(第1実施形態)
以下、図面を用いて、本発明の第1実施形態を説明する。まず、図1〜4は、本実施形態の車両用空調装置1の全体構成図であり、図5は、車両用空調装置1の電気制御部を示すブロック図である。本実施形態では、この車両用空調装置1を、内燃機関(エンジン)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両に適用している。
また、本実施形態のハイブリッド車両は、車両停止時に外部電源(商用電源)から供給された電力をバッテリ81に充電することのできる、いわゆるプラグインハイブリッド車両として構成されている。このプラグインハイブリッド車両は、車両走行開始前の車両停止時に外部電源からバッテリ81に充電しておくことによって、走行開始時のようにバッテリ81の蓄電残量が予め定めた走行用基準残量以上になっているときには、主に走行用電動モータの駆動力によって走行する(以下、この運転モードをEV運転モードという)。
一方、車両走行中にバッテリ81の蓄電残量が走行用基準残量よりも低くなっているときには、主にエンジンEGの駆動力によって走行する(以下、この運転モードをHV運転モードという)。このように、EV運転モードとHV運転モードとを切り替えることによって、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両に対してエンジンEGの燃料消費量を抑制して、車両燃費を向上させている。
なお、EV運転モードは、主に走行用電動モータが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際にはエンジンEGを作動させて走行用電動モータを補助する。同様に、HV運転モードは、主にエンジンEGが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際には走行用電動モータを作動させてエンジンEGを補助する。このようなエンジンEGおよび走行用電動モータの作動は、図示しないエンジン制御装置によって制御される。
また、エンジンEGから出力される駆動力は、車両走行用として用いられるのみならず、発電機80を作動させるためにも用いられる。そして、発電機80にて発電された電力および外部電源から供給された電力は、バッテリ81に蓄えることができ、バッテリ81に蓄えられた電力は、走行用電動モータのみならず、車両用空調装置1を構成する電動式構成機器をはじめとする各種車載機器に供給できる。
次に、本実施形態の車両用空調装置1の詳細構成を説明する。この車両用空調装置1は、車両走行時に車室内の空調を行う通常空調の他に、乗員が車両に乗り込む前に車室内の空調を行うプレ空調、および、外部電源からバッテリ81への充電中に乗員が車室内で過ごす際の空調であるマイルーム空調を行うことができる。
車両用空調装置1は、通常空調、プレ空調およびマイルーム空調において、車室内を冷房する冷房モード(COOLサイクル)、車室内を暖房する暖房モード(HOTサイクル)、車室内を除湿する第1除湿モード(DRY_EVAサイクル)および第2除湿モード(DRY_ALLサイクル)の冷媒回路を切替可能に構成された蒸気圧縮式の冷凍サイクル10を備えている。
図1〜4では、それぞれ、冷房モード、暖房モード、第1、第2除湿モード時の冷媒の流れを実線矢印で示している。なお、第1除湿モードは、暖房能力に対して除湿能力を優先する除湿モードであり、第2除湿モードは、除湿能力に対して暖房能力を優先する除湿モードである。従って、第1除湿モードを低温除湿モードあるいは単なる除湿モード、第2除湿モードを高温除湿モードあるいは除湿暖房モードと表現することもできる。
冷凍サイクル10は、圧縮機11、室内熱交換器としての室内凝縮器12および室内蒸発器26、冷媒を減圧膨張させる減圧手段としての温度式膨張弁27および固定絞り14、並びに、冷媒回路切替手段としての複数(本実施形態では5つ)の電磁弁13、17、20、21、24等を備え、車室内へ送風される送風空気の温度を調整する温度調整手段としての機能を果たす。
また、この冷凍サイクル10では、冷媒としてフロン系冷媒を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。さらに、この冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、この冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
圧縮機11は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するもので、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。従って、本実施形態の圧縮機11は、特許請求の範囲に記載された電動式構成機器である。
固定容量型圧縮機構11aとしては、具体的に、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用できる。電動モータ11bは、インバータ61から出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。また、インバータ61は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータ11bは、圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
圧縮機11の吐出側には、室内凝縮器12の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器12は、車両用空調装置の室内空調ユニット30において車室内へ送風される送風空気の空気通路を形成するケーシング31内に配置されて、その内部を流通する冷媒と後述する室内蒸発器26通過後の送風空気とを熱交換させることで送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。なお、室内空調ユニット30の詳細については後述する。
室内凝縮器12の冷媒出口側には、電気式三方弁13が接続されている。この電気式三方弁13は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段である。
より具体的には、電気式三方弁13は、電力が供給される通電状態では、室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続する冷媒回路に切り替え、電力の供給が停止される非通電状態では、室内凝縮器12の冷媒出口側と第1三方継手15の1つの冷媒流入出口との間を接続する冷媒回路に切り替える。
固定絞り14は、暖房モード、第1および第2除湿モード時に、電気式三方弁13から流出した冷媒を減圧膨張させる暖房除湿用の減圧手段である。この固定絞り14としては、キャピラリチューブ、オリフィス等を採用できる。もちろん、暖房除湿用の減圧手段として、空調制御装置50から出力される制御信号によって絞り通路面積が調整される電気式の可変絞り機構を採用してもよい。固定絞り14の冷媒出口側には、後述する第3三方継手23の冷媒流入出口が接続されている。
第1三方継手15は、3つの冷媒流入出口を有し、冷媒流路を分岐する分岐部として機能するものである。このような三方継手は、冷媒配管を接合して構成してもよいし、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けて構成してもよい。また、第1三方継手15の別の冷媒流入出口には、室外熱交換器16の一方の冷媒流入出口が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、低圧電磁弁17の冷媒入口側が接続されている。
低圧電磁弁17は、冷媒流路を開閉する弁体部と、弁体部を駆動するソレノイド(コイル)を有し、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段である。より具体的には、低圧電磁弁17は、通電状態で開弁して非通電状態で閉弁する、いわゆるノーマルクローズ型の開閉弁として構成されている。
低圧電磁弁17の冷媒出口側には、第1逆止弁18を介して、後述する第5三方継手28の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第1逆止弁18は、低圧電磁弁17側から第5三方継手28側へ冷媒が流れることのみを許容している。
室外熱交換器16は、エンジンルーム内に配置されて、内部を流通する冷媒と送風ファン16aから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させるものである。送風ファン16aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風能力)が制御される電動式送風機である。従って、本実施形態の送風ファン16aは、特許請求の範囲に記載された電動式構成機器である。
さらに、本実施形態の送風ファン16aは、室外熱交換器16のみならず、エンジンEGの冷却水を放熱させるラジエータ(図示せず)にも室外空気を送風している。具体的には、送風ファン16aから送風された車室外空気は、室外熱交換器16→ラジエータの順に流れる。ラジエータは、図1〜4の破線で示す冷却水回路40を構成する冷却水配管に接続されている。この冷却水回路40については後述する。
室外熱交換器16の他方の冷媒流入出口には、第2三方継手19の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第2三方継手19の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第2三方継手19の別の冷媒流入出口には、高圧電磁弁20の冷媒入口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、熱交換器遮断電磁弁21の一方の冷媒流入出口が接続されている。
高圧電磁弁20および熱交換器遮断電磁弁21は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段であり、その基本的構成は、低圧電磁弁17と同様である。但し、高圧電磁弁20および熱交換器遮断電磁弁21は、通電状態で閉弁して非通電状態で開弁する、いわゆるノーマルオープン型の開閉弁として構成されている。
高圧電磁弁20の冷媒出口側には、第2逆止弁22を介して、後述する温度式膨張弁27の絞り機構部入口側が接続されている。この第2逆止弁22は、高圧電磁弁20側から温度式膨張弁27側へ冷媒が流れることのみを許容している。
熱交換器遮断電磁弁21の他方の冷媒流入出口には、第3三方継手23の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第3三方継手23の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第3三方継手23の別の冷媒流入出口には、前述の如く、固定絞り14の冷媒出口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、除湿電磁弁24の冷媒入口側が接続されている。
除湿電磁弁24は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段であり、その基本的構成は、低圧電磁弁17と同様である。さらに、除湿電磁弁24もノーマルクローズ型の開閉弁として構成されている。そして、本実施形態の冷媒回路切替手段は、電力の供給が停止されると予め定めた開弁状態あるいは閉弁状態となる電気式三方弁13、低圧電磁弁17、高圧電磁弁20、熱交換器遮断電磁弁21、除湿電磁弁24の複数(5つ)の電磁弁によって構成される。
除湿電磁弁24の冷媒出口側には、第4三方継手25の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第4三方継手25の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第4三方継手25の別の冷媒流入出口には、温度式膨張弁27の絞り機構部出口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、室内蒸発器26の冷媒入口側が接続されている。
室内蒸発器26は、室内空調ユニット30のケーシング31内のうち、室内凝縮器12の送風空気流れ上流側に配置されて、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。
室内蒸発器26の冷媒出口側には、温度式膨張弁27の感温部入口側が接続されている。温度式膨張弁27は、絞り機構部入口から内部へ流入した冷媒を減圧膨張させて絞り機構部出口から外部へ流出させる冷房用の減圧手段である。
より具体的には、本実施形態では、温度式膨張弁27として、室内蒸発器26出口側冷媒の温度および圧力に基づいて室内蒸発器26出口側冷媒の過熱度を検出する感温部27aと、感温部27aの変位に応じて室内蒸発器26出口側冷媒の過熱度が予め定めた所定範囲となるように絞り通路面積(冷媒流量)を調整する可変絞り機構部27bとを1つのハウジング内に収容した内部均圧型膨張弁を採用している。
温度式膨張弁27の感温部出口側には、第5三方継手28の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第5三方継手28の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第5三方継手28の別の冷媒流入出口には、前述の如く、第1逆止弁18の冷媒出口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、アキュムレータ29の冷媒入口側が接続されている。
アキュムレータ29は、第5三方継手28から、その内部に流入した冷媒の気液を分離して、余剰冷媒を蓄える低圧側気液分離器である。さらに、アキュムレータ29の気相冷媒出口には、圧縮機11の冷媒吸入口が接続されている。
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、前述の室内蒸発器26、室内凝縮器12、ヒータコア36、PTCヒータ37等を収容したものである。
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する図示しない内外気切替箱が配置されている。
より具体的には、内外気切替箱には、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口が形成されている。さらに、内外気切替箱の内部には、内気導入口および外気導入口の開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドアが配置されている。
従って、内外気切替ドアは、ケーシング31内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる吸込口モードを切り替える風量割合変更手段を構成する。より具体的には、内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータ62によって駆動され、この電動アクチュエータ62は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
また、吸込口モードとしては、内気導入口を全開とするとともに外気導入口を全閉としてケーシング31内へ内気を導入する内気モード、内気導入口を全閉とするとともに外気導入口を全開としてケーシング31内へ外気を導入する外気モード、さらに、内気モードと外気モードとの間で、内気導入口および外気導入口の開口面積を連続的に調整することにより、内気と外気の導入比率を連続的に変化させる内外気混入モードがある。
内外気切替箱の空気流れ下流側には、内外気切替箱を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風能力)が制御される。従って、本実施形態の送風機32は、特許請求の範囲に記載された電動式構成機器である。
送風機32の空気流れ下流側には、前述の室内蒸発器26が配置されている。さらに、室内蒸発器26の空気流れ下流側には、室内蒸発器26通過後の空気を流す加熱用冷風通路33、冷風バイパス通路34といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34から流出した空気を混合させる混合空間35が形成されている。
加熱用冷風通路33には、室内蒸発器26通過後の空気を加熱するための加熱手段としてのヒータコア36、室内凝縮器12、およびPTCヒータ37が、送風空気流れ方向に向かってこの順で配置されている。ヒータコア36は、冷却水回路40を構成する冷却水配管に接続されており、エンジンEGの冷却水と室内蒸発器26通過後の空気とを熱交換させて、室内蒸発器26通過後の空気を加熱する加熱用熱交換器である。
ここで、冷却水回路40について説明する。冷却水回路40は、エンジンEGを冷却する冷却水を循環させる回路である。さらに、冷却水回路40の冷却水配管には、冷却水を圧送する電動式の冷却水ポンプ40aが配置されている。この冷却水ポンプ40aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(水圧送能力)が制御される。
そして、空調制御装置50が冷却水ポンプ40aを作動させることによって、エンジンEGの廃熱によって加熱された冷却水が、ラジエータあるいはヒータコア36へ流入することによって冷却され、ラジエータあるいはヒータコア36にて冷却された冷却水が、再びエンジンEGへ戻るように構成されている。
つまり、冷却水は、ヒータコア36にて車室内へ送風される送風空気を加熱する熱源媒体であり、冷却水回路40のうち、図1〜4の破線で示す冷却水ポンプ40a→ヒータコア36→エンジンEG→冷却水ポンプ40aの順に冷却水を循環させる回路は、送風空気の温度を調整する温度調整手段を構成している。従って、本実施形態の冷却水ポンプ40aは、特許請求の範囲に記載された電動式構成機器である。
また、PTCヒータ37は、PTC素子(正特性サーミスタ)を有し、このPTC素子に電力を供給されることによって発熱して、室内凝縮器12通過後の空気を加熱する電気ヒータである。なお、本実施形態のPTCヒータ37は、複数本(具体的には3本)設けられており、空調制御装置50が、通電するPTCヒータ37の本数を変化させることによって、複数のPTCヒータ37全体としての加熱能力が制御される。
より具体的には、このPTCヒータ37は、図6に示すように、複数(本実施形態では、3本)のPTCヒータ37a、37b、37cから構成されている。なお、図6は、本実施形態のPTCヒータ37の電気的接続態様を示す回路図である。また、本実施形態のPTCヒータ37を作動させるために必要な消費電力は、冷凍サイクル10の圧縮機11を作動させるために必要な消費電力よりも少ない。
図6に示すように、各PTCヒータ37a、37b、37cの正極側はバッテリ81側に接続され、負極側は各PTCヒータ37a、37b、37cが有する各スイッチ素子SW1、SW2、SW3を介して、グランド側へ接続されている。各スイッチ素子SW1、SW2、SW3は、各PTCヒータ37a、37b、37cが有する各PTC素子h1、h2、h3の通電状態と非通電状態とを切り替えるものである。
さらに、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、独立して制御される。従って、空調制御装置50は、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の通電状態と非通電状態とを独立に切り替えることによって、各PTCヒータ37a、15b、15cのうち、通電状態となり加熱能力を発揮するものを切り替えて、PTCヒータ37全体としての加熱能力を変化させることができる。
一方、冷風バイパス通路34は、室内蒸発器26通過後の空気を、ヒータコア36、室内凝縮器12、およびPTCヒータ37を通過させることなく、混合空間35に導くための空気通路である。従って、混合空間35にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路33を通過する空気および冷風バイパス通路34を通過する空気の風量割合によって変化する。
そこで、本実施形態では、室内蒸発器26の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34の入口側に、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア38を配置している。
従って、エアミックスドア38は、混合空間35内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。より具体的には、エアミックスドア38は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63によって駆動され、この電動アクチュエータ63は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
さらに、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間35から冷却対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出口(図示せず)が配置されている。この吹出口としては、具体的に、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口が設けられている。
また、フェイス吹出口、フット吹出口、およびデフロスタ吹出口の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口の開口面積を調整するフェイスドア、フット吹出口の開口面積を調整するフットドア、デフロスタ吹出口の開口面積を調整するデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータ64も、空調制御装置50から出力される制御信号によってその作動が制御される。
また、吹出口モードとしては、フェイス吹出口を全開してフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口を全開するとともにデフロスタ吹出口を小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出すフットモード、およびフット吹出口およびデフロスタ吹出口を同程度開口して、フット吹出口およびデフロスタ吹出口の双方から空気を吹き出すフットデフロスタモードがある。
さらに、乗員が後述する操作パネル60のスイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口を全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
なお、本実施形態の車両用空調装置1が適用されるハイブリッド車両は、車両用空調装置とは別に、図示しない電熱デフォッガを備えている。電熱デフォッガとは、車室内窓ガラスの内部あるいは表面に配置された電熱線であって、窓ガラスを加熱することで防曇あるいは窓曇り解消を行うものである。この電熱デフォッガについても空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動を制御できるようになっている。
次に、図5により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置50は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61、冷媒回路切替手段を構成する各電磁弁13、17、20、21、24、送風ファン16a、送風機32、PTCヒータ37、各種電動アクチュエータ62、63、64等の作動を制御する。
また、空調制御装置50の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ51、外気温Tamを検出する外気センサ52(外気温検出手段)、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ53、圧縮機11の吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ54(吐出温度検出手段)、圧縮機11の吐出側冷媒圧力(高圧側冷媒圧力)Pdを検出する吐出圧力センサ55(吐出圧力検出手段)、室内蒸発器26からの吹出空気温度(蒸発器温度)Teを検出する蒸発器温度センサ56(蒸発器温度検出手段)、第1三方継手15と低圧電磁弁17との間を流通する冷媒の温度Tsiを検出する吸入温度センサ57、エンジン冷却水温度Twを検出する冷却水温度センサ、車室内の窓ガラス近傍の車室内空気の相対湿度を検出する湿度センサ、窓ガラス近傍の車室内空気の温度を検出する窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度を検出する窓ガラス表面温度センサ等の空調制御用のセンサ群の検出信号が入力される。
なお、本実施形態の圧縮機11の吐出側冷媒圧力(高圧側冷媒圧力)Pdは、冷房モードでは、圧縮機11の冷媒吐出口側から温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b入口側へ至るサイクルの高圧側冷媒圧力であり、その他の運転モードでは、圧縮機11の冷媒吐出口側から固定絞り14入口側へ至るサイクルの高圧側冷媒圧力となる。なお、吐出圧力センサ55は、一般的な冷凍サイクルにおいても、高圧側冷媒圧力の異常上昇を監視するために設けられている。
また、蒸発器温度センサ56は、具体的に室内蒸発器26の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、蒸発器温度センサ56として、室内蒸発器26のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、室内蒸発器26を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出手段を採用してもよい。また、湿度センサ、窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度センサの検出値は、窓ガラス表面の相対湿度RHWを算出するために用いられる。
さらに、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ、オートスイッチ、運転モードの切替スイッチ、吹出口モードの切替スイッチ、送風機32の風量設定スイッチ、車室内温度設定スイッチ、エコノミースイッチ等が設けられている。
オートスイッチは、車両用空調装置1の自動制御を設定あるいは解除するスイッチである。また、エコノミースイッチは、冷凍サイクル10の省動力化を優先させるスイッチである。さらに、エコノミースイッチを投入することにより、EV運転モード時に、走行用電動モータを補助するために作動させるエンジンEGの作動頻度を低下させる信号がエンジン制御装置に出力される。
さらに、操作パネル60には、現在の車両用空調装置1の運転状態を表示する表示部が設けられている。この表示部には、車両用空調装置1の自動制御が実行させていること、吹出口モード、送風機32の風量等が表示される。さらに、本実施形態の操作パネル60には、マイルーム空調時に蓄電残量が予め定めた基準マイルーム用蓄電残量以下になった際に、これを表示する機能も備えている。
さらに、操作パネル60の内部には、マイルーム空調時に蓄電残量が基準マイルーム用蓄電残量以下になった際に、警告音を発するブザーが内蔵されている。従って、本実施形態の操作パネル60は、マイルーム空調時に蓄電残量が基準マイルーム用蓄電残量以下になった際に、これをユーザに報知する報知手段としての機能も兼ね備えている。
また、図示しないエンジン制御装置は、空調制御装置50と同様に、周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶されたエンジン制御用プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種エンジン制御機器の作動を制御する。
エンジン制御装置の出力側には、エンジンEGを構成する各種エンジン構成機器等が接続されている。具体的には、エンジンEGを始動させるスタータ、エンジンEGに燃料を供給する燃料噴射弁(インジェクタ)の駆動回路(いずれも図示せず)等が接続されている。
エンジン制御装置70の入力側には、バッテリ81の端子間電圧VBを検出する電圧計、アクセル開度Accを検出するアクセル開度センサ、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ、車速Vvを検出する車速センサ(いずれも図示せず)等の種々のエンジン制御用のセンサ群が接続されている。
さらに、空調制御装置50およびエンジン制御装置は、電気的に接続されて通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。例えば、空調制御装置50がエンジン制御装置へエンジンEGの作動要求指令を出力することによって、エンジンEGを作動させることができる。
なお、空調制御装置50およびエンジン制御装置は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御手段を構成している。
例えば、空調制御装置50のうち、圧縮機11の電動モータ11bに接続されたインバータ61から出力される交流電圧の周波数を制御して、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する構成が圧縮機制御手段を構成し、送風手段である送風機32の作動を制御して、送風機32の送風能力を制御する構成が送風機制御手段を構成する。
次に、図7により、上記構成における本実施形態の作動を説明する。図7は、本実施形態の車両用空調装置1の制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、車両システムが停止している場合でも、バッテリから空調制御装置50に電力が供給されていれば実行される。
まず、ステップS1では、車両用空調装置1の作動スイッチが投入(ON)されているか否か、および、プレ空調のスタートスイッチが投入されているか否かを判定する。さらに、車両用空調装置1の作動スイッチが投入(ON)されていると判定された際には、マイルーム空調としての作動であるか否かが判定される。そして、車両用空調装置1の作動スイッチ、あるいはプレ空調のスタートスイッチが投入されていると判定されるとステップS2へ進む。
ステップS1におけるマイルーム空調としての作動であるか否かの判定については、図8のフローチャートを用いて説明する。まず、図8のステップS101に示すように、車両用空調装置1の作動スイッチが投入される前提として、1回目の車両の起動スイッチ(POWERスイッチ)が投入(ON)されているか否かを判定する。
ステップS101にて、1回目の車両の起動スイッチが投入されていると判定された場合は、ステップS102へ進み、車両の作動状態がアクセサリモードであると判定する。アクセサリモードは、車載オーディオ機器類が使用可能となる車両の作動状態である。一方、ステップS101にて、1回目の車両の起動スイッチが投入されていないと判定された場合は、ステップS103へ進み、車両用空調装置1および車載オーディオ機器類の作動が許可されていないものとされる。
ステップS104では、2回目の車両の起動スイッチ(POWERスイッチ)が投入(ON)されているか否かを判定する。ステップS104にて、2回目の車両の起動スイッチが投入されていると判定された場合は、ステップS105へ進む。一方、ステップS104にて、2回目の車両の起動スイッチが投入されていないと判定された場合は、ステップS106へ進み、車両用空調装置1の作動が許可されていないものとされる。
ステップS105では、外部電源から車両(具体的には、バッテリ81)へ電力が供給されているプラグイン状態であるか否かが判定される。ステップS105にて、プラグイン状態であると判定された場合は、ステップS107へ進み、車載オーディオ機器類に加えて車両用空調装置1の作動が許可されており、マイルーム空調での作動であると判定されてステップS2へ進む。この際、マイルーム空調であること示すフラグがONとなる。
一方、ステップS105にて、プラグイン状態でないと判定された場合は、ステップS108へ進み、車載オーディオ機器類に加えて車両用空調装置1の作動が許可されており、マイルーム空調ではない通常空調での作動であると判定されてステップS2へ進む。この際、マイルーム空調であることを示すフラグはOFFとされる。なお、マイルーム空調であること示すフラグは、車両用空調装置1の作動中でも乗員からマイルーム空調の停止が要求されたとき、プラグイン状態ではなくなったとき等にもOFFとなる。
また、プレ空調のスタートスイッチは、乗員が携帯する無線端末(リモコン)あるいは移動体通信手段(具体的には、携帯電話)等に設けられている。従って、乗員は車両から離れた場所から車両用空調装置1を始動させることができる。
例えば、無線端末のプレ空調のスタートスイッチが投入された際には、車両側が無線端末から送信されるプレ空調スタート信号を直接受信することによって、また、移動体通信手段のプレ空調のスタートスイッチが投入された際には、車両側が携帯電話基地局等を介して送信されるプレ空調スタート信号を直接受信することによって、プレ空調のスタートスイッチが投入されたことが判定される。
さらに、本実施形態の車両用空調装置1は、プラグインハイブリッド車両に適用されているので、プレ空調は、車両に外部電源から電力が供給されている場合は、ユーザからプレ空調の停止が要求されるまで継続され、外部電源から電力が供給接続されていない場合は、バッテリ81の蓄電残量が予め定めた基準プレ空調用蓄電残量以下となるまで行うようになっている。
ステップS2では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等が行われる。なお、フラグの初期化には、現在のフラグの状態を維持することも含まれる。ステップS3では、操作パネル60の操作信号を読み込んでステップS4へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチによって設定される車室内設定温度Tset、吹出口モードの選択信号、吸込口モードの選択信号、送風機32の風量の設定信号等がある。
ステップS4では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群51〜57の検出信号を読み込んで、ステップS5へ進む。ステップS5では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。さらに、暖房モードでは、暖房用熱交換器目標温度を算出する。目標吹出温度TAOは、下記数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ51によって検出された内気温、Tamは外気センサ52によって検出された外気温、Tsは日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
また、暖房用熱交換器目標温度は、基本的に上述の数式F1にて算出される値となるが、消費電力の抑制のために数式F1にて算出されTAOよりも低い値とする補正が行われる場合もある。
続くステップS6〜S16では、空調制御装置50に接続された各種機器の制御状態が決定される。まず、ステップS6では、空調環境状態に応じて、冷房モード、暖房モード、第1除湿モードおよび第2除湿モードの選択およびPTCヒータ37に対する通電有無の決定が行われる。このステップS6の詳細については、図9を用いて説明する。
まず、ステップS61では、プレ空調を行っているか否かを判定する。ステップS61にてプレ空調を行っていると判定された場合は、ステップS62へ進み、外気温Tamが−3℃よりも低いか否かを判定する。ステップS62にて外気温Tamが−3℃よりも低いと判定された場合は、ステップS63にてPTCヒータ37への通電の必要があると判定してステップS7へ進む。
このように外気温Tamが−3℃よりも低いときにPTCヒータ37への通電が必要であると判定する理由は、外気温Tamが−3℃よりも低いときに冷凍サイクル10にて暖房を行うと、サイクルの高低圧差が大きくなり、サイクル効率(COP)が低下してしまうとともに、室外熱交換器16における冷媒蒸発温度が低くなり、室外熱交換器16に着霜するおそれがあるからである。
ステップS62にて外気温Tamが−3℃よりも低くなっていないと判定された場合は、ステップS64へ進み、吹出口モードがフェイスモードであるか否かを判定する。ステップS64にて吹出口モードがフェイスモードであると判定された場合は、ステップS65へ進み、冷房モードを選択してステップS7へ進む。その理由は、後述するステップS9で説明するように、フェイスモードは主に夏季に選択される運転モードだからである。
ステップS64にて吹出口モードがフェイスモードでないと判定された場合は、ステップS66へ進み、室内蒸発器26からの吹出空気温度Teの低下に伴って、除湿の必要性が高くなるものとして、暖房モード→第1除湿モード→第2除湿モードの順に選択されて、ステップS7へ進む。
一方、ステップS61にてプレ空調を行っていないと判定された場合は、ステップS67へ進み、外気温Tamが−3℃よりも低いか否かを判定する。ステップS67にて外気温Tamが−3℃よりも低いと判定された場合は、ステップS68へ進み、冷房モードを選択してステップS7へ進む。
ステップS67にて外気温Tamが−3℃よりも低くなっていないと判定された場合は、ステップS69へ進み、吹出口モードがフェイスモードであるか否かを判定する。ステップS69にて吹出口モードがフェイスモードであると判定された場合は、ステップS70へ進み、COOLサイクルを選択してステップS7へ進む。その理由はステップS65と同様である。ステップS69にて吹出口モードがフェイスモードでないと判定された場合は、前述のステップS66へ進む。
ステップS7では、送風機32により送風される空気の目標送風量を決定する。具体的には、送風機32の電動モータに印加するブロワモータ電圧を決定する。このステップ7のより詳細な制御内容については、図10を用いて説明する。まず、ステップS71では、操作パネル60のオートスイッチが投入されているか否かが判定される。
ステップS71にてオートスイッチが投入されていないと判定された場合は、ステップS72へ進み、操作パネル60の風量設定スイッチによってマニュアル設定された乗員の所望の風量となるブロワモータ電圧が決定されて、ステップS8へ進む。具体的には、本実施形態の風量設定スイッチは、Lo→M1→M2→M3→Hiの5段階の風量を設定することができ、それぞれ4V→6V→8V→10V→12Vの順にブロワモータ電圧が高くなるように決定される。
一方、ステップS71にてオートスイッチが投入されていると判定された場合は、ステップS73へ進み、現在の車両用空調装置1の作動がマイルーム空調としての作動であるか否かを判定する。具体的には、ステップS1にて説明したマイルーム空調であること示すフラグがONとなっているか否かを判定する。
ステップS73にて、マイルーム空調としての作動ではないと判定された場合には、ステップS74へ進み、ステップS4で決定された目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定して、ステップS8へ進む。
より詳細には、本実施形態では、TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)でブロワモータ電圧を最大値(約12V)付近の高電圧にして、送風機32の風量を最大風量付近に制御する。また、TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機32の風量を減少させる。
さらに、TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機32の風量を減少させる。また、TAOが所定の中間温度域内に入ると、ブロワモータ電圧を最小値(約4V)にして送風機32の風量を最小値にする。
一方、ステップS73にて、マイルーム空調としての作動であると判定された場合には、ステップS75へ進み、ステップS74と同様に、ステップS4で決定された目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照してブロワモータ電圧を決定して、ステップS8へ進む。
図10の制御ステップS74、75から明らかなように、ステップS75では、ステップS74と同様に、TAOに応じてブロワモータ電圧を決定しているものの、いずれの決定値についても、ステップS74で決定される値よりも小さく決定される。換言すると、本実施形態のブロアモータ電圧は、外部電源からの電力の供給されるマイルーム空調時には、マイルーム空調以外の空調時よりも、送風機32の送風能力が低下するように決定される。
例えば、ステップS74では、TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)でブロワモータ電圧を約12Vとしているが、ステップS75では、約10Vとしている。また、ステップS74では、TAOが所定の中間温度域内に入ると、ブロワモータ電圧を約4Vとしているが、ステップS75では、約3Vとしている。
ステップS8では、吸込口モード、すなわち内外気切替箱の切替状態を決定する。この吸込口モードもTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、TAOが極低温域となって高い冷房性能を得たい場合等に内気を導入する内気モードが選択される。さらに、外気の排ガス濃度を検出する排ガス濃度検出手段を設け、排ガス濃度が予め定めた基準濃度以上となったときに、内気モードを選択するようにしてもよい。
ステップS9では、吹出口モードを決定する。この吹出口モードもTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて吹出口モードをフットモード→バイレベルモード→フェイスモードへと順次切り替える。
従って、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択される。さらに、湿度センサ等の検出値から算出される窓ガラス表面の相対湿度RHWに基づいて、窓ガラスに曇りが発生する可能性が高いと判定された場合に、フットデフロスタモードあるいはデフロスタモードを選択するようにしてもよい。
ステップS10では、エアミックスドア38の目標開度SWを上記TAO、蒸発器温度センサ56によって検出された室内蒸発器26からの吹出空気温度Te、加熱器温度に基づいて算出する。
ここで、加熱器温度とは、加熱用冷風通路33に配置された加熱手段(ヒータコア36、室内凝縮器12、およびPTCヒータ37)の加熱能力に応じて決定される値であって、一般的には、エンジン冷却水温度Twを採用できる。従って、目標開度SWは、次の数式F2により算出できる。
SW=[(TAO−Te)/(Tw−Te)]×100(%)…(F2)
なお、SW=0(%)は、エアミックスドア38の最大冷房位置であり、冷風バイパス通路34を全開し、加熱用冷風通路33を全閉する。これに対し、SW=100(%)は、エアミックスドア38の最大暖房位置であり、冷風バイパス通路34を全閉し、加熱用冷風通路33を全開する。
ステップS11では、圧縮機11の冷媒吐出能力(具体的には、圧縮機11の回転数)を決定する。ここで、圧縮機11の基本的な回転数の決定手法を説明する。例えば、冷房モードでは、ステップS4で決定したTAO等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、室内蒸発器26からの吹出空気温度Teの目標吹出温度TEOを決定する。
そして、この目標吹出温度TEOと吹出空気温度Teの偏差En(TEO−Te)を算出し、今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(En−(En−1))とを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fCn−1に対する回転数変化量Δf_Cを求める。
また、暖房モード、第1除湿モードおよび第2除湿モードでは、ステップS4で決定した暖房用熱交換器目標温度等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、吐出側冷媒圧力(高圧側冷媒圧力)Pdの目標高圧PDOを決定する。
そして、この目標高圧PDOと吐出側冷媒圧力Pdの偏差Pn(PDO−Pd)を算出し、今回算出された偏差Pnから前回算出された偏差Pn−1を減算した偏差変化率Pdot(Pn−(Pn−1))とを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fHn−1に対する回転数変化量Δf_Hを求める。
このステップS11のより詳細な制御内容については、図11を用いて説明する。まず、ステップS111では、冷房モード(COOLサイクル)時の回転数変化量Δf_Cを求める。図11のステップS111には、ルールとして用いるファジールール表を記載している。このルール表では、上述の偏差Enと偏差変化率Edotに基づいて室内蒸発器26の着霜が防止されるようにΔf_Cが決定される。
ステップS112では、暖房モード(HOTサイクル)、第1除湿モード(DRY_EVAサイクル)および第2除湿モード(DRY_ALLサイクル)時の回転数変化量Δf_Hを求める。図11のステップS112には、ルールとして用いるファジールール表を記載している。このルール表では、上述の偏差Pnと偏差変化率Pdotに基づいて高圧側冷媒圧力Pdの異常上昇が防止されるようにΔf_Hが決定される。
ステップS113では、現在の車両用空調装置1の作動がマイルーム空調としての作動であるか否かを判定する。具体的には、ステップS1にて説明したマイルーム空調であること示すフラグがONとなっているか否かを判定する。
ステップS113にて、マイルーム空調としての作動であると判定された際には、ステップS114へ進み、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを6000rpmに決定して、ステップS116へ進む。一方、ステップS113にて、マイルーム空調としての作動でないと判定された際には、ステップS115へ進み、上限値IVOmaxを10000rpmに決定して、ステップS116へ進む。
ステップS116では、ステップS6で決定された運転モードが冷房モードであるか否かが判定される。ステップS116にて、ステップS6で決定された運転モードが冷房モードであると判定された場合は、ステップS117へ進み、圧縮機11の回転数変化量ΔfをΔf_Cに決定して、ステップS119へ進む。
一方、ステップS116にてステップS6で決定された運転モードが冷房モードでないと判定された場合は、ステップS118へ進み、圧縮機11の回転数変化量ΔfをΔf_Hに決定してステップS119へ進む。
ステップS119では、前回の圧縮機回転数fn−1に回転数変化量Δfを加えた値とステップS114、S115にて決定された上限値IVOmaxとを比較して、小さい方の値を、今回の圧縮機回転数fnと決定して、ステップS12へ進む。このように圧縮機回転数fnが決定されることにより、圧縮機11の回転数(冷媒吐出能力)の上限値が制限されるので、圧縮機11の消費電力が不必要に増加してしまうことを抑制できる。
また、上記の説明から明らかなように、ステップS114で決定されるマイルーム空調時の圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxは、マイルーム空調時の圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxよりも低い値に決定される。
このことは、外部電源から供給される電力によって車室内の空調を実行する際に、圧縮機11の冷媒吐出能力の上限値を、外部電源から電力が供給されていない時(電力の非供給時)よりも低下させることを意味している。なお、ステップS119における圧縮機回転数fnの決定は、制御周期τ毎に行われるものではなく、所定の制御間隔(本実施形態では1秒)毎に行われる。
ステップS12では、室外熱交換器16に向けて外気を送風する送風ファン16aの稼働率(具体的には、送風ファン16aの回転数)を決定する。このステップS12のより詳細な制御内容については、図12を用いて説明する。まず、ステップS1201では、ステップS6で決定された運転モードが冷房モードであるか否かが判定される。
ステップS1201にて、ステップS6で決定された運転モードが冷房モードであると判定された場合は、ステップS1202へ進み、現在の車両用空調装置1の作動がマイルーム空調としての作動であるか否かを判定する。具体的には、ステップS1にて説明したマイルーム空調であること示すフラグがONとなっているか否かを判定する。
ステップS1202にて、マイルーム空調としての作動であると判定された場合は、ステップS1203へ進み、冷凍サイクル10の冷媒圧力(例えば、圧縮機11の吐出冷媒圧力)が予め定めた第1基準高圧(本実施形態では、1.8MPa)以上であれば、冷媒圧力が高圧の状態であるものとし、予め定めた第2基準高圧(本実施形態では、1.5MPa)以下であれば、冷媒圧力が低圧の状態であるものとしてステップS1205へ進む。
一方、ステップS1202にて、マイルーム空調としての作動ではないと判定された場合は、ステップS1204へ進み、冷凍サイクル10の冷媒圧力が予め定めた第3基準高圧(本実施形態では、1.5MPa)以上であれば、冷媒圧力が高圧の状態であるものとし、予め定めた第4基準高圧(本実施形態では、1.2MPa)以下であれば、冷媒圧力が低圧の状態であるものとしてステップS1205へ進む。
つまり、ステップS1203では、ステップS1202よりも各基準高圧が低く設定されているので、マイルーム空調時には、マイルーム空調以外の空調時よりも冷媒圧力が低圧の状態と判定されやすい。なお、第1基準高圧と第2基準高圧との差、および、第3基準高圧と第4基準高圧との差は制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅である。
次に、ステップS1205では、外気センサ52によって検出された外気温Tamが高外気温の状態であるか低外気温の状態であるか、内気センサ51によって検出された車室内温度Trが高室温の状態であるか低室温の状態であるか、および、車速が高車速の状態であるか低車速の状態であるかといった空調熱負荷状態が判定されて、ステップS1206へ進む。なお、これらの判定は、ステップS1202、S1203と同様に検出値と予め設定された基準値との比較によって行われる。
ステップS1206では、ステップS1203〜S1205にて決定された冷媒圧力、外気温Tam、車室内温度Tr、車速の状態に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して送風ファン16aの稼働率が決定されて、ステップS13へ進む。
具体的には、ステップS1206では、冷媒圧力が低圧の状態であって、外気温Tamが低外気温、かつ、車室内温度Trが低車室内温度、かつ、車速が低車速の状態であれば、送風ファン16aをLOモード(小風量)とする。また、冷媒圧力が低圧の状態であって、外気温Tamが低外気温、かつ、車室内温度Trが低車室内温度、かつ、車速が高車速の状態であれば、送風ファン16aをOFFモード(停止)とする。
また、冷媒圧力が低圧の状態であって、外気温Tamが低外気温、かつ、車室内温度Trが低室温の状態になっていなければ、送風ファン16aをHiモード(大風量)とする。さらに、冷媒圧力が低圧の状態であれば、外気温Tam、車室内温度Tr、車速の状態によらず、送風ファン16aをHiモード(大風量)とする。
一方、ステップS1201にて、ステップS6で決定された運転モードが冷房モードではないと判定された場合は、ステップS1207へ進み、ステップS1202と同様に、現在の車両用空調装置1の作動がマイルーム空調としての作動であるか否かを判定する。
さらに、ステップS1207にて、マイルーム空調としての作動であると判定された場合は、ステップS1208へ進み、ステップS1203と同様に冷凍サイクル10の冷媒圧力の状態が判定されて、ステップS1210へ進む。また、ステップS1207にて、マイルーム空調としての作動ではないと判定された場合は、ステップS1209へ進み、ステップS1204と同様に冷凍サイクル10の冷媒圧力の状態が判定されて、ステップS1210へ進む。
ステップS1210では、ステップS1205と同様に、外気温Tamが高外気温の状態であるか低外気温の状態であるか、車室内温度Trが高室温の状態であるか低室温の状態であるか、および車速が高車速の状態であるか低車速の状態であるかが判定されて、ステップS1211へ進む。
なお、ステップS1210における判定は、ステップS1205と同様に、予め設定された基準値との比較によって行われるが、ステップS1210にて用いられる基準値は、図12に示すように、ステップS1205にて用いられる基準値と異なっている。
例えば、ステップS1210では、ステップS1205よりも、外気温Tamについては基準値が低いので高外気温の状態であると判定されやすく、車室内温度Trについては基準値が低いので高室温の状態であると判定されやすく、さらに、車速については、基準値が高いので、低車速の状態であると判定されやすい。
ステップS1211では、ステップS1206と同様に、ステップS1208〜S1210にて決定された冷媒圧力、外気温Tam、車室内温度Tr、車速の状態に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して送風ファン16aの稼働率が決定されて、ステップS13へ進む。
具体的には、ステップS1211では、冷媒圧力が低圧の状態であって、かつ、車速が低車速の状態であれば、送風ファン16aをLOモード(小風量)とする。また、冷媒圧力が低圧の状態であって、かつ、車速が高車速の状態であれば、送風ファン16aをOFFモード(停止)とする。
また、冷媒圧力が高圧の状態であって、外気温Tamが低外気温、車室内温度Trが低車室内温度、かつ、車速が低車速の状態であれば、送風ファン16aをHiモード(大風量)とし、冷媒圧力が低圧の状態であって、外気温Tamが低外気温、車室内温度Trが低車室内温度、かつ、車速が低車速の状態でなければ、送風ファン16aをOFFモード(停止)とする。
さらに、冷媒圧力が低圧の状態であって、外気温Tamが低外気温、かつ、車室内温度Trが低室温の状態であれば、外気温Tam、車室内温度Tr、車速によらず、低車速の状態では、送風ファン16aをLoモード(小風量)とし、高車速の状態では、送風ファン16aをOFFモード(停止)とする。
上記のステップS1202およびS1203にて説明したように、マイルーム空調時には、マイルーム空調以外の空調時よりも冷媒圧力が低圧の状態と判定されやすい。一方、ステップS1206およびS1211にて説明したように、冷媒圧力が低圧の状態では、高圧の状態よりも送風ファン16aはHiモード(大風量)となりにくい。
このことは、本実施形態の送風ファン16aの稼働率は、外部電源からの電力の供給されるマイルーム空調時には、マイルーム空調以外の空調時よりも、送風ファン16aの送風能力が低下するように決定されることを意味している。
ステップS13では、PTCヒータ37の作動本数の決定および電熱デフォッガの作動状態の決定が行われる。PTCヒータ37の作動本数は、例えば、ステップS6にてPTCヒータ37への通電の必要があるとされたときに、暖房モード時にエアミックスドア38の目標開度SWが100%となっても、暖房用熱交換器目標温度を得られない場合に、内気温Trと暖房用熱交換器目標温度との差に応じて決定すればよい。
また、車室内の湿度および温度から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合、あるいは窓ガラスに曇りが発生している場合は、電熱デフォッガを作動させる。
ステップS14では、ヒータコア36とエンジンEGとの間で冷却水を循環させる冷却水ポンプ40aを作動させるか否かを決定する。このステップS14の詳細については、図13のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS141では、冷却水温度Twが室内蒸発器26からの吹出空気温度Teより高いか否かを判定する。
ステップS141にて、冷却水温度Twが吹出空気温度Te以下となっている場合は、ステップS145へ進み、冷却水ポンプ40aを停止(OFF)させることを決定する。その理由は、冷却水温度Twが吹出空気温度Te以下となっている場合に冷却水をヒータコア36へ流すと、ヒータコア36を流れる冷却水が蒸発器13通過後の空気を冷却して、かえって吹出口からの吹出空気温度を低下させてしまうからである。
ステップS141にて、冷却水温度Twが吹出空気温度Teより高い場合は、ステップS142へ進む。ステップS142では、送風機32が作動しているか否かが判定される。ステップS142にて、送風機32が作動していないと判定された場合は、ステップS145に進み、省動力化のために冷却水ポンプ40aを停止(OFF)させることを決定する。
ステップS142にて、送風機32が作動していると判定された場合は、ステップS143へ進む。ステップS143では、上述のステップS7、S11、S12等と同様に、現在の車両用空調装置1の作動がマイルーム空調としての作動であるか否かを判定する。ステップS142にて、マイルーム空調としての作動であると判定された場合は、ステップS145に進み、冷却水ポンプ40aを停止(OFF)させることを決定する。
ステップS143にて、マイルーム空調としての作動ではないと判定された場合は、ステップS144へ進み、冷却水ポンプ40aを作動(ON)させることを決定してステップS15へ進む。これにより、冷却水ポンプ40aが作動して、冷却水が冷媒回路内を循環するので、ヒータコア36を流れる冷却水とヒータコア36を通過する空気とを熱交換させて送風空気を加熱することができる。
ステップS15では、報知手段としての操作パネル60の作動状態を決定する。具体的には、マイルーム空調時にバッテリ81の蓄電残量が予め定めた基準報知蓄電残量以下になっていれば、これを表示させ、さらに、操作パネル60に内蔵されたブザーを所定時間(本実施形態では、2秒間)作動させる。
ステップS16では、上述のステップS6で決定された運転モードに応じて、冷媒回路切替手段である各電磁弁13〜24の作動状態を決定する。
具体的には、図14の図表に示すように、運転モードが冷房モード(COOLサイクル)に決定されている場合は、全ての電磁弁を非通電状態とする。また、暖房モード(HOTサイクル)に決定されている場合は、電気式三方弁13、高圧電磁弁20、低圧電磁弁17を通電状態とし、残りの電磁弁21、24を非通電状態とする。
また、第1除湿モード(DRY_EVAサイクル)に決定されている場合は、電気式三方弁13、低圧電磁弁17、除湿電磁弁24および熱交換器遮断電磁弁21を通電状態とし、高圧電磁弁20を非通電状態とする。また、第2除湿モード(DRY_ALLサイクルに決定されている場合は、電気式三方弁13、低圧電磁弁17、除湿電磁弁24を通電状態とし、残りの電磁弁20、21を非通電状態とする。
つまり、本実施形態では、いずれの運転モードの冷媒回路に切り替えた場合であっても、各電磁弁13〜24のうち少なくとも1つの電磁弁に対する電力の供給が停止されるように構成されている。これにより、本実施形態の各電磁弁13〜24の合計消費電力を低減できるようにしている。
ステップS17では、上述のステップS6〜S16で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50より各種機器61、13、17、20、21、24、16a、32、37、62、63、64に対して制御信号および制御電圧が出力される。例えば、圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61に対しては、圧縮機11の回転数がステップS11で決定された回転数となるように制御信号が出力される。
ステップS18では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS19へ進む。なお、本実施形態は制御周期τを250msとしている。これは、車室内の空調制御は、エンジン制御等と比較して遅い制御周期であってもその制御性に悪影響を与えないからである。さらに、車両内における空調制御のための通信量を抑制して、エンジン制御等のように高速制御を行う必要のある制御系の通信量を充分に確保することができる。
ここで、本実施形態のプラグインハイブリッド車両のように、外部電源から供給された電力をバッテリ81に充電することができる車両では、外部電源からの過度な電力供給によって過充電が生じると、バッテリ81の発熱、発煙、発火および劣化といった不具合が生じる。そのため、エンジン制御装置では、外部電源から供給される電力を検出する電力計の検出信号等に基づいて外部電源から供給される電力、換言すると、外部電源に要求する要求電力の量を制御している。
さらに、外電電源から電力が供給されている時であっても、車両用空調装置1の各種電動式構成機器11、16a、32、40aの過度な電力消費による過放電が生じると、バッテリ81の寿命低下といった不具合が生じる。そこで、本実施形態の空調制御装置50では、ステップS19にて、外部電源から電源が供給された状態で車両用空調装置1を作動させた際に、エンジン制御装置に対して要求電力を変更させる信号を出力している。
このステップS19のより詳細な制御内容については、図15を用いて説明する。まず、ステップS191では、上述のステップS7、S11、S12、S14等と同様に、現在の車両用空調装置1の作動がマイルーム空調としての作動であるか否かを判定する。ステップS191にて、マイルーム空調としての作動ではないと判定された場合は、外部電源に対する要求電力の変更は行われず、ステップS3へ戻る。
一方、ステップS191にて、マイルーム空調としての作動であると判定された場合は、ステップS192に進み、外部電源の電圧(実行値)が100V(誤差範囲±10V程度)であるか、200V(誤差範囲±20V程度)であるかを判定する。なお、ステップS192における判定は、外部電源が商用電源である場合の電圧変動を考慮して、誤差範囲が決定されている。
ステップS192にて、外部電源の電圧が100Vであると判定された場合には、ステップS193へ進み、車両の消費電力が予め定めた第1基準消費電力(本実施形態では、1000W)より多いか否かを判定する。なお、ステップS193における車両の消費電力とは、具体的に、圧縮機11、送風ファン16a、送風機32、冷却水ポンプ40a、空調制御装置50等の消費する消費電力の合計値である。
ステップS193にて、車両の消費電力が第1基準消費電力より多いと判定された場合には、ステップS194へ進み、外部電源への要求電力を1000Wとして、ステップS3へ戻る。一方、ステップS193にて、車両の消費電力が第1基準消費電力より多くないと判定された場合には、ステップS195へ進み、外部電源への要求電力を車両の消費電力×0.95として、ステップS3へ戻る。
また、ステップS192にて、外部電源の電圧が200Vであると判定された場合には、ステップS196へ進み、車両の消費電力が予め定めた第2基準消費電力(本実施形態では、2000W)より多いか否かを判定する。
ステップS196にて、車両の消費電力が第2基準消費電力より多いと判定された場合には、ステップS197へ進み、外部電源への要求電力を2000Wとして、ステップS3へ戻る。一方、ステップS196にて、車両の消費電力が第1基準消費電力より多くないと判定された場合には、ステップS198へ進み、外部電源への要求電力を第2基準消費電力×0.95として、ステップS3へ戻る。
つまり、本実施形態の制御ステップS19では、マイルーム空調時には、外部電源の電圧によらず、車両の消費電力よりも、外部電源への要求電力が小さくなる。
なお、ステップS194にて決定される要求電力(1000W)は、外部電源の電圧が100Vとなっているときに、車両用空調装置1が充分な空調能力を発揮できる値として決定されている。ステップS197にて決定される要求電力(2000W)は、外部電源の電圧が200Vとなっているときに、車両用空調装置1が充分な空調能力を発揮できる値として決定されている。
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く制御されるので、制御ステップS6にて選択された運転モードに応じて以下のように作動する。
(a)冷房モード(COOLサイクル:図1参照)
冷房モードでは、空調制御装置50が全ての電磁弁を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と第1三方継手15の1つの冷媒流入出口との間を接続し、低圧電磁弁17が閉弁し、高圧電磁弁20が開弁し、熱交換器遮断電磁弁21が開弁し、除湿電磁弁24が閉弁する。
これにより、図1の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→第1三方継手15→室外熱交換器16→第2三方継手19→高圧電磁弁20→第2逆止弁22→温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b→第4三方継手25→室内蒸発器26→温度式膨張弁27の感温部27a→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
この冷房モードの冷媒回路では、電気式三方弁13から第1三方継手15へ流入した冷媒は、低圧電磁弁17が閉弁しているので低圧電磁弁17側へ流出することはない。また、室外熱交換器16から第2三方継手19へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉弁しているので熱交換器遮断電磁弁21側へ流出することはない。また、温度式膨張弁27の可変絞り機構部27bから流出した冷媒は、除湿電磁弁24が閉弁しているので除湿電磁弁24側へ流出することはない。さらに、温度式膨張弁27の感温部27aから第5三方継手28へ流入した冷媒は、第2逆止弁22の作用によって第2逆止弁22側に流出することはない。
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて室内蒸発器26通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却され、さらに、室外熱交換器16にて外気と熱交換して冷却され、温度式膨張弁27にて減圧膨張される。温度式膨張弁27にて減圧された低圧冷媒は室内蒸発器26へ流入し、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器26を通過する送風空気が冷却される。
この際、前述の如くエアミックスドア38の開度が調整されるので、室内蒸発器26にて冷却された送風空気の一部(または全部)が冷風バイパス通路34から混合空間35へ流入し、室内蒸発器26にて冷却された送風空気の一部(または全部)が加熱用冷風通路33へ流入してヒータコア36、室内凝縮器12、ヒータコア36を通過する際に再加熱されて混合空間35へ流入する。
これにより、混合空間35にて混合されて車室内へ吹き出す送風空気の温度が所望の温度に調整されて、車室内の冷房を行うことができる。なお、冷房モードでは、送風空気の除湿能力も高いが、暖房能力は殆ど発揮されない。
また、室内蒸発器26から流出した冷媒は、温度式膨張弁27の感温部61aを介して、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
さらに、この冷房モードの冷媒回路では、図1の記載から明らかなように、冷凍サイクル10の冷媒流路内の異なる2箇所の部位が互いに連通している。換言すると、冷房モードの冷媒回路では、冷凍サイクル10を構成する冷媒流路内に他の部位と連通しない閉塞回路が形成されていない。
(b)暖房モード(HOTサイクル:図2参照)
暖房モードでは、空調制御装置50が電気式三方弁13、高圧電磁弁20、低圧電磁弁17を通電状態とし、残りの電磁弁21、24を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続し、低圧電磁弁17が開弁し、高圧電磁弁20が閉弁し、熱交換器遮断電磁弁21が開弁し、除湿電磁弁24が閉弁する。
これにより、図2の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→熱交換器遮断電磁弁21→第2三方継手19→室外熱交換器16→第1三方継手15→低圧電磁弁17→第1逆止弁18→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
この暖房モードの冷媒回路では、固定絞り14から第3三方継手23へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉弁しているので除湿電磁弁24側へ流出することはない。また、熱交換器遮断電磁弁21から第2三方継手19へ流入した冷媒は、高圧電磁弁20が閉弁しているので高圧電磁弁20側へ流出することはない。また、室外熱交換器16から第1三方継手15へ流入した冷媒は、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続しているので電気式三方弁13側へ流出することはない。第1逆止弁18から第5三方継手28へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉じているので温度式膨張弁27側へ流出することはない。
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて送風機32から送風された送風空気と熱交換して冷却される。これにより、室内凝縮器12を通過する送風空気が加熱される。この際、エアミックスドア38の開度が調整されるので、冷房モードと同様に、混合空間35にて混合されて車室内へ吹き出す送風空気の温度が所望の温度に調整されて、車室内の暖房を行うことができる。なお、暖房モードでは、送風空気の除湿能力は発揮されない。
また、室内凝縮器12から流出した冷媒は、固定絞り14にて減圧されて室外熱交換器16へ流入する。室外熱交換器16へ流入した冷媒は、送風ファン16aから送風された車室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器16から流出した冷媒は、低圧電磁弁17、第1逆止弁18等を介して、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
(c)第1除湿モード(DRY_EVAサイクル:図3参照)
第1除湿モードでは、空調制御装置50が電気式三方弁13、低圧電磁弁17、熱交換器遮断電磁弁21および除湿電磁弁24を通電状態とし、高圧電磁弁20を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続し、低圧電磁弁17が開弁し、高圧電磁弁20が開弁し、熱交換器遮断電磁弁21が閉弁し、除湿電磁弁24が開弁する。
これにより、図3の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→除湿電磁弁24→第4三方継手25→室内蒸発器26→温度式膨張弁27の感温部27a→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
この第1除湿モードの冷媒回路では、固定絞り14から第3三方継手23へ流入した冷媒は、熱交換器遮断電磁弁21が閉弁しているので熱交換器遮断電磁弁21側へ流出することはない。また、除湿電磁弁24から第4三方継手25へ流入した冷媒は、第2逆止弁22の作用によって温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b側へ流出することはない。また、温度式膨張弁27の感温部27aから第5三方継手28へ流入した冷媒は、第1逆止弁18の作用によって第1逆止弁18側へ流出することはない。
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて室内蒸発器26通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却される。これにより、室内凝縮器12を通過する送風空気が加熱される。室内凝縮器12から流出した冷媒は、固定絞り14にて減圧されて室内蒸発器26へ流入する。
室内蒸発器26へ流入した低圧冷媒は、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器26を通過する送風空気が冷却されて除湿される。従って、室内蒸発器26にて冷却されて除湿された送風空気は、ヒータコア36、室内凝縮器12、ヒータコア36を通過する際に再加熱されて、混合空間35から車室内へ吹き出される。すなわち、車室内の除湿を行うことができる。なお、第1除湿モードでは、送風空気の除湿能力を発揮できるが、暖房能力は小さい。
また、室内蒸発器26から流出した冷媒は、温度式膨張弁27の感温部61aを介して、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
(d)第2除湿モード(DRY_ALLサイクル:図4参照)
第2除湿モードでは、空調制御装置50が電気式三方弁13、低圧電磁弁17、除湿電磁弁24を通電状態とし、残りの電磁弁20、21を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続し、低圧電磁弁17が開弁し、高圧電磁弁20が開弁し、熱交換器遮断電磁弁21が開弁し、除湿電磁弁24が開弁する。
これにより、図4の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→熱交換器遮断電磁弁21→第2三方継手19→室外熱交換器16→第1三方継手15→低圧電磁弁17→第1逆止弁18→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→除湿電磁弁24→第4三方継手25→室内蒸発器26→温度式膨張弁27の感温部27a→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
つまり、第2除湿モードでは、固定絞り14から第3三方継手23へ流入した冷媒が熱交換器遮断電磁弁21側および除湿電磁弁24側の双方に流出して、第1逆止弁18から第5三方継手28へ流入した冷媒および温度式膨張弁27の感温部27aから第5三方継手28へ流入した冷媒の双方が第5三方継手28にて合流してアキュムレータ29側へ流出する。
なお、この第2除湿モードの冷媒回路では、室外熱交換器16から第1三方継手15へ流入した冷媒は、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続しているので電気式三方弁13側へ流出することはない。また、除湿電磁弁24から第4三方継手25へ流入した冷媒は、第2逆止弁22の作用によって温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b側へ流出することはない。
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて室内蒸発器26通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却される。これにより、室内凝縮器12を通過する送風空気が加熱される。室内凝縮器12から流出した冷媒は、固定絞り14にて減圧された後、第3三方継手23にて分岐されて室外熱交換器16および室内蒸発器26へ流入する。
室外熱交換器16へ流入した冷媒は、送風ファン16aから送風された車室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器16から流出した冷媒は、低圧電磁弁17、第1逆止弁18等を介して、第5三方継手28へ流入する。室内蒸発器26へ流入した低圧冷媒は、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器26を通過する送風空気が冷却されて除湿される。
従って、室内蒸発器26にて冷却されて除湿された送風空気は、ヒータコア36、室内凝縮器12、ヒータコア36を通過する際に再加熱されて、混合空間35から車室内へ吹き出される。この際、第2除湿モードでは、第1除湿モードに対して、室外熱交換器16にて吸熱した熱量を室内凝縮器12にて放熱することができるので、送風空気を第1除湿モードよりも高温に加熱できる。すなわち、第2除湿モードでは、高い暖房能力を発揮させながら除湿能力も発揮させる除湿暖房を行うことができる。
また、室内蒸発器26から流出した冷媒は、第5三方継手28へ流入して室外熱交換器16から流出した冷媒と合流し、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
さらに、上記の如く、冷房モードの冷媒回路、暖房モードの冷媒回路、および第1除湿モードの冷媒回路は、いずれも圧縮機11に吸入される冷媒を室外熱交換器16と室内熱交換器(具体的には、室内凝縮器12、室内蒸発器26)とのうちいずれか一方に流通させる単独熱交換器モードの冷媒回路であり、第2除湿モードの冷媒回路は、圧縮機11に吸入される冷媒を室外熱交換器16と室内熱交換器(具体的には、室内蒸発器26)との双方に流通させる複合熱交換器モードの冷媒回路であると表現することもできる。
本実施形態の車両用空調装置は、以上の如く作動するので、以下のような優れた効果を発揮することができる。
まず、制御ステップS7にて説明したように、外部電源からの電力が供給されるマイルーム空調時には、マイルーム空調以外の空調時よりも、送風機32の送風能力が低下するように決定される。従って、マイルーム空調時に、電動式構成機器である送風機32の騒音の発生を抑制することができる。
さらに、制御ステップS11にて説明したように、マイルーム空調時には、マイルーム空調以外の空調時よりも、圧縮機11の回転数の上限値上限値IVOmaxが低い値に決定される。従って、マイルーム空調時に冷凍サイクル10に最大能力を発揮させる運転状態が継続されたとしても、マイルーム空調以外の空調時よりも、圧縮機11の冷媒吐出能力を低下させて、電動式構成機器である圧縮機11の騒音の発生を抑制することができる。
さらに、制御ステップS12にて説明したように、マイルーム空調時には、マイルーム空調以外の空調時よりも、送風ファン16aの送風能力が低下するように決定される。従って、マイルーム空調時に、電動式構成機器である送風ファン16aの騒音の発生を抑制することができる。
従って、エンジンEGが停止しており、エンジン騒音が問題とならないマイルーム空調時に、上述した車両用空調装置1の各種電動式構成機器11、16a、32の騒音が、乗員あるいは車両周囲に居る人にとって耳障りとなってしまうことを抑制できる。しかも、各種電動式構成機器11、16a、32が高能力を発揮しながら作動する頻度を低下させて、これらの耐久寿命の低下を抑制することもできる。
さらに、マイルーム空調は、外部電源からバッテリ81への充電中に乗員が車室内で過ごす際の空調であるため、充電時間が長時間化すれば、マイルーム空調が実行される時間も長くなりやすい。従って、上述した各種電動式構成機器11、16a、32を能力を低下させて車両用空調装置1の空調能力を多少低下させてとしても、乗員に不快感を与えにくい。
その結果、本実施形態の車両用空調装置1によれば、外部電源から供給される電力によって車室内の空調を行う際に、適切な空調を実現しつつ、騒音の発生が抑制された車両用空調装置1を提供できる。
また、制御ステップS11にて説明したように、車両用空調装置1の作動時には、比較的消費電力の高い、圧縮機11の回転数(冷媒吐出能力)の上限値が決定されているので、バッテリ81の過放電を抑制することもできる。
また、本実施形態では、制御ステップS19にて説明したように、マイルーム空調時には外部電源の電圧によらず、車両の消費電力よりも外部電源への要求電力が小さくなる。従って、外部電源から供給される電力は車両用空調装置1にて消費されることになり、バッテリ81の過充電を抑制してバッテリ81の保護を図ることができる。
さらに、マイルーム空調時には、供給電力が消費電力の上限値と同等程度の95%となるので、バッテリ81の過充電を抑制することができるだけでなく、バッテリ81の過放電についても抑制できる。
つまり、消費電力の上限値が供給電力以上になっていると、車両用空調装置1を作動させるために供給電力だけでは不足している分の電力をバッテリ81から持ち出さなければならない。これに対して、本実施形態では、消費電力の上限値を供給電力より僅かに大きい程度(同等)といるので、バッテリ81から持ち出される電力が不必要に拡大してしまうことを抑制して、バッテリ81の過放電を抑制できる。
つまり、本実施形態の車両用空調装置は、外部電源から供給される電力によって電動式構成機器を作動させる際に、電動式構成機器の消費電力が、外部電源からバッテリおよび電動式構成機器へ供給される供給電力以上となることを特徴とする車両用空調装置と表現することもできる。
(第2実施形態)
上述の実施形態で述べたように、外部電源から供給された電力をバッテリ81に充電することができるプラグインハイブリッド車両では、バッテリ81の過充電あるいは過放電によるバッテリ81の劣化が懸念される。そこで、本実施形態では、第1実施形態に対して、圧縮機11および送風機32の制御態様を変更して、効果的にバッテリ81の劣化の抑制を図った例を説明する。
まず、図16を用いて、本実施形態の圧縮機11の制御態様について説明する。図16は、第1実施形態の図11に対応する制御フローを示すフローチャートである。まず、ステップS111およびS112では、第1実施形態と同様に、それぞれ冷房モードにおける圧縮機11の回転数の変化量Δf_Cおよび暖房モード、第1除湿モードおよび第2除湿モードにおける圧縮機11の回転数の変化量Δf_Hが決定される。
なお、図16のステップS111およびS112は、第1実施形態の図11と全く同様なので、図16では、図示の明確化のため、ルールとして用いるファジールール表の記載を省略している。続くステップS113においても、第1実施形態と同様に、現在の車両用空調装置1の作動がマイルーム空調としての作動であるか否かを判定する。
ステップS113にて、マイルーム空調としての作動であると判定された際には、ステップS1141へ進み、車両用空調装置1の各種電動式構成機器11、16a、32、40aの使用可能な消費電力の上限値としての使用許可電力f(POWER)を2500Wに決定して、ステップS1142へ進む。ステップS113にて、マイルーム空調としての作動ではないと判定された際には、後述するステップS1143へ進む。
ステップS1142では、使用許可電力f(POWER)から各種電動式構成機器11、16a、32、40aの実際の消費電力を減算した消費電力差に基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、圧縮機11の回転数変化量の上限値Δf_MYを決定して、ステップS1143へ進む。具体的には、図16のステップS1142に示すように、消費電力差の増加に伴って上限値Δf_MYが増加するように決定する。
続くステップS1143では、バッテリ81の蓄電残量に応じて、圧縮機11の回転数の上限値IVOmax_SOCを決定する。
具体的には、バッテリ81の蓄電残量が予め定めた第1基準停止蓄電残量(本実施形態では80%)以上であれば、上限値IVOmax_SOCを10000rpmに決定し、予め定めた第2基準停止蓄電残量(本実施形態では30%)以下であれば、上限値IVOmax_SOCを0rpmに決定して、ステップS116へ進む。
つまり、ステップS1143では、バッテリ81の蓄電残量が停止蓄電残量以下となっているときには、圧縮機11の作動を許可しない。なお、図16のステップS1143に示す第1基準停止蓄電残量と第2基準停止蓄電残量との差は制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅である。また、第2基準停止蓄電残量は、次回の車両走行時にEV運転モードにて、予め定めた所定の走行距離を確実に走行可能な値として決定されている。
ステップS116では、第1実施形態と同様に、運転モードが冷房モードであるか否かが判定される。ステップS116にて、ステップS6で決定された運転モードが冷房モードであると判定された場合は、ステップS1171へ進み、Δf_CとΔf_MYとを比較して小さい方の値を圧縮機11の回転数変化量Δfに決定して、ステップS1191へ進む。
一方、ステップS116にて、ステップS6で決定された運転モードが冷房モードでないと判定された場合は、ステップS1181へ進み、Δf_HとΔf_MYとを比較して小さい方の値を圧縮機11の回転数変化量Δfに決定して、ステップS1191へ進む。
ステップS1191では、前回の圧縮機回転数fn−1に回転数変化量Δfを加えた値とステップS1143にて決定された上限値IVOmax_SOCとを比較して、小さい方の値を、今回の圧縮機回転数fnと決定して、ステップS12へ進む。なお、ステップS1191における圧縮機回転数fnの決定は、制御周期τ毎に行われるものではなく、所定の制御間隔(本実施形態では1秒)毎に行われる。
次に、図17を用いて、本実施形態の送風機32の制御態様について説明する。図17は、第1実施形態の図11に対応する制御フローを示すフローチャートである。まず、ステップS701では、バッテリ81の蓄電残量に応じて決定される圧縮機11の回転数の上限値IVOmax_SOCが0となっているか否かを判定する。
ステップS701にて、上限値IVOmax_SOCが0となっていると判定された際には、ステップS702へ進み、ブロワモータ電圧を0Vに決定してステップS8へ進む。一方、ステップS701にて、上限値IVOmax_SOCが0となっていないと判定された際には、ステップS71へ進む。ステップS71〜S75の制御処理は、第1実施形態と同様である。
さらに、本実施形態では、第1実施形態で説明したステップS15における操作パネル60の作動状態を決定については、図18のフローチャートに示すように、ステップS151にて上限値IVOmax_SOCが0となっていると判定された際に、ステップ152にて操作パネル60にこれをポップアップ表示させ、さらに、ステップS153にて操作パネル60に内蔵されたブザーを所定時間(本実施形態では、2秒間)作動させる。
その他の車両用空調装置1の構成および作動は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の車両用空調装置1によれば、制御ステップS1142にて説明したように、マイルーム空調時には、使用許可電力f(POWER)から実際の消費電力を減算した消費電力差の増加に伴って、圧縮機11の回転数変化量の上限値Δf_MYを増加させるように決定している。
従って、使用許可電力f(POWER)から実際の消費電力を減算した消費電力差が小さいときには、圧縮機11の回転数を急変させて消費電力が使用許可電力f(POWER)が超えてしまうことを防止できるので、バッテリ81の過放電を防止してバッテリ81の劣化を効果的に抑制できる。一方、使用許可電力f(POWER)から実際の消費電力を減算した消費電力差が大きいときには、圧縮機11の回転数変化量を大きくして、即効性の高い空調を実現することができる。
さらに、制御ステップS1143および制御ステップS702にて説明したように、マイルーム空調時にバッテリ81の蓄電残量が基準停止蓄電残量(具体的には、30%)以下になった際に、圧縮機11および送風機32を停止させて、車両用空調装置1の作動を停止させることができる。従って、バッテリ81の過放電を防止できるとともに、次回の車両走行時にEV運転モードにて、所定の走行距離を確実に走行することができる。
さらに、制御ステップS15で説明したように、マイルーム空調時にバッテリ81の蓄電残量が基準停止蓄電残量以下となって、車両用空調装置1が停止した際に、これを乗員に報知することができるので、例えば、乗員がマイルーム空調時に車室内で仮眠をとっている場合でも、空調が停止していることを乗員に報知して、乗員が熱中症などになってしまうことも防止できる。
(第3実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、圧縮機11の制御態様を変更して、第2実施形態と同様に、効果的にバッテリ81の劣化の抑制を図った例を説明する。具体的には、本実施形態では、第1実施形態の図11に対応する制御フローを図19に示すように変更している。
まず、ステップS111〜S113については、第1、第2実施形態と同様である。さらに、図19においても、第2実施形態と同様に、図示の明確化のためステップS111およびS112のファジールール表の記載を省略している。
ステップS113にて、マイルーム空調としての作動ではないと判定された際には、ステップS116へ進む。一方、ステップS113にて、マイルーム空調としての作動であると判定された際には、ステップS1144へ進み、バッテリ81の蓄電残量が、次回の車両走行時にEV運転モードにて、所定の走行距離を確実に走行するために充分であるか否かの蓄電残量フラグf(SOC)を決定する。
具体的には、バッテリ81の蓄電残量が予め定めた第1基準停止蓄電残量(本実施形態では80%)以上であれば、バッテリ81の蓄電残量が次回の車両走行時にEV運転モードにて所定の走行距離を確実に走行するために充分であるとして、蓄電残量フラグf(SOC)を1に決定する。
さらに、予め定めた第2基準停止蓄電残量(本実施形態では30%)以下であれば、バッテリ81の蓄電残量が次回の車両走行時にEV運転モードにて、所定の走行距離を確実に走行するために不充分であるとして、蓄電残量フラグf(SOC)を0に決定して、ステップS1145へ進む。
ステップS1145では、蓄電残量フラグf(SOC)=1であるか否か判定され、蓄電残量フラグf(SOC)=1であれば、ステップS1146へ進み、第2実施形態で説明した使用許可電力f(POWER)を2500Wに決定して、ステップS1147へ進む。
一方、ステップS1145にて、蓄電残量フラグf(SOC)=1でなければ、ステップS1148へ進み、第1実施形態のステップS192と同様に、外部電源の電圧(実行値)が100Vであるか、200Vであるかを判定する。ステップS1148にて、外部電源の電圧が100Vであると判定された場合には、ステップS1149へ進み、使用許可電力f(POWER)を900Wに決定して、ステップS1147へ進む。
また、ステップS1148にて、外部電源の電圧が200Vであると判定された場合には、ステップS1150へ進み、使用許可電力f(POWER)を1700Wに決定して、ステップS1147へ進む。ステップS1147では、第2実施形態のステップS1142と同様に、圧縮機11の回転数変化量Δfが決定されて、ステップS116へ進む。
ステップS116、S1171、S1181における制御処理は、第2実施形態と同様である。そして、ステップS1192では、前回の圧縮機回転数fn−1に回転数変化量Δfを加えた値を、今回の圧縮機回転数fnと決定して、ステップS12へ進む。なお、ステップS1192における圧縮機回転数fnの決定は、制御周期τ毎に行われるものではなく、所定の制御間隔(本実施形態では1秒)毎に行われる。
その他の車両用空調装置1の構成および作動は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態では、マイルーム空調時に、バッテリ81の蓄電残量が次回の車両走行時にEV運転モードにて所定の走行距離を確実に走行するために充分である場合には、第2実施形態と同様に、圧縮機11の回転数変化量の上限値Δf_MYを決定することができる。
これにより、第2実施形態と同様に、消費電力差が小さいときには、圧縮機11の回転数が急変してしまうことを抑制して、バッテリ81の過放電を防止できるので、バッテリ81の劣化を効果的に抑制できる。一方、消費電力差が大きいときには、圧縮機11の回転数変化量を大きくして、即効性の高い空調を実現することができる。
さらに、本実施形態では、マイルーム空調時であっても、バッテリ81の蓄電残量が次回の車両走行時にEV運転モードにて所定の走行距離を確実に走行するために不充分である場合には、外部電源の電圧の低下に伴って、使用許可電力f(POWER)を低下させるように決定しているので、外部電源の電圧の低下に伴って、圧縮機11の回転数変化量の上限値Δf_MYの最大値を小さくすることができる。
これにより、外部電源の電圧の低下に伴って、圧縮機11の回転数が上昇しにくくなり、圧縮機11の消費電力を低減して、外部電源から供給される電力のうちバッテリ81へ充電される電力を増加させることができる。従って、バッテリ81の過放電を抑制して、バッテリ81の劣化を効果的に抑制できる。
(第4実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、圧縮機11の制御態様を変更して、第2実施形態の使用許可電力f(POWER)と同様に定義される車両用空調装置1の各種電動式構成機器11、16a、32、40aの使用可能な消費電力の上限値としての使用許可電力f(TIMER)をマイルーム空調の作動とともに経時的に変化させることによって、マイルーム空調時の車両用空調装置1の騒音の抑制と、バッテリ81の劣化の抑制を図った例を説明する。
具体的には、本実施形態では、第1実施形態の図11に対応する制御フローを図20に示すように変更している。まず、ステップS111〜S113については、第1〜第3実施形態と同様である。さらに、図20においても、第2、第3実施形態と同様に、図示の明確化のためステップS111およびS112のファジールール表の記載を省略している。
ステップS113にて、マイルーム空調としての作動であると判定された際には、ステップS1151へ進み、使用許可電力f(TIMER)を決定して、ステップS1152へ進む。このステップS1151では、使用許可電力f(TIMER)をマイルーム空調の開始から時間経過に伴って徐々に低下させている。
より具体的には、図20のステップSS1151に図示するように、マイルーム空調の開始から2分間は、使用許可電力f(TIMER)=2800Wに決定し、次の1分間は、使用許可電力f(TIMER)=2500Wに決定し、さらに、次の1分間は、使用許可電力f(TIMER)=2200Wに決定する。これ以降は、使用許可電力f(TIMER)=2100Wに決定する。
続くステップS1152では、第2実施形態のステップS1142および第3実施形態のステップS1147と同様に、圧縮機11の回転数変化量Δfが決定されて、ステップS116へ進む。ステップS116、S1171、S1181における制御処理は、第2実施形態と同様である。
一方、ステップS113にて、マイルーム空調としての作動ではないと判定された際には、ステップS1161へ進む。ステップS1161、S117、S118における制御処理は、第1実施形態の図11のステップS116、S117、S118における制御処理と同様である。
そして、続くステップS1192では、第3実施形態と同様に、前回の圧縮機回転数fn−1に回転数変化量Δfを加えた値を、今回の圧縮機回転数fnと決定して、ステップS12へ進む。なお、ステップS1192における圧縮機回転数fnの決定は、制御周期τ毎に行われるものではなく、所定の制御間隔(本実施形態では1秒)毎に行われる。その他の車両用空調装置1の構成および作動は、第1実施形態と同様である。
本実施形態では、制御ステップS1151にて説明したように、マイルーム空調の開始から時間経過に伴って、各種電動式構成機器11、16a、32、40aの使用可能な使用許可電力f(TIMER)を徐々に低下させるので、時間経過に伴って、各種電動式構成機器11、16a、32、40aの能力も徐々に低下させることができる。従って、各種電動式構成機器11、16a、32、40aによって生じる騒音を、時間経過に伴って低減することができる。
さらに、マイルーム空調の初期には、各種電動式構成機器11、16a、32、40aに高い能力を発揮させて、即効性の高い空調を実現できる。この際、冷房モードであれば、室内蒸発器26の冷媒蒸発温度を速やかに低下させることができるので、室内蒸発器26の表面を速やかに湿潤させることができる。これにより、室内蒸発器26の表面が乾いた際に室内へ流れる悪臭の発生を抑制できる。
さらに、マイルーム空調開始後の初期の短期間であれば、各種電動式構成機器11、16a、32、40aよって生じる騒音レベルが高くても、各種電動式構成機器11、16a、32、40aの作動音が乗員あるいは車両周囲に居る人にとって耳障りとなりにくい。さらに、各種電動式構成機器11、16a、32が高能力を発揮しながら作動する時間を短縮化させて、これらの耐久寿命の低下を抑制することもできる。
さらに、制御ステップS1152にて説明したように、マイルーム空調時には、使用許可電力f(TIMER)から実際の消費電力を減算した消費電力差の増加に伴って、圧縮機11の回転数変化量の上限値Δf_MYを増加させるように決定している。従って、第2、第3実施形態と同様に、消費電力差が小さいときには、圧縮機11の回転数が急変してしまうことを抑制して、バッテリ81の過放電を防止できるので、バッテリ81の劣化を効果的に抑制できる。
また、本実施形態のように時間経過に応じた使用可能電力f(TIMER)が決定されている場合には、さらに、マイルーム空調の継続作動時間(例えば、20分)を設定しておくことで、マイルーム空調における車両用空調装置1のおおよその総電力消費量を見積もることが可能となる。従って、この総電力消費量および外部電源から供給可能な電力に基づいて、使用可能電力f(TIMER)を設定しておくことで、バッテリ81の過充電および過放電を効果的に抑制できる。
(第5実施形態)
第4実施形態では、マイルーム空調時に各種電動式構成機器11、16a、32、40aの使用可能な消費電力の上限値である使用許可電力f(TIMER)を経時的に変化させた例を説明したが、この例では、圧縮機11の回転数(冷媒吐出能力)の上限値を経時的に変化させる例を説明する。
具体的には、本実施形態では、第1実施形態の図11に対応する制御フローを図21に示すように変更している。まず、ステップS111〜S113については、第1〜第4実施形態と同様である。さらに、図21においても、第2〜第4実施形態と同様に、図示の明確化のためステップS111およびS112のファジールール表の記載を省略している。
ステップS113にて、マイルーム空調としての作動であると判定された際には、ステップS1153へ進み、圧縮機11の回転数の上限値IVOmaxを決定して、ステップS116へ進む。このステップS1152では、上限値IVOmaxをマイルーム空調の開始から時間経過に伴って徐々に低下させている。
より具体的には、図21のステップS1153に示すように、マイルーム空調の開始から2分間は、上限値IVOmax=8000rpmに決定し、次の1分間は、上限値IVOmax=6000rpmに決定し、さらに、次の1分間は、上限値IVOmax=5000rpmに決定する。これ以降は、上限値IVOmax=4000rpmに決定する。
一方、ステップS113にて、マイルーム空調としての作動ではないと判定された際には、ステップS115へ進み、上限値IVOmax=10000rpmに決定し、ステップS116へ進む。ステップS116、S117、S118、S119における制御処理は、第1実施形態と同様である。また、その他の車両用空調装置1の構成および作動は、第1実施形態と同様である。
本実施形態では、制御ステップS1153にて説明したように、マイルーム空調の開始から時間経過に伴って、圧縮機11の回転数(冷媒吐出能力)の上限値を徐々に低下させるので、電動式構成機器のうち比較的騒音レベルの高い圧縮機11によって生じる騒音を、時間経過に伴って低減することができる。従って、第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第6実施形態)
上述の各実施形態では、冷房モード、暖房モード、第1除湿モードおよび第2除湿モードの冷媒回路を切替可能に構成された冷凍サイクル10を採用した例を説明したが、本実施形態では、図22に示すように、冷媒回路の切替機能を有していない冷凍サイクル10を採用している。なお、図22では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。
具体的には、本実施形態の冷凍サイクル10は、圧縮機11、室外熱交換器16、温度式膨張弁27、室内蒸発器26をこの順で環状に接続したもので、送風機車室内へ送風される送風空気を冷却する機能を果たす。つまり、上述の各実施形態における冷房モードを実現可能に構成されている。
従って、本実施形態の冷凍サイクル10では、冷媒回路切替手段である各電磁弁13〜24は廃止されている。さらに、圧縮機11の冷媒吸入口に接続されたアキュムレータ29を廃止して、室外熱交換器16流出冷媒の気液を分離して余剰冷媒を蓄える高圧側気液分離器であるレシーバ29aを設けている。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
さらに、本実施形態の作動は、基本的に第1実施形態の図7に示す制御フローに基づいて実行されるが、本実施形態では、冷媒回路切替手段である各電磁弁13〜24が廃止されているので、ステップS6、S16等の冷媒回路の切り替えに関する制御は廃止されている。また、例えば、第1実施形態の図11のS112等の冷房モード以外の運転モードに関する制御も廃止されている。
さらに、例えば、第1実施形態の図11の制御ステップS116等に示す、運転モードが冷房モードであるか否かの判定は実施されない。具体的には、図11の制御ステップS116等は廃止してもよいし、ステップS116の判定時に、常時、冷房モードであると判定されるようにすればよい。
従って、本実施形態のように、送風機車室内へ送風される送風空気を冷却する冷房モードを実現する機能に特化された冷凍サイクル10を採用する車両用空調装置1であっても、上述の各実施形態に記載された制御態様を適用することで、上述の各実施形態に記載された効果を得ることができる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の各実施形態では、温度調整手段として、蒸気圧縮式の冷凍サイクル10および冷却水回路40を採用した例を説明したが、温度調整手段はこれに限定されない。つまり、車両用空調装置1において、車室内へ送風される空気の温度調整を行う構成であれば、温度調整手段として採用することができる。
例えば、温度調整手段として、乗員が着座するシートに設けられた吹出穴から空調されたシート空調用の空気を送風するシート空調装置を採用することもできる。この場合は、シート空調用の送風機が電動式構成機器となる。
また、上述の実施形態に開示されたPTCヒータ37は、作動時に騒音を発生させるものではないが、マイルーム空調時に、マイルーム空調以外の時よりも加熱能力が低下するように制御することで、バッテリ81の過放電を抑制して、バッテリの寿命低下を抑制できる。
(2)上述の実施形態では、外部電源から供給される電力によって車室内の空調を実行する運転モードとして、外部電源からバッテリ81への充電中に乗員が車室内で過ごす際のマイルーム空調について説明したが、各実施形態で説明した制御を外部電源からバッテリ81への充電中に実行されるプレ空調時に適用してもよい。
(3)上述の第1〜第5実施形態では、冷媒回路を切り替えることによって車室内へ送風される送風空気を加熱あるいは冷却する冷凍サイクル10を採用し、第6実施形態では、送風空気を冷却する冷凍サイクル10を採用した例を説明したが、もちろん、圧縮機11吐出冷媒を放熱させる放熱器を室内熱交換器として、冷媒を蒸発させる蒸発器を室外熱交換器として送風空気を加熱するヒートポンプサイクルを採用してもよい。
(4)上述の実施形態では、本発明の車両用空調装置1を、プラグインハイブリッド車両の車両走行用の駆動力について詳細を述べていないが、本発明の車両用空調装置1は、エンジンEGおよび走行用電動モータの双方から直接駆動力を得て走行可能な、いわゆるパラレル型のハイブリッド車両に適用してもよいし、エンジンEGを発電機80の駆動源として用い、発電された電力をバッテリ81に蓄え、さらに、バッテリ81に蓄えられた電力を供給されることによって作動する走行用電動モータから駆動力を得て走行する、いわゆるシリアル型のハイブリッド車両に適用してもよい。
また、本発明の車両用空調装置1を、エンジンEGを備えることなく車両走行用の駆動力を走行用電動モータのみから得る電気自動車に適用してもよい。