以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
図1〜図11により、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態では、本発明の車両用空調装置1を、内燃機関(エンジン)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両に適用している。
本実施形態のハイブリッド車両は、車両停車時に外部電源(商用電源)から供給された電力をバッテリ81に充電することのできる、いわゆるプラグインハイブリッド車両として構成されている。
さらに、本実施形態のプラグインハイブリッド車両は、車両走行開始前の車両停車時にバッテリ81に充電しておくことによって、走行開始時のようにバッテリ81の蓄電残量が予め定めた所定残量以上になっているときには、主にバッテリ81から供給される電力によって作動する走行用電動モータの駆動力によって走行する(以下、この運転モードをEV運転モードという)。
一方、車両走行中にバッテリ81の蓄電残量が予め定めた所定残量よりも低くなったときには、主にエンジンEGの駆動力によって走行する(以下、この運転モードをHV運転モードという)。このように、EV運転モードとHV運転モードとを切り換えることによって、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両に対してエンジンEGの燃料消費量を抑制して、車両燃費を向上させている。
なお、EV運転モードは、主に走行用電動モータが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際にはエンジンEGを作動させて走行量電動モータを補助する。同様に、HV運転モードは、主にエンジンEGが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際には走行用電動モータを作動させてエンジンEGを補助する。このようなエンジンEGおよび走行用電動モータの作動は、図示しないエンジン制御装置によって制御される。
また、エンジンEGから出力される駆動力は、車両走行用として用いられるのみならず、発電機80を作動させるためにも用いられる。そして、発電機80にて発電された電力および外部電源から供給された電力は、バッテリ81に蓄えることができ、バッテリ81に蓄えられた電力は、走行用電動モータのみならず、車両用空調装置1を構成する各構成機器(空調手段)をはじめとする各種車載機器に供給できる。
次に、本実施形態の車両用空調装置1の詳細構成を説明する。この車両用空調装置1は、車両走行時に車室内の空調を行う通常空調の他に、外部電源からバッテリ81への充電中に、ユーザ(乗員)が車両に乗り込む前に車室内の空調を行うプレ空調を実行可能に構成されている。なお、本実施形態のプレ空調は、外部電源からバッテリ81への充電中でなくとも実行可能となっている。
車両用空調装置1は、通常空調、およびプレ空調において、車室内を冷房する冷房モード(COOLサイクル)、車室内を暖房する暖房モード(HOTサイクル)、車室内を除湿する第1除湿モード(DRY_EVAサイクル)および第2除湿モード(DRY_ALLサイクル)の冷媒回路を切替可能に構成された蒸気圧縮式の冷凍サイクル10を備えている。
図1〜図4は、それぞれ、冷房モード、暖房モード、第1、第2除湿モード時の冷媒の流れを実線矢印で示している。なお、第1除湿モードは、暖房能力に対して除湿能力を優先する除湿モードであり、第2除湿モードは、除湿能力に対して暖房能力を優先する除湿モードである。従って、第1除湿モードを低温除湿モードあるいは単なる除湿モード、第2除湿モードを高温除湿モードあるいは除湿暖房モードと表現することもできる。
冷凍サイクル10は、圧縮機11、室内熱交換器としての室内凝縮器12および室内蒸発器26、冷媒を減圧膨張させる減圧手段としての温度式膨張弁27および固定絞り14、並びに、冷媒回路切替手段としての複数(本実施形態では5つ)の電磁弁13、17、20、21、24等を備えている。
また、この冷凍サイクル10では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。さらに、この冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、この冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
圧縮機11は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するもので、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。固定容量型圧縮機構11aとしては、具体的に、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用できる。
電動モータ11bは、インバータ61から出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。また、インバータ61は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータ11bは、圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
圧縮機11の吐出側には、室内凝縮器12の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器12は、車両用空調装置の室内空調ユニット30において車室内へ送風される送風空気の空気通路を形成するケーシング31内に配置されて、その内部を流通する冷媒と後述する室内蒸発器26通過後の送風空気とを熱交換させることで送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。なお、室内空調ユニット30の詳細については後述する。
室内凝縮器12の冷媒出口側には、電気式三方弁13が接続されている。この電気式三方弁13は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段である。
より具体的には、電気式三方弁13は、電力が供給される通電状態では、室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続する冷媒回路に切り替え、電力の供給が停止される非通電状態では、室内凝縮器12の冷媒出口側と第1三方継手15の1つの冷媒流入出口との間を接続する冷媒回路に切り替える。
固定絞り14は、暖房モード、第1および第2除湿モード時に、電気式三方弁13から流出した冷媒を減圧膨張させる暖房除湿用の減圧手段である。この固定絞り14としては、キャピラリチューブ、オリフィス等を採用できる。もちろん、暖房除湿用の減圧手段として、空調制御装置50から出力される制御信号によって絞り通路面積が調整される電気式の可変絞り機構を採用してもよい。固定絞り14の冷媒出口側には、後述する第3三方継手23の冷媒流入出口が接続されている。
第1三方継手15は、3つの冷媒流入出口を有し、冷媒流路を分岐する分岐部として機能するものである。このような三方継手は、冷媒配管を接合して構成してもよいし、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けて構成してもよい。また、第1三方継手15の別の冷媒流入出口には、室外熱交換器16の一方の冷媒流入出口が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、低圧電磁弁17の冷媒入口側が接続されている。
低圧電磁弁17は、冷媒流路を開閉する弁体部と、弁体部を駆動するソレノイド(コイル)を有し、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段である。より具体的には、低圧電磁弁17は、通電状態で開弁して非通電状態で閉弁する、いわゆるノーマルクローズ型の開閉弁として構成されている。
低圧電磁弁17の冷媒出口側には、第1逆止弁18を介して、後述する第5三方継手28の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第1逆止弁18は、低圧電磁弁17側から第5三方継手28側へ冷媒が流れることのみを許容している。
室外熱交換器16は、エンジンルーム内に配置されて、内部を流通する冷媒と送風ファン16aから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させるものである。送風ファン16aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
さらに、本実施形態の送風ファン16aは、室外熱交換器16のみならず、エンジンEGの冷却水を放熱させるラジエータ(図示せず)にも室外空気を送風している。具体的には、送風ファン16aから送風された車室外空気は、室外熱交換器16→ラジエータの順に流れる。
また、図1〜図4の破線で示す冷却水回路には、冷却水を循環させるための冷却水ポンプが配置されている。この冷却水ポンプ40aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(冷却水循環量)が制御される電動式の水ポンプである。
室外熱交換器16の他方の冷媒流入出口には、第2三方継手19の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第2三方継手19の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第2三方継手19の別の冷媒流入出口には、高圧電磁弁20の冷媒入口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、熱交換器遮断電磁弁21の一方の冷媒流入出口が接続されている。
高圧電磁弁20および熱交換器遮断電磁弁21は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段であり、その基本的構成は、低圧電磁弁17と同様である。但し、高圧電磁弁20および熱交換器遮断電磁弁21は、通電状態で閉弁して非通電状態で開弁する、いわゆるノーマルオープン型の開閉弁として構成されている。
高圧電磁弁20の冷媒出口側には、第2逆止弁22を介して、後述する温度式膨張弁27の絞り機構部入口側が接続されている。この第2逆止弁22は、高圧電磁弁20側から温度式膨張弁27側へ冷媒が流れることのみを許容している。
熱交換器遮断電磁弁21の他方の冷媒流入出口には、第3三方継手23の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第3三方継手23の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第3三方継手23の別の冷媒流入出口には、前述の如く、固定絞り14の冷媒出口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、除湿電磁弁24の冷媒入口側が接続されている。
除湿電磁弁24は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段であり、その基本的構成は、低圧電磁弁17と同様である。さらに、除湿電磁弁24もノーマルクローズ型の開閉弁として構成されている。そして、本実施形態の冷媒回路切替手段は、電力の供給が停止されると予め定めた開弁状態あるいは閉弁状態となる電気式三方弁13、低圧電磁弁17、高圧電磁弁20、熱交換器遮断電磁弁21、除湿電磁弁24の複数(5つ)の電磁弁によって構成される。
除湿電磁弁24の冷媒出口側には、第4三方継手25の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第4三方継手25の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第4三方継手25の別の冷媒流入出口には、温度式膨張弁27の絞り機構部出口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、室内蒸発器26の冷媒入口側が接続されている。
室内蒸発器26は、室内空調ユニット30のケーシング31内のうち、室内凝縮器12の送風空気流れ上流側に配置されて、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。なお、室内蒸発器26は、後述する送風機32にて送風された送風空気を冷却する蒸発器として機能する室内熱交換器を構成している。
室内蒸発器26の冷媒出口側には、温度式膨張弁27の感温部入口側が接続されている。温度式膨張弁27は、絞り機構部入口から内部へ流入した冷媒を減圧膨張させて絞り機構部出口から外部へ流出させる冷房用の減圧手段である。
より具体的には、本実施形態では、温度式膨張弁27として、室内蒸発器26出口側冷媒の温度および圧力に基づいて室内蒸発器26出口側冷媒の過熱度を検出する感温部27aと、感温部27aの変位に応じて室内蒸発器26出口側冷媒の過熱度が予め定めた所定範囲となるように絞り通路面積(冷媒流量)を調整する可変絞り機構部27bとを1つのハウジング内に収容した内部均圧型膨張弁を採用している。
温度式膨張弁27の感温部出口側には、第5三方継手28の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第5三方継手28の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第5三方継手28の別の冷媒流入出口には、前述の如く、第1逆止弁18の冷媒出口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、アキュムレータ29の冷媒入口側が接続されている。
アキュムレータ29は、第5三方継手28から、その内部に流入した冷媒の気液を分離して、余剰冷媒を蓄える低圧側気液分離器である。さらに、アキュムレータ29の気相冷媒出口には、圧縮機11の冷媒吸入口が接続されている。
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、前述の室内蒸発器26、室内凝縮器12、ヒータコア36、PTCヒータ37等を収容したものである。
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する図示しない内外気切替箱が配置されている。
より具体的には、内外気切替箱には、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口が形成されている。さらに、内外気切替箱の内部には、内気導入口および外気導入口の開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドアが配置されている。
従って、内外気切替ドアは、ケーシング31内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる吸込口モードを切り替える風量割合変更手段を構成する。より具体的には、内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータ62によって駆動され、この電動アクチュエータ62は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
また、吸込口モードとしては、内気導入口を全開とするとともに外気導入口を全閉としてケーシング31内へ内気を導入する内気モード、内気導入口を全閉とするとともに外気導入口を全開としてケーシング31内へ外気を導入する外気モード、さらに、内気モードと外気モードとの間で、内気導入口および外気導入口の開口面積を連続的に調整することにより、内気と外気の導入比率を連続的に変化させる内外気混入モードがある。
内外気切替箱の空気流れ下流側には、内外気切替箱を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
送風機32の空気流れ下流側には、前述の室内蒸発器26が配置されている。さらに、室内蒸発器26の空気流れ下流側には、室内蒸発器26通過後の空気を流す加熱用冷風通路33、冷風バイパス通路34といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34から流出した空気を混合させる混合空間35が形成されている。
加熱用冷風通路33には、室内蒸発器26通過後の空気を加熱するための加熱手段としてのヒータコア36、室内凝縮器12、およびPTCヒータ37が、送風空気流れ方向に向かってこの順で配置されている。ヒータコア36は、車両走行用駆動力を出力するエンジンEGの冷却水と室内蒸発器26通過後の空気とを熱交換させて、室内蒸発器26通過後の空気を加熱する加熱用熱交換器である。
また、PTCヒータ37は、PTC素子(正特性サーミスタ)を有し、このPTC素子に電力を供給されることによって発熱して、室内凝縮器12通過後の空気を加熱する電気ヒータである。なお、本実施形態のPTCヒータ37は、複数本(具体的には3本)設けられており、空調制御装置50が、通電するPTCヒータ37の本数を変化させることによって、複数のPTCヒータ37全体としての加熱能力が制御される。
より具体的には、このPTCヒータ37は、図5に示すように、複数(本実施形態では、3本)のPTCヒータ37a、37b、37cから構成されている。なお、図5は、本実施形態のPTCヒータ37の電気的接続態様を示す回路図である。また、本実施形態のPTCヒータ37を作動させるために必要な消費電力は、冷凍サイクル10の圧縮機11を作動させるために必要な消費電力よりも少ない。
図5に示すように、各PTCヒータ37a、37b、37cの正極側はバッテリ81側に接続され、負極側は各PTCヒータ37a、37b、37cが有する各スイッチ素子SW1、SW2、SW3を介して、グランド側へ接続されている。各スイッチ素子SW1、SW2、SW3は、各PTCヒータ37a、37b、37cが有する各PTC素子h1、h2、h3の通電状態(ON状態)と非通電状態(OFF状態)とを切り替えるものである。
さらに、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、独立して制御される。従って、空調制御装置50は、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の通電状態と非通電状態とを独立に切り替えることによって、各PTCヒータ37a、15b、15cのうち、通電状態となり加熱能力を発揮するものを切り替えて、PTCヒータ37全体としての加熱能力を変化させることができる。
一方、冷風バイパス通路34は、室内蒸発器26通過後の空気を、ヒータコア36、室内凝縮器12、およびPTCヒータ37を通過させることなく、混合空間35に導くための空気通路である。従って、混合空間35にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路33を通過する空気および冷風バイパス通路34を通過する空気の風量割合によって変化する。
そこで、本実施形態では、室内蒸発器26の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34の入口側に、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア38を配置している。
従って、エアミックスドア38は、混合空間35内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。より具体的には、エアミックスドア38は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63によって駆動され、この電動アクチュエータ63は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
さらに、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間35から冷却対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出口(図示せず)が配置されている。この吹出口としては、具体的に、車室内のユーザの上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口、ユーザの足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口が設けられている。
また、フェイス吹出口、フット吹出口、およびデフロスタ吹出口の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口の開口面積を調整するフェイスドア、フット吹出口の開口面積を調整するフットドア、デフロスタ吹出口の開口面積を調整するデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータ64も、空調制御装置50から出力される制御信号によってその作動が制御される。
また、吹出口モードとしては、フェイス吹出口を全開してフェイス吹出口から車室内のユーザの上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内のユーザの上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口を全開するとともにデフロスタ吹出口を小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出すフットモード、およびフット吹出口およびデフロスタ吹出口を同程度開口して、フット吹出口およびデフロスタ吹出口の双方から空気を吹き出すフットデフロスタモードがある。
さらに、ユーザが後述する操作パネル60のスイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口を全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
なお、本実施形態の車両用空調装置1が適用されるハイブリッド車両は、車両用空調装置とは別に、図示しない電熱デフォッガを備えている。電熱デフォッガとは、車室内窓ガラスの内部あるいは表面に配置された電熱線であって、窓ガラスを加熱することで防曇あるいは窓曇り解消を行うものである。この電熱デフォッガについても空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動を制御できるようになっている。
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、図6に示すように、ユーザが着座する座席の表面温度を調整するシート空調手段としてのシート空調装置90を備えている。具体的には、このシート空調装置90は、座席表面に埋め込まれたペルチェモジュールを備えて構成され、電力を供給されることによって、座席の表面温度を低下させるシート冷却手段である。なお、シート空調装置90としては、座席表面に設けられた複数の吹出孔からユーザに冷風を送風するシート送風手段で構成してもよい。
シート空調装置90は、室内空調ユニット10の各吹出口24〜26にから吹き出される空調風によって車室内の冷房が不十分となり得る際に作動させてユーザの冷房感を補う機能を果たす。また、シート空調装置90は、空調制御装置50から出力される制御信号によって作動が制御され、作動時には座席の表面温度を所定温度となるまで低下させるように制御される。なお、シート空調装置90を作動させるために必要な消費電力は、冷凍サイクル10の圧縮機11を作動させるために必要な消費電力よりも少ない。
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置50は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61、冷媒回路切替手段を構成する各電磁弁13、17、20、21、24、送風ファン16a、送風機32、各種電動アクチュエータ62、63、64、各PTCヒータ37a、37b、37c、冷却水ポンプ40a、シート空調装置90等の作動を制御する。
ここで、空調制御装置50のうち、圧縮機11の電動モータ11bに接続されたインバータ61から出力される交流電圧の周波数を制御して、圧縮機11の回転数(冷媒吐出能力)を制御する構成が圧縮機制御手段50aを構成し、送風手段である送風機32の作動を制御して、送風機32の送風能力を制御する構成が送風機制御手段50bを構成する。また、空調制御装置50のうち、シート空調手段であるシート空調装置90の作動を制御する構成がシート空調制御手段50cを構成する。
また、空調制御装置50の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ51(室内温度検出手段)、外気温Tamを検出する外気センサ52(外気温検出手段)、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ53、圧縮機11の吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ54(吐出温度検出手段)、圧縮機11の吐出側冷媒圧力(高圧側冷媒圧力)Pdを検出する吐出圧力センサ55(吐出圧力検出手段)、室内蒸発器26からの吹出空気温度(蒸発器温度)Teを検出する蒸発器温度センサ56(蒸発器温度検出手段)、第1三方継手15と低圧電磁弁17との間を流通する冷媒の温度Tsiを検出する吸入温度センサ57、エンジン冷却水温度Twを検出する冷却水温度センサ、車室内の窓ガラス近傍の車室内空気の相対湿度を検出する湿度センサ、窓ガラス近傍の車室内空気の温度を検出する窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度を検出する窓ガラス表面温度センサ等のセンサ群の検出信号が入力される。
また、本実施形態の圧縮機11の吐出側冷媒圧力(高圧側冷媒圧力)Pdは、冷房モードでは、圧縮機11の冷媒吐出口側から温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b入口側へ至るサイクルの高圧側冷媒圧力であり、その他の運転モードでは、圧縮機11の冷媒吐出口側から固定絞り14入口側へ至るサイクルの高圧側冷媒圧力となる。なお、吐出圧力センサ55は、一般的な冷凍サイクルにおいても、高圧側冷媒圧力の異常上昇を監視するために設けられている。
また、蒸発器温度センサ56は、具体的に室内蒸発器26の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、蒸発器温度センサ56として、室内蒸発器26のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、室内蒸発器26を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出手段を採用してもよい。また、湿度センサ、窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度センサの検出値は、窓ガラス表面の相対湿度RHWを算出するために用いられる。
さらに、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ(図示略)、オートスイッチ(図示略)、運転モードの切替スイッチ(図示略)、吹出口モードの切替スイッチ(図示略)、送風機32の風量設定スイッチ(図示略)、車室内温度設定スイッチ(図示略)、プレ空調のスタートスイッチ(図示略)、エコノミースイッチ65、静音スイッチ66等が設けられている。なお、静音スイッチ66は、乗員を除く車両の保守員等といったユーザによって操作可能に構成してもよい。
オートスイッチは、車両用空調装置1の自動制御を設定あるいは解除するスイッチであり、プレ空調のスタートスイッチは、ユーザがプレ空調をスタートさせる時刻や、スタートさせるタイミング(例えば、10分後)を設定するためのスイッチである。また、エコノミースイッチ65は、ユーザの操作によって車室内の空調に必要とされる電力の省電力化を要求する省電力化要求信号を出力させる省電力化要求手段である。また、静音スイッチ66は、ユーザの操作によって車室内の空調時に生ずる騒音の低減を要求する低騒音要求信号を出力させる低騒音要求手段である。
エンジン制御装置(図示略)は、空調制御装置50と同様に、周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶されたエンジン制御用プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種エンジン制御機器の作動を制御する。
エンジン制御装置の出力側には、図示しないエンジンEGを構成する各種エンジン構成機器等が接続されている。具体的には、エンジンEGを始動させるスタータ、エンジンEGに燃料を供給する燃料噴射弁(インジェクタ)の駆動回路(いずれも図示せず)等が接続されている。
エンジン制御装置の入力側には、図示しない車速(車両の速度)を検出する速度センサ、バッテリ81の端子間電圧VBを検出する電圧計、アクセル開度Accを検出するアクセル開度センサ、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ等の種々のエンジン制御用のセンサ群が接続されている。
さらに、空調制御装置50およびエンジン制御装置は、電気的接続されて、電気的に通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。例えば、空調制御装置50がエンジン制御装置へエンジンEGの作動要求指令を出力することによって、エンジンEGを作動させることができる。
なお、空調制御装置50およびエンジン制御装置は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御手段を構成している。
次に、図7により、上記構成における本実施形態の作動を説明する。図7は、本実施形態の車両用空調装置1の制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、車両システムが停止している場合でも、バッテリ81から空調制御装置50に電力が供給されていれば実行される。
まず、ステップS1の処理では、車両用空調装置1の作動スイッチが投入(ON)されているか否か、および、プレ空調のスタートスイッチが投入されているか否かを判定する。そして、車両用空調装置1の作動スイッチ、あるいはプレ空調のスタートスイッチが投入されていると判定されるとステップS2へ進む。この際、プレ空調であることを示すフラグがONされる。なお、プレ空調のスタートスイッチは、操作パネル60以外にもユーザが携帯する無線端末(リモコン)あるいは移動体通信手段(具体的には、携帯電話)等に設けられている。従って、ユーザは車両から離れた場所から車両用空調装置1を始動させることができる。
さらに、本実施形態の車両用空調装置1は、プラグインハイブリッド車両に適用されているので、プレ空調は、車両に外部電源から電力が供給されている場合は、ユーザからプレ空調の停止が要求されるまで継続され、外部電源から電力が供給接続されていない場合は、バッテリ81の蓄電残量が予め定めた基準プレ空調用蓄電残量以下となるまで行うようになっている。
ステップS2では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等が行われる。なお、フラグの初期化には、現在のフラグの状態を維持することも含まれる。
ステップS3の処理では、操作パネル60の操作信号を読み込んでステップS4へ進む。具体的な操作信号としては、エコノミースイッチ65のON信号(省電力化要求信号)、静音スイッチ66のON信号(低騒音要求信号)、車室内温度設定スイッチによって設定される車室内設定温度Tset、吹出口モードの選択信号、吸込口モードの選択信号、送風機32の風量の設定信号等がある。なお、エコノミースイッチ65のON信号を検出した場合には、現在の車両用空調装置1の運転モードがエコモード(省動力化モード)であることを示すフラグがONされる。また、静音スイッチ66のON信号を検出した場合には、現在の車両用空調装置1の運転モードが静音モード(低騒音モード)であることを示すフラグがONされる。
ステップS4では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群51〜57の検出信号を読み込んで、ステップS5へ進む。ステップS5では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。さらに、暖房モードでは、暖房用熱交換器目標温度を算出する。目標吹出温度TAOは、下記数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ51によって検出された内気温、Tamは外気センサ52によって検出された外気温、Tsは日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
また、暖房用熱交換器目標温度は、基本的に上述の数式F1にて算出される値となるが、消費電力の抑制のために数式F1にて算出されTAOよりも低い値とする補正が行われる場合もある。
続くステップS6〜S14では、空調制御装置50に接続された各種機器の制御状態が決定される。まず、ステップS6では、空調環境状態に応じて、冷房モード、暖房モード、第1除湿モードおよび第2除湿モードの選択およびPTCヒータ37に対する通電有無の決定が行われる。このステップS6の詳細な制御内容については、図8を用いて説明する。
まず、ステップS61では、プレ空調を行っているか否かを判定する。ステップS61にてプレ空調を行っていると判定された場合は、ステップS62へ進み、外気温Tamが−3℃よりも低いか否かを判定する。ステップS62にて外気温Tamが−3℃よりも低いと判定された場合は、ステップS63にてPTCヒータ37への通電の必要があると判定してステップS7へ進む。
このように外気温Tamが−3℃よりも低いときにPTCヒータ37への通電が必要であると判定する理由は、外気温Tamが−3℃よりも低いときに冷凍サイクル10にて暖房を行うと、サイクルの高低圧差が大きくなり、サイクル効率(COP)が低下してしまうとともに、室外熱交換器16における冷媒蒸発温度が低くなり、室外熱交換器16に着霜するおそれがあるからである。
ステップS62にて外気温Tamが−3℃よりも低くなっていないと判定された場合は、ステップS64へ進み、吹出口モードがフェイスモードであるか否かを判定する。ステップS64にて吹出口モードがフェイスモードであると判定された場合は、ステップS65へ進み、冷房モードを選択してステップS7へ進む。その理由は、後述するステップS9で説明するように、フェイスモードは主に夏季に選択される運転モードだからである。
ステップS64にて吹出口モードがフェイスモードでないと判定された場合は、ステップS66へ進み、室内蒸発器26からの吹出空気温度Teの低下に伴って、除湿の必要性が高くなるものとして、暖房モード→第1除湿モード→第2除湿モードの順に選択されて、ステップS7へ進む。
一方、ステップS61にてプレ空調を行っていないと判定された場合は、ステップS67へ進み、外気温Tamが−3℃よりも低いか否かを判定する。ステップS67にて外気温Tamが−3℃よりも低いと判定された場合は、ステップS68へ進み、冷房モードを選択してステップS7へ進む。
ステップS67にて外気温Tamが−3℃よりも低くなっていないと判定された場合は、ステップS69へ進み、吹出口モードがフェイスモードであるか否かを判定する。ステップS69にて吹出口モードがフェイスモードであると判定された場合は、ステップS70へ進み、冷房モードを選択してステップS7へ進む。その理由はステップS65と同様である。ステップS69にて吹出口モードがフェイスモードでないと判定された場合は、前述のステップS66へ進む。
ステップS7では、送風機32により送風される空気の目標送風量を決定する。具体的には、送風機32の電動モータに印加するブロワモータ電圧を決定する。このステップS7のより詳細な制御内容については、図9を用いて説明する。
まず、ステップS71では、操作パネル60のオートスイッチが投入されているか否かが判定される。この結果、オートスイッチが投入されていないと判定された場合(S71:No)には、ステップS72へ進み、操作パネル60の風量設定スイッチによってマニュアル設定されたユーザの所望の風量となるブロワモータ電圧が決定されて、ステップS8へ進む。具体的には、本実施形態の風量設定スイッチは、Lo→M1→M2→M3→Hiの5段階の風量を設定することができ、それぞれ4V→6V→8V→10V→12Vの順にブロワモータ電圧が高くなるように決定される。
一方、ステップS71にてオートスイッチが投入されていると判定された場合(S71:Yes)には、ステップS73へ進み、現在の車両用空調装置1の運転モードがエコモードであるか否か、すなわち、エコノミースイッチ65からのON信号(省電力化要求信号)を取得したか否かを判定する。具体的には、ステップS3にて説明したエコモードであることを示すフラグがONとなっているか否かを判定する。
ステップS73にて、エコモードでないと判定された場合(S73:No)には、ステップS74に進み、ステップS5で決定された目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照してブロワモータ電圧を決定して、ステップS8へ進む。
より詳細には、本実施形態では、TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)でブロワモータ電圧を最大値(約12V)付近の高電圧にして、送風機32の風量を最大風量付近に制御する。また、TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機32の風量を減少させる。
さらに、TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機32の風量を減少させる。また、TAOが所定の中間温度域内に入ると、ブロワモータ電圧を最小値(約4V)にして送風機32の風量を最小値にする。
一方、ステップS73にて、エコモードであると判定された場合(S73:Yes)には、ステップS75へ進み、ステップS74と同様に、ステップS5で決定された目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して仮のブロワモータ電圧を決定して、ステップS76に移行する。
ここで、図9の制御ステップS74、75から明らかなように、ステップS75では、ステップS74と同様に、TAOに応じて仮のブロワモータ電圧を決定しているものの、いずれの決定値についても、ステップS74で決定される値よりも小さく決定される。換言すると、仮のブロアモータ電圧は、ユーザが車両用空調装置1の省電力化を望むエコモード時には、エコモード以外の空調時よりも、送風機32の送風能力が低下するように決定される。
例えば、ステップS74では、TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)でブロワモータ電圧を約12Vとしているが、ステップS75では、約10Vとしている。また、ステップS74では、TAOが所定の中間温度域内に入ると、ブロワモータ電圧を約4Vとしているが、ステップS75では、約3Vとしている。
ステップS75にて、仮のブロワモータ電圧を決定した後、ステップS76では、ステップS5にて決定されたTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照してブロワモータ電圧補正係数f(TAO)を決定する。具体的には、TAOの極低温域(最大冷房域)において、f(TAO)を最小値(例えば、「0」)とし、TAOが極低温域から中間温度域(例えば、−5℃)に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じてf(TAO)を徐々に増加させる。また、TAOが所定の中間温度域内に入ると、f(TAO)を最大値(例えば、「1.0」)にする。
なお、TAOは、上述の数式F1で示すように、車室内への日射量Ts、車室内温度Tr、外気温Tamといった空調熱負荷の増大に伴って低下し、空調熱負荷の減少に伴って上昇する。このため、TAOが小さい程、空調熱負荷が高く、TAOが大きい程、空調熱負荷が低いこととなる。従って、f(TAO)は、空調熱負荷が高い程、低い値となり、空調熱負荷が低い程、高い値となる。
ステップS76にて、f(TAO)を決定した後、ステップS77では、ステップS4にて読み込んだ蒸発器温度センサ56の検出値(蒸発器温度)に基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照してブロワモータ電圧補正量f(Te)を決定する。具体的には、蒸発器温度Teが第1所定温度(本実施形態では「3℃」)以下の場合に、f(Te)を最大値(例えば、「0」)とし、蒸発器温度Teが所定温度よりも高温側に向かって上昇すると、Teの上昇に応じてf(Te)を減少させる。また、蒸発器温度Teが第2所定温度(本実施形態では「7℃」)以上に上昇すると、f(Te)を最小値(例えば、「−4」)にする。すなわち、室内蒸発器26の温度が、室内蒸発器26の表面に付着した凝縮水が乾く可能性が高い温度に上昇すると、f(Te)を低下させる。なお、f(Te)には、「0」以下の値が設定される。
ステップS77にて、f(Te)を決定した後、ステップS78に移行する。ステップS78では、ステップS75にて決定した仮のブロワモータ電圧に、f(Te)およびf(TAO)を乗算した値を加算した加算値と、ブロワモータ電圧を最小値(約3V)とを比較して、大きいほうの値を、今回のブロワモータ電圧に決定してステップS8に進む。
このように、本実施形態では、エコモードである場合、ブロワモータ電圧補正量f(Te)によって、蒸発器温度Teの上昇に応じて、ブロワモータ電圧が低い値に決定される。すなわち、エコノミースイッチ65によってON信号(省電力化要求信号)が出力されると、蒸発器温度Teが所定の温度以下に維持されるように、室内蒸発器26の温度上昇(室内蒸発器26の表面に付着した凝縮水が乾く可能性が高くなる)に伴って送風機32の送風能力を低下させる。
但し、エコモードであっても、空調熱負荷が高い場合には、ブロワモータ電圧補正係数f(TAO)によって、空調熱負荷の増大に応じて、ブロワモータ電圧の低下度合い(送風機32の送風能力の低下度合い)が小さくなるように補正される。これにより、空調熱負荷が大きい場合に、送風機32からの送風空気の送風量が少なくなり過ぎることを抑制することができる。
ステップS8では、吸込口モード、すなわち内外気切替箱の切替状態を決定する。この吸込口モードもステップS5にて決定されたTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、TAOが極低温域となって高い冷房性能を得たい場合等に内気を導入する内気モードが選択される。さらに、外気の排ガス濃度を検出する排ガス濃度検出手段を設け、排ガス濃度が予め定めた基準濃度以上となったときに、内気モードを選択するようにしてもよい。
ステップS9では、吹出口モードを決定する。この吹出口モードもステップS5にて決定されたTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて吹出口モードをフットモード→バイレベルモード→フェイスモードへと順次切り替える。
従って、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択される。さらに、湿度センサ等の検出値から算出される窓ガラス表面の相対湿度RHWに基づいて、窓ガラスに曇りが発生する可能性が高いと判定された場合に、フットデフロスタモードあるいはデフロスタモードを選択するようにしてもよい。
ステップS10では、エアミックスドア38の目標開度SWをステップS5にて決定されたTAO、蒸発器温度センサ56によって検出された蒸発器温度Te、加熱器温度に基づいて算出する。
ここで、加熱器温度とは、加熱用冷風通路33に配置された加熱手段(ヒータコア36、室内凝縮器12、およびPTCヒータ37)の加熱能力に応じて決定される値であって、一般的には、エンジン冷却水温度Twを採用できる。従って、目標開度SWは、次の数式F2により算出できる。
SW=[(TAO−Te)/(Tw−Te)]×100(%)…(F2)
なお、SW=0(%)は、エアミックスドア38の最大冷房位置であり、冷風バイパス通路34を全開し、加熱用冷風通路33を全閉する。これに対し、SW=100(%)は、エアミックスドア38の最大暖房位置であり、冷風バイパス通路34を全閉し、加熱用冷風通路33を全開する。
ステップS11では、圧縮機11の冷媒吐出能力(本実施形態では、圧縮機11の回転数)を決定する。ここで、圧縮機11の基本的な回転数の決定手法を説明する。例えば、冷房モードでは、ステップS5で決定したTAO等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、蒸発器温度センサ56によって検出された蒸発器温度Teの目標吹出温度TEOを決定する。
そして、この目標吹出温度TEOと吹出空気温度Teの偏差En(TEO−Te)を算出し、今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(En−(En−1))とを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fCn−1に対する回転数変化量Δf_Cを求める。
また、暖房モード、第1除湿モードおよび第2除湿モードでは、ステップS4で決定した暖房用熱交換器目標温度等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、吐出側冷媒圧力(高圧側冷媒圧力)Pdの目標高圧PDOを決定する。
そして、この目標高圧PDOと吐出側冷媒圧力Pdの偏差Pn(PDO−Pd)を算出し、今回算出された偏差Pnから前回算出された偏差Pn−1を減算した偏差変化率Pdot(Pn−(Pn−1))とを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fHn−1に対する回転数変化量Δf_Hを求める。
このステップS11のより詳細な制御内容については、図10を用いて説明する。まず、ステップS111では、冷房モード(COOLサイクル)時の回転数変化量Δf_Cを求める。図10のステップS111には、ルールとして用いるファジールール表を記載している。このルール表では、上述の偏差Enと偏差変化率Edotに基づいて室内蒸発器26の着霜が防止されるようにΔf_Cが決定される。
ステップS112では、暖房モード(HOTサイクル)、第1除湿モード(DRY_EVAサイクル)および第2除湿モード(DRY_ALLサイクル)時の回転数変化量Δf_Hを求める。図10のステップS112には、ルールとして用いるファジールール表を記載している。このルール表では、上述の偏差Pnと偏差変化率Pdotに基づいて高圧側冷媒圧力Pdの異常上昇が防止されるようにΔf_Hが決定される。
ステップS113では、現在の車両用空調装置1の運転モードがエコモードであるか否かを判定する。すなわち、エコノミースイッチ65からのON信号(省電力化要求信号)を取得したか否かを判定する。具体的には、ステップS3にて説明したエコモードであること示すフラグがONとなっているか否かを判定する。
ステップS113にて、エコモードでないと判定された場合(S113:No)には、ステップS114に進み、圧縮機の回転数の上限値IVOmaxを、車速センサの検出値に基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定して、ステップS116へ進む。
より詳細には、車速センサの検出値の増加に応じて、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxが段階的(ステップ的)に増加するようにしている。すなわち、車速センサの検出値(車速)が上昇する速度上昇過程において、車速が所定速度(本実施形態では20km/h)上昇する毎に上限値IVOmaxを所定回転数(本実施形態では1000rpm)増加させている。一方、車速センサの検出値(車速)が低下する速度低下過程において、車速が所定速度(本実施形態では20km/h)低下する毎に上限値IVOmaxを所定回転数(本実施形態では1000rpm)減少させている。
例えば、図10のステップS114中に示すように、車速が上昇する車速上昇過程では、車速が20km/hよりも遅ければ、上限値IVOmaxを最低の「6000」rpmに設定し、車速が20km/hまで上昇すると上限値IVOmaxを「7000」rpmに変化させる。そして、車速が20km/h上昇する毎に上限値IVOmaxを「1000」rpm分段階的に増加させる。車速が80km/hまで上昇すると、上限値IVOmaxを最高の「10000」rpmに設定する。
逆に、車速が低下する車速低下過程では、車速が70km/hよりも速ければ、上限値IVOmaxを最高の「10000」rpmに設定し、車速が70km/h以下まで低下すると上限値IVOmaxを「9000」rpmに変化させる。そして、車速が20km/h上昇する毎に上限値IVOmaxを「1000」rpm分段階的に減少させる。車速が10km/hまで低下すると、上限値IVOmaxを最低の「6000」rpmに設定する。
また、本実施形態では、所定の上限値IVOmaxから一段上限値を下げる際の車両速度(第1閾値)と、所定の上限値IVOmaxから一段上限値を上げる際の車両速度(第2閾値)とに差(ヒステリシス域)を設けている。つまり、速度上昇過程において、第1閾値を上回った際に上限値IVOmaxを一段高くし、第1閾値よりも高い値に設定された第2閾値を下回った際に上限値IVOmaxを一段低くするようにしている。これにより、車速の一時的な変動によって、上限値IVOmaxが頻繁に変化してしまうことを抑制している。
一方、ステップS113の判定処理の結果、エコモードであると判定された場合(S113:Yes)には、ステップS115に進み、圧縮機の回転数の上限値IVOmaxを、車速センサの検出値に基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定して、ステップS116へ進む。このステップS115では、ステップS114と同様に、車速センサの検出値の増加に応じて、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxが段階的(ステップ的)に増加するようにしている。
ここで、図10の制御ステップS114、S115から明らかなように、ステップS115では、ステップS114と同様に、車速に応じて圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを決定しているものの、いずれの決定値についても、ステップS114で決定される値よりも小さく決定される。換言すると、本実施形態における圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxは、ユーザが車両用空調装置1の省電力化を望むエコモード時には、エコモード以外の空調時よりも、圧縮機11の回転数(冷媒吐出能力)が低下するように決定される。
ステップS116では、ステップS6で設定された運転モードが冷房モードであるか否かを判定する。この結果、冷房モードであると判定された場合(S116:Yes)には、ステップS117に進み、圧縮機11の回転数変化量ΔfをステップS111で決定したΔf_Cに設定して、ステップS119に移行する。
一方、ステップS116にて、ステップS6で設定された運転モードが冷房モードでないと判定された場合(S116:No)には、ステップS118に進み、圧縮機11の回転数変化量ΔfをステップS112で決定したΔf_Hに設定して、ステップS119に移行する。
ステップS119では、前回の圧縮機回転数fn−1に回転数変化量Δfを加えた値とステップS114、S115にて決定された上限値IVOmaxとを比較して、小さい方の値を、今回の圧縮機回転数fnと決定して、ステップS12へ進む。このように圧縮機11の回転数が決定されることにより、圧縮機11の回転数(冷媒吐出能力)の上限値が制限されるので、圧縮機11の消費電力が不必要に増加してしまうことを抑制することができる。
さらに、上述のように、ステップS115で決定されるエコモード時の圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxは、ステップS114で決定される圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxよりも低い値に決定される。
このことは、ユーザからの省電力化の要求によって、圧縮機11の冷媒吐出能力(回転数)の上限値IVOmaxを、ユーザからの省電力化の要求がない場合(ユーザからの省電力化の要求がなされる前)よりも低下させることを意味している。なお、ステップS119における圧縮機回転数fnの決定は、制御周期τ毎に行われるものではなく、所定の制御間隔(本実施形態では1秒)毎に行われる。
ステップS12では、PTCヒータ37の作動本数の決定および電熱デフォッガの作動状態の決定が行われる。PTCヒータ37の作動本数は、例えば、ステップS6にてPTCヒータ37への通電の必要があるとされたときに、暖房モード時にエアミックスドア38の目標開度SWが100%となっても、暖房用熱交換器目標温度を得られない場合に、内気温Trと暖房用熱交換器目標温度との差に応じて決定すればよい。
また、車室内の湿度および温度から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合、あるいは窓ガラスに曇りが発生している場合は、電熱デフォッガを作動させる。
ステップS13では、上述のステップS6で決定された運転モードに応じて、冷媒回路切替手段である各電磁弁13〜24の作動状態を決定する。
具体的には、図11の図表に示すように、運転モードが冷房モード(COOLサイクル)に決定されている場合は、全ての電磁弁を非通電状態とする。また、暖房モード(HOTサイクル)に決定されている場合は、電気式三方弁13、高圧電磁弁20、低圧電磁弁17を通電状態とし、残りの電磁弁21、24を非通電状態とする。
また、第1除湿モード(DRY_EVAサイクル)に決定されている場合は、電気式三方弁13、低圧電磁弁17、除湿電磁弁24および熱交換器遮断電磁弁21を通電状態とし、高圧電磁弁20を非通電状態とする。また、第2除湿モード(DRY_ALLサイクルに決定されている場合は、電気式三方弁13、低圧電磁弁17、除湿電磁弁24を通電状態とし、残りの電磁弁20、21を非通電状態とする。
つまり、本実施形態では、いずれの運転モードの冷媒回路に切り替えた場合であっても、各電磁弁13〜24のうち少なくとも1つの電磁弁に対する電力の供給が停止されるように構成されている。これにより、本実施形態の各電磁弁13〜24の合計消費電力を低減できるようにしている。
次に、ステップS14では、シート空調装置90の作動要否を決定する。シート空調装置90の作動状態は、ステップS5にて決定した目標吹出温度TAO、ステップS4で読み込んだ車室内設定温度Tset等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して決定される。
例えば、目標吹出温度TAOが所定温度以下の場合であって、車室内設定温度Tsetが予め定めた基準シート空調作動温度よりも低い場合に、シート空調装置90を作動(ON)させることを決定する。なお、シート空調装置90が作動する際には、シート空調装置90が作動していることを示すフラグがONされる。
ステップS15では、上述のステップS6〜S14で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50より各種機器61、13、17、20、21、24、16a、32、37、62、63、64、90に対して制御信号および制御電圧が出力される。例えば、圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61に対しては、圧縮機11の回転数がステップS11で決定された回転数となるように制御信号が出力される。
ステップS16では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS3へ戻る。なお、本実施形態は制御周期τを250msとしている。これは、車室内の空調制御は、エンジン制御等と比較して遅い制御周期であってもその制御性に悪影響を与えないからである。さらに、車両内における空調制御のための通信量を抑制して、エンジン制御等のように高速制御を行う必要のある制御系の通信量を充分に確保することができる。
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く制御されるので、制御ステップS6にて選択された運転モードに応じて以下のように作動する。
(a)冷房モード(COOLサイクル:図1参照)
冷房モードでは、空調制御装置50が全ての電磁弁を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と第1三方継手15の1つの冷媒流入出口との間を接続し、低圧電磁弁17が閉弁し、高圧電磁弁20が開弁し、熱交換器遮断電磁弁21が開弁し、除湿電磁弁24が閉弁する。
これにより、図1の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→第1三方継手15→室外熱交換器16→第2三方継手19→高圧電磁弁20→第2逆止弁22→温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b→第4三方継手25→室内蒸発器26→温度式膨張弁27の感温部27a→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
この冷房モードの冷媒回路では、電気式三方弁13から第1三方継手15へ流入した冷媒は、低圧電磁弁17が閉弁しているので低圧電磁弁17側へ流出することはない。また、室外熱交換器16から第2三方継手19へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉弁しているので熱交換器遮断電磁弁21側へ流出することはない。また、温度式膨張弁27の可変絞り機構部27bから流出した冷媒は、除湿電磁弁24が閉弁しているので除湿電磁弁24側へ流出することはない。さらに、温度式膨張弁27の感温部27aから第5三方継手28へ流入した冷媒は、第2逆止弁22の作用によって第2逆止弁22側に流出することはない。
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて室内蒸発器26通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却され、さらに、室外熱交換器16にて外気と熱交換して冷却され、温度式膨張弁27にて減圧膨張される。温度式膨張弁27にて減圧された低圧冷媒は室内蒸発器26へ流入し、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器26を通過する送風空気が冷却される。
この際、前述の如くエアミックスドア38の開度が調整されるので、室内蒸発器26にて冷却された送風空気の一部(または全部)が冷風バイパス通路34から混合空間35へ流入し、室内蒸発器26にて冷却された送風空気の一部(または全部)が加熱用冷風通路33へ流入してヒータコア36、室内凝縮器12、ヒータコア36を通過する際に再加熱されて混合空間35へ流入する。
これにより、混合空間35にて混合されて車室内へ吹き出す送風空気の温度が所望の温度に調整されて、車室内の冷房を行うことができる。なお、冷房モードでは、送風空気の除湿能力も高いが、暖房能力は殆ど発揮されない。
また、室内蒸発器26から流出した冷媒は、温度式膨張弁27の感温部61aを介して、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
さらに、この冷房モードの冷媒回路では、図1の記載から明らかなように、冷凍サイクル10の冷媒流路内の異なる2箇所の部位が互いに連通している。換言すると、冷房モードの冷媒回路では、冷凍サイクル10を構成する冷媒流路内に他の部位と連通しない閉塞回路が形成されていない。
(b)暖房モード(HOTサイクル:図2参照)
暖房モードでは、空調制御装置50が電気式三方弁13、高圧電磁弁20、低圧電磁弁17を通電状態とし、残りの電磁弁21、24を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続し、低圧電磁弁17が開弁し、高圧電磁弁20が閉弁し、熱交換器遮断電磁弁21が開弁し、除湿電磁弁24が閉弁する。
これにより、図2の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→熱交換器遮断電磁弁21→第2三方継手19→室外熱交換器16→第1三方継手15→低圧電磁弁17→第1逆止弁18→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
この暖房モードの冷媒回路では、固定絞り14から第3三方継手23へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉弁しているので除湿電磁弁24側へ流出することはない。また、熱交換器遮断電磁弁21から第2三方継手19へ流入した冷媒は、高圧電磁弁20が閉弁しているので高圧電磁弁20側へ流出することはない。また、室外熱交換器16から第1三方継手15へ流入した冷媒は、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続しているので電気式三方弁13側へ流出することはない。第1逆止弁18から第5三方継手28へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉じているので温度式膨張弁27側へ流出することはない。
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて送風機32から送風された送風空気と熱交換して冷却される。これにより、室内凝縮器12を通過する送風空気が加熱される。この際、エアミックスドア38の開度が調整されるので、冷房モードと同様に、混合空間35にて混合されて車室内へ吹き出す送風空気の温度が所望の温度に調整されて、車室内の暖房を行うことができる。なお、暖房モードでは、送風空気の除湿能力は発揮されない。
また、室内凝縮器12から流出した冷媒は、固定絞り14にて減圧されて室外熱交換器16へ流入する。室外熱交換器16へ流入した冷媒は、送風ファン16aから送風された車室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器16から流出した冷媒は、低圧電磁弁17、第1逆止弁18等を介して、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
(c)第1除湿モード(DRY_EVAサイクル:図3参照)
第1除湿モードでは、空調制御装置50が電気式三方弁13、低圧電磁弁17、熱交換器遮断電磁弁21および除湿電磁弁24を通電状態とし、高圧電磁弁20を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続し、低圧電磁弁17が開弁し、高圧電磁弁20が開弁し、熱交換器遮断電磁弁21が閉弁し、除湿電磁弁24が開弁する。
これにより、図3の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→除湿電磁弁24→第4三方継手25→室内蒸発器26→温度式膨張弁27の感温部27a→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
この第1除湿モードの冷媒回路では、固定絞り14から第3三方継手23へ流入した冷媒は、熱交換器遮断電磁弁21が閉弁しているので熱交換器遮断電磁弁21側へ流出することはない。また、除湿電磁弁24から第4三方継手25へ流入した冷媒は、第2逆止弁22の作用によって温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b側へ流出することはない。また、温度式膨張弁27の感温部27aから第5三方継手28へ流入した冷媒は、第1逆止弁18の作用によって第1逆止弁18側へ流出することはない。
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて室内蒸発器26通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却される。これにより、室内凝縮器12を通過する送風空気が加熱される。室内凝縮器12から流出した冷媒は、固定絞り14にて減圧されて室内蒸発器26へ流入する。
室内蒸発器26へ流入した低圧冷媒は、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器26を通過する送風空気が冷却されて除湿される。従って、室内蒸発器26にて冷却されて除湿された送風空気は、ヒータコア36、室内凝縮器12、ヒータコア36を通過する際に再加熱されて、混合空間35から車室内へ吹き出される。すなわち、車室内の除湿を行うことができる。なお、第1除湿モードでは、送風空気の除湿能力を発揮できるが、暖房能力は小さい。
また、室内蒸発器26から流出した冷媒は、温度式膨張弁27の感温部61aを介して、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
(d)第2除湿モード(DRY_ALLサイクル:図4参照)
第2除湿モードでは、空調制御装置50が電気式三方弁13、低圧電磁弁17、除湿電磁弁24を通電状態とし、残りの電磁弁20、21を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続し、低圧電磁弁17が開弁し、高圧電磁弁20が開弁し、熱交換器遮断電磁弁21が開弁し、除湿電磁弁24が開弁する。
これにより、図4の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→熱交換器遮断電磁弁21→第2三方継手19→室外熱交換器16→第1三方継手15→低圧電磁弁17→第1逆止弁18→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→除湿電磁弁24→第4三方継手25→室内蒸発器26→温度式膨張弁27の感温部27a→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
つまり、第2除湿モードでは、固定絞り14から第3三方継手23へ流入した冷媒が熱交換器遮断電磁弁21側および除湿電磁弁24側の双方に流出して、第1逆止弁18から第5三方継手28へ流入した冷媒および温度式膨張弁27の感温部27aから第5三方継手28へ流入した冷媒の双方が第5三方継手28にて合流してアキュムレータ29側へ流出する。
なお、この第2除湿モードの冷媒回路では、室外熱交換器16から第1三方継手15へ流入した冷媒は、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続しているので電気式三方弁13側へ流出することはない。また、除湿電磁弁24から第4三方継手25へ流入した冷媒は、第2逆止弁22の作用によって温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b側へ流出することはない。
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて室内蒸発器26通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却される。これにより、室内凝縮器12を通過する送風空気が加熱される。室内凝縮器12から流出した冷媒は、固定絞り14にて減圧された後、第3三方継手23にて分岐されて室外熱交換器16および室内蒸発器26へ流入する。
室外熱交換器16へ流入した冷媒は、送風ファン16aから送風された車室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器16から流出した冷媒は、低圧電磁弁17、第1逆止弁18等を介して、第5三方継手28へ流入する。室内蒸発器26へ流入した低圧冷媒は、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器26を通過する送風空気が冷却されて除湿される。
従って、室内蒸発器26にて冷却されて除湿された送風空気は、ヒータコア36、室内凝縮器12、ヒータコア36を通過する際に再加熱されて、混合空間35から車室内へ吹き出される。この際、第2除湿モードでは、第1除湿モードに対して、室外熱交換器16にて吸熱した熱量を室内凝縮器12にて放熱することができるので、送風空気を第1除湿モードよりも高温に加熱できる。すなわち、第2除湿モードでは、高い暖房能力を発揮させながら除湿能力も発揮させる除湿暖房を行うことができる。
また、室内蒸発器26から流出した冷媒は、第5三方継手28へ流入して室外熱交換器16から流出した冷媒と合流し、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
さらに、上記の如く、冷房モードの冷媒回路、暖房モードの冷媒回路、および第1除湿モードの冷媒回路は、いずれも圧縮機11に吸入される冷媒を室外熱交換器16と室内熱交換器(具体的には、室内凝縮器12、室内蒸発器26)とのうちいずれか一方に流通させる単独熱交換器モードの冷媒回路であり、第2除湿モードの冷媒回路は、圧縮機11に吸入される冷媒を室外熱交換器16と室内熱交換器(具体的には、室内蒸発器26)との双方に流通させる複合熱交換器モードの冷媒回路であると表現することもできる。
本実施形態の車両用空調装置は、以上の如く作動するので、以下のような優れた効果を発揮することができる。
制御ステップS7および制御ステップS11の処理で説明したように、本実施形態では、エコモード時には、エコモードが設定されていない場合に比べて、送風機32のブロワモータ電圧、および圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxが低い値に制限される。このため、エコモード時における車両用空調装置1の消費電力を低減して、車両用空調装置1の省電力化を図ることができる。また、エコモード時には、圧縮機11の回転数の上限値や送風機32のブロワモータ電圧を低下させるので、車両用空調装置1における騒音を低減することができ、車両用空調装置1の低騒音化を図ることができる。
ここで、エコモード時等において、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを低下させる場合には、冷凍サイクル10における高圧側冷媒圧力と低圧側冷媒圧力との差が縮小する。これにより、室外熱交換器16等で凝縮される冷媒の凝縮量が少なくなり、冷凍サイクル10を循環する冷媒の流量が減少する。なお、車両走行時には、送風ファン16aの回転数を増大させたとしても、走行時のラム圧によって、室外熱交換器16に送風される車室外空気の送風量がほとんど変化しなくなってしまう。このため、車両走行時には、室外熱交換器16において、冷媒の凝縮量が少なくなり易く、室内蒸発器26の温度が上昇し易いといった傾向がある。
そして、室外熱交換器16における冷媒の凝縮量が少なくなると、温度式膨張弁27では、冷凍サイクル10を循環する冷媒の流量が増加するように開度が開く方向に調整されることがあり、温度式膨張弁27の冷媒流れ下流側の冷媒(低圧側冷媒)の圧力が上昇し易くなる。低圧側冷媒の圧力上昇に伴って低圧側冷媒の温度が上昇し、当該低圧側冷媒が室内蒸発器26へ流入すると、室内蒸発器26の温度が上昇し、室内蒸発器26の表面に付着した凝縮水が乾く可能性が高くなり、凝縮水が乾く際の悪臭が発生してしまう。
これに対して、本実施形態では、エコモード時等において、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを低下させる場合、室内蒸発器26の温度上昇に応じて送風機32のブロワモータ電圧(送風能力)を低下させるようにしている(ステップS7参照)。送風機32の送風能力を低下させることで、室内蒸発器26における吸熱量が減少するので、室内蒸発器26の温度上昇を抑制することができ、室内蒸発器26に付着した凝縮水が乾く際の悪臭の発生を抑制することができる。
従って、本実施形態の構成によれば、車両用空調装置1における省電力化と悪臭発生の抑制とを両立させることが可能となる。
また、本実施形態では、エコモード時には、日射量Ts、車室内温度Tr、外気温Tamといった空調熱負荷の増大に応じて、送風機32のブロワモータ電圧の低下度合いを小さくするようにしている。このため、車室内への送風空気の送風量が少なくなり過ぎるのを抑制することができる。この結果、ユーザの空調フィーリングの悪化を抑制することができる。
また、制御ステップS11の処理で説明したように、圧縮機11の回転数(冷媒吐出能力)の上限値IVOmaxを、車速の増加に応じて増大させるので、車両が停車、又は低速で走行している条件、すなわち、圧縮機11の作動音がユーザにとって耳障りとなり易い条件では、車両用空調装置1の騒音を低減することができる。
一方、車両が高速で走行し、ロードノイズが大きくなる条件、すなわち、圧縮機11の作動音がユーザにとって耳障りとなり難い条件では、圧縮機11の回転数を上昇させることができる。
また、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを段階的に上昇させることによって、一時的な車両の速度の変動によって、圧縮機11の回転数の上限値が変動してしまうことを抑制することができる。
さらに、圧縮機11の回転数の上限値を上昇させる際の閾値を、上限値を低下させる際の閾値よりも低い値とすることで、車速のブレ(ハンチング)によって、圧縮機11の回転数の上限値が頻繁に変更されることを抑制することができる。
従って、車室内の空調性能を充分に確保しつつ、ユーザにとって耳障りな車両用空調装置の騒音の低減を図ることができる。
また、本実施形態では、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを段階的に変化させているので、車速の変化による圧縮機11の回転数の上限値が頻繁に変化することが抑制される。また、圧縮機11の回転数の上限値を上昇させる際の閾値を、上限値を低下させる際の閾値よりも低い値としているので、更に、車速の変化による圧縮機11の回転数の上限値が頻繁に変化することが抑制される。
このため、室内蒸発器26の温度変化が小さくなり、室内蒸発器26の温度が室内蒸発器26に付着した凝縮水の露点温度にまで上昇することを抑制することができる。この結果、本実施形態の構成によれば、室内蒸発器26に付着した凝縮水が乾く際の悪臭の発生について充分に抑制することが可能となる。
なお、上述した車両用空調装置1の運転モードのうち、室内蒸発器26に冷媒が流入しない運転モード時、すなわち、暖房モード時については、蒸発器温度Teに基づく送風機32のブロワモータ電圧を低下させる処理を行わなくともよい。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図12、図13に基づいて説明する。図12は、第1実施形態の図9に対応する図面であり、図13は、第1実施形態の図10に対応する図面である。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
上述の第1実施形態では、エコモードが設定されている場合に、圧縮機11の回転数を制限すると共に、送風機32のブロワモータ電圧(送風能力)を低下させる例を説明したが、本実施形態では、第1実施形態のステップS7およびステップS11の制御態様を変更して、シート空調装置90が作動している際に圧縮機11の回転数を制限すると共に、送風機32のブロワモータ電圧(送風能力)を低下させる例について説明する。
ここで、シート空調装置90は、シート空調装置90が作動している場合には、省電力でユーザの体感温度を効率よく調整することができるので、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを低下させて車両用空調装置1の省電力化を図ることが可能となる。
しかし、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを低下させる場合には、エコモード時と同様に、室内蒸発器26の温度が上昇して、室内蒸発器26に付着した凝縮水が乾き易く、凝縮水が乾く際の悪臭が発生し易くなる。
そこで、本実施形態では、ステップS7におけるステップS71にて、ステップS71にてオートスイッチが投入されていると判定された場合(S71:Yes)は、ステップS79に進み、シート空調装置90が作動しているか否かを判定する。具体的には、ステップS14にて説明したシート空調装置90が作動していることを示すフラグがONになっているか否かを判定する。
この結果、シート空調装置90が作動していないと判定された場合(S79:No)には、ステップS74に進み、ステップS5で決定された目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照してブロワモータ電圧を決定して、ステップS8に進む。
一方、シート空調装置90が作動していると判定された場合(S79:Yes)には、ステップS75に進み、ステップS5で決定された目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して仮のブロワモータ電圧を決定する。その後、ステップS76〜S78の処理を経てステップS8に進む。
また、ステップS11では、ステップS112でΔf_Hを決定した後、ステップS120にて、シート空調装置90が作動しているか否かを判定する。なお、ステップS120の判定は、ステップS79の判定と同様に処理する。
この結果、シート空調装置90が作動していないと判定された場合(S120:No)には、ステップS114に進み、TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照してブロワモータ電圧を決定して、ステップS8に進む。一方、シート空調装置90が作動していると判定された場合(S120:Yes)には、ステップS115に進み、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを、ステップS114で決定する圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxよりも低い値に決定する。
以上説明した本実施形態によれば、シート空調装置90の作動時には、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxおよび送風機32のブロワモータ電圧を低下させるので、車両用空調装置1の省電力化を図ることができる。特に、シート空調装置90は、冷凍サイクル10の圧縮機11よりも消費電力が小さい(省電力である)ため、より一層、車両用空調装置1の省電力化を図ることができる。
加えて、シート空調装置90が作動している場合には、室内蒸発器26の温度上昇に応じて送風機32の送風能力を低下させることで、室内熱交換器26における吸熱量を減少させることができる。このため、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを低下させた場合に、室内蒸発器26の温度上昇を抑制することができ、室内蒸発器26に付着した凝縮水が乾く際の悪臭の発生を抑制することができる。
従って、本実施形態の構成によれば、車両用空調装置1における省電力化と悪臭発生の抑制とを両立させることが可能となる。
また、本実施形態では、シート空調装置90の作動時には、日射量Ts、車室内温度Tr、外気温Tamといった空調熱負荷の増大に応じて、送風機32のブロワモータ電圧の低下度合いを小さくするようにしている。このため、車室内への送風空気の送風量が少なくなり過ぎるのを抑制することができる。この結果、ユーザの空調フィーリングの悪化を抑制することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図14に基づいて説明する。図14は、第2実施形態の図13に対応する図面である。なお、本実施形態では、第1、第2実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
上述の第1、第2実施形態では、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを空調熱負荷によらず、車速に応じて決定する例を説明したが、本実施形態では、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを、車速と共に空調熱負荷(実際にはTAO)を考慮して決定する例について説明する。
本実施形態では、ステップS11におけるステップS112でΔf_Hを決定した後、ステップS121に進み、車速センサの検出値に基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して圧縮機11の回転数の仮の上限値IVOmax´を決定して、ステップS120へ進む。ステップS121における仮の上限値IVOmax´の決定方法は、上述のステップS114と同様であるため、その説明を省略する。
ステップS120では、シート空調装置90が作動しているか否かを判定し、判定の結果、シート空調装置90が作動していないと判定された場合(S120:No)には、ステップS122に移行する。そして、ステップS122では、圧縮機11の回転数の上限補正量f1(TAO)を「0」に決定して、ステップS124に進む。
一方、ステップS120にて、シート空調装置90が作動していると判定された場合(S120:Yes)には、ステップS123に移行する。このステップS123では、ステップS5にて決定した目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して圧縮機11の回転数の上限補正量f1(TAO)を決定して、ステップS124に進む。
具体的には、TAOの極低温域(最大冷房域)において、f(TAO)を最大値(例えば、「0」)とし、TAOが極低温域から中間温度域(例えば、−5℃)に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じてf(TAO)を徐々に減少させる。また、TAOが所定の中間温度域内に入ると、f(TAO)を最小値(例えば、「−1200」)にする。なお、f1(TAO)は、空調熱負荷が高い程、高い値(「0」に近い値)となり、空調熱負荷が低い程、低い値となる。
ステップS124では、圧縮機11の回転数の仮の上限値IVOmax´にステップS122およびステップS123で決定した上限補正量f1(TAO)を加算して、今回の圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを決定する。
ここで、シート空調装置90が作動していない場合(S120:No)には、ステップS122にて上限補正量f1(TAO)を「0」としているので、ステップS121にて決定した仮の上限値IVOmax´をそのまま上限値IVOmaxに決定することとなる。
一方、シート空調装置90が作動している場合(S120:Yes)には、ステップS123にて、空調熱負荷の減少、すなわちTAOの上昇に応じて、上限補正量f1(TAO)を減少させているので、空調熱負荷が小さい場合には、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxは低い値に決定され、空調熱負荷が大きい場合には、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxは高い値に決定される。
ステップS124にて圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを設定した後、ステップS116〜S119を経て、今回の圧縮機回転数fnが決定され、ステップS12へ進む。
以上説明した本実施形態では、シート空調装置90の作動時には、シート空調装置90が作動していない場合に比べて、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxが低い値に制限される。このため、シート空調装置90の作動時における車両用空調装置1における消費電力を低減して、車両用空調装置1の省電力化を図ることができる。
また、本実施形態では、シート空調装置90の作動時には、空調熱負荷が小さい場合には、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを低い値に決定し、空調熱負荷が大きい場合には、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを高い値に決定するので、空調熱負荷が大きい場合における圧縮機11の冷媒吐出能力不足による空調性能低下を抑制することができる。この結果、ユーザの空調フィーリングの悪化を抑制することができる。
さらに、本実施形態では、車速の増加に応じて、圧縮機11の回転数の仮の上限値IVOmax´を決定しているので、ユーザにとって耳障りな車両用空調装置の騒音の低減を図ることができる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図15、図16に基づいて説明する。図15は、第1実施形態の図9、および第2実施形態の図12に対応する図面であり、図16は、第1実施形態の図10、および第2実施形態の図13に対応する図面である。なお、本実施形態では、第1〜第3実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
上述の第1〜第3実施形態では、エコモードが設定されている場合、あるいはシート空調装置90が作動している場合に、圧縮機11の回転数を制限すると共に、送風機32のブロワモータ電圧(送風能力)を低下させる例を説明したが、本実施形態では、第1〜第3実施形態のステップS7およびステップS11の制御態様を変更して、静音モードが設定されている際に圧縮機11の回転数を制限すると共に、送風機32のブロワモータ電圧(送風能力)を低下させる例について説明する。
本実施形態では、ステップS7におけるステップS71にて、ステップS71にてオートスイッチが投入されていると判定された場合(S71:Yes)は、ステップS80に進み、静音モードであるか否か、すなわち、静音スイッチ66からのON信号(低騒音要求信号)を取得したか否かを判定する。具体的には、ステップS3にて説明した現在の車両用空調装置1の運転モードが静音モードであることを示すフラグがONになっているか否かを判定する。
この結果、静音モードでないと判定された場合(S80:No)には、ステップS74に進み、ステップS5で決定された目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照してブロワモータ電圧を決定して、ステップS8に進む。
一方、静音モードであると判定された場合(S80:Yes)には、ステップS75に進み、ステップS5で決定された目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して仮のブロワモータ電圧を決定する。その後、ステップS76〜S78の処理を経てステップS8に進む。
また、ステップS11では、ステップS112でΔf_Hを決定した後、ステップS125にて、静音モードであるか否かを判定する。なお、ステップS125の判定は、ステップS80の判定と同様に処理する。
この結果、静音モードでないと判定された場合(S125:No)には、ステップS114に進み、TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照してブロワモータ電圧を決定して、ステップS8に進む。一方、静音モードであると判定された場合(S125:Yes)には、ステップS115に進み、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを、ステップS114で決定する圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxよりも低い値に決定する。
以上説明した本実施形態によれば、静音モードが設定されている場合には、静音モードが設定されていない場合に比べて、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxおよび送風機32のブロワモータ電圧を低下させるので、車両用空調装置1における騒音を低減することができると共に、車両用空調装置1の省電力化を図ることができる。
加えて、静音モードが設定されている場合には、室内蒸発器26の温度上昇に応じて送風機32の送風能力を低下させることで、室内熱交換器26における吸熱量を減少させることができる。このため、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを低下させた場合に、室内蒸発器26の温度上昇を抑制することができ、室内蒸発器26に付着した凝縮水が乾く際の悪臭の発生を抑制することができる。
従って、本実施形態の構成によれば、車両用空調装置1における省電力化と悪臭発生の抑制とを両立させることが可能となる。
また、本実施形態では、静音モードが設定されている場合には、日射量Ts、車室内温度Tr、外気温Tamといった空調熱負荷の増大に応じて、送風機32のブロワモータ電圧の低下度合いを小さくするようにしている。このため、車室内への送風空気の送風量が少なくなり過ぎるのを抑制することができる。この結果、ユーザの空調フィーリングの悪化を抑制することができる。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図17に基づいて説明する。図17は、第4実施形態の図16に対応する図面である。なお、本実施形態では、第1〜第4実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
上述の第4実施形態では、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを空調熱負荷によらず、車速に応じて決定する例を説明したが、本実施形態では、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを、車速と共に空調熱負荷(実際にはTAO)を考慮して決定する例について説明する。
本実施形態では、ステップS11におけるステップS112でΔf_Hを決定した後、ステップS121に進み、車速センサの検出値に基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して圧縮機11の回転数の仮の上限値IVOmax´を決定して、ステップS125へ進む。
ステップS125では、静音モードであるか否かを判定し、判定の結果、静音モードでないと判定された場合(S125:No)には、ステップS122に移行する。そして、ステップS122では、圧縮機11の回転数の上限補正量f1(TAO)を「0」に決定して、ステップS124に進む。
一方、ステップS125にて、静音モードであると判定された場合(S125:Yes)には、ステップS123に移行する。このステップS123では、ステップS5にて決定した目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して圧縮機11の回転数の上限補正量f1(TAO)を決定して、ステップS124に進む。
ステップS124では、圧縮機11の回転数の仮の上限値IVOmax´にステップS122およびステップS123で決定した上限補正量f1(TAO)を加算して、今回の圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを決定する。
以上説明した本実施形態では、静音モードが設定されている場合には、静音モードが設定されていない場合に比べて、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxが低い値に制限される。このため、静音モードが設定されている場合における圧縮機11の作動音(騒音)を低減すると共に、車両用空調装置1における消費電力を低減することができる。すなわち、静音モードが設定されている場合には、車両用空調装置1における低騒音化および省電力化を図ることができる。
また、本実施形態では、静音モードが設定されている場合には、空調熱負荷が小さいと、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを低い値に決定し、空調熱負荷が大きいと、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを高い値に決定するので、空調熱負荷が大きい場合における圧縮機11の冷媒吐出能力不足による空調性能低下を抑制することができる。この結果、ユーザの空調フィーリングの悪化を抑制することができる。
さらに、本実施形態では、車速の増加に応じて、圧縮機11の回転数の仮の上限値IVOmax´を決定しているので、ユーザにとって耳障りな車両用空調装置の騒音の低減を図ることができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。例えば、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の各実施形態では、エコモードの設定時、シート空調装置90の作動時、静音モードの設定時において、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを制限することによって、圧縮機11の冷媒吐出能力を低下させる例を説明したが、これ限定されない。例えば、エコモードの設定時、シート空調装置90の作動時、静音モードの設定時において、圧縮機11の電動モータ11bに供給する電力量を制限することによって、圧縮機11の冷媒吐出能力を低下させてもよい。
(2)上述の各実施形態では、ユーザの空調フィーリングを考慮して、空調熱負荷が大きい場合には、送風機32のブロワモータ電圧を増大させる構成としているが、これに限定されない。例えば、空調熱負荷によらず、室内蒸発器26の温度(蒸発器温度Te)の上昇に応じて、送風機32のブロワモータ電圧を低下させるようにしてもよい。この場合、ユーザの空調フィーリングが悪化を招くかもしれないが、室内蒸発器26での悪臭の発生をより確実に抑制することができる。
(3)上述の各実施形態では、車速の増減に応じて、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを設定する際に、制御ハンチングの抑制を図るため、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを上昇させる際の第1閾値と、低下させる際の第2閾値とにヒステリシス域を設けているが、例えば、制御ハンチングが無視できる程度に小さいような場合には、ヒステリシス域を無くしてもよい。
(4)上述の各実施形態では、車速の増加に応じて、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを上昇させるようにしているが、これに限定されない。エコモードの設定時、シート空調装置90の作動時、静音モードの設定時に、エコモードの非設定時、シート空調装置90の非作動時、静音モードの非設定時に比べて、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを低い値とすれば、車速の増減によらず、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを決定してもよい。
(5)上述の各実施形態は、可能な範囲で適宜組み合わせることができる。例えば、エコモードが設定された条件、シート空調装置90が作動した条件、静音モードが設定された条件のうち、いずれか1つの条件が成立した際に、圧縮機11の冷媒吐出能力を低下させると共に、送風機32の送風能力を低下させるようにしてもよい。
(6)上述の各実施形態では、冷房モード、暖房モード、第1除湿モードおよび第2除湿モードの冷媒回路を切替可能に構成された冷凍サイクル10を採用した例を説明したが、本実施形態では、冷媒回路の切替機能を有していない冷凍サイクル10を採用してもよい。例えば、圧縮機11、室外熱交換器16、温度式膨張弁27、室内蒸発器26をこの順で環状に接続した冷凍サイクル10を採用してもよい。つまり、上述の各実施形態における冷房モードを実現可能な構成としてもよい。
このように、送風機車室内へ送風される送風空気を冷却する冷房モードを実現する機能に特化された冷凍サイクル10を採用する車両用空調装置1であっても、上述の各実施形態に記載された制御態様を適用することで、上述の各実施形態に記載された効果を得ることができる。
(7)上述の実施形態では、本発明の車両用空調装置1を、プラグインハイブリッド車両の車両走行用の駆動力について詳細を述べていないが、本発明の車両用空調装置1は、エンジンEGおよび走行用電動モータの双方から直接駆動力を得て走行可能な、いわゆるパラレル型のハイブリッド車両に適用してもよいし、エンジンEGを発電機80の駆動源として用い、発電された電力をバッテリ81に蓄え、さらに、バッテリ81に蓄えられた電力を供給されることによって作動する走行用電動モータから駆動力を得て走行する、いわゆるシリアル型のハイブリッド車両に適用してもよい。