 本発明のインクジェット記録装置における維持回復装置を含むサブシステム91の要部平面説明図である。 図7に示すサブシステムの模式的概略構成図である。 図7に示すサブシステムの右側面説明図である。 キャップ92の保持昇降機構部の側面説明図である。 合成例1、合成例2、比較合成例1及び比較合成例2で得られた高分子微粒子の平均粒径とpHとの関係を示す図である。
前述のように本発明におけるインクジェット記録用インクは、水と、湿潤剤と、着色剤と、高分子微粒子とを少なくとも含有してなるインクジェット記録用インクであって、
前記高分子微粒子が、下記式(1)で表されるモノマーと、下記一般式(2)で表されるモノマーと、下記一般式(3)で表されるマクロモノマーとの共重合体から成ることを特徴とするものである。
[一般式(2)中、Rは炭素数1乃至4のアルキル基を示す。]
[一般式(3)中、Rは炭素数1乃至4のアルキル基を示す。kは繰り返し単位の数を表し1〜100の整数を示す。]
ここで、前記一般式(2)中のRは炭素数1乃至4のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの低級のアルキル基が好ましく、特にメチル基またはエチル基がより好ましい。Rが炭素数1乃至4のアルキル基であるものを用いることにより「pH感受性モノマー」として要求されるpHが酸性側へシフトした際に疎水性高分子を膨潤させる機能を発揮することができる。
また、前記一般式(3)中のRは炭素数1乃至4のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの低級のアルキル基が好ましく、特にメチル基またはエチル基がより好ましい。Rが炭素数1乃至4のアルキル基であるものを用いることにより「親水性マクロモノマー」として要求される高分子微粒子をインク中で分散させる機能を発揮することができる。
すなわち、本発明のインクジェット記録用インクは、水と、湿潤剤と、着色剤と、高分子微粒子とを少なくとも含有し、該pH応答性高分子微粒子は、前記式(1)で表される構造単位(疎水性モノマー)と、前記一般式(2)で表される構造単位(pH感受性モノマー)と、前記一般式(3)で表される構造単位(親水性マクロモノマー)とを共重合することで、疎水性高分子とpH感受性高分子が高分子微粒子のコアとなり、その高分子微粒子コアの表面に親水性マクロモノマーの高分子鎖が局在する構造を有する。
本発明のインクジェットインクは、インクカートリッジ内や記録装置内においては、液性がpH8〜11程度のアルカリ性に保たれ、その環境ではインク中のpH応答性高分子微粒子は、分散されており、インクの粘度は低い。そのため、吐出安定性に優れている。
しかし、紙面のpHが4〜7である普通紙上にインクが着弾すると、インクは紙からのプロトンの供給を受けて液性が酸性側へシフトする。それに伴い、pH応答性高分子微粒子のコア部分のpH感受性高分子により疎水性高分子が親水性を帯びることで、コア部分が膨潤し粒子径が大きくなる。いわゆる、pHの変化(pH値の低下:酸性側へ変化)に応答して高分子微粒子の粒子径が大きくなる。つまり、普通紙上に着弾したインクは、高分子微粒子の粒子径が大きくなることにより増粘し、紙表面に留まる。その結果、紙表面の着色剤濃度が高くなり、画像濃度が高くなる。
例えば、従来技術(特許第3155318号公報)における高分子ゲル微小球の粒径は、pH9程度で150nm程度であるものが、pH5において380nm程度に変化しているのに対して、本発明における高分子微粒子の粒径は、pHの変化(pH値の低下:酸性側へ変化)に応答して、限定されるものではないが例えば、pH9程度で150〜190nm程度であるものが、pH5において590〜660nm程度に変化し大きくなる。 したがって、インクが紙面へ着弾した際のpH変化に対するインクに含まれる高分子微粒子の体積変化は本発明の方が大きいため、本発明のインクが紙面へ着弾した際の粘度変化は大きく、顔料を紙面に留めて高い画像濃度を得ることができる。
このように、本発明のインクジェットインクは、保存安定性や吐出安定性に優れ、普通紙上でも高い画像濃度が得られる。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
<インクジェット記録用インク>
本実施形態のインクジェット記録用インク(以下、「インク」と称することがある。)は、水、湿潤剤、着色剤及び高分子微粒子を少なくとも含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有して成る。前述のように、本発明のインクジェット記録用インクは、高分子微粒子が普通紙などの記録媒体上に着弾した際に、粒子径が大きくなり、インクの紙中への浸透が抑制され高い画像濃度を得ることができる。
以下、本発明のインクジェット記録用インクを構成する組成分について更に詳しく説明する。
<水>
本発明で使用される水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。水の含有量は、インク総量に対して10質量%〜80質量%が好ましい。
<高分子微粒子>
本発明で使用される高分子微粒子(pH応答性高分子微粒子)は、インクジェット記録用インクが普通紙などの記録媒体上に着弾した際にpHの変化(酸性側へ変化)に応答して高分子微粒子の粒子径が大きくなる特性を有するものである。この機能により、インクが紙中に浸透するのが抑制されて高い画像濃度を得ることができる。
本発明のインク組成分として用いられる前記式(1)で表される疎水性モノマーと、前記一般式(2)で表されるpH感受性モノマーと、前記一般式(3)で表される親水性マクロモノマーとの共重合体から成る高分子微粒子の生成工程を図1の模式図に示す。
図1の模式図を参照して高分子微粒子の生成工程を説明する。
図1は、疎水性モノマーであるスチレン[式(1)]、pH感受性モノマーであるジメチルアミノエチルメタクリレート[式(2)]とビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドから合成した末端にラジカル共重合性基を有するカチオン性の親水性マクロモノマー[式(3)]を原料に使用した場合を例としたものである。
末端にラジカル重合性基を有するカチオン性の親水性マクロモノマー(図中、1)は、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド単位(図中、1a)とビニルベンジル基(図中、1b)とから成る。
先ず、上記カチオン性の親水性マクロモノマー(1)と、スチレンモノマー(図中、2)とジメチルアミノエチルメタクリレート(図中、3)とを混合し(図中、工程A)、スチレンモノマー及びジメチルアミノエチルメタクリレートを重合させると、スチレンモノマーとジメチルアミノエチルメタクリレートの共重合(図中、工程B)が部分的に起こるが、ビニルベンジル基(1b)との共重合(図中、工程C)が同時に起こる。共重合の結果、あたかもスチレンとジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体に上記カチオン性マクロモノマーがグラフト化したかのような構造を有する高分子が得られる。反応は極性媒体中で行われるので、疎水性のスチレン単位は内側に、上記カチオン性マクロモノマー(1)は外側に選択的に集積(局在)する(図中、工程D)。このようにして重合が完了すると、スチレン/ジメチルアミノエチルメタクリレート単位のコア部(図中、4)の表面にカチオン性高分子鎖(図中、5)が位置する高分子微粒子(図中、6)が得られる(図中、工程E)。
前述のように一般的に普通紙の紙面pHは4〜7であるので、インクジェット記録用インクが普通紙上に着弾した際にプロトンを供与されてインクが酸性側となる。したがって、上記構造を有する高分子微粒子は保存状態や記録装置内のインク中では分散状態であるが、普通紙上に着弾後はインクのpHが酸性側へ変化することで高分子微粒子のコア部分のpH感受性高分子により疎水性高分子が親水性を帯びることで、コア部分が膨潤し粒子径が大きくなると考える。つまりpHの変化(pH値の低下:酸性側へ変化)に応答して、高分子微粒子の粒子径が大きくなることによって紙表面に留まり、紙表面の着色剤濃度が高くなり画像濃度が高くなる。
本発明の高分子微粒子を構成する前記式(1)で表される構造単位(疎水性モノマー)、前記一般式(2)で表される構造単位、前記一般式(3)で表される構造単位(親水性マクロモノマー)の比率は特に制限されないが、pH応答性の観点から、(式1)で表される構造単位と、(式2)で表される構造単位と、(式3)で表される構造単位のうち当該高分子微粒子の表面に局在する高分子鎖を構成する繰り返し単位との比率が1/0.1〜5/0.1〜5の範囲が好ましく、1/0.5〜3/0.5〜3がより好ましい。
前記一般式(3)中の繰り返し単位数kは1〜100の整数を示すが、分子量分布において70〜90程度にピークがあるものがより好ましい。なお、繰り返し単位数kが100を超えると高分子微粒子のインクへの分散性が低下する傾向がある。
本発明に用いられる高分子微粒子は、インク総量に対し、固形分として0.05〜2.0質量%の添加が好ましい。0.05質量%未満だと十分なpH応答による粒子径の増大が得られないことがあり、インク中の着色剤が記録媒体に浸透してしまうことがあり、2.0質量%を超えると高分子微粒子同士が凝集することがあり、インクの粘度が高くなりインクジェット記録装置で吐出可能なインクの粘度とするのが困難になる。
本発明の高分子微粒子の体積平均粒子径(「平均粒径」と略称する。)は、pH8.5以上で10〜300nmであることが望ましい。前記平均粒径が10nm未満であると、高分子微粒子そのものの粘度が高くなりすぎるため、インクジェット記録装置で吐出可能なインクの粘度とするのが困難になる。前記平均粒径が300nmを超えると、インクジェット記録装置のノズル内で粒子が詰まり、吐出不良となることがある。ここでいう平均粒径は、動的光散乱法(例えば、Malvern製:ゼータサイザーナノZS)により測定され、50%平均粒径(D50)を意味する。
<湿潤剤>
本発明で使用される湿潤剤は、インク組成物において保湿効果の付与による吐出安定化の向上に必要である。含有量は、インク総量に対して10〜50質量%が好ましい。前記含有量が10質量%未満であると、インクが水分蒸発し易くなり、インクジェット記録装置内のインク供給系でインクの水分蒸発により増粘インク詰まり等が生じることがある。前記含有量が50質量%より多いと、インクジェット記録装置内では増粘インク詰まりは発生しにくくなるが、インクを所望の粘度にするために顔料や樹脂等の固形分の減量が必要なことがあり、その場合記録物の画像濃度が低下することがある。
本発明のインクには、温度23℃、相対湿度80の環境中の平衡水分量が40質量%以上である多価アルコールを少なくとも2種類以上、例えば、下記のように沸点も粘度も高い湿潤剤A、及び沸点と粘度が比較的低い湿潤剤Bを含有することが好ましい。
上記多価アルコール中、常圧で沸点が250℃を越える湿潤剤Aとしては、例えば、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール(bp190-191℃/24hPa)、グリセリン(bp290℃)、ジグリセリン(bp270℃/20hPa)、トリエチレングリコール(bp285℃)、テトラエチレングリコール(bp324-330℃)等が挙げられる。一方、沸点が140〜250℃未満の湿潤剤Bとしては、例えば、ジエチレングリコール(bp245℃)、1,3-ブタンジオール(bp203-204℃)等が挙げられる。これら湿潤剤A、湿潤剤Bは、いずれも温度23℃、相対湿度80%の環境中の平衡水分量が40質量%以上の吸湿性がある材料であり、ただ湿潤剤Bは、湿潤剤Aよりも蒸発性が比較的高い。湿潤剤Aと湿潤剤Bの組み合わせを用いる場合、湿潤剤Aと湿潤剤Bとの量比〔B〕/〔A〕(質量比)は、後述するその余の湿潤剤Cの量や浸透剤などの他の添加剤の種類や量にも少なからず依存するので、一概に云えないが、例えば、10/90〜90/10の範囲であることが好ましい。
本発明における平衡水分量は、塩化カリウム飽和水溶液を用いデシケーター内の温湿度を温度23±1℃、相対湿度80±3%に保ち、このデシケーター内に各水溶性有機溶剤を1gづつ秤量したシャーレを保管し、飽和する水分量を求めたものである。
飽和水分量(%)=(有機溶剤に吸収した水分量/有機溶剤)×100
本発明の記録用インクには、上記湿潤剤A、湿潤剤B以外にも、必要に応じて湿潤剤A、湿潤剤Bの一部に代えて、または湿潤剤A、湿潤剤Bに加えて、その余の湿潤剤Cを併用することができる。このような湿潤剤Cとしては、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、その他の湿潤剤などが挙げられる。
前記多価アルコール類としては、例えば、ジプロピレングリコール(bp232℃)、1,5-ペンタンジオール(bp242℃)、3-メチル-1,3-ブタンジオール(bp203℃)、プロピレングリコール(bp187℃)、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(bp197℃)、エチレングリコール(bp196-198℃)、トリプロピレングリコール(bp267℃)、ヘキシレングリコール(bp197℃)、ポリエチレングリコール(粘調液体〜固体)、ポリプロピレングリコール(bp187℃)、1,6-ヘキサンジオール(bp253-260℃)、1,2,6-ヘキサントリオール(bp178℃)、トリメチロールエタン(固体、mp199-201℃)、トリメチロールプロパン(固体、mp61℃)などが挙げられる。
前記多価アルコールアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル(bp135℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(bp171℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(bp194℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(bp231℃)、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル(bp229℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(bp132℃)、などが挙げられる。
前記多価アルコールアリールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル(bp237℃)、エチレングリコールモノベンジルエーテルなどが挙げられる。
前記含窒素複素環化合物としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(bp202℃)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(bp226℃)、ε-カプロラクタム(bp270℃)、γ-ブチロラクトン(bp204-205℃)などが挙げられる。
前記アミド類としては、例えば、ホルムアミド(bp210℃)、N-メチルホルムアミド(bp199-201℃)、N,N-ジメチルホルムアミド(bp153℃)、N,N-ジエチルホルムアミド(bp176-177℃)などが挙げられる。
前記アミン類としては、例えば、モノエタノールアミン(bp170℃)、ジエタノールアミン(bp268℃)、トリエタノールアミン(bp360℃)、N,N-ジメチルモノエタノールアミン(139℃)、N-メチルジエタノールアミン(bp243℃)、N-メチルエタノールアミン(bp159℃)、N-フェニルエタノールアミン(bp282-287℃)、3-アミノプロピルジエチルアミン(bp169℃)などが挙げられる。
前記含硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド(bp139℃)、スルホラン(bp285℃)、チオジグリコール(bp282℃)などが挙げられる。
その他の固体湿潤剤としては、糖類などが好ましい。該糖類の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類、四糖類を含む)、多糖類などが挙げられる。具体的には、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオースなどが挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α-シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖〔例えば、糖アルコール(一般式:HOCH2(CHOH)nCH2OH(ただし、nは2〜5の整数を表す)で表される。〕、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸などが挙げられる。これらの中でも、糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどが挙げられる。
<着色剤>
本発明における着色剤としては顔料を用いる。顔料としては特に限定はなく目的に応じて適宜選択することができ、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。また、これら顔料は1種単独で使用してもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。例えば以下に挙げる顔料が好適に用いられる。
有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリレン系、イソインドレノン系、アニリンブラック、アゾメチン系、ローダミンBレーキ顔料、カーボンブラック等が挙げられる。
無機顔料としては、酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、紺青、カドミウムレッド、クロムイエロー、金属粉等が挙げられる。
ブラック顔料インクに使用されるカーボンブラックとしては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックで、一次粒径が、15〜40ミリミクロン、BET法による比表面積が、50〜300m/g、DBP吸油量が、40〜150ml/100g、揮発分が0.5〜10%、pH値が2〜9を有するものが好ましい。
前記カーボンブラックとして市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、No.2300、No.900、MCF−88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B(以上、三菱化学社製)、Raven700、5750、5250、5000、3500、1255(以上、コロンビア社製)、Regal400R、330R、660R、MogulL、Monarch700、800、880、900、1000、1100、1300、Monarch1400(以上、キャボット社製)、カラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリンテックス35、U、V、140U、140V、スペシャルブラック6、5、4A、4(以上、デグッサ社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
カラー顔料の具体例を以下に挙げる。
イエローインクに使用できる顔料の例としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG)、2、3、12(ジスアゾイエローAAA)、13、14、16、17、20、23、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、73、74、75、81、83(ジスアゾイエローHR)、86、93、95、97、98、100、101、104、108、109、110、114、117、120、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
マゼンタインクに使用できる顔料の例としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、7、9、12、17、22(ブリリアントファーストスカーレット)、23、31、38、48:1(パーマネントレッド2B(Ba))、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3(パーマネントレッド2B(Sr))、48:4(パーマネントレッド2B(Mn))、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81(ローダミン6Gレーキ)、83、88、92、97、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(ジメチルキナクリドン)、123、146、149、166、168、170、172、175、176、178、179、180、184、185、190、192、193、202、209、215、216、217、219、220、223、226、227、228、238、240、254、255、272等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
シアンインクに使用できる顔料の例としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15(銅フタロシアニンブルーR)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルーG)、15:4、15:6(フタロシアニンブルーE)、16、17:1、22、56、60、63、64、バットブルー4、バットブルー60等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
中間色では、レッド、グリーン、ブルー用としてはC.I.ピグメントレッド177、194、224、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、71、C.I.ピグメントバイオレット3、19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントグリーン7、36等が挙げられる。
前記顔料の平均粒径は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10nm〜150nmが好ましく、20nm〜100nmがより好ましく、30nm〜80nmが更に好ましい。前記平均粒径が150nmを超えると、印写画像の彩度が低下するのみならずインク保存時の増粘凝集や印写時のノズルの詰まりが生じやすくなることがある。一方、顔料の平均粒径が10nm未満であると、耐光性が低下するのみならず保存安定性も悪化する傾向がある。
前記顔料の平均粒径は、例えば、日機装株式会社製のマイクロトラックUPA−150を用い、測定サンプル中の顔料濃度(質量濃度)が0.01質量%になるように純水で希釈したサンプルを用い、粒子屈折率1.51、粒子密度1.4g/cm、溶媒パラメーターは純水のパラメーターを用い、23℃で測定した50%平均粒径(D50)を意味する。
〔樹脂被覆型顔料〕
本発明で用いる顔料としては、樹脂被覆型顔料を用いることもできる。樹脂被覆型顔料は、親水性基を有する樹脂によって被覆し、マイクロカプセル化することで、分散性を与えることができる。
水不溶性の顔料を有機高分子類で被覆してマイクロカプセル化する方法としては、従来公知のすべての方法を用いることが可能である。従来公知の方法として、化学的製法、物理的製法、物理化学的方法、機械的製法などが挙げられる。具体的には、以下の方法がある。
(a)界面重合法(2種のモノマーもしくは2種の反応物を、分散相と連続相に別々に溶解しておき、両者の界面において両物質を反応させて壁膜を形成させる方法)
(b)in−situ重合法(液体または気体のモノマーと触媒、もしくは反応性の物質2種を連続相核粒子側のどちらか一方から供給して反応を起こさせ壁膜を形成させる方法)
(c)液中硬化被膜法(芯物質粒子を含む高分子溶液の滴を硬化剤などにより、液中で不溶化して壁膜を形成する方法)
(d)コアセルベーション(相分離)法(芯物質粒子を分散している高分子分散液を、高分子濃度の高いコアセルベート(濃厚相)と希薄相に分離させ、壁膜を形成させる方法)(e)液中乾燥法(芯物質を壁膜物質の溶液に分散した液を調製し、この分散液の連続相が混和しない液中に分散液を入れて、複合エマルションとし、壁膜物質を溶解している媒質を徐々に除くことで壁膜を形成させる方法)
(f)融解分散冷却法(加熱すると液状に溶融し常温では固化する壁膜物質を利用し、この物質を加熱液化し、その中に芯物質粒子を分散し、それを微細な粒子にして冷却し壁膜を形成させる方法)
(g)気中懸濁被覆法(粉体の芯物質粒子を流動床によって気中に懸濁し、気流中に浮遊させながら、壁膜物質のコーティング液を噴霧混合させて、壁膜を形成させる方法)
(h)スプレードライング法(カプセル化原液を噴霧してこれを熱風と接触させ、揮発分を蒸発乾燥させ壁膜を形成させる方法)
(i)酸析法(アニオン性基を含有する有機高分子化合物類のアニオン性基の少なくとも一部を塩基性化合物で中和することで水に対する溶解性を付与し色材と共に水性媒体中で混練した後、酸性化合物で中性または酸性にし有機化合物類を析出させ色材に固着せしめた後に中和し分散させる方法)
(j)転相乳化法(水に対して分散能を有するアニオン性有機高分子類と色材とを含有する混合体を有機溶媒相とし、前記有機溶媒相に水を投入するかもしくは、水に前記有機溶媒相を投入する方法)、などが挙げられる。
マイクロカプセルの壁膜物質を構成する材料として使用される有機高分子類(樹脂)としては、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリウレア、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、多糖類、ゼラチン、アラビアゴム、デキストラン、カゼイン、タンパク質、天然ゴム、カルボキシポリメチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸の重合体または共重合体、(メタ)アクリル酸エステルの重合体または共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アルギン酸ソーダ、脂肪酸、パラフィン、ミツロウ、水ロウ、硬化牛脂、カルナバロウ、アルブミンなどが挙げられる。
これらの中ではカルボン酸基またはスルホン酸基などのアニオン性基を有する有機高分子類を使用することが可能である。また、ノニオン性有機高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートまたはそれらの(共)重合体)、2−オキサゾリンのカチオン開環重合体などが挙げられる。特に、ポリビニルアルコールの完全ケン化物は、水溶性が低く、熱水には解け易いが冷水には解けにくいという性質を有しており特に好ましい。
また、マイクロカプセルの壁膜物質を構成する有機高分子類の量は、有機顔料またはカーボンブラックなどの水不溶性の色材に対して10質量%以上90質量%以下である。有機高分子類の量を上記の範囲にすることによって、カプセル中の有機高分子類の含有率が比較的低いために、有機高分子類が顔料表面を被覆することに起因する顔料の発色性の低下を抑制することが可能となる。有機高分子類の量が10質量%未満ではカプセル化の効果を発揮しづらくなり、逆に90質量%を越えると、顔料の発色性の低下が著しくなる。さらに他の特性などを考慮すると有機高分子類の量は水不溶性の色材に対して20〜70質量%の範囲が好ましい。
すなわち、色材の一部が実質的に被覆されずに露出しているために発色性の低下を抑制することが可能となり、また、逆に、色材の一部が露出せずに実質的に被覆されているために顔料が被覆されている効果を同時に発揮することが可能となるのである。また、本発明に用いる有機高分子類の数平均分子量としては、カプセル製造面などから、2000以上であることが好ましい。ここで「実質的に露出」とは、例えば、ピンホール、亀裂などの欠陥などに伴う一部の露出ではなく、意図的に露出している状態を意味するものである。
さらに、色材として自己分散性の顔料である有機顔料または自己分散性のカーボンブラックを用いれば、カプセル中の有機高分子類の含有率が比較的低くても、顔料の分散性が向上するために、十分なインクの保存安定性を確保することが可能となるので本発明にはより好ましい。
なお、マイクロカプセル化の方法によって、それに適した有機高分子類を選択することが好ましい。例えば、界面重合法による場合は、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、エポキシ樹脂などが適している。in−situ重合法による場合は、(メタ)アクリル酸エステルの重合体または共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミドなどが適している。液中硬化法による場合は、アルギン酸ソーダ、ポリビニルアルコール、ゼラチン、アルブミン、エポキシ樹脂などが適している。コアセルベーション法による場合は、ゼラチン、セルロース類、カゼインなどが適している。また、微細で、且つ均一なマイクロカプセル化顔料を得るためには、勿論前記以外にも従来公知のカプセル化法すべてを利用することが可能である。
マイクロカプセル化の方法として転相法または酸析法を選択する場合は、マイクロカプセルの壁膜物質を構成する有機高分子類としては、アニオン性有機高分子類を使用する。転相法は、水に対して自己分散能または溶解能を有するアニオン性有機高分子類と、カーボンブラックとの複合物または複合体、あるいはカーボンブラック、硬化剤およびアニオン性有機高分子類との混合体を有機溶媒相とし、該有機溶媒相に水を投入するか、あるいは水中に該有機溶媒相を投入して、自己分散(転相乳化)化しながらマイクロカプセル化する方法である。なお、ここでのカーボンブラックとは、自己分散型カーボンブラックを含む。上記転相法において、有機溶媒相中に、記録液用のビヒクルや添加剤を混入させて製造しても何等問題はない。特に、直接記録液用の分散液を製造できることからいえば、記録液の液媒体を混入させる方がより好ましい。
一方、酸析法は、アニオン性基含有有機高分子類のアニオン性基の一部または全部を塩基性化合物で中和し、カーボンブラックなどの色材と、水性媒体中で混練する工程および酸性化合物でpHを中性または酸性にしてアニオン性基含有有機高分子類を析出させて、顔料に固着する工程とからなる製法によって得られる含水ケーキを、塩基性化合物を用いてアニオン性基の一部または全部を中和することによりマイクロカプセル化する方法である。このようにすることによって、微細で顔料を多く含むアニオン性マイクロカプセル化顔料を含有する水性分散液を製造することができる。
また、上記に挙げたようなマイクロカプセル化の際に用いられる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルキルアルコール類;ベンゾール、トルオール、キシロールなどの芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;クロロホルム、二塩化エチレンなどの塩素化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類などが挙げられる。なお、上記の方法により調製したマイクロカプセルを遠心分離または濾過などによりこれらの溶剤中から一度分離して、これを水および必要な溶剤とともに撹拌、再分散を行い、目的とする本発明に用いることができる記録液を得る。以上の如き方法で得られるカプセル化顔料の平均粒径は50nm〜180nmであることが好ましい。
<その他の成分>
本発明のインクジェット記録用インクの組成分に用いられるその他の成分としては特に制限はなく、必要に応じて適宜選択することができる。その他の成分としては、例えば、分散剤、浸透剤、水分散性樹脂、その他添加剤(消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等)などが挙げられる。
(分散剤)
着色剤として使用するカーボンブラック及びカラー顔料は界面活性剤を用いて水性媒体に分散させることでインクジェット用記録液とすることができる。このような顔料を分散させるための界面活性剤としては、通常の水溶性樹脂または水溶性界面活性剤を用いることができる。本発明で分散剤として使用できる水溶性界面活性剤の具体例としては、一般にノニオン性、アニオン性、両性に分類され、顔料種別あるいはインク処方に応じて適宜選択して用いる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−α−ナフチルエーテル、ポリオキシエチレン−β−ナフチルエーテル、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンモノスチリルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルナフチルエーテル、が挙げられる。また、これらの界面活性剤のポリオキシエチレンの一部をポリオキシプロピレンに置き換えたポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体等の界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の芳香環を有する化合物をホルマリン等で縮合させた界面活性剤も使用できる。
ノニオン系界面活性剤のHLBは12〜19.5のものが好ましく、13〜19のものがより好ましい。HLBが12未満では界面活性剤の分散媒へのなじみが悪いため分散安定性が悪化する傾向があり、HLBが19.5を超えると界面活性剤が顔料に吸着しにくくなるため、やはり分散安定性が悪化する傾向がある。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルカルボン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、メラニンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、スルホコハク酸アルキル二塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、N−アシルアミノ酸塩、アシル化ペプチド、石鹸などが挙げられる。
(浸透剤)
浸透剤をインクに添加することで、表面張力が低下し、紙等の記録媒体にインク滴が着弾した後の記録媒体中への浸透が速くなるため、フェザリングやカラーブリードを軽減することができる。浸透剤としては主に界面活性剤が用いられ、親水基の極性によりノニオン性、アニオン性、両性に分類される。また、疎水基の構造により、フッ素系、シリコーン系、アセチレン系等に分類される。本発明における浸透剤の適正な表面張力の範囲としては20〜35mN/mである。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオール、グリコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、アセチレングリコールなどが挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩などが挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物等が挙げられる。一般にフッ素系化合物として市販されているものを挙げると、サーフロンS−111、S−112、S−113、S121、S131、S132、S−141、S−144、S−145(旭硝子社製)、フルラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC−135、FC−170C、FC−430、FC−431、FC−4430(住友スリーエム社製),メガファックF−470、F−1405、F474(DIC社製)、ゾニールFS−300、FSN、FSN−100、FSO、FSO−100(デュポン社製)、エフトップEF−351、352、801、802(ジェムコ社製)、FT−250、251(ネオス社製)、PF−151N,PF−136A、PF−156A(OMNOVA社製)などが挙げられる。これらの中でも、Dupont社製のFSO、FSO−100、FSN、FSN−100、FS−300が良好な印字品質、保存性を提供でき好ましい。
シリコーン系界面活性剤としては、ポリエーテル変性シリコーン化合物が挙げられる。ポリエーテル変性シリコーン化合物は、ポリシロキ酸の側鎖にポリエーテル基を導入した側鎖型(ペンダント型)、ポリシロキサンの片末端にポリエーテル基を導入した片末端型、両端に導入した両末端型(ABA型)、ポリシロキサンの側鎖と両末端の両方にポリエーテル基を導入した側鎖両末端型、ポリエーテル基を導入したポリシロキサン(A)と未導入のポリシロキサン(B)を繰返し結合したABn型、枝分かれしたポリシロキサンの末端にポリエーテル基を導入した枝分かれ型等に分類することができる。本発明では特に限定はないが、ポリシロキサンの側鎖にポリエーテル基を導入した構造を有する側鎖型(ペンダント型)であることが好ましい。
一般に市販されているものとして、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−618,KF−6011、KF−6015、KF−6004(信越化学工業社製)、SF−3771、SF−8427、SF−8428、SH−3749、SH−8400、FZ−2101、FZ−2104、FZ−2118、FZ−2203、FZ−2207、L−7604(東レ・ダウコーニング社製)、BYK−345、BYK−346、BYK−348(ビッグケミー・ジャパン社製)等を挙げることができる。
アセチレングリコール系の界面活性剤としては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールなどのアセチレングリコール系等が挙げられる。例えばサーフィノール104、82、465、485、TG(エアープロダクツ社製)を用いることができる。
界面活性剤を浸透剤としてインクへ添加する場合の添加量は、0.05〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%である。
本発明のインクでは、2種類以上の界面活性剤を併用してもよい。また、浸透性向上のため、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール等の炭素数8〜11のポリオールを併用してもよい。
水溶性樹脂の具体例としては、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体等から選ばれた少なくとも2つ以上の単量体からなるブロック共重合体、あるいはランダム共重合体、又はこれらの塩等が挙げられる。これらの水溶性樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶なアルカリ可溶型樹脂であり、これらの中でも質量平均分子量3000〜20000のものが、インクジェット用記録液に用いた場合に、分散液の低粘度化が可能であり、かつ分散も容易であるという利点があるので特に好ましい。
(水分散性樹脂)
本発明において各色のインクは、必要に応じて水分散性樹脂(樹脂エマルジョン)を含んでいてもよい。水分散性樹脂の添加は、造膜性(画像形成性)に優れ、かつ高撥水性、高耐水性、高耐候性を備えて高耐水性で高画像濃度(高発色性)の画像記録に有用である。前記水分散性樹脂の具体例としては、縮合系合成樹脂、付加系合成樹脂、天然高分子化合物などが挙げられる。
前記縮合系合成樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、アクリル−シリコーン樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。
前記付加系合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルエステル系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、不飽和カルボン酸系樹脂などが挙げられる。
前記天然高分子化合物としては、例えば、セルロース類、ロジン類、天然ゴムなどが挙げられる。
この中でも、特にポリウレタン樹脂微粒子、アクリル−シリコーン樹脂微粒子及びフッ素系樹脂微粒子が好ましい。
(その他添加剤)
各色のインクは、必要に応じて、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等をさらに含んでいてもよい。
〔消泡剤〕
消泡剤としては、特に限定されないが、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、破泡効果に優れる点で、シリコーン系消泡剤が好ましい。
〔pH調整剤〕
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に限定されないが、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物等が挙げられる。
〔防腐防黴剤〕
防腐防黴剤としては、特に限定されないが、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が挙げられる。
〔防錆剤〕
防錆剤としては、特に限定されないが、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、亜硝酸ジシクロヘキシルアンモニウム等が挙げられる。
〔酸化防止剤〕
酸化防止剤としては、特に限定されないが、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、等が挙げられる。
〔紫外線吸収剤〕
紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、オキシベンゾン、サリチル酸フェニル、パラアミノ安息香酸エステル等が挙げられる。
[インクの物性]
本発明の液体組成物の物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
前記表面張力としては、25℃で、20mN/m〜40mN/mが好ましい。前記表面張力が、20mN/m未満であると、記録媒体上での滲みが顕著になり、安定した噴射が得られないことがあり、40mN/mを超えると、記録媒体へのインク浸透が十分に起らず、乾燥時間の長時間化を招くことがある。前記pHとしては、例えば、7〜10が好ましい。
<インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録装置は、本発明の前記インクジェット記録用インクを記録ヘッドから飛翔させて記録媒体に画像を記録するインク飛翔手段を有することを特徴とするものである。すなわち、本発明のインクジェット記録装置は、記録ヘッドと、維持回復装置とを少なくとも備えてなり、更に必要に応じて刺激発生手段、制御手段等のその他の手段を有してなる。
本発明のインクジェット記録方法は、本発明の前記インクジェット記録用インクにインク飛翔手段を介して刺激を印加し、記録ヘッドから該インクを飛翔させて記録媒体に画像を記録するインク飛翔工程を少なくとも含むことを特徴とするものである。すなわち、本発明のインクジェット記録方法は、インク飛翔工程を少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば刺激発生工程、制御工程等を含む。
以下、本発明のインクジェット記録装置の説明を通じて、本発明の前記インクジェット記録方法の詳細についても説明する。
前記インクジェット記録装置は、本発明の各インクにインク飛翔手段を介して刺激を印加し、前記記録ヘッドのノズルからインクを吐出させて画像を記録する。前記刺激は、例えば、前記刺激発生手段により発生させることができ、該刺激としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、熱(温度)、圧力、振動、光、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱、圧力が好適に挙げられる。
なお、前記刺激発生手段としては、例えば、加熱装置、加圧装置、圧電素子、振動発生装置、超音波発振器、ライト、などが挙げられる。例えば、圧電素子等の圧電アクチュエータ、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどが挙げられる。
前記記録用インクの飛翔の態様としては、特に制限はなく、前記刺激の種類等応じて異なり、例えば、前記刺激が「熱」の場合、記録ヘッド内の前記記録用インクに対し、記録信号に対応した熱エネルギーを例えばサーマルヘッド等を用いて付与し、該熱エネルギーにより前記記録用インクに気泡を発生させ、該気泡の圧力により、該記録ヘッドのノズル孔から該記録用インクを液滴として吐出噴射させる方法などが挙げられる。また、前記刺激が「圧力」の場合、例えば記録ヘッド内のインク流路内にある圧力室と呼ばれる位置に接着された圧電素子に電圧を印加することにより、圧電素子が撓み、圧力室の容積が縮小して、前記記録ヘッドのノズル孔から該記録用インクを液滴として吐出噴射させる方法などが挙げられる。
前記飛翔させる前記記録用インクの液滴は、その大きさとしては、例えば、3〜40plとするのが好ましく、その吐出噴射の速さとしては5〜20m/sとするのが好ましく、その駆動周波数としては1kHz以上とするのが好ましく、その解像度としては300dpi以上とするのが好ましい。
前記記録ヘッドは、多数のノズルを有してなり、インクセットにおけるインクをエネルギーの作用によりインク滴化し、吐出するヘッド部及び記録ユニットのいずれかを有することが好ましい。また、前記記録ヘッドは、液室部と、流体抵抗部と、振動板と、ノズル部材とを有してなり、かつ前記記録ヘッドの少なくとも一部がシリコーン及びニッケルのいずれかを含有する材料から形成されていることが好ましい。前記記録ヘッドのノズル径は30μm以下が好ましく、1〜20μmがより好ましい。
また、本発明のインクジェット記録装置は、前記記録ヘッド上にインクを供給するためのサブタンクを有し、該サブタンクにインクカートリッジから供給チューブを介してインクが補充されるように構成することが好ましい。
前記維持回復装置は、記録ヘッドを覆蓋し、吸引力発生手段と連通する少なくとも1つの吸引覆蓋手段(吸引キャップ)、及び前記記録ヘッドを覆蓋し、吸引力発生手段と連通していない少なくとも1つの非吸引覆蓋手段(保湿キャップ)を有してなり、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。このように、吸引キャップと保湿キャップとを備えることにより、全てのキャップが吸引キャップである構成よりも信頼性確保のための維持動作に消費されるインク量が少なくなり、維持動作にかかる時間、インクの無駄を防ぐことができる。前記維持回復装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、特開2005−170035号公報などに記載されたものを用いることができる。
本発明のインクジェット記録装置は、記録媒体の記録面を反転させて両面印刷可能とする反転手段を有することが好ましい。該反転手段としては、静電気力を有する搬送ベルト、空気吸引により記録媒体を保持する手段、搬送ローラと拍車との組み合わせなどが挙げられる。無端状の搬送ベルトと、該搬送ベルト表面を帯電させて記録媒体を保持しながら搬送する搬送手段を有することが好ましい。この場合、帯電ローラに±1.2kV〜±2.6kVのACバイアスを加えて搬送ベルトを帯電させることが特に好ましい。
なお、前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
ここで、図2及び図3は、本発明のインクジェット記録装置に配備される記録ヘッドの例を示すノズル面から見た概略平面図である。なお、図2は、第1ヘッド及び第2ヘッドからなる2ヘッドタイプである。図3は、第1ヘッド、第2ヘッド、第3ヘッド、及び第4ヘッドからなる4ヘッドタイプである。
前記2ヘッドタイプでは、第1ヘッド及び第2ヘッドのいずれか一方が吸引力発生手段と連通する吸引覆蓋手段(吸引キャップ)で覆蓋され、他方が、吸引力発生手段と連通していない非吸引覆蓋手段(保湿キャップ)で覆蓋される。図2の例では、第1ヘッドが吸引キャップで覆蓋され、第2ヘッドが保湿キャップで覆蓋されている。
図3に示す4ヘッドタイプでは、第1ヘッドから第4ヘッドのうち少なくとも1つが吸引力発生手段と連通する吸引覆蓋手段(吸引キャップ)で覆蓋され、それ以外が、吸引力発生手段と連通していない非吸引覆蓋手段(保湿キャップ)で覆蓋される。図3の例では、第1ヘッドが吸引キャップで覆蓋され、第2、第3及び第4ヘッドが保湿キャップで覆蓋されている。
なお、図2の2ヘッドタイプにおいて、フルカラー記録を行う場合には、合計4つのノズル列に、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びブラック(Bk)の各色のインクをそれぞれ充填する必要がある。
ここで、維持回復装置を有する本発明のインクジェット記録装置の一例について図4を参照して説明する。なお、図4はインクジェット記録装置を前方側から見た斜視説明図である。
図4に示すインクジェット記録装置は、装置本体1と、装置本体1に装着した用紙を装填するための給紙トレイ2と、装置本体1に装着され画像が記録(形成)された用紙(記録媒体)をストックするための排紙トレイ3とを備え、更に、装置本体1の前面4の一端部側には、前面4から前方側に突き出し、上面5よりも低くなったカートリッジ装填部6を有し、このカートリッジ装填部6の上面に操作キーや表示器などの操作部7を配置している。カートリッジ装填部6には、液体補充手段としての液体保管用タンクであるメインタンク(以下、「インクカートリッジ」という)10が交換可能に装着され、また、開閉可能な前カバー8を有している。
ここで、インクカートリッジは、本発明のインクジェット記録用インクを容器中に収容して成るものであり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材を構成することもできる。前記容器としては、その形状、構造、大きさ、材質に特に制限無く、目的に応じて適宜選択できる。例として、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルムなどで形成されたインク袋を少なくとも有するものなどが好適に挙げられる。
インクカートリッジは、例えば、図示しないインク注入口からインク袋内に充填され、排気した後、該インク注入口は融着により閉じられる。使用時には、ゴム部材からなるインク排出口に装置本体の針を刺して装置に供給される。インク袋は、透気性のないアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。このインク袋は、通常、プラスチックス製のカートリッジケース内に収容され、各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いられるようになっている。
次に、図4のインクジェット記録装置の機構部について、図5及び図6を参照して説明する。なお、図5は同機構部の全体構成を説明する概略構成図、図6は同機構部の要部平面説明図である。
フレーム21を構成する左右の側板21A,21Bに横架したガイド部材であるガイドロッド31とステー32とでキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによって図4においてキャリッジ走査方向(主走査方向)に移動走査する。
このキャリッジ33には、インクの液滴(インク滴)を吐出するための液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドからなる複数の記録ヘッド34を複数のノズルを主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
ここで、記録ヘッド34は、例えば、イエロー(Y)の液滴を吐出する記録ヘッド34y、マゼンタ(M)の液滴を吐出する記録ヘッド34m、シアン(C)の液滴を吐出する記録ヘッド34c、ブラック(Bk)の液滴を吐出する記録ヘッド34kとで構成している。なお、「記録ヘッド34」というときは色を区別しないものとする。なお、ヘッド構成は、これらの例に限るものではなく、1つ又は複数の色の液滴を吐出する1つ又は複数のノズル列を有する記録ヘッドを1つ又は複数用いて構成することもできる。
記録ヘッド34を構成する液滴吐出ヘッドとしては、圧電素子等の圧電アクチュエータ、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどを使用できる。
また、キャリッジ33には、各記録ヘッド34にそれぞれ各色のインクを供給するための各色のサブタンク35y、35m、35c、35k(色を区別しない場合は「サブタンク35」という)を搭載している。このサブタンク35には各色のインク供給チューブ37を介して、前述した各色のインクカートリッジ10(各色を区別する場合には、「インクカートリッジ10y、10m、10c、10k」と称する)からインクを供給するようにしている。
ここで、インクカートリッジ10は、図6にも示すように、カートリッジ装填部6に収納される。このカートリッジ装填部6にはインクカートリッジ10内のインクを送液するための供給ポンプユニット23が設けられている。また、インクカートリッジ装填部6からサブタンク35に至るまでのインク供給チューブ37は這い回しの途中でフレーム21を構成する後板21Cに本体側ホルダ25にて固定保持されている。更に、キャリッジ33上でも固定リブ26にて固定されている。
なお、図5、図6中、符号22はフレキシブルケーブルを、符号36はインク供給チューブ(サブタンク接続部)を示す。
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(底板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び該給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側で搬送するための搬送部として、用紙42を静電吸着して搬送するための搬送ベルト51と、給紙部からガイド45を介して送られる用紙42を搬送ベルト51との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ52と、略鉛直上方に送られる用紙42を略90°方向転換させて搬送ベルト51上に倣わせるための搬送ガイド53と、押さえ部材54で搬送ベルト51側に付勢された先端加圧コロ55と、を備えている。また、搬送ベルト51表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。
ここで、搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ57とテンションローラ58との間に掛け渡されて、図5のベルト搬送方向に周回するように構成している。帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置され、加圧力として軸の両端に各々2.5Nをかけている。
また、搬送ベルト51の裏側には、記録ヘッド54による印写領域に対応してガイド部材61を配置している。このガイド部材61は、上面が搬送ベルト51を支持する2つのローラ(搬送ローラ57とテンションローラ58)の接線よりも記録ヘッド34側に突出している。これにより、搬送ベルト51は印写領域ではガイド部材61の上面にて押し上げられてガイドされるので、高精度な平面性を維持される。
更に、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪71と、排紙ローラ72及び排紙コロ73とを備え、排紙ローラ72の下方に排紙トレイ3を備えている。ここで、排紙ローラ72と排紙コロ73との間から排紙トレイ3までの高さは排紙トレイ3にストックできる量を多くするためにある程度高くしている。
また、装置本体1の背面部には両面給紙ユニット81が着脱自在に装着されている。この両面給紙ユニット81は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ52と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面給紙ユニット81の上面には手差し給紙部82を設けている。
更に、図6に示すように、キャリッジ33の走査方向の一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復装置(以下、「サブシステム」と称することもある)91を配置している。このサブシステム91には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下、「キャップ」と称することもある)92a〜92d(区別しないときは、「キャップ92」と称することもある)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード93と、増粘したインクを排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け94及びこの空吐出受け94に一体形成され、ワイパーブレード93に付着したインクを除去するための清掃部材であるワイパークリーナ95(図8参照)と、ワイパーブレード93のクリーニング時にワイパーブレード93をワイパークリーナ95側に押し付けるクリーナ手段を構成するクリーナコロ96などを備えている。
また、図6に示すように、キャリッジ33の走査方向の他方側の非印字領域には、記録中などに増粘したインクを排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け98を配置し、この空吐出受け98には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口99などを備えている。
このように構成したインクジェット記録装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ52との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド53で案内されて先端加圧コロ55で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、図示しない制御回路によって高圧電源から帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、即ち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に静電的に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。そこで、キャリッジ33動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号、又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ33はサブシステム91側に移動されて、キャップ部材92で記録ヘッド34がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ部材92で記録ヘッド34をキャッピングした状態でノズルからインクを吸引し(「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という)、増粘したインクや気泡を排出する回復動作を行う。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。これによって、記録ヘッド34の安定した吐出性能を維持する。
次に、本発明のインクジェット記録装置における維持回復装置を含むサブシステム91の構成の概要について図7から図9を参照して説明する。なお、図7は同システムの要部平面説明図、図8は同システムの模式的概略構成図、図9は図7の右側面説明図である。
このサブシステム91のフレーム(維持装置フレーム)111には、キャップ保持機構である2つのキャップホルダ112A、112Bと、清浄化手段としての弾性体を含むワイピング部材であるワイパーブレード93と、キャリッジロック115とがそれぞれ昇降可能(上下動可能)に保持されている。また、ワイパーブレード93とキャップホルダ112Aとの間には空吐出受け94が配置され、ワイパーブレード93のクリーニングを行うために、フレーム111の外側からワイパーブレード93を空吐出受け94の清掃部材であるワイパークリーナ95側に押し付けるための清掃部材であるクリーナコロ96を含むクリーナ手段であるワイパークリーナ118が揺動可能に保持されている。
キャップホルダ112A、112B(区別しないときは「キャップホルダ112」という)には、それぞれ、2つの記録ヘッド34のノズル面をそれぞれキャッピングする2つのキャップ92aと92b、キャップ92cと92dを保持している。
ここで、印字領域に最も近い側のキャップホルダ112Aに保持したキャップ92aには可撓性チューブ119を介して吸引手段であるチュービングポンプ(吸引ポンプ)120を接続し、その他のキャップ92b、92c、92dはチュービングポンプ120を接続していない。即ち、キャップ92aのみを吸引(回復)及び保湿用キャップ(以下、「吸引用キャップ」と称することもある)とし、その他のキャップ92b、92c、92dはいずれも単なる保湿用キャップとしている。したがって、記録ヘッド34の回復動作を行うときには、回復動作を行う記録ヘッド34を吸引用キャップ92aによってキャッピング可能な位置に選択的に移動させる。
また、これらのキャップホルダ112A、112Bの下方にはフレーム111に回転自在に支持したカム軸121を配置し、このカム軸121には、キャップホルダ112A、112Bを昇降させるためのキャップカム122A、122Bと、ワイパーブレード93を昇降させるためのワイパーカム124、キャリッジロック115をキャリッジロックアーム117を介して昇降させるためのキャリッジロックカム125と、空吐出受け94内で空吐出される液滴がかかる空吐出着弾部材である回転体としてのコロ126と、ワイパークリーナ118を揺動させるためのクリーナカム128をそれぞれ設けている。
ここで、キャップ92はキャップカム122A,122Bにより昇降させられる。ワイパーブレード93はワイパーカム124により昇降させられ、下降時にワイパークリーナ118が進出して、このワイパークリーナ118のクリーナコロ96と空吐出受け94のワイパークリーナ95とに挟まれながら下降することで、ワイパーブレード93に付着したインクが空吐出受け94内に掻き落とされる。
キャリッジロック115は図示しない圧縮バネによって上方(ロック方向)に付勢されて、キャリッジロックカム125で駆動されるキャリッジロックアーム117を介して昇降させられる。
そして、チュービングポンプ120及びカム軸121を回転駆動するために、モータ131の回転をモータ軸131aに設けたモータギヤ132に、チュービングポンプ120のポンプ軸120aに設けたポンプギヤ133を噛み合わせ、更にこのポンプギヤ133と一体の中間ギヤ134に中間ギヤ135を介して一方向クラッチ137付きの中間ギヤ136を噛み合わせ、この中間ギヤ136と同軸の中間ギヤ138に中間ギヤ139を介してカム軸121に固定したカムギヤ140を噛み合わせている。なお、クラッチ137付きの中間ギヤ136、138の回転軸である中間軸141はフレーム111にて回転可能に保持している。
また、カム軸121にはホームポジションを検出するためのホームポジションセンサ用カム142を設け、このサブシステム91に設けた図示しないホームポジションセンサにてキャップ92が最下端に来たときにホームポジションレバー(不図示)を作動させ、センサが開状態になってモータ131(ポンプ120以外)のホームポジションを検知する。なお、電源オン時には、キャップ92(キャップホルダ112)の位置に関係なく上下(昇降)し、移動開始までは位置検出を行わず、キャップ92のホーム位置(上昇途中)を検知した後に、定められた量を移動して最下端へ移動する。その後、キャリッジが左右に移動して位置検知後キャップ位置に戻り、記録ヘッド34がキャッピングされる。
符号142はホームポジションセンサ用カムを示す。
次に、キャップ92の保持機構及び昇降機構(上下動機構)の詳細について図10を参照して説明する。なお、図10はキャップ保持昇降機構部の側面説明図である。
キャップ保持機構であるキャップホルダ112Aは、キャップ92a、キャップ92b(これらを併せて「キャップ92A」と称することがある)を昇降可能に保持するホルダ151と、ホルダ151の底面とキャップ92Aの底部との間に介装されてキャップ92Aを上方に付勢するスプリング152と、ホルダ151を前後方向(記録ヘッド34のノズルの並び方向)に移動可能に保持するスライダ153とを有している。
キャップ92Aは両端部に設けたガイドピン150aをホルダ151の図示を省略しているガイド溝に上下動可能に、底面に設けたガイド軸150bをホルダ151に上下動可能に挿通して、ホルダ151に対して上下動可能に装着している。キャップ92Aとキャップホルダ151との間に介装したスプリング152、152はキャップ92a、92bを上方向(キャッピング時にノズル面側に押圧する方向)に付勢している。
スライダ153は、前後端に設けたガイドピン154、155をフレーム111に形成したガイド溝156に摺動可能に嵌め合わせることで、スライダ153及びホルダ151及びキャップ92A全体が上下動できる構成としている。
そして、スライダ153の下面に設けたカムピン157をキャップカム122Aの図示しないカム溝に嵌め合わせて、モータ131の回転が伝達されるカム軸121の回転に同動するキャップカム122Aの回転によってスライダ153、ホルダ151及びキャップ92Aが上下動するようにしている。
更に、吸引用キャップ92aにはスライダ153及びホルダ151を挿通して、キャップ92aの短手方向に対してキャップ中央位置の下方からチューブ119を這い回して接続している。
なお、キャップ92c,92d(これらを併せて「キャップ92B」と称することがある)を保持するキャップホルダ112B及びこれを上下動させる構成も上記と同様であるので説明を省略する。ただし、キャップ92c、92dにはチューブ119は接続されない。このように、1つの駆動源であるモータ131を駆動することによって1つの軸であるカム軸121が回転し、このカム軸121の回転によってカム軸121に固定したカム122A,122Bが回転して、キャップ92A及びキャップ92Bが上下動する構成としている。
本発明のインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法は、インクジェット記録方式による各種記録に適用することができ、例えば、インクジェット記録用プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、などに特に好適に適用することができる。
<インク記録物>
本発明のインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法により記録されたインク記録物は、記録媒体上に本発明の前記インクを用いて形成された画像を有してなる。
前記記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、普通紙、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記インク記録物は、高画質で滲みがなく、経時安定性に優れ、各種の印字乃至画像の記録された資料等として各種用途に好適に使用することができる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
<高分子微粒子の合成例>
以下に、本発明に用いる高分子微粒子の合成例を示す。
尚、合成例におけるポリマーの重量平均分子量は、以下の方法に従って測定した。
カラム恒温槽には島津製作所製CTO−20A、検出器には島津製作所製RID−10A、溶離液流路ポンプには島津製作所製LC−20AD、デガッサには島津製作所製DGU−20A、オートサンプラーには島津製作所製SIL−20Aを用いてGPC法によって測定した。カラムは東ソー製の水系SECカラムTSKgelG3000PWXL(排除限界分子量2×10)とTSKgelG5000PWXL(排除限界分子量2.5×10)とTSKgelG6000PWXL(排除限界分子量5×10)を接続したものを用いた。サンプルは溶離液で2g/100mlの濃度に調製し、測定に用いた。溶離液には酢酸、酢酸ナトリウム各々0.5モル/リットルに調整した水溶液を使用した。カラム温度は40℃で、流速は1.0ml/分で実施した。標準サンプルとして分子量1065、5050、24000、50000、107000、140000、250000、540000、920000の9種のポリエチレングリコールを用いて較正曲線を求め、その較正曲線を基に、ポリマーの重量平均分子量を求めた。
本発明によるpH応答性高分子微粒子の粒子径は動的光散乱法(Malvern製:ゼータサイザーナノZS)により測定した。
本発明によるpH応答性高分子微粒子の粒子径の測定時のpH調整は、0.2%分散液を塩酸又は水酸化ナトリウムでpH調整した。
[VBTMAC高分子鎖が表面に集積したpH応答性高分子微粒子分散体の合成]
(合成例1)
(a)VBTMAC高分子の合成
攪拌装置、還流冷却機、滴下ロート2個、窒素ガス導入管及び温度計を備えた反応容器中に、水463.5gを仕込み、加熱して温度を80℃まで昇温した。窒素気流下、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTMAC)の80質量%水溶液500g(1.89モル)とメルカプト酢酸20.3g(0.22モル)の混合溶液及び過硫酸カリウムの5質量%水溶液16.2g(0.003モル)を、同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃にて3時間保ち、末端にカルボキシル基を有するVBTMAC高分子溶液(固形分濃度41.9質量%)を得た。反応終了後、アセトンで再沈殿を数回行ってVBTMAC高分子を精製した。得られた重合物のGPC(液体クロマトグラフィー)より求めた重量平均分子量は14,000、数平均分子量は7,000であった。
(b)VBTMAC高分子末端へのラジカル重合性基の導入
次に、拌装置、還流冷却機及び温度計を備えた反応容器中に、上記VBTMAC高分子溶液(固形分濃度41.9質量%)700.0g[メルカプト酢酸単位として0.15モル(前仕込みより求めた)]を仕込み、エタノール280.0gを加え、水酸化ナトリウムの48質量%水溶液16.7g(0.20モル)、テトラブチルアンモニウムブロミド13.0g(0.04モル)、及びp−クロロメチルスチレン30.2g(0.20モル)を加えて30℃で72時間反応させ、末端ビニルベンジル基含有VBTMAC高分子溶液(固形分濃度32.2質量%)を得た。反応終了後、アセトンで再沈殿を行って末端ビニルベンジル基含有VBTMAC高分子を精製した。H−NMR測定の結果、末端へのビニルベンジル基導入率はほぼ100%であることが分かった。また、GPC(液体クロマトグラフィー)により測定した末端ビニルベンジル基VBTMAC含有高分子の数平均分子量は7,100であった。
(c)VBTMAC高分子鎖が表面に集積したpH応答性高分子微粒子分散体の合成
次いで、攪拌装置、還流冷却機、窒素ガス導入管及び温度計を備えた反応容器中に、上記末端ビニルベンジル基含有VBTMAC高分子溶液338.1g[VBTMAC繰返し単位として0.43モル(前仕込みより求めた)]、DMAEMA67.0g(0.43モル)、スチレン44.4g(0.43モル)、水468.8gを仕込み、塩酸でpH調整後、60℃に昇温した。窒素気流下、過硫酸カリウムの5質量%水溶液81.1g(0.015モル)を加え、6時間共重合させ、乳白色の分散液(固形分濃度24.4質量%)を得た。
このようにして得られたpH応答性高分子微粒子のpH9での平均粒径は180nmであり、pH5での平均粒子径は660nmであった。
[VBTBAC高分子鎖が表面に集積したpH応答性高分子微粒子分散体の合成]
(合成例2)
(a)VBTBAC高分子の合成
攪拌装置、還流冷却機、滴下ロート2個、窒素ガス導入管及び温度計を備えた反応容器中に、水463.5gを仕込み、加熱して温度を80℃まで昇温した。窒素気流下、ビニルベンジルトリブチルアンモニウムクロライド(VBTBAC)の80質量%水溶液438g(1.89モル)とメルカプト酢酸20.3g(0.22モル)の混合溶液及び過硫酸カリウムの5質量%水溶液16.2g(0.003モル)を、同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃にて3時間保ち、末端にカルボキシル基を有するVBTBAC高分子溶液(固形分濃度37.8質量%)を得た。反応終了後、アセトンで再沈殿を数回行ってVBTEAC高分子を精製した。得られた重合物のGPC(液体クロマトグラフィー)より求めた重量平均分子量は12,000、数平均分子量は5,500であった。
(b)VBTBAC高分子末端へのラジカル重合性基の導入
次に、攪拌装置、還流冷却機及び温度計を備えた反応容器中に、上記VBTBAC高分子溶液(固形分濃度37.8質量%)850.0g[メルカプト酢酸単位として0.15モル(前仕込みより求めた)]を仕込み、エタノール280.0gを加え、水酸化ナトリウムの48質量%水溶液16.7g(0.20モル)、テトラブチルアンモニウムブロミド13.0g(0.04モル)、及びp−クロロメチルスチレン30.2g(0.20モル)を加えて30℃で72時間反応させ、末端ビニルベンジル基含有VBTBAC高分子溶液(固形分濃度29.3質量%)を得た。反応終了後、アセトンで再沈殿を行って末端ビニルベンジル基含有VBTBAC高分子を精製した。H−NMR測定の結果、末端へのビニルベンジル基導入率はほぼ100%であることが分かった。また、GPC(液体クロマトグラフィー)により測定した末端ビニルベンジル基VBTBAC含有高分子の数平均分子量は5,900であった。
(c)VBTBAC高分子鎖が表面に集積したpH応答性高分子微粒子分散体の合成
次いで、攪拌装置、還流冷却機、窒素ガス導入管及び温度計を備えた反応容器中に、上記末端ビニルベンジル基含有VBTBAC高分子溶液558.9g[VBTBAC繰返し単位として0.43モル(前仕込みより求めた)]、DMABMA103.8g(0.43モル)、スチレン44.4g(0.43モル)、水468.8gを仕込み、塩酸でpH調整後、60℃に昇温した。窒素気流下、過硫酸カリウムの5質量%水溶液81.1g(0.015モル)を加え、6時間共重合させ、乳白色の分散液(固形分濃度23.9質量%)を得た。得られたpH応答性高分子微粒子のpH9での平均粒径は155nmであり、pH5での平均粒子径は590nmであった。
(比較合成例1)
上記合成例1のpH応答性高分子微粒子分散体の合成において、末端ビニルベンジル基含有VBTMAC高分子溶液338.1g、DMAEMA(ジメチルアミノエチルメタクリレート)67.0g(0.43モル)、スチレン44.4g(0.43モル)、水468.8gを、末端ビニルベンジル基含有VBTMAC高分子溶液684.2g、スチレン67.9g(0.65モル)、水319.0gとして、合成例1と同様に反応を行い、乳白色の分散液(固形分濃度22.5質量%)を得た。得られたpH応答性高分子微粒子のpH9での平均粒径は120nmであり、pH5での平均粒子径は120nmであった。
(比較合成例2)
特許第3155318号公報に記載の実施例1と同様に、第4回高分子ゲル研究討論会における小菅らの方法によりジメチルアミノメタクリレートを、N,N−メチレンビスアクリルアミドで架橋したゲル微粒子を合成した。合成したゲル微粒子のpH9での平均粒径は150nmであり、pH5での平均粒径は380nmであった。
<平均粒子径の測定方法>
前記平均粒子径については、日機装株式会社製のマイクロトラックUPA−150を用い、測定サンプル中の固形分濃度(質量濃度)が0.01質量%になるように純水で希釈したサンプルを用いて測定した。ここでいう平均粒子径とは、50%平均粒径(D50)を意味する。
上記合成例1、合成例2、比較合成例1、比較合成例2で得られた高分子微粒子の平均粒子径とpHとの関係を図11に示す。
この結果より、本発明のpH応答性高分子微粒子は、pHが8.5以上で平均粒子径が100〜300nmであり、pHが低くなるにつれて平均粒子径が非常に大きくなる。従来技術、例えば、比較合成例2ではpHが高い時の粒子径は小さくpHが低くなるにつれて平均粒子径が徐々に大きくなるが、本発明の場合には、比較合成例2と比較してpHが高い時の粒子径が同程度で、粒子径が大きくなるpH値が高く、しかも飽和する粒子径も大きいことが判る。また、本発明に必要な構成材料であるpH感受性モノマー[一般式(2)]を欠いた比較合成例1の場合には、pHが変わっても粒子径は変化しないことも判る。
本発明におけるpH応答性高分子微粒子の特性としては、pHが8〜9の範囲で平均粒子径(D50)が100〜300nm、pHが4〜6の範囲で平均粒子径(D50)が450〜800nmであることが好ましい。
<顔料分散体の調製例>
各料分散体の調製を以下により行った。
(調製調整例1):ブラック界面活性剤分散型顔料
特開2009−114286号公報の実施例1を参考にして、下記処方(1)によりブラック界面活性剤分散型顔料を調製した。
下記処方(1)の混合物をプレミックスし、混合スラリー(a)を作製した。これをディスクタイプのメディアミル(アシザワ・ファインテック株式会社製、DMR型)で0.05mmジルコニアビーズ、充填率55%を用いて周速10m/s、液温10℃で3分間循環分散し、遠心分離機(久保田商事株式会社製、Model−7700)で粗大粒子を遠心分離し、顔料濃度が13質量%となる界面活性剤分散型の顔料分散体を得た。
処方(1)
・カーボンブラック(NIPEX160、degussa社製、
BET比表面積150m/g、平均一次粒径20nm、pH4.0、
DBP吸油量620g/100g)・・・ 175質量部
・ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物(竹本油脂株式会社製
パイオニンA−45−PN、ナフタレンスルホン酸2量体、3量体、
及び4量体の合計含有量=50質量%)・・・ 175質量部
・蒸留水・・・ 650質量部
(調製例2):シアン樹脂被覆型顔料分散体
調製例1のカーボンブラック顔料を銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントシアン15:3)に変更した以外は、調製例1と同様にして、顔料濃度が13質量%となる青色の樹脂被覆型顔料分散体を得た。
得られたポリマー微粒子の粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA、日機装株式会社製)で測定した平均粒子径(D50%)は93nmであった。
(調製例3):イエロー界面活性剤分散型顔料
調製例1のカーボンブラック顔料をピグメントイエロー138(東洋インキ社製 LIONOGEN YELLOW 1010)に変更した以外は、調製例1と同様にして、顔料濃度が13質量%となるイエローの界面活性剤分散型顔料分散体を得た。得られたイエロー顔料分散体の粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA、日機装株式会社製)で測定した平均粒子径(D50%)は70nmであった。
(調製例4):マゼンタ樹脂被覆型顔料
特開2009−155425号公報に記載の合成例1及び調整例5、調整例8を参考にして、以下に記述するように追試調製した。
まず、ポリマー溶液の調製として、機械式撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管及び滴下ロートを備えた1Lフラスコ内を十分に窒素ガスで置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー(東亜合成株式会社製、商品名:AS−6)4.0g、及びメルカカプトエタノール0.4gを仕込み、65℃に昇温した。次に、スチレン100.8gアクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0gポリエチレングリコールメタクリレート36.0、ヒドロキシエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスジメチルバレロニトリル2.4g、及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8g、及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に、1時間熟成した。反応終了後、フラスコ内に、メチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50質量%のポリマー溶液800gを得た。次に、ポリマー溶液の一部を乾燥し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準:ポリスチレン、溶媒:テトラヒドロフラン)で測定したところ、重量平均分子量は15000であった。
得られたポリマー溶液28g、C.I.ピグメントレッド122を26g、1mol/Lの水酸化カリウム溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及びイオン交換水30gを十分に撹拌した。その後、3本ロールミル(株式会社ノリタケカンパニー製、商品名:NR−84A)を用いて20回混練した。得られたペーストをイオン交換水200gに投入し、十分に撹拌した後、エバポレーターを用いてメチルエチルケトン、及び水の一部を留去し、顔料の含有率が13質量%となる赤紫色の樹脂被覆型顔料分散液(マゼンタ樹脂被覆型顔料)を得た。
[実施例1〜14、比較例1〜12]
<インクジェット記録用インクの作製>
下記表1及び表2に実施例1〜14のインク組成物の構成を、また下記表3及び表4に比較例1〜12のインク組成物の構成をそれぞれ示す。なお、表中の数値は質量%を示す。
各インクジェット記録用インク(記録用インク)の製造は、以下の手順で行った。
まず、下記表1〜表4に示す材料を混合し、1時間撹拌を行い均一に混合する。この分散液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブレンフィルターにて加圧ろ過し、粗大粒子やゴミを除去して、記録用インクを作製した。
なお、表1〜表4中の注釈※1〜※7は下記の意味を表す。
※1:KM−9036:東洋インキ社製、自己分散型顔料分散体;顔料濃度は13質量%。
※2:NANOCRYL−S KPX−02−014:トーヨーケム社製、固形分40.0質量%。
※3:タケラックW5661:三井化学社製、固形分35.0質量%
※4:ゾニールFS−300:ポリオキシエチレンパーフロロアルキルエーテル、Dupon社製、成分40質量%
※5:ユニダインDSN−403N:パーフルオロアルキルポリエチレンオキシド付加反応物、ダイキン工業社製
※6:KF−643:ポリエーテル変性シリコーン化合物、信越化学工業株式会社製、成分100質量%
※7:Proxel GXL:1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンを主成分とした防腐剤、アーチ・ケミカルズ社製、成分20質量%;ジプロピレングリコール含有。
次に、以下に示す評価方法にて、実施例1〜14及び比較例1〜12の各記録インクを評価した。結果を下記表5に示す。
なお、実施例1〜14及び比較例1〜12の要点を下記に示す。
実施例1〜5は、請求項1の一般式(2)のアルキル基の炭素数(R)が1で、一般式(3)のアルキル基(R)の炭素数が1の場合
実施例6〜10は、請求項1の一般式(2)のアルキル基の炭素数(R)が4で、一般式(3)のアルキル基の炭素数が4の場合
実施例11〜14は、本発明のpH応答性高分子微粒子の添加量を変えた場合
比較例1〜5は、比較合成例1の樹脂(pH感受性モノマー[一般式(2)]を欠いたもの)の場合
比較例6〜10は、特許第3155318号記載のゲル微粒子を使用した場合(比較合成例2)
比較例11〜12は、高分子微粒子を含まない場合
<各インクの保存安定性評価>
実施例1〜14、比較例1〜12の各記録インクの粘度の測定には、東機産業株式会社製の粘度計RE80Lを使用し、50回転もしくは100回転にて25℃における粘度を測定した。
保存性については初期の粘度を測定した後、該インクをポリエチレン容器に入れ、密封し、70℃で1週間保存した後の粘度を測定し、初期の粘度からの変化率によって下記の基準をもとに評価した。
〔評価基準〕
○:初期粘度を基準とした保存後粘度の変化率が5%未満
△:初期粘度を基準とした保存後粘度の変化率が5%以上50%未満
×:初期粘度を基準とした保存後粘度の変化率が50%以上
[各インクの印字評価]
表1〜表4に示す実施例1〜14、比較例1〜12のインクの印字評価を実施した。
「画像濃度」の評価は、MM環境(25±0.5℃、50±5%RH)に調整された環境下、インクジェットプリンタ(IPSiO GX3000 株式会社リコー製)を用い、インクの吐出量が均しくなるようにピエゾ素子の駆動電圧を変動させ、被記録材上に同じ付着量のインクが付くように設定して行った。なお、「吐出回復性」の評価についてのみHL環境(32±0.5℃、15±5%RH)にて評価を行った。
以下にそれぞれの評価項目及びその評価方法を示す。
<画像濃度>
Microsoft Word2003を用いて作成した、ブラックの64pointの文字「■」が記載されているチャートを坪量が69.6g/m、サイズ度が23.2秒、透気度が21.0秒の上質紙マイペーパー(リコー社製)に印字し、X−Rite938を用いて「■」部を測色し、画像濃度を評価した。このとき、印字モードは、プリンタ添付のドライバで「普通紙−標準、はやい」モードとした。なお、各色の画像濃度の判定は、以下の判断基準を基に行った。
〔評価基準〕
◎:OD値 ブラック1.20以上 イエロー0.75以上
マゼンタ0.90以上 シアン1.00以上。
○:OD値 ブラック1.10以上1.20未満 イエロー0.70以上0.75未満
マゼンタ0.80以上0.90未満 シアン0.90以上1.00未満。
△:OD値 ブラック1.00以上1.10未満 イエロー0.65以上0.70未満
マゼンタ0.70以上0.80未満 シアン0.80以上0.90未満。
×:OD値 ブラック1.00未満 イエロー0.65未満
マゼンタ0.70未満 シアン0.80未満。
<吐出回復性>
インクジェットプリンタにそれぞれ表1、表2に示す実施例1〜14、表3、表4に示す比較例1〜12の各インクを充填して、HL環境(32±0.5℃、15±5%RH)で3時間放置した後、ノズルチェックパターンを印字し、ドット抜けや飛行曲がりなどの吐出不良がないことを確認した。そして、そのままの状態でさらに6日間放置した。放置終了後、坪量が69.6g/m、サイズ度が23.2秒、透気度が21.0秒の上質紙マイペーパー(リコー社製)にベタ印字部付きノズルチェックパターンを1枚印字し、ドット抜けや飛行曲がりの有無を確認した。ノズルチェックパターンにインクのドット抜けや飛行曲がりが見られた際には、正常印刷への復帰動作としてプリンターノズルのクリーニングを行い、その合計回数を評価した。得られた合計回数から各インクの吐出回復性を下記評価基準により評価した。
〔評価基準〕
◎:クリーニング0回もしくは1回。
○:クリーニング2回以上5回未満。
×:クリーニング5回以上。
<吐出安定性>
インクジェットプリンタに表1、表2に示す実施例1〜14、表3、表4に示す比較例1〜12の各インクを充填して、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローそれぞれの面積と形状が同一のベタ及び線のパターンを含むチャートをマイペーパーに100枚連続印字した。印字中、チャートにインクのドット抜けや飛行曲がりが見られた際には、正常印刷への復帰動作としてプリンターノズルのクリーニングを行い、その合計回数を評価した。得られた合計回数から各インクセットの吐出安定性を下記評価基準により評価した。
ここで、マイペーパーとしてリコー製(上質紙)[坪量69.6g/m、サイズ度23.2秒、透気度21.0秒]を用いた。
〔評価基準〕
◎:クリーニング1回。
○:クリーニング2回以上5回未満。
×:クリーニング5回以上。
上記評価結果から、前記式(1)で表される疎水性モノマーと、前記一般式(2)で表されるpH感受性モノマーと、前記一般式(3)で表される親水性マクロモノマーとの共重合体から成る高分子微粒子をインク組成分として含有する本発明のインクでは、いずれも各色インクにおいて、画像濃度、インク保存安定性、インク吐出安定性及び吐出回復性が優れており、実用において問題となる特性は見られない。比較例1〜12の場合には、画像濃度、インク保存安定性、インク吐出安定性及び吐出回復性の少なくともいずれかの特性において実用に耐えない特性を含む。
なお、本発明の高分子微粒子の含有量が好ましい範囲の上下限[実施例12(下限)、実施例13(上限)]でも、実施例1〜10と同様の効果があることが判る。なお、高分子微粒子の含有量が好ましい範囲より少ない実施例11(下限未満)で画像濃度がやや劣る傾向がある。
すなわち、本発明は、インクの保存安定性が良好で、しかも乾燥性が良好であり普通紙や印刷用塗工紙で高い画像濃度が得られ、記録ヘッドからのインクの吐出安定性が良好で、かつ吐出回復性が優れておりノズル周辺にインク固着がないため、インクジェット記録方式による各種記録に適用することができる。本発明のインク記録物は、高画質で滲みがなく、経時安定性に優れ、各種の印字乃至画像の記録された資料等として各種用途に好適に使用できる。インクジェット記録方式による記録装置としては、例えば、インクジェット記録用プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機などが適用できる。
(図1)
1 末端にラジカル重合性基を有するカチオン性の親水性マクロモノマー
1a ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド単位
1b ビニルベンジル基
2 スチレンモノマー
3 ジメチルアミノエチルメタクリレート
4 コア部
5 カチオン性高分子鎖
6 高分子微粒子
(図4、図5、図6)
1 装置本体
2 給紙トレイ
3 排紙トレイ
4 前面
5 上面
6 インクカートリッジ装填部
7 操作部
8 前カバー
10 メインタンク(
インクカートリッジ)
10k ブラック(Bk)のインクカートリッジ
10y イエロー(Y)のインクカートリッジ
10m マゼンタ(M)のインクカートリッジ
10c シアン(C)のインクカートリッジ
21 フレーム
21A 側板
21B 側板
21C 後板
22 フレキシブルケーブル
23 供給ポンプユニット
25 本体側ホルダ
26 固定リブ
31 ガイドロッド
32 ステー
33 キャリッジ
34 記録ヘッド
34k ブラック(Bk)の液滴を吐出する記録ヘッド
34c シアン(C)の液滴を吐出する記録ヘッド
34m マゼンタ(M)の液滴を吐出する記録ヘッド
34y イエロー(Y)の液滴を吐出する記録ヘッド
35 サブタンク
35k ブラック(Bk)のインクを供給するためのサブタンク
35y イエロー(Y)のインクを供給するためのサブタンク
35m マゼンタ(M)のインクを供給するためのサブタンク
35c シアン(C)のインクを供給するためのサブタンク
36 インク供給チューブ(サブタンク接続部)
37 インク供給チューブ
41 用紙積載部(底板)
42 用紙
43 半月コロ(給紙コロ)
44 分離パッド
45 ガイド
51 搬送ベルト
52 カウンタローラ
53 搬送ガイド
54 押さえ部材
55 先端加圧コロ
56 帯電ローラ
57 搬送ローラ
58 テンションローラ
61 ガイド部材
71 分離爪
72 排紙ローラ
73 排紙コロ
81 両面給紙ユニット
82 手差し給紙部
91 維持回復装置
(図7、図8、図9、図10)
91 維持回復装置を含むサブシステム
92 キャップ部材
92a、92b、92c、92d キャップ
93 ワイパーブレード
94 空吐出受け
95 ワイパークリーナ
96 クリーナコロ
98 空吐出受け
99 開口
111 フレーム
112 112A、112B キャップホルダ
115 キャリッジロック
117 キャリッジロックアーム
118 ワイパークリーナ
119 チューブ
120 チュービングポンプ
120a ポンプ軸
121 カム軸
122、122A、122B キャップカム
124 ワイパーカム
125 キャリッジロックカム
126 コロ
128 クリーナカム
131 モータ
131a モータ軸
132 モータギヤ
133 ポンプギヤ
134 中間ギヤ
135 中間ギヤ
136 中間ギヤ
137 クラッチ
138 中間ギヤ
139 中間ギヤ
140 カムギヤ
141 中間軸
142 ホームポジションセンサ用カム
150a ガイドピン
150b ガイド軸
151 ホルダ
152 スプリング
153 スライダ
154 ガイドピン
155 ガイドピン
156 ガイド溝
157 カムピン
特開2006−16412 特許第3155318号

Claims (7)

  1. 水と、湿潤剤と、着色剤と、高分子微粒子とを少なくとも含有してなるインクジェット記録用インクであって、
    前記高分子微粒子が、下記式(1)で表されるモノマーと、下記一般式(2)で表されるモノマーと、下記一般式(3)で表されるマクロモノマーとの共重合体から成ることを特徴とするインクジェット記録用インク。
    [一般式(2)中、Rは炭素数1乃至4のアルキル基を示す。]
    [一般式(3)中、Rは炭素数1乃至4のアルキル基を示す。kは繰り返し単位の数を表し1〜100の整数を示す。]
  2. 前記一般式(2)中のRがメチル基またはエチル基であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用インク。
  3. 前記一般式(3)中のRがメチル基またはエチル基であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録用インク。
  4. 請求項1乃至3の何れかに記載のインクジェット記録用インクを容器中に収容して成ることを特徴とするインクカートリッジ。
  5. 請求項1乃至3の何れかに記載のインクジェット記録用インクにインク飛翔手段を介して刺激を印加し、記録ヘッドから該インクを飛翔させて記録媒体に画像を記録するインク飛翔工程を少なくとも含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
  6. 請求項1乃至3の何れかに記載のインクジェット記録用インクを記録ヘッドから飛翔させて記録媒体に画像を記録するインク飛翔手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
  7. 請求項1乃至3の何れかに記載のインクジェット記録用インクにより記録された画像を記録媒体上に有してなることを特徴とするインク記録物。
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