JP5004429B2 - 保持具 - Google Patents

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Description

本発明は保持具に係り、特に、内部に発泡が形成された軟質プラスチックシートと、軟質プラスチックシートの一面側に配置され被研磨物の横ずれを抑制するための枠材と、軟質プラスチックシートの他面側に配置され該軟質プラスチックシートを支持する支持材とを備え、軟質プラスチックシートの一面側で被研磨物を保持する保持具に関する。
従来、フラットパネルディスプレイ(FPD)用ガラス基板、カラーフィルタ、インジウム錫酸化物(ITO)成膜済基板等の材料(被研磨物)では、高精度な平坦性が要求されるため、研磨布を使用した研磨加工が行われている。通常、これらの被研磨物の研磨加工には、被研磨物を片面ずつ研磨加工する片面研磨機が使用されている。この片面研磨機では、表面が平坦な保持定盤に被研磨物が保持され、表面が平坦な研磨定盤に研磨布が固着されている。研磨加工時には、研磨粒子を含む研磨液を循環させつつ供給し、被研磨物に圧力をかけながら保持定盤及び研磨定盤を回転させることで被研磨物が研磨加工される。
一般に、片面研磨機を使用した研磨加工では、被研磨物が金属製の保持定盤と直接接触して生じる被研磨物のスクラッチ(キズ)等を回避するため、保持定盤に軟質クロス等の保持パッド(ワックスレスパッド)が固着されている。被研磨物及び保持定盤間に保持パッドを介在させることで、スクラッチ等を回避することはできるが、保持パッド及び被研磨物間の粘着性や静摩擦が不十分なとき、すなわち、保持パッドの被研磨物保持性が不十分なときは、研磨加工中に被研磨物の横ずれが生じるため、被研磨物を平坦に研磨加工することが難しくなる。被研磨物の横ずれを抑制するため、被研磨物を挿入可能な開口が形成されたテンプレート(枠材)と保持パッドとを貼り合わせた保治具(テンプレートアセンブリ)が開示されている(例えば、特許文献1参照)。テンプレートを使用した保持具では、テンプレートの開口に被研磨物を挿入して研磨加工が行われ、研磨加工後に被研磨物がテンプレートから取り外される。被研磨物の挿入及び取り外しを容易にするため、被研磨物とテンプレートとの間には、隙間(ギャップ)が形成されている。
通常、保持パッドには軟質プラスチックシートが使用されている。軟質プラスチックシートは、軟質プラスチック(樹脂)を水混和性の有機溶媒に溶解させた樹脂溶液をシート状の成膜基材に塗布後、水系凝固液中で樹脂を凝固再生させる湿式成膜法で製造されている。製造された軟質プラスチックシートは、内部に発泡が形成されており、表面には、内部の発泡より孔径の小さい微多孔が厚さ数μm程度に亘って形成された表面層(スキン層)を有している。微多孔が形成された表面層の表面が被研磨物との接触性に優れるため、表面層に水等の液体を含ませておくことで液体の表面張力等により被研磨物の保持が可能となる。
ところが、湿式成膜法では、樹脂溶液が粘性を有するため、成膜基材への塗布時に厚さバラツキが生じると共に、凝固再生時の有機溶媒と水系凝固液との置換により厚さバラツキが生じやすいため、得られた軟質プラスチックシートでは表面層の表面の平坦性が損なわれ大きく波打った表面となる。軟質プラスチックシートに厚さバラツキがあると、軟質プラスチックシートと被研磨物とが平坦(均等)に接触しなくなり接触面積が小さくなるため、被研磨物保持性が低下する。軟質プラスチックシートの厚さバラツキを減少させるため、軟質プラスチックシートの製造後にその表面(スキン層側)がバフ処理されている。例えば、軟質プラスチックシートの表面層側をバフ処理して表面粗さを50μm以下とする技術が開示されている(特許文献2参照)。
実開昭59−188147号公報 特許第3187769号公報
しかしながら、特許文献2の技術では、軟質プラスチックシートの厚さバラツキが表面層の厚さより大きいことから、厚さバラツキを解消するほど表面層側をバフ処理すると表面層が消失するため、被研磨物保持性が低下し、表面層を残したままでは厚さバラツキが解消されず表面層の表面を平坦化することはできない。このような軟質プラスチックシートを使用した保持パッドでは、特許文献1のテンプレートを使用した保持具に適用しても、被研磨物と軟質プラスチックシートとの間に隙間が形成されるため、研磨加工中に被研磨物の横ずれが生じる。被研磨物の横ずれにより被研磨物がテンプレートに当接してひずみや摩耗を生じさせるため、被研磨物の浮きが発生し、被研磨物がテンプレートから飛び出す、という問題がある。被研磨物がガラス基板等の場合には、飛び出したガラス基板等が破損するだけではなく、循環使用される研磨液中にガラスの破片が混入するため、この研磨液を使用して研磨加工されるガラス基板等までもキズつける悪循環を引き起こす。このような場合には、研磨液中に混入したガラス破片を全て取り除かなければならない、という問題が生じる。
本発明は上記事案に鑑み、枠材内に被研磨物を平坦かつ確実に保持することができる保持具を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は、内部に発泡が形成された軟質プラスチックシートと、前記軟質プラスチックシートの一面側に配置され被研磨物の横ずれを抑制するための枠材と、前記軟質プラスチックシートの他面側に配置され該軟質プラスチックシートを支持する支持材とを備え、前記軟質プラスチックシートの一面側で被研磨物を保持する保持具において、前記軟質プラスチックシートは、100%モジュラスが20MPa以下の材質であり、前記一面側に湿式成膜で形成され前記発泡より孔径の小さく、前記発泡と通じた微多孔が形成されたスキン層を有し、前記発泡の前記スキン層側の大きさが前記他面側より小さく形成されており、前記他面側が該軟質プラスチックシートに加重100g/cmをかけたときの厚さの平均値に対する最大厚さと最小厚さとの差の百分率で表されるバラツキ率が3%以下となり、かつ、前記発泡が開孔するようにバフ処理されており、前記軟質プラスチックシートの他面側と前記支持材の支持面側とが熱溶融性の接着剤を介して貼り合わされているとともに、前記接着剤が前記軟質プラスチックシートの他面側で開孔した発泡に侵入していることを特徴とする。
本発明では、軟質プラスチックシートの他面側が、該軟質プラスチックシートのバラツキ率が3%以下となるようにバフ処理され、一様な厚さの軟質プラスチックシートが支持材で支持されているため、スキン層がそのまま残されることから、被研磨物との接触面積の低下を防止し、スキン層の表面を平坦化することができ、軟質プラスチックシートの他面側で発泡が開孔するようにバフ処理され、熱溶融した接着剤が開孔した発泡に侵入しているため、軟質プラスチックシートの他面側と接着剤との接触面積を増大させることから、軟質プラスチックシートおよび支持材が確実に接着され、研磨加工時に軟質プラスチックシートが支持材から剥離することを防止できると共に、軟質プラスチックシートを100%モジュラス20MPa以下の材質としたことで、軟質プラスチックシートの一面側を被研磨物の形状に合うように密着させることができ、微多孔が湿式成膜で形成され表面が平坦化されたスキン層に水等の液体を含ませることで、微多孔に浸入した液体の表面張力がスキン層及び被研磨物間に作用するので、被研磨物を平坦かつ確実に保持することができる。
この場合において、軟質プラスチックシートを100%モジュラスが20MPa以下の材質とすれば、軟質プラスチックシートが被研磨物に密着し易くなり被研磨物保持性を向上させることができる。また、軟質プラスチックシートと枠材とを接着剤を介して接着してもよい。更に、支持材を、少なくとも可撓性フィルム、不織布及び織布から選択される1種としてもよい。また、軟質プラスチックシートの他面側に、被研磨物保持用の定盤に固着するための粘着剤層を更に備えていてもよい。
本発明によれば、軟質プラスチックシートの他面側が、該軟質プラスチックシートのバラツキ率が3%以下となるようにバフ処理され、一様な厚さの軟質プラスチックシートが支持材で支持されているため、スキン層がそのまま残されることから、被研磨物との接触面積の低下を防止し、スキン層の表面を平坦化することができ、軟質プラスチックシートの他面側で発泡が開孔するようにバフ処理され、熱溶融した接着剤が開孔した発泡に侵入しているため、軟質プラスチックシートの他面側と接着剤との接触面積を増大させることから、軟質プラスチックシートおよび支持材が確実に接着され、研磨加工時に軟質プラスチックシートが支持材から剥離することを防止できると共に、軟質プラスチックシートを100%モジュラス20MPa以下の材質としたことで、軟質プラスチックシートの一面側を被研磨物の形状に合うように密着させることができ、微多孔が湿式成膜で形成され表面が平坦化されたスキン層に水等の液体を含ませることで、微多孔に浸入した液体の表面張力がスキン層及び被研磨物間に作用するので、被研磨物を平坦かつ確実に保持することができる、という効果を得ることができる。
以下、図面を参照して、本発明に係る保持具の実施の形態について説明する。
(構成)
図1に示すように、本実施形態の保持具1は、軟質プラスチックシートとしてのポリウレタンシート2と、被研磨物の横ずれを抑制するための枠材としてのテンプレート4と、ポリウレタンシート2を支持する支持材7とを備えている。
ポリウレタンシート2は、100%モジュラス(2倍長に引っ張る時の張力)が20MPa以下のポリウレタン樹脂を湿式成膜して形成されており、被研磨物を保持可能な保持面P側にスキン層2a(表面層)、保持面Pの裏面側(スキン層2aの下面側)にナップ層2bを有している。ナップ層2b(ポリウレタンシート2の内部)にはポリウレタンシート2の厚さ方向(図1の縦方向)に沿って丸みを帯びた断面略三角状の発泡3が形成されており、スキン層2aには発泡3より孔径の小さい図示を省略した微多孔が形成されている。発泡3は、保持面P側の大きさが、保持面Pの裏面側より小さく形成されている。発泡3同士の間のポリウレタン樹脂中には、スキン層2aの微多孔より大きく発泡3より小さい孔径の図示しない発泡が形成されている。スキン層2aの微多孔は発泡3及び図示しない発泡に通じており、発泡3及び図示しない発泡は不図示の連通孔で立体網目状につながっている。保持面Pの裏面側は、ポリウレタンシート2の厚さが一様となるようにバフ処理されている(詳細後述)。このため、発泡3及び図示しない発泡の一部が保持面Pの裏面で開孔している。
テンプレート4は、ガラスエポキシ樹脂(ガラス繊維を含有するエポキシ樹脂)やフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を主体とした材質でポリウレタンシート2と同じ大きさに形成されている。テンプレート4の略中央部には、被研磨物を挿入可能な開口が形成されている。テンプレート4は、ポリウレタンシート2の保持面P側に熱溶融性接着剤(感熱型接着剤)のホットメルト6aを介して接着されている。ホットメルト6aには、少なくともアクリル系、ニトリル系、ニトリルゴム系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエステル系の熱可塑性接着剤から選択される一種が使用されている。ホットメルト6aを熱溶融させることで、保持面Pとテンプレート4の接着面とがほぼ一定の間隔で接着されている。
また、支持材7は、保持面Pの裏面側(バフ処理された面側)に配置されており、保持面Pの裏面側と支持材7の一面(以下、支持面という。)側とが対向している。支持材7には、少なくともポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する。)製等の可撓性フィルム、不織布又は織布から選択される1種が使用されている。ポリウレタンシート2及び支持材7は、熱溶融性接着剤のホットメルト6bを介して貼り合わされている。ホットメルト6bには、少なくともアクリル系、ニトリル系、ニトリルゴム系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエステル系の熱可塑性接着剤から選択される一種が使用されている。ホットメルト6bは、熱溶融させることで発泡3の開孔部に侵入しており、保持面Pの裏面と支持材7の支持面とがほぼ一定の間隔で貼り合わされている。支持材7の他面側には、研磨機に保持具1を固着するための感圧型粘着剤8が配されている。感圧型粘着剤8には、例えば、アクリル系粘着剤やゴム系粘着剤等が使用されている。感圧型粘着剤8の表面(図1の最下面側)は剥離紙9で覆われている。
(保持具の製造)
保持具1は、図2に示す各工程を経て製造される。まず、準備工程では、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂を溶解可能な水混和性の有機溶媒のN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する。)及び添加剤を混合してポリウレタン樹脂を溶解させる。ポリウレタン樹脂には、100%モジュラスが20MPa以下のポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系等の樹脂から選択して用い、例えば、ポリウレタン樹脂が30%となるようにDMFに溶解させる。添加剤としては、発泡3の大きさや量(個数)を制御するカーボンブラック等の顔料、発泡を促進させる親水性活性剤及びポリウレタン樹脂の凝固再生を安定化させる疎水性活性剤等を用いることができる。得られた溶液を濾過することで凝集塊等を除去した後、真空下で脱泡してポリウレタン樹脂溶液を得る。
塗布工程、凝固再生工程及び洗浄・乾燥工程では、準備工程で得られたポリウレタン樹脂溶液を成膜基材に連続的に塗布し、水系凝固液に浸漬することでポリウレタン樹脂を凝固再生させ、洗浄後乾燥させてポリウレタンシートを得る。塗布工程、凝固再生工程及び洗浄・乾燥工程は、図3に示す成膜装置で連続して実行される。
図3に示すように、成膜装置60は、成膜基材の不織布や織布を前処理するための水又はDMF水溶液(DMFと水との混合液)等の前処理液15が満たされた前処理槽10、ポリウレタン樹脂に対して貧溶媒である水を主成分としポリウレタン樹脂を凝固再生させるための凝固液25が満たされた凝固槽20、凝固再生後のポリウレタン樹脂を洗浄するための水等の洗浄液35が満たされた洗浄槽30及びポリウレタン樹脂を乾燥させるためのシリンダ乾燥機50を連続して備えている。
前処理槽10の上流側には、成膜基材43を供給する基材供給ローラ41が配置されている。前処理槽10には、成膜基材43の搬送方向と同じ長手方向の略中央部の内側下部に一対のガイドローラ対13が配置されている。前処理槽10の上方で、基材供給ローラ41側にはガイドローラ11、12が配設されており、凝固槽20側には前処理した成膜基材43に含まれる過剰な前処理液15を除去するマングルローラ18が配置されている。マングルローラ18の下流側には、成膜基材43にポリウレタン樹脂溶液45を略均一に塗布するナイフコータ46が配置されている。ナイフコータ46の下流側で凝固槽20の上方にはガイドローラ21が配置されている。
凝固槽20には、洗浄槽30側の内側下部にガイドローラ23が配置されている。凝固槽20の上方で洗浄槽30側には凝固再生後のポリウレタン樹脂を脱水処理するマングルローラ28が配置されている。マングルローラ28の下流側で洗浄槽30の上方にはガイドローラ31が配置されている。洗浄槽30には、成膜基材43の搬送方向と同じ長手方向で上部に4本、下部に5本のガイドローラ33が上下交互となるように配設されている。洗浄槽30の上方でシリンダ乾燥機50側には、洗浄後のポリウレタン樹脂を脱水処理するマングルローラ38が配置されている。シリンダ乾燥機50には、内部に熱源を有する4本のシリンダが上下4段に配設されている。シリンダ乾燥機50の下流側には、乾燥後のポリウレタン樹脂を(成膜基材43と共に)巻き取る巻取ローラ42が配置されている。なお、マングルローラ18、28、38、シリンダ乾燥機50及び巻取ローラ42は、図示を省略した回転駆動モータに接続されており、これらの回転駆動力により成膜基材43が基材供給ローラ41から巻取ローラ42まで搬送される。
成膜基材43に不織布又は織布を用いる場合は、成膜基材43が基材供給ローラ41から引き出され、ガイドローラ11、12を介して前処理液15中に連続的に導入される。前処理液15中で一対のガイドローラ13間に成膜基材43を通過させて前処理(目止め)を行うことにより、ポリウレタン樹脂溶液45を塗布するときに、成膜基材43内部へのポリウレタン樹脂溶液45の浸透が抑制される。成膜基材43は、前処理液15から引き上げられた後、マングルローラ18で加圧されて余分な前処理液15が絞り落とされる。前処理後の成膜基材43は、凝固槽20方向に搬送される。なお、成膜基材43としてPET製等の可撓性フィルムを用いる場合は、前処理が不要のため、ガイドローラ12から直接マングルローラ18に送り込むようにするか、又は、前処理槽10に前処理液15を入れないようにしてもよい。以下、本例では、成膜基材43をPET製フィルムとして説明する。
図2に示すように、塗布工程では、準備工程で調製したポリウレタン樹脂溶液45が常温下でナイフコータ46により成膜基材43に略均一に塗布される。このとき、ナイフコータ46と成膜基材43の上面との間隙(クリアランス)を調整することで、ポリウレタン樹脂溶液45の塗布厚さ(塗布量)を調整する。
凝固再生工程では、ナイフコータ46でポリウレタン樹脂溶液45が塗布された成膜基材43が、ガイドローラ21からガイドローラ23へ向けて凝固液25中に導入される。凝固液25中では、まず、塗布されたポリウレタン樹脂溶液45の表面に厚さ数μmに亘りスキン層2aを構成する微多孔がほぼ一様に形成される。その後、ポリウレタン樹脂溶液45中のDMFと凝固液25との置換の進行によりポリウレタン樹脂が成膜基材43の片面に凝固再生する。このポリウレタン樹脂の凝固再生は、ポリウレタン樹脂溶液45が塗布された成膜基材43が凝固液25中に進入してからガイドローラ23に到る間に完了する。DMFがポリウレタン樹脂溶液45から脱溶媒するときに、ポリウレタン樹脂中にナップ層2bを構成する発泡3が形成される。このとき、PET製フィルムの成膜基材43が水を浸透させないため、スキン層2aの微多孔を通じて脱溶媒することから、成膜基材43側がスキン層2a側より大きな発泡3が形成される。凝固再生したポリウレタン樹脂は、凝固液25から引き上げられ、マングルローラ28で余分な凝固液25が絞り落とされた後、ガイドローラ31を介して洗浄槽30に搬送され洗浄液35中に導入される。
洗浄・乾燥工程では、洗浄液35中に導入されたポリウレタン樹脂をガイドローラ33に上下交互に通過させることによりポリウレタン樹脂が洗浄される。洗浄後、ポリウレタン樹脂は洗浄液35から引き上げられ、マングルローラ38で余分な洗浄液35が絞り落とされる。その後、ポリウレタン樹脂を、シリンダ乾燥機50の4本のシリンダ間を交互(図3の矢印方向)に、シリンダの周面に沿って通過させることで乾燥させる。乾燥後のポリウレタン樹脂は、成膜基材43と共に巻取ローラ42に巻き取られる。
裏面バフ処理工程では、乾燥後のポリウレタンシートの保持面Pの裏面側がバフ処理される。図4(A)に示すように、巻取ローラ42に巻き取られたポリウレタンシートは成膜基材43のPET製フィルム上に形成されている。成膜時にはポリウレタンシートの厚さにバラツキが生じるため、保持面Pには凹凸が形成されている。成膜基材43を剥離した後、図4(B)に示すように、保持面Pに、表面が平坦な圧接ローラ65の表面を圧接することで、保持面Pが平坦となり、保持面Pの裏面Q側に凹凸が出現する。裏面Q側に出現した凹凸がバフ処理で除去される。本例では、連続的に製造されたポリウレタンシートが帯状のため、保持面Pに圧接ローラ65を圧接しながら、裏面Q側を連続的にバフ処理する。これにより、図4(C)に示すように、裏面Q側がバフ処理されて平坦な裏面Qが形成されたポリウレタンシート2は、厚さバラツキが解消され発泡3が開孔し、湿式成膜で微多孔が形成されたスキン層2aがそのまま残される。なお、図4(C)では説明をわかりやすくするために保持面P及び裏面Qを平坦に示しているが、ポリウレタンシート2の単体では両面共にポリウレタンシート2の厚さが一様となる凹凸を呈しており、裏面Q側に支持材7をホットメルト6bを介して貼り合わせることで保持面Pが平坦となる。
次に、バフ処理されたポリウレタンシート2の裏面Q側にPET製フィルムの支持材7を貼り合わせる。ポリウレタンシート2及び支持材7の貼り合わせには、溶融温度が支持材7より低い熱溶融性接着剤のホットメルト6bを使用する。ホットメルト6bを支持材7側から加熱しながら、ポリウレタンシート2及び支持材7を表面が平坦な治具を用いて加圧処理する。このとき、加熱する温度をホットメルト6bの溶融(接着)温度以上に設定する。これにより、ホットメルト6bが溶融してポリウレタンシート2の開孔に侵入し、ポリウレタンシート2の裏面と支持材7の支持面とがほぼ一定の間隔で貼り合わされる。使用可能なホットメルト6bとしては、貼り合わせ時の加熱でポリウレタンシート2が変形する可能性があることを考慮すれば、溶融温度がポリウレタンシート2の融点より低い、例えば、80〜120°Cの範囲にあるものが好ましい。次いで、支持材7の裏面側に感圧型粘着剤8を配し、感圧型粘着剤8の表面を剥離紙9で覆う。
図2に示すように、テンプレート貼合工程では、ポリウレタンシート2の保持面P側にテンプレート4を接着する。テンプレート4の接着には熱溶融性接着剤のホットメルト6aを使用する。ホットメルト6aをテンプレート4側から加熱しながら、テンプレート4及びポリウレタンシート2を表面が平坦な治具を用いて加圧処理する。このとき、加熱する温度をホットメルト6aの溶融温度以上に設定する。テンプレート4が熱硬化性樹脂製のため、加熱でテンプレート4の変形等が生じることはない。これにより、ホットメルト6aが溶融して保持面Pとテンプレート4の接着面とがほぼ一定の間隔で接着される。そして、裁断工程で円形、角形等の所望の形状に裁断した後、汚れや異物等の付着がないことを確認する等の検査を行い保持具1を完成させる。
被研磨物の研磨加工を行うときは、片面研磨機に保持具1を装着し、保持具1に被研磨物を保持させる。図5に示すように、片面研磨機70は、上側に被研磨物を押圧する研磨定盤71、下側に保持定盤72を有している。研磨定盤71の下面及び保持定盤72の上面は、いずれも平坦に形成されている。研磨定盤71の下面には被研磨物を研磨するための研磨布75が貼付されており、保持定盤72の上面には保持具1が貼付されている。保持定盤72に保持具1を貼付するときは、剥離紙9を取り除いて感圧型粘着剤8を露出させた後、露出した感圧型粘着剤8を保持定盤72の上面に接触させ押圧する。テンプレート4の開口部の保持面Pに適量の水を含ませて被研磨物78を押し付けることで、スキン層2aの微多孔に浸入した水の表面張力及びポリウレタンシート2のポリウレタン樹脂の粘着性により被研磨物78が保持具1に保持される。研磨加工時には、被研磨物78及び研磨布75間に研磨粒子を含む研磨液を循環供給すると共に、被研磨物78に圧力をかけながら研磨定盤71及び保持定盤72を回転させることで、被研磨物78の上面(加工表面)が研磨加工される。
(作用)
次に、本実施形態の保持具1の作用等について説明する。
本実施形態の保持具1では、ポリウレタンシート2は、湿式成膜後、保持面Pの裏面Q側がバフ処理されている。このため、ポリウレタンシート2の厚さ精度を向上(成膜時に生じた厚さのバラツキを減少)させることができる。このため、ポリウレタンシート2の裏面側と支持材7とを貼り合わせることで、保持面P、すなわちスキン層2aの表面を平坦化することができる。また、スキン層2a側をバフ処理しないため、スキン層2a側で発泡3が開孔せず湿式成膜で微多孔がほぼ一様に形成されたスキン層2aがそのまま残されることから、保持具1と被研磨物78との接触面積の低下を防止することができ、スキン層2aをそのまま被研磨物の保持に使用することができる。スキン層2aの微多孔に水を含ませることで、水の表面張力が保持面P及び被研磨物78間に作用するので、平坦かつ確実に被研磨物78を保持することができる。保持具1が被研磨物保持性に優れるため、研磨加工中に被研磨物78がテンプレート4に当接せずテンプレート4のひずみや摩耗の発生を防止することができる。従って、被研磨物78のテンプレート4からの飛び出しが防止されるので、被研磨物78の破損等を防止することができる。更に、大型の被研磨物78を該被研磨物より面積が小さい研磨布75で研磨加工するときに、被研磨物78全体に圧力がかからなくても、被研磨物78が保持具1に確実に保持されるため、被研磨物78の圧力がかからない部分の浮きを防止することができる。
また、本実施形態の保持具1では、テンプレート4とポリウレタンシート2とがホットメルト6aで接着されている。このため、ホットメルト6aを熱溶融させて平坦な治具を使用してテンプレート4及びポリウレタンシート2を加圧することで、ホットメルト6aが略均等に流動してテンプレート4の接着面及びポリウレタンシート2の保持面Pがほぼ一定の間隔で接着される。バフ処理で厚さバラツキが解消されたポリウレタンシート2の平坦な保持面Pにほぼ一定の間隔でテンプレート4が接着されるため、テンプレート4の表面側(非接着面側)が略平坦となる。このため、被研磨物を研磨加工するときに、テンプレート4が研磨布と接触せず研磨加工の障害となることを防止することができる。また、ポリウレタンシート2にテンプレート4を接着するときにはテンプレート4側から加熱される。このため、ポリウレタンシート2が直接加熱されず変形等を防止することができる。テンプレート4は熱硬化性樹脂を主体とした材質のため、加熱しても熱変形が生じない。
更に、本実施形態の保持具1では、ポリウレタンシート2が100%モジュラスで20MPa以下のポリウレタン樹脂で形成されている。このため、ポリウレタンシート2の保持面Pが被研磨物78の形状に合うように密着して粘着性を発揮するので、保持定盤72に貼付した保持具1に被研磨物78を押し付けることで、被研磨物保持性を向上させることができる。
また更に、本実施形態の保持具1では、ポリウレタンシート2のバフ処理された裏面Q側に支持材7がホットメルト6bを介して貼り合わされている。ポリウレタンシート2と支持材7とを貼り合わせるときは、ホットメルト6bの溶融温度以上の温度で加熱しながら加圧処理が行われる。このため、溶融したホットメルト6bが裏面Qで開孔している発泡3に侵入してホットメルト6bとポリウレタンシート2の裏面Q側との接触面積が増大する。これにより、ポリウレタンシート2及び支持材7が確実に接着されるので、研磨加工時にポリウレタンシート2が支持材7から剥離することを防止することができる。更に、溶融させたホットメルト6bを介してポリウレタンシート2と支持材7とが平坦な治具で加圧処理されるため、ホットメルト6bが略均等に流動することから、ポリウレタンシート2の裏面Qと支持材7の支持面とをほぼ一定の間隔で貼り合わせることができる。これにより、保持具1の全体の厚さが均一化されるので、被研磨物78を略平坦に保持することができる。従って、研磨加工時には、略平坦に保持された被研磨物78の加工表面が研磨加工されるので、加工表面の平坦性を向上させることができる。
更にまた、本実施形態の保持具1では、溶融温度が支持材7より低いホットメルト6bが使用されており、ポリウレタンシート2に支持材7をホットメルト6bを介して貼り合わせるときは、支持材7側から加熱される。このため、加熱で支持材7に変形や歪みが生じないので、保持具1全体の厚さバラツキを減少させることができる。また、ポリウレタンシート2の保持面P側を直接加熱することがないので、保持面Pに熱履歴を受けさせず被研磨物保持性の低下を防止することができる。
また、本実施形態の保持具1では、支持材7の裏面側に感圧型粘着剤8を有している。保持具1を研磨機に装着するときは、保持具1と保持定盤72とが感圧型粘着剤8を介して貼り合わされる。このため、保持具1を保持定盤72方向へ押圧することで容易かつ確実に保持具1を保持定盤72に固定することができる。
従来ポリウレタンシートの製造に用いられる湿式成膜法では、粘性を有するポリウレタン樹脂溶液を成膜基材に塗布するときに搬送速度のバラツキや塗布装置の振れ等が生じるため、塗布されたポリウレタン樹脂溶液の厚さにバラツキが生じる。この状態でポリウレタン樹脂が凝固再生されるため、得られるポリウレタンシートに厚さバラツキが残される。また、凝固液中では凝固再生の初期に形成されるスキン層を通じて脱溶媒が進行するが、均一なスキン層が形成されない場合には、脱溶媒が不均一となり厚さバラツキが増大する。厚さバラツキが生じたポリウレタンシートを使用した保持具では、研磨加工時に被研磨物を平坦に保持することができず、厚さの大きな部分で被研磨物にかかる圧力が大きくなるため、当該部分の加工表面が大きく研磨されて平坦性が損なわれる。このような厚さバラツキを減少させるためにスキン層側がバフ処理されるが、スキン層の厚さがポリウレタンシートの厚さバラツキより小さいことから、厚さバラツキを解消する程バフ処理すると被研磨物の保持に有効なスキン層が消失して発泡が開孔するため、スキン層表面と被研磨物との接触面積が減少して被研磨物保持性が低下する。
また、従来の保持具では、被研磨物保持性が不十分なため、研磨加工中に被研磨物の横ずれが生じてテンプレートに当接する。このため、テンプレートのひずみや摩耗が発生することから、被研磨物の浮きが生じたり被研磨物がテンプレートから飛び出したりする。被研磨物の浮きや飛び出しが生じると、被研磨物が破損等することがあるため、研磨加工できなくなる。特に、被研磨物がガラス基板の場合は、破損したガラス基板のガラス片が研磨液に混入するため、研磨液を循環使用すると、別のガラス基板を破損することとなり悪循環が生じる。本実施形態は、これらの問題を解決することができる保持具である。
なお、本実施形態の保持具1では、裏面バフ処理工程で保持面Pに圧接ローラ65を圧接させながら裏面Q側を連続的にバフ処理する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、バフ処理前のポリウレタンシートを所望の大きさに裁断した後、保持面Pに、平坦な表面を有する平板を圧接して裏面Q側をバフ処理してもよい。
また、本実施形態の保持具1では、ポリウレタンシート2の材質として100%モジュラスが20MPa以下のポリウレタン樹脂を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ポリエステル樹脂等を用いてもよく、樹脂の100%モジュラスを20MPa以下とすれば、湿式成膜した樹脂シートが被研磨物の形状に合うように密着するので、被研磨物保持性の向上を図ることができる。また、ポリウレタン樹脂を用いれば、湿式成膜法で容易にスキン層2aを有するポリウレタンシート2を作製することができる。更に、本実施形態では、ポリウレタン樹脂を30%となるようにDMFに溶解する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ポリウレタン樹脂溶液45の粘性やポリウレタンシート2の厚さ等により適宜変更してもよい。
更に、本実施形態の保持具1では、テンプレート4とポリウレタンシート2との接着にホットメルト6aを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、PET製フィルム等の基材の両面にホットメルト6aを塗布した両面テープを使用することも可能である。このようにすれば、テンプレート4とポリウレタンシート2との接着作業を簡略化することができる。
また更に、本実施形態の保持具1では、ホットメルト6b、支持材7、感圧型粘着剤8及び剥離紙9をそれぞれ個別に例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、基材となるPET製フィルムの両面にそれぞれホットメルト6b、感圧型粘着剤8を有する両面テープを使用することも可能である。この場合は、両面テープの基材が支持材7の機能を果たす。更に、本実施形態の保持具1では、ホットメルト6a、6bをそれぞれ示したが、同じ熱溶融性接着剤を用いてもよく、また、例えば、アクリル系やゴム系の感圧型粘着剤を用いても本発明の効果に変わりがないことを確認している。また、本実施形態の保持具1では、支持材7にPET製フィルムを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、不織布や織布等を使用してもよい。
更にまた、本実施形態では、成膜基材43にPET製フィルムを使用する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、不織布や織布を使用してもよい。この場合は、ポリウレタン樹脂の凝固再生後に成膜基材43からポリウレタンシート2を剥離することが難しいため、成膜基材43のポリウレタン樹脂が再生された面の背面側をバフ処理すればよい。
更に、本実施形態では、ポリウレタンシート2は、バフ機等で保持面Pの裏面がバフ処理されるが、バフ処理量はポリウレタンシート2の厚さの範囲R(詳細後述)の2倍以上の厚みをバフ処理することが望ましい。バフ処理ではサンドペーパーやダイヤモンドバフロール等の種々のものが使用されるが、均一な処理(研削除去)ができるものであればいずれも使用することができる。このとき、バフ番手(砥粒の粗さを示す番号)を高くする程、細かな砥粒で研削でき均一なバフ処理ができる。また、バフ処理を、1回目で低いバフ番手(粗い砥粒)で研削をし、2回目で1回目より高いバフ番手のもので研削量を小さくしてバフ仕上げ処理することで、厚み精度を更に上げることもできる。
以下、本実施形態に従い製造した保持具1の実施例について説明する。なお、比較のために製造した比較例の保持具についても併記する。
(実施例1)
実施例1では、ポリウレタン樹脂として、100%モジュラスが10MPaのポリエステルMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)ポリウレタン樹脂を用いた。このポリウレタン樹脂のDMF溶液100部に対して、粘度調整用のDMFの45部、顔料のカーボンブラックを30%含むDMF分散液の40部、疎水性活性剤の2部を混合してポリウレタン樹脂溶液45を調製した。ポリウレタン樹脂溶液45を塗布する際に塗布装置のクリアランスを1mmに設定した。洗浄工程での洗浄効果を高めるために凝固再生後の洗浄を温水で行った。バフ処理量を0.25mmとしてバフ番手♯180のサンドペーパーを用いてポリウレタンシートをバフ処理し実施例1の保持具1を製造した。ホットメルト6a、6bには、接着温度が80〜100°Cのニトリル系熱可塑性接着剤を使用した。なお、ポリウレタンシート2の単位面積あたりの重量から換算するとポリウレタン樹脂溶液45の塗布量は、916g/m(固形換算208g/m)である。
(実施例2)
実施例2では、バフ処理量を0.33mmとする以外は実施例1と同様にして実施例2の保持具1を製造した。
(比較例1)
比較例1では、ポリウレタンシートのスキン層側をバフ処理量0.20mmとしてバフ処理する以外は実施例1と同様にして比較例1の保持具を製造した。すなわち、比較例1は従来の保持具である。
(評価)
次に、各実施例及び比較例で製造したポリウレタンシート2について、バフ処理後の厚さ及び被研磨物保持性を測定した。厚さの測定は、ダイヤルゲージ(最小目盛り0.01mm)を使用し加重100g/cmをかけて測定した。縦1m×横1mのポリウレタンシート2を縦横10cmピッチで最小目盛りの10分の1(0.001mm)まで読み取り、厚さの平均値、標準偏差σ、及び、最大厚さと最小厚さとの差を範囲Rとして求めた。また、厚さの平均値に対する範囲Rの百分率をバラツキ率として求めた。被研磨物保持性は、以下の方法で測定した。図6に示すように、ポリウレタンシート2を表面が略平坦な定盤81に貼付し、保持面Pに水をスプレで吹き付けた後、表面の水をワイパで軽く除く。次に、ポリウレタンシート2上に縦10cm×横10cmのガラス板82を置き、ガラス板82に80g/cmの荷重がかかるようにおもり83を載せる。1分後、おもり83を外し、ガラス板82を横(水平)方向(矢印A方向)に引っ張り、ガラス板82がずれるときの引張力のピーク値(最大値)を測定した。測定は5回行い、平均値を算出して被研磨物保持性を評価した。厚さ、バラツキ率及び被研磨物保持性の測定結果を下表1に示した。なお、表1において、保持性は被研磨物保持性を示している。また、表1には、湿式成膜後バフ処理前のポリウレタンシートについての厚さの測定結果を併記する。
Figure 0005004429
表1に示すように、湿式成膜後バフ処理前のポリウレタンシートの厚さバラツキは、標準偏差σが0.014mm、厚さの範囲Rが0.060mm、バラツキ率が5.8%であった。スキン層側をバフ処理し、裏面側をバフ処理していない比較例1のポリウレタンシートでは、厚さの範囲Rが0.023mm、バラツキ率が2.9%を示しており、湿式成膜時のポリウレタンシートの厚さバラツキは低減しているものの、保持性は12.0Nと低い数値を示している。これは、スキン層側をバフ処理することでスキン層が除去されて内部の発泡が開孔し、ポリウレタンシートとガラス基板等の被研磨物との接触面積が減少したためと考えられる。このため、比較例1のポリウレタンシートを保持具に使用しても研磨加工中にガラス基板等の横ずれが生じるため、テンプレートのひずみや摩耗を引き起こし、ガラス基板等が飛び出して破損するおそれがある。これに対して、保持面Pの裏面Q側をバフ処理した実施例1及び実施例2のポリウレタンシート2では、厚さの範囲Rが0.023mm及び0.021mm、バラツキ率が2.9%及び3.0%を示しており、ポリウレタンシートの厚さバラツキが低減している。これに加えて、実施例1、実施例2のポリウレタンシート2では、保持性が697N、724Nを示し、比較例1のポリウレタンシートより優れていることが判った。このことから、裏面Q側をバフ処理することで、ポリウレタンシート2の厚さ精度を向上させてスキン層2aの表面を平坦化することができ、湿式成膜で微多孔が形成されたスキン層2aをそのまま使用することで、被研磨物の保持性も良好となることが明らかとなった。このポリウレタンシート2を使用した保持具1では、ガラス基板等を平坦かつ確実に保持することができ、研磨加工で表面を高精度に平坦化することが期待できる。
本発明は枠材内に被研磨物を平坦かつ確実に保持することができる保持具を提供するため、保持具の製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
本発明に係る実施形態の保持具を示す断面図である。 保持具の製造工程を示す工程図である。 保持具のポリウレタンシートの製造に用いる成膜装置の概略構成を示す正面図である。 裏面バフ処理工程でのポリウレタンシートの変化を示す断面図であり、(A)は成膜基材に形成されたポリウレタンシート、(B)は圧接ローラに圧接したときのポリウレタンシート、(C)はバフ処理後のポリウレタンシートをそれぞれ示す。 保持具を装着した片面研磨機の被研磨物を保持させた部分を示す断面図である。 ポリウレタンシートの被研磨物保持性を評価するときのポリウレタンシート及び被研磨物の位置関係を模式的に示し、(A)は平面図、(B)は断面図である。
符号の説明
P 保持面
Q 裏面
1 保持具
2 ポリウレタンシート(軟質プラスチックシート)
2a スキン層(微多孔性表面層)
2b ナップ層
3 発泡
4 テンプレート(枠材)
7 支持材
65 圧接ローラ

Claims (4)

  1. 内部に発泡が形成された軟質プラスチックシートと、前記軟質プラスチックシートの一面側に配置され被研磨物の横ずれを抑制するための枠材と、前記軟質プラスチックシートの他面側に配置され該軟質プラスチックシートを支持する支持材とを備え、前記軟質プラスチックシートの一面側で被研磨物を保持する保持具において、前記軟質プラスチックシートは、100%モジュラスが20MPa以下の材質であり、前記一面側に湿式成膜で形成され前記発泡より孔径の小さく、前記発泡と通じた微多孔が形成されたスキン層を有し、前記発泡の前記スキン層側の大きさが前記他面側より小さく形成されており、前記他面側が該軟質プラスチックシートに加重100g/cmをかけたときの厚さの平均値に対する最大厚さと最小厚さとの差の百分率で表されるバラツキ率が3%以下となり、かつ、前記発泡が前記他面側で開孔するようにバフ処理されており、前記軟質プラスチックシートの他面側と前記支持材の支持面側とが熱溶融性の接着剤を介して貼り合わされているとともに、前記接着剤が前記軟質プラスチックシートの他面側で開孔した発泡に侵入していることを特徴とする保持具。
  2. 前記軟質プラスチックシートと前記枠材とが接着剤を介して接着されていることを特徴とする請求項1に記載の保持具。
  3. 前記支持材は、少なくとも可撓性フィルム、不織布及び織布から選択される1種であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の保持具。
  4. 前記軟質プラスチックシートの他面側に、被研磨物保持用の定盤に固着するための粘着剤層を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の保持具。
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