〔第1実施形態〕
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2は車両30の基本構成を示したものである。運転席に備えられたステアリング24は、パワーステアリングユニット33と連動し、回転操作力を前輪28fに伝えて車両30の操舵を行う。前輪28fは本発明の操舵輪に相当する。車体前部にはエンジン32と、このエンジン32からの動力を変速して前輪28fや後輪28rに伝えるトルクコンバータやCVT等を有する変速機構34とが配置されている。車両30の駆動方式(前輪駆動、後輪駆動、四輪駆動)に応じて、前輪28f及び後輪28rの双方もしくは何れかに動力が伝達される。運転席の近傍には走行速度を制御するアクセル操作手段としてのアクセルペダル26と、前輪28f及び後輪28rのブレーキ装置31を介して前輪28f及び後輪28rに制動力を作用させるブレーキペダル27とが並列配置されている。
運転席の近傍のコンソールの上部位置には表示部21にタッチパネル23が形成されたモニタ20(表示装置)が備えられている。本実施形態において、モニタ20は、バックライトを備えた液晶式のものである。モニタ20には、スピーカ22も備えられている。タッチパネル23は、感圧式のものや静電式のものが使用され、指などの接触位置をロケーションデータとして出力する。後述するように、本実施形態においては、モニタ20のタッチパネル23は駐車支援開始の指示入力手段として用いられる。車両30にナビゲーションシステムが搭載される場合、モニタ20はナビゲーションシステムの表示装置として用いるものを兼用すると好適である。
尚、モニタ20は、プラズマ表示型のものやCRT型のものであっても良く、スピーカ22は、ドアの内側など他の場所に備えられても良い。また、駐車支援開始の指示入力手段として他のスイッチなどを有している場合には、必ずしもモニタ20のタッチパネル23を駐車支援装置の指示入力手段として用いなくてもよい。
ステアリング24の操作系にはステアリングセンサ14が備えられ、ステアリング操作方向と操作量とが計測される。シフトレバー25の操作系にはシフト位置センサ15が備えられ、シフト位置が判別される。アクセルペダル26の操作系にはアクセルセンサ16が備えられ、操作量が計測される。ブレーキペダル27の操作系にはブレーキセンサ17が備えられ、操作の有無などを検出する。
また、移動距離センサとして、前輪28f及び後輪28rの少なくとも一方の回転量を計測する回転センサ18が備えられる。本実施形態では、後輪28rに回転センサ18が備えられた場合を例示している。尚、移動距離については、変速機構34において、駆動系の回転量から車両30の移動量を計測するようにしてもよい。また、車両30には本発明の駐車支援装置の中核であり、駐車支援を含む走行制御を行うECU(electronic control unit)10が配置されている。
車両30の後部には、車両30の後方の情景を撮影するカメラ12が備えられている。カメラ12は、CCD(charge coupled device)やCIS(CMOS image sensor)などの撮像素子を内蔵し、当該撮像素子に撮像された情報を動画情報としてリアルタイムに出力するデジタルカメラである。カメラ12は、広角レンズを備えており、例えば左右約140度程度の画角を有している。カメラ12は、車両30の後方に向けて例えば30度程度の俯角を有して設置され、概ね後方8m程度までの領域を撮影する。撮影された画像は、ECU10に入力され、駐車支援などに利用される。
ECU10を中核として構成される本実施形態の駐車支援装置は、図3に示すように、例えば、2台の駐車車両40(41及び42)の間の駐車スペースEに縦列駐車を行う場合の駐車支援を行う。車両30は、駐車スペースEの横を通過して前進し、切り返しを伴って後退して、駐車スペースEに駐車される。ECU10は、車両30の後輪28rの車軸の略中央部を車両30の基準点Qとして、車両30の誘導経路を演算し、駐車スペースEへの駐車運転を支援する。即ち、ECU10は、ポイントP1からポイントP2へと前進し、後退開始位置であるポイントP2から後退を始め、切り返し位置であるポイントP3でステアリング24を切り返して駐車目標位置であるポイントP4で駐車を完了するように縦列駐車を支援する。ECU10は、後退開始位置P2から切り返し位置P3への移動時の舵角、切り返し開始位置P3から駐車目標位置P4への移動時の舵角を一定として後退開始位置P2から駐車目標位置P4までの誘導経路を演算する。
図中のポイントAは、後退開始位置P2から旋回を伴って駐車スペースEへと向かう車両30が、車両30の前方側の障害物と接触しない位置を示している。図3に示す例においては、車両30の前方側の障害物は駐車車両41であり、後退開始位置P2において車両30に隣接する車両41の右後端部がほぼポイントAに相当する。ECU10は、駐車車両41との接触が回避されるようにポイントAとの関係から後退開始位置P2に適切な位置を演算する。
図4は、ECU10を中核とする本発明に係る駐車支援装置の構成例を模式的に示すブロック図である。図に示すように、ECU10は、演算部1、画像取得部2、表示制御部3、指標出力部6、工程図出力部7などの機能部を有して構成されている。演算部1は、図3に基づいて上述した誘導経路などを演算する機能部であり、駐車目標設定部4や誘導部5などの機能部を有している。ECU10が有する上記各機能部は、マイクロコンピュータやDSP(digital signal processor)などの論理演算ハードウェアを中核とし、当該ハードウェア上で実行されるプログラムなどのソフトウェアとの協働により実現される。従って、各機能部は、機能としての分担を示すものであり、必ずしも物理的に独立して構成される必要はない。また、ECU10には、画像格納用のフレームメモリなどの各種メモリ、画像処理回路などの各種電子回路も含まれる。これらの各種メモリや各種電子回路の構成や機能については公知であるので、図示並びに詳細な説明は省略する。
画像取得部2は、カメラ12(車載の撮影装置)により撮影された車両30の周辺画像を取得する機能部である。画像取得部2は、画像格納用のフレームメモリや同期分離回路などを有して構成される。表示制御部3は、カメラ12により撮影された車両30の周辺画像を車室内のモニタ20(表示装置)に表示させる機能部である。また、表示制御部3は、後述するように運転者を案内する指標を周辺画像に重畳する。さらに、表示制御部3は、誘導経路に従って駐車目標位置P4へ前記車両を駐車する際に運転者が行う運転操作と車両30の挙動とを説明する工程図をモニタ20に表示する。
演算部1は、車両30の駐車目標位置P4を設定するとともに、駐車目標位置P4までの誘導経路を演算する。演算部1が有する駐車目標設定部4は、車両30の駐車目標位置P4を設定する機能部である。また、演算部1が有する誘導部5は、駐車目標位置P4までの誘導経路を演算する機能部である。演算部1には、ステアリングセンサ14、シフト位置センサ15、アクセルセンサ16、ブレーキセンサ17、回転センサ18などから検出結果が入力され、これらセンサの検出結果に基づいて、駐車目標位置P4や誘導経路が演算される。
カメラ12により撮影された周辺画像を用いて、指標を描画したり、駐車目標位置P4などを設定したり、誘導経路を演算したりする手法は、公知の手法であるので、ここでは説明を省略する。例えば、特開平11−224470号公報や、特許第3762855号公報に記載された技術を適用することができる。
駐車支援装置が利用される場合、車両30は、運転者による複数工程の運転操作により、誘導経路に従って駐車目標位置P4へ駐車される。指標出力部6は、運転者を案内する指標を複数工程に応じて生成し、表示制御部3を介して周辺画像に重畳表示させる。
工程図出力部7は、上記複数工程の内、運転者により実行中の現工程における車両30の挙動を示す工程図と、当該現工程の次の次工程における車両30の挙動を説明する工程図との少なくとも2つの工程図を、現工程が明示された状態で表示制御部3を介してモニタ20に表示させる。
詳細については後述するが、ここで図5を参照し、本実施形態に係る駐車支援装置により案内される縦列駐車の大まかな手順について説明する。図5(a)〜(f)の各工程図に示される各工程は、本発明の複数工程に相当する。また、図5に示す各工程図は、表示制御部3を介してモニタ20に表示されるものである。
〔第1工程〕
車両30を後退させることによって縦列駐車を行うため、運転者は、駐車スペースEが車両30の後方に設置されたカメラ12の撮影範囲Fに入るまで車両30を前進させ、停止させる。車両30を図3に示した後退開始位置P2に一致させて停止することは困難である。従って、はじめに後退開始位置P2を超えて前進し、駐車支援装置を起動させた後、図5(a)に示す指標a及びb(垂直指標及び水平指標)を参照して後退開始位置P2まで車両30を後退させる。後退開始位置P2に車両30を移動させるこの運転操作を伴う工程は本発明の複数工程の1つであり、ここでは第1工程と称する。
〔第2工程〕
運転者は、車両30を後退開始位置P2に停車させたままでステアリング24を操作して、図5(b)に示す指標c(駐車枠)が駐車スペースEに収まるように移動させ、駐車目標位置P4を設定する。同時にこのステアリング24の操作により、操舵輪である前輪28fには縦列駐車を開始する際の舵角が設定される。工程図には、前輪28fの方向が高い視認性をもって明示される。駐車枠cを所望の駐車スペースEへ移動させ、駐車目標位置P4を設定するためのこの運転操作を伴う工程は本発明の複数工程の1つであり、ここでは第1工程に続いて実行される第2工程と称する。
駐車スペースEと車両30との横方向の距離は、運転者によって異なる場合がある。車両30の前後方向における後退開始位置P2と駐車スペースEとの幾何学的関係は、第1工程によって適切な位置に調整されている。車両30の左右方向における後退開始位置P2と駐車スペースEとの幾何学的関係は、運転者により様々であるから、本第2工程において調整される。第2工程において駐車枠cが駐車スペースE内に設定されるので、ECU10は駐車目標位置P4を定めることができる。後退開始位置P2と駐車目標位置P4とが定まると、ECU10は誘導経路並びに切り返し位置P3を定めることができる。
上記第1工程及び第2工程における後退開始位置P2、駐車目標位置P4(駐車枠c)、誘導経路、切り替えし位置P3の設定は、演算部1の駐車目標設定部4及び誘導部5との協働により実施される。これらの設定に際しては、後退開始位置P2と駐車目標位置P4とが定められた後に、誘導経路や切り替えし位置を設定しても良いし、その逆でもよい。つまり、後退開始位置P2から、誘導可能な位置を演算しながら、駐車目標位置P4を設定してもよい。
〔第3工程〕
運転者は、図5(c)に示すように、指標d(切り返し線)を参照しながら、第2工程で設定した舵角を保持して車両30を後退させる。図5(b)は、車両30が後退を開始する前の状態を示している。また、後述する図5(d)は、車両30が第2工程で設定した舵角を保持して行う後退を完了した時点又は完了する頃、即ち切り返し位置P3又はその近辺に達した状態を示している。図5(c)は、後退開始位置P2と切り返し位置P3との間で運転者が車両30を後退させる運転操作を伴う工程を示している。この工程は本発明の複数工程の1つであり、ここでは第2工程に続いて実行される第3工程と称する。
〔第4工程〕
運転者は、切り返し線dを参照しながら第2工程で設定した舵角を保持して、図5(d)に示すように所定位置(切り返し位置P3)まで後退すると、車両30を停止させる。具体的には、切り返し線dが駐車枠cの奥側、即ち路肩に達する位置まで後退すると、運転者はブレーキペダル27を踏んで車両30を停止させる。切り返し位置P3において、車両30を停止させる運転操作を伴うこの工程は、複数工程の1つであり、ここでは第3工程に続いて実行される第4工程と称する。
〔第5工程〕
運転者は、第4工程で停止した位置(切り返し位置P3)において、車両30を停車させたままでステアリング14を操作し、図5(e)に示すように逆方向へほぼ最大舵角となるまで切り返しを行う。即ち、縦列駐車の切り返し後の舵角を設定する。操舵輪である前輪28fには切り返し後の舵角が設定される。工程図には、第2工程から第4工程とは異なる方向を向いた前輪28fが高い視認性をもって明示される。また、第3工程及び第4工程の切り返し線dに代わり、指標e及び指標g(車両後方線及び後方予測線)が表示される。切り返し位置P3において、車両30を停止させたままでステアリング24を操作するこの運転操作を伴うこの工程は、複数工程の1つであり、ここでは第4工程に続いて実行される第5工程と称する。
〔第6工程〕
運転者は、第5工程で設定した舵角を保持して、車両後方線e及び後方予測線gを参照しながら車両30を後退させる。運転者は、図5(f)に示すように一方の指標e(車両後方線)が駐車スペースEとほぼ平行となったことを確認すると、車両30を停止させる。つまり、駐車目標位置P4に達すると、運転者は車両30を停止させる。駐車目標位置P4において、車両30を停止させる運転操作を伴うこの工程は、複数工程の1つであり、ここでは第5工程に続いて実行される第6工程と称する。
以上の工程により、車両30は駐車スペースEに縦列駐車される。第6工程の後、駐車スペースE内での前後方向の位置を微調整する必要がある場合には、運転者は、ステアリング24等を操作して、車両30を移動させる。車両後方線e及び後方予測線gが継続して表示されると、両指標が重なるようにステアリング24を操作することによってステアリング24を中立位置に戻すことができて好適である。
運転者は、上述したような手順により縦列駐車を行うのであるが、その際、図5に示したように多くの指標がカメラ12による周辺画像と共にモニタ20に重畳表示される。このため、どの指標をどのように参照すればよいのかが運転者に充分に理解されず、駐車支援の効果が限定的となる可能性がある。そこで、以下に図6〜図14を参照して説明するように、本発明においては、各工程における運転操作並びに指標の参照方法を運転者が容易に理解でき、駐車支援の効果を最大限に発揮できるようにしている。
尚、本実施形態においては、図6〜図14に示すモニタ20の表示画面例においては、周辺画像を鏡像化している。周辺画像は、カメラ12の撮影方向に準じた画像であり、例えば運転者が後方を振り向いて見た画像とほぼ等価である。一方、図1に示すように、モニタ20は運転者の前方に配置されているため、運転者はモニタ20に表示される後方の周辺画像を、前方を向いて見ることとなる。従って、運転者の左右方向の向きにおいて、実際の駐車スペースEの方向と、表示画面上における駐車スペースEの方向とが一致するように、周辺画像は鏡像化して表示される。
運転者は、図3に示す後退開始位置P2よりも前方まで前進し、障害物である駐車車両41に対して横方向に余裕をもって停車する。そして、運転者は、モニタ20のタッチパネル22を操作して、縦列駐車の駐車支援を開始させるとともに、シフトレバー25を操作して、シフトをリバースに変更する。尚、タッチパネル22の操作とシフトレバー25の操作とは何れが先でも構わない。また、タッチパネル22とは異なる場所に駐車支援の開始スイッチが設けられている場合には、当該スイッチの操作により駐車支援が開始される。また、本実施形態では、「縦列駐車の駐車支援の開始」としているが、単に「駐車支援の開始」でもよく、別の操作により縦列駐車を選択するように構成されていてもよい。
図6は、上記の状態、即ち、車両30が後退開始位置P2よりもやや前方で停止し、シフトレバー25がリバースに変更され、駐車支援が開始された際のモニタ20の表示部21の表示例を示している。つまり、図6は、上述した第1工程の直前の状態を示している。
ECU10は、シフトレバーセンサ15からシフトレバー25がリバースに変更されたことを示す検出結果を受け取ると、カメラ12により撮影された周辺画像を、表示制御部3を介してモニタ20の表示部21に表示させる。また、この時、指標出力部6において描画した後方予測線gを、表示制御部3を介して周辺画像に重畳する。後方予測線gは、後退する車両30の舵角に応じた車両30の後端の予測軌跡などを示す指標である。図6では、車両30が図3に示すポジションP1とポジションP2とを結ぶ直線上に位置しているので、ステアリング24が中立位置であり、後方予測線gが車両30の真後ろに重畳されている。本実施形態において、後方予測線gは、車両30の後端の予測軌跡を示す後端予測軌跡線g1及び車両30の後方の距離目安線g2、g3、g4から構成される。距離目安線は、本例では、5m目安線g2、3m目安線g3、1m注意線g4である。後方予測線gは、基本的に黄色で描画される。但し、1m注意線g4及び、g4よりも車両30側の後端予測軌跡線g5については、運転者に注意を喚起するために、赤色で描画される。
この後方予測線gの重畳は、ECU10が駐車支援を開始したことを運転者に報知する意味で行われ、例えば2〜5秒程度の所定時間の経過後に消去される。そして、後述する別の指標a及び指標bが新たに重畳される。尚、後方予測線gの重畳と同時に図5に示した縦列駐車の際の駐車支援の手順を示す工程図が、周辺画像と共に表示される。つまり、表示部21は、周辺画像の表示枠21mと工程図の表示枠21sとを分割表示する。表示枠21sは、さらに6つの表示枠21a〜21fに分割されている。表示枠21sには、図5の(a)〜(f)に示した6つの工程が、6つの表示枠21a〜21fのそれぞれに表示される。運転者はこの工程図により、駐車支援の際の運転操作を一覧することができる。
ECU10は、スピーカ23を介して、「縦列駐車の駐車支援を開始します。垂直ガイド線が隣の車両の後端にあうまでバックしてください。」などの音声案内を発する。この時、表示部21には図7に示すような指標a及び指標bが表示される。道路に対して垂直な指標aと、駐車スペースEの道路側を示す水平な指標bとが周辺画像に重畳される。これらの垂直指標a及び水平指標bは緑色で示される。また、同時に工程図の第1工程を示す表示枠21aがハイライト表示される。運転者は、表示枠21aにおいてハイライト表示される第1工程の工程図を参照して、垂直指標aを合わせる位置を容易に理解することができる。即ち、運転者は、垂直指標aが図3におけるポイントAに相当することを容易に理解することができ、後退開始位置P2まで車両30を好適に誘導することができる。
尚、車両30が後退開始位置2よりも手前に停車していた場合は、後退によって垂直指標aを好適な位置に合わせることはできない。その場合には、運転者は、車両30を一度前進させた上で再度、タッチパネル23及びシフトレバー25を操作して後退することで、垂直指標aを合わせる。
垂直指標aに基づいて車両30が後退され、停止された後、例えば3〜5秒の所定時間が経過すると、ECU10は第1工程が完了したと判定する。あるいは、ECU10は、ステアリング24が操作されたことを検出すると、第1工程が完了したと判定する。そして、図8に示すように矩形の指標cを周辺画像に重畳させると共に、第2工程を示す表示枠21bの工程図をハイライト表示させる。指標cは、駐車スペースE内に収まる車両30の駐車枠を示すものであり、緑色で表示される。垂直指標aに基づく誘導が完了した時点では、車両30のステアリング24は中立位置である。このため、第2工程の開始時には、駐車枠cは、周辺画像の中央、即ち、車両30のほぼ真後ろに描画される。
ECU10はスピーカ23を介して、「ステアリングを左方向に回して、四角形の駐車枠を駐車スペースに合わせてください。」などの音声案内を行う。この時、第2工程の工程図は、前輪28fの方向を含めて表示されているので、縦列駐車に不慣れな運転者であっても、正しい方向へステアリング24を操作することができる。また、ハイライト表示された表示枠21bには、駐車スペースEまで移動された駐車枠cを示しているので、運転者は駐車枠cを動かす方向を容易に理解することができる。図9もまた第2工程における表示部21の表示例を示しており、ステアリング24の操作により駐車枠cが駐車スペースEに合わされた状態を示している。
操舵角に変化のない状態、即ちステアリング24が操作されない状態が例えば3〜5秒の所定時間経過すると、ECU10は駐車枠cが駐車スペースEに合わされたと判定する。そして、図10に示すように新たな指標d(切り返し線)を周辺画像に重畳させると共に、第3工程を示す表示枠21cをハイライト表示させる。切り返し線dは、第2工程において設定された操舵角を保持して車両30が後退する目安となる指標であり、緑色で表示される。本例では、切り返し線dは円弧状に描画され、駐車枠cの奥側、即ち図9及び図10に示す駐車枠cの辺c1に接するまで車両30を後退させるように誘導される。
尚、運転者が駐車枠cを駐車スペースEに合わせた後、直ちにブレーキペダル27を緩めて後退を開始したような場合には、ECU10は上記所定時間の経過を待つことなく、第2工程が完了して第3工程に移行したと判定する。
第3工程に移行すると、ECU10はスピーカ23を介して、「ステアリングを保持して、指標が路肩に接するまで後退してください。」などの音声案内を行う。車両30が後退を開始して一定時間が経過すると、ECU10は第3工程が完了したと判定し、第4工程の処理に移行する。非熟練運転者にとって、後退開始位置P2から切り返し位置P3までの運転操作、並びに切り返し操作が最も難しい運転操作である。従って、これらの運転操作を伴う第3工程及び第4工程では、詳細な工程図が運転者に提示される。
第4工程では、図11に示すように駐車枠cが消去される。運転者は、誘導に従い、図12に示すように、路肩、即ち駐車枠cの辺c1と、円弧状の指標である切り返し線dとが接するまで車両30を後退させ、車両30を停止させる。この際、車両30は、図3に示すポジションP3まで誘導されたことになる。
切り返し線dに基づいて車両30が後退され、停止された後、例えば3〜5秒の所定時間が経過すると、ECU10は第4工程が完了したと判定する。そして、第5工程の案内を開始し、「指標が路肩に接したら、ステアリングを逆方向いっぱいに切り返してください。」などの音声案内を行う。尚、運転者が車両30を停止させた後、直ちにステアリング24を反対方向に操作し始めた場合には、上記所定時間の経過を待つことなく、ECU10は第4工程が完了したと判定する。
図13は、第5工程において、運転者によりステアリング24が逆方向いっぱいに切り返された後の表示部21の表示を示している。ECU10は、図13に示すように新たな指標である車両後方線e及び後方予測線gを周辺画像に重畳させると共に、第5工程を示す表示枠21eをハイライト表示させる。車両後方線eは、車両30の舵角に拘わらず、車両30の後方の所定位置を示す指標である。従って、車両30に設置されたカメラ12との光学的な関係により、周辺画像中の固定された所定位置に重畳される。
本実施形態において車両後方線eは、車幅延長線e1、距離目安線としての1m目安線e2とから構成され、緑色で表示される。後方予測線gは、図6を参照して上述したように、後退する車両30の舵角に応じた車両30の後端予測軌跡などを示す指標である。図6の場合と異なり、ステアリング24は右方向へ操舵されているため、後方予測線gは、大きく湾曲した状態で描画される。尚、上述した切り返し線dは、後端予測軌跡線g1の一部と一致し、ステアリング24を略最大舵角に切り返した場合の車両30の予測軌跡を示したものである。後方予測線gは、上述しようように、黄色と赤色で表示される。
ECU10は、スピーカ23を介して、さらに「ステアリングを保持して、指標が路肩に接するまで後退してください。」などの音声案内を行う。運転者は、車幅延長線e1が駐車スペースEの路肩と略平行になるように車両30を後退させる。また、運転者は、距離目安線e2やg2などを参照して後方の障害物(駐車車両42)との距離を確認する。
車両30が後退を開始して例えば3〜5秒の所定時間が経過すると、ECU10は第6工程を示す工程図が表示された表示枠21fをハイライト表示させる。運転者は、表示枠21fに示された縦列駐車完了時の画面イメージを参照し、後方予測線gの湾曲に拘らず、車幅延長線e1が駐車スペースEの路肩と略平行となるとブレーキペダル27を操作して車両30を停止させる。
ECU10は、車両30が停止されて例えば3〜5秒の所定時間が経過すると、車両30の誘導が完了したと判定する。そして、ECU10は、スピーカ23を介して、「案内を終了します。」などの音声案内を行って駐車支援を終了する。尚、駐車支援の終了後においても、後方予測線gが周辺画像に重畳されると好適である。運転者は、ステアリング24やブレーキペダル27を操作して車両30の駐車位置を調整することができる。
以上説明したように、駐車運転の一連の運転操作並びに車両30の挙動を示す工程図が、一覧可能に表示されるので運転者は運転操作の全体像を容易に理解することができる。また、複数表示される工程図のうち、実行中の運転操作を示す工程図が何れであるかも明示されているので、運転者は現在実行中の運転操作の次にどのような運転操作をするのかを容易に理解することができる。従って、運転者は、運転操作に不安を覚えることなく、駐車支援を享受することができる。尚、各工程をどのように分割し、どのタイミングでハイライト表示するかについては、適宜変更することが可能である。従って、上述した工程の分割や、ハイライト表示のタイミングについては、一例であって本発明を限定するものではない。
尚、簡略化のために図示並びに説明を省略したが、図6〜図14に示す表示区画21mには、「車両周辺を直接確認してください。」等のメッセージが表示される。つまり、駐車支援装置を利用していても、運転操作には目視確認が不可欠であり、運転者による基本的な運転操作を損なわないように構成されている。
〔第2実施形態〕
上記第1実施形態においては、縦列駐車の駐車支援を行う駐車支援装置を例として説明した。しかし、本発明は、縦列駐車に限定されることなく、車庫入れ駐車の駐車支援を行う駐車支援装置にも適用することができる。当業者であれば、上記説明に鑑みて、容易に本発明を車庫入れ駐車に応用することができるであろう。
また、上記第1実施形態においては、運転者が指標を参照して全ての運転操作を実施する駐車支援装置を例として説明した。しかし、運転者がブレーキペダル27操作や後退開始位置P2への移動、駐車枠cの設定などの一部の運転操作を実施し、操舵や速度制御などの他の運転操作は駐車支援装置が自動的に実施する駐車支援装置においても本発明を適用することができる。つまり、本発明の複数工程において実施される運転操作は、運転者により実施される手動の運転操作に限らず、駐車支援装置によって実施される自動運転操作を含むものである。
尚、自動運転操作を伴う駐車支援装置であっても、多くの場合、完全に全ての運転操作が自動化されているわけではない。例えば駐車開始時のブレーキ解除などの一部の操作については、運転者に委ねられている場合が多い。従って、本発明の複数工程において実施される運転操作は、運転者及び駐車支援装置によって実施される手動及び自動運転操作であってもよい。
自動運転操作が実施される駐車支援装置においては、車両が自動的に移動する場面が多いため、運転者が駐車の手順、即ち車両の動き方(振る舞い・挙動)を知らないと、運転者が不安を覚える可能性がある。しかし、第1実施形態のように、工程図が表示されれば、運転者は車両の挙動を把握することができ、安心して駐車支援装置を利用することができる。
以下、そのような自動運転操作を伴う駐車支援装置に本発明を適用する場合の好適な実施形態について説明する。上記第1実施形態においては、縦列駐車を実施する場合を例として説明したが、本第2実施形態においては、車庫入れ駐車を実施する場合を例として説明する。
図15は、車庫入れ駐車の際の車両30の移動軌跡を示す説明図である。車両30は、例えば、図15に例示するように、既に駐車された他の車両50の間の空いたスペースEを所定の駐車位置として車庫入れ駐車を行う。本例では、所定の駐車位置を明示するために他の車両50を図示しているが、当然ながら、他の車両50は無くてもよい。尚、本例では、駐車スペースEは路面に記された区画線W(駐車区画線)によって規定された区画である。
図15において、基準点Qは車両30の後輪28rの車軸の略中央部であり、ポイントP1〜ポイントP4は当該基準点Qの水平面上(路面上)の位置(座標点)を示している。本例の車庫入れ駐車では、車両30は、右方向への操舵による円弧状の移動軌跡を伴って後退開始位置P2まで前進経路KFを前進する。そして、後退開始位置P2から左方向への操舵による円弧状の移動軌跡を伴って駐車経路KB(K1、K2)を後進し、所定の駐車スペースEに駐車される。
ここでは、後退開始位置P2から、円弧状の移動軌跡を伴う経路K1、直線の移動軌跡を伴う経路K2を通って、駐車目標位置であるポイントP4に至る駐車経路を例示しているが、経路はこれに限定されるものではない。駐車経路K1をさらに、直進後進する経路と操舵を伴う経路の2つに分割してもよいし、後進に伴って操舵量が変化するような経路であってもよい。駐車経路KBの軌跡は適宜設定可能である。
図16は、第2実施形態の駐車支援装置の構成例を模式的に示すブロック図である。図4に示した第1実施形態のブロック図と重複する機能部については、同一の符号で示し、適宜説明を省略する。演算部1Aは、図4の演算部1とほぼ等価な機能部である。即ち、演算部1Aは、車両30の駐車目標位置P4を設定するとともに、駐車目標位置P4までの誘導経路を演算する。
演算部1Aが有する駐車目標設定部4Aは、図4の駐車目標設定部4とほぼ等価な機能部であり、車両30の駐車目標位置P4を設定する。また、演算部1Aが有する誘導部5Aは、図4の誘導部5Aとほぼ等価な機能部であり、駐車目標位置P4までの誘導経路を演算する。第1実施形態と同様に、演算部1Aには、ステアリングセンサ14、シフト位置センサ15、アクセルセンサ16、ブレーキセンサ17、回転センサ18などから検出結果が入力される。そして、これらセンサの検出結果に基づいて、駐車目標位置P13や誘導経路が演算される。
車両30が自動操舵制御されるため、演算部1Aは、パワーステアリングユニット33、変速機構34、ブレーキ装置31などを制御する。この制御は、誘導部5Aを中核として実施される。
第2実施形態において、車両30は、運転者及びECU10(演算部1A)による複数工程の運転操作により、誘導経路KBに従って駐車目標位置P4へ駐車される。指標出力部6は、運転者を案内する指標をこれら複数工程に応じて生成し、表示制御部3を介して周辺画像に重畳表示させる。
工程図出力部7は、上記複数工程の内、実行中の現工程における車両30の挙動を示す工程図と、当該現工程の次の次工程における車両30の挙動を説明する工程図との少なくとも2つの工程図を、現工程が明示された状態で表示制御部3を介してモニタ20に表示させる。
詳細については後述するが、ここで図17を参照し、本実施形態に係る駐車支援装置により案内される車庫入れ駐車の大まかな手順について説明する。図17(a)〜(e)の各工程図に示される各工程は、本発明の複数工程に相当する。また、図17に示す各工程図は、表示制御部3を介してモニタ20に表示されるものである。
〔第1工程〕
図17(a)は、第1工程を示す工程図である。車両30を後退させることによって車庫入れ駐車を行うため、運転者は、駐車スペースEが車両30の後方に設置されたカメラ12の撮影範囲Fに入るように、斜め前方へ車両30を前進させ、停止させる。この際、好適には車両30の操舵角が中立位置に戻されているとよい。
本実施形態では、この停止位置において、演算部1Aが、駐車枠Wを画像認識することにより、駐車スペースEを検出し、駐車目標位置P4を設定する。尚、後述するように、駐車目標位置P4は、運転者により微調整が可能である。モニタ20には、駐車目標位置P4とリンクした表示として、駐車枠を示す指標cが重畳されており、運転者はこの駐車枠cを、タッチパネル23等を介して移動させることにより微調整が可能である。微調整の後、運転者は、タッチパネル23等を操作して、駐車目標位置(本例では、駐車枠cの位置)を確定させる。駐車目標位置P4を設定するためのこの運転操作を伴う工程は本発明の複数工程の1つであり、ここでは第1工程と称する。
〔第2工程〕
駐車目標位置が確定されると、運転者は、スピーカ22から発せられる音声案内に従って、シフトレバー25をリバースに変更する。この工程は本発明の複数工程の1つであり、ここでは第1工程に続いて実行される第2工程と称する。
この時点において、好適には操舵角は中立位置である。図17(b)に示す工程図には、前輪28fの方向が高い視認性をもって明示される。また、駐車目標位置が定まり、シフトレバー25がリバースに変更されたことにより、車両30は、駐車のための後退が可能な状態となる。工程図には、車両後方線e及び後方予測線gがモニタ20の表示部21に重畳表示されることが明示される。
〔第3工程〕
運転者が、スピーカ22から発せられる音声案内に従って、ブレーキペダル27を緩めると、車両30は、操舵を伴って後退を始める。この工程は本発明の複数工程の1つであり、ここでは第2工程に続いて実行される第3工程と称する。
第1実施形態のように、運転者によりステアリング24が操作される場合には、後退開始位置P2において、停止状態で所定の操舵角に操作されていることが好ましい。後退しながら適切に操舵するには運転者に高い技量が要求されるためである。一方、本第2実施形態のように、ECU10の制御により自動操舵される場合には、駐車経路BKに沿った適切な操舵角でパワーステアリングユニット33を駆動可能である。従って、後退開始位置P2において、所定の操舵角となっている必要はない。
しかし、工程図においては、旋回を伴って後退することが運転者に明示される方が好ましい。従って、図17(c)に示すように、第3工程を示す工程図では、後退開始の時点から既に大きく舵を切られた状態の前輪28fの方向が高い視認性をもって明示される。
〔第4工程〕
車両30が、旋回を完了し、それ以降は直進により後退するポイントP3に達すると、操舵角は再び中立位置へと戻される。この工程は、複数工程の1つであり、ここでは第3工程に続いて実行される第4工程と称する。
第3工程と同様に、運転者によりステアリング24が操作される場合には、ポイントP2からポイントP3まで所定の操舵角を保持して後退することが好ましい。この場合には、車両30がポイントP3に達した時点において、前輪28fは舵を切られた状態である。一方、本第2実施形態のように、ECU10の制御により自動操舵される場合には、駐車経路BKに沿った適切な操舵角によりパワーステアリングユニット33が駆動可能である。従って、ポイントP3において、所定の操舵角が維持されている必要はない。
しかし、工程図においては、旋回を伴う後退が完了し、以降は直進により後退することが明示される方が好ましい。従って、図17(d)に示すように、第4工程を示す工程図では、前輪28fが中立状態から大きく舵を切られたままの状態として、車両30の状態が明示される。
〔第5工程〕
車両30は、ポイントP3から駐車目標位置P4まで、直進後退によって誘導される。この工程は、複数工程の1つであり、ここでは第4工程に続いて実行される第5工程と称する。図17(e)に示すように、第5工程を示す工程図では、前輪28fが中立状態となっていることが明示される。これにより、乗員は、車庫入れ駐車の最終アプローチに入って、直進で後進することが容易に理解できる。駐車目標位置P4に達すると、ECU10によりブレーキ装置31が制御され、車両30が停止され、駐車目標位置P4に達したことがスピーカ22を介して音声案内される。駐車目標位置P4に達する前に車両30を停止させたければ、運転者がブレーキペダル27を操作して車両30を停止させる。
以上の工程により、車両30は駐車スペースEに車庫入れ駐車される。第2実施形態においては、後退開始位置P2から駐車目標位置P4まで、自動操舵により車両30が誘導される。その際、複数の運転操作がECU10により制御されているが、運転者にとっては車両30の挙動が不明な場合がある。そこで、本実施形態では、図22〜図26を用いて後述するように、各工程における運転操作並びにモニタ20に表示される指標の参照方法を工程図としてモニタ20に表示する。その結果、運転者が運転支援に伴う車両30の挙動を容易に理解でき、運転者の不安が解消されて駐車支援の効果が最大限に発揮される。
以下、図15〜図17に加えて、図18〜図25も利用して、自動操舵を伴う運転支援の詳細について、モニタ20の表示形態と共に説明する。図18は、本発明の駐車支援装置の動作を示すフローチャートである、図19は、カメラ12により撮影された画像から区画線Wを検出する方法を示す説明図である。図20は、有効に成立する駐車経路KBが演算された場合の例を示す説明図である。
乗員は、駐車スペースEの状態を確認できる任意の位置(図15の位置P1)で車両30を一時停止させる。運転席から真横に駐車スペースEの中央が確認できる位置が好適である。そして、運転者は、車室内のスイッチ(不図示)やタッチパネル23などを操作して、ECU10に駐車支援機能の実行を開始させる。ここで、駐車支援機能の開始指示には、車庫入れ駐車か、縦列駐車か、また左右どちらの方向への駐車か、など駐車形態を含んだ指示も含まれる。
乗員は、駐車支援機能の実行を開始させると、ブレーキペダル27を緩めて、駐車スペースEがモニタ20に表示されるように車両30を、旋回を伴って前進させる。この前進は、運転者による手動操舵により実施されてもよいし、ECU10による自動操作により実施されてもよい。画像取得部2は、車両30に搭載されたカメラ12によって車両30の周辺の情景が撮影された画像データを取得する(図18#1)。得られた画像データは、ECU10のフレームメモリ(不図示)に蓄積され、適宜読み出されて使用される。
画像データの受け取りと共に、前回受け取った画像データにおける車両30の位置から現在の位置までの車両の移動量が演算部1Aにおいて演算される(図18#2)。
演算部1Aは、本実施形態では区画線Wを駐車基準として検出する(図18#3)。図19に示すように、車両30が図15に示す車両位置P1から右方向への操舵による円弧状の移動軌跡を伴って前進すると、次第に駐車スペースEがカメラ12の視野に含まれるようになる。上述したように、カメラ12は広角レンズを備えたカメラであり、撮影される画像は周辺が歪んでいる。また、画像受け取り部1が取得した画像データは3次元空間が撮影されたものである。そこで、駐車基準検出部2は、まず歪を補正する変換処理や2次元座標への変換処理を実施する。
一般的に、このように区画が区切られた駐車場では、路面はアスファルト舗装などによる濃い色、区画線Wは白色や黄色などの淡い色である。そこで、演算部1Aは、画像データにおける輝度の差を利用して区画線Wを検出する。具体的には、公知のガウシアンフィルタ(Gaussian filter)などが組み込まれた、例えば3×3の空間フィルタを走査させて、当該画像データを微分する。この微分により、例えば輝度が暗から明へと変化するプラスエッジ、明から暗へと変化するマイナスエッジが抽出される。
尚、この時、画像データの全域に亘って微分処理を実行する必要はなく、所定の注目領域ROI(region of interest)に対してのみ微分処理が実行されれば充分である。駐車スペースEの大きさはある程度の範囲内で定められている。また、車両30を一時停車させる位置P1も、個人差はあるもののほぼ一定の範囲内に収まる。また、一時停止した位置P1から後退開始位置P2への経路もある程度の範囲内に収まる。従って、図19に示すように、区画線Wが存在すると推定される範囲を注目領域ROIとして、微分処理を初めとする認識処理が実行される。
また、上述したように、駐車スペースEは、車両30が図15に示す車両位置P1から右方向への操舵による円弧状の移動軌跡を伴って前進した場合に、次第にカメラ12の視野に含まれるようになる。従って、車両30が前進を開始してからしばらくの間は、駐車スペースE(及び区画線W)はカメラ12の視野には入っていない。このような状態で、区画線Wの認識処理を行っても無駄であるので、車両30が一定距離前進した後、あるいは一定角度円弧状に移動した後に、認識処理を開始するようにすると好適である。
尚、本実施形態では、駐車基準として直線状の区画線Wを例示したが、これに限ることなく、U字型の区画線や駐車スペースEを示すポールや壁面などを、駐車基準としてもよい。
演算部1Aは、次に、所定のしきい値を設けて微分結果を2値化する2値化処理を実行する。上述したように、路面はアスファルト舗装などによる濃い色、区画線Wは白色や黄色などの淡い色であり、区画線Wのエッジにおける輝度勾配は大きい。従って、微分結果の絶対値も大きいから2値化処理を施すことによって区画線W以外のノイズ成分の微分結果が排除される。2値化された点(画素)からは区画線Wのエッジを構成する候補点が抽出される。一般に区画線Wは直線であるから、候補点はある程度の規則性をもって存在する。そこで、この規則性に基づいて、候補点に対して、直線当てはめ処理が実行される。直線当てはめ処理には、例えば公知のハフ(Hough)変換や、RANSAC(RANdom SAmple Consensus)を用いることができる。
このようにして検出された区画線W1及びW2の端点を探索し、それら端点同士を結ぶことで、駐車スペースEを検出することができる。一般的に駐車スペースEは長方形であるから、この際に直角度を検証して駐車スペースEの検出精度を高めるようにしてもよい。以上の処理を通じて、区画線Wの位置、長さ、端点、駐車区画Eの位置、大きさなどの駐車区画パラメータが取得される。
駐車区画パラメータが取得されると、演算部1Aは、駐車スペースEに対して駐車目標を設定する(図18#4)。具体的には、図20に示すように、駐車スペースE内の車両30が収まる領域に駐車目標エリア(符号c)が設定される。そして、当該駐車目標エリアc内における車両30の基準点Qに基づいて、駐車の基準となる駐車目標位置P4が設定される。この駐車目標エリアcは、モニタ20に駐車枠として重畳表示される指標cと一致するものである。
演算部1Aは、図18の処理#2において演算された移動量と、駐車目標位置P4とに基づいて後退開始位置P2からの後進による駐車経路KBを演算する(図18#5)。つまり、車両30の現在の位置を仮の後退開始位置P2として、駐車目標位置P4までの仮の駐車経路KBを演算する。この駐車経路KBは所定の操舵量で車両30を操舵した場合の経路として演算される。
演算部1Aは、仮の駐車経路KBが駐車目標位置P4に達するか否か、即ち仮の駐車経路KBが有効に成立するか否かを判定する(図18#6)。駐車経路KBが成立しない場合には、再び処理#1に戻り、一連の処理を実行して演算された駐車経路KBが有効に成立するか否かを判定する。このようにして、逐次繰り返して演算が実施され、駐車経路KBの成立が判定される。図20は、繰り返し演算の結果、駐車目標位置P4までの駐車経路KBが成立した場合の例を示している。
駐車経路KBが成立すると、スピーカ22を介して駐車経路KBが成立したことが音声案内される(図18#7)。スピーカ22は、例えば、「駐車経路が成立しました。停車してシフトレバーをリバースに変更してください。」というメッセージを発する。
ここで、運転者がシフトレバー25をリバースに変更すると、シフト位置センサ15がシフト位置を検出し、次の工程へ移行する(図18#8)。シフト位置が変更されなければ、再び処理#1に戻り、新たに取得した画像データを用いて#1〜#8の処理を繰り返す。最新の駐車目標P4及び駐車経路KBに基づいて、誘導を実施するためのである。但し、ブレーキセンサ17や回転センサ18の検出結果から車両30の停車が検出できていれば再計算の必要はないので、シフト位置が変更されるまで待機してもよい。
シフトレバー25がリバースに変更されると、表示制御部3は、例えば図21に示すように、カメラ12の周辺画像に駐車枠cを示す表示(例えば黄色)を重畳させてモニタ20に表示する(#9)。この駐車枠cの表示を利用して駐車目標位置P4を調整可能に構成することができる。
図21に示すように、モニタ21の画面上には調整用の矢印Hが重畳表示される。この矢印Hはタッチパネル23と連動し、運転者による操作指示に基づいて駐車枠cの位置を調整可能である。区画線Wの認識精度が充分ではなかった場合の他、乗員の利便性を向上するためにもこの調整機能は好適である。例えば、運転席側又は助手席側を広く空けたい、荷物の積み下ろしのため後部を広く空けたいなどの要望に応じて、駐車枠cの位置を調整することができる。
尚、図21をはじめとして、図21〜図25に示すモニタ20の表示画面例においては、第1実施携帯と同様に周辺画像を鏡像化している。画像処理の原理を説明する図19及び図20に示した周辺画像は、カメラ12の撮影方向に準じた画像であり、例えば運転者が後方を振り向いて見た画像とほぼ等価である。一方、図1に示すように、モニタ20は運転者の前方に配置されているため、運転者はモニタ20に表示される後方画像を、前方を向いて見ることとなる。従って、運転者の左右方向の向きにおいて、実際の駐車スペースEの方向と、表示画面上における駐車スペースEの方向とが一致するように、周辺画像は鏡像化して表示される。
駐車枠cを設定可能な上記工程は、図17(a)に示す第1工程に相当する。図21に示すように、モニタ20には、カメラ12の周辺画像及び駐車目標を示す指標cに加え、車庫入れ駐車の際の駐車支援の手順を示す工程図が表示される。モニタ20の表示部21は、周辺画像の表示枠21mと、工程図の表示枠21sとに分割される。表示枠21sは、図17(a)〜(e)に示す5つの工程に対応して、さらに5つの表示枠21v、21w、21x、21y、21zに分割される。それぞれの表示枠には、図17(a)〜(e)に示す各工程が表示され、運転者は駐車支援の全工程を一覧することができる。
第1工程の実施中には、図21に示すように、表示枠21vに表示された第1工程の工程図がハイライト表示される。従って、運転者は現在の工程が、駐車目標を決定する工程であることを容易に理解することができる。
駐車枠c(駐車目標位置P4)の調整が可能な場合には、調整の指示があったか否かが判定され(#10)、指示があった場合には駐車経路KBの再計算や判定が実施される(#11)。演算部1Aは、駐車枠cの変更に応じて、駐車目標位置P4を変更し、変更された駐車目標位置P4までの駐車経路KBを演算する。そして、演算部1Aは、再計算された駐車経路KBが有効に成立するか否かを判定する。ここで、駐車経路KBが成立しない場合には、異なる表示、例えば赤の点滅等とすると共に、音声によっても報知すると好適である。尚、図18では簡略化のため、駐車枠cの表示の変更や、駐車経路KBの判定、判定結果の報知、などの処理については図示を省略して「駐車経路演算」のみを示している。
駐車枠c(駐車目標位置P4)の調整の指示がなかった場合(#10)や、調整後の駐車経路KBの成立が判定された場合(#11)、演算部1Aは、駐車枠(駐車目標位置P4)の確定入力を運転者に促すメッセージを出力する。また、表示制御部3は、図21に示すように、運転者に確定入力をさせるための確定ボタンを周辺画像に重畳させてモニタ20に出力する。演算部1Aはスピーカ22を介して、例えば、「画面に表示された駐車位置を確認し、確定ボタンを押してください。」とのメッセージを発する。確定ボタンへの指示入力は、タッチパネル23を介して演算部1Aへと伝達される。確定指示があったことが判定されると(#12)、以下に説明するように誘導部5Aによる誘導が開始される(#13)。
ここで、モニタ20の画面表示は、図22に示すように変更される。即ち、第1実施形態と同様に、周辺画像に後方予測線gと車両後方線eとが重畳表示される。尚、この時点において車両30は停止しており、ステアリング24は中立位置にあるので、後方予測線gと車両後方線eとは共に車両30の真後ろに伸び、一部が重なって表示される。駐車枠cが決定された直後のこの工程は、図17(b)に示して上述した第2工程に相当する。この時、図22に示すように、表示枠21wに表示された第2工程の工程図がハイライト表示される。従って、運転者は現在の状態が、駐車目標位置P4が決定され、後進誘導が開始される直前の状態であることを容易に理解することができる。
駐車目標位置P4が確定されると、ECU10は、スピーカ22を介して、「ブレーキペダルを緩めて車両をバックさせてください。」などとの音声案内を発して乗員に誘導開始を報知する。乗員がブレーキペダル27を緩めると車両30がクリープ現象により後進を開始する。ECU10は、算出された駐車経路KBに沿って車両30を後進させるために、移動量を演算し(#14)、それに応じた操舵量を演算する(#15)。そして、パワーステアリングユニット33のステアリングアクチュエータを制御する(#16)。
この工程は、図17(c)に示して上述した第3工程に相当する。車両30が、図15に示したポイントP3に達するまで、モニタ20には図23に示すような表示がなされる。後方予測線gは操舵角に応じて湾曲して描画される。また、表示枠21xに表示された第3工程の工程図がハイライト表示される。従って、運転者は現在の状態が、旋回を伴って後退中であることを容易に理解することができる。
ECU10は、ポイントP3で一旦停止することなく、駐車目標位置P4に到達するまで処理#14〜#16を繰り返すことで車両30を誘導することが可能である。但し、車両30がポイントP3の近傍に達すると、間もなく最終の直線アプローチに入ることを運転者に明示するために、ECU10は、モニタ20の表示を図24に示すように変更する。即ち、表示枠21yに表示された第4工程の工程図がハイライト表示される。従って、運転者は現在の状態が、旋回を伴う後進が終了し、間もなく最終の直線アプローチに移行する状態であることを容易に理解することができる。尚、ECU10は、ポイントP3において一旦停止、あるいは減速してもよく、この際に表示を変更し、表示枠21yをハイライト表示させてもよい。
誘導部5は、ポイントP3に達すると、駐車目標位置P4に向けて車両を直進により後退させる。これは、図17(e)に示して上述した第5工程に相当する。従って、図25に示すように、表示枠21zに表示された第5工程の工程図がハイライト表示される。誘導部5は、駐車目標位置P4に到達したことを判定すると(#17)、ブレーキ装置31のブレーキアクチュエータを制御して車両30を停車させ(#18)、駐車支援を完了する。
以上説明したように、駐車運転の一連の運転操作並びに車両30の挙動を示す工程図が、一覧可能に表示されるので運転者は運転操作の全体像を容易に理解することができる。また、複数表示される工程図のうち、実行中の運転操作を示す工程図が何れであるかも明示されているので、運転者は車両30の挙動を容易に理解することができる。従って、運転者は、自動操舵であっても車両の挙動に不安を覚えることなく、駐車支援の効果を享受することができる。尚、第1実施形態と同様に各工程をどのように分割し、どのタイミングでハイライト表示するかについては、当業者であれば、適宜変更することが可能である。従って、上述した工程の分割や、ハイライト表示のタイミングについては、一例であって本発明を限定するものではない。
尚、簡略化のために図示並びに説明を省略したが、第1実施形態と同様に表示区画21mには、「車両周辺を直接確認してください。」等のメッセージが表示される。つまり、自動操舵により車両30が誘導されていても、運転者は目視確認が不可欠であり、運転者がブレーキペダル27やステアリング24を操作することが可能となっている。これらの操作によって自動運転操作を伴う駐車支援が途中終了されたとしても、安全を優先する運転者の運転操作を損なわないように構成されている。
〔他の実施形態〕
〔1〕
第1実施形態及び第2実施形態を参照すれば、運転者による手動運転操作による車庫入れ駐車の場合や、自動運転操作を伴う縦列駐車の場合にも、本発明が適用可能であることが容易に理解できる。従って、車両の運転操作を実施する主体(運転者又は駐車支援装置)や、駐車形態(車庫入れ駐車又は縦列駐車)の組み合わせは、上記第1及び第2実施形態に限定されるものではない。
〔2〕
上記第1及び第2実施形態においては、駐車支援の開始から駐車支援の完了までに実施される複数工程における車両30の挙動を示す工程図を一覧表示させる場合について例示した。しかし、上記実施形態のように全ての工程図を一覧可能に表示することなく、一部の工程の工程図を表示するように構成してもよい。例えば、複数工程の内、運転者により実行中の現工程における車両30の挙動を示す工程図と、当該現工程の次の次工程における車両30の挙動を説明する工程図との少なくとも2つの工程図が、当該現工程が明示された状態で表示されてもよい。運転者は、車両30を駐車させる一連の運転操作のうち、現在行っている操作がどのような意味を持つものであるか理解できず、運転操作に不安を覚える場合がある。しかし、少なくとも現工程と次工程との工程図が示されると、現在実行中の運転操作が次の運転操作につながるものであることを運転者が容易に理解できる。
〔3〕
また、一部の工程の工程図を表示する場合には、現工程と次工程とに限定されることなく、現工程及び次工程以降の全ての工程を表示してもよい。また、現工程の前の前工程と、現工程と、次工程との3つの工程を表示してもよい。現工程を含む流れが、運転者に提供されるので、一連の運転操作の中での現工程の運転操作の意味を運転者は容易に理解することができる。
〔4〕
上記第1及び第2実施形態においては、周辺画像と工程図とが区画分けされてモニタ20に表示される場合を例示した。しかし、これに限定されることなく、周辺画像に工程図が重畳されてもよい。
〔5〕
運転支援装置に案内される運転操作に不慣れな運転者の場合には、周辺画像及び指標に加えて、工程図が表示されると運転支援を受ける利便性が向上する。しかし、運転支援装置を使い慣れた運転者の中には工程図が不要と考える人がいる可能性がある。そこで、タッチパネル23の操作などにより工程図の表示を中止することができると好適である。
〔6〕
工程図の表示を中止していた場合であっても、操作に不安を覚えたり、操作を忘れてしまったりしている場合がある。そこで、運転支援を起動中に例えば30秒程度の所定時間に亘って運転操作が行われない場合には、工程図の表示が中止されていても自動的に再表示すると好適である。
〔7〕
上記第1及び第2実施形態においては、駐車支援開始後には運転操作のやり直しが発生せず、第1工程から第6工程(第5工程)へと順に移行する場合を例示した。しかし、運転操作のやり直しが可能な駐車支援装置においては、前の工程へ戻った際には前の工程を現工程として明示させると好適である。
以上、説明したように、本発明によって、運転者が運転操作に不安を覚えることなく、高い利便性を有して駐車支援を受けることができる駐車支援装置を提供することができる。