(第1実施形態)
以下、第1実施形態における車両用空調装置を図1乃至図14に基づいて説明する。本実施形態では、湿度検出手段を用いた車両用空調装置に関するものである。図1は、車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。空調手段である空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)内側部等に配設される。この空調ユニット30は、図1に示すように、ケース31を有し、このケース31内に車室内に向かって空気を送風する空気通路が構成されている。
このケース31の空気通路の最上流部には、内外気切替箱32が配置されており、内気導入口33および外気導入口34が内外気切替手段である内外気切替ドア35によって切替開閉される。この内外気切替ドア35は、サーボモータ36によって駆動される。
内外気切替箱32の下流側には、車室内に向かって空気を送風する電動式の送風機37が配置されている。この送風機37は、多翼遠心式の送風ファン37aを送風モータ37bによって駆動するようになっている。送風機37の下流側には、送風空気を冷却する冷房用熱交換器である蒸発器38が配置されている。
蒸発器38は、冷凍サイクル装置39を構成する要素の一つであり、低温低圧の冷媒が送風空気から吸熱して蒸発することにより送風空気を冷却する。なお、冷凍サイクル装置39は周知のものであり、圧縮機40の吐出側から、凝縮器41、受液器42および減圧手段を成す膨張弁43を介して、蒸発器38に冷媒が循環するように構成されている。
凝縮器41には、電動式の冷却ファン41aによって車外空気(冷却空気)が送風される。この冷却ファン41aは、モータ41bによって駆動される。また、冷凍サイクル装置39において、圧縮機40は、電磁クラッチ40aを介して図示しない車両走行用エンジンによって駆動される。従って、電磁クラッチ40aの通電の断続により、圧縮機40の作動を断続制御できる。
一方、空調ユニット30において、蒸発器38の下流側には、ケース31内を流れる空気を加熱するヒータコア44が配置されている。このヒータコア44は、車両走行用エンジンの温水(エンジン冷却水)を熱源として、蒸発器38通過後の空気(冷風)を加熱する暖房用熱交換器である。ヒータコア44の側方にはバイパス通路45が形成され、このバイパス通路45をヒータコア44のバイパス空気が流れる。
また、蒸発器38とヒータコア44との間には、温度調整手段を成すエアミックスドア46が回転自在に配置されている。このエアミックスドア46は、サーボモータ47によって駆動され、その回転位置(開度)が連続的に調整可能となっている。このエアミックスドア46の開度によって、ヒータコア44を通る空気量(温風量)と、バイパス通路45を通過してヒータコア44をバイパスする空気量(冷風量)との割合を調節し、これにより、車室内に吹き出す空気の温度が調整されるようになっている。
ケース31の空気通路の最下流部には、車両の前面窓ガラス12に向けて空調風を吹き出すためのデフロスタ吹出口48、乗員の頭胸部に向けて空調風を吹き出すためのフェイス吹出口49、および乗員の足元部に向けて空調風を吹き出すためのフット吹出口50の3種類の吹出口が設けられている。
そして、これら吹出口48〜50の上流部には、デフロスタドア51、フェイスドア52およびフットドア53が回転自在に配置されている。これらのドア51〜53は吹出モードドアであり、図示しないリンク機構を介して共通のサーボモータ54によって開閉操作される。
空調制御装置26は、CPU、ROMおよびRAMなどを含む周知のマイクロコンピュータと、その周辺回路とから構成されている。この空調制御装置26は、そのROM内に空調制御のための制御プログラムを記憶しており、その制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行う。
そして、空調制御装置26には、後述する湿度検出装置10の検出値が入力される他に、周知の空調用センサ群61〜65からの検出信号、および空調操作パネル70からの各種操作信号が入力される。
空調用センサ群として具体的には、外気温(車室外温度)Tamを検出する外気温センサ61、内気温(車室内温度)Trを検出する内気温センサ62、車室内に入射する日射量Tsを検出する日射量センサ63、蒸発器38の空気吹出部に配置されて蒸発器吹出空気温度Teを検出する蒸発器温度センサ64、ヒータコア44に流入する温水(エンジン冷却水)温度Twを検出する水温センサ65などが設けられている。
また、空調操作パネル70には各種空調操作部材として、車室内温度を設定する温度設定手段を成す温度設定スイッチ71、吹出モードドア51〜53により切り替わる吹出モードをマニュアル設定する吹出モードスイッチ72、内外気切替ドア35による内外気吸込モードをマニュアル設定する内外気切替スイッチ73、圧縮機40の作動指令信号(電磁クラッチ40aのON信号)を出すエアコンスイッチ74、送風機37の風量をマニュアル設定する送風切替スイッチ75、空調自動制御状態の指令信号を出すオートスイッチ76などが設けられている。
空調制御装置26の出力側には、圧縮機40の電磁クラッチ40a、各機器の電気駆動手段を成すサーボモータ36、47、54、送風機37の送風モータ37b、凝縮器冷却ファン41aのモータ41bなどが接続され、これらの機器の作動が空調制御装置26の出力信号によって制御される。
次に、湿度検出装置10の構成について、図2乃至図4を用いて説明する。図2は、湿度検出装置10の概要構成を示す縦断面図である。図3は、湿度検出装置10の概要構成を示す分解斜視図である。図4は、湿度検出装置10の電気的ブロック図である。
本実施形態の湿度検出装置10は、車両の前面側窓ガラス12の内側、例えば、図示しないルームミラー上側部近傍に配設されている。湿度検出装置10は、図2及び図3に示すように、樹脂等によって成形され、上ケース11aと下ケース11bとに分割構成されたケース11を有している。このケース11は、高さの低い薄型の略直方体状であり、上ケース11aの側壁部には、設置環境の車室内空気が内部に流通するように、複数の通風スリット11cが設けられている(図3参照)。
窓ガラス12は、図2に示す上面側が車室内に面する内面12aであり、下面側が車室外に面する外面12bである。湿度検出装置10は、窓ガラス12の内面12a側に、接着シート13にて貼り付け固定されている。この接着シート13は、厚さ0.5mm程度の両面接着シートで、下ケース11bと窓ガラス12とを接着する。また、接着シート13の一端側には、後述するガラス側熱伝導部材15aが露出するように、窓部13aが開けられている(図3参照)。
ケース11の内部空間、即ち上ケース11aと下ケース11bとの間には、回路基板14が窓ガラス12の面と平行に配置されている。より具体的には、回路基板14は、3本の螺子24にて下ケース11bに締結固定されている。回路基板14は、絶縁基板上に導体回路部を構成するプリント基板と称される部材であり、以下に述べるセンサ類、素子および回路部が実装されている。
車室内の湿度を検出するセンサとして、本実施形態では、湿度センサ17、空気温度センサ18及びガラス温度センサ23から検出された検出信号に基づいて湿度が演算される。従って、湿度センサ17、空気温度センサ18及びガラス温度センサ23を湿度検出手段27と称する。
回路基板14のうち、下ケース11b側の表面(図2の下側面)には、ガラス温度センサ23が実装されている。また、上ケース11a側の表面(図2の上側面)には、湿度センサ17、空気温度センサ18、演算素子(IC)20、コネクタ22および図示しない増幅器や通信回路などが実装されている。
湿度センサ17は、回路基板14の周縁に近い角部に配置されており、この湿度センサ17に対して対角側の周縁に近い部分に、演算素子20が配置されている。これは、演算素子20が作動によって熱を発するが、回路基板14内で極力両者を遠ざけた配置とすることにより、演算素子20の発熱が湿度センサ17で検出する湿度環境に影響を及ぼすのを防ぐためである。
湿度センサ17は、通気が良くなるよう、回路基板14に開けられたスルーホール14bの上に橋渡しするように配置されているとともに、湿度センサ17まわりの回路基板14には、基板から熱が伝わるのを防ぐためのスリット14aが切られている。
そして、この湿度センサ17の上下面は、図示しないゴアテックス製のフィルタで覆って保護している。なお、本例では、湿度センサ17として、感湿膜の誘電率が空気の相対湿度に応じて変化し、それにより、静電容量が空気の相対湿度に応じて変化する容量変化型のものを用いている。
空気温度センサ18とガラス温度センサ23は、極力湿度センサ17に近づけるようにして、回路基板14の中央部に配置されているとともに、回路基板14の表裏にて、略同軸上に配置されている。これは、窓ガラス12内面近傍の代表的な空気の温湿度と、窓ガラス内面の代表的な表面温度とを、極力同じ環境条件の下で検出できるようにするためである。なお、両温度センサ18、23には、温度に応じて抵抗値が変化するサーミスタを用いている。
また、空気温度センサ18およびガラス温度センサ23と演算素子20との間の回路基板14には、基板を通した伝熱を防ぐためのスリット14cが切られている。このスリット14cは、温度センサ18、23を取り囲むように配置しても良い。コネクタ22は、2本の螺子25にて回路基板14に締結固定されている。更にその端子が回路基板14の導体回路部と半田接合されており、回路基板14の電気回路部(後述の増幅器19、演算回路20、および通信回路21)と、外部回路(図1の空調制御装置26、車両電源など)との間を電気的に接続している。
下ケース11bのガラス温度センサ23に対応する部分には、薄い熱伝導率の高い(例えば、銅)金属部材16がインサート成形により一体化されている。また、その金属部材16の両面側に熱伝導良好な(熱伝導率:3〜10W/m・K)熱伝導部材15が貼着されている。この熱伝導部材15は、熱伝導シート、熱伝導ゲル、熱伝導グリスなどの部材である。
より具体的には、金属部材16のガラス側面には、厚さ0.6mmのガラス側熱伝導部材15aが、そして、金属部材16のセンサ側面には、厚さ0.8mmのセンサ側熱伝導部材15bが設けられている。そして、下ケース11bに回路基板14を締結固定すると、ガラス温度センサ23が、センサ側熱伝導部材15bに若干めり込む程度に押し当たる構造となっている。
また、ガラス側熱伝導部材15aは、周りの接着シート13よりも僅かに厚くなっているため、接着シート13の窓部13aから僅かに浮き出るようになっており、湿度検出装置10を窓ガラス内面12aに貼り付けた際、ガラス側熱伝導部材15aが確実にガラス面に押し付けられるようになっている。
これにより、窓ガラス12の温度は、ガラス側熱伝導部材15a→金属部材16→センサ側熱伝導部材15b→ガラス温度センサ23と伝熱して検出されるようになっている。なお、上ケース11aは、回路基板14を押えながら下ケース11bと嵌合され、上ケース11aの側壁部下端に設けられた係止爪11dにて係止固定される。
次に、図4により湿度検出装置10の電気的構成を説明する。上記各センサ17、18、23の出力信号は、図4に示すように、それぞれの増幅器19a〜19c(19)で増幅されて、各演算回路20a〜20c(20)に入力される。ここで、相対湿度演算回路20aでは、湿度センサ17(具体的には、増幅器19aの出力値)の出力値Vに基づいて、窓ガラス12付近の車室内空気の相対湿度RHが演算されるようになっている。
また、空気温度演算回路20bでは、空気温度センサ18(具体的には、増幅器19bの出力値)の出力値に基づいて、窓ガラス12付近の車室内空気温度が演算されるようになっている。さらに、ガラス温度演算回路20cでは、ガラス温度センサ23(具体的には、増幅器19cの出力値)の出力値に基づいて、窓ガラス温度(ガラス室内側表面温度)が演算されるようになっている。
そして、相対湿度演算回路20a、空気温度演算回路20b、およびガラス温度演算回路20cのそれぞれの演算値に基づいて、ガラス表面相対湿度RHWがガラス表面相対湿度演算回路20dにより演算される。即ち、湿り空気線図を用いることにより、相対湿度RH、空気温度、窓ガラス温度からガラス表面相対湿度RHWが演算できる。
ここで、ガラス表面相対湿度RHWは、窓ガラス12の曇り易さ度合いを表す演算値であり、この演算値が第1信号20eとして、通信回路21を通して、空調制御装置26に出力されるようになっている。上述したように、湿度検出手段27により検出された出力値に応じて、演算回路20a〜20d(20)によって、窓ガラス12の曇り易さ度合いを検出する手段を請求項では、第1窓曇り検出手段20として称している。つまり、演算されたガラス表面相対湿度RHWが、窓ガラス12の曇り易さ度合いを検出することができるため、これら演算回路20a〜20dを第1窓曇り検出手段20と請求項で称している。
また、本実施形態では、上記第1窓曇り検出手段20の他に、窓ガラス12の曇り易さ度合いを検出する手段として、空調操作パネル70内の吹出モードスイッチ72を第2窓曇り検出手段72としている。この吹出モードスイッチ72は、吹出モードをマニアル設定するためのスイッチであり、例えば、窓ガラス12に曇りが発生したときに、この吹出モードスイッチ72を操作することにより、窓ガラスの曇りを取り除くことができる。
吹出モードスイッチ72は、各種吹出モードの中からデフロスタ吹出モードを選択してマニアルにて設定できるようになっている。デフロスタ吹出モードは、デフロスタドア51を操作させて、デフロスタ吹出口48を開口する吹出モードである。つまり、窓ガラス12に曇りが発生したときには、使用者の操作により、各種吹出モードの中から窓ガラスの曇りを取り除くためにデフロスタ吹出モードを設定できるようになっている。
従って、吹出モードスイッチ72を操作してデフロスタ吹出モードを設定すると、空調操作パネル70の各種操作信号の中から、窓曇りが発生したと表す第2出力信号72aが空調制御装置26に出力される(図1参照)。
次に、上記構成における本実施形態の作動を説明する。最初に、空調ユニット30の作動の概要を説明する。送風機37を作動させることにより、内気導入口33または外気導入口34より導入された空気が、ケース31内を車室内に向かって送風される。また、電磁クラッチ40aに通電して電磁クラッチ40aを接続状態とし、圧縮機40を車両走行用エンジンにて駆動することにより、冷凍サイクル装置39内を冷媒が循環する。
送風機37の送風空気は、まず蒸発器38を通過して冷却、除湿され、この冷風は次にエアミックスドア46の回動位置(開度)に応じてヒータコア44を通過して加熱され、温風になる流れとバイパス通路45を通過する冷風の流れとに分けられる。従って、エアミックスドア46の開度によって、ヒータコア44を通る空気量(温風量)と、バイパス通路45を通過する空気量(冷風量)との割合を調整することにより、車室内に吹き出す空気の温度が調整される。
そして、この温度調整された空調風が、ケース31の空気通路の最下流部に位置するデフロスタ吹出口48、フェイス吹出口49およびフット吹出口50のうち、いずれか1つまたは複数の吹出口から車室内へ吹き出されて、車室内の空調および車両の前面窓ガラス12の曇り止めを行う。 次に、空調制御装置26には、湿度検出手段27の故障を判定するための故障判定手段である故障判定制御プログラム26aが設けられている。図5は、故障判定制御プログラム26aの制御処理を示すフローチャートである。故障判定制御プログラム26aには、湿度検出手段27の故障を判別するための制御処理が設けられるとともに、この湿度検出手段27の故障が起きた場合には、それに応じた補正などの処置を行って適切な空調(防曇)制御を行うように構成されている。
ところで、湿度センサ17などのセンサ類の故障は、電気的な断線、短絡以外にも、湿度センサ17の出力値が一定の値で出力される場合や、湿度センサ17の出力値が実際の湿度に対し、プラス側またはマイナス側にシフトされる場合などがある。図6は、湿度検出手段27の故障モードの形態を説明するための説明図である。湿度検出手段27の出力値から演算されたガラス表面相対湿度RHWと時間との関係は、図6に示すような特性となる。
つまり、湿度検出手段27の故障が発生する前は、図6に示すように、目標ガラス表面相対湿度TRHWを目標に、車室内の湿度が制御されることにより、実線で示すような出力値となっている。このとき、湿度検出手段27は、所定の範囲内のガラス表面相対湿度RHWを出力値として出力している。
例えば、窓曇りの恐れが全く無い状態(RHW=0)における出力電圧が1V、窓曇りが最大限発生(RHW=100)するときの出力電圧が4V、窓曇りが中間の状態における出力電圧が窓曇りの傾向に比例する電圧値を出力する湿度検出手段27では、湿度検出手段27は、出力電圧が1V〜4Vの範囲内で出力している。このような場合は、湿度検出手段27が正常状態といえる。
ところが、故障が発生すると、例えば出力電圧が、0Vまたは5Vなどの所定範囲外の値となる。このような場合は、湿度検出手段27の異常、即ち故障と判定できる。この場合には、故障モードI及びIIの故障が考えられる。故障モードIは、5Vの出力電圧、即ちプラス側にシフトした出力電圧が連続して出力される故障である。故障モードIIは、0Vの出力電圧が一定の値として連続して出力される故障である。これらの故障モードI及びIIは、主に湿度検出手段27内の断線もしくは短絡により引き起こされる。
次に、湿度検出手段27の出力電圧が1V〜4Vの所定の範囲内で出力されていても、次のような場合には、湿度検出手段27の異常、即ち故障と判定できる。この場合には、故障モードIII及びIVの故障が考えられる。故障モードIIIは、湿度検出手段27が一定の値(例えば、2V)を連続して出力する故障である。通常、湿度検出手段27が正常に動作されておれば、出力値は常に微変している。従って、出力電圧が連続して一定の値であれば、故障と判定できる。この故障モードIIIは、湿度検出手段27内の一部が断線および/または短絡により引き起こされる。
また、故障モードIVは、湿度検出手段27が実際のガラス表面相対湿度RHWより低い側にシフトしたガラス表面相対湿度RHWを連続して出力する故障である。この故障モードIVの場合は、ガラス表面相対湿度RHWが実際の湿度、即ち曇り易さ度合いよりも低い値を示している。このような故障は、窓曇りが発生しているのに、窓ガラスに曇りが発生していないと判断されてしまうという問題がある。更に、この場合には、窓曇りに対し、余裕があると判定し、内気比率を上昇させようと制御し、結果いずれ窓曇りが発生する問題がある。
この故障モードIVは、湿度検出手段27の耐久変動による劣化等により引き起こされる。なお、逆に、実際のガラス表面相対湿度RHWより高い側にシフトしたガラス表面相対湿度RHWを連続して出力するという故障もある。このような故障の場合は、窓曇りが発生していないのに、窓ガラスに曇りが発生していると判断される。この場合には、窓曇りに対し、余裕がないと判定し、内気比率を下降させようと制御して、窓曇りを取り除く制御が行われる。そのため、窓曇りが発生する問題を回避できるが、省動力による防曇制御が実現できない。
そこで、本実施形態の故障判定制御プログラム26aでは、これらの故障モードI乃至IVを判別するように構成されている。以下、図5により説明する。まず、本実施形態では、原則として、圧縮機40が停止しているときに、故障判定を行うことを前提としている。従って、圧縮機40が停止状態にあるとき、制御処理を開始する(ステップS10)。そして、演算回路20a〜20dで演算されたガラス表面相対湿度RHWを読み込む(ステップS20)。そして、ステップS30にて、読み込まれたガラス表面相対湿度RHWが所定の範囲(図6で示した所定範囲)内に収まっているか否かを判定する。
湿度検出手段27が、正常であれば、所定の範囲内の出力値(例えば、1V〜4V)が出力されるように構成されている。ここで、ガラス表面相対湿度RHWが所定の範囲外の値であれば、湿度検出手段27が異常、即ち故障であると判定して、ステップS100に移行する。なお、この異常は、上述した故障モードIまたはIIに該当する。ここで、ガラス表面相対湿度RHWが所定の範囲内の値であれば、ステップS40に移行する。
そして、ステップS40は、過去のガラス表面相対湿度RHWのデータと、今回の所定の範囲内に収まったガラス表面相対湿度RHWとを比較する判定手段である。例えば、過去10回のガラス表面相対湿度RHWのデータと今回のガラス表面相対湿度RHWのデータとを比較している。つまり、湿度検出手段27が正常であれば、出力は常に連続的に微変しており、常に一定の値が出力されることは考えられない。従って、一定の値が連続的(例えば、10回以上)に出力されるときは、湿度検出手段27の異常、即ち故障と判定できる。
このように、一定の値が連続的に出力されるガラス表面相対湿度RHWのデータであれば、湿度検出手段27が異常であると判定して、ステップS100に移行する。なお、この異常は、上述した故障モードIIIに該当する。ここで、ガラス表面相対湿度RHWのデータが過去のデータよりも少しでも変化があれば、湿度検出手段27が正常であると判定して、ステップS50に移行する。そして、ステップS50にて、ガラス表面相対湿度RHWのデータに基づいて、車室内の湿度を調節する防曇制御を実行する。
この防曇制御を、図7に示す湿度制御プログラムのフローチャートに基づいて説明する。図7は、図5に示すステップS50における防曇制御の制御処理を示すフローチャートである。ステップS51にて、内外気吸込みモードが空調操作パネル70の内外気切替スイッチ73により、内気モードにマニュアル設定されていないか否かを判定する。その判定がN0のときは、ステップS52に移行し、YESのときはステップS56に移行する。
次に、ステップS52にて、内外気制御指令値Sを算出する。内外気制御指令値Sは、図8に示すように、車室内に内気を導入する比率を決めるための数値であり、図8の例では、S=0のとき内気比率=0(すなわち、外気:100%の外気モード)とし、S=7のとき内気比率100%(すなわち、内気モード)とし、S=1からS=7に向かって内気比率が順次増加する。図9は、上記の内外気制御指令値Sの算出処理(ステップS52)の具体例を示すフローチャートであり、図9を参照して内外気制御指令値Sの算出処理(ステップS52)について説明する。
まず、車速SPDが低速域Aにあるか高速域Bにあるかを図10のマップに基づいて判定する(ステップS520)。そして、車速SPDが高速域Bにあるときは、図11のマップに示すように、ガラス表面相対湿度RHWに基づいて内外気制御指令値Sを決定する(ステップS521)。即ちガラス表面相対湿度RHWが第1の目標ガラス表面相対湿度TRHWよりも上昇すると、窓ガラスに曇りが生じ易いとして、S=0(外気モード)とし、また、ガラス表面相対湿度RHWが第2の目標ガラス表面相対湿度(TRHW−a)よりも低下すると、窓ガラスに曇りが生じ難いとして、S=7(内気モード)にする。
ここで、第1の目標ガラス表面相対湿度(TRHW)としては、窓ガラスに曇りが生じない上限限度付近のレベルとして、例えば、90%が用いられ、第2の目標ガラス表面相対湿度(TRHW−a)としては、例えば、70%が用いられている(a=20%)。
一方、車速SPDが低速域Aにあるときは、ガラス表面相対湿度RHWに基づいて、図12のマップに示す制御モード1、2、3、4を決定する(ステップS522)。即ちガラス表面相対湿度RHWが第3の目標ガラス表面相対湿度(TRHW+c)よりも上昇すると、制御モード4を決定し、またガラス表面相対湿度RHWが第3の目標ガラス表面相対湿度(TRHW+c)と第1の目標ガラス表面相対湿度(TRHW)との間にあるときは、制御モード3を決定する。
さらに、ガラス表面相対湿度RHWが第1の目標ガラス表面相対湿度(TRHW)と第4のガラス表面相対湿度(TRHW−b)との間にあるときは、制御モード2を決定し、ガラス表面相対湿度RHWが第4の目標ガラス表面相対湿度(TRHW−b)よりも低下すると、制御モード1を決定する。
ここで、第4の目標ガラス表面相対湿度(TRHW−b)→第1の目標ガラス表面相対湿度(TRHW)→第3の目標ガラス表面相対湿度(TRHW+c)の順に湿度が高くなり、これらの順で徐々に窓ガラスに曇りが生じ易くなる傾向になっている。なお、第4の目標ガラス表面相対湿度(TRHW−b)としては、例えば、80%(b=10)が用いられ、第3の目標ガラス表面相対湿度(TRHW+c)としては、例えば、95%(c=5%)が用いられている。
ここで、制御モード1は、内気比率を増加する制御を行い、制御モード2は、内気比率を維持する制御を行い、制御モード3は、内気比率を減少させる制御を行う。そして、制御モード4は、外気モードとする制御を行うようになっている。
また、制御モード1を決定したときは、所定時間経過毎にS=S+1の制御処理を行う(ステップS523)。即ち所定時間経過毎に内外気制御指令値Sの値を「1」ずつ増加して、内気比率を所定割合ずつ順次増加する制御処理を行う。
また、制御モード2を決定したときは、ガラス表面相対湿度RHWが第1の目標ガラス表面相対湿度(TRHW)付近にあるため、S=Sの制御処理、即ち内外気制御指令値Sの値として、先回算出したSの値を維持する制御処理を行う(ステップS524)。
また、制御モード3を決定したときは、所定時間経過毎にS=S−1の制御処理を行う(ステップS525)。即ち所定時間経過毎に内外気制御指令値Sの値を「1」ずつ減少して、内気比率を所定割合ずつ順次減少する制御処理を行う。
このため、制御モード3を決定したときは、最初は内外気制御指令値S≠0であっても、時間経過に伴って、S=S−1を繰り返すと内外気制御指令値S=0になる。さらに、制御モード4を決定したときは、S=0の制御処理、具体的には、外気モードを実施する制御を行う(ステップS526)。
再び、図7に戻って、防曇制御を説明する。ステップS53では、ステップS52で算出された内外気制御指令値Sの値が外気モードの値(内外気制御指令値S=0)であるか否かを判定する。即ち(1)上述のステップS522で制御モード4を決定したとき、(2)上述のステップS522で制御モード3を決定し、S=S−1を繰り返した結果、S=0となったとき、および(3)ステップS521において、図11のマップに従い、外気モード(S=0)を選択したとき、内外気制御指令値S=0である(YES)と判定する。
このように、内外気制御指令値S=0である場合、「窓ガラスが曇り易い状況にある」と判定して、次のステップS55において、窓ガラスの防曇制御I(外気導入)を行う。即ち内外気切替えドア35を、外気導入側に駆動する。なお、また、ステップS53において、内外気制御指令値S≠0のときには、「窓ガラスが曇り易い状況にはない」と判定(NO)して、ステップS54に移行する。
ステップS54では、ステップS52で決定された内外気制御指令値Sの値に基づいて、決定された内気比率となるように内外気切替ドア35の位置を制御して内外気吸込みモード制御を実施する。なお、このステップS54における制御は、上述のごとく、ガラス表面相対湿度RHWが第1の目標ガラス表面相対湿度(TRHW)よりも低く、その結果制御モード1または2が決定されている制御モード(内外気制御指令値S≠0)になる。
第1の目標ガラス表面相対湿度(TRHW)は、窓ガラスの曇りが生じない上限湿度付近に設定されている。そのため、ステップS54における内外気吸込みモード制御においては、窓ガラスの曇りが生じない範囲で常に内気比率が高くなるように、内外気切替ドア35の位置を制御することが可能である。このように、冬期の暖房始動時に内気比率を上昇することにより換気損失を低減して、車室内暖房効果の立ち上げを促進できる。
一方、図7のステップS51の判定がYESであるときは、ステップS56に進み、防曇制御IIを行う。この防曇制御IIでは、図13に示すマップから、検出されたガラス表面相対湿度RHWに対応する防曇制御モード(I〜IV)が選択されて、選択された防曇制御モードに応じた制御が行われる。
即ち、ガラス表面相対湿度RHWが第1の目標ガラス表面相対湿度(TRHW)よりも小さい場合は、「防曇制御モードI」が選択される。この場合は、「窓ガラスが曇り易い状況にはない」と判断されて、乗員が設定した吹出モード(フェイス吹出モード、フット吹出モード、フットデフロスタ吹出モード、デフロスタ吹出モード、等)が維持される。また、送風量も乗員が設定した値に維持される。
一方、ガラス表面相対湿度RHWが第1の目標ガラス表面相対湿度(TRHW)よりも上昇すると、「窓ガラスが曇り易い状況にある」と判断されて、検出されたガラス表面相対湿度RHWに対応した防曇制御モード(II〜IV)が選択される。図13におけるマップでは、第1の目標ガラス表面相対湿度(TRHW)と第3の目標ガラス表面相対湿度(TRHW+c)との間に設定される第5の目標ガラス表面相対湿度(TRHW+d)の値として、例えば、93%(d=3)が用いられている。
防曇制御モードIでは、前述の通り、乗員により設定されたマニュアル内気モード(設定された吹出モードおよび風量)にて運転されている。一方、防曇制御モードIIでは、内気モードおよび吹出モードは乗員の設定のままとし、送風機37の送風量(以下、ブロアレベルともいう)を、防曇制御モードIよりも乗員にとって違和感のない範囲内で上昇させて、防曇制御の運転が行われる。
そして、ガラス表面相対湿度RHWが第5の目標ガラス表面相対湿度(TRHW+d)よりも大きく、かつ第3の目標ガラス表面相対湿度(TRHW+c)よりも小さい場合に実行される防曇制御モードIIIでは、吹出モードが強制的にフットデフロスタ吹出モードになるように切替えられる。これにより、デフロスタ吹出口48から窓ガラスに向けて空調風が吹き出されるため、窓ガラスの曇りが取り除かれる。
更に、ガラス表面相対湿度RHWが第3の目標ガラス表面相対湿度(TRHW+c)よりも大きい場合に実行される防曇制御モードIVでは、送風量が最大値になるように、ブロアレベルが切替えられるとともに、吹出モードが強制的にデフロスタ吹出モードに切替えられる。これにより、デフロスタ吹出口48から窓ガラスに向けて、最大風量の空調風が吹き出されるため、窓ガラスの曇りが取り除かれる。このように、ガラス表面相対湿度RHWが大きくなると、窓ガラスに曇りが生じ易くなるため、窓ガラスに曇りが生じないように、吹出モード及び送風量を変化させて防曇制御(ステップS56の防曇制御II)を行っている。
図5に戻って、異常(故障)検出のプロセスを説明する。ステップS60では、第2窓曇り検出手段72による窓曇り信号(第2出力信号72a)を監視している。この窓曇り信号(第2出力信号72a)は、吹出モードスイッチ72が乗員により操作されて、吹出モードが強制的にデフロスタ吹出モードに変更されたときに、発生する信号である。
また、内外気切替ドア35の制御が、自動切替モードからマニュアル外気モードに、あるいはマニュアル内気モードからマニュアル外気モードに乗員の操作により切替えられた場合にも、この窓曇り信号(第2出力信号72a)が出力されるようにすることも可能である。より具体的には、内外気吸込モードをマニュアル設定する内外気切替スイッチ73を、乗員が操作することにより、内外気切替ドア35を制御して外気導入することができる。
従って、ステップS60は、吹出モードスイッチ72が操作されて、吹出モードが強制的にデフロスタ吹出モードに変更された時(あるいは内外気切替ドア35の制御が、マニュアル外気モードに変更された時)に出力される窓曇り信号(第2出力信号72a)を検出することにより、湿度検出手段27の故障を判定する制御処理である。
即ち、ステップS50において、窓ガラスに曇りが生じないように防曇制御が行われているのにもかかわらず、実際は窓ガラスが曇ることにより、乗員がデフロスタ吹出モードにおよび/またはマニュアル外気モードに変更する操作を行ったものと判定する。換言すれば、湿度検出手段27が異常(故障)である結果、乗員が吹出モードスイッチ72もしくは内外気切替スイッチ73を操作したものと判定する。
前述のような故障は、例えば、図6に示す故障モードIVに該当する。つまり、ガラス表面相対湿度RHWが実際の湿度よりも低い値を示したときは、実際に窓曇りが発生しているのに、窓ガラスに曇りが発生していないと検出されるものである。従って、ステップS60の制御処理は、故障モードIVによる湿度検出手段27の故障と判定する判定手段である。
ここで、第2出力信号72aが検出されなければ、湿度検出手段27が正常であると判定してステップS20に戻る。ここで、第2出力信号72aを検出したときは、湿度検出手段27が故障であると判定して、ステップS70に進む。
ステップS70では、第1窓曇り検出手段20による窓曇り信号(第1信号20e)を監視している。具体的には、演算回路20a〜20dにより、演算されたガラス表面相対湿度RHWが、所定の値(例えば、第1の目標ガラス表面相対湿度TRHW)より大きな値であるか否かを判定する。そして、ガラス表面相対湿度RHWが所定の値よりも大きな値である場合、窓に曇りが発生したと判定する。なお、この実施形態においては、所定の値よりも大きな第1信号20eを、「窓曇り信号」と呼ぶ。このように、ステップS70は、湿度検出手段27の故障を再度確認する判定手段である。
ところで、前述したステップS56の防曇制御IIでは、ガラス表面相対湿度RHWが第1の目標ガラス表面相対湿度TRHWを超えているときに、防曇制御モードII、防曇制御モードIII、及び防曇制御モードIVのいずれかのひとつが実行されている。従って、この場合には、窓曇りが発生したことを表す窓曇り信号(第1信号20e)に基づいた防曇制御が行われていることになる。
また、ステップS525の制御モード3またはステップS526の制御モード4が選択されて、ステップS55において、防曇制御Iが実施されている場合も、ガラス表面相対湿度RHWが第1の目標ガラス表面相対湿度TRHWを超えているため、この場合も窓曇りが発生したことを表す窓曇り信号が(第1信号20e)が出力されていることになる。
一方、ステップS523の制御モード1またはステップS524の制御モード2が選択されて、ステップS55において、防曇制御Iが実施されている場合は、ガラス表面相対湿度RHWが第1の目標ガラス表面相対湿度TRHWよりも低いため、窓ガラスの曇り易さの度合いを示す第1信号20eは出力されているものの、曇りが発生したことを表す窓曇り信号(第1の目標ガラス表面相対湿度TRHWより大きな値の第1信号20e)は出力されていない。
このように、ステップS70は、窓曇りが発生したことを表す窓曇り信号(第1の目標ガラス表面相対湿度TRHWより大きな値の第1信号20e)を監視している。ここで、窓曇り信号が検出されたときには、湿度検出手段27が正常であると判定してステップS20に戻る。ステップS70にて、窓曇り信号が検出されないときは、湿度検出手段27が故障であると判定して、ステップS80に進む。
ステップS80およびステップS90では、湿度検出手段27の異常判定回数(故障回数)を積算するとともに、積算された異常判定回数が所定回数を超えたか否かを監視する制御処理を行う。言い換えると、湿度検出手段27の異常判定をより正確に求めるための実行手段である。従って、ステップS80にて、異常判定回数を積算して様子をみる。そして、ステップS90にて、異常判定回数が所定回数を超えたときは、湿度検出手段27が故障であると最終的に判定して、ステップS100に進む。
ステップS100では、防曇優先制御を実行する。この防曇優先制御は、内外気切替ドア35の位置を制御して外気導入するとともに、圧縮機40を作動させて窓ガラスの曇りを除去させるものである。従って、湿度検出手段27の故障が起きた場合には、湿度検出手段27に基づいて演算されたガラス表面相対湿度RHWを無視して、窓ガラスの曇り防止を優先的に作動させる。これにより、窓ガラスの曇りに対して安全サイドで制御できる。
以上説明したように、本実施形態によれば、第2窓曇り検出手段(吹出モードスイッチ)72による窓曇り信号(第2出力信号72a)と第1窓曇り検出手段20による窓曇り信号(第1信号20e)とを比較することにより、湿度検出手段27の故障を容易に検出することができる。また、この場合には、故障モードのうち、湿度の検出値が実際の湿度よりも低め側にシフトする故障モードIVを容易に判定することができる。
より具体的には、図5に示す故障判定制御プログラム26aは、第2窓曇り検出手段(吹出モードスイッチ)72が、窓ガラスの曇りが発生したことを表す第2出力信号72aを出力し、また、第1窓曇り検出手段20が、窓ガラスの曇り難いことを表す第1出力信号20eを出力したとき(即ち、窓曇りが発生したことを表す窓曇り信号(第1の目標ガラス表面相対湿度TRHWより大きな値の第1信号20e)が出力されていないとき)に、湿度検出手段27が故障であると判定する。このように、湿度検出手段27の故障を容易に検出することができる。
また、マニアル操作によりデフロスタ吹出口48を開口させる吹出モードスイッチ72が設けられており、この吹出モードスイッチ72を操作してデフロスタ吹出モードにしたときに、窓ガラスの曇りが発生したことを表す第2出力信号72aが出力される。窓ガラスに曇りが発生した場合には、使用者が操作する吹出モードスイッチ72の操作によるデフロスタ吹出モードに切替えることができる。
これにより、吹出モードスイッチ72を第2窓曇り検出手段72として採用することができる。また、前述のように、内外気切替ドア35の制御が、自動切替モードからマニュアル外気モードに、あるいはマニュアル内気モードからマニュアル外気モードに乗員の操作により切替えられた場合にも、この窓曇り信号(第2出力信号72a)が出力されるようにすることも可能である。
故障判定制御プログラム26aは、第1出力信号20eと第2出力信号72aとの比較によって、湿度検出手段27の故障を判定した故障回数を積算し、その積算した積算故障回数が所定回数を超えたときに、湿度検出手段27の故障を判定することにより、湿度検出手段27の故障の有無を正しく判定することができる。
湿度検出手段27の故障が判定された場合には、前述の通り、防曇優先制御(ステップS100)を実行することにより、湿度検出手段27の故障があっても、適切な防曇制御が継続することができる。
(第2実施形態)
以上の第1実施形態では、空調操作パネル70内の吹出モードスイッチ72を、第2窓曇り検出手段72として設定したが、演算回路20a〜20dより第1出力信号20eとして出力されるガラス表面相対湿度RHWのデータを第2窓曇り検出手段28として設定しても良い。
図14は、本実施形態における湿度検出装置10の電気的構成を示すブロック図である。図15は、車室内湿度が上昇傾向にある際のガラス表面相対湿度RHWの時間的変化を示す説明図である。本実施形態の第2窓曇り検出手段28は、第1出力信号20eとして出力されるガラス表面相対湿度RHWのデータを、図15に示すように、グラフ化させる演算回路である。
そして、グラフ化されたガラス表面相対湿度RHWが上昇傾向を示すときにおいて、後述する変化点28bが発生したときに、窓曇り信号(第2出力信号28a)を出力するようにしている。従って、第2窓曇り検出手段28は、図14に示すように、通信回路21から出力される第1信号20eを入力し、第2信号28aを空調制御装置26に出力するように構成されている。換言すると、本実施形態では、図5に示すステップ60において、第2窓曇り検出手段28による窓曇り信号(第2出力信号28a)を監視している。
ここで、図15に示す変化点28bについて説明する。図15のグラフ中に発生する変化点28bは、上昇しているガラス表面相対湿度RHWの上昇速度が変化する折れ点である。図15中に示す実線は、湿度検出手段27により得られたガラス表面相対湿度RHWの時間的変化を示すグラフである。
図15中に示す破線は、実際のガラス表面相対湿度RHWの時間的変化を示すグラフである。湿度検出手段27により得られたガラス表面相対湿度RHWは、実際のガラス表面相対湿度RHWよりも低い値が入力されていると考えられる。
湿度上昇に伴い、例えば、ガラス表面相対湿度RHW=100の時に、曇りが発生することが期待される。しかし、グラフ化されたガラス表面相対湿度RHWは、実際のガラス表面相対湿度RHWよりも低い値であるため、曇りが発生していても、ガラス表面相対湿度RHW=100を下回っている。
ここで、窓ガラスに曇りが発生すると、ガラス表面相対湿度RHWの上昇速度がやや遅くなって上昇速度が変化する折れ点が発生する変化点28bが形成される。これは、窓曇りの発生は、その周辺の空気から水分を奪うため、空気に含まれる水分量の上昇割合が少なくなるためである。
このような現象は、実際のガラス表面相対湿度RHWよりも低いガラス表面相対湿度RHWを検出する湿度検出手段27に適用可能と判断したものである。従って、第2窓曇り検出手段28において、変化点28bが発生したときに、窓曇り信号(第2出力信号28a)を空調制御装置26に出力すれば良い。
言い換えれば、第2窓曇り検出手段28は、演算回路20dから出力される第1出力信号20eを、連続的に変化量を監視するとともに、その変化量が上昇傾向であるときで、かつガラス表面相対湿度RHWの上昇速度が変化したときに、窓ガラスの曇りが発生したと判断し、窓曇り信号(第2出力信号28a)が出力されるように構成すれば良い。
このように、窓ガラスに曇りが発生すると、ガラス表面相対湿度RHWがなだらかに変化する。従って、ガラス表面相対湿度RHWの上昇速度が低下するため、第1出力信号20eを連続して監視し、上昇速度が変化する変化点28bを捉えることにより、窓ガラスの曇りを検出する第2窓曇り検出手段28として採用することができる。
(第3実施形態)
本実施形態では、ガラス表面相対湿度RHWが実際の湿度よりも低い値にシフトする故障モードIVを判定するために、故障判定制御プログラム26aにガラス表面相対湿度RHWを補正する補正手段を設けたものである。図16は、本実施形態による故障判定制御プログラム26aの制御処理を示すフローチャートである。なお、図16に示す第1実施形態と同一の符号は、同じ制御処理の内容のため、詳細の説明は省略している。
本実施形態の故障判定制御プログラム26aは、図16に示すように、ステップS90において、湿度検出手段27が故障であると判定したときに、ガラス表面相対湿度RHWを補正する補正手段(ステップS25およびS110)が設けられている。
より具体的には、ステップS60、S70およびS90の判定手段において、湿度検出手段27が故障であると判定される場合、ステップS110にて、ステップS20で検出されたガラス表面相対湿度RHWを補正する。例えば、ステップS60において、窓曇りが発生していることが分っているため、このときの実際のガラス表面相対湿度RHWの基準値を100とし、そのときのガラス表面相対湿度RHWとの差を、補正値RHWCとして算出する。
そして、ステップS20に戻り、次のガラス表面相対湿度RHWを読み込む。そして、ステップS25にて、読み込まれたガラス表面相対湿度RHWに補正値RHWCを加算して、新たな今回のガラス表面相対湿度RHWとする。つまり、毎回、読み込まれたガラス表面相対湿度RHWを検出するたびに、補正値RHWCを加算し、ステップS50において、補正されたガラス表面相対湿度RHWに基づいて防曇制御が行われる。
言い換えると、湿度検出手段27が故障であると判定された場合は、窓ガラスが曇り難い状態にあることを示している第1出力信号20eを、窓ガラスの曇りが発生したことを示す信号に補正する補正手段が設けられたことになる。そして、湿度検出手段27の故障が判定された以降は、補正手段により補正されたガラス表面相対湿度RHWに基づいて防曇制御が行われる。
これにより、湿度検出手段27が故障であっても、検出されたガラス表面相対湿度RHWを補正することにより、補正されたガラス表面相対湿度RHWに基づいて防曇制御ができる。従って、長時間に渡って湿度検出手段27の精度を維持することができる。
なお、本実施形態では、湿度検出手段27が故障であっても、ガラス表面相対湿度RHWを補正して継続的に防曇制御が行われる構成としたが、湿度検出手段27が故障したときには、使用者に湿度検出手段27の故障を報知する報知手段を空調制御装置26に設けても良い。これによれば、速やかに湿度検出手段27の交換もしくは修理ができる。
(他の実施形態)
以上の実施形態では、車室内の湿度を検出する湿度検出手段27として、窓ガラス12内面近傍の代表的な空気の温湿度と、窓ガラス内面の代表的な表面温度とを検出する湿度センサ17、空気温度センサ18及びガラス温度センサ23を用いた構成となっている。そして、これらセンサ17、18、23から検出された検出信号に基づいて湿度、即ちガラス表面相対湿度RHWを演算するように構成したが、これに限らず、下記(1)乃至(5)のように、ガラス温度を検出もしくは推定できる機能を有していることが望ましい。
具体的に、(1)ガラスの内表面に温湿度センサを貼り付け、ガラス温度及びガラス表面相対湿度RHWを直接検出する方法であっても良い。(2)窓ガラスの近傍の空気温度、湿度及びガラス温度を直接測定し、ガラス表面相対湿度RHWを演算する方法であっても良い。(3)、窓ガラスの近傍の空気温度、湿度及びガラス温度を推定し、ガラス表面相対湿度RHWを演算する方法であっても良い。(4)車室内の温度、湿度及びガラス温度を測定し、ガラス表面相対湿度RHWを演算する方法であっても良い。(5)車室内の温度、湿度及びガラス温度を推定し、ガラス表面相対湿度RHWを演算する方法であっても良い。