(第1実施形態)
図1〜図9により、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態では、本発明の車両用空調装置を、内燃機関(エンジン)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る、いわゆるハイブリッド車両に適用している。図1〜図4は、車両用空調装置1の全体構成図である。
この車両用空調装置は、車室内を冷房する冷房モード(COOLサイクル)、車室内を暖房する暖房モード(HOTサイクル)、車室内を除湿する第1除湿モード(DRY_EVAサイクル)および第2除湿モード(DRY_ALLサイクル)の冷媒回路を切替可能に構成された蒸気圧縮式の冷凍サイクル10を備えている。図1〜図4は、それぞれ、冷房モード、暖房モード、第1、第2除湿モード時の冷媒の流れを実線矢印で示している。
なお、冷房モードは、冷凍サイクル10をクーラサイクルとして運転するモードであり、冷却能力および除湿能力を有している。従って、冷房モードを冷却除湿モードと表現することもできる。
また、暖房モードおよび第1、第2除湿モードは、冷凍サイクル10をヒートポンプサイクルとして運転するモードである。このヒートポンプサイクルによる3つのモードのうち暖房モードは、高い暖房能力を有しているが除湿能力を有していない。従って、暖房モードを除湿無しヒートポンプサイクルと表現することもできる。
ヒートポンプサイクルによる3つのモードのうち第1、第2除湿モードは、除湿能力を有しているが暖房能力は暖房モードよりも劣る。従って、第1、第2除湿モードを除湿有りヒートポンプサイクルあるいは除湿暖房サイクルと表現することもできる。
より具体的には、第1除湿モードは、暖房能力に対して除湿能力を優先する除湿モードであり、第2除湿モードは、除湿能力に対して暖房能力を優先する除湿モードである。従って、第1除湿モードを低温除湿モードあるいは単なる除湿モード、第2除湿モードを高温除湿モードあるいは除湿暖房モードと表現することもできる。
因みに、図8の図表は、冷房モード、暖房モード、第1、第2除湿モードの除湿能力および暖房能力を比較して示したものである。すなわち、冷房モードは、除湿能力は最も大きいが暖房能力は無い。したがって、暖房時に冷房モードを選択するときは、冷凍サイクル10以外の加熱手段(本例では、後述するヒータコア36やPTCヒータ37)を併用することとなる。
暖房モードは、除湿能力は無いが暖房能力は最も大きい。第1除湿モードは、除湿能力は中程度であるが暖房能力は小さい。第2除湿モードは、除湿能力は小さいが暖房能力は中程度である。
冷凍サイクル10は、圧縮機11、室内熱交換器としての室内凝縮器12および室内蒸発器26、冷媒を減圧膨張させる減圧手段としての温度式膨張弁27および固定絞り14、並びに、冷媒回路切替手段としての複数(本実施形態では5つ)の電磁弁13、17、20、21、24等を備えている。
また、この冷凍サイクル10では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。さらに、この冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、この冷凍機油は冷媒とともにサイクルを循環している。
圧縮機11は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するもので、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。固定容量型圧縮機構11aとしては、具体的に、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用できる。
電動モータ11bは、インバータ61から出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。また、インバータ61は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータ11bは、圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
圧縮機11の吐出側には、室内凝縮器12の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器12は、車両用空調装置の室内空調ユニット30において車室内へ送風される送風空気の空気通路を形成するケーシング31内に配置されて、その内部を流通する冷媒と後述する室内蒸発器26通過後の送風空気とを熱交換させることで送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。なお、室内空調ユニット30の詳細については後述する。
室内凝縮器12の冷媒出口側には、電気式三方弁13が接続されている。この電気式三方弁13は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段である。
より具体的には、電気式三方弁13は、電力が供給される通電状態では、室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続する冷媒回路に切り替え、電力の供給が停止される非通電状態では、室内凝縮器12の冷媒出口側と第1三方継手15の1つの冷媒流入出口との間を接続する冷媒回路に切り替える。
固定絞り14は、暖房モード、第1および第2除湿モード時に、電気式三方弁13から流出した冷媒を減圧膨張させる暖房除湿用の減圧手段である。この固定絞り14としては、キャピラリチューブ、オリフィス等を採用できる。もちろん、暖房除湿用の減圧手段として、空調制御装置50から出力される制御信号によって絞り通路面積が調整される電気式の可変絞り機構を採用してもよい。固定絞り14の冷媒出口側には、後述する第3三方継手23の冷媒流入出口が接続されている。
第1三方継手15は、3つの冷媒流入出口を有し、冷媒流路を分岐する分岐部として機能するものである。このような三方継手は、冷媒配管を接合して構成してもよいし、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けて構成してもよい。また、第1三方継手15の別の冷媒流入出口には、室外熱交換器16の一方の冷媒流入出口が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、低圧電磁弁17の冷媒入口側が接続されている。
低圧電磁弁17は、冷媒流路を開閉する弁体部と、弁体部を駆動するソレノイド(コイル)を有し、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段である。より具体的には、低圧電磁弁17は、通電状態で開弁して非通電状態で閉弁する、いわゆるノーマルクローズ型の開閉弁として構成されている。
低圧電磁弁17の冷媒出口側には、第1逆止弁18を介して、後述する第5三方継手28の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第1逆止弁18は、低圧電磁弁17側から第5三方継手28側へ冷媒が流れることのみを許容している。
室外熱交換器16は、エンジンルーム内に配置されて、内部を流通する冷媒と送風ファン16aから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させるものである。送風ファン16aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
さらに、本実施形態の送風ファン16aは、室外熱交換器16のみならず、エンジンEGの冷却水を放熱させるラジエータ(図示せず)にも室外空気を送風している。具体的には、送風ファン16aから送風された車室外空気は、室外熱交換器16→ラジエータの順に流れる。
また、図1〜図4の破線で示す冷却水回路には、冷却水を循環させるための図示しない冷却水ポンプが配置されている。この冷却水ポンプは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(冷却水循環量)が制御される電動式の水ポンプである。
室外熱交換器16の他方の冷媒流入出口には、第2三方継手19の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第2三方継手19の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第2三方継手19の別の冷媒流入出口には、高圧電磁弁20の冷媒入口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、熱交換器遮断電磁弁21の一方の冷媒流入出口が接続されている。
高圧電磁弁20および熱交換器遮断電磁弁21は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段であり、その基本的構成は、低圧電磁弁17と同様である。但し、高圧電磁弁20および熱交換器遮断電磁弁21は、通電状態で閉弁して非通電状態で開弁する、いわゆるノーマルオープン型の開閉弁として構成されている。
高圧電磁弁20の冷媒出口側には、第2逆止弁22を介して、後述する温度式膨張弁27の絞り機構部入口側が接続されている。この第2逆止弁22は、高圧電磁弁20側から温度式膨張弁27側へ冷媒が流れることのみを許容している。
熱交換器遮断電磁弁21の他方の冷媒流入出口には、第3三方継手23の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第3三方継手23の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第3三方継手23の別の冷媒流入出口には、前述の如く、固定絞り14の冷媒出口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、除湿電磁弁24の冷媒入口側が接続されている。
除湿電磁弁24は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段であり、その基本的構成は、低圧電磁弁17と同様である。さらに、除湿電磁弁24もノーマルクローズ型の開閉弁として構成されている。そして、本実施形態の冷媒回路切替手段は、電気式三方弁13、低圧電磁弁17、高圧電磁弁20、熱交換器遮断電磁弁21、除湿電磁弁24の複数(5つ)の電磁弁によって構成される。
除湿電磁弁24の冷媒出口側には、第4三方継手25の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第4三方継手25の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第4三方継手25の別の冷媒流入出口には、温度式膨張弁27の絞り機構部出口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、室内蒸発器26の冷媒入口側が接続されている。
室内蒸発器26は、室内空調ユニット30のケーシング31内のうち、室内凝縮器12の送風空気流れ上流側に配置されて、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。
室内蒸発器26の冷媒出口側には、温度式膨張弁27の感温部入口側が接続されている。温度式膨張弁27は、絞り機構部入口から内部へ流入した冷媒を減圧膨張させて絞り機構部出口から外部へ流出させる冷房用の減圧手段である。
より具体的には、本実施形態では、温度式膨張弁27として、室内蒸発器26出口側冷媒の温度および圧力に基づいて室内蒸発器26出口側冷媒の過熱度を検出する感温部27aと、感温部27aの変位に応じて室内蒸発器26出口側冷媒の過熱度が予め定めた所定範囲となるように絞り通路面積(冷媒流量)を調整する可変絞り機構部27bとを1つのハウジング内に収容した内部均圧型膨張弁を採用している。
温度式膨張弁27の感温部出口側には、第5三方継手28の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第5三方継手28の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第5三方継手28の別の冷媒流入出口には、前述の如く、第1逆止弁18の冷媒出口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、アキュムレータ29の冷媒入口側が接続されている。
アキュムレータ29は、第5三方継手28から、その内部に流入した冷媒の気液を分離して、余剰冷媒を蓄える低圧側気液分離器である。さらに、アキュムレータ29の気相冷媒出口には、圧縮機11の冷媒吸入口が接続されている。
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、前述の室内蒸発器26、室内凝縮器12、ヒータコア36、PTCヒータ37等を収容したものである。
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替箱40が配置されている。
より具体的には、内外気切替箱40には、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入口40aおよび外気を導入させる外気導入口40bが形成されている。さらに、内外気切替箱40の内部には、内気導入口40aおよび外気導入口40bの開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア40cが配置されている。
従って、内外気切替ドア40cは、ケーシング31内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる吸込口モードを切り替える風量割合変更手段を構成する。より具体的には、内外気切替ドア40cは、内外気切替ドア40c用の電動アクチュエータ62によって駆動され、この電動アクチュエータ62は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
また、吸込口モードとしては、内気導入口40aを全開とするとともに外気導入口40bを全閉としてケーシング31内へ内気を導入する内気モード、内気導入口40aを全閉とするとともに外気導入口40bを全開としてケーシング31内へ外気を導入する外気モード、さらに、内気モードと外気モードとの間で、内気導入口40aおよび外気導入口40bの開口面積を連続的に調整することにより、内気と外気の導入比率を連続的に変化させる内外気混入モードがある。
内外気切替箱40の空気流れ下流側には、内外気切替箱40を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
送風機32の空気流れ下流側には、前述の室内蒸発器26が配置されている。さらに、室内蒸発器26の空気流れ下流側には、室内蒸発器26通過後の空気を流す加熱用冷風通路33、冷風バイパス通路34といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34から流出した空気を混合させる混合空間35が形成されている。
加熱用冷風通路33には、室内蒸発器26通過後の空気を加熱するための加熱手段としてのヒータコア36、室内凝縮器12、およびPTCヒータ37が、送風空気流れ方向に向かってこの順で配置されている。ヒータコア36およびPTCヒータ37は、冷媒以外を熱源として送風空気を加熱する加熱手段である。
ヒータコア36は、車両走行用駆動力を出力するエンジンEGの冷却水と室内蒸発器26通過後の空気とを熱交換させて、室内蒸発器26通過後の空気を加熱する加熱用熱交換器である。
また、PTCヒータ37は、PTC素子(正特性サーミスタ)を有し、電力を供給されることによって発熱して、室内凝縮器12通過後の空気を加熱する電気ヒータである。なお、本実施形態のPTCヒータ37は、複数本(具体的には3本)設けられており、空調制御装置50が、通電するPTCヒータ37の本数を変化させることによって、複数のPTCヒータ37全体としての加熱能力が制御される。
一方、冷風バイパス通路34は、室内蒸発器26通過後の空気を、ヒータコア36、室内凝縮器12、およびPTCヒータ37を通過させることなく、混合空間35に導くための空気通路である。従って、混合空間35にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路33を通過する空気および冷風バイパス通路34を通過する空気の風量割合によって変化する。
そこで、本実施形態では、室内蒸発器26の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34の入口側に、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア38を配置している。
従って、エアミックスドア38は、混合空間35内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。より具体的には、エアミックスドア38は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63によって駆動され、この電動アクチュエータ63は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
さらに、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間35から冷却対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出口41〜43が配置されている。この吹出口41〜43としては、具体的に、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口41、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口42、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口43が設けられている。
また、フェイス吹出口41、フット吹出口42、およびデフロスタ吹出口43の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口41の開口面積を調整するフェイスドア41a、フット吹出口42の開口面積を調整するフットドア42a、デフロスタ吹出口43の開口面積を調整するデフロスタドア43aが配置されている。
これらのフェイスドア41a、フットドア42a、デフロスタドア43aは、吹出口モードを切替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータ64も、空調制御装置50から出力される制御信号によってその作動が制御される。
また、吹出口モードとしては、フェイス吹出口41を全開してフェイス吹出口41から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口41とフット吹出口42の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口42を全開するとともにデフロスタ吹出口43を小開度だけ開口して、フット吹出口42から主に空気を吹き出すフットモード、およびフット吹出口42およびデフロスタ吹出口43を同程度開口して、フット吹出口42およびデフロスタ吹出口43の双方から空気を吹き出すフットデフロスタモードがある。
さらに、乗員が後述する操作パネル60の吹出口モードスイッチ60cをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口43を全開してデフロスタ吹出口43から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
なお、本実施形態の車両用空調装置1が適用されるハイブリッド車両は、車両用空調装置とは別に、電熱デフォッガ47を備えている。電熱デフォッガ47とは、車室内窓ガラスの内部あるいは表面に配置された電熱線であって、窓ガラスを加熱することで防曇あるいは窓曇り解消を行うものである。この電熱デフォッガ47についても空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動を制御できるようになっている。
次に、図5により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置50は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61、冷媒回路切替手段を構成する各電磁弁13、17、20、21、24、送風ファン16a、送風機32、各種電動アクチュエータ62、63、64等の作動を制御する。
なお、空調制御装置50は、上述した各種機器を制御する制御手段が一体に構成されたものである。例えば、空調制御装置50は、上述した冷房モード、暖房モード、および第1、第2除湿モードの切替制御を行う制御手段を構成する。
本実施形態では、特に、圧縮機11の吐出能力変更手段である電動モータ11bの作動(冷媒吐出能力)を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)を吐出能力制御手段50aとする。もちろん、吐出能力制御手段50aを空調制御装置50に対して別体で構成してもよい。
また、空調制御装置50の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ51、外気温Tamを検出する外気センサ52(外気温検出手段)、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ53、圧縮機11吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ54(吐出温度検出手段)、圧縮機11吐出冷媒圧力Pdを検出する吐出圧力センサ55(吐出圧力検出手段)、室内蒸発器26からの吹出空気温度(蒸発器温度)TEを検出する蒸発器温度センサ56(蒸発器温度検出手段)、第1三方継手15と低圧電磁弁17との間を流通する冷媒の温度Tsiを検出する吸入温度センサ57、エンジン冷却水温度Twを検出する冷却水温度センサ、窓ガラス表面の相対湿度RHWを算出するために必要な検出値を検出するRHWセンサ45(窓ガラス表面相対湿度検出手段)等のセンサ群の検出信号が入力される。ここで、窓ガラス表面相対湿度RHWは、窓ガラス室内側表面の相対湿度のことである。
なお、本実施形態の蒸発器温度センサ56は、具体的に室内蒸発器26の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、蒸発器温度センサ56として、室内蒸発器26のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、室内蒸発器26を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出手段を採用してもよい。
また、本実施形態のRHWセンサ45は、具体的には、車室内の窓ガラス近傍の車室内空気の相対湿度を検出する湿度センサ、窓ガラス近傍の車室内空気の温度を検出する窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度を検出する窓ガラス表面温度センサの3つのセンサで構成されている。
本例では、RHWセンサ45を車両窓ガラスの車室内側の表面(例えば車両フロント窓ガラスの中央上部にあるバックミラーのすぐ横)に配置している。
さらに、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ(図示せず)、エアコンのオン・オフ(具体的には圧縮機11の作動・停止)を切り替えるエアコンスイッチ60a、車両用空調装置1の自動制御を設定・解除するオートスイッチ(図示せず)、運転モードの切替スイッチ(図示せず)、吸込口モードを切り替える吸込口モードスイッチ60b、吹出口モードを切り替える吹出口モードスイッチ60c、送風機32の風量設定スイッチ(図示せず)、車室内温度設定スイッチ(図示せず)、冷凍サイクルの省動力化を優先させる指令を出力するエコノミースイッチ(図示せず)等が設けられている。
次に、図6により、上記構成における本実施形態の作動を説明する。図6は、本実施形態の車両用空調装置1の制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、車両システムが停止している場合でも、バッテリから空調制御装置50に電力が供給されることによって実行される。
まず、ステップS1では、プレ空調のスタートスイッチ、あるいは操作パネル60の車両用空調装置1の作動スイッチが投入(ON)されたか否かを判定する。そして、プレ空調のスタートスイッチ、あるいは車両用空調装置1の作動スイッチが投入されるとステップS2へ進む。
なお、プレ空調とは、乗員が車両に乗り込む前に車室内の空調を開始する空調制御である。プレ空調のスタートスイッチは、乗員が携帯する無線端末(リモコン)に設けられている。従って、乗員は車両から離れた場所から車両用空調装置1を始動させることができる。
さらに、本実施形態の車両用空調装置1が適用されるハイブリッド車両では、バッテリに対して商用電源(外部電源)から電力を供給することによって、バッテリの充電を行うことができる。そこで、プレ空調は、車両が外部電源に接続されている場合は所定時間(例えば、30分間)だけ行われ、外部電源に接続されていない場合は、バッテリ残量が所定量以下となるまで行うようになっている。
ステップS2では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等が行われる。次のステップS3では、操作パネル60の操作信号を読み込んでステップS4へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチによって設定される車室内設定温度Tset、吹出口モードの選択信号、吸込口モードの選択信号、送風機32の風量の設定信号等がある。
ステップS4では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群51〜57の検出信号を読み込んで、ステップS5へ進む。ステップS5では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。さらに、暖房モードでは、暖房用熱交換器目標温度を算出する。目標吹出温度TAOは、下記数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ51によって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサ52によって検出された外気温、Tsは日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
また、暖房用熱交換器目標温度は、基本的に上述の数式F1にて算出される値となるが、消費電力の抑制のために数式F1にて算出されるTAOよりも低い値とする補正が行われる場合もある。
続くステップS6〜S16では、空調制御装置50に接続された各種機器の制御状態が決定される。まず、ステップS6では、空調環境状態に応じて、冷房モード、暖房モード、第1除湿モードおよび第2除湿モードの選択およびPTCヒータ37の通電有無の決定が行われる。本実施形態のステップS6のより詳細な内容については後述する。
ステップS7では、送風機32により送風される空気の目標送風量を決定する。具体的には電動モータに印加するブロワモータ電圧をステップS4にて決定されたTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。
具体的には、本実施形態では、TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)でブロワモータ電圧を最大値付近の高電圧にして、送風機32の風量を最大風量付近に制御する。また、TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機32の風量を減少させる。
さらに、TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機32の風量を減少させる。また、TAOが所定の中間温度域内に入ると、ブロワモータ電圧を最小値にして送風機32の風量を最小値にするようになっている。
ステップS8では、吸込口モード、すなわち内外気切替箱40の切替状態を決定する。この吸込口モードもTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、TAOが極低温域となって高い冷房性能を得たい場合等に内気を導入する内気モードが選択される。さらに、外気の排ガス濃度を検出する排ガス濃度検出手段を設け、排ガス濃度が予め定めた基準濃度以上となったときに、内気モードを選択するようにしてもよい。
ステップS9では、吹出口モードを決定する。この吹出口モードも、TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて吹出口モードをフットモード→バイレベルモード→フェイスモードへと順次切り替える。
従って、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択される。さらに、湿度センサの検出値から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合には、フットデフロスタモードあるいはデフロスタモードを選択するようにしてもよい。
ステップS10では、エアミックスドア38の目標開度SWを上記TAO、蒸発器温度センサ56によって検出された室内蒸発器26からの吹出空気温度TE、加熱器温度に基づいて算出する。
ここで、加熱器温度とは、加熱用冷風通路33に配置された加熱手段(ヒータコア36、室内凝縮器12、およびPTCヒータ37)の加熱能力に応じて決定される値であって、具体的には、エンジン冷却水温度Twを採用できる。従って、目標開度SWは、次の数式F2により算出できる。
SW=[(TAO−TE)/(Tw−TE)]×100(%)…(F2)
なお、SW=0(%)は、エアミックスドア38の最大冷房位置であり、冷風バイパス通路34を全開し、加熱用冷風通路33を全閉する。これに対し、SW=100(%)は、エアミックスドア38の最大暖房位置であり、冷風バイパス通路34を全閉し、加熱用冷風通路33を全開する。
ステップS11では、圧縮機11の冷媒吐出能力(具体的には、回転数)を決定する。本実施形態の基本的な圧縮機11の回転数の決定手法は以下の通りである。例えば、冷房モードでは、ステップS4で決定したTAO等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、室内蒸発器26からの吹出空気温度TEの目標吹出温度TEOを決定する。
そして、この目標吹出温度TEOと吹出空気温度TEの偏差En(TEO−TE)を算出し、この偏差Enと、今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(En−(En−1))とを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fCn−1に対する回転数変化量ΔfCを求める。
また、暖房モードでは、ステップS4で決定した暖房用熱交換器目標温度等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、吐出冷媒圧力Pdの目標高圧PDOを決定し、この目標高圧PDOと吐出冷媒圧力Pdの偏差Pn(PDO−Pd)を算出する。さらに、この偏差Pnと、前回算出された偏差Pn−1に対する偏差変化率Pdot(Pn−(Pn−1))とを用いて、ファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fHn−1に対する回転数変化量ΔfHを求める。
ステップS12では、室外熱交換器16に向けて外気を送風する送風ファン16aの稼働率を決定する。本実施形態の基本的な送風ファン16aの稼働率の決定手法は以下の通りである。つまり、圧縮機11吐出冷媒温度Tdの増加に伴って送風ファン16aの稼働率が増加するように第1の仮稼働率を決定し、エンジン冷却水温度Twの上昇に伴って送風ファン16aの稼働率が増加するように第2の仮稼働率を決定する。
さらに、第1、第2の仮稼働率のうち大きい方を選択し、選択された稼働率に対して、送風ファン16aの騒音低減や車速を考慮した補正を行った値を送風ファン16aの稼働率に決定する。本実施形態のステップS12のより詳細な内容については後述する。
ステップS13では、PTCヒータ37の作動本数の決定および電熱デフォッガ47の作動状態の決定が行われる。PTCヒータ37の作動本数は、例えば、ステップS6にてPTCヒータ37への通電が必要とされたときに、暖房モード時にエアミックスドア38の目標開度SWが100%となっても、暖房用熱交換器目標温度を得られない場合に、内気温Trと暖房用熱交換器目標温度との差に応じて決定すればよい。
また、車室内の湿度および温度から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合、あるいは窓ガラスに曇りが発生している場合は、電熱デフォッガ47を作動させる。
次に、ステップS14にて、上述のステップS6で決定された運転モードに応じて、冷媒回路切替手段である各電磁弁13、17、20、21、24の作動状態を決定する。この際、本実施形態では、サイクルに応じた冷媒回路を実現するため、基本的には冷媒が流通する冷媒流路が開となるように各電磁弁を制御し、冷媒圧力の高低圧関係によって冷媒が流通しない冷媒流路については各電磁弁を非通電状態として、消費電力の抑制を行う。
ステップS14の詳細については、図7のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS141で、ステップS6で決定された運転モードをメモリCYCLE_VALVEに読み込む。次に、ステップS142にて、車両用空調装置1が停止しているか否か、すなわち車室内の空調を行わないか否かが判定される。
ステップS142にて、車両用空調装置1が停止していると判定された場合は、ステップS143にて、メモリCYCLE_VALVEを冷房モード(COOLサイクル)に設定してステップS144へ進む。ステップS143にて、車両用空調装置1が停止していないと判定された場合は、ステップS144へ進む。
ステップS144では、各電磁弁13、17、20、21、24の作動状態が決定される。具体的には、メモリCYCLE_VALVEが冷房モード(COOLサイクル)に設定されている場合は、全ての電磁弁を非通電状態とする。また、メモリCYCLE_VALVEが冷房モード(HOTサイクル)に設定されている場合は、電気式三方弁13、高圧電磁弁20、低圧電磁弁17を通電状態とし、残りの電磁弁21、24を非通電状態とする。また、メモリCYCLE_VALVEが第1除湿モード(DRY_EVAサイクル)に設定されている場合は、電気式三方弁13、低圧電磁弁17、除湿電磁弁24および熱交換器遮断電磁弁21を通電状態とし、高圧電磁弁20を非通電状態とする。また、メモリCYCLE_VALVEが第2除湿モード(DRY_ALLサイクル)に設定されている場合は、電気式三方弁13、低圧電磁弁17、除湿電磁弁24を通電状態とし、残りの電磁弁20、21を非通電状態とする。
つまり、本実施形態では、いずれの運転モードの冷媒回路に切り替えた場合であっても、各電磁弁13、17、20、21、24のうち少なくとも1つの電磁弁に対する電力の供給が停止されるように構成されている。
ステップS15では、エンジンEGの作動要求有無を決定する。ここで、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両では、常時エンジンを作動させているのでエンジン冷却水も常時高温となる。従って、通常の車両ではエンジン冷却水をヒータコア36に流通させることで充分な暖房性能を発揮することができる。
これに対して、本実施形態のようなハイブリッド車両では、バッテリ残量に余裕があれば、走行用電動モータのみから走行用の駆動力を得て走行することができる。このため、高い暖房性能が必要な場合であっても、エンジンEGが停止しているとエンジン冷却水温度が40℃程度にしか上昇せず、ヒータコア36にて充分な暖房性能が発揮できなくなる。
そこで、本実施形態では、暖房をヒートポンプサイクルで行うことによって、エンジン冷却水温度が低いときでも暖房に必要な熱源を確保できるようにしている。しかしながら、車両用空調装置において暖房をヒートポンプサイクルで行うことには実用上の種々の問題がある。
例えば、ヒートポンプサイクルは、外気温がかなり低い場合には効率が低下してしまうという問題がある。また、本実施形態のごとくヒートポンプサイクルで除湿ができるように構成された冷凍サイクル10においては、ヒートポンプサイクルの除湿能力はクーラサイクルの除湿能力よりも劣るので、防曇性も劣るという問題がある。
このような実用上の問題から、ヒートポンプサイクルを選択すると支障がある場合には、通常の車両と同様に、ヒータコア36による暖房や、クーラサイクルとヒータコア36とを併用した除湿暖房を行う必要がある。
そこで、ヒータコア36による暖房に必要な熱源を確保するため、高い暖房性能が必要な場合であってもエンジン冷却水温度Twが予め定めた基準冷却水温度よりも低いときは、空調制御装置50からエンジンEGの制御に用いられるエンジン制御装置(図示せず)に対して、エンジンEGを作動するように要求信号を出力する。
これにより、エンジン冷却水温度Twを上昇させて高い暖房性能を得るようにしている。なお、このようなエンジンEGの作動要求信号は、車両走行用の駆動源としてエンジンEGを作動させる必要の無い場合であってもエンジンEGを作動させることになるので、車両燃費を悪化させる要因となる。このため、エンジンEGの作動要求信号を出力する頻度は極力低減させることが望ましい。
ステップS16では、室外熱交換器16に着霜が生じている場合に、室外熱交換器16の除霜制御を行う。ここで、暖房モードの冷媒回路のように、室外熱交換器16にて冷媒に吸熱作用を発揮させる際に、室外熱交換器16における冷媒蒸発温度が−12℃程度まで低下すると、室外熱交換器16に着霜が生じることが知られている。
このような着霜が生じると、室外熱交換器16に車室外空気が流通できなくなり、室外熱交換器16にて冷媒と車室外空気とが熱交換できなくなってしまう。このため、室外熱交換器16に着霜が生じた際には、強制的に冷房モードとする制御処理を行う。後述するように冷房モードの冷媒回路では、室外熱交換器16にて冷媒が放熱するので、室外熱交換器16に生じた霜を溶かすことができる。
ステップS17では、上述のステップS6〜S16で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50より各種機器61、13、17、20、21、24、16a、32、62、63、64に対して制御信号および制御電圧が出力される。例えば、圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61に対しては、圧縮機11の回転数がステップS11で決定された回転数となるように制御信号が出力される。
次のステップS18では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS3に戻るようになっている。なお、本実施形態は制御周期τを250msとしている。これは、車室内の空調制御は、エンジン制御等と比較して遅い制御周期であってもその制御性に悪影響を与えないからである。さらに、車両内における空調制御のための通信量を抑制して、エンジン制御等のように高速制御を行う必要のある制御系の通信量を充分に確保することができる。
次に、上述のステップS6のより詳細な内容を説明する。図9は、ステップS6の要部を示すフローチャートである。図9のフローチャートの制御処理は、エアコンスイッチ60aおよびオートスイッチがオン(ON)されているとき等に実行される。
図9のフローチャートでは、蒸気圧縮式冷凍サイクルの省動力化、換言すれば車両燃費の向上を図る制御を行う。
すなわち、図8に示したように、除湿有りヒートポンプサイクルは除湿無しヒートポンプサイクルよりも暖房能力が劣るので、除湿有りヒートポンプサイクルが選択されると蒸気圧縮式冷凍サイクルの動力の増加を招き、ひいては車両燃費の悪化を招くという実用上の問題がある。
この点に鑑みて、図9のフローチャートでは、必要以上に除湿有りヒートポンプサイクルが選択されることを防止する制御を行う。具体的には、第1に、窓曇りの可能性の判定を、窓ガラス表面相対湿度RHWに基づいて精度良く行う(ステップS38)。
第2に、エコノミースイッチがオン(ON)されているとき、すなわち乗員が空調快適性よりも燃費を優先させるという意思表示を行っているときには、エコノミースイッチがオフ(OFF)されているときと比べて、除湿有りヒートポンプサイクルが選択される頻度を少なくして省電力運転を行う(ステップS35〜ステップS37)。
第3に、ヒートポンプサイクルの除湿能力を除湿の必要性に応じて調整する。より具体的には、暖房モードおよび第1、第2除湿モードの選択を除湿の必要性に応じて適切に行う(ステップS39〜ステップS42)。
まず、図9のフローチャートでは、加熱手段を状況に応じて適切に選択するという制御を行う(ステップS30〜S32およびステップS43、S44)。具体的には、ステップS30で、プレ空調時であるか否かを判定する。プレ空調時であると判定された場合(YES判定の場合)には、ステップS31ヘ進み、外気温が所定の閾値(図9の例では−3℃)よりも低いか否かを判定する。
外気温が所定の閾値よりも低いと判定された場合(YES判定の場合)には、ステップS32へ進み、PTCヒータ37への通電を決定する。すなわち、プレ空調時には車両のハイブリッドシステムのパワースイッチがオフ(OFF)状態であるので、エンジンEGを始動させることができない。このため、冷却水温度を高くすることができないのでヒータコア36による暖房を行うことができない。
また、外気温がかなり低い場合にはヒートポンプサイクルの効率が悪いのみならず室外熱交換器16に着霜しやすくなる。以上の理由から、ステップS32では、加熱手段としてPTCヒータ37を選択する。
ステップS31にて外気温が所定の閾値以上であると判定された場合(NO判定の場合)には、ステップS33へ進み、オート吹出口がフェイス(FACE)であるか否か、すなわちTAOに基づく吹出口モードの決定(ステップS9を参照)がフェイスモードであるか否かを判定する。
オート吹出口がフェイスであると判定された場合(YES判定の場合)には、ステップS34へ進み、クーラサイクル(冷房モード)を選択する。すなわち、ステップS9で説明したように、吹出口モードがフェイスモードに決定されるのはTAOが低温域であるときなので、この場合にはヒートポンプサイクルによる暖房は必要ないと判断して、クーラサイクルによる冷房(プレ空調)を選択する。
ステップS33にてオート吹出口がフェイスでないと判定された場合(NO判定の場合)には、ヒートポンプサイクルを選択すべく、ステップS35へ進む。
一方、ステップS30で、プレ空調以外(通常空調時)であると判定された場合(NO判定の場合)には、ステップS43へ進み、外気温が所定の閾値(図9の例では−3℃)よりも低いか否かを判定する。
外気温が所定の閾値よりも低いと判定された場合(YES判定の場合)には、ステップS44へ進み、クーラサイクルを選択するとともにエンジンEGの作動要求(ON要求)を決定する。
すなわち、プレ空調時以外(通常空調時)では車両のハイブリッドシステムのパワースイッチがオン(ON)状態であるので、エンジンEGを作動させることができる。このため、エンジンEGの作動によりエンジン冷却水を高温にして、クーラサイクルおよびヒータコア36の組み合わせによる暖房を選択する。
ステップS43にて外気温が所定の閾値以上であると判定された場合(NO判定の場合)には、ステップS45へ進み、オート吹出口がフェイス(FACE)であるか否かを判定する。
オート吹出口がフェイスであると判定された場合(YES判定の場合)には、ステップS46へ進み、クーラサイクルによる冷房を選択する。この理由はステップS34と同様である。
オート吹出口がフェイスでないと判定された場合(NO判定の場合)には、ヒートポンプサイクルを選択すべくステップS35へ進む。
ステップS35では、エコノミースイッチ(エコスイッチ)がオン(ON)されているか否かを判定する。エコノミースイッチがオフ(OFF)であると判定した場合(NO判定の場合)にはステップS36へ進み、窓曇り判定値を所定の値(図9の例では100)に設定する。ここで、窓曇り判定値は、窓曇りの可能性が高いか否かを判定するための閾値である。
一方、エコノミースイッチがオン(ON)されていると判定した場合(YES判定の場合)には、ステップS37へ進み、窓曇り判定値をステップS36の場合よりも大きな値(図9の例では110)に設定する。
これにより、エコノミースイッチがオンされている省動力運転時には、エコノミースイッチがオフされている通常運転時よりも除湿有りヒートポンプサイクルが選択される頻度が下がることとなる(ステップS38〜S42を参照)。
次いで、ステップS38において、窓ガラス表面相対湿度RHWが、ステップS36またはステップS37で設定された窓曇り判定値よりも大きいか否かを判定する。窓ガラス表面相対湿度RHWは、窓ガラス近傍の車室内空気の相対湿度と、窓ガラス近傍の車室内空気の温度と、窓ガラス表面温度(窓ガラス室内側表面温度)と、予め空調制御装置50に記憶された湿り空気線図とを用いて算出される。
本例では、窓ガラス表面相対湿度RHWは、窓ガラス表面に配置されたRHWセンサ45の検出値に基づいて算出される。
窓ガラス表面相対湿度RHWが窓曇り判定値以下であると判定された場合(NO判定の場合)には、窓曇りの可能性が低いと判断して、除湿能力の無いHOTサイクル(暖房モード)を選択する(ステップS42)。
ステップS38で窓ガラス表面相対湿度RHWが窓曇り判定値よりも大きいと判定された場合(YES判定の場合)には、窓曇りの可能性が高いと判断して、ステップS39ヘ進み、除湿の必要性を蒸発器温度TEに基づいて判定する。より具体的には、蒸発器温度TEが高いほど除湿の必要性が高いと判定し、蒸発器温度TEが低いほど除湿の必要性が低いと判定する。
本例では、2−TEの値が1以下である場合(2−TE≦1)には除湿の必要性が高いと判定してヒートポンプサイクルの中で除湿能力が最も高いDRY_EVAサイクル(第1除湿モード)を選択する(ステップS40)。
また、2−TEの値が1より大きくかつ2以下である場合(1<2−TE≦2)には除湿の必要性が低いと判定して、DRY_EVAサイクルに比べて除湿能力は劣るが暖房能力は高いDRY_ALLサイクル(第2除湿モード)を選択する(ステップS41)。
また、2−TEの値が2より大きい場合(2<2−TE)には除湿の必要性が無いと判定して除湿能力は無いが暖房能力が最も高いHOTサイクル(暖房モード)を選択する(ステップS42)。
これにより、ヒートポンプサイクルの除湿能力が除湿の必要性に応じて調整されることとなる。
なお、ステップS39は必ずしも必要ではなく、ステップS39を省略してもよい。すなわち、ステップS38において吸込口がマニュアル内気であると判定された場合には、除湿の必要性を判定することなく無条件に除湿有りヒートポンプサイクルを選択するようにしてもよい。
因みに、ステップS37の窓曇り判定値、すなわちエコノミースイッチがオンされている場合の窓曇り判定値を大きくし過ぎると、運転に支障のある窓曇りが発生するような場合でも除湿能力の無いHOTサイクル(除湿無しヒートポンプサイクル)が選択されて防曇性が発揮されないようになってしまうので、安全上好ましくない。
したがって、ステップS37の窓曇り判定値は、公差などを考慮した上で最悪の状態でも運転に支障の無い程度の窓曇りで収まるような値を設定する必要がある。
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く制御されるので、制御ステップS6にて選択された運転モードに応じて以下のように作動する。
(a)冷房モード(COOLサイクル:図1参照)
冷房モードでは、空調制御装置50が全ての電磁弁を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と第1三方継手15の1つの冷媒流入出口との間を接続し、低圧電磁弁17が閉弁し、高圧電磁弁20が開弁し、熱交換器遮断電磁弁21が開弁し、除湿電磁弁24が閉弁する。
これにより、図1の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→第1三方継手15→室外熱交換器16→第2三方継手19→高圧電磁弁20→第2逆止弁22→温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b→第4三方継手25→室内蒸発器26→温度式膨張弁27の感温部27a→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
この冷房モードの冷媒回路では、電気式三方弁13から第1三方継手15へ流入した冷媒は、低圧電磁弁17が閉弁しているので低圧電磁弁17側へ流出することはない。また、室外熱交換器16から第2三方継手19へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉弁しているので熱交換器遮断電磁弁21側へ流出することはない。また、温度式膨張弁27の可変絞り機構部27bから流出した冷媒は、除湿電磁弁24が閉弁しているので除湿電磁弁24側へ流出することはない。さらに、温度式膨張弁27の感温部27aから第5三方継手28へ流入した冷媒は、第2逆止弁22の作用によって第2逆止弁22側に流出することはない。
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて室内蒸発器26通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却され、さらに、室外熱交換器16にて外気と熱交換して冷却され、温度式膨張弁27にて減圧膨張される。温度式膨張弁27にて減圧された低圧冷媒は室内蒸発器26へ流入し、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器26を通過する送風空気が冷却される。
この際、前述の如くエアミックスドア38の開度が調整されるので、室内蒸発器26にて冷却された送風空気の一部(または全部)が冷風バイパス通路34から混合空間35へ流入し、室内蒸発器26にて冷却された送風空気の一部(または全部)が加熱用冷風通路33へ流入してヒータコア36、室内凝縮器12、PTCヒータ37を通過する際に再加熱されて混合空間35へ流入する。
これにより、混合空間35にて混合されて車室内へ吹き出す送風空気の温度が所望の温度に調整されて、車室内の冷房を行うことができる。なお、冷房モードでは、送風空気の除湿能力も高いが、暖房能力は殆ど発揮されない。
また、室内蒸発器26から流出した冷媒は、温度式膨張弁27の感温部27aを介して、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
(b)暖房モード(HOTサイクル:図2参照)
暖房モードでは、空調制御装置50が電気式三方弁13、高圧電磁弁20、低圧電磁弁17を通電状態とし、残りの電磁弁21、24を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続し、低圧電磁弁17が開弁し、高圧電磁弁20が閉弁し、熱交換器遮断電磁弁21が開弁し、除湿電磁弁24が閉弁する。
これにより、図2の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→熱交換器遮断電磁弁21→第2三方継手19→室外熱交換器16→第1三方継手15→低圧電磁弁17→第1逆止弁18→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
この暖房モードの冷媒回路では、固定絞り14から第3三方継手23へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉弁しているので除湿電磁弁24側へ流出することはない。また、熱交換器遮断電磁弁21から第2三方継手19へ流入した冷媒は、高圧電磁弁20が閉弁しているので高圧電磁弁20側へ流出することはない。また、室外熱交換器16から第1三方継手15へ流入した冷媒は、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続しているので電気式三方弁13側へ流出することはない。第1逆止弁18から第5三方継手28へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉じているので温度式膨張弁27側へ流出することはない。
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて送風機32から送風された送風空気と熱交換して冷却される。これにより、室内凝縮器12を通過する送風空気が加熱される。この際、エアミックスドア38の開度が調整されるので、冷房モードと同様に、混合空間35にて混合されて車室内へ吹き出す送風空気の温度が所望の温度に調整されて、車室内の暖房を行うことができる。なお、暖房モードでは、送風空気の除湿能力は発揮されない。
また、室内凝縮器12から流出した冷媒は、固定絞り14にて減圧されて室外熱交換器16へ流入する。室外熱交換器16へ流入した冷媒は、送風ファン16aから送風された車室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器16から流出した冷媒は、低圧電磁弁17、第1逆止弁18等を介して、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
(c)第1除湿モード(DRY_EVAサイクル:図3参照)
第1除湿モードでは、空調制御装置50が電気式三方弁13、低圧電磁弁17、熱交換器遮断電磁弁21および除湿電磁弁24を通電状態とし、高圧電磁弁20を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続し、低圧電磁弁17が開弁し、高圧電磁弁20が開弁し、熱交換器遮断電磁弁21が閉弁し、除湿電磁弁24が開弁する。
これにより、図3の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→除湿電磁弁24→第4三方継手25→室内蒸発器26→温度式膨張弁27の感温部27a→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
この第1除湿モードの冷媒回路では、固定絞り14から第3三方継手23へ流入した冷媒は、熱交換器遮断電磁弁21が閉弁しているので熱交換器遮断電磁弁21側へ流出することはない。また、除湿電磁弁24から第4三方継手25へ流入した冷媒は、第2逆止弁22の作用によって温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b側へ流出することはない。また、温度式膨張弁27の感温部27aから第5三方継手28へ流入した冷媒は、第1逆止弁18の作用によって第1逆止弁18側へ流出することはない。
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて室内蒸発器26通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却される。これにより、室内凝縮器12を通過する送風空気が加熱される。室内凝縮器12から流出した冷媒は、固定絞り14にて減圧されて室内蒸発器26へ流入する。
室内蒸発器26へ流入した低圧冷媒は、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器26を通過する送風空気が冷却されて除湿される。従って、室内蒸発器26にて冷却されて除湿された送風空気は、ヒータコア36、室内凝縮器12、PTCヒータ37を通過する際に再加熱されて、混合空間35から車室内へ吹き出される。すなわち、車室内の除湿を行うことができる。なお、第1除湿モードでは、送風空気の除湿能力を発揮できるが、暖房能力は小さい。
また、室内蒸発器26から流出した冷媒は、温度式膨張弁27の感温部27aを介して、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
(d)第2除湿モード(DRY_ALLサイクル:図4参照)
第2除湿モードでは、空調制御装置50が電気式三方弁13、低圧電磁弁17、除湿電磁弁24を通電状態とし、残りの電磁弁20、21を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続し、低圧電磁弁17が開弁し、高圧電磁弁20が開弁し、熱交換器遮断電磁弁21が開弁し、除湿電磁弁24が開弁する。
これにより、図4の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→熱交換器遮断電磁弁21→第2三方継手19→室外熱交換器16→第1三方継手15→低圧電磁弁17→第1逆止弁18→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→除湿電磁弁24→第4三方継手25→室内蒸発器26→温度式膨張弁27の感温部27a→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
つまり、第2除湿モードでは、固定絞り14から第3三方継手23へ流入した冷媒が熱交換器遮断電磁弁21側および除湿電磁弁24側の双方に流出して、第1逆止弁18から第5三方継手28へ流入した冷媒および温度式膨張弁27の感温部27aから第5三方継手28へ流入した冷媒の双方が第5三方継手28にて合流してアキュムレータ29側へ流出する。
なお、この第2除湿モードの冷媒回路では、室外熱交換器16から第1三方継手15へ流入した冷媒は、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続しているので電気式三方弁13側へ流出することはない。また、除湿電磁弁24から第4三方継手25へ流入した冷媒は、第2逆止弁22の作用によって温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b側へ流出することはない。
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて室内蒸発器26通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却される。これにより、室内凝縮器12を通過する送風空気が加熱される。室内凝縮器12から流出した冷媒は、固定絞り14にて減圧された後、第3三方継手23にて分岐されて室外熱交換器16および室内蒸発器26へ流入する。
室外熱交換器16へ流入した冷媒は、送風ファン16aから送風された車室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器16から流出した冷媒は、低圧電磁弁17、第1逆止弁18等を介して、第5三方継手28へ流入する。室内蒸発器26へ流入した低圧冷媒は、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器26を通過する送風空気が冷却されて除湿される。
従って、室内蒸発器26にて冷却されて除湿された送風空気は、ヒータコア36、室内凝縮器12、PTCヒータ37を通過する際に再加熱されて、混合空間35から車室内へ吹き出される。この際、第2除湿モードでは、第1除湿モードに対して、室外熱交換器16にて吸熱した熱量を室内凝縮器12にて放熱することができるので、送風空気を第1除湿モードよりも高温に加熱できる。すなわち、第2除湿モードでは、高い暖房能力を発揮させながら除湿能力も発揮させる除湿暖房を行うことができる。
また、室内蒸発器26から流出した冷媒は、第5三方継手28へ流入して室外熱交換器16から流出した冷媒と合流し、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
以上のように、本実施形態では、ヒートポンプサイクルで除湿を行う車両用空調装置の実用性を向上することができる。
具体的には、ステップS38のごとく窓曇りの可能性の判定を窓ガラス表面相対湿度RHWに基づいて行うので、上記従来技術のごとく外気温およびTAOにより窓曇りの可能性を推定するものと比較して窓曇りの可能性を精度良く判定することができる。
このため、必要以上に除湿有りヒートポンプサイクルが選択されることを防止することができるので、蒸気圧縮式冷凍サイクルの動力の増加を抑制することができ、ひいては車両燃費の悪化を抑制することができる。
また、ステップS35〜ステップS37のごとくエコノミースイッチがオンされているとき、すなわち乗員が空調快適性よりも燃費を優先させるという意思表示を行っているときには、エコノミースイッチがオフされているときと比べて、除湿有りヒートポンプサイクルが選択される頻度を少なくするので、蒸気圧縮式冷凍サイクルの動力の増加をより抑制することができ、ひいては車両燃費の悪化をより抑制することができる。
また、ステップS39〜ステップS42のごとくヒートポンプサイクルの除湿能力を除湿の必要性に応じて調整するので、ヒートポンプサイクルによる除湿能力が過剰に発揮されることを抑制できる。このため、蒸気圧縮式冷凍サイクルの動力の増加をより一層抑制することができ、ひいては車両燃費の悪化をより一層抑制することができる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、窓ガラス表面相対湿度RHWが所定の閾値よりも大きいときに窓曇りの可能性が高いと判定するが、第2実施形態では、図10に示すように、吸込口モードスイッチ60bが乗員によって内気モードに操作されている状態のときに窓曇りの可能性が高いと判定する。
すなわち、吸込口モードとして内気モードが設定された時は車室内の湿度が短時間で上昇してしまい、窓ガラスが曇りやすくなる。特に高速走行時には窓ガラスが走行風によって冷却されることから窓ガラスが急に曇る可能性が高く運転に支障が生じてしまうという実用上の問題がある。
この点に鑑みて、本実施形態では、乗員によって内気モードが設定されているときには、窓曇りの可能性が高いと判定して除湿を行う。
図10は、図9のフローチャートのステップS35〜S38をステップS65に変更したものであり、それ以外は図9と同じである。
ステップS63(図9のステップS33に相当)でオート吹出口がフェイス(FACE)でないと判定された場合(NO判定の場合)には、ヒートポンプサイクルを選択すべく、ステップS65へ進む。ステップS65では、吸込口がマニュアル内気(マニュアルREC)であるか否か、すなわち吸込口モードスイッチ60bが内気モードに操作されているか否かを判定する。
吸込口がマニュアル内気でないと判定された場合(NO判定の場合)には、窓曇りの可能性が低いと判断して、除湿能力の無いHOTサイクルを選択する(ステップS69)。
ステップS65で吸込口がマニュアル内気であると判定された場合(YES判定の場合)には、窓曇りの可能性が高いと判断して、ステップS66(図9のステップS39に相当)ヘ進み、除湿の必要性を蒸発器温度TEに基づいて判定し、除湿の必要性に応じてDRY_EVAサイクル(ステップS67)、DRY_ALLサイクル(ステップS68)、およびHOTサイクル(ステップS69)のいずれかを選択する。
これにより、除湿の必要性が有る場合にはDRY_EVAサイクルまたはDRY_ALLサイクルが選択されて除湿が行われるので、防曇性を確保することができる。
なお、ステップS66は必ずしも必要ではなく、ステップS66を省略してもよい。すなわち、ステップS65において吸込口がマニュアル内気であると判定された場合には、除湿の必要性を判定することなく無条件に除湿有りヒートポンプサイクルを選択するようにしてもよい。
本実施形態によると、内気モード以外が設定されて内気の風量割合が低いときには窓ガラスが曇りにくいと判断して除湿無しヒートポンプサイクル(HOTサイクル)を選択し、内気モード以外が設定されて内気の風量割合が高いときには窓ガラスが曇りやすいときと判断して除湿有りヒートポンプサイクル(DRY_EVAサイクルまたはDRY_ALLサイクル)を選択するので、窓ガラスが曇りにくい状況下で必要以上に除湿有りヒートポンプサイクルが選択されることを防止することができる。
このため、蒸気圧縮式冷凍サイクルの動力の増加を抑制することができるので、車両燃費の悪化を抑制することができ、ひいてはヒートポンプサイクルで除湿を行う車両用空調装置の実用性を向上することができる。
(第3実施形態)
本第3実施形態は、ステップS11すなわち圧縮機11の回転数の決定手法の詳細な内容に関するものである。
図11(a)は、ステップS11の要部を示すフローチャートである。図11(a)のフローチャートの制御処理は、エアコンスイッチ60aがオン(ON)されているとき等に実行される。
図11(a)のフローチャートでは、蒸気圧縮式冷凍サイクルの省動力化、換言すれば車両燃費の向上を図る制御を行う。より具体的には、暖房に必要な熱源をエンジン冷却水によって確保可能であり、かつ除湿の必要が無いときには、圧縮機(コンプレッサ)11を停止させて省電力化を図る(ステップS84およびステップS86)。
まず、ステップ80では、クーラサイクルが選択されているか否かを判定する。クーラサイクルが選択されていると判定した場合(YES判定の場合)には、クーラサイクル(冷房モード)でのコンプレッサ回転数変化量ΔfCを、上述した基本的な決定手法を用いて求める。
クーラサイクルが選択されていないと判定された場合、すなわちヒートポンプサイクルが選択されていると判定された場合(NO判定の場合)には、ステップS81へ進み、ヒートポンプサイクル(暖房モード)でのコンプレッサ回転数変化量ΔfHを上述した基本的な決定手法を用いて求める。図11(b)は、コンプレッサ回転数変化量ΔfHを求めるためのファジー推論のルールの一例を示すものである。
次いで、ステップS82では、コンプレッサ回転数変化量Δfに、ステップS81のヒートポンプサイクルでのコンプレッサ回転数変化量ΔfHを代入する。因みに、ステップ80でクーラサイクルが選択されていると判定された場合(YES判定の場合)には、コンプレッサ回転数変化量Δfにクーラサイクルでのコンプレッサ回転数変化量ΔfCが代入されることとなる。
次いで、ステップS83では仮の今回のコンプレッサ回転数を求める。仮の今回のコンプレッサ回転数は、前回のコンプレッサ回転数にステップS81のコンプレッサ回転数変化量Δfを足し合わせたものである。
次いで、ステップS84では、仮の今回のコンプレッサ回転数に基づいて暫定のコンプレッサ回転数を求める。暫定のコンプレッサ回転数は、オイル戻りが確保できる最低回転数(予め設定された回転数)以上の回転数である。具体的には、仮の今回のコンプレッサ回転数と最低回転数(本例では1000rpm)とを比較して大きい方(MAX)の回転数を選択する。
次いで、ステップS85では、目標吹出温度TAOの吹き出し空気をエンジン冷却水で作ることができるか否か、換言すればエンジン冷却水温度Twが所定温度よりも高くなっているか否かを判定する。
本例では、室内コンデンサ目標温度(室内凝縮器目標温度)とエンジン冷却水温度Twとの差が所定の閾値(図11では2℃)よりも小さい場合には、目標吹出温度TAOの吹き出し空気をエンジン冷却水で作ることができると判定する。因みに、室内コンデンサ目標温度は、基本的には上述した暖房用熱交換器目標温度と同じであるが、暖房用熱交換器目標温度を若干補正した値にする場合もある。
室内コンデンサ目標温度とエンジン冷却水温度Twとの差が所定の閾値以上であると判定された場合(NO判定の場合)には、目標吹出温度TAOの吹き出し空気をエンジン冷却水で作ることができないと判断して、ステップS86へ進み、ヒートポンプサイクルを継続する。具体的には、今回のコンプレッサ回転数に、ステップS83の暫定のコンプレッサ回転数を設定する。これにより、ヒートポンプサイクルによる暖房が行われる。
一方、ステップS85で室内コンデンサ目標温度(室内凝縮器目標温度)とエンジン冷却水温度Twとの差が所定の閾値よりも小さいと判定された場合(YES判定の場合)には、目標吹出温度TAOの吹き出し空気をエンジン冷却水で作ることができると判断して、ステップS87へ進み、除湿能力が必要な状況であるか否かを判定する。
本例では、除湿暖房サイクル(除湿有りヒートポンプサイクル=DRY_EVAサイクルまたはDRY_ALLサイクル)が選択されている場合には、除湿能力が必要である状況であると判定する。
ステップS87で除湿暖房サイクルが選択されていないと判定された場合(NO判定の場合)には、除湿能力が必要ない状況であると判断し、ステップS88へ進み、今回のコンプレッサ回転数fHnを0[rpm]にする。
これにより、圧縮機11が停止して除湿能力が発揮されなくなる。このように、圧縮機11が停止することで省電力化が図られることとなる。
因みに、圧縮機11が停止することでヒートポンプサイクル(HOTサイクル)による暖房能力も発揮されなくなるが、この場合にはエンジン冷却水温度Twが十分に高くなっているので、暖房に必要な熱源をエンジン冷却水によって確保することができ、車室内の暖房を支障なく行うことができる。
一方、ステップS87で除湿暖房サイクルが選択されていると判定された場合(YES判定の場合)には、除湿能力が必要である状況であると判断し、上述したステップS86へ進む。これにより、圧縮機11が停止されることなく、除湿暖房サイクルによって除湿暖房が行われることとなる。
本実施形態によると、ステップS85→S87→S88のごとく、除湿無しヒートポンプサイクルが選択され、かつエンジン冷却水温度Twが所定温度よりも高いときには、圧縮機11の回転数を減少補正する(本例では、圧縮機11の回転数を0[rpm]にする)ので、圧縮機11の回転数が低くなって除湿無しヒートポンプサイクルの暖房能力が低下しても、冷却水を熱源とするヒータコア36で暖房能力を補うことができる。
このため、暖房能力の低下を抑制しつつ、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の省動力化を図ることができ、ひいては実用性を向上できる。
しかも、ステップS85→S87→S86のごとく、除湿有りヒートポンプサイクルが選択されているときには、エンジン冷却水温度Twが所定温度よりも高くても圧縮機11の回転数を減少補正しないので、除湿有りヒートポンプサイクル選択時に必要とされる除湿能力を確保して防曇性を確保することができる。
(第4実施形態)
上記第1実施形態では、オート吹出口がフェイス以外である場合にはヒートポンプサイクルを選択してクーラサイクルを選択しないが、本第4実施形態では、図12に示すように、オート吹出口がフェイス以外である場合であっても、室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられる場合にはクーラサイクルを選択する。
すなわち、除湿有りヒートポンプサイクルが選択されている場合に室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられると、冷媒流量が低下して除湿能力が低下してしまうので、防曇性を確保できなくなってしまうという実用上の問題がある。
この点に鑑みて、除湿有りヒートポンプサイクルが選択されている場合に室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられる場合には、クーラサイクルに切り替えることで除湿能力を確保して防曇性を確保し、ひいては実用性を向上する。
図12のフローチャートの制御処理は、エアコンスイッチ60aおよびオートスイッチがオン(ON)されているとき等に実行される。
まず、ステップS90では、外気温が所定の閾値(本例では−3℃)よりも低いか否かを判定する。外気温が所定の閾値よりも低いと判定された場合(YES判定の場合)には、ヒートポンプサイクルの性能が十分に出ないため、ステップS91へ進み、クーラサイクル(COOLサイクル)を選択する。
外気温が所定の閾値以上であると判定された場合(NO判定の場合)には、ステップS92へ進み、オート吹出口がフェイス(FACE)か否かを判定する。オート吹出口がフェイスであると判定された場合(YES判定の場合)には、暖房を行う必要がないと判断してステップS91へ進み、クーラサイクルを選択する。
ステップS92でオート吹出口がフェイス以外であると判定された場合(NO判定の場合)には、暖房を行う必要があると判断し、ヒートポンプサイクルを選択すべくステップS93へ進む。
ステップS93では、除湿を行う必要があるか否かを判定する。本例では、窓ガラス表面相対湿度RHWが100よりも大きいか否かによって窓曇りの可能性の有無を判定し、窓曇りの可能性の有無によって除湿を行う必要があるか否かを判定する。
窓ガラス表面相対湿度RHWが100以下で窓曇りの可能性が無いと判定された場合(NO判定の場合)には、除湿を行う必要無しと判断して、ステップS94へ進み、除湿能力は無いが暖房効率は最も高いHOTサイクルを選択する。
ステップS93で窓ガラス表面相対湿度RHWが100よりも大きく窓曇りの可能性が有ると判定された場合(YES判定の場合)には、ステップS95へ進み、室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられる可能性があるか否かを判定する。
本例では、室内コンデンサ目標温度(室内凝縮器目標温度)とエンジン冷却水温度Twとが近い(図12では室内コンデンサ目標温度とエンジン冷却水温度Twとの差が−3℃よりも大きくかつ3℃よりも小さい)と判定された場合)には、室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられる可能性があると判定する。
室内コンデンサ目標温度とエンジン冷却水温度Twとの差が−3℃よりも大きくかつ3℃よりも小さいと判定された場合(YES判定の場合)には、室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられる可能性があると判断して、ステップS96へ進み、エンジンEGの回転数を目標回転数に対して所定回転数(本例では500rpm)だけ高くする要求(UP要求)をすることを決定する。なお、エンジンEGの目標回転数は、バッテリ残量等に基づいて算出されるものである。
ここで、エンジンEGの回転数をUP要求する理由は、ヒートポンプサイクルからクーラサイクルに切替えた際に吹出空気温度が低下しないようにするためである。すなわち、クーラサイクルに切替える前、あるいは切り替える時にエンジンEGの回転数を高くして冷却水温度Twを高くしておけば、クーラサイクルに切替えた際の吹出空気温度を高くすることができるからである。
次いで、ステップS97では、室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられるか否かを判定する。本例では、室内コンデンサ目標温度とエンジン冷却水温度Twとの差が1℃より小さい場合(YES判定の場合)には、室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられると判定する。
室内コンデンサ目標温度とエンジン冷却水温度Twとの差が1℃以上であると判定された場合(NO判定の場合)には、室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられないと判断してステップS98へ進む。ステップS98は、図9のステップS39に相当するものであり、除湿の必要性を判定し、除湿の必要性に応じてヒートポンプサイクルの除湿能力を適宜選択する(ステップS99、S100、S94)。
一方、ステップS97で室内コンデンサ目標温度とエンジン冷却水温度Twとの差が1℃より小さいと判定された場合(YES判定の場合)には、室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられると判断して、ステップS101へ進み、窓曇りの可能性が高いか否かを判定する。
本例では、窓ガラス表面相対湿度RHWが110よりも大きい場合に窓曇りの可能性が高いと判定する。窓ガラス表面相対湿度RHWが110よりも大きく窓曇りの可能性が高いと判定された場合(YES判定の場合)には、ステップS91へ進み、除湿能力の最も高いクーラサイクルを選択して防曇性を確保する。
ステップS101で窓ガラス表面相対湿度RHWが110以下であり窓曇りの可能性が高くないと判定された場合(NO判定の場合)には、ステップS98へ進み、除湿の必要性に応じてヒートポンプサイクルの除湿能力を適宜選択する。
なお、ステップS101は必ずしも必要ではなく、ステップS101を省略してもよい。すなわち、ステップS95において室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられると判定された場合には、窓曇りの可能性を判定することなく無条件にステップS91へ進み、クーラサイクルを選択するようにしてもよい。
本実施形態によると、ステップS97およびステップS95のごとく、室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられると判断した場合にはヒートポンプサイクルからクーラサイクルに切り替えて除湿能力を確保するので、防曇性を確保することができ、ひいては実用性を向上できる。
ここで、ヒートポンプサイクルからクーラサイクルに切り替えると冷媒回路切替手段をなす電磁弁13、17、20、21、24の作動音がしたり、吹出空気温度が急に変化したりするといった不都合が生じる。
この点に鑑みて、本実施形態では、ステップS101のごとく、窓曇りの可能性が高いとき、換言すれば除湿能力を必要とするときにヒートポンプサイクルからクーラサイクルに切り替えるので、窓曇りの可能性が低いとき、換言すれば除湿能力を必要としないときにヒートポンプサイクルからクーラサイクルに切り替えることを防止できる。このため、上記のような不都合の発生を抑制することができる。
さらに、本実施形態では、ステップS96のごとく、室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられる可能性があるときにエンジンEGの回転数を目標回転数に対して所定回転数だけ高くするので、ヒートポンプサイクルからクーラサイクルに切り替える前、あるいは切り替える時にエンジン冷却水温度Twを高くしておくことができる。このため、ヒートポンプサイクルからクーラサイクルに切り替えた際に吹出空気温度が低下することを抑制することができる。
(第5実施形態)
上記第4実施形態では、ヒートポンプサイクル時に室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられる場合にはクーラサイクルに切り替えて除湿能力を確保するが、本第5実施形態では、図13に示すように、ヒートポンプサイクル時に室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられる場合にはヒータコア36の放熱量を減少させることによって室内凝縮器12で放熱できるようにする。これにより、クーラサイクルに切り替えることなく、除湿有りヒートポンプサイクルで除湿能力を確保する。
図13のフローチャートの制御処理は、エアコンスイッチ60aおよびオートスイッチがオン(ON)されているとき等に実行される。
まず、ステップS110では、外気温が所定の閾値(本例では−3℃)よりも低いか否かを判定する。外気温が所定の閾値よりも低いと判定された場合(YES判定の場合)には、ヒートポンプサイクルの性能が十分に出ないため、ステップS111へ進み、クーラサイクル(COOLサイクル)を選択する。
ステップS110で外気温が所定の閾値よりも高いと判定された場合(NO判定の場合)には、ステップS112へ進み、吹出口モードがフェイスモードか否かを判定する。フェイスモードであると判定された場合(YES判定の場合)には、暖房を行う必要がないと判断してステップS111へ進み、クーラサイクルを選択する。
フェイスモード以外であると判定された場合(NO判定の場合)には、暖房を行う必要があると判断し、ヒートポンプサイクルを選択すべくステップS113へ進む。
ステップS113では、除湿を行う必要があるか否かを判定する。本例では、窓ガラス表面相対湿度RHWが100よりも大きいか否かによって窓曇りの可能性の有無を判定し、窓曇りの可能性の有無によって除湿を行う必要があるか否かを判定する。
窓ガラス表面相対湿度RHWが100以下であり窓曇りの可能性が無いと判定された場合(NO判定の場合)には、除湿を行う必要無しと判断してステップS114へ進み、除湿能力は無いが暖房効率は最も高いHOTサイクルを選択する。
ステップS113で窓ガラス表面相対湿度RHWが100よりも大きく窓曇りの可能性が有ると判定された場合(YES判定の場合)には、ステップS115へ進み、室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられる可能性があるか否かを判定する。
本例では、室内コンデンサ目標温度(室内凝縮器目標温度)とエンジン冷却水温度Twとが近い(図12では室内コンデンサ目標温度とエンジン冷却水温度Twとの差が5℃よりも小さい)場合には、室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられる可能性があると判定する。
室内コンデンサ目標温度とエンジン冷却水温度Twとの差が5℃以上であると判定された場合(NO判定の場合)には、室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げらる可能性がないと判断して、ステップS116へ進む。ステップS116は、図12のステップS98に相当するものであり、除湿の必要性を判定し、除湿の必要性に応じてヒートポンプサイクルの除湿能力を適宜選択する(ステップS117、S118、S114)。
ステップS115で室内コンデンサ目標温度とエンジン冷却水温度Twとの差が5℃よりも小さいと判定された場合(YES判定の場合)には、室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられる可能性があると判断して、ステップS119へ進み、窓曇りの可能性が高いか否かを判定する。本例では、窓ガラス表面相対湿度RHWが110よりも大きい場合に窓曇りの可能性が高いと判定する。
窓ガラス表面相対湿度RHWが110よりも大きく窓曇りの可能性が高いと判定された場合(YES判定の場合)には、ステップS120へ進み、ウオーターポンプ(冷却水ポンプ)を停止する要求信号を出力することを決定する。そして、ステップS116へ進み、除湿の必要性に応じてヒートポンプサイクルの除湿能力を適宜選択する。
ウオーターポンプを停止することにより、エンジン冷却水温度Twが低下してヒータコア36の放熱量が減少することとなる。このため、室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられないので、ヒートポンプサイクルの冷媒流量が低下することなく、除湿有りヒートポンプサイクルで除湿能力を確保することができる。
一方、ステップS119で窓ガラス表面相対湿度RHWが110以下であり窓曇りの可能性が高くないと判定された場合(NO判定の場合)には、ステップS116へ進み、除湿の必要性に応じてヒートポンプサイクルの除湿能力を適宜選択する。
この場合には、エンジン冷却水温度Twが低下せずに維持されるので、室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられて除湿能力および暖房能力が低下する可能性がある。しかしながら、この場合には窓曇りの可能性が高くないので除湿能力が低下しても支障はない。また、暖房能力はヒータコア36の放熱によって確保されることとなる。
なお、ステップS119は必ずしも必要ではなく、ステップS119を省略してもよい。すなわち、ステップS115において室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられると判定された場合には、窓曇りの可能性を判定することなく無条件にステップS120へ進み、ウオーターポンプを停止する要求信号を出力するようにしてもよい。
また、図1〜図4の破線で示す冷却水回路に冷却水弁を配置した構成を採用した場合には、ステップS116において、ウオーターポンプを停止する代わりに冷却水弁を閉じるようにしてもよい。
(第6実施形態)
上記第4実施形態では、ヒートポンプサイクル時に室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられる場合にはヒータコア36の放熱量を減少させることによって室内凝縮器12で放熱できるようにするが、本第6実施形態では、図14に示すように、ヒートポンプサイクル時に室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられる場合には室内凝縮器12の温度を上昇させることによって室内凝縮器12で放熱できるようにする。
図14は、図12のフローチャートのステップS96、S97をステップS136、S137に変更したものであり、それ以外は図12と同じである。
ステップS135(図12のステップS95に相当)において、室内コンデンサ目標温度とエンジン冷却水温度Twとが近い(図14では室内コンデンサ目標温度とエンジン冷却水温度Twとの差が−3℃よりも大きくかつ3℃よりも小さい)と判定された場合(YES判定の場合)には、室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられる可能性があると判断してステップS136へ進み、室内コンデンサ目標温度を所定温度(本例では5℃)だけ増加補正する(補正室内コンデンサ目標温度=室内コンデンサ目標温度+5)。
このように室内コンデンサ目標温度を増加させると、上述のステップS4において圧縮機11の回転数吐出冷媒圧力Pdの目標高圧PDOが増加して圧縮機11の回転数も増加することとなる。これにより、室内凝縮器12の温度が上昇することとなる。
次いで、ステップS137では、室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられるか否かを判定する。本例では、ステップS136の補正室内コンデンサ目標温度とエンジン冷却水温度Twとの差が1℃より小さいと判定された場合(YES判定の場合)に室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられると判断して、ステップS161(図12のステップS101に相当)へ進み、窓曇りの可能性が高いか否かを判定する。
一方、ステップS135で室内コンデンサ目標温度とエンジン冷却水温度Twとが近くないと判定された場合(NO判定の場合)には、室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられる可能性がないと判断して、室内コンデンサ目標温度を増加補正することなく(補正室内コンデンサ目標温度=室内コンデンサ目標温度)、ステップS137へ進む。
これによると、ヒートポンプサイクル時に室内凝縮器12の放熱がヒータコア36の放熱によって妨げられる場合には室内凝縮器12の温度を上昇させることによって室内凝縮器12で放熱できるようにするので、除湿有りヒートポンプサイクルで除湿能力を確保することができる。
一方、室内凝縮器12の温度を上昇させると吹出空気温度が目標吹出温度TAOを上回ってしまうという実用上の問題があるので、本実施形態では、図15(a)に示すように、室内凝縮器12の温度を上昇させた場合にはエアミックスドア38の目標開度SWを小さく算出することによって吹出空気温度を下げて目標吹出温度TAOを上回ってしまうことを抑制する。
図15(a)は、本実施形態におけるステップS10の要部を示すフローチャートである。まず、ステップS150では、後述するステップS152の数式で用いる制御水温TWを求める。本例では、エンジン冷却水温度TwおよびステップS136の補正室内コンデンサ目標温度のうち大きい方を制御水温TWとする。
ステップS151では、ステップS152の数式で用いる補正エバポレータ温度f1(補正蒸発器温度)を算出する。本例では、エバポレータ温度TE(蒸発器温度)と図15(b)のマップとに基づいて補正エバポレータ温度f1を算出する。
ステップS152では、ステップS153の数式で用いる加熱器温度を求める。本例では、ステップS152の数式により加熱器温度を求める。ステップS152の数式は実験により得られたものである。
そして、ステップS153では、エアミックスドア38の目標開度SWをTAO、エバポレータ温度TE、および加熱器温度に基づいて算出する。
本例では、ステップS153の数式において、エバポレータ温度TEに2を加えているが(TE+2)、エバポレータ温度TEに加える数値は適宜変更可能であり、また必ずしもエバポレータ温度TEに数値を加える必要はない。
また、本例では、ステップS153の数式において、分母が10よりも小さくならないようにしているが、これは分母が小さくなりすぎて目標開度SWが大きくなりすぎることを防止するためである。
これによると、ステップS136で室内コンデンサ目標温度が増加補正されるとステップS153の数式の分母が大きくなって目標開度SWが小さくなる。このため、冷風バイパス通路34の開度が大きくなって冷風バイパス通路34を流れる冷風の割合が大きくなるので、混合空間35内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を適宜低下させることができる。その結果、吹出空気温度が目標吹出温度TAOを上回ってしまうことを抑制できるので、実用性をより向上できる。
(第7実施形態)
本第7実施形態は、冷凍サイクル10の各種機器の故障時における制御に関するものである。
蒸気圧縮式冷凍サイクル10においては、冷媒回路切替手段をなす電磁弁13、17、20、21、24および冷媒吸入温度センサ57のうち少なくとも1つが故障が故障すると室内蒸発器26への冷媒流量が減少するので、除湿能力が低下して防曇性が低下してしまうという実用上の問題がある。
この点に鑑みて、本実施形態では、図16(a)に示すように、電磁弁13、17、20、21、24および冷媒吸入温度センサ57のうち少なくとも1つが故障していると判断されたときには外気モードを選択する。これにより、冷凍サイクル10の除湿能力を確保できなくなっても外気を導入することで防曇効果を発揮する。
図16(a)はステップS8の要部を示すフローチャートである。まず、ステップS180では、オート内外気の外気導入率SWIAを求める。オート内外気の外気導入率SWIAは外気導入率の仮の値であり、後述するステップS184〜S186で外気導入率の最終決定が行われる。本例では、TAOと図16(b)のマップとに基づいてオート内外気の外気導入率SWIAを求める。
ステップS181では、電磁弁13、17、20、21、24および冷媒吸入温度センサ57のうち少なくとも1つが故障したか否かを判定し、故障と判定された場合に故障フラグを1にする。故障と判定されなければ故障フラグを0にする。本例では、電磁弁の故障判定を、電磁弁のコイルの抵抗が0に近い(ショート)か、無限大に近い(オープン)かによって行う。
ステップS182では故障フラグが1であるか否かを判定し、故障フラグが1であると判定された場合(YES判定の場合)にはステップS186へ進み、外気導入率の最終決定値である外気導入率SWIを100%にする。これにより外気が導入されることとなるので、電磁弁が故障して冷凍サイクル10の除湿能力を確保できなくなっても窓曇りを抑制することができる。
ステップS182で故障フラグが1以外と判定された場合(NO判定の場合)にはステップS183へ進み、選択されている吸込口モードを判定する。
吸込口モードがマニュアル外気モード(マニュアルFRS)である場合、すなわち吸込口モードスイッチ60bの操作によって外気モードが設定されている場合にはステップS186へ進み、外気導入率SWIを100%にする(SWI=100)。
吸込口モードがマニュアル内気モード(マニュアルREC)である場合、すなわち吸込口モードスイッチ60bの操作によって内気モードが設定されている場合にはステップS185へ進み、外気導入率SWIを0%にする(SWI=0)。
吸込口モードがオートモードである場合、すなわち吸込口モードが自動制御によって設定されている場合にはステップS184へ進み、外気導入率SWIをオート内外気の外気導入率SWIAと同じにする(SWI=SWIA)。
本実施形態によると、ステップS181、S182、S186のごとく、電磁弁13、17、20、21、24および冷媒吸入温度センサ57のうち少なくとも1つが故障していると判断されたときには、外気の風量割合が所定割合以上にする(本例では、外気導入率SWIを100%にする)ので、乾いた外気を多く導入することで車室内の湿度を低く抑えることができる。
このため、電磁弁13、17、20、21、24および冷媒吸入温度センサ57のうち少なくとも1つの故障に伴う防曇性の低下を抑制することができ、ひいては実用性を向上できる。
(第8実施形態)
本第8実施形態は、ステップS9の吹出口モードの決定手法に関するものである。
乗員のマニュアル操作によって吹出口モードが内気モードが設定された場合(マニュアルREC時)には車室内の湿度が上昇しやすく窓曇りが発生しやすくなるという実用上の問題がある。
この点に鑑みて、本実施形態では、図17(a)に示すように、マニュアルREC時にはマニュアルREC以外の時よりもフットデフロスタモードになりやすくすることで、窓ガラス温度を高めて防曇性を確保する。
図17(a)はステップS9の要部を示すフローチャートである。まず、ステップS190では、オート吹出口モードを決定する。オート吹出口モードは自動制御により選択される吹出口モードであり、吹出口モードの仮の決定である。これに対し、吹出口モードの最終決定は、後述するステップS195、S197で行われる。本例では、オート吹出口モードをTAOと図17(b)のマップとに基づいて決定する。
次いで、ステップS191では、オート吹出口モードがフットモード(FOOT)またはバイレベルモード(B/L)であるか否かを判定する。オート吹出口モードがフットモードまたはバイレベルモードでない、すなわちフェイスモードであると判定された場合(NO判定の場合)には、ステップS195へ進み、オート吹出口モードをそのまま最終決定の吹出口モードにする(吹出口モード=オート吹出口モード)。
すなわち、ステップS9で説明したように、吹出口モードとしてフェイスモードが選択されるのはTAOが低温域であるとき(主に夏季)なので、この場合には吹出口モードが内気モードであったとしても窓曇り可能性が低いと判断してオート吹出口モードをそのまま最終決定の吹出口モードにする。
一方、ステップS191でオート吹出口モードがフットモードまたはバイレベルモードであると判定された場合(YES判定の場合)には、ステップS192へ進み、吸込口モードがマニュアルRECであるか否かを判定する。
吸込口モードがマニュアルREC以外であると判定された場合(NO判定の場合)には、ステップS194へ進み、吸込口モードとしてオートF/D(自動制御でのフットデフロスタモード)を選択するか否かを判定し、オートF/Dを選択すると判定された場合にはオートF/D判定フラグを1にする。本例では、オートF/Dを選択するか否かを、窓ガラス表面相対湿度RHWと図17(b)のマップとに基づいて判定する。
次いで、ステップS196ではオートF/D判定フラグが1であるか否かを判定する。オートF/D判定フラグが1以外であると判定された場合(NO判定の場合)には、ステップS195へ進み、ステップS190のオート吹出口モード(仮の吹出口モード)をそのまま最終決定の吹出口モードにする(吹出口モード=オート吹出口モード)。
ステップS196でオートF/D判定フラグが1であると判定された場合(YES判定の場合)には、ステップS197へ進み、最終決定の吹出口モードをF/Dモード(フットデフロスタモード)にする(吹出口モード=F/Dモード)。
一方、ステップS192で吸込口モードがマニュアルRECであると判定された場合(YES判定の場合)には、ステップS193へ進み、オートF/Dを選択するか否かをステップS194とは異なるマップに基づいて判定し、オートF/Dを選択すると判定された場合にはオートF/D判定フラグを1にする。
ステップS193およびステップS194のマップを比較すればわかるように、吸込口モードがマニュアルRECである場合には、吸込口モードがマニュアルREC以外である場合と比べて、オートF/D選択の閾値となるRHWの値が小さくなっている。
換言すれば、マニュアルREC時は、マニュアルREC以外の時と比較して、窓曇りの可能性が低くてもオートF/Dが早めに選択されることとなる。このため、窓曇りが発生しやすいマニュアルREC内気モード時に窓ガラス温度を高めて防曇性を確保することができる。
また、オートF/Dが早めに選択されることで、除湿無しヒートポンプサイクル時の防曇性を高めることができる。すなわち、窓ガラスに向けて温風を吹き出すことで窓ガラス温度を高めることができるので、吹出空気が除湿されていなくても窓曇りをある程度防止することができる。
このため、除湿無しヒートポンプサイクルと比較して暖房能力の劣る除湿有りヒートポンプサイクルの作動頻度を少なくして暖房効率を向上することができるので、蒸気圧縮式冷凍サイクルの動力の増加をより一層抑制することができる。その結果、車両燃費の悪化を抑制することができ、ひいては実用性を向上することができる。
(第9実施形態)
本第9実施形態は、ステップS11すなわち圧縮機11の回転数の決定手法の詳細な内容に関するものである。
上述のごとく、吹出口モードとしてフットモードが選択されているときには、空気を少なくともフット吹出口42から吹き出す。また、フットデフロスタモードまたはデフロスタモードが選択されているときには、デフロスタ吹出口43から吹き出す空気の風量割合をフットモードよりも多くすることで窓曇りを防止する。よって、フットデフロスタモードおよびデフロスタモードを、以下、防曇モードと言う。
吹出口モードスイッチ60cが防曇モードに操作されているときは、通常であれば冷凍サイクル10による除湿を行うべきであるが、乗員によっては、操作がよく分からずに防曇モードを選択したり、顔まわりを暖めたいために防曇モードを選択することがある。また、単に窓曇りを予防する目的で防曇モードを選択する乗員もいる。
よって、単に乗員が防曇モードを選択したからといって直ちに冷凍サイクル10を作動させると、燃費を重視した乗員から見れば非常に不快な制御になってしまうという実用上の問題がある。
この点に鑑みて、本実施形態では、図18(a)に示すように、窓曇りの可能性に応じて圧縮機11の作動可否を判断することにより、圧縮機11の作動頻度を少なくして省電力化を図り、ひいては燃費を向上する。
図18(a)は、ステップS11の要部を示すフローチャートである。図18(a)のフローチャートの制御処理は、オートスイッチがオン(ON)されているとき等に実行される。
ステップS200では、上述したクーラサイクル(冷房モード)における基本的な決定手法を用いて前回のコンプレッサ回転数fCn−1に対する回転数変化量ΔfCを求める。図18(b)は、回転数変化量ΔfCを求めるためのファジー推論のルールの一例を示すものである。
ステップS201では、上述したヒートポンプサイクル(暖房モード)における基本的な決定手法を用いて前回のコンプレッサ回転数fHn−1に対する回転数変化量ΔfHを求める。図18(c)は、回転数変化量ΔfHを求めるためのファジー推論のルールの一例を示すものである。
次いで、ステップS202では、クーラサイクルが選択されているか否かを判定し、クーラサイクルが選択されていると判定した場合(YES判定の場合)には、ステップS203へ進み、回転数変化量Δfに、冷房モード時の回転数変化量ΔfCを代入する。
ステップS202でクーラサイクルが選択されていないと判定した場合、すなわちヒートポンプサイクルが選択されていると判定した場合(NO判定の場合)には、回転数変化量Δfに、暖房モード時の回転数変化量ΔfHを代入する。
次いで、ステップS205では、前回のコンプレッサ回転数と回転数変化量Δfとを用いて、仮の今回のコンプレッサ回転数を求める(仮の今回のコンプレッサ回転数=前回のコンプレッサ回転数+回転数変化量Δf)。
次いで、ステップS206では、HOTサイクルが選択されているか否かを判定する。HOTサイクルが選択されていると判定された場合(YES判定の場合)には、ステップS207へ進み、圧縮機11の作動を許可すべく、コンプレッサ最高回転数を所定回転数(本例では10000[rpm])に設定する。
次いで、ステップS212では、今回のコンプレッサ回転数を最終決定する。本例では、ステップS205の仮の今回のコンプレッサ回転数およびステップS207のコンプレッサ最高回転数のうち小さい方を今回のコンプレッサ回転数にする(今回のコンプレッサ回転数=MIN(仮の今回のコンプレッサ回転数,コンプレッサ最高回転数)。
ステップS206にてHOTサイクル以外が選択されていると判定された場合(NO判定の場合)には、ステップS208へ進み、エアコンスイッチ60aがオン(ON)されているか否かを判定する。
エアコンスイッチ60aがオンされていると判定された場合(YES判定の場合)には、ステップS207へ進み、圧縮機11の作動を許可する。
エアコンスイッチ60aがオンされていない、すなわちエアコンスイッチ60aがオフであると判定された場合(NO判定の場合)には、ステップS209へ進み、吹出口モードがDEFまたはマニュアルF/Dであるか否か、すなわち吹出口モードスイッチ60cのマニュアル操作(乗員による操作)によって防曇モード(デフロスタモードまたはフットデフロスタモード)が設定されているか否かを判定する。
吹出口モードがDEFまたはマニュアルF/Dでないと判定された場合(NO判定の場合)には、ステップS211へ進み、圧縮機11の作動を禁止すべく、コンプレッサ最高回転数を0[rpm]に設定する。これにより、エアコンスイッチ60aのオフに連動して圧縮機11、すなわち冷凍サイクル10(エアコン)が停止することとなる。
次いで、ステップS212では、今回のコンプレッサ回転数を最終決定する。したがって、今回のコンプレッサ回転数が0[rpm]に設定されて圧縮機11が停止することとなる。
一方、ステップS209にて吹出口モードがDEFまたはマニュアルF/Dであると判定された場合(YES判定の場合)には、ステップS210へ進み、窓曇りの可能性が有るか否かを判定する。本例では、窓ガラス表面相対湿度RHWが100より大きい場合(RHW>100)に窓曇りの可能性が有ると判定する。
窓曇りの可能性が有ると判定された場合(YES判定の場合)には、ステップS207へ進み、圧縮機11の作動を許容する。これにより、エアコンスイッチ60aがオフであっても、冷凍サイクル10(エアコン)が除湿能力を発揮して窓曇りを防止する。
窓曇りの可能性が無いと判定された場合(NO判定の場合)には、ステップS211へ進み、圧縮機11の作動を禁止する。これにより、吹出口モードがDEFまたはマニュアルF/Dであっても、防曇が不要なときには圧縮機11、すなわち冷凍サイクル10(エアコン)を作動させずに停止させることができるので、圧縮機11の作動頻度を少なくして省電力化を図ることができる。
このように、圧縮機11の作動頻度を少なくして省電力化を図ることで車両燃費を向上することができるので、実用性を向上できる。
(第10実施形態)
本第10実施形態は、ステップS9の吹出口モードの決定手法に関するものである。
吹出口モードスイッチ60cが防曇モードに操作されているときは、通常であれば外気導入モードにして車室内の湿度を低下させるべきであるが、乗員によっては、操作がよく分からずに防曇モードを選択したり、顔まわりを暖めたいために防曇モードを選択することがある。また、単に窓曇りを予防する目的で防曇モードを選択する乗員もいる。
よって、単に乗員が防曇モードを選択したからといって直ちに外気導入モードにすると、燃費や臭いを重視した乗員から見れば非常に不快な制御になってしまうという実用上の問題がある。
この点に鑑みて、本実施形態では、図19に示すように、窓曇りの可能性に応じて外気導入可否を判断することにより、外気の導入を抑制する。これにより、換気ロスを低減し、ひいては省電力化を図って燃費を向上する。また、外気の導入を抑制することによって、外気の臭いが車室内に進入することを抑制する。
図19はステップS9の要部を示すフローチャートである。まず、ステップS220では、オート内外気の外気導入率SWIAを決定する。オート内外気の外気導入率SWIAは外気導入率の仮の値であり、後述するステップS224〜S226で外気導入率の最終決定が行われる。本例では、TAOと図16(b)のマップとに基づいてオート内外気の外気導入率SWIAを求める。
ステップS221では、吹出口モードがDEFまたはマニュアルF/D(防曇モード)であるか否かを判定する。吹出口モードがDEFまたはマニュアルF/Dである場合(YES判定の場合)には、ステップS222へ進み、窓曇りの可能性が有るか否かを判定する。本例では、窓ガラス表面相対湿度RHWが100より大きい場合(RHW>100)に窓曇りの可能性が有ると判定する。
窓曇りの可能性が有ると判定された場合(YES判定の場合)には、ステップS226へ進み、最終決定の外気導入率SWIを100%にする(SWI=100)。
ステップS222で窓曇りの可能性が無いと判定された場合(NO判定の場合)には、ステップS223へ進み、選択されている吸込口モードを判定する。
吸込口モードがオートモードである場合にはステップS224へ進み、最終決定の外気導入率SWIをオート内外気の外気導入率SWIAと同じにする(SWI=SWIA)。
吸込口モードがマニュアルREC(マニュアル内気モード)である場合にはステップS225へ進み、外気導入率SWIを0%にする(SWI=0)。これにより、外気の導入を抑制することができる。
吸込口モードがマニュアルFRS(マニュアル外気モード)である場合、すなわち吸込口モードスイッチ60bの操作によって外気モードが設定されている場合にはステップS226へ進み、外気導入率SWIを100%にする(SWI=100)。
ステップS221にて吹出口モードがDEFまたはマニュアルF/Dでない場合(NO判定の場合)には、窓曇りの可能性を判定することなくステップS223へ進み、選択されている吸込口モードを判定し、選択されている吸込口モードに応じて外気導入率SWIを決定する(ステップS224〜S226)。
本実施形態によると、ステップS221、S226のごとく、ケーシング31に少なくとも内気が導入されている場合において、吹出口モードスイッチ60cによって防曇モードが設定されたとき(本例では、DEFまたはマニュアルF/Dであるとき)には、基本的には外気の導入割合を増加させる(本例では、外気導入率SWIを100%にする)ので、車室内の湿度を低くすることができる。
さらに、本実施形態では、ステップS222、S224、S225のごとく、窓曇りの可能性が低い(ない)ときには、窓曇りの可能性が高い(有る)ときと比べて、外気の導入割合の増加量を少なくする(本例では、外気の導入割合の増加量を零にする)ので、車室内湿度を低くする必要がない場合には外気の導入を抑制して、換気による空調効率の低下(換気ロス)や外気の臭いの侵入を抑制することができる。
すなわち、必要以上に外気を導入することを抑制できるので、換気ロスを低減して蒸気圧縮式冷凍サイクル10の省動力化を図ることができるとともに、外気の臭いの侵入を抑制して乗員の不快感を抑制することができ、ひいては実用性を向上できる。
(第11実施形態)
本第11実施形態は、冷凍サイクル10のサイクル(運転モード)の切替制御に関するものである。
冷凍サイクル10においては、圧縮機11を作動させたままでヒートポンプサイクルからクーラサイクルに切り替えると、冷媒回路切替手段をなす電磁弁13、17、20、21、24に高圧が作用している状態で電磁弁を切り替えることとなるので、電磁弁の故障を招くおそれがある。
そこで、ヒートポンプサイクルからクーラサイクルに切り替える際に圧縮機11を一時停止させれば、電磁弁11を切り替えるときに電磁弁に作用している圧力を低下させることができるので、電磁弁1の故障を防止することができる。
しかしながら、圧縮機11を一時停止させている間は冷凍サイクル10が除湿能力を発揮することができないので、防曇性を確保することができないという実用上の問題がある。
この点に鑑みて、本実施形態では、図20に示すように、ヒートポンプサイクルからクーラサイクルに切り替える際に、圧縮機11を一時停止させるとともに、窓ガラス加熱手段としての電熱デフォッガ47およびPTCヒータ37を作動させることによって、圧縮機11が一時停止中であっても電熱デフォッガ47およびPTCヒータ37によって防曇性を確保する。
図20はステップS16の要部を示すフローチャートであり、図21は図20のフローチャートによる制御結果の一例を示すタイミングチャートである。
まず、ステップS230では、サイクル切替の要求有無を判定する。サイクル切替要求が無いと判定された場合(NO判定の場合)には、図20のフローチャートの処理(電磁弁切替の処理)を終了する。
サイクル切替要求が有ると判定された場合(YES判定の場合)には、ステップS231へ進み、モード切替が、COOLサイクル以外、すなわちヒートポンプサイクルからCOOLサイクル(クーラサイクル)への切替であるか否かを判定する。COOLサイクルへの切替でないと判定された場合(NO判定の場合)には、ステップS232へ進み、所定の電磁弁を切り替える。
すなわち、この場合はヒートポンプサイクル間の切替であり、電磁弁前後の圧力差が小さいため、圧縮機11を作動させたまま電磁弁を切り替えても電磁弁が故障する虞はない。
ステップS231にてCOOLサイクルへの切替であると判定された場合(YES判定の場合)には、ステップS233へ進み、圧縮機11を一時停止させるとともに、電熱デフォッガ47およびPTCヒータ37を作動(ON)させる。これにより、圧縮機11が一時停止中であっても防曇性を確保することができる。
次いで、ステップS234では、圧縮機11を一時停止させてから20秒経過するのを待つ。これにより、冷凍サイクル10内の冷媒圧力がある程度低下する。なお、デフロスタモード時またはマニュアルフットデフロスタモード時はステップS234の待ち時間を0にしてもよい。
次いで、ステップS235では、電磁弁切替音を小さくできる圧力f(TAMdisp)を求める。実験により得られた知見によれば、電磁弁切替音を小さくできる圧力f(TAMdisp)は、飽和圧力+0.2MPa前後が妥当であると考えられる。よって、本例では、電磁弁切替音を小さくできる圧力f(TAMdisp)を、電磁弁雰囲気温度TAMdispとステップS235に示すマップとに基づいて求める。
次いで、ステップS236では、冷凍サイクル10内の冷媒圧力がステップS235の電磁弁切替音を小さくできる圧力f(TAMdisp)よりも低くなったか否かを判定する。低くなったと判定された場合(YES判定の場合)にはステップS238へ進み、低くなっていないと判定された場合(NO判定の場合)にはステップS237へ進んで100秒待って冷媒圧力を低下させた後にステップS238へ進む。
すなわち、ステップS236、S237により、冷凍サイクル10内の冷媒圧力が上述の圧力f(TAMdisp)よりも低くなるか、100秒経過するかのどちらか早い方をトリガにして、次のステップS238(電磁弁作動)へ進むといった処理が行われることとなる。
なお、デフロスタモード時またはマニュアルフットデフロスタモード時はステップS237の待ち時間を0にしてもよい。
ステップS238では、切替音の小さい電磁弁、すなわち低圧環境下で使用される電磁弁を切り替える。本例では、低圧電磁弁17、高圧電磁弁20、熱交換器遮断電磁弁21および除湿電磁弁24を切り替える。
次いで、ステップS239では、切替音の小さい電磁弁を切り替えてから10秒経過するのを待つ。これにより、冷凍サイクル10内の冷媒圧力をさらに低下させる。
次いで、ステップS240において、切替音の大きい電磁弁、すなわち高圧環境下で使用される電磁弁を切り替える。本例では、電気式三方弁13を切り替える。
そして、ステップS241で、圧縮機11を再起動させるとともに、電熱デフォッガ47およびPTCヒータ37を停止(OFF)させる。
本実施形態によると、ステップS233のごとくサイクル切替時に圧縮機11を一時停止させるとともに、電熱デフォッガ47およびPTCヒータ37といった窓ガラス加熱手段を作動(ON)させるので、サイクル切替時の電磁弁の故障防止と、サイクル切替時の防曇性確保とを両立することができ、ひいては実用性を向上できる。
(第12実施形態)
本第12実施形態は、プレ空調時における運転モードの選択手法に関するものである。
乗員がまだ乗車していないプレ空調(乗車前空調)時に除湿有りヒートポンプサイクルが選択されると、窓ガラスの曇りを防止する必要がないにもかかわらずヒートポンプサイクルで除湿が行われることとなる。このため、冷凍サイクル10の増加を招き、ひいては車両燃費の悪化を招いてしまうという実用上の問題がある。
この点に鑑みて、本実施形態では、図22に示すように、プレ空調による暖房時には除湿無しヒートポンプサイクル(HOTサイクル)を選択するための条件を緩和することで、必要のない時に除湿有りヒートポンプサイクルで除湿が行われることを抑制して冷凍サイクル10の省動力化を図る。
図22は、ステップS6の要部を示すフローチャートである。図22のフローチャートの制御処理は、エアコンスイッチ60aおよびオートスイッチがオン(ON)されているとき等に実行される。
図22は、図14のフローチャートのステップS131とステップS132の間にステップS262を追加したものに相当し、それ以外は図14と同じである。
ステップS251(図14のステップS131に相当)においてオート吹出口がFACE以外であると判定された場合(NO判定の場合)には、ステップS262へ進み、プレ空調中であるか否かを判定する。プレ空調中でないと判定された場合(NO判定の場合)にはステップS252(図14のステップS132に相当)へ進み、窓曇りの可能性があるか否かを判定する。
ステップS262でプレ空調中であると判定された場合(YES判定の場合)には、ステップS261(図14のステップS161に相当)へ進み、HOTサイクルを選択する。これにより、プレ空調時に、暖房能力の劣る除湿有りヒートポンプサイクルが選択されることが回避されて、暖房能力の高い除湿無しヒートポンプサイクル(HOTサイクル)が選択されることとなるので、プレ空調時の暖房効率を向上することができる。
このように、本実施形態では、ステップS262、S261のごとくプレ空調時(乗車前空調時)には、プレ空調以外(乗車前空調以外)の通常空調時に比べて除湿無しヒートポンプサイクルを選択するための条件を緩和する(本例では、除湿無しヒートポンプサイクルを無条件で選択する)ので、必要のない時に除湿有りヒートポンプサイクルで除湿が行われることを抑制できる。このため、冷凍サイクル10の省動力化を図ることができるので、車両燃費を向上することができ、ひいては実用性を向上できる。
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、窓ガラス表面の相対湿度RHWを求めるために必要な検出値を検出する検出手段をなす湿度センサ、窓ガラス近傍温度センサおよび窓ガラス表面温度センサを窓ガラス表面に配置しているが、必ずしも窓ガラス表面に配置する必要はなく、これらのセンサを窓ガラス表面から離れた場所(例えば計器盤)に配置して、これらのセンサの検出値を適宜補正するようにしてもよい。
また、上記第1〜第12実施形態は、本発明における車両用空調装置の制御処理の一具体例を説明したものに過ぎず、これに限定されることなく、種々変形が可能である。
例えば、上記実施形態における窓曇りの可能性の判定基準や、除湿の必要度合いの判定基準を適宜変更可能である。
例えば、上記第1実施形態のステップS31、S43等における外気温の所定の閾値を適宜変更可能である。
また、上記第9実施形態のステップS209、および第10実施形態のステップS221では、吹出口モードがDEFまたはマニュアルF/Dであるか否か、すなわち防曇モードが乗員の操作によって設定されているか否かを判定しているが、ステップS209、S221において、乗員の操作によるものか空調制御装置50の自動制御によるものかを問わず、防曇モードが設定されているか否かを判定するようにしてもよい。
また、上記各実施形態を実施可能な範囲で組み合わせてもよい。
また、上記各実施形態では、本発明の車両用空調装置をハイブリッド車両に適用した例について説明したが、本発明の適用対象はハイブリッド車両に限定されるものではなく、例えばエンジンを停止することで省燃費を図る車両等、種々の車両に本発明を適用可能である。