まず、本実施形態の車両用空調装置1の全体構成を図1に基づいて説明する。本実施形態では、車両用空調装置1を、エンジン(内燃機関)を備えることなく車両走行用の駆動力を走行用電動モータのみから得る電気自動車に適用している。この電気自動車は、蓄電手段であるバッテリ2(蓄電池、二次電池)から走行用電動モータに電力が供給されるようになっている。また、この電気自動車は、車両停車時に、外部電源(商用電源)から供給された電力をバッテリ2に充電することができるようになっている。
バッテリ2としては、例えばリチウムイオン電池を採用することができる。本実施形態では、バッテリ2は、車両用空調装置にも電力を供給するようになっている。
車両用空調装置1は、車両走行時に車室内の空調を行う通常空調の他に、外部電源からバッテリ2への充電中に、乗員が車両に乗り込む前に車室内の空調を行うプレ空調を行うことができるようになっている。
車両用空調装置1は、通常空調およびプレ空調において、車室内を冷房する冷房モード(COOLサイクル)、車室内を暖房する暖房モード(HOTサイクル)、車室内を除湿する第1除湿モード(DRY_EVAサイクル)および第2除湿モード(DRY_ALLサイクル)の冷媒回路を切替可能に構成された蒸気圧縮式の冷凍サイクル10を備えている。
図1では、冷房モード時の冷媒の流れを実線矢印で示している。暖房モード時、第1、第2除湿モード時の冷媒の流れについては図示を省略している。
第1除湿モードは、暖房能力に対して除湿能力を優先する除湿モードである。第2除湿モードは、除湿能力に対して暖房能力を優先する除湿モードである。従って、第1除湿モードを低温除湿モードあるいは単なる除湿モード、第2除湿モードを高温除湿モードあるいは除湿暖房モードと表現することもできる。
冷凍サイクル10は、圧縮機11、室内熱交換器としての室内凝縮器12および室内蒸発器26(蒸発器)、冷媒を減圧膨張させる減圧手段としての温度式膨張弁27および固定絞り14、並びに、冷媒回路切替手段としての5つ(複数)の電磁弁13、17、20、21、24等を備え、車室内へ送風される送風空気の温度を調整する温度調整手段としての機能を果たす。
また、この冷凍サイクル10では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。さらに、この冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、この冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
圧縮機11は、冷凍サイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するもので、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。固定容量型圧縮機構11aとしては、具体的に、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用できる。
電動モータ11bは、図2に示すインバータ61から出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。また、インバータ61は、空調制御装置50から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータ11bは、圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
図1に示すように、圧縮機11の吐出側には、室内凝縮器12の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器12は、その内部を流通する冷媒と室内蒸発器26通過後の送風空気とを熱交換させることで送風空気を加熱する加熱用熱交換器であり、室内空調ユニット30のケーシング31内に配置されている。
室内凝縮器12の冷媒出口側には、電気式三方弁13が接続されている。この電気式三方弁13は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段である。
より具体的には、電気式三方弁13は、電力が供給される通電状態では、室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続する冷媒回路に切り替え、電力の供給が停止される非通電状態では、室内凝縮器12の冷媒出口側と第1三方継手15の1つの冷媒流入出口との間を接続する冷媒回路に切り替える。
固定絞り14は、暖房モード、第1および第2除湿モード時に、電気式三方弁13から流出した冷媒を減圧膨張させる暖房除湿用の減圧手段である。この固定絞り14としては、キャピラリチューブ、オリフィス等を採用できる。もちろん、暖房除湿用の減圧手段として、空調制御装置50から出力される制御信号によって絞り通路面積が調整される電気式の可変絞り機構を採用してもよい。固定絞り14の冷媒出口側には、第3三方継手23の冷媒流入出口が接続されている。
第1三方継手15は、3つの冷媒流入出口を有し、冷媒流路を分岐する分岐部として機能するものである。このような三方継手は、冷媒配管を接合して構成してもよいし、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けて構成してもよい。
第1三方継手15の別の冷媒流入出口には、室外熱交換器16の一方の冷媒流入出口が接続されている。第1三方継手15のさらに別の冷媒流入出口には、低圧電磁弁17の冷媒入口側が接続されている。
低圧電磁弁17は、冷媒流路を開閉する弁体部と、弁体部を駆動するソレノイド(コイル)を有し、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段である。より具体的には、低圧電磁弁17は、通電状態で開弁して非通電状態で閉弁する、いわゆるノーマルクローズ型の開閉弁として構成されている。
低圧電磁弁17の冷媒出口側には、第1逆止弁18を介して、第5三方継手28の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第1逆止弁18は、低圧電磁弁17側から第5三方継手28側へ冷媒が流れることのみを許容している。
室外熱交換器16は、内部を流通する冷媒と送風ファン16aから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させるものである。送風ファン16aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
室外熱交換器16の他方の冷媒流入出口には、第2三方継手19の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第2三方継手19の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。
第2三方継手19の別の冷媒流入出口には、高圧電磁弁20の冷媒入口側が接続されている。第2三方継手19のさらに別の冷媒流入出口には、熱交換器遮断電磁弁21の一方の冷媒流入出口が接続されている。
高圧電磁弁20および熱交換器遮断電磁弁21は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段であり、その基本的構成は、低圧電磁弁17と同様である。但し、高圧電磁弁20および熱交換器遮断電磁弁21は、通電状態で閉弁して非通電状態で開弁する、いわゆるノーマルオープン型の開閉弁として構成されている。
高圧電磁弁20の冷媒出口側には、第2逆止弁22等を介して、温度式膨張弁27の絞り機構部入口側が接続されている。この第2逆止弁22は、高圧電磁弁20側から温度式膨張弁27側へ冷媒が流れることのみを許容している。
熱交換器遮断電磁弁21の他方の冷媒流入出口には、第3三方継手23の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第3三方継手23の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。
第3三方継手23の別の冷媒流入出口には、固定絞り14の冷媒出口側が接続されている。第3三方継手23のさらに別の冷媒流入出口には、除湿電磁弁24の冷媒入口側が接続されている。
除湿電磁弁24は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段であり、その基本的構成は、低圧電磁弁17と同様である。除湿電磁弁24もノーマルクローズ型の開閉弁として構成されている。
このように、冷媒回路切替手段としての5つの電磁弁13、17、20、21、24は、電力の供給が停止されると予め定めた開弁状態あるいは閉弁状態となる電気式三方弁13、低圧電磁弁17、高圧電磁弁20、熱交換器遮断電磁弁21および除湿電磁弁24によって構成されている。
除湿電磁弁24の冷媒出口側には、第4三方継手25の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第4三方継手25の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。第4三方継手25の別の冷媒流入出口には、第2逆止弁22の冷媒出口側が接続されている。第4三方継手25のさらに別の冷媒流入出口には、温度式膨張弁27の絞り機構部入口側が接続されている。温度式膨張弁27の絞り機構部出口側には、室内蒸発器26の冷媒入口側が接続されている。
室内蒸発器26は、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器であり、室内空調ユニット30のケーシング31内のうち、室内凝縮器12の送風空気流れ上流側に配置されている。
室内蒸発器26の冷媒出口側には、温度式膨張弁27の感温部入口側が接続されている。温度式膨張弁27は、絞り機構部入口から内部へ流入した冷媒を減圧膨張させて絞り機構部出口から外部へ流出させる冷房用の減圧手段である。
本実施形態では、温度式膨張弁27として、室内蒸発器26出口側冷媒の温度および圧力に基づいて室内蒸発器26出口側冷媒の過熱度を検出する感温部27aと、感温部27aの変位に応じて室内蒸発器26出口側冷媒の過熱度が予め定めた所定範囲となるように絞り通路面積(冷媒流量)を調整する可変絞り機構部27bとを1つのハウジング内に収容した内部均圧型膨張弁を採用している。
温度式膨張弁27の感温部出口側には、第5三方継手28の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第5三方継手28の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。第5三方継手28の別の冷媒流入出口には、第1逆止弁18の冷媒出口側が接続されている。第5三方継手28のさらに別の冷媒流入出口には、アキュムレータ29の冷媒入口側が接続されている。
アキュムレータ29は、その内部に流入した冷媒の気液を分離して、余剰冷媒を蓄える低圧側気液分離器である。アキュムレータ29の気相冷媒出口には、圧縮機11の冷媒吸入口が接続されている。
冷凍サイクル10のうち温度式膨張弁27の絞り機構部入口側には、冷凍サイクル10の冷媒を用いてバッテリ2を冷却するバッテリ冷却装置70(冷却手段)が接続されている。
バッテリ冷却装置70は、冷媒回路71、冷媒−冷却水熱交換器72、冷却水回路73および冷却水ポンプ74を備えている。
冷媒回路71は、冷凍サイクル10から供給された冷媒が循環する回路である。冷媒回路71の冷媒入口側は、第6三方継手75を介して冷凍サイクル10の冷媒配管に接続されている。冷媒回路71の冷媒出口側は、第7三方継手76を介して冷凍サイクル10に接続されている。
冷媒−冷却水熱交換器72は、冷凍サイクル10から供給された冷媒と、冷却水回路73を循環する冷却水とを熱交換して冷却水を冷却する熱交換器である。
冷却水回路73を構成する冷却水配管には、バッテリ2に形成された冷却水流路が接続されている。この冷却水回路73を循環する冷却水によってバッテリ2が冷却される。
冷却水ポンプ74は、冷却水回路73に配置された電動式のポンプであり、冷却水回路73の冷却水を圧送する。この冷却水ポンプ74は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって作動が制御される。
第6三方継手75の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。第6三方継手75の1つの冷媒流入出口は、バッテリ冷却電磁弁77を介して冷媒−冷却水熱交換器72の冷媒入口側に接続されている。第6三方継手75の別の冷媒流入出口は、第4三方継手25の1つの冷媒流入出口側に接続されている。第6三方継手75のさらに別の冷媒流入出口は、第7三方継手76の1つの冷媒流入出口側に接続されている。
バッテリ冷却電磁弁77は、バッテリ冷却装置70でバッテリ2を冷却させるか否かを切り替えるバッテリ冷却切替手段を構成しており、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。
バッテリ冷却電磁弁77の基本的構成は、低圧電磁弁17と同様であり、ノーマルクローズ型の開閉弁またはノーマルオープン型の開閉弁として構成されている。但し、本実施形態のバッテリ冷却電磁弁77は、冷媒回路71に流入した冷媒を減圧膨張させる固定絞り(減圧手段)が一体化されている。
冷媒−冷却水熱交換器72の冷媒出口側は、第7三方継手76の別の冷媒流入出口に接続されている。第7三方継手76のさらに別の冷媒流入出口は、蒸発器冷却電磁弁78を介して温度式膨張弁27の絞り機構部入口側に接続されている。
蒸発器冷却電磁弁78は、室内蒸発器26への冷媒を流入を遮断可能にする遮断手段を構成しており、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。蒸発器冷却電磁弁78の基本的構成は、低圧電磁弁17と同様であり、ノーマルクローズ型の開閉弁またはノーマルオープン型の開閉弁として構成されている。
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、室内蒸発器26、室内凝縮器12、ヒータコア36、PTCヒータ37等を収容したものである。
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替装置31aが配置されている。
内外気切替装置31aは、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入口(図1のREC側)および外気を導入させる外気導入口(図1のFRS側)が形成された箱状体の内部に、内気導入口および外気導入口の開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドアを収容して構成されたものである。
さらに、内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータ62(図2)によって駆動され、この電動アクチュエータ62は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
内外気切替ドアによって切り替えられる吸込口モードとしては、内気導入口を全開とするとともに外気導入口を全閉としてケーシング31内へ内気を導入する全内気モード、内気導入口を全閉とするとともに外気導入口を全開としてケーシング31内へ外気を導入する全外気モード、および、全内気モードと全外気モードとの間で、内気導入口および外気導入口の開口面積を連続的に調整することにより、内気と外気の導入比率を連続的に変化させる内外気混入モードがある。
従って、本実施形態の内外気切替装置31aは、車室内へ送風される送風空気における外気の割合(より具体的には、外気と内気との割合)を調整する外気割合調整手段を構成している。
内外気切替装置31aの空気流れ下流側には、内外気切替装置31aを介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風能力)が制御される。このため、空調制御装置50は、送風機制御手段を構成している。
送風機32の空気流れ下流側には、室内蒸発器26が配置されている。さらに、室内蒸発器26の空気流れ下流側には、室内蒸発器26通過後の空気を流す加熱用冷風通路33、冷風バイパス通路34といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34から流出した空気を混合させる混合空間35が形成されている。
加熱用冷風通路33には、室内蒸発器26通過後の空気を加熱するための加熱手段としてのヒータコア36、室内凝縮器12、およびPTCヒータ37が、送風空気流れ方向に向かってこの順で配置されている。
ヒータコア36は、電気ヒータ41によって加熱された温水(熱媒体)と室内蒸発器26通過後の空気とを熱交換させて、室内蒸発器26通過後の空気を加熱する加熱用熱交換器であり、温水回路40を構成する温水配管に接続されている。
温水回路40は、電気ヒータ41によって加熱された温水を循環させる回路である。温水回路40には、温水を圧送する電動式の温水ポンプ40aが配置されている。この温水ポンプ40aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数が制御され、ひいては温水圧送能力および温水循環量が制御される。
そして、空調制御装置50が温水ポンプ40aを作動させることによって、電気ヒータ41によって加熱された温水がヒータコア36へ流入することによって冷却され、ヒータコア36にて冷却された温水が、再び電気ヒータ41へ戻るように構成されている。
つまり、温水は、ヒータコア36にて車室内へ送風される送風空気を加熱する熱源媒体であり、温水回路40は、送風空気の温度を調整する温度調整手段を構成している。
PTCヒータ37は、PTC素子(正特性サーミスタ)を有し、このPTC素子に電力を供給されることによって発熱して、室内凝縮器12通過後の空気を加熱する補助加熱手段としての電気ヒータである。なお、本実施形態のPTCヒータ37は、複数本(具体的には3本)設けられており、空調制御装置50が、通電するPTCヒータ37の本数を変化させることによって、複数のPTCヒータ37全体としての加熱能力(稼働率)が制御される。
一方、冷風バイパス通路34は、室内蒸発器26通過後の空気を、ヒータコア36、室内凝縮器12、およびPTCヒータ37を通過させることなく、混合空間35に導くための空気通路である。従って、混合空間35にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路33を通過する空気および冷風バイパス通路34を通過する空気の風量割合によって変化する。
そこで、本実施形態では、室内蒸発器26の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34の入口側に、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア38を配置している。
従って、エアミックスドア38は、混合空間35内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。より具体的には、エアミックスドア38は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63によって駆動され、この電動アクチュエータ63は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
さらに、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間35から冷却対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出口39が配置されている。この吹出口としては、具体的に、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口、乗員の下半身(特に足元)に向けて空調風を吹き出すフット吹出口、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)が設けられている。
また、フェイス吹出口、フット吹出口、およびデフロスタ吹出口の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口の開口面積を調整するフェイスドア、フット吹出口の開口面積を調整するフットドア、デフロスタ吹出口の開口面積を調整するデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、リンク機構(図示せず)を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータ64hは、空調制御装置50から出力される制御信号によってその作動が制御される。このため、空調制御装置50は、吹出口モード切替制御手段を構成している。
また、吹出口モードとしては、フェイス吹出口を全開してフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口を全開するとともにデフロスタ吹出口を小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出すフットモード、およびフット吹出口およびデフロスタ吹出口を同程度開口して、フット吹出口およびデフロスタ吹出口の双方から空気を吹き出すフットデフロスタモードがある。
さらに、乗員が操作パネル60のスイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口を全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
なお、本実施形態の車両用空調装置1が適用される車両は、車両用空調装置とは別に、電熱デフォッガ(図示せず)を備えている。電熱デフォッガとは、車室内窓ガラスの内部あるいは表面に配置された電熱線であって、窓ガラスを加熱することで防曇あるいは窓曇り解消を行うものである。この電熱デフォッガは、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動を制御できるようになっている。
次に、本実施形態の電気制御部を図2に基づいて説明する。空調制御装置50は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61、各電磁弁13、17、20、21、24、77、78、送風ファン16a、送風機32、各種電動アクチュエータ62、63、64、PTCヒータ37、温水ポンプ40a、冷却水ポンプ74等の作動を制御する。
なお、空調制御装置50は、上述した各種機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、本実施形態では、特に、バッテリ冷却電磁弁77の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)をバッテリ冷却切替制御手段50aとする。バッテリ冷却電磁弁77およびバッテリ冷却切替制御手段50aは、バッテリ冷却装置70でバッテリ2を冷却させるか否かを切り替えるバッテリ冷却切替手段(切替手段)を構成している。もちろん、バッテリ冷却切替制御手段50aを空調制御装置50に対して別体で構成してもよい。
また、本実施形態では、蒸発器冷却電磁弁78の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)を蒸発器冷却切替制御手段50bとする。蒸発器冷却電磁弁78および蒸発器冷却切替制御手段50bは、室内蒸発器26への冷媒の流入を遮断可能にする遮断手段を構成している。もちろん、蒸発器冷却切替制御手段50bを空調制御装置50に対して別体で構成してもよい。
また、空調制御装置50の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ51、外気温Tamを検出する外気センサ52(外気温検出手段)、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ53、圧縮機11の吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ54(吐出温度検出手段)、圧縮機11の吐出側冷媒圧力(高圧側冷媒圧力)Pdを検出する吐出圧力センサ55(吐出圧力検出手段)、室内蒸発器26からの吹出空気温度(蒸発器温度)Teを検出する蒸発器温度センサ56(蒸発器温度検出手段)、第1三方継手15と低圧電磁弁17との間を流通する冷媒の温度Tsiを検出する吸入温度センサ57、電気ヒータ41で加熱された温水の温度Twを検出する温水温度センサ(温水温度検出手段)、車室内の窓ガラス近傍の車室内空気の相対湿度を検出する湿度センサ、窓ガラス近傍の車室内空気の温度を検出する窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度を検出する窓ガラス表面温度センサ等のセンサ群の検出信号が入力される。
なお、本実施形態の圧縮機11の吐出側冷媒圧力(高圧側冷媒圧力)Pdは、冷房モードでは、圧縮機11の冷媒吐出口側から温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b入口側へ至るサイクルの高圧側冷媒圧力であり、その他の運転モードでは、圧縮機11の冷媒吐出口側から固定絞り14入口側へ至るサイクルの高圧側冷媒圧力となる。なお、吐出圧力センサ55は、一般的な冷凍サイクルにおいても、高圧側冷媒圧力の異常上昇を監視するために設けられている。
蒸発器温度センサ56は、具体的に室内蒸発器26の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、蒸発器温度センサ56として、室内蒸発器26のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、室内蒸発器26を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出手段を採用してもよい。また、湿度センサ、窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度センサの検出値は、窓ガラス表面の相対湿度RHWを算出するために用いられる。
また、空調制御装置50の入力側には、車速Vvを検出する車速センサ58(車速検出手段)、およびバッテリ2の温度を検出するバッテリ温度センサ59(バッテリ温度検出手段)の検出信号が入力される。
さらに、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ、エアコンスイッチ、オートスイッチ、運転モードの切替スイッチ、吹出口モードの切替スイッチ、送風機32の風量設定スイッチ、車室内温度設定スイッチ等が設けられている。
エアコンスイッチは、エアコンのオン・オフ(換言すれば、圧縮機11の作動・停止)を切り替えるスイッチである。オートスイッチは、車両用空調装置1の自動制御を設定あるいは解除するスイッチである。車室内温度設定スイッチは、乗員の操作によって車室内目標温度Tsetを設定する目標温度設定手段である。また、エコノミースイッチは、乗員の投入操作によって車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を要求する省動力化要求信号を出力させる省動力化要求手段である。
空調制御装置50は、乗員が携帯する無線端末90(具体的には、リモコン)あるいは移動体通信手段(具体的には、携帯電話、スマートフォン)と制御信号の送受信を行う送受信部を有している。この無線端末90あるいは移動体通信手段は、乗員がプレ空調を行うことの要求信号を出力する機能を果たす。
空調制御装置50は、乗員の乗車予定時刻を予め設定することができるようになっている。具体的には、操作パネル60、無線端末90、移動体通信手段等を通じて乗員が乗車予定時刻を空調制御装置50に入力・設定することができるようになっている。
なお、空調制御装置50は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御手段を構成している。
例えば、空調制御装置50のうち、圧縮機11の電動モータ11bに接続されたインバータ61から出力される交流電圧の周波数を制御して、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する構成が圧縮機制御手段を構成し、送風手段である送風機32の作動を制御して、送風機32の送風能力を制御する構成が送風機制御手段を構成している。
次に、上記構成における本実施形態の作動を図3に基づいて説明する。図3に示す制御処理は、車両システムが停止している場合でも、バッテリ2から空調制御装置50に電力が供給されていれば実行される。
まず、ステップS1では、車両用空調装置1の作動スイッチが投入(ON)されているか否か、および、プレ空調のスタートスイッチが投入されているか否かを判定する。そして、車両用空調装置1の作動スイッチ、あるいはプレ空調のスタートスイッチが投入されていると判定されるとステップS2へ進む。
また、プレ空調のスタートスイッチは、乗員が携帯する無線端末90あるいは移動体通信手段(具体的には、携帯電話)等に設けられている。従って、乗員は車両から離れた場所から車両用空調装置1を始動させることができる。
例えば、無線端末に設けられたプレ空調のスタートスイッチが投入された際には、車両側が無線端末から送信されるプレ空調スタート信号を直接受信することによって、プレ空調のスタートスイッチが投入されたことが判定される。また、移動体通信手段に設けられたプレ空調のスタートスイッチが投入された際には、車両側が携帯電話基地局等を介して送信されるプレ空調スタート信号を直接受信することによって、プレ空調のスタートスイッチが投入されたことが判定される。
プレ空調は、車両に外部電源から電力が供給されている場合は、ユーザからプレ空調の停止が要求されるまで継続され、外部電源から電力が供給されていない場合は、バッテリ2の蓄電残量が所定量以下となるまで行うようになっている。
ステップS2では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等が行われる。なお、フラグの初期化には、現在のフラグの状態を維持することも含まれる。
次のステップS3では、操作パネル60の操作信号を読み込んでステップS4へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチによって設定される車室内設定温度Tset、吹出口モードの選択信号、吸込口モードの選択信号、送風機32の風量の設定信号等がある。
ステップS4では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群51〜57の検出信号を読み込んで、ステップS5へ進む。ステップS5では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。さらに、暖房モードでは、暖房用熱交換器目標温度を算出する。目標吹出温度TAOは、下記数式F1により算出される。TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ51によって検出された内気温、Tamは外気センサ52によって検出された外気温、Tsは日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
また、暖房用熱交換器目標温度は、基本的に上述の数式F1にて算出される値となるが、消費電力の抑制のために数式F1にて算出されたTAOよりも低い値とする補正が行われる場合もある。
続くステップS6〜S13では、空調制御装置50に接続された各種機器の制御状態が決定される。まず、ステップS6では、空調環境状態に応じて、冷房モード、暖房モード、第1除湿モードおよび第2除湿モードの選択が行われる。
例えば、冷房モードについては、吹出口モードがフェイスモードになっている際に選択され、暖房モード、第1除湿モードおよび第2除湿モードについては、吸込口モードが全内気モードになっている際に選択されるようにすればよい。さらに、蒸発器温度センサ56によって検出された室内蒸発器26からの吹出空気温度(蒸発器温度)Teに応じて、暖房モード、第1除湿モードおよび第2除湿モードを切り換えるようにすればよい。
具体的には、吹出空気温度Teが第1基準吹出空気温度(例えば、0℃)よりも高いときには、除湿の必要性はないものとして、暖房モードを選択し、Teが第1基準吹出空気温度以下であって、第2基準吹出空気温度(例えば、−1℃)よりも高いときには、除湿の必要性があるものとして、第1除湿モードを選択し、さらに、Teが第2基準吹出空気温度以下のときには、暖房よりも除湿を優先させる第2除湿モードを選択すればよい。
ステップS7では、送風機32により送風される空気の目標送風量を決定する。具体的には、送風機32の電動モータに印加するブロワモータ電圧を決定する。
より詳細には、操作パネル60のオートスイッチが投入されていない場合は、操作パネル60の風量設定スイッチによって設定された乗員の所望の風量となるブロワモータ電圧が決定されて、ステップS8へ進む。本実施形態の風量設定スイッチは、Lo→M1→M2→M3→Hiの5段階の風量を設定することができ、それぞれ4V→6V→8V→10V→12Vの順にブロワモータ電圧が高くなるように決定される。
一方、オートスイッチが投入されている場合は、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、ステップS4で決定された目標吹出温度TAOに基づいてブロワレベルを決定して、ステップS8へ進む。
本実施形態では、TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)でブロワレベルを最大値にして、送風機32の風量を最大風量付近に制御する。また、TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じてブロワレベルを低下させて、送風機32の風量を減少させる。
さらに、TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じてブロワレベルを低下させて、送風機32の風量を減少させる。また、TAOが所定の中間温度域内に入ると、ブロワレベルを最小値にして送風機32の風量を最小値にする。
ステップS8では、吸込口モード、すなわち内外気切替箱の切替状態を決定する。この吸込口モードもTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。
本実施形態では、基本的に外気を導入する全外気モードが優先されるが、TAOが極低温域となって高い冷房性能を得たい場合等に内気を導入する全内気モードが選択される。さらに、外気の排ガス濃度を検出する排ガス濃度検出手段を設け、排ガス濃度が予め定めた基準濃度以上となったときに、全内気モードを選択するようにしてもよい。
ステップS9では、吹出口モードを決定する。この吹出口モードも、TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて吹出口モードをフェイスモード→バイレベルモード→フットモードへと順次切り替える。
従って、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択され易くなる。さらに、湿度センサの検出値から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合には、フットデフロスタモードあるいはデフロスタモードを選択するようにしてもよい。
ステップS10では、エアミックスドア38の目標開度SWを、上述のTAO、蒸発器温度センサ56によって検出された室内蒸発器26からの吹出空気温度Te、加熱器温度に基づいて算出する。
ここで、加熱器温度とは、加熱用冷風通路33に配置された加熱手段(ヒータコア36、室内凝縮器12、およびPTCヒータ37)の加熱能力に応じて決定される値であって、一般的には温水温度Twを採用できる。従って、目標開度SWは次の数式F2により算出できる。SW=[(TAO−Te)/(Tw−Te)]×100(%)…(F2)
なお、SW=0%は、エアミックスドア38の最大冷房位置であり、冷風バイパス通路34を全開し、加熱用冷風通路33を全閉する。これに対し、SW=100%は、エアミックスドア38の最大暖房位置であり、冷風バイパス通路34を全閉し、加熱用冷風通路33を全開する。
ステップS11では、圧縮機11の冷媒吐出能力(具体的には、圧縮機11の回転数)を決定する。ここで、圧縮機11の基本的な回転数の決定手法を説明する。まず、冷房モードでは、ステップS5で決定したTAO等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、空調フィーリングを悪化させないように、室内蒸発器26における冷媒蒸発温度Teの目標蒸発温度TEOを決定する。
そして、この目標蒸発温度TEOと冷媒蒸発温度Teの偏差En(TEO−Te)を算出し、今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(En−(En−1))とを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fCn−1に対する回転数変化量Δf_Cを求める。
また、暖房モード、第1除湿モードおよび第2除湿モードでは、ステップS4で決定した暖房用熱交換器目標温度等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、吐出側冷媒圧力(高圧側冷媒圧力)Pdの目標高圧PDOを決定する。
そして、この目標高圧PDOと吐出側冷媒圧力Pdの偏差Pn(PDO−Pd)を算出し、今回算出された偏差Pnから前回算出された偏差Pn−1を減算した偏差変化率Pdot(Pn−(Pn−1))とを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fHn−1に対する回転数変化量Δf_Hを求める。
このステップS11のより詳細な制御内容については、図4を用いて説明する。まず、図4に示すステップS1101では、冷房モード(COOLサイクル)時の回転数変化量Δf_Cを求める。図4のステップS1101には、ルールとして用いるファジールール表を記載している。このルール表では、上述の偏差Enと偏差変化率Edotに基づいて室内蒸発器26の着霜が防止されるようにΔf_Cが決定される。
なお、本実施形態のステップS1101では、目標吹出温度TAOの低下に伴って、目標蒸発温度TEOを低下させるように決定する。従って、本実施形態の制御ステップS1101は、目標蒸発温度決定手段を構成している。
ステップS1102では、暖房モード(HOTサイクル)、第1除湿モード(DRY_EVAサイクル)および第2除湿モード(DRY_ALLサイクル)時の回転数変化量Δf_Hを求める。図4のステップS1102には、ルールとして用いるファジールール表を記載している。このルール表では、上述の偏差Pnと偏差変化率Pdotに基づいて高圧側冷媒圧力Pdの異常上昇が防止されるようにΔf_Hが決定される。
続くステップS1103では、車速センサ58で取得した車速Vvが基準車速KVv(本実施形態では30km/h)を超えているか否かが判定される。
ステップS1103にて、車速Vvが30km/hを超えていると判定された場合は、車両の速度が高車速になっているものとしてステップS1104へ進み、IVOmax=7000に決定して、ステップS1106へ進む。なお、IVOmaxは、圧縮機回転数の上限値IVOmaxである。
一方、ステップS1103にて、車速Vvが30km/h以上となっていないと判定された場合は、車両の速度が低車速になっているものとしてステップS1105へ進む。ステップS1105では、ステップS5で決定したTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、IVOmaxを決定する。
具体的には、図4のステップS1105の制御特性図に示すように、ブロワ電圧の上昇に伴ってIVOmaxを上昇させるように決定する。より詳細には、ブロワ電圧が4V未満の領域ではIVOmaxを3000rpmに決定し、ブロワ電圧が12V以上の領域ではIVOmaxを5000rpmに決定し、ブロワ電圧が4V以上12V未満の領域ではIVOmaxを3000〜5000rpmの範囲で、ブロワ電圧に比例して上昇させるように決定する。
従って、ステップS1103にて、車速Vvが30km/hを超えていると判定された場合、圧縮機回転数の上限値IVOmaxは最大回転数となるように決定され、ステップS1103にて、車速Vvが30km/h以下になっていると判定された場合、圧縮機回転数の上限値IVOmaxは最大回転数以下となるように決定される。換言すると、圧縮機回転数の上限値IVOmaxは、車速Vvの低下に伴って低下するように決定される。
上記説明から明らかなように、本実施形態における制御ステップS1103〜S1105は、圧縮機回転数の上限値IVOmax、すなわち圧縮機11の冷媒吐出能力の上限値を決定する上限値決定手段を構成している。
続いて、ステップS1106では、ステップS6で決定された運転モードが冷房モードであるか否かが判定される。ステップS1106にて、ステップS6で決定された運転モードが冷房モードであると判定された場合、ステップS1107へ進み、ステップS1101にて決定されたΔf_Cを圧縮機11の回転数変化量Δfに決定して、ステップS1109へ進む。
一方、ステップS1106にて、ステップS6で決定された運転モードが冷房モードでないと判定された場合、ステップS1108へ進み、ステップS1102にて決定されたΔf_Hを圧縮機11の回転数変化量Δfに決定して、ステップS1109へ進む。
ステップS1109では、前回の圧縮機回転数fn−1に回転数変化量Δfを加えた値と、ステップS1104、S1105にて決定された上限値IVOmaxとを比較して、小さい方の値をIVOdと決定して、ステップS1110へ進む。すなわち、制御ステップS11109では、IVOdが、ステップS1104、S1105にて決定された上限値IVOmaxに制限される。なお、IVOdは、仮の今回の圧縮機回転数である。
続いてステップS1110では、バッテリ2および室内蒸発器26のうちバッテリ2のみが冷却中であるか否かが判定される。ステップS1110にて、バッテリ2のみが冷却中であると判定されなかった場合(換言すれば、少なくとも室内蒸発器26が冷却中であると判定された場合)、ステップS1111へ進む。
ステップS1111では、今回の圧縮機回転数fnが、ステップS1109で決定された仮の圧縮機回転数IVOdに決定され、ステップS12へ進む。すなわち、制御ステップS1113では、圧縮機回転数fnが、ステップS1104、S1105にて決定された上限値IVOmaxに制限される。
これにより、冷房モード(COOLサイクル)時に室内蒸発器26の着霜を防止でき、暖房モード(HOTサイクル)、第1除湿モード(DRY_EVAサイクル)および第2除湿モード(DRY_ALLサイクル)時に高圧側冷媒圧力Pdの異常上昇を防止できる。
一方、ステップS1110にて、バッテリ2のみ冷却中であると判定された場合(換言すれば、バッテリ2は冷却中であり、かつ室内蒸発器26は冷却中でないと判定された場合)、ステップS1112へ進み、バッテリ2の温度に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、仮の今回の圧縮機回転数f(Bat)を決定する。
具体的には、図4のステップS1112の制御特性図に示すように、バッテリ温度の上昇に伴ってf(Bat)を上昇させるように決定する。より詳細には、バッテリ温度が25℃未満の領域ではf(Bat)を1000rpmに決定し、バッテリ温度が55℃以上の領域ではf(Bat)を10000rpmに決定し、バッテリ温度が25℃以上55℃未満の領域ではf(Bat)を1000〜10000rpmの範囲で、バッテリ温度に比例して上昇させるように決定する。
続いて、ステップS1113では、今回の圧縮機回転数fnが、ステップS1112で決定された仮の圧縮機回転数f(Bat)に決定され、ステップS12へ進む。
従って、バッテリ2は冷却中であり、かつ室内蒸発器26は冷却中でない場合、圧縮機回転数fnは、バッテリ温度に基づいて決定される。換言すると、圧縮機回転数fnは、バッテリ温度の上昇に伴って上昇するように決定される。このため、バッテリ温度が高いときに圧縮機回転数を高くして、バッテリ2の冷却能力を高めることができる。
なお、ステップS11における圧縮機回転数fnの決定は、図2のメインルーチンが繰り返される制御周期τ毎に行われるものではなく、所定の制御間隔(本実施形態では1秒)毎に行われる。
ステップS12では、PTCヒータ37の作動本数の決定および電熱デフォッガの作動状態の決定が行われる。PTCヒータ37の作動本数は、例えば、ステップS6にてPTCヒータ37への通電の必要があるとされたときに、暖房モード時にエアミックスドア38の目標開度SWが100%となっても、暖房用熱交換器目標温度を得られない場合に、内気温Trと暖房用熱交換器目標温度との差に応じて決定すればよい。
また、車室内の湿度および温度から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合、あるいは窓ガラスに曇りが発生している場合は、電熱デフォッガを作動させる。
ステップS13では、上述のステップS6で決定された運転モードに応じて、各電磁弁13〜24の作動状態を決定する。
具体的には、図5の図表に示すように、運転モードが冷房モードに決定されている場合は、全ての電磁弁を非通電状態とする。また、暖房モードに決定されている場合は、電気式三方弁13、高圧電磁弁20、低圧電磁弁17を通電状態とし、残りの電磁弁21、24を非通電状態とする。
また、第1除湿モードに決定されている場合は、電気式三方弁13、低圧電磁弁17、除湿電磁弁24および熱交換器遮断電磁弁21を通電状態とし、高圧電磁弁20を非通電状態とする。また、第2除湿モードに決定されている場合は、電気式三方弁13、低圧電磁弁17、除湿電磁弁24を通電状態とし、残りの電磁弁20、21を非通電状態とする。
つまり、本実施形態では、いずれの運転モードの冷媒回路に切り替えた場合であっても、各電磁弁13〜24のうち少なくとも1つの電磁弁に対する電力の供給が停止されるように構成されている。これにより、本実施形態の各電磁弁13〜24の合計消費電力を低減できるようにしている。
さらに、ステップS13では、バッテリ冷却電磁弁77の作動状態を決定する。このバッテリ冷却電磁弁77の作動状態を決定する処理の詳細については、図6を用いて説明する。
まず、ステップS1301では、現在の時刻が、乗員の乗車予定時刻(換言すれば、乗員が乗車すると推定される時刻)から遡って20分以内であるか否かを判定する。ここで、乗車予定時刻は、車室内ディスプレイや携帯電話・スマートフォンの画面などを通じて乗員によって予め設定されている。なお、乗車予定時刻は、空調制御装置50がこれまでの乗車履歴から推定するようにしてもよい。
ステップS1301にて、現在の時刻が、乗車予定時刻から遡って20分以内でないと判定された場合、すなわち、現在の時刻が、乗車予定時刻から遡って20分以上前、または乗車予定時刻よりも後の場合、ステップS1302へ進み、プレ空調指示が出されたプレ空調中であるか否かを判定する。
ステップS1302にて、プレ空調中でないと判定された場合、乗員が既に乗車しているものとしてステップS1303へ進み、バッテリ温度が第1の温度T1(本実施形態では55℃)を超えているか否かを判定する。
ステップS1303にて、バッテリ温度が55℃を超えていると判定された場合、ステップS1304へ進み、バッテリ冷却電磁弁77の作動状態を開状態に決定し、ステップS14へ進む。また、ステップS1304では、冷却水ポンプ74の作動状態をオン状態に決定する。
これにより、バッテリ冷却電磁弁77が開弁し、冷凍サイクル10を循環する冷媒が第6三方継手75にて冷媒回路71へ分岐し、バッテリ冷却電磁弁77の固定絞りにて減圧膨張される。バッテリ冷却電磁弁77の固定絞りにて減圧された低圧冷媒は冷媒−冷却水熱交換器72へ流入する。また、冷却水ポンプ74が作動して冷却水回路73の冷却水を圧送し、冷媒−冷却水熱交換器72に冷却水が循環する。そして、冷媒−冷却水熱交換器72にて冷媒と冷却水とが熱交換して冷却水が冷却され、冷媒−冷却水熱交換器72で冷却された冷却水がバッテリ2の冷却水流路を通過することによってバッテリ2が冷却される。
従って、乗員が既に乗車していると推定される場合(換言すれば、車両が走行中と推定される場合)、バッテリ温度が55℃よりも高くなるとバッテリ冷却が開始される。
一方、ステップS1303にて、バッテリ温度が55℃を超えていないと判定された場合、ステップS1305へ進み、バッテリ冷却電磁弁77の作動状態を閉状態に決定し、ステップS14へ進む。また、ステップS1305では、冷却水ポンプ74の作動状態をオフ状態に決定する。
これにより、バッテリ冷却電磁弁77が閉弁し、冷凍サイクル10の冷媒が冷媒−冷却水熱交換器72へ流入しないので、バッテリ2の冷却が行われない。従って、乗員が既に乗車していると推定される場合(換言すれば、車両が走行中と推定される場合)、バッテリ温度が55℃以下であるとバッテリ2の冷却が行われない。
一方、ステップS1301にて、現在の時刻が乗車予定時刻から遡って20分以内と判定された場合、またはステップS1302にて、プレ空調中であると判定された場合、乗員がまだ乗車していないものとしてステップS1306へ進み、車外の外部電源から電力供給が可能な状態か否かを判定する。
ステップS1306にて、外部電源から電力供給が可能な状態でないと判定された場合、ステップS1307へ進み、バッテリ温度が、第1の温度T1よりも低い第2の温度T2A(本実施形態では50℃)を超えているか否かを判定する。
ステップS1307にて、バッテリ温度が50℃を超えていると判定された場合、上述のステップS1304へ進む。従って、乗員がまだ乗車していないと推定され、かつ外部電源からの電力供給が不可能な場合、バッテリ温度が50℃よりも高くなるとバッテリ冷却が開始される。
一方、ステップS1307にて、バッテリ温度が50℃を超えていないと判定された場合、ステップS1308へ進み、バッテリ冷却電磁弁77の作動状態を閉状態に決定し、ステップS14へ進む。また、ステップS1308では、冷却水ポンプ74の作動状態をオフ状態に決定する。従って、乗員がまだ乗車していないと推定され、かつ外部電源からの電力供給が不可能な場合、バッテリ温度が50℃以下であるとバッテリ2の冷却が行われない。
一方、ステップS1306にて、外部電源から電力供給が可能な状態であると判定された場合、ステップS1309へ進み、バッテリ温度、第1の温度T1よりも低い第2の温度T2B(本実施形態では45℃)を超えているか否かを判定する。
ステップS1309にて、バッテリ温度が45℃を超えていると判定された場合、上述のステップS1304へ進む。従って、乗員がまだ乗車していないと推定され、かつ外部電源からの電力供給が可能な場合、バッテリ温度が45℃よりも高くなるとバッテリ冷却が開始される。
一方、ステップS1309にて、バッテリ温度が45℃を超えていないと判定された場合、ステップS1310へ進み、バッテリ冷却電磁弁77の作動状態を閉状態に決定し、ステップS14へ進む。また、ステップS1310では、冷却水ポンプ74の作動状態をオフ状態に決定する。従って、乗員がまだ乗車していないと推定され、かつ外部電源からの電力供給が可能な場合、バッテリ温度が45℃以下であるとバッテリ2の冷却が行われない。
ステップS14では、上述のステップS6〜S13で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50より各種機器61、13、17、20、21、24、16a、32、62、63、64、74、77、78に対して制御信号および制御電圧が出力される。例えば、圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61に対しては、圧縮機11の回転数がステップS11で決定された回転数となるように制御信号が出力される。
ステップS15では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS16へ進む。なお、本実施形態は制御周期τを250msとしている。これは、車室内の空調制御は、走行用電動モータ制御等と比較して遅い制御周期であってもその制御性に悪影響を与えないからである。さらに、車両内における空調制御のための通信量を抑制して、走行用電動モータ制御等のように高速制御を行う必要のある制御系の通信量を充分に確保することができる。
ここで、本実施形態の車両のように、外部電源から供給された電力をバッテリ2に充電することができる車両では、外部電源からの過度な電力供給によって過充電が生じると、バッテリ2の発熱、発煙、発火および劣化といった不具合が生じる。そのため、本実施形態の車両では、外部電源から供給される電力量を検出する電力計の検出信号等に基づいて外部電源から供給される電力量、換言すると、外部電源に要求する要求電力の量を制御している。
さらに、外電電源から電力が供給されている時であっても、車両用空調装置1の各種電動式構成機器11、16a、32、40aの過度な電力消費による過放電が生じると、バッテリ2の寿命低下といった不具合が生じる。そこで、本実施形態の空調制御装置50では、ステップS16にて、外部電源から電源が供給された状態で車両用空調装置1を作動させた際に、外部電源に要求する要求電力の量を変更するようにしている。
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く制御されるので、制御ステップS6にて選択された運転モードに応じて以下のように作動する。
(a)冷房モード(COOLサイクル:図1参照)
冷房モードでは、空調制御装置50が、冷媒回路切替手段としての5つの電磁弁13、17、20、21、24の全てを非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と第1三方継手15の1つの冷媒流入出口との間を接続し、低圧電磁弁17が閉弁し、高圧電磁弁20が開弁し、熱交換器遮断電磁弁21が開弁し、除湿電磁弁24が閉弁する。
これにより、図1の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→第1三方継手15→室外熱交換器16→第2三方継手19→高圧電磁弁20→第2逆止弁22→第4三方継手25→第6三方継手75→第7三方継手76→蒸発器冷却電磁弁78→温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b→室内蒸発器26→温度式膨張弁27の感温部27a→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
この冷房モードの冷媒回路では、電気式三方弁13から第1三方継手15へ流入した冷媒は、低圧電磁弁17が閉弁しているので低圧電磁弁17側へ流出することはない。また、室外熱交換器16から第2三方継手19へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉弁しているので熱交換器遮断電磁弁21側へ流出することはない。また、第2逆止弁22から第4三方継手25へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉弁しているので除湿電磁弁24側へ流出することはない。さらに、温度式膨張弁27の感温部27aから第5三方継手28へ流入した冷媒は、第1逆止弁18の作用によって第1逆止弁18側に流出することはない。
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて室内蒸発器26通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却され、さらに、室外熱交換器16にて外気と熱交換して冷却され、温度式膨張弁27にて減圧膨張される。温度式膨張弁27にて減圧された低圧冷媒は室内蒸発器26へ流入し、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器26を通過する送風空気が冷却される。
この際、前述の如くエアミックスドア38の開度が調整されるので、室内蒸発器26にて冷却された送風空気の一部(または全部)が冷風バイパス通路34から混合空間35へ流入し、室内蒸発器26にて冷却された送風空気の一部(または全部)が加熱用冷風通路33へ流入してヒータコア36、室内凝縮器12、ヒータコア36を通過する際に再加熱されて混合空間35へ流入する。
これにより、混合空間35にて混合されて車室内へ吹き出す送風空気の温度が所望の温度に調整されて、車室内の冷房を行うことができる。なお、冷房モードでは、送風空気の除湿能力も高いが、暖房能力は殆ど発揮されない。
また、室内蒸発器26から流出した冷媒は、温度式膨張弁27の感温部27aを介して、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
このとき、バッテリ冷却電磁弁77が開弁していれば、第6三方継手75にて冷媒が冷媒回路71へ分岐し、バッテリ冷却電磁弁77の固定絞りにて減圧膨張される。バッテリ冷却電磁弁77の固定絞りにて減圧された低圧冷媒は冷媒−冷却水熱交換器72へ流入し、冷却水回路73を循環する冷却水から吸熱する。これにより、冷媒−冷却水熱交換器72を通過する冷却水が冷却され、その冷却水がバッテリ2の冷却水流路を通過することによってバッテリ2が冷却される。なお、図1では、バッテリ冷却電磁弁77が開弁しているときの冷媒の流れを示している。
一方、バッテリ冷却電磁弁77が閉弁していれば、冷凍サイクル10の冷媒が冷媒−冷却水熱交換器72へ流入しないので、バッテリ2の冷却が行われない。
(b)暖房モード(HOTサイクル:図示省略)
暖房モードでは、空調制御装置50が電気式三方弁13、高圧電磁弁20、低圧電磁弁17を通電状態とし、残りの電磁弁21、24を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続し、低圧電磁弁17が開弁し、高圧電磁弁20が閉弁し、熱交換器遮断電磁弁21が開弁し、除湿電磁弁24が閉弁する。
これにより、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→熱交換器遮断電磁弁21→第2三方継手19→室外熱交換器16→第1三方継手15→低圧電磁弁17→第1逆止弁18→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
この暖房モードの冷媒回路では、固定絞り14から第3三方継手23へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉弁しているので除湿電磁弁24側へ流出することはない。また、熱交換器遮断電磁弁21から第2三方継手19へ流入した冷媒は、高圧電磁弁20が閉弁しているので高圧電磁弁20側へ流出することはない。また、室外熱交換器16から第1三方継手15へ流入した冷媒は、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続しているので電気式三方弁13側へ流出することはない。第1逆止弁18から第5三方継手28へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉じているので温度式膨張弁27側へ流出することはない。
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて送風機32から送風された送風空気と熱交換して冷却される。これにより、室内凝縮器12を通過する送風空気が加熱される。この際、エアミックスドア38の開度が調整されるので、冷房モードと同様に、混合空間35にて混合されて車室内へ吹き出す送風空気の温度が所望の温度に調整されて、車室内の暖房を行うことができる。なお、暖房モードでは、送風空気の除湿能力は発揮されない。
また、室内凝縮器12から流出した冷媒は、固定絞り14にて減圧されて室外熱交換器16へ流入する。室外熱交換器16へ流入した冷媒は、送風ファン16aから送風された車室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器16から流出した冷媒は、低圧電磁弁17、第1逆止弁18等を介して、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
(c)第1除湿モード(DRY_EVAサイクル:図示省略)
第1除湿モードでは、空調制御装置50が電気式三方弁13、低圧電磁弁17、熱交換器遮断電磁弁21および除湿電磁弁24を通電状態とし、高圧電磁弁20を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続し、低圧電磁弁17が開弁し、高圧電磁弁20が開弁し、熱交換器遮断電磁弁21が閉弁し、除湿電磁弁24が開弁する。
これにより、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→除湿電磁弁24→第4三方継手25→第6三方継手75→第7三方継手76→蒸発器冷却電磁弁78→温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b→室内蒸発器26→温度式膨張弁27の感温部27a→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
この第1除湿モードの冷媒回路では、固定絞り14から第3三方継手23へ流入した冷媒は、熱交換器遮断電磁弁21が閉弁しているので熱交換器遮断電磁弁21側へ流出することはない。また、除湿電磁弁24から第4三方継手25へ流入した冷媒は、第2逆止弁22の作用によって第2逆止弁22側へ流出することはない。また、温度式膨張弁27の感温部27aから第5三方継手28へ流入した冷媒は、第1逆止弁18の作用によって第1逆止弁18側へ流出することはない。
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて室内蒸発器26通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却される。これにより、室内凝縮器12を通過する送風空気が加熱される。室内凝縮器12から流出した冷媒は、固定絞り14にて減圧されて室内蒸発器26へ流入する。
室内蒸発器26へ流入した低圧冷媒は、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器26を通過する送風空気が冷却されて除湿される。従って、室内蒸発器26にて冷却されて除湿された送風空気は、ヒータコア36、室内凝縮器12、ヒータコア36を通過する際に再加熱されて、混合空間35から車室内へ吹き出される。すなわち、車室内の除湿を行うことができる。なお、第1除湿モードでは、送風空気の除湿能力を発揮できるが、暖房能力は小さい。
また、室内蒸発器26から流出した冷媒は、温度式膨張弁27の感温部27aを介して、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
(d)第2除湿モード(DRY_ALLサイクル:図示省略)
第2除湿モードでは、空調制御装置50が電気式三方弁13、低圧電磁弁17、除湿電磁弁24を通電状態とし、残りの電磁弁20、21を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続し、低圧電磁弁17が開弁し、高圧電磁弁20が開弁し、熱交換器遮断電磁弁21が開弁し、除湿電磁弁24が開弁する。
これにより、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→熱交換器遮断電磁弁21→第2三方継手19→室外熱交換器16→第1三方継手15→低圧電磁弁17→第1逆止弁18→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→除湿電磁弁24→第4三方継手25→第6三方継手75→第7三方継手76→蒸発器冷却電磁弁78→温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b→室内蒸発器26→温度式膨張弁27の感温部27a→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
つまり、第2除湿モードでは、固定絞り14から第3三方継手23へ流入した冷媒が熱交換器遮断電磁弁21側および除湿電磁弁24側の双方に流出して、第1逆止弁18から第5三方継手28へ流入した冷媒および温度式膨張弁27の感温部27aから第5三方継手28へ流入した冷媒の双方が第5三方継手28にて合流してアキュムレータ29側へ流出する。
なお、この第2除湿モードの冷媒回路では、室外熱交換器16から第1三方継手15へ流入した冷媒は、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続しているので電気式三方弁13側へ流出することはない。また、除湿電磁弁24から第4三方継手25へ流入した冷媒は、第2逆止弁22の作用によって第2逆止弁22側へ流出することはない。
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて室内蒸発器26通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却される。これにより、室内凝縮器12を通過する送風空気が加熱される。室内凝縮器12から流出した冷媒は、固定絞り14にて減圧された後、第3三方継手23にて分岐されて室外熱交換器16および室内蒸発器26へ流入する。
室外熱交換器16へ流入した冷媒は、送風ファン16aから送風された車室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器16から流出した冷媒は、低圧電磁弁17、第1逆止弁18等を介して、第5三方継手28へ流入する。室内蒸発器26へ流入した低圧冷媒は、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器26を通過する送風空気が冷却されて除湿される。
従って、室内蒸発器26にて冷却されて除湿された送風空気は、ヒータコア36、室内凝縮器12、ヒータコア36を通過する際に再加熱されて、混合空間35から車室内へ吹き出される。この際、第2除湿モードでは、第1除湿モードに対して、室外熱交換器16にて吸熱した熱量を室内凝縮器12にて放熱することができるので、送風空気を第1除湿モードよりも高温に加熱できる。すなわち、第2除湿モードでは、高い暖房能力を発揮させながら除湿能力も発揮させる除湿暖房を行うことができる。
また、室内蒸発器26から流出した冷媒は、第5三方継手28へ流入して室外熱交換器16から流出した冷媒と合流し、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
本実施形態の車両用空調装置は、以上の如く作動するので、以下のような効果を発揮することができる。
制御ステップS1301〜S1310およびバッテリ冷却電磁弁77にて構成されるバッテリ冷却切替手段、すなわちバッテリ冷却装置70でバッテリ2を冷却させるか否かを切り替える切替手段を備えているので、空調能力不足およびバッテリ性能低下を防止することができる。
具体的には、ステップS1301にて、現在の時刻が乗車予定時刻から遡って20分以内でないと判定され、かつステップS1302にて、プレ空調中でないと判定された場合、バッテリ2の温度が第1の温度T1(本実施形態では55℃)を超えていればバッテリ2が冷却される。換言すれば、車両が走行中と推定される場合、バッテリ2の温度が第1の温度T1を超えていればバッテリ2が冷却される。このため、バッテリ2を冷却する必要性が高い場合にバッテリ冷却が行われることを抑制できる。
さらに、ステップS1301にて、現在の時刻が乗車予定時刻から遡って20分以内と判定された場合、バッテリ2の温度が第2の温度T2A、T2B(本実施形態では50℃、45℃)を超えていればバッテリ2が冷却される。換言すれば、乗員が乗車すると推定される時刻よりも前の場合、バッテリ2の温度が、第1の温度T1よりも低い第2の温度T2A、T2Bを超えていればバッテリ2が冷却される。
このため、乗員が乗車する前にバッテリ2をなるべく冷却しておくことができるので、乗員が乗車した後のバッテリ2の冷却負荷を小さくすることができる。場合によっては乗員が乗車した後のバッテリ2の冷却を不要にすることもできる。
その結果、冷凍サイクル10の冷凍能力を車室内の空調のために確保することができるので、空調能力不足を防止することができ、ひいては乗員の快適性を確保することができる。
また、乗員が乗車する前にバッテリ2を十分に冷却しておくことができるので、走行開始時におけるバッテリ性能低下を防止することができ、ひいては走行に支障を来すことを防止できる。
また、乗員が乗り込む前に車外から供給される電力を用いてバッテリ2を冷却できるので、走行中にバッテリ2を冷却するのに必要な電力が小さくなる。このため、車両の走行可能距離を長く維持することが可能になる。
ここで、ステップS1306にて、外部電源から電力供給が可能な状態でないと判定された場合、バッテリ2の温度が第2の温度T2A(本実施形態では50℃)を超えていればバッテリ2が冷却され、一方、外部電源から電力供給が可能な状態であると判定された場合、バッテリ2の温度が第2の温度T2B(本実施形態では45℃)を超えていればバッテリ2が冷却される。換言すれば、車外から電力の供給が可能な場合の第2の温度T2Bを、車外から電力の供給が不可能な場合の第2の温度T2Aよりも低い温度とする。
このため、車外から供給される電力を用いることができる場合、乗員が乗車する前にバッテリ2をさらに十分に冷却しておくことができる。
また、ステップS1301にて、現在の時刻が乗車予定時刻から遡って20分以内でないと判定され、かつステップS1302にて、プレ空調中であると判定された場合、バッテリ2の温度が第2の温度T2A、T2Bを超えていればバッテリ2が冷却される。換言すれば、乗員が乗車すると推定される時刻よりも後であってもプレ空調が実行されている場合には、バッテリ2の温度が第2の温度T2A、T2Bを超えていればバッテリ2が冷却される。
このため、実際に乗員が乗車するまでバッテリ2を冷却することができるので、乗員が乗車する前にバッテリ2をさらに十分に冷却しておくことができる。
また、本実施形態によると、制御ステップS1101〜S1113にて構成される上限値決定手段、すなわち圧縮機11の冷媒吐出能力の上限値IVOmaxを決定する上限値決定手段を備えているので、乗員にとって耳障りとなる圧縮機11の作動音等に起因する空調作動音の低減を図ることができる。
具体的には、制御ステップS1103にて、車両の車速Vvが基準車速KVvより小さくなっていると判定された際に、上限値IVOmaxを低下させるように決定している。換言すると、車速Vvの低下に伴って上限値IVOmaxを低下させるように決定している。
ここで、車速Vvが低下した際には、道路と車輪との摩擦音(ロードノイズ)等が小さくなり乗員に空調作動音が聞こえやすくなるものの、本実施形態の如く、車速Vvの低下に伴って上限値IVOmaxを低下させることで、乗員にとって耳障りとなる空調作動音を低減することができる。
また、制御ステップS1105にて、ブロワ電圧の低下に伴って上限値IVOmaxを低下させるように決定している。
ここで、ブロワ電圧が低下した際には、ブロワ騒音(送風騒音)が小さくなり空調作動音が聞こえやすくなるものの、本実施形態の如く、ブロワ電圧の低下に伴って上限値IVOmaxを低下させることで、乗員にとって耳障りとなる空調作動音を低減することができる。
また、制御ステップS1110〜S1112では、バッテリ2を冷却しており、かつ室内蒸発器26を冷却していない場合はバッテリ温度の上昇に伴って圧縮機回転数fnを上昇させるので、空調が不要な場合、バッテリ冷却負荷が高いほどバッテリ冷却能力を増加させることができる。
また、制御ステップS1110、S1103では、少なくとも室内蒸発器26を冷却している場合は、S1101で決定された前回の圧縮機回転数fCn−1に対する回転数変化量Δf_Cに基づいて圧縮機回転数fnを決定するので、室内蒸発器26の着霜を防止することができる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の一実施形態では、冷媒回路を切り替えることによって車室内へ送風される送風空気を加熱あるいは冷却する冷凍サイクル10を採用したが、送風空気を冷却する冷凍サイクルを採用してもよい。
(2)上述の一実施形態では、車両用空調装置1を電気自動車に適用したが、車両用空調装置を、内燃機関(エンジン)および走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両に適用してもよい。
例えば、車両停車時に外部電源(商用電源)から供給された電力をバッテリ2に充電することのできる、いわゆるプラグインハイブリッド車両に車両用空調装置1を適用してもよい。
具体的には、エンジンおよび走行用電動モータの双方から直接駆動力を得て走行可能な、いわゆるパラレル型のハイブリッド車両に車両用空調装置1を適用してもよいし、エンジンを発電機の駆動源として用い、発電された電力をバッテリに蓄え、さらに、バッテリ2に蓄えられた電力を供給されることによって作動する走行用電動モータから駆動力を得て走行する、いわゆるシリアル型のハイブリッド車両に車両用空調装置1を適用してもよい。
また、車両用空調装置1をハイブリッド車両に適用した場合、エンジンの冷却水(熱媒体)と室内蒸発器26通過後の空気とをヒータコア36で熱交換させて、室内蒸発器26通過後の空気を加熱するようにしてもよい。
(3)上述の一実施形態では、バッテリ冷却装置70でバッテリ2を冷却させるか否かをバッテリ冷却電磁弁77の開閉によって切り替えるようにしているが、バッテリ冷却装置70でバッテリ2を冷却させるか否かを冷却水ポンプ74の作動・停止(オン・オフ)によって切り替えるようにしてもよい。