JP5007455B2 - 拡散板のエージング方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザ装置から出射したレーザ光の出力を測定するエネルギー測定装置、及びエネルギー測定装置に用いられる拡散板のエージング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、フォトダイオードのような光検出器を用いて、エキシマレーザ装置やフッ素分子レーザ装置から出射したレーザ光のパルス出力を測定するエネルギー測定装置が、例えば特開2000−171303号公報に知られている。
図7は、同公報に開示されたエネルギー測定装置を表しており、以下図7に基づいて従来技術を説明する。
【0003】
図7において、レーザ装置11から図7中左方に出射したレーザ光21は、ビームスプリッタ22によって一部がサンプル光41として反射され、図7中下方のモニタモジュール38に入射する。ビームスプリッタ22を透過したレーザ光21は、例えば図示しない露光機に入射して、露光用光源となる。
モニタモジュール38の内部には、サンプル光41のパルス出力を測定するエネルギー測定装置35と、波長特性を測定する波長測定装置39とが配置されている。
エネルギー測定装置35は、例えばフォトダイオード等の光検出器37を備えている。光検出器37は、サンプル光41のパルス出力に応じた電圧又は電流を出力し、図示しないレーザコントローラが、これに基づいてレーザ光21のパルス出力を演算する。
また、波長測定装置39は、サンプル光41をモニタエタロン40に照射し、生成された干渉縞(図示せず)をラインセンサ等のパターン検出器48で測定し、サンプル光41の中心波長やスペクトル線幅等の波長特性を測定する。
【0004】
上記のようなエネルギー測定装置35において、光検出器37の前方に、サンプル光41を拡散する拡散板36を配置する技術が知られており、例えば特開2000−304657号公報に示されている。これにより、光検出器37の感度分布の不均一や、光検出器37に入射するサンプル光41の強度分布の不均一などによる計測誤差を解消し、パルス出力の測定を正確に行なうようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来技術には、次に述べるような問題がある。
即ち、光検出の前方に置かれた拡散板36の透過率は、紫外線光であるサンプル光41に長期間にわたって照射されるうち、次第に変化してしまうという問題がある。
図8に、拡散板36の透過率の変化をグラフで示す。横軸が、サンプル光41の照射されたパルス数、縦軸が透過率である。図8に示すように、拡散板36の透過率は、初めて使用されたときから次第に増大していく。そして、ある透過率で飽和する。
このように、拡散板36の透過率が変動するため、サンプル光41のパルス出力が変化しなくても、徐々にパルス出力が増加しているように検出されてしまい、パルス出力の測定が不正確となる。
【0006】
これを防止するためには、例えばカロリーメータと呼ばれるパルス出力検出器によって、レーザ光21のパルス出力を直接検出し、その検出値に基づいて、光検出器37の出力を校正するという手段がある。しかしながら、拡散板36の透過率は、長期にわたって徐々に変動するため、一定時間が経過するたびに校正を行なう必要があり、手間がかかる。
また、校正のたびにレーザ装置11を停止させる必要があるので、長期間にわたって連続的にレーザ装置11を運転することが困難となり、露光機等の稼働率が低下してしまう。
【0007】
本発明は、上記の問題に着目してなされたものであり、常に安定にレーザ光の出力を検出可能な紫外線レーザ装置用エネルギー測定装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
上記の目的を達成するために、本発明は、
光を透過させて拡散させる拡散板の製造方法において、
フッ化カルシウム又は合成石英の基板の表面をサンドブラスト或いはフッ素処理して製造した拡散板に紫外線光を予め照射し、拡散板の紫外線光の透過率の変化を飽和させている。
即ち、紫外線光を予め照射することにより、拡散板の透過率が変化する。これにより、機器に組み込む際には、紫外線光を照射されても、透過率が変化しない状態になっている。従って、使用中に透過率の変化がなく、校正をたびたび行なうような必要がない。
【0009】
また、本発明によれば、
レーザ光の出力を検出する光検出器と、
光検出器の前方に配置され、光検出器に入射するレーザ光を拡散させる拡散板とを備えたレーザ装置用エネルギー測定装置において、
前記拡散板を、前記製造方法を用いて製造された拡散板としている。
これにより、拡散板の透過率が変わらないので、安定で誤差の少ない出力測定が可能である。
【0010】
また、本発明によれば、
前記エネルギー測定装置が、紫外線レーザ光をパルス発振するエキシマレーザ装置又はフッ素分子レーザ装置の出力を測定するエネルギー測定装置である。
エキシマレーザ装置又はフッ素分子レーザ装置においては、レーザ光の波長が紫外線光であり、しかもその強度が高く、これを照射しているうちに、拡散板の透過率が変化しやすい。従って、予め紫外線光を当てて拡散板の透過率変化を飽和させることにより、安定な出力測定が可能である。
さらに、これらのレーザ装置は、半導体の露光を行なうための光源として用いられることが多い。このようにして出力測定の誤差を減少させることにより、精密な露光を好適に行なうことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照しながら、本発明に係る実施形態を詳細に説明する。
まず、第1実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係るKrFエキシマレーザ装置(以下エキシマレーザ装置)の構成図を示している。図1において、エキシマレーザ装置11は、レーザガスを封入し、その内部に設けられた図示しない放電電極間で放電を起こしてレーザ光21を発生させるレーザチャンバ12と、レーザチャンバ12から発生したレーザ光21の波長を狭帯域化する狭帯域化ユニット30とを備えている。
レーザチャンバ12内には、レーザガスとして、例えばフッ素(F2)、クリプトン(Kr)及びネオン(Ne)が、所定の圧力比で封入されている。尚、レーザガスとしては、ネオンの代わりにヘリウムでもよく、ネオンとヘリウムの混合ガスでもよい。
レーザチャンバ12内の所定位置には、図示しない1組の放電電極が設置されている。この放電電極間に、高圧電源23から高電圧を印加することによって主放電を起こし、約248nmの中心波長を有するレーザ光21を発振させている。
尚、一般にこのようなエキシマレーザ装置11において、高電圧はパルス状に印加され、レーザ光21はパルス発振する。
【0012】
発振したレーザ光21は、レーザチャンバ12の後端部(図1中左端部)に設けられたウィンドウ19を透過して、レーザチャンバ12の外部後方(図1中左方)に設けられた狭帯域化ユニット30に入射する。
狭帯域化ユニット30は、例えば2個のプリズム32,32と、レーザ光21の発振波長を選択するグレーティング33とを備えている。プリズム32,32によってビーム幅を拡げられたレーザ光21は、グレーティング33に入射して回折され、所定の中心波長とその近傍の波長のレーザ光21のみが、入射光と同じ方向に折り返される。これにより、レーザ光21の波長が狭帯域化される。
【0013】
狭帯域化されたレーザ光21は、ウィンドウ17,19及びレーザチャンバ12を通過し、一部がフロントミラー16を透過して、エキシマレーザ装置11の外部前方(図1中右方)に出射する。出射したレーザ光21の光軸上には、ビームスプリッタ22が設けられており、レーザ光21は一部を図1中下方に反射されてサンプル光41となり、波長特性及びパルス出力を測定するモニタモジュール38に入射する。ビームスプリッタ22を透過したレーザ光21は、露光機25に入射し、露光用光となる。
尚、29は、エキシマレーザ装置11及びモニタモジュール38を制御するレーザコントローラである。
【0014】
図2に、モニタモジュール38の詳細な構成図を示す。モニタモジュール38は、光学部品を内部に配置するモニタボックス50を備えている。モニタボックス50には、窒素やヘリウムなどの低反応性の清浄なパージガスを充填したパージボンベ51が接続され、内部にパージガスを供給し続けている。
図2において、43はサンプル光41を透過するウィンドウ、44はサンプル光41を反射するミラー、45A,45Bはサンプル光41を所定の割合で反射/透過するビームスプリッタである。図2に示すように、モニタモジュール38は、サンプル光41の中心波長及びスペクトル線幅(以下、線幅と言う)を含む波長特性を測定する波長測定装置39と、パルス出力を測定するエネルギー測定装置35とを備えている。
モニタモジュール38に入射したサンプル光41の一部は、ビームスプリッタ45Aで反射され、エネルギー測定装置35に入射する。一方、ビームスプリッタ45Aを透過したサンプル光41は、波長測定装置39に入射する。
【0015】
波長測定装置39は、サンプル光41の波長特性に応じた干渉縞49A,49Bを生成する第1、第2のモニタエタロン40A,40Bを備えている。
波長測定装置39に入射したサンプル光41の半分は、ビームスプリッタ45Bで反射され、拡散板46Aを透過して第1のモニタエタロン40Aに入射し、残りの半分は、ビームスプリッタ45Bを透過し、拡散板46Bを透過して第2のモニタエタロン40Bに入射する。
また、波長測定装置39は、モニタエタロン40A,40Bを透過した光を干渉縞49A,49Bとして投影する投影レンズ47A,47Bと、投影された干渉縞49A,49Bの光強度分布を測定するラインセンサ等のパターン検出器48A,48Bとを備えている。
【0016】
レーザコントローラ29は、パターン検出器48A,48Bの出力に基づいてモニタエタロン40A,40Bで生成された、干渉縞49A,49Bの直径及び明縞の幅を検出する。
第1のモニタエタロン40Aと第2のモニタエタロン40Bとは、ギャップ間隔が異なっており、両方のモニタエタロン40A,40Bで生じた干渉縞49A,49Bの直径を測定することにより、サンプル光41の中心波長を正確に算出することができる。さらに、一方の高分解能のモニタエタロン40Aで生じた干渉縞49Aの明縞の幅を測定することにより、サンプル光41のスペクトル線幅を算出することができる。
【0017】
また、波長測定装置39は、既知で安定な波長の基準光53を発生する基準光源52を備えている。基準光源52としては、レーザ光21に近い波長の基準光53を発生するものがよく、例えば水銀アイソトープランプ等が好適である。
波長測定装置39は、図示しないシャッタによって、レーザ光21の代わりに基準光53をモニタエタロン40A,40Bに入射させ、基準光53によって生じた干渉縞49A,49Bの直径をパターン検出器48A,48Bによって検出する。そして、これをレーザ光21によって生じた干渉縞49A,49Bの直径と比較することにより、波長測定装置39内部の温度や圧力の環境変化による、中心波長の測定誤差を補正する。
【0018】
レーザコントローラ29は、測定に基づき、狭帯域化ユニット30内部の図示しないアクチュエータを駆動してグレーティング33又はプリズム32の角度を変更し、サンプル光41の中心波長を所望の値に制御する。
そして、波長特性が、所定の許容範囲外に外れた場合には、レーザ装置11を停止するとともに、露光機25にその旨を伝える波長異常信号を送信する。
【0019】
エネルギー測定装置35は、サンプル光41の強度分布を均一化させる複数の拡散板36A〜36Dと、拡散板36を透過したサンプル光41のパルスごとのパルス出力を検出する光検出器37とを備えている。光検出器37としては、例えばフォトダイオード等が好適である。
サンプル光41は、拡散板36を通ってから、光検出器37に入射する。これにより、光検出器37の感度分布の不均一や、光検出器37に入射するサンプル光41の強度分布の不均一などによる計測誤差を解消し、パルス出力の測定を正確に行なうようにしている。
尚、拡散板36を複数とするのは、枚数を適宜変更して、サンプル光41の強度が光検出器37のダイナミックレンジ内に入るように、光検出器37に入射するサンプル光41の光量を調整するためである。
【0020】
エネルギー測定装置35に入射したサンプル光41は、拡散板36によって強度分布を均一化される。光検出器37は、入射してきたサンプル光41のパルス出力に比例する電圧(又は電流)を出力する。レーザコントローラ29は、光検出器37の出力信号に基づき、エキシマレーザ装置11から出射したレーザ光21のパルス出力を算出する。
レーザコントローラ29は、この検出値に基づき、高圧電源23に指令信号を出力して放電電極間に印加される高電圧の値を制御することにより、パルス出力を目標値に制御する。これを、エネルギー一定制御と言う。
【0021】
このとき、図8に示すように、光検出器37の前に置かれた拡散板36の透過率が、照射されたパルス出力の量とともに変化するため、レーザ光21のパルス出力を正確に測定できない場合があることは、従来技術の項で説明した。
これを防ぐために、本実施形態では、図3に示すように、拡散板36をエネルギー測定装置35に組み込む前に、拡散板36にエージングレーザ光59を、所定のパルス出力で、所定のパルス数だけ照射する。これをエージングと言う。
【0022】
図3に、拡散板36にエージング光を照射する、エージング装置58の説明図を示す。
図3においてエージング装置58は、エキシマレーザ装置11と同じ波長で、エキシマレーザ装置11よりも強いパルス出力のエージングレーザ光59を発振するエージングレーザ装置54を備えている。これは、例えばエキシマレーザ装置11でもよく、エキシマレーザ装置11と同じレーザガスを用いた、波長を狭帯域化されていないエキシマレーザ装置でもよい。
【0023】
また、エージング装置58は、拡散板36を内部に設置するエージングチャンバ57を備えている。エージングチャンバ57には、窒素やヘリウムなどの低反応性の清浄なパージガスを充填したパージボンベ61と、窒素で希釈した酸素を充填した酸素ボンベ62とが接続されている。酸素ボンベ62は、後述するように、必要に応じて使用する。
エージングチャンバ57には、拡散板36の設置後に、パージボンベ61からパージガスが継続的に供給され続ける。余剰のパージガスは、エージングチャンバ57の図示しない隙間から外部に漏れ出す。これにより、エージングチャンバ57の内部にはパージガスが充満し、常に清浄に保たれている。
図3に示すように、拡散板36近傍にパージガスを供給するための供給口を設けることにより、エージングの際に、拡散板から何らかの物質が発生した場合にも、パージガスの流れによってこれらの物質が、拡散板36から遠ざけられる。従って、これらの物質が拡散板36に再付着するなどの不具合を防止できる。
【0024】
エージングレーザ光59は、図示しない光学系により、強度分布を均一化され、ビーム径を広げられている。エージングレーザ光59は、ウィンドウ55を透過して、エージングチャンバ57の内部に封止された拡散板36に照射される。
このとき、エージングレーザ光59は、拡散板36の前後に配置されたビームスプリッタ56A,56Bでそれぞれ一部を反射され、エージング光検出器60A,60Bにより、拡散板36への照射前後のパルス出力を検出される。後方のビームスプリッタ56Bを透過したエージングレーザ光59は、ダンパ63に吸収される。
そして、エージング光検出器60A,60Bの各検出値の時間的変化を比較することにより、エージングレーザ光59の照射に伴う拡散板36の透過率変化を、モニタリングすることができる。或いはエージング光検出器60Bのみの検出値の時間的変化を追いかけてもよい。
【0025】
図4に、図3に示したエージング装置58により、所定のパルス出力でエージングレーザ光59を照射した場合の、拡散板36の透過率の変化を示す。図3において、縦軸が透過率、横軸が照射したパルス数である。また、実線は、拡散板36の材質がフッ化カルシウム(CaF2)である場合であり、破線は、拡散板36の材質が合成石英(SiO2)である場合を示す。この2種の材質は、レーザ光21に対して耐久性を有し、透過率の飽和後に長期間にわたってレーザ光21を照射しても、透過率変化が少ないため、拡散板36の材質として好適である。
また、拡散板36の製造方法としては、フッ化カルシウム又は合成石英の基板の表面を、サンドブラスト、或いはフッ素処理したものが好適である。
【0026】
図4のフッ化カルシウムの場合に示すように、拡散板36の透過率は、エージングレーザ光59の照射に伴って次第に増加するが、パルス数n1のあたりで、増加がほぼ飽和する。このパルス数n1は、照射するエージングレーザ光59の強度によって変動する。従って、予めエージング装置58によって、所定強度でn1パルスのエージングレーザ光59を照射しておくことにより、拡散板36をエネルギー測定装置35に組み込んだ後は、透過率の変化が殆んどなくなる。
或いは、図3に示すように、照射中に拡散板36の透過率をモニタリングし、その変化の割合が、所定の割合よりも小さくなったことを見計らって、エージングを停止してもよい。
【0027】
またエージング照射時に、酸素ボンベ62から、酸素をエージングチャンバ57の内部に微量注入することにより、エージングの効果を向上させられる場合もある。
拡散板36の透過率がエージングによって上昇する原因の一つに、拡散板36の表面に付着した水分や有機物などの不純物が、照射した紫外線のエージングレーザ光59によって表面から離脱するということが考えられる。従って、エージングチャンバ57内部に酸素を入れることにより、酸素が紫外線光であるエージングレーザ光59によってオゾン(O3)となり、不純物の離脱を加速することもある。
【0028】
尚、拡散板36の材質としては、合成石英を用いるよりも、すべてフッ化カルシウムとするのが、より好適である。フッ化カルシウムは、レーザ光21に対し、合成石英よりも高い耐久性を有しており、レーザ光21を長期にわたって照射しても、透過率が殆んど低下することがない。
また、図4に示したように、フッ化カルシウム(実線)は、合成石英(破線)に比較すると、エージングレーザ光59を照射したときの拡散板36の透過率変化が小さい。即ち、フッ化カルシウムが、パルス数n1で飽和するのに対し、合成石英は、パルス数n2(n1<n2)で飽和する。従って、フッ化カルシウムを用いることにより、エージングにかかる時間を短縮することができる。
【0029】
しかしながら、フッ化カルシウム(CaF2)は高価であるため、図2に示した複数の拡散板36A〜36Dのうち、少なくともレーザ光21の最上流側(光検出器37から最も遠い側)の拡散板36Aのみを、フッ化カルシウムとしてもよい。
レーザ光21は、拡散板36を通過するたびに光量が減少するため、最初にレーザ光21が入射する最上流側の拡散板36Aを、最も強いレーザ光21が通過する。即ち、この最上流側の拡散板36Aは、最も透過率が変化しやすいことになる。従って、少なくともこの拡散板36Aをフッ化カルシウムとすることにより、レーザ光21を長期にわたって照射した場合の透過率変化を、より小さくすることができる。
【0030】
次に、モニタエタロン40A,40Bの前面に配置された拡散板46A,46Bについて、説明する。
前述したようにレーザコントローラ29は、干渉縞49Aの直径を測定することによりサンプル光41の中心波長を、明縞の幅(半値全幅)を測定することにより線幅を、それぞれ算出する。
【0031】
このとき、拡散板46Aの透過率が変化しても、干渉縞49Aの直径Dは変化しないため、中心波長の測定には誤差が生じない。しかしながら、拡散板46の透過率が上がることにより、明縞の幅が変化するため、線幅の測定が不正確となってしまう。
本実施形態では、このような測定誤差を防止するため、モニタエタロン40A,40Bの前面に配置された拡散板46A,46Bについても、光検出器37の前面に配置された拡散板36と同様のエージングを行なっている。これにより、透過率が常に略一定となり、波長特性の測定を正確にすることが可能である。
【0032】
以下、上記の線幅測定について、詳細に説明する。
図5に、パターン検出器48Aで検出した、干渉縞49Aの強度分布を示す。図5において、横軸がパターン検出器48A上の位置、縦軸がパターン検出器48Aの出力電圧である。Mは、干渉縞49Aの中心を表している。実線が、拡散板46Aの透過率が高い場合、破線が、透過率が低い場合である。
パターン検出器48Aは、例えば多数のCCD素子を直線状に並べて形成されている。図5に示すように、これらのCCD素子は、光を受光しない場合でも、常に電圧Hを出力する。これを、センサバックグラウンドHと呼ぶ。尚、センサバックグラウンドHは、CCD素子ごとのばらつきを含むため、厳密には位置によって異なる値を有するが、ここでは略一定と仮定して説明する。
【0033】
図5の実線グラフ(拡散板46Aの透過率が高い場合)において、センサバックグラウンドHを差し引いた明縞の高さの半値(2分の1)をa、Hを含めた明縞の高さの半値をbとする。また、破線グラフ(拡散板46Aの透過率が低い場合)において、センサバックグラウンドHを差し引いた明縞の高さの半値をc、Hを含めた明縞の高さの半値をdとする。
そして、それぞれの明縞の高さの半値a〜dに基づいて求めた明縞の半値全幅を、Sa〜Sdとする。
【0034】
センサバックグラウンドHを差し引いた場合には、明縞の高さが破線グラフから実線グラフへと変化しても、明縞の高さとその半値全幅との関係は略一定である。従って、拡散板46Aの透過率が変化しても、半値全幅Sa≒Scとなり、線幅測定に誤差が生じない。
ところが近年、エキシマレーザ装置11を半導体製造用の露光用光源として用いる場合等に、エキシマレーザ装置11の発振周波数の増加が要求されている。その結果として、パルス発振とパルス発振との間の時間が短くなり、センサバックグラウンドHを減算するのに必要な演算時間が、確保できなくなってきている。
【0035】
その結果、センサバックグラウンドHを減算せずに線幅の測定を行なうことになり、その結果として、明縞の高の半値b,dにセンサバックグラウンドHの値が含まれてしまう。そのため、拡散板46Aの透過率が変化すると、その半値全幅SbとSdとの間に差が生じる。その結果、線幅が変化していないにも拘らず、変化したかのように解釈され、計測誤差の原因となる。
このようにして生じる誤差を防止するため、拡散板46Aの透過率をエージングによって予め略一定にして、波長特性の測定時に、センサバックグラウンドHの影響をほぼ一定としている。例えば図5において、明縞の高さの半値bの位置における半値全幅Sbを求めていたものを、高さの半値bよりもわずかに高い位置における幅Sbを求めることにより、センサバックグラウンドHを減算する必要がなくなる。その結果、速い発振周波数のエキシマレーザ装置11に対しても、正確な波長特性の検出が可能となる。
【0036】
また、パターン検出器48A,48Bに入射するサンプル光41の光量は、パターン検出器48A,48Bのダイナミックレンジに合わせて、最適化される必要がある。即ち、光量が多過ぎるとパターン検出器48A,48Bの出力が飽和し、光量が少な過ぎると、パターン検出器48A,48BのS/N比が低下する。
従って、エージングを行なう前の拡散板46A,46Bの透過率が低い状態で光量を最適化すると、レーザ装置11を長期発振している間に透過率が増加し、パターン検出器48A,48Bの入射光量が増大して、飽和してしまうことがある。
【0037】
即ち、拡散板46A,46Bをエージングして、予め透過率を略一定としておくことにより、パターン検出器48A,48Bへの入射光量が変化せず、パターン検出器48A,48Bが飽和するようなこともない。
これは、拡散板46A,46Bだけではなく、拡散板36についても同様であり、これによって光検出器37の飽和を防ぐことができる。
【0038】
以上説明したように、第1実施形態によれば、レーザ光21のパルス出力を測定するエネルギー測定装置35の拡散板36を、エネルギー測定装置35に組み込む前に、紫外線光でエージングしている。
これにより、拡散板36の透過率が飽和してから組み込むことになるので、使用中に透過率が変化することがなく、常に安定したパルス出力の測定が可能である。従って、これに基づいてエネルギー一定制御を行なう場合にも、正確な制御が可能であり、露光機25に入射するレーザ光21のパルス出力を、目標値に安定させることができる。その結果として、露光が好適に行なわれる。
【0039】
また、波長測定装置39の拡散板46をも、紫外線光でエージングしている。
これにより、レーザ光21の線幅を正確に測定できるので、例えば線幅が所定範囲外となった場合にも、迅速に露光機25に波長異常信号を送ることが可能である。その結果、露光に不適切な波長のレーザ光21で露光が行なわれるということがなく、露光が常に好適に行なわれる。
【0040】
また、エージングを、エキシマレーザ装置で行なっている。これにより、拡散板36に照射される紫外線光が、尖頭値の高いパルス状となるので、透過率の変化が早く進行して飽和するため、エージングを短い時間で行なえる。さらに、確実に透過率が飽和する。
また、エネルギー測定装置35及び波長測定装置39に組み込まれる場合に照射されるサンプル光41と、同じ波長の光で照射されることになる。従って、拡散板36上で、組み込み時と同じプロセスが進行し、確実に透過率が変化する。
【0041】
尚、必ずしもサンプル光41と同じ波長の光のエージングレーザ光59を用いると限られるものではなく、さらに短い波長のエージングレーザ光59を用いてもよい。即ち、より高い光エネルギーのレーザ光を照射することにより、エージングに要する時間を短縮させることも可能である。
この場合、拡散板36が用いられるレーザ装置11がKrFエキシマレーザ装置であれば、エージング用のエージングレーザ装置54をArFエキシマレーザ装置、又はフッ素分子レーザ装置にすればよい。また、レーザ装置11がArFエキシマレーザ装置であれば、エージング用のエージングレーザ装置54をフッ素分子レーザ装置にすればよい。
さらに、エージングレーザ装置54としては、半導体レーザ励起の固体レーザ装置等でもよい。
【0042】
但し、ArFエキシマレーザ装置やフッ素分子レーザ装置等、発振するレーザ光の波長が、200nmよりも短いものをエージングレーザ装置54として用いる場合には、エージングチャンバ57の内部には、酸素を混入させないようにするのがよい。これは、これらのレーザ装置から出射する短波長のレーザ光が、酸素に吸収されてしまって拡散板36に届かなくなるのを避けるためである。
【0043】
また、レーザ装置11とは別にエージングレーザ装置54を備えるのではなく、レーザ装置11によって、エージングを行なってもよい。
さらに、レーザ装置11のパッシベーション時に出るレーザ光をエージングレーザ光59とし、これによってエージングを行なうようにしてもよい。
尚、上述のパッシベーションとは、製造した直後や、内部を一旦空気に開放した後のレーザチャンバ12をレーザ装置11に組み込む際に、所定パルス数又は所定時間にわたって、レーザ発振動作を行なわせる過程を差す。これにより、レーザチャンバ12の内壁面や、その他のレーザガスに触れる部品の表面に、化学的に安定な不動態処理を施すことができる。その結果、内壁面や部品の表面から、レーザ発振を阻害する不純物がレーザガス中に混入することを防ぐことができる。
【0044】
次に、第2実施形態を説明する。
図6は、第2実施形態に係るエージング装置58の説明図である。図6においてエージング装置58は、紫外線光を発するXeランプ64を備えている。Xeランプ64から発生したエージングランプ光65は、エージングチャンバ57の内部に封止された拡散板36に照射される。
照射に伴い、拡散板36の透過率が、次第に上昇し、飽和する。どれだけの光量を照射すれば、透過率が飽和するかを予め測定しておいて、その光量だけ照射すると、エージングが終了する。或いは、エージング光検出器60A,60Bによって透過率をモニタリングして飽和を検知し、エージングを終了してもよい。
【0045】
第2実施形態によれば、Xeランプ64により、エージングを行なっている。Xeランプ64は、取り扱いが簡便であり、価格も安価である。
尚、エージング装置58の光源としては、Xeランプ64に限られるものではなく、水銀ランプ等、紫外線の光を出射する光源であればよい。
【0046】
また、上記の説明は、KrFエキシマレーザ装置11に用いられるエネルギー測定装置35及び波長測定装置39の拡散板36,46を例にとって行なったが、これに限られるものではない。即ち、紫外線波長域のレーザ光を出射するレーザ装置に用いられる拡散板は、常に図8に示したような透過率の変化を起こす。
そのため、ArFエキシマレーザ装置等の他のエキシマレーザ装置やフッ素分子レーザ装置、さらには半導体レーザ励起の固体レーザ装置等、紫外線レーザ装置一般に対して応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係るKrFエキシマレーザ装置及びエネルギー測定装置の構成図。
【図2】モニタモジュールの構成図。
【図3】エージング装置の説明図。
【図4】拡散板の透過率の変化を示すグラフ。
【図5】パターン検出器による、干渉縞の強度分布を示すグラフ。
【図6】第2実施形態に係るエージング装置の説明図。
【図7】従来技術に係るエネルギー測定装置の説明図。
【図8】拡散板の透過率の変化を示すグラフ。
【符号の説明】
11:エキシマレーザ装置、12:レーザチャンバ、13:熱交換器、16:フロントミラー、17,19:ウィンドウ、21:レーザ光、22:ビームスプリッタ、23:高圧電源、25:露光機、29:レーザコントローラ、30:狭帯域化ユニット、31:狭帯域化ボックス、32:プリズム、33:グレーティング、34:波長選択ミラー、35:エネルギー測定装置、36:拡散板、37:光検出器、38:モニタモジュール、39:波長測定装置、40:モニタエタロン、41:サンプル光、43:ウィンドウ、44:ミラー、45:ビームスプリッタ、46:拡散板、47:投影レンズ、48:パターン検出器、49:干渉縞、50:モニタボックス、51:パージボンベ、52:基準光源、53:基準光、54:エージングレーザ装置、55:ウィンドウ、56:ビームスプリッタ、57:エージングチャンバ、58:エージング装置、59:エージングレーザ光、60:エージング光検出器、61:パージボンベ、62:酸素ボンベ、63:ダンパ、64:Xeランプ、65:エージングランプ光。

Claims (1)

  1. 光を透過して出射する方向を拡散させる拡散板(36)のエージング方法において、
    フッ化カルシウム又は合成石英の基板の表面をサンドブラスト或いはフッ素処理して製造した拡散板(36)に対する紫外線光の照射をチャンバ内で予め行い、紫外線照射時に、酸素をチャンバの内部に注入し、拡散板(36)の紫外線光の透過率の変化を飽和させたことを特徴とする、拡散板(36)のエージング方法。
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