JP4783231B2 - 保持パッド - Google Patents

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Description

本発明は保持パッドに係り、特に、被研磨物を保持するための保持面を有する保持パッドに関する。
従来、レンズ、平行平面板、反射ミラー等の光学材料、ハードディスク用基板、シリコンウエハ、液晶ディスプレイ用ガラス基板等の材料(被研磨物)では、高精度な平坦性が要求されるため、研磨布を使用した研磨加工が行われている。通常、これらの被研磨物の研磨加工には、片面研磨機や両面研磨機などが用いられている。被研磨物を片面ずつ研磨加工する片面研磨機では、表面が平坦な保持定盤に被研磨物を一面側で保持させ、表面が平坦な研磨定盤に装着した研磨布により、研磨液を供給しながら被研磨物の他面側(加工表面)に研磨加工が行われている。
一般に、片面研磨機を使用した研磨加工では、被研磨物が金属製の保持定盤と直接接触して生じる被研磨物表面のスクラッチ(キズ)等を回避するため、保持定盤に軟質クロス等の保持パッドが装着されている。例えば、液晶ディスプレイ用のガラス基板等の研磨加工では、保持パッドに、被研磨物を保持するための保持面側に微多孔が形成された表面層(スキン層)を有し、表面層より内側に表面層に形成された微多孔より大きい孔径の発泡が形成された軟質プラスチックシートが使用される。この軟質プラスチックシートは、軟質プラスチック(樹脂)を水混和性の有機溶媒に溶解させた樹脂溶液をシート状の成膜基材に塗布後、水系凝固液中で樹脂を凝固再生させる湿式成膜法で製造される。凝固再生に伴い、軟質プラスチックシートの表面(保持面)には表面層を構成する微多孔が厚さ数μm程度に亘り緻密に形成され、表面層より内側に発泡が連続して形成される。微多孔が緻密に形成された表面層は、表面が平坦で被研磨物との接触性に優れるため、被研磨物の保持が可能となる。研磨加工時には、保持パッドが保持面の反対面で保持定盤に装着され、保持面が被研磨物に密着することで被研磨物が保持される。
ところが、湿式成膜法では、樹脂溶液が粘性を有するため、成膜基材への塗布時に厚さバラツキが生じると共に、凝固再生時にも有機溶媒と水系凝固液との置換により厚さバラツキが生じやすい。このため、軟質プラスチックシートの保持面の平坦性が損なわれる(大きく波打った表面となる)。厚さバラツキが生じた軟質プラスチックシートを使用した保持パッドで被研磨物を保持して研磨加工を行うと、保持パッドの厚さの大きな部分で被研磨物にかかる押圧力が大きくなるため、当該部分の加工表面が大きく研磨加工され(保持パッドの厚さバラツキが被研磨物に転写され)て被研磨物の平坦性が損なわれることとなる。これを解決するために、例えば、保持パッドを研磨機の保持定盤に装着した後、研磨加工を行う前に保持パッドに矯正板の平坦な面を密着保持しつつ研磨加工を行うときと同様に研磨機を作動させることで、矯正板の平坦な面を保持パッドに転写し厚さバラツキを矯正して保持パッドの保持面を平坦化する技術が開示されている(特許文献1参照)。
一方、被研磨物及び保持定盤間に保持パッドを介在させることで、スクラッチ等を回避することはできるが、保持パッドの被研磨物保持能力が不十分なときは、研磨加工中に被研磨物の横ずれ等が生じるため、被研磨物を平坦に保持することができなくなり、被研磨物の平坦性が損なわれることとなる。また、被研磨物、特に液晶ディスプレイ用ガラス基板の大型化が進められていることから、保持パッドには、被研磨物の横ずれや脱落を防止するために、被研磨物保持能力の一層の向上が望まれている。被研磨物保持能力の向上に関し、例えば、湿式成膜法で作製した表面層を有する多孔質フィルムに、表面層側を研削加工して厚さバラツキを低減したもう1枚の多孔質フィルムを、接着材層を介して貼り合わせる技術が開示されている(特許文献2参照)。この技術では、接着材層の介在により、表面層を有する多孔質フィルムで被研磨物を密着保持して研磨加工するときに、表面層を有する多孔質フィルムに研磨液が浸透しても厚さバラツキを低減した多孔質フィルムでは研磨液の浸透が抑制される。このため、表面層側の多孔質フィルムが硬くなり被研磨物保持能力が低下しても、もう1枚の多孔質フィルムの弾力性が維持されることから、保持パッド全体として被研磨物保持能力を維持することができる。
特開2004−90124号公報 特開2005−11972号公報
しかしながら、特許文献1の技術では、保持パッドを平坦化するために、目的とする被研磨物の研磨加工を行う前に、矯正板を使用した矯正作業を行わなければならない。このため、研磨機に保持パッドを装着してもすぐに研磨加工を行うことができず、研磨加工全体の作業効率が低下する。一方、特許文献2の技術では、研磨液の浸透が抑制された多孔質フィルムの弾力性で厚さバラツキの吸収が期待されるものの、被研磨物に密着する多孔質フィルムの厚さバラツキが湿式成膜時のまま残されるため、その厚さバラツキが大きくなると、厚さバラツキの吸収が不十分となる。厚さバラツキが残されていると、大型化が進められている被研磨物の研磨加工では、被研磨物の平坦性の低下を招く。従って、被研磨物保持能力を確保しつつ厚さ精度に一層優れた保持パッドが望まれている。
本発明は上記事案に鑑み、被研磨物の平坦性を向上させるために、厚さ精度を向上させた保持パッドを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は、被研磨物を保持するための保持面を有し前記保持面側に微多孔が形成され内部に前記保持面側に形成された微多孔より大きい孔径の発泡が形成された第1の軟質プラスチックシートと、前記第1の軟質プラスチックシートの保持面側に形成された微多孔より大きく前記第1の軟質プラスチックシートに形成された発泡より小さい孔径の発泡が略均等に形成され、かつ、前記第1の軟質プラスチックシートより小さい圧縮率を有する第2の軟質プラスチックシートとを備え、前記第2の軟質プラスチックシートは、前記第1の軟質プラスチックシートの保持面の反対面側に接合されており、前記第1の軟質プラスチックシートが接合された反対面側が前記第1及び第2の軟質プラスチックシートの全体の厚さが一様となるようにバフ処理されていることを特徴とする。
本発明では、第1の軟質プラスチックシートの保持面側に形成された微多孔より大きく第1の軟質プラスチックシートに形成された発泡より小さい孔径の発泡が略均等に形成され、かつ、第1の軟質プラスチックシートより小さい圧縮率を有する第2の軟質プラスチックシートが、第1の軟質プラスチックシートの保持面の反対面側に接合されているため、第2の軟質プラスチックシートの外力に対する変形量が第1の軟質プラスチックシートより小さくなることから、第2の軟質プラスチックシートの第1の軟質プラスチックシートが接合された反対面側をバフ処理するときに第1の軟質プラスチックシートの伸縮が第2の軟質プラスチックシートで抑制されるので、第1及び第2の軟質プラスチックシートの全体の厚さ精度を向上させることができ、厚さ精度の向上により略平坦化した保持面に被研磨物を当接し保持することで研磨加工時に被研磨物にかかる押圧力が均等化されるので、被研磨物の平坦性を向上させることができる。
この場合において、第2の軟質プラスチックシートが第1の軟質プラスチックシートより大きい硬度を有していてもよい。また、第1及び第2の軟質プラスチックシートをいずれもポリウレタン樹脂製とすることができる。このとき、第1及び第2の軟質プラスチックシートがポリウレタン樹脂で接合されるようにしてもよい。また、第2の軟質プラスチックシートのバフ処理された面側に、定盤に装着するための両面テープの片面が更に貼り合わされていてもよい。このとき、第2の軟質プラスチックシートと両面テープとの間に、少なくとも可撓性フィルム、不織布及び織布から選択される1種の基材が更に貼り合わされていてもよい。
本発明によれば、第1の軟質プラスチックシートに形成された微多孔より大きく発泡より小さい孔径の発泡が略均等に形成され、かつ、第1の軟質プラスチックシートより小さい圧縮率を有する第2の軟質プラスチックシートが、第1の軟質プラスチックシートの保持面の反対面側に接合されているため、第2の軟質プラスチックシートの外力に対する変形量が第1の軟質プラスチックシートより小さくなることから、第2の軟質プラスチックシートをバフ処理するときに第1の軟質プラスチックシートの伸縮が第2の軟質プラスチックシートで抑制されるので、第1及び第2の軟質プラスチックシートの全体の厚さ精度を向上させることができ、厚さ精度の向上により略平坦化した保持面に被研磨物を当接し保持することで研磨加工時に被研磨物にかかる押圧力が均等化されるので、被研磨物の平坦性を向上させることができる、という効果を得ることができる。
以下、図面を参照して、本発明に係る保持パッドの実施の形態について説明する。
(保持パッド)
図1に示すように、本実施形態の保持パッド1は、ポリウレタン樹脂で成膜され被研磨物を保持するための保持面Pを有する第1の軟質プラスチックシートとしてのポリウレタンシート2と、ポリウレタンシート2の保持面Pの反対面側に接合されポリウレタン樹脂で成膜された第2の軟質プラスチックシートとしてのポリウレタンシート3とを備えている。
ポリウレタンシート2は、保持面P側に、図示を省略した緻密な微多孔が形成されたスキン層2aを有しており、内部(スキン層2aより内側)に、ナップ層2bを有している。ナップ層2bには、スキン層2aに形成された微多孔より孔径が大きく、ポリウレタンシート2の厚さのほぼ全体に亘る長さで厚さ方向に沿って丸みを帯びた断面略三角状の発泡5が形成されている。発泡5は、保持面P側の孔径がポリウレタンシート3側より小さく形成されている。すなわち、発泡5は、スキン層2a側で縮径されている。発泡5同士の間のポリウレタン樹脂中には、スキン層2aに形成された微多孔より孔径が大きく発泡5より孔径が小さい図示しない発泡が形成されている。スキン層2aの図示を省略した微多孔、ナップ層2bの発泡5及び図示しない発泡は、不図示の連通孔で立体網目状につながっている。
一方、ポリウレタンシート3には、ポリウレタンシート2のスキン層2aに形成された微多孔より大きくナップ層2bに形成された発泡5より小さい孔径の略球状の発泡6が略均等に形成されている。このため、ポリウレタンシート2、3のそれぞれを加圧したときは、ポリウレタンシート2の発泡5がポリウレタンシート3の発泡6より大きく変形することから、ポリウレタンシート3の圧縮率(加圧したときの厚さ減少分の加圧する前の厚さに対する百分率)がポリウレタンシート2より小さくなる。ポリウレタンシート2の圧縮率は、例えば、10%〜70%の範囲に設定されており、ポリウレタンシート3の圧縮率は、例えば、1%〜5%の範囲に設定されている。また、ポリウレタンシート3は、圧縮率がポリウレタンシート2より小さいため、硬度がポリウレタンシート2より大きくなる。ポリウレタンシート2とポリウレタンシート3とは、ポリウレタン樹脂で接合されている。ポリウレタンシート3のポリウレタンシート2が接合された反対面側は、ポリウレタンシート2、3の全体の厚さ(図1の縦方向の長さ)が一様となるようにバフ処理されている(詳細後述)。
また、保持パッド1は、ポリウレタンシート3のバフ処理された面側に、ポリウレタンシート2、3を支持する基材7が貼り合わされている。基材7には、少なくともポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する。)製フィルム等の可撓性フィルム、不織布又は織布から選択される1種が使用されている。基材7の下面側(ポリウレタンシート3と反対側)には、一面側(最下面側)に剥離紙9を有し研磨機に保持パッド1を装着するための両面テープ8の他面側が貼り合わされている。
(保持パッドの製造)
保持パッド1は、図2に示す各工程を経て製造されるが、準備工程〜洗浄・乾燥工程でそれぞれ成膜されたポリウレタンシート2、3が接合工程で接合される。ポリウレタンシート2の作製、ポリウレタンシート3の作製の順に説明する。
準備工程では、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂を溶解可能な水混和性の有機溶媒のN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する。)及び添加剤を混合してポリウレタン樹脂を溶解させる。ポリウレタン樹脂には、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系等の樹脂から選択して用い、例えば、ポリウレタン樹脂を30重量%となるようにDMFに溶解させる。添加剤としては、発泡5の大きさや量(個数)を制御するため、カーボンブラック等の顔料、発泡を促進させる親水性活性剤及びポリウレタン樹脂の凝固再生を安定化させる疎水性活性剤等を用いることができる。得られた溶液を濾過することで凝集塊等を除去した後、真空下で脱泡してポリウレタン樹脂溶液45を得る。
塗布工程、凝固再生工程及び洗浄・乾燥工程では、準備工程で得られたポリウレタン樹脂溶液を成膜基材に連続的に塗布し、水系凝固液に浸漬することでポリウレタン樹脂を凝固再生させ、洗浄後乾燥させてポリウレタンシート2を得る。塗布工程、凝固再生工程及び洗浄・乾燥工程は、図3に示す成膜装置で連続して実行される。
図3に示すように、成膜装置60は、ポリウレタン樹脂に対して貧溶媒である水を主成分としポリウレタン樹脂を凝固再生させるための凝固液25が満たされた凝固槽20、凝固再生後のポリウレタン樹脂を洗浄する水等の洗浄液35が満たされた洗浄槽30及びポリウレタン樹脂を乾燥させるためのシリンダ乾燥機50を連続して備えている。
凝固槽20の上流側には、成膜基材43を供給する基材供給ローラ41が配置されている。基材供給ローラ41の下流側にはガイドローラ48が配置されており、ガイドローラ48の下流側には成膜基材43にポリウレタン樹脂溶液45を略均一に塗布するナイフコータ46が配置されている。ナイフコータ46の下流側で凝固槽20の上方にはガイドローラ21が配置されている。なお、成膜基材43には、凝固液25が浸透しないPET製等の可撓性フィルムが用いられる。
凝固槽20には、洗浄槽30側の内側下部にガイドローラ23が配置されている。凝固槽20の上方で洗浄槽30側には凝固再生後のポリウレタン樹脂を脱水処理するマングルローラ28が配置されている。マングルローラ28の下流側で洗浄槽30の上方にはガイドローラ31が配置されている。洗浄槽30には、成膜基材43の搬送方向と同じ長手方向で上部に4本、下部に5本のガイドローラ33が上下交互となるように配設されている。洗浄槽30の上方でシリンダ乾燥機50側には、洗浄後のポリウレタン樹脂を脱水処理するマングルローラ38が配置されている。シリンダ乾燥機50には、内部に熱源を有する4本のシリンダが上下4段に配設されている。シリンダ乾燥機50の下流側には、乾燥後のポリウレタン樹脂を(成膜基材43と共に)巻き取る巻取ローラ42が配置されている。なお、マングルローラ28、38、シリンダ乾燥機50及び巻取ローラ42は、図示を省略した回転駆動モータに接続されており、これらの回転駆動力により成膜基材43が基材供給ローラ41から巻取ローラ42まで搬送される。
図2に示すように、塗布工程では、準備工程で調製したポリウレタン樹脂溶液45が常温下でナイフコータ46により成膜基材43に略均一に塗布される。このとき、ナイフコータ46と成膜基材43の上面との間隙(クリアランス)を調整することで、ポリウレタン樹脂溶液45の塗布厚さ(塗布量)を調整する。
凝固再生工程では、ナイフコータ46でポリウレタン樹脂溶液45が塗布された成膜基材43が、ガイドローラ21からガイドローラ23へ向けて凝固液25中に導入される。凝固液25中では、まず、塗布されたポリウレタン樹脂溶液45の表面に厚さ数μmにわたりスキン層2aを構成する微多孔が形成される。その後、ポリウレタン樹脂溶液45中のDMFと凝固液25との置換の進行によりポリウレタン樹脂が成膜基材43の片面に凝固再生する。この凝固再生は、ポリウレタン樹脂溶液45が塗布された成膜基材43が凝固液25中に進入してからガイドローラ23に到る間に完了する。DMFがポリウレタン樹脂溶液45から脱溶媒するときに、ポリウレタン樹脂中にナップ層2bを構成する発泡5が形成される。凝固再生したポリウレタン樹脂は、凝固液25から引き上げられ、マングルローラ28で余分な凝固液25が絞り落とされた後、ガイドローラ31を介して洗浄槽30に搬送され洗浄液35中に導入される。
洗浄・乾燥工程では、洗浄液35中に導入されたポリウレタン樹脂をガイドローラ33に上下交互に通過させることによりポリウレタン樹脂が洗浄される。洗浄後、ポリウレタン樹脂は洗浄液35から引き上げられ、マングルローラ38で余分な洗浄液35が絞り落とされる。その後、シリンダ乾燥機50の4本のシリンダ間を交互(図3の矢印方向)に、シリンダの周面に沿って通過させることでポリウレタン樹脂を乾燥させる。乾燥後のポリウレタン樹脂(ポリウレタンシート2)は、成膜基材43と共に巻取ローラ42に巻き取られる。
次に、ポリウレタンシート3の作製について説明するが、上述したポリウレタンシート2の作製と同じ工程、条件、成膜装置についてはその説明を省略し、異なる工程のみ説明する。
準備工程では、ポリウレタン樹脂、DMF、添加剤及び発泡調整用の調整有機溶媒を配合する。ポリウレタン樹脂、DMF、添加剤を混合しポリウレタン樹脂を溶解させた後、凝固再生時のDMFと水との置換を遅らせるため、所定量の調整有機溶媒を添加し樹脂エマルジョン49を得る。調整有機溶媒には、水に対する溶解度がDMFより小さく、DMFに溶解させたポリウレタン樹脂を凝固(ゲル化)させることなく、ポリウレタン樹脂を溶解させた溶液に均一に混合又は分散できるものを用いる。具体例としては、酢酸エチル、イソプロピルアルコール等を挙げることができる。調整有機溶媒の添加量を変えることで、ポリウレタンシート3の内部に形成される発泡6の大きさや量(個数)を制御することができ、ポリウレタンシート3の圧縮率を調整することができる。本例では、ポリウレタンシート3の圧縮率を上述した範囲に設定するため、調整有機溶媒の添加量を樹脂エマルジョン49の100部に対して20〜45部の範囲とすることが好ましい。
凝固再生工程では、樹脂エマルジョン49が塗布された成膜基材43が凝固液25に導入され、ポリウレタン樹脂を凝固再生させる。凝固液25中では、まず、樹脂エマルジョン49の表面にポリウレタンシート2と同様にスキン層が形成されるが、樹脂エマルジョン49に調整有機溶媒が添加されているため、樹脂エマルジョン49中のDMF及び調整有機溶媒と凝固液25との置換の進行が遅くなる。このため、表面に形成されたスキン層より内側には、ポリウレタンシート2のナップ層2bに形成された発泡5より孔径が小さくスキン層2aに形成された微多孔より孔径が大きい発泡6が略均等に形成される。
ここで、ポリウレタンシート2の発泡5及びポリウレタンシート3の発泡6の形成について説明する。ポリウレタン樹脂の溶解に使用したDMFは、ポリウレタン樹脂の溶解に一般に用いられる溶媒であり、水に対して任意の割合で混合することができる。このため、ポリウレタンシート2の作製では、凝固液25にポリウレタン樹脂溶液45を浸漬すると、まずポリウレタン樹脂溶液45の表面でDMFと凝固液25との置換(ポリウレタン樹脂の凝固再生)が起こりスキン層2aの微多孔が形成される。その後、凝固液25がスキン層2aの侵入しやすい部分からポリウレタン樹脂溶液45内部に侵入するため、DMFと凝固液25との置換が急速に進行する部分と遅れる部分とが生じ、比較的大きな発泡5が形成される。凝固液が浸透しないPET製フィルムを成膜基材43に使用することから、ポリウレタン樹脂溶液45の表面側(スキン層2a側)からのみDMFが溶出するため、発泡5は成膜基材43側が大きく丸みを帯びた三角錘状となる。
これに対して、ポリウレタンシート3の作製では、ポリウレタン樹脂の溶解後に調整有機溶媒を添加して樹脂エマルジョン49とする。凝固液25に樹脂エマルジョン49を浸漬すると、樹脂エマルジョン49の表面で、ポリウレタンシート2のスキン層2aと同様に微多孔が形成されたスキン層が形成される。調整有機溶媒は、水に対する溶解度がDMFより小さいため、水(凝固液25)中への溶出がDMFより遅くなる。また、樹脂エマルジョン49では、調整有機溶媒を添加した分、DMF量が少なくなる。このため、DMF及び調整有機溶媒と凝固液25との置換速度が遅くなるので、ポリウレタンシート2のような発泡5の形成が抑制され、ポリウレタンシート3のスキン層より内側には、発泡6が概ね均等に分散して形成される。従って、発泡6の孔径は、ポリウレタンシート2のナップ層2bの発泡5より小さくスキン層2aの微多孔より大きくなる。また、発泡6は、DMF及び調整有機溶媒の脱溶媒に伴い形成されるため、発泡6の孔径より小さい連通孔で立体網目状に連通される。
図2に示すように、接合工程では、乾燥後のポリウレタンシート2、3がそれぞれ成膜基材43から剥離され、ポリウレタンシート2のスキン層2aの反対面側にポリウレタンシート3が接合される。接合には、DMFに少量のポリウレタン樹脂を溶解させた接合溶液を使用する。このポリウレタン樹脂には、ポリウレタンシート2、3と同じポリウレタン樹脂が使用される。ポリウレタン樹脂の溶解量は、ポリウレタンシート2、3の接合が可能であればよく、例えば、1〜5%程度でよい。ポリウレタンシート2、3を接合溶液を介して接触させ、加圧しながら加熱する。DMFを揮発させることでポリウレタンシート2、3がポリウレタン樹脂を介して接合される。なお、ポリウレタンシート3はスキン層が形成された反対面(成膜基材43側の面)側が接合される。
バフ処理工程では、ポリウレタンシート3のポリウレタンシート2が接合された反対面側にバフ処理が施される。図4(A)に示すように、巻取ローラ42に巻き取られたポリウレタンシート2、3はそれぞれPET製フィルムの成膜基材43上に形成されている。成膜時にはポリウレタンシート2、3の厚さにはいずれもバラツキが生じるため、略平坦な成膜基材43上に形成されたポリウレタンシート2、3の表面(成膜基材43と反対面側)には凹凸が形成されている。成膜基材43を剥離したポリウレタンシート2、3を接合した後、図4(B)に示すように、ポリウレタンシート2の保持面Pに、平坦な表面を有する圧接ローラ65の表面を圧接することで、保持面Pが平坦となり、ポリウレタンシート3のポリウレタンシート2が接合された反対面Q1側に凹凸が出現する。反対面Q1側に出現した凹凸がバフ処理で除去される。本例では、連続的に製造されたポリウレタンシート2、3が帯状のため、保持面Pに圧接ローラ65を圧接しながら、反対面Q1側を連続的にバフ処理する。これにより、図4(C)に示すように、反対面Q1側がバフ処理されて略平坦な反対面Qが形成されるため、接合されたポリウレタンシート2、3の全体の厚さのバラツキが解消される。なお、図4(A)では、ポリウレタンシート2、3に形成された発泡5、微発泡6を捨象して示している。また、図4(C)では説明をわかりやすくするために保持面P及び反対面Qを平坦に示しているが、接合されたポリウレタンシート2、3では両面共にポリウレタンシート2、3の全体の厚さが一様となる凹凸を呈しており、基材7を貼り合わせること又は研磨機に装着することで保持面Pが略平坦となる。
図2に示すように、ラミネート加工工程では、ポリウレタンシート3のバフ処理された面(反対面Q)側に基材7を貼り合わせる。基材7のポリウレタンシート3と反対面側には、一面側に剥離紙9が貼付された両面テープ8の他面側を貼り合わせる。そして、円形等の所望の形状に裁断した後、汚れや異物等の付着が無いことを確認する等の検査を行い保持パッド1を完成させる。
得られた保持パッド1で被研磨物を保持して研磨加工を行うときは、例えば、片面研磨機の保持定盤に保持パッド1を剥離紙9を剥離した両面テープ8で装着し、研磨定盤に研磨パッドを装着する。被研磨物を加工表面の背面側で保持パッド1を介して保持定盤に保持させ、加工表面側を研磨パッドで研磨加工する。保持定盤の保持パッド1を装着する面及び研磨定盤の研磨パッドを装着する面は、いずれも平坦に形成されている。このため、保持定盤に装着された保持パッド1は、平坦な保持面Pを形成する。
(作用)
次に、本実施形態の保持パッド1の作用等について説明する。
本実施形態の保持パッド1では、ポリウレタンシート2のスキン層2aが形成された反対面側にポリウレタンシート3が接合されている。ポリウレタンシート3に略均等に形成された発泡6の孔径がポリウレタンシート2のスキン層2aの微多孔より大きくナップ層2bの発泡5より小さいことから、ポリウレタンシート3の圧縮率がポリウレタンシート2より小さくなり、ポリウレタンシート3では外力に対する変形量がポリウレタンシート2より小さくなる。このため、ポリウレタンシート2に接合されたポリウレタンシート3を連続的にバフ処理するときに、ポリウレタンシート2の伸縮がポリウレタンシート3で抑制される。従って、ポリウレタンシート2、3の全体の厚さが一様となるように安定したバフ処理が可能となるので、厚さのバラツキを解消して全体の厚さ精度を向上させることができる。得られた保持パッド1を片面研磨機の保持定盤に装着し保持面Pに被研磨物を密着させることで、厚さ精度の向上により平坦化した保持面Pで被研磨物が保持される。これにより、被研磨物の加工表面が研磨定盤に装着された研磨パッドに略均等に押し付けられるので、被研磨物の加工表面の平坦性を向上させることができる。
また、本実施形態の保持パッド1では、ポリウレタンシート2に接合されたポリウレタンシート3の外力に対する変形量がポリウレタンシート2より小さく、ポリウレタンシート3の硬度がポリウレタンシート2より大きいことから、接合されたポリウレタンシート2、3の全体の弾力性がポリウレタンシート3で抑制される。このため、被研磨物を保持するときに、ポリウレタンシート2が変形しつつ平坦化した保持面Pが被研磨物の全面に略均等に押し付けられるので、被研磨物の加工表面にかかる押圧力が均等化することから、被研磨物の平坦性を向上させることができる。研磨加工される被研磨物については、大型化や高品質化などが進められることが予想されることから、被研磨物の平坦性についても、要求される品質はこれまで以上に高くなると考えられる。このような場合にも、本実施形態の保持パッド1を使用することで、要求品質を満たすことが期待できる。
更に、本実施形態の保持パッド1では、ポリウレタンシート2、3の接合後、ポリウレタンシート3のポリウレタンシート2が接合された反対面Q1側がバフ処理される。このため、ポリウレタンシート2の平坦で被研磨物との接触性に優れるスキン層2aの表面、すなわち保持面Pを損なうことなくポリウレタンシート2、3の全体の厚さ精度を向上させることができる。
また更に、本実施形態の保持パッド1では、ポリウレタンシート3の圧縮率が1%〜5%に設定されている。圧縮率が1%より小さいとポリウレタンシート3が硬くなり過ぎるため、バフ処理時に保持面Pに圧接ローラ65の平坦な表面を圧接しても、ポリウレタンシート3のポリウレタンシート2が接合された反対面Q1側に凹凸が出現しにくくなり、バフ処理による厚さ精度の向上が不十分となる。反対に、圧縮率が5%より大きいとバフ処理時にポリウレタンシート2の伸縮の抑制が不十分となり厚さ精度の向上が不十分となる。従って、ポリウレタンシート3の圧縮率を上述した範囲に設定することで、バフ処理時の厚さ精度の向上、及び、研磨加工時の被研磨物の平坦性の向上を実現することができる。
更にまた、本実施形態の保持パッド1では、ポリウレタンシート2、3がいずれもポリウレタン樹脂で形成されている。これら2枚のポリウレタンシート2、3の接合には、同じポリウレタン樹脂を溶解した接合溶液が使用される。ポリウレタンシート2、3が同じ材質のポリウレタン樹脂で接合されるため、接合面での親和性が異種材料の接合より優れるので、ポリウレタンシート2、3を容易かつ確実に接合することができる。
また、図5に示すように、ポリウレタンシート2のみを使用して保持面Pの反対面側をバフ処理した保持パッド12では、バフ処理によりある程度の厚さ精度が得られるため、被研磨物の保持に使用しても十分な平坦性が期待できる。ところが、ポリウレタンシート2は、バフ処理された面で発泡5が開口するため、基材7等との貼り合わせに要する接着面積が減少することから、研磨加工時にポリウレタンシート2のずれ等が生じることがある。これに対して、本実施形態の保持パッド1では、ポリウレタンシート2に接合されたポリウレタンシート3がバフ処理されるため、ポリウレタンシート3の発泡6が開口しても、発泡6の孔径が発泡5より小さいことから、基材7との接着面積を確保してずれを防止することができる。
更に、本実施形態の保持パッド1では、ポリウレタンシート3のバフ処理された反対面Q側にPET製フィルムの基材7が貼り合わされている。このため、ポリウレタンシート2、3が基材7に支持されるので、保持パッド1の搬送時や研磨機への装着時の取り扱いを容易にすることができる。
従来保持パッドに使用するポリウレタンシートの製造に用いられる湿式成膜法では、粘性を有するポリウレタン樹脂溶液の成膜基材への塗布時に生じる塗布厚さのバラツキやポリウレタン樹脂の凝固再生時に生じる脱溶媒のバラツキのため、得られるポリウレタンシートに厚さバラツキが生じる。厚さバラツキを減少させるため、保持パッドの表面にバフ処理が施されるが、被研磨物の保持に有効なスキン層がバフ処理で消失してしまうため、被研磨物を平坦に保持することが難しくなる。元々、スキン層の厚さがポリウレタンシートの厚さバラツキより小さいため、スキン層を残しつつバフ処理しても、厚さバラツキを十分改善することはできない。保持パッドを研磨機に装着後、矯正板の平坦な面を押し付けることで厚さバラツキを解消する方法もあるが、研磨加工直前に矯正作業を行うため、研磨機に装着してもすぐに研磨加工を行うことができず、研磨加工全体の作業効率が低下する。また、保持パッドに使用されるポリウレタン樹脂等が弾性を有しているため、一時的に矯正しても元に戻ることがある。これを回避するためには、矯正時にかける押圧力、温度、水分の調整等の煩雑な作業が必要となる。一方、バフ処理時には、バフ処理が施される反対面側を圧接ローラの平坦な表面に圧接する際に、ポリウレタンシートにテンションが掛かる。このテンションによって、ポリウレタンシートのナップ層に形成された発泡が変形する。このとき、ポリウレタンシートの厚さのほぼ全体に亘るほどの大きな発泡の形成された部分が他の部分に比べて伸縮しやすい。結果として、ポリウレタンシートにテンションが掛かったときに、伸縮しやすい部分と、そうでない部分とで厚みに差が生じてしまう。このため、ポリウレタンシートの厚さが一様となるような安定したバフ処理ができず、もとのシートよりは厚さ精度が改善されるものの、バフ処理時に生じるポリウレタンシートの厚み斑の分、厚さ精度が低下してしまう。このようなポリウレタンシートの厚み斑を防止するために発泡の形成を抑制すると、ポリウレタンシートが硬くなるため、保持した被研磨物にスクラッチ等が生じて平坦性を損なうことがある。本実施形態は、これらの問題を解決することができる保持パッドである。
なお、本実施形態の保持パッド1では、ポリウレタンシート2、3を同じポリウレタン樹脂製とする例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ポリウレタンシート3に代えてPET製等の樹脂シートやポリウレタン樹脂等を含浸した不織布シートを使用してもよく、バフ処理時にポリウレタンシート2の伸縮が抑制できればよい。また、本実施形態の保持パッド1では、ポリウレタンシート3の作製に調整有機溶媒を添加する例を示したが、本発明はこれに制限されるものではなく、ポリウレタンシート2のスキン層2aの微多孔より孔径が大きくナップ層2bの発泡5より孔径が小さい発泡6が形成されていればよい。換言すれば、発泡5の形成が抑制されていればよく、例えば、湿式成膜法では、凝固浴25にDMFを添加しておくようにしてもよい。このようにすれば、ポリウレタン樹脂の凝固再生時に脱溶媒の進行が遅くなるため、発泡5の形成を抑制することができる。更に、ポリウレタンシート3を湿式成膜法で作製することに代えて、乾式法で作製するようにしてもよい。
また、本実施形態では、ポリウレタンシート2、3の接合に、少量のポリウレタン樹脂をDMFに溶解させた接合溶液を使用する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、DMFのみを使用しても、ポリウレタンシート2、3の接合面のポリウレタンがDMFにより軟化するため、加圧することで十分接合可能である。また、ポリウレタンシート2、3の接合面を加熱により軟化させ接合するようにしてもよい。もちろん、接着剤等を使用することも可能である。
更に、本実施形態では、ポリウレタンシート3のバフ処理された反対面Q側にPET製フィルムの基材7を貼り合わせる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、不織布や織布等を基材7としてもよい。基材7を貼り合わせずに直接両面テープ8を貼り合わせてもよい。また、基材7、両面テープ8をいずれも貼り合わせることなく、接合したポリウレタンシート2、3を研磨加工に使用することもできる。この場合は、研磨機の保持定盤に保持パッドを装着する際に接着剤や両面テープを使用すればよい。
また更に、本実施形態では、ポリウレタン樹脂溶液45、樹脂エマルジョン49の塗布にナイフコータ46を例示したが、例えば、リバースコータ、ロールコータ等を用いてもよく、成膜基材43に略均一な厚さに塗布可能であれば特に制限されるものではない。また、本実施形態では、ポリウレタン樹脂の乾燥にシリンダ乾燥機50を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、熱風乾燥機等を用いてもよい。
更にまた、本実施形態では、ポリウレタンシート2が接合されたポリウレタンシート3は、バフ機等でポリウレタンシート2が接合された反対面側がバフ処理されるが、バフ処理量はポリウレタンシート2、3の全体の厚さの最大値と最小値との差の2倍以上とすることが望ましい。バフ処理ではサンドペーパーやダイヤモンドバフロール等の種々のものが使用されるが、均一な処理(研削除去)ができるものであればいずれも使用できる。このとき、バフ番手(砥粒の粗さを示す番号)を高くする程、細かな砥粒で研削でき均一なバフ処理ができる。更に、バフ処理を、1回目で低いバフ番手(粗い砥粒)で研削をし、2回目で1回目より高いバフ番手のもので研削量を小さくしてバフ仕上げ処理することで、厚み精度を更に上げることもできる。
以下、本実施形態に従い製造した保持パッド1の実施例について説明する。なお、比較のために製造した比較例の研磨パッドについても併記する。
(実施例1)
実施例1では、ポリウレタンシート2、3の作製にポリウレタン樹脂としてポリエステルMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)ポリウレタン樹脂(100%モジュラス10MPa)を用いた。ポリウレタンシート2の作製では、30%ポリウレタン樹脂溶液の100部に対して、溶媒のDMFの45部、顔料としてカーボンブラック30%を含むDMF分散液40部、成膜安定剤の疎水性活性剤2部を添加し混合してポリウレタン樹脂溶液45を調製し、厚さ0.8mmのポリウレタンシート2を得た。一方、ポリウレタンシート3の作製では、調整有機溶媒の酢酸エチルの45部を添加する以外はポリウレタン樹脂溶液45の調製と同様にして樹脂エマルジョン49を調製し、厚さ0.4mmのポリウレタンシート3を得た。ポリウレタンシート2のスキン層が形成された反対面側にポリウレタンシート3を接合し、ポリウレタンシート3のポリウレタンシート2が接合された反対面側をバフ処理量0.2mmとしバフ番手♯180のサンドペーパーを使用してバフ処理し、基材7、両面テープ8を貼り合わせて実施例1の保持パッド1を製造した。
(比較例1)
比較例1では、厚さ1.2mmとする以外は実施例1と同様にして作製したポリウレタンシート2のみを使用し、基材7、両面テープ8を貼り合わせて比較例1の保持パッドを製造した。
(比較例2)
比較例2では、比較例1で作製したポリウレタンシート2のみを使用し、スキン層2aの反対面側をバフ処理量0.2mmでバフ処理し、基材7、両面テープ8を貼り合わせて比較例2の保持パッドを製造した(図5参照)。
(物性評価)
次に、各実施例及び比較例で作製した保持パッドについて、厚さ、圧縮率及び硬度の各物性値を測定した。厚さの測定は、ダイヤルゲージ(最小目盛り0.01mm)を使用し加重100g/cmをかけて測定した。縦1m×横1mのポリウレタンシート2、3を縦横10cmピッチで最小目盛りの10分の1(0.001mm)まで読み取り、厚さの平均値、標準偏差σを求めた。圧縮率は、日本工業規格(JIS L 1021)に従い、ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を使用して求めた。具体的には、初荷重で30秒間加圧した後の厚さtを測定し、次に最終圧力のもとで5分間放置後の厚さtを測定した。圧縮率は、圧縮率(%)=(t−t)/t×100で算出した。このとき、初荷重は100g/cm、最終圧力は1120g/cmであった。硬度(ショアA)は、日本工業規格(JIS K 7215)に従い求めた。厚さ、圧縮率及び硬度の測定結果を下表1に示す。
Figure 0004783231
表1に示すように、厚さの標準偏差σは、ポリウレタンシート2のみをバフ処理せずに使用した比較例1では0.017mmを示し、バフ処理を行った比較例2では0.010mmを示し比較例1より小さくなり、バフ処理を行ったことにより平坦性が向上した。また、圧縮率は、比較例1では49.5%を示し、比較例2では50.9%を示している。
これに対して、ポリウレタンシート2、3を接合した実施例1では、厚さの標準偏差σは0.007mmを示しており、ポリウレタンシート2のみでバフ処理を行った比較例2より小さく抑制された。また、圧縮率がポリウレタンシート2のみの比較例1、比較例2より小さくなっており、硬度が比較例1、比較例2より大きくなっている。このことから、実施例1では、貼り合わされたポリウレタンシート3によってポリウレタンシート2の伸縮が抑制されていることが判る。従って、バフ処理時に生じるポリウレタンシート2の伸縮もポリウレタンシート3により抑制され、バフ処理によって厚さ精度が向上することが判った。この実施例1の保持パッド1を介して被研磨物を保持することで、研磨加工で被研磨物の表面を高精度に平坦化することが期待できる。
本発明は被研磨物の平坦性を向上させるために厚さ精度を向上させた保持パッドを提供するため、保持パッドの製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
本発明に係る保持パッドを示す断面図である。 実施形態の保持パッドの製造工程を示す工程図である。 保持パッドのポリウレタンシートの製造に用いる成膜装置の概略構成を示す正面図である。 バフ処理工程でのポリウレタンシートの状態変化を示す断面図であり、(A)は成膜基材に形成されたときの状態、(B)は2枚のポリウレタンシートを接合した後、保持面を圧接ローラに圧接したときの状態、(C)はバフ処理後に圧接ローラを取り外したときの状態をそれぞれ示す。 内部に発泡が形成されスキン層の反対面側がバフ処理されたポリウレタンシートを使用した比較例の保持パッドを示す断面図である。
符号の説明
P 保持面
1 保持パッド
2 ポリウレタンシート(第1の軟質プラスチックシート)
3 ポリウレタンシート(第2の軟質プラスチックシート)
5 発泡
6 発泡

Claims (6)

  1. 被研磨物を保持するための保持面を有し前記保持面側に微多孔が形成され内部に前記保持面側に形成された微多孔より大きい孔径の発泡が形成された第1の軟質プラスチックシートと、前記第1の軟質プラスチックシートの保持面側に形成された微多孔より大きく前記第1の軟質プラスチックシートに形成された発泡より小さい孔径の発泡が略均等に形成され、かつ、前記第1の軟質プラスチックシートより小さい圧縮率を有する第2の軟質プラスチックシートとを備え、前記第2の軟質プラスチックシートは、前記第1の軟質プラスチックシートの保持面の反対面側に接合されており、前記第1の軟質プラスチックシートが接合された反対面側が前記第1及び第2の軟質プラスチックシートの全体の厚さが一様となるようにバフ処理されていることを特徴とする保持パッド。
  2. 前記第2の軟質プラスチックシートは、前記第1の軟質プラスチックシートより大きい硬度を有することを特徴とする請求項1に記載の保持パッド。
  3. 前記第1及び第2の軟質プラスチックシートは、いずれもポリウレタン樹脂製であることを特徴とする請求項1に記載の保持パッド。
  4. 前記第1及び第2の軟質プラスチックシートは、ポリウレタン樹脂で接合されていることを特徴とする請求項3に記載の保持パッド。
  5. 前記第2の軟質プラスチックシートのバフ処理された面側に、定盤に装着するための両面テープの片面が更に貼り合わされていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の保持パッド。
  6. 前記第2の軟質プラスチックシートと前記両面テープとの間に、少なくとも可撓性フィルム、不織布及び織布から選択される1種の基材が更に貼り合わされていることを特徴とする請求項5に記載の保持パッド。
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