JP5009457B2 - ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents

ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、初期弾性率の低下やムーニー・スコーチ時間の短縮がなく、熱硬化抑制性に優れ、熱履歴による硬化を抑制でき、空気入りタイヤに特に好適なゴム組成物、及び、該ゴム組成物を用い、走行初期から末期まで操縦安定性(以下「操縦性」ということがある)と振動乗り心地性(以下「乗り心地性」ということがある)とに優れた空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車の高馬力化、高機能化、高寿命化等に伴い、該自動車の空気入りタイヤにおいては、前記操縦性と前記乗り心地性とを高度に両立し、走行中期から末期に至るまでこれらの性能を維持することが求められている。バイアスタイヤからラジアルタイヤへと変遷した乗用車における空気入りタイヤにおいては、偏平化の発展に伴い、前記操縦性は大きく向上したものの、前記乗り心地性は必ずしも十分に改良されていないという問題がある。このため、該ラジアルタイヤにおいて、これらの性能を高度に両立させることが特に要請されている。
【0003】
前記空気入りタイヤにおけるトレッドに用いるゴム組成物は、前記操縦性及び前記乗り心地性に大きく影響する。これらの性能は、該ゴム組成物における、ヒステリシスロス、粘弾性、モジュラス、ハードネス、ポアソン比、これらの温度依存性等により、大きく変化することが知られている。しかし、その詳細は不明であり、該ゴム組成物に含まれる、ポリマー、軟化剤、加硫剤、加硫促進剤等の材料の各々による及び組合せによる相乗効果のメカニズムも不明である。
【0004】
一方、前記トレッドに用いるゴム組成物が路面の凹凸により変形する際のエネルギーロスが大きくなる程、該ゴム組成物と該路面との摩擦係数が増大し、前記操縦性が良化することが知られている。また、前記エネルギーロスが大きくなる程、ダンパーのように前記ゴム組成物が前記路面の凹凸からの衝撃を吸収し易く、前記乗り心地性が良化することが知られている。そして、前記ゴム組成物における前記エネルギーロスを大きくさせる目的で、前記ゴム組成物に、スチレンの凝集エネルギーを利用し得るスチレン・ブタジエンゴム(SBR)や芳香族系軟化剤を用いることが知られている。
【0005】
前記エネルギーロスを大きくさせたゴム組成物をトレッドに用いた空気入りタイヤにおいては、走行により該ゴム組成物におけるエネルギー吸収力が低下し、前記操縦性と前記乗り心地性とが悪化するという問題がある。前記エネルギー吸収力の低下は、走行中に前記ゴム組成物が硬化することに起因すると考えられている。
【0006】
このため、前記操縦性と前記乗り心地性とを高度に両立するには、走行に伴う前記ゴム組成物の硬化を抑制することが必要である。
【0007】
空気入りタイヤのトレッドに用いられるゴム組成物は、一般に、硫黄によって架橋されている。しかし、該硫黄により架橋されたゴム組成物においては、使用初期では比較的長いポリスルフィドで架橋された架橋鎖が存在しているが、使用による熱履歴の増加に伴い、架橋鎖が再編成され、前記ポリスルフィドはジスルフィド、モノスルフィド等のより短い架橋鎖に変化すると共に架橋密度が増加し、徐々に硬化していくという問題がある。
【0008】
また、前記ゴム組成物には、一般に、架橋剤としての前記硫黄の外に、加硫促進剤、亜鉛華、ステアリン酸等が添加されている。前記加硫促進剤は、ステアリン酸の助けを借りて、該ゴム組成物の配合時及び/又は加硫時に前記亜鉛華と反応し、ポリスルフィドによる架橋反応を実質的に促進する促進剤としての機能を有する亜鉛塩を生成する。しかし、加硫後に前記亜鉛塩が未反応の状態で残存するゴム組成物においては、該亜鉛塩が、架橋鎖として存在するポリスルフィド或いは未反応のフリーサルファによる架橋をも促進させ、徐々に硬化していくという問題がある。
【0009】
特開平10−77365号公報には、これらの問題を解決すべく、加硫促進剤、ビス(4−メチルベンゾチアゾリル−2)−ジスルフィド等の促進剤をSBR系ゴムのアロマ配合に適用することが開示されている。この場合、確かにゴム組成物の熱硬化抑制性が良化され、空気入りタイヤの走行末期における前記操縦性と前記乗心地性とが良化されるものの、ここで用いる促進剤は、高価であり合成も困難であり、汎用性に劣るという実用上の問題がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、初期弾性率の低下やムーニー・スコーチ時間の短縮がなく、熱硬化抑制性に優れ、熱履歴による硬化を抑制でき、空気入りタイヤに特に好適なゴム組成物、及び、該ゴム組成物を用い、走行初期から末期まで操縦安定性(以下「操縦性」ということがある)と振動乗り心地性(以下「乗り心地性」ということがある)とに優れた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らが鋭意検討した結果、以下の知見を得た
即ち、従来のゴム組成物においては、亜鉛華が、任意量添加した硫黄及び加硫促進剤に対し、加硫直後に最大の弾性率を得るための必要量以上に配合されていた。しかし、この従来のゴム組成物の場合、前記硫黄及び前記加硫促進剤の量に対して必要量以上に亜鉛元素が添加されているため、加硫後においても促進剤との反応により生成した亜鉛塩及び未反応の亜鉛華が多量に残存し、該ゴム組成物の使用期間中の硬化反応に悪影響を及ぼす。したがって、該ゴム組成物に添加される亜鉛元素の総量を制御することにより、該ゴム組成物の使用期間中の硬化反応を効果的に抑制することかできる、という知見である。更に、前記ゴム組成物に添加される亜鉛元素の総量を制御しても、主たる亜鉛源を亜鉛華とした場合には未反応のまま加硫ゴムに僅かに亜鉛華が残存してしまい、該亜鉛華と前記促進剤とが使用期間中に反応して亜鉛塩を生成し、前記硬化反応の抑制に悪影響を及ぼす上、初期弾性率の低下やムーニー・スコーチ時間の短縮等が生じてしまう、という知見である。
【0012】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> 少なくとも一種のジエン系ゴムからなるゴム成分100重量部と、加硫促進剤0.5〜5.0重量部と、硫黄1.0〜3.5重量部とを含んでなり、該加硫促進剤が、ジチオリン酸亜鉛類、ジチオリン酸ポリスルフィド類、ジチオカルバミン酸亜鉛類及びチウラム類からなる群より選択される少なくとも1種と、ベンゾチアゾール類、ベンゾチアゾリルスルフェンアミド類及びベンゾチアゾリルスルフェンイミド類からなる群より選択される少なくとも1種と、グアニジン類より選択される少なくとも1種と、の併用であり、亜鉛元素を総重量として0.65〜1.80重量部含有し、該亜鉛元素の亜鉛源として複合亜鉛華を含有するゴム組成物である。
<2> 複合亜鉛華が、表面に酸化亜鉛の層を有する前記<1>に記載のゴム組成物である。
<3> 複合亜鉛華が、内部に無機金属塩を含有する前記<2>に記載のゴム組成物である。
<4> 前記<1>から<3>のいずれか1つに記載のゴム組成物を用いた空気入りタイヤである。
<5> ゴム組成物を少なくともトレッドに用いた前記<4>に記載の空気入りタイヤである。
【0013】
本発明のゴム組成物は、少なくとも一種のジエン系ゴムからなるゴム成分100重量部と、加硫促進剤0.5〜5.0重量部と、硫黄1.0〜3.5重量部とを含んでなり、該加硫促進剤が、ジチオリン酸亜鉛類、ジチオリン酸ポリスルフィド類、ジチオカルバミン酸亜鉛類及びチウラム類からなる群より選択される少なくとも1種と、ベンゾチアゾール類、ベンゾチアゾリルスルフェンアミド類及びベンゾチアゾリルスルフェンイミド類からなる群より選択される少なくとも1種と、グアニジン類より選択される少なくとも1種と、の併用であり、亜鉛元素を総重量として0.65〜1.80重量部含有する。亜鉛元素の総量を低レベルに制御することにより、加硫後に該ゴム組成物中に残存する亜鉛塩及び未反応の亜鉛華の量が極力抑えられる。その結果、該ゴム組成物の使用期間中の硬化反応が効果的に抑制される。また、本発明のゴム組成物においては、前記亜鉛元素の亜鉛源として複合亜鉛華を含有する。該複合亜鉛華は、配合時、加硫時等に微細化し、該ゴム組成物中に広く分散される。その結果、加硫後の該ゴム組成物においては、未反応の亜鉛華が残存せず、亜鉛華と前記促進剤とが使用期間中に反応して亜鉛塩を生成することがなく、前記硬化反応の抑制に悪影響を及ぼすことがない上、初期弾性率の低下やムーニー・スコーチ時間の短縮等が生ずることがない。
【0014】
本発明の空気入りタイヤは、前記本発明のゴム組成物を用いているので、該空気入りタイヤにおいては、走行末期に至るまで、該ゴム組成物の硬化に起因する前記操縦性及び前記乗り心地性の劣化が少なく、両性能が高いレベルで両立される。
【0015】
【発明の実施の形態】
(ゴム組成物)
本発明のゴム組成物においては、亜鉛元素を総重量として、0.65〜1.80重量部含有することが必要であり、0.65〜1.60重量部含有するのが好ましく、0.80〜1.45重量部含有するのがより好ましい。
なお、本発明においては、前記亜鉛元素の総重量の数値範囲として、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述する実施例のいずれかの数値を下限とし、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述する実施例のいずれかの数値を上限とする数値範囲も好ましい。
前記亜鉛元素の総重量が0.65重量部未満であると、加硫ゴムの劣化前、即ち初期の弾性率の低下が観られ、一方、前記亜鉛元素の総重量が1.80重量部を超えると、残存する亜鉛元素の影響により熱硬化抑制性に劣り、いずれも好ましくない。
【0016】
なお、前記亜鉛元素の総重量は、亜鉛華、加硫促進剤、その他の添加剤等に含まれる亜鉛化合物中の亜鉛元素の重量を合計して算出することができる。
本発明のゴム組成物において、前記亜鉛元素の総重量を指標にしたのは、該ゴム組成物における前記硬化の問題は、該ゴム組成物における全亜鉛元素の量に依存するからである。
【0017】
本発明のゴム組成物においては、前記亜鉛元素の亜鉛源として、少なくとも複合亜鉛華を含有することが必要であるが、その外に、前記加硫促進剤として用いる亜鉛塩や他の亜鉛元素を含むイオン化合物等を含有していてもよい。
【0018】
前記複合亜鉛華としては、配合乃至加硫時に微細化し、前記ゴム組成物中に広く分散し得る形態を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば表面に酸化亜鉛の層を有するものなどが好適に挙げられる。
なお、前記複合体亜鉛華として、特開昭49−29300号公報、特開昭60−264324号公報等に記載されたものなどが好適に挙げられる。
【0019】
前記複合亜鉛華が、表面に酸化亜鉛(亜鉛華)の層を有するものである場合、コア成分として内部に無機金属塩を含有するのが好ましい。
前記無機金属塩としては、ゴム業界で無機充填材として公知のものの中から適宜選択することができ、例えば炭酸カルシウム、硫酸カルシウムと炭酸カルシウムとの併用などが挙げられるが、本発明においては何らこれらに限定されない。
【0020】
前記複合亜鉛華における亜鉛華と他の成分との比率、前記複合体亜鉛華における前記表面の亜鉛華の層の厚みなどは、目的に応じて適宜選択することができ、これらを適宜選択することにより、該複合亜鉛華の特性を任意に制御することができる。
前記複合体亜鉛華の粒径としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、大きくなると該ゴム組成物における耐摩耗性等が劣化することことがあるので、小さい方が好ましい。
【0021】
前記亜鉛元素の亜鉛源としては、前記複合体亜鉛華の外は特に制限はないが、例えば、酸化物(例えば亜鉛華)、加硫促進剤の亜鉛塩(例えば、ジチオリン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、キサントゲン酸亜鉛等)、オキソ酸塩(例えばステアリン酸亜鉛、炭酸亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛等)、水酸化物、ハロゲン化物、等が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、これらの中でも、他物性への影響が小さい点で、酸化物及び加硫促進剤としての亜鉛塩が好ましく、酸化物としての亜鉛華、炭酸亜鉛、ジチオリン酸亜鉛類、ジチオカルバミン酸亜鉛類、等が特に好ましい。
【0022】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分と、加硫促進剤と、硫黄とを含んでなる。
【0023】
前記ゴム成分としては、少なくとも一種のジエン系ゴムからなる。
前記ジエン系ゴムとしては、天然ゴム、及び、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム等の合成ゴムが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、これらの中でも、スチレン−ブタジエンゴムが好ましく、該スチレン−ブタジエンゴムを50重量%以上を含むと、該ゴム組成物を空気入りタイヤに用いた場合の操縦性の点で好ましい。
【0024】
なお、前記ゴム成分には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記ジエン系ゴム以外のゴム成分、例えば、イソモノオレフィンとp−アルキルスチレンとの共重合体をハロゲン化してなる変性共重合体を20〜30重量%含有するゴムなどを含んでいてもよい。
【0026】
本発明においては、前記加硫促進剤として、ジチオリン酸亜鉛類、ジチオリン酸ポリスルフィド類、ジチオカルバミン酸亜鉛類及びチウラム類からなる群から選択される少なくとも1種と、ベンゾチアゾール類、ベンゾチアゾリルスルフェンアミド類及びベンゾチアゾリルスルフェンイミド類からなる群から選択される少なくとも1種とを併用するより高い硬化抑制性が得られる点で、ジチオリン酸亜鉛類及びチウラム類からなる群から選択される少なくとも1種と、ベンゾチアゾール類及びベンゾチアゾリルスルフェンアミド類から選択される少なくとも1種と、グアニジン類から選択される少なくとも1種とを併用するのがより好ましい。
【0027】
前記ジチオリン酸亜鉛類としては、例えば、O,O’−ジイソプロピルジチオリン酸亜鉛、O,O’−ジ−n−ブチルジチオリン酸亜鉛、O,O’−ジ−イソブチルジチオリン酸亜鉛、等が好適に挙げられる。
前記ジチオリン酸ポリスルフィド類としては、例えば、ビス(O,O’−ジ−イソプロピルチオホスホリル)ジスルフィド、ビス(O,O’−ジ−イソブチルチオホスホリル)ジスルフィド、等が好適に挙げられる。
前記ジチオカルバミン酸亜鉛類としては、例えば、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、N−ペンタメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、等が好適に挙げられる。
前記チウラム類としては、例えば、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、等が挙げられる。
【0028】
前記ベンゾチアゾール類、前記ベンゾチアゾリルスルフェンアミド類及び前記ベンゾチアゾリルスルフェンイミド類としては、例えば、ジベンゾチアジルジスルフィド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−tert−ブチル−ジ(2−ベンゾチアゾチアゾリルスルフェン)イミド、ビス(4−メチルベンゾチアゾリル−2)−ジスルフィド、等が好適に挙げられる。
【0029】
前記加硫促進剤の併用の具体例としては、ジベンゾチアジルジスルフィド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−tert−ブチル−ジ(2−ベンゾチアゾリルスルフェン)イミド、及びビス(4−メチルベンゾチアゾリル−2)−ジスルフィドからなる群より選択される少なくとも1種と、O,O’−ジイソブチルジチオリン酸亜鉛、及びO,O’−ジイソプロピルジチオリン酸亜鉛、テトラベンジルチウラムジスルフィド、及びテトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィドからなる群より選択される少なくとも1種と、1,3−ジフェニルグアニジンとの併用が好ましい。
【0030】
前記加硫促進剤の前記ゴム組成物における含有量としては、前記ゴム成分100重量部に対し、0.5〜5.0重量部であることが必要であり、0.5〜3.0重量部が好ましい。
前記加硫促進剤の含有量が、0.5重量部未満であると、該ゴム組成物を空気入りタイヤに用いた場合、操縦性及び乗り心地性の向上効果が十分でなく、5.0重量部を超えもそれに見合う効果が得られず、経済的にも不利であり、また、前記亜鉛元素の総重量の制御も容易でない。
【0031】
前記硫黄の前記ゴム組成物における含有量としては、前記ゴム成分100重量部に対し、1.0〜3.5重量部含有することが必要である。
前記硫黄の含有量が、1.0重量部未満であると、加硫ゴムの破壊強度、耐摩耗性が低下する点で好ましくなく、3.5重量部を超えると、ゴム弾性が損なわれる虞がある点で好ましくない。
【0032】
本発明のゴム組成物は、前記各成分の外に、ゴム組成物の添加剤として通常用いられるカーボンブラック、シリカ、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、軟化剤、シランカップリング剤等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有していてもよい。
【0033】
本発明のゴム組成物は、常法により製造することができ、例えば、前記各成分を適宜、混練りし、熱入れし、押出等することにより得られる。
【0034】
前記混練りの条件としては、特に制限はなく、混練り装置への投入体積、ローターの回転速度、ラム圧等、混練り温度、混練り時間、混練り装置の種類等の諸条件について目的に応じて適宜選択することができる。
前記混練り装置としては、例えば、通常ゴム組成物の混練りに用いるバンバリーミキサー、インターミックス、ニーダー、等が挙げられる。
【0035】
前記熱入れの条件としては、特に制限はなく、熱入れ温度、熱入れ時間、熱入れ装置等の諸条件について目的に応じて適宜選択することができる。
前記熱入れ装置としては、例えば、通常ゴム組成物の熱入れに用いるロール機等が挙げられる。
【0036】
前記押出の条件としては、特に制限はなく、押出時間、押出速度、押出装置、押出温度等の諸条件について目的に応じて適宜選択することができる。
前記押出装置としては、例えば、通常タイヤ用ゴム組成物の押出に用いる押出機等が挙げられる。前記押出温度は、適宜決定することができる。
【0037】
前記押出の際、前記ゴム組成物の流動性をコントロールする目的で、アロマ系オイル、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、エステル系オイル等の可塑剤、液状ポリイソプレンゴム、液状ポリブタジエンゴム等の液状ポリマーなどの加工性改良剤を前記ゴム組成物に適宜添加することができる。この場合、該ゴム組成物の加硫前の粘度を低下させ、その流動性を高めることができ、極めて良好に押出を行うことができる。
【0038】
本発明のゴム組成物は、各種乗り物のタイヤトレッドに好適に使用することができるが、以下の本発明の空気入りタイヤに好適に使用することができる。
【0039】
(空気入りタイヤ)
本発明の空気入りタイヤは、前記本発明のゴム組成物を少なくとも用いてなり、好ましくは少なくともトレッドに用いてなる。
前記空気入りタイヤにおいて、前記トレッド以外に前記本発明のゴム組成物が適用される部位としては、特に制限はないが、例えば、カーカスコーティングゴム、ベルトコーティングゴム、サイドゴム、ビードフィラー、ゴムチェーファーゴム、インナーライナーゴム等が挙げられる。
本発明の空気入りタイヤは、前記本発明のゴム組成物を用いること以外は、特に制限はなく、公知の空気入りタイヤの構成をそのまま採用することができる。
【0040】
前記空気入りタイヤの一例としては、1対のビード部、該ビード部にトロイド状をなして連なるカーカス、該カーカスのクラウン部をたが締めするベルト及びトレッドを有してなる空気入りタイヤなどが好適に挙げられる。
本発明の空気入りタイヤは、ラジアル構造を有していてもよいし、バイアス構造を有していてもよい。
【0041】
前記トレッドは、一般に、直接路面に接地する上層のキャップ部と、このキャップ部の空気入りタイヤの内側に隣接して配置される下層のベース部とから構成されており、いわゆるキャップ・ベース構造を有する。
本発明においては、該キャップ・ベース構造の一部又は全部が前記本発明のゴム組成物で形成されていてもよいが、少なくとも前記キャップ部が前記本発明のゴム組成物で形成されているのが好ましい。
【0042】
本発明の空気入りタイヤは、その製造方法につき特に制限はないが、例えば、以下のようにして製造することができる。即ち、まず、前記本発明のゴム組成物を調製し、該ゴム組成物を、生空気入りタイヤケースのクラウン部に予め貼り付けられた未加硫のベース部の上に貼り付ける。そして、所定のモールドで所定温度、所定圧力の下で加硫成形することにより製造することができる。
【0043】
本発明の空気入りタイヤは、いわゆる乗用車用のみならず、トラック・バス用等の各種の乗物にも好適に適用することができる。
本発明の空気入りタイヤは、前記本発明のゴム組成物を用いているため、熱履歴による経時的な硬化が効果的に抑制され、特に走行性に大きな影響を及ぼすトレッドに前記ゴム組成物を用いた場合、操縦性及び乗り心地性を高いレベルで両立し、その経時的な持続性に優れる。
【0044】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0045】
(実施例1〜3及び比較例1〜11)
−ゴム組成物の調製及び評価−
カーボンブラックを配合した表1に示すゴム成分に対し、500mlのラボプラストミル及び3インチロールを用いて混練り配合を行い、実施例1〜3及び比較例1〜11の各ゴム組成物(未加硫ゴム)を調製した。これらのゴム組成物について、下記(1)ムーニー・スコーチ試験を行い、また、これらの各ゴム組成物の加硫後における、300%伸張時弾性率、老化前後の測定値の変化率を、下記(2)引張試験及び(3)空気加熱老化試験により測定した。結果を表2に示した。
【0046】
(1)ムーニー・スコーチ試験
JIS K6300−1974に基づいて行った。
ムーニー・スコーチ試験は130℃で測定した。なお、結果は、比較例1の結果を100として指数表示した。
ムーニー・スコーチ試験におけるMST(ムーニー・スコーチタイム、指数表示)は、押出加工及びカレンダー加工などゴムの成形加工時のゴムの焦げ易さを評価するものであり、数値が低くなる程、作業性が悪化することを意味する。
【0047】
(2)引張試験
145℃で40分間加硫後JIS K6301−1975に基づいて引張試験を行い、300%伸長時の弾性率(表2において「M300」と記載する)を測定した。
【0048】
(3)空気加熱老化試験
ギヤー式老化試験機で試験温度100±1℃で表2に記載の所定時間老化させ、室温で5時間以上放置した後の老化試験後におけるゴム組成物のサンプルを、配合直後で老化試験前におけるゴム組成物のサンプル(「老化前」と記載する)と同様に前記(2)引張試験を行った。また、老化試験前後の測定値の変化率を下式により算出した。これらの結果を表2に示した。
変化率=(老化後のゴムの実測値/老化前の配合ゴムの実測値)×100
【0049】
なお、全てのデータは、亜鉛華を3.5重量部配合した比較例1のゴム組成物の実測値を100として指数表示したものである。
【0050】
【表1】
Figure 0005009457
【0051】
【表2】
Figure 0005009457
【0052】
表2の結果から明らかなように、実施例1及び2のゴム組成物は、比較例1及び6のゴム組成物に比べて、老化後の変化率が顕著に改善され、熱硬化抑制性に優れていた。また、単に亜鉛元素の総重量を最適化しても、比較例2、7及び9のゴム組成物に比べて実施例1、2及び3のゴム組成物では、ムーニー・スコーチ時間を短縮することなく、老化前の弾性率を低下させず、老化後の変化率が改良されていた。一方、複合体亜鉛華を使用しても亜鉛元素の総重量が所定の範囲内にないと、比較例4、5、10及び11のゴム組成物のように、老化後の変化率が大きく、改良効果が十分ではない。
【0053】
−空気入りタイヤの作製並びに操縦性及び乗り心地性の評価−
前記ゴム組成物を用いた空気入りタイヤについて、操縦性及び乗り心地性を下記の方法により評価した。
表1に示す配合に従って、混練配合を行った実施例2及び比較例6及び7のゴム組成物をトレッドとして用いて、185/70R14サイズの一層トレッドの空気入りタイヤを試作し、該空気入りタイヤの性能を評価した。
【0054】
(1)操縦性
テストコースにて、FF4ドアセダンを用いて、乾燥アスファルト路面にて、実車走行を行い、駆動性、制動性、ハンドル応答性、操舵時のコントロール性をテストドライバーが綜合評価して、新品タイヤの操縦性の評価とした。さらに、同一のタイヤを一般市場を2万km走行させ、走行後の操縦性の評価とした。
【0055】
(2)乗り心地性
テストコースにて、FF4ドアセダンを用いて、乾燥アスファルト路面にて、実車走行を行い、テストドライバーのフィーリングにより綜合評価した。これも新品タイヤ及び2万km走行後のタイヤにて評価を行った。
【0056】
なお、前記操縦性、前記乗り心地性とも、実施例2は、コントロールとして挙げた比較例6を標準として、コントロールとの差を±の数値で示した。+の数値が大きい程、性能が優れていることを意味する。
なお、評価結果は、実施例2の空気入りタイヤと比較例6のコントロール用空気入りタイヤとの差を「+」、「−」の数値で表示した。「+」の数値が大きい程、性能が優れていることを意味する。
±0:テストドライバーがコントロール用空気入りタイヤとの性能差を検知できない状態
+1:テストドライバーがコントロール用空気入りタイヤとの性能差を有意に検知できる程度に性能が優れている状態
+2:テストドライバーがコントロール用空気入りタイヤとの性能差を明確に検知できる程度に性能が優れている状態
結果を表3に示した。
【0057】
【表3】
Figure 0005009457
【0058】
本発明のゴム組成物をトレッドゴムとして用いた実施例2の空気入りタイヤは、走行前の操縦性、乗り心地性も良好であり、走行末期の操縦性、乗り心地性を高度に維持することができることが明らかとなった。
【0059】
【発明の効果】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、初期弾性率の低下やムーニー・スコーチ時間の短縮がなく、熱硬化抑制性に優れ、熱履歴による硬化を抑制でき、空気入りタイヤに特に好適なゴム組成物、及び、該ゴム組成物を用い、走行初期から末期まで操縦安定性(以下「操縦性」ということがある)と振動乗り心地性(以下「乗り心地性」ということがある)とに優れた空気入りタイヤを提供することができる。

Claims (5)

  1. 少なくとも一種のジエン系ゴムからなるゴム成分100重量部と、加硫促進剤0.5〜5.0重量部と、硫黄1.0〜3.5重量部とを含んでなり、該加硫促進剤が、ジチオリン酸亜鉛類、ジチオリン酸ポリスルフィド類、ジチオカルバミン酸亜鉛類及びチウラム類からなる群より選択される少なくとも1種と、ベンゾチアゾール類、ベンゾチアゾリルスルフェンアミド類及びベンゾチアゾリルスルフェンイミド類からなる群より選択される少なくとも1種と、グアニジン類より選択される少なくとも1種と、の併用であり、亜鉛元素を総重量として0.65〜1.80重量部含有し、該亜鉛元素の亜鉛源として複合亜鉛華を含有するゴム組成物。
  2. 複合亜鉛華が、表面に酸化亜鉛の層を有する請求項1に記載のゴム組成物。
  3. 複合亜鉛華が、内部に無機金属塩を含有する請求項2に記載のゴム組成物。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。
  5. ゴム組成物を少なくともトレッドに用いた請求項4に記載の空気入りタイヤ。
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