JP5534834B2 - 保持パッド及び研磨加工方法 - Google Patents

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Description

本発明は保持パッド及び研磨加工方法に係り、特に、湿式成膜法により形成されており、被研磨物を保持するための保持面側にスキン層を有し内部に保持面側から該保持面の背面側に向けて拡径した発泡が形成された軟質プラスチックシートを備えた保持パッド及び該保持パッドを使用した研磨加工方法に関する。
従来、レンズ、平行平面板、反射ミラー等の光学材料、ハードディスク用基板、シリコンウエハ、液晶ディスプレイ用ガラス基板等の材料(被研磨物)では、高精度な平坦性が要求されるため、研磨布を使用した研磨加工が行われている。通常、これらの被研磨物の研磨加工には、両面研磨機や片面研磨機が使用されている。被研磨物を片面ずつ研磨加工する片面研磨機では、表面が平坦な保持定盤に被研磨物が一面側で保持され、表面が平坦な研磨定盤に装着した研磨布により、研磨液を供給しながら被研磨物の他面側(加工表面)に研磨加工が行われている。
一般に、片面研磨機を使用した研磨加工では、被研磨物が金属製の保持定盤と直接接触して生じる被研磨物表面のスクラッチ(キズ)等を回避するため、保持定盤に軟質クロス等の保持パッドが装着されている。例えば、液晶ディスプレイ用ガラス基板等の保持パッドには、被研磨物を保持するための保持面側にスキン層を有し内部に保持面側から該保持面の背面側に向けて拡径した発泡が形成された軟質プラスチックシートが使用される。この軟質プラスチックシートは、軟質プラスチック(樹脂)を水混和性の有機溶媒に溶解させた樹脂溶液をシート状の成膜基材に塗布後、水系凝固液中で樹脂を凝固再生させる湿式成膜法で製造される。凝固再生に伴い、軟質プラスチックシートの表面(保持面)側にはスキン層が厚さ数μm程度に亘り緻密に形成され、スキン層より内側に発泡が連続して形成される。湿式成膜法により形成された軟質プラスチックシートは、樹脂溶液の塗布や、樹脂を凝固再生させるときの作業性から、通常、0.1〜1.0mmの厚さを有している。緻密に形成されたスキン層は、表面が平坦で被研磨物との接触性に優れるため、被研磨物の保持が可能となる。研磨加工時には、保持パッドが保持面の反対面で保持定盤に装着され、保持面が被研磨物に密着することで被研磨物が保持される。
ところが、湿式成膜法では、樹脂溶液が粘性を有するため、成膜基材への塗布時に厚み斑(バラツキ)が生じると共に、凝固再生時にも有機溶媒と水系凝固液との置換により厚さバラツキが生じやすい。このため、軟質プラスチックシートの保持面の平坦性が損なわれる(大きく波打った表面となる)。厚み斑が生じた軟質プラスチックシートを使用した保持パッドで被研磨物を保持して研磨加工を行うと、保持パッドの厚さの大きな部分で被研磨物にかかる押圧力が大きくなるため、被研磨物に均等な押圧力がかからなくなる。このため、保持パッドの厚さの大きな部分で被研磨物の加工表面が大きく研磨加工されて保持パッドの厚み斑が被研磨物に転写されることから、被研磨物の平坦性が損なわれる。
軟質プラスチックシートに生じた厚み斑を低減するために、軟質プラスチックシートの製造後に保持面側にバフ処理(表面サンディング)が施されることがある。スキン層の厚さが数μm程度しかなく軟質プラスチックシートの厚み斑より小さいことから、厚み斑を解消する程バフ処理するとスキン層が消失し発泡が保持面で開孔してしまうため、被研磨物保持性が低下する。また、スキン層を残すと厚み斑がそのまま残るため、被研磨物の平坦性を向上させることが難しくなる。これを解決するために、例えば、本発明者らは、軟質プラスチックシートの保持面の背面側が軟質プラスチックシートの厚さが一様となるようにバフ処理された保持パッドを開示している(特許文献1参照)。この保持パッドでは、保持面の背面側がバフ処理されるため、被研磨物保持性に優れたスキン層を損なうことなく厚み斑を低減することができる。
特開2006−62059号公報
しかしながら、特許文献1の技術では、スキン層を残しつつ厚み斑が低減するため、従来の被研磨物に対しては十分な平坦性を期待することができるものの、一層高度化する平坦性の要求を満たすことが難しくなりつつある。例えば、IPS(In-Place-Switching)駆動方式を採用した液晶ディスプレイ用ガラス基板では、高輝度かつ広視野角の優れた特性を発揮させるため、従来の被研磨物に要求される平坦性より高い平坦性が要求されている。さらには、このようなIPS液晶用ガラス基板に限らず、様々な分野で被研磨物に対する平坦性の要求が高まっている。従って、従来では問題とならない程度の軟質プラスチックシートの厚み斑でも、研磨加工時に被研磨物にかかる押圧力にバラツキが生じ、被研磨物に対する高度な平坦性の確保が難しくなる可能性がある。
本発明は上記事案に鑑み、被研磨物を確実に保持し被研磨物にかかる押圧力を均等化することができる保持パッド及び該保持パッドを使用した研磨加工方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、湿式成膜法により形成されており、被研磨物を保持するための保持面側にスキン層を有し内部に前記保持面側から該保持面の背面側に向けて拡径した発泡が形成された軟質プラスチックシートを備えた保持パッドにおいて、前記軟質プラスチックシートは、厚さが1mm〜2mmの範囲で一様となるように前記保持面の背面側がバフ処理されており、前記軟質プラスチックシートの厚さ方向に1cmあたりに100gの初荷重をかけたときの平均厚みをX、最大厚みをXmax、最小厚みをXminとしたときに、1cmあたりに初荷重に加えて100gの荷重をかけたときの前記平均厚みXに対する厚みの変化量の最小値Yminが、Ymin≧Xmax−Xminの関係を満たすことを特徴とする。
第1の態様では、軟質プラスチックシートの厚さが1mm〜2mmの範囲で一様となるように保持面の背面側がバフ処理されているため、定盤に装着することで保持面が略平坦となるので、保持面と被研磨物との接触性が向上して確実に被研磨物を保持することができると共に、軟質プラスチックシートの厚さ方向に1cmあたりに100gの初荷重をかけたときの平均厚みをX、最大厚みをXmax、最小厚みをXminとしたときに、1cmあたりに初荷重に加えて100gの荷重をかけたときの平均厚みXに対する厚みの変化量の最小値Yminが、Ymin≧Xmax−Xminの関係を満たすため、研磨加工時に、軟質プラスチックシートの厚みが初荷重による厚みのバラツキ範囲を越えて一様に変化することから、軟質プラスチックシートの弾力性が作用するので、被研磨物にかかる押圧力を均等化することができ、被研磨物の平坦性を向上させることができる。
第1の態様において、軟質プラスチックシートをポリウレタン樹脂製としてもよい。また、軟質プラスチックシートのバフ処理された面側に、定盤に装着するための両面テープを更に備えていてもよい。このとき、軟質プラスチックシートと両面テープとの間に、少なくとも可撓性フィルム、不織布及び織布から選択される1種の基材を更に備えることができる。
また、本発明の第2の態様は、湿式成膜法により形成されており、被研磨物を保持するための保持面側にスキン層を有し内部に前記保持面側から該保持面の背面側に向けて拡径した発泡が形成された軟質プラスチックシートを備えた保持パッドで保持された前記被研磨物を研磨加工する研磨加工方法であって、前記軟質プラスチックシートは、厚さが1mm〜2mmの範囲で一様となるように前記保持面の背面側がバフ処理されているとともに、前記軟質プラスチックシートの厚さ方向に1cmあたりに100gの初荷重をかけたときの平均厚みをX、最大厚みをXmax、最小厚みをXminとしたときに、1cmあたりに初荷重に加えて100gの荷重をかけたときの前記平均厚みXに対する厚みの変化量の最小値Yminが、Ymin≧Xmax−Xminの関係を満たしており、前記保持面の反対面側で前記保持パッドを定盤に装着し、前記保持面に前記被研磨物の一面を密着させて保持しながら前記被研磨物の他面側を研磨加工する、ステップを含む。
本発明によれば、軟質プラスチックシートの厚さが1mm〜2mmの範囲で一様となるように保持面の背面側がバフ処理されているため、定盤に装着することで保持面が略平坦となるので、保持面と被研磨物との接触性が向上して確実に被研磨物を保持することができると共に、軟質プラスチックシートの厚さ方向に1cmあたりに100gの初荷重をかけたときの平均厚みをX、最大厚みをXmax、最小厚みをXminとしたときに、1cmあたりに初荷重に加えて100gの荷重をかけたときの平均厚みXに対する厚みの変化量の最小値Yminが、Ymin≧Xmax−Xminの関係を満たすため、研磨加工時に、軟質プラスチックシートの厚みが初荷重による厚みのバラツキ範囲を越えて一様に変化することから、軟質プラスチックシートの弾力性が作用するので、被研磨物にかかる押圧力を均等化することができ、被研磨物の平坦性を向上させることができる、という効果を得ることができる。
本発明に係る実施形態の保持パッドを模式的に示す断面図である。 実施形態の保持パッドの製造工程の概略を示す工程図である。 バフ処理工程でのポリウレタンシートの状態変化を模式的に示す断面図であり、(A)は成膜基材に形成されたときの状態、(B)は保持面を圧接ローラに圧接したときの状態、(C)はバフ処理後に圧接ローラを取り外したときの状態をそれぞれ示す。 保持パッドに被研磨物を密着するときの状態を模式的に示す断面図であり、(A)は保持パッドが被研磨物に接触する前の状態、(B)は保持パッドが被研磨物に接触し被研磨物にかかる押圧力が均等化した状態をそれぞれ示す。 従来の保持パッドに被研磨物を密着するときの状態を模式的に示す断面図であり、(A)は保持パッドが被研磨物に接触する前の状態、(B)は保持パッドが被研磨物に接触し被研磨物にかかる押圧力にバラツキが生じた状態をそれぞれ示す。
以下、図面を参照して、本発明に係る保持パッドの実施の形態について説明する。
(保持パッド)
図1に示すように、本実施形態の保持パッド10は、湿式成膜法によりポリウレタン樹脂で形成され被研磨物を保持するための保持面Pを有する軟質プラスチックシートとしてのポリウレタンシート2を備えている。
ポリウレタンシート2は、保持面P側に、緻密なスキン層2aを有しており、内部(スキン層2aより内側)に、発泡層2bを有している。発泡層2bには、ポリウレタンシート2の厚さのほぼ全体に亘る長さで厚さ方向に沿って丸みを帯びた断面三角状の発泡3が形成されている。発泡3は、保持面P側の孔径が保持面Pの背面(図1の下面)側より小さく形成されている。すなわち、発泡3は、保持面P側から保持面Pの背面側に向けて拡径している。発泡3同士の間のポリウレタン樹脂中には、発泡3のスキン層2a側の孔径より小さい孔径の図示しない発泡が形成されている。すなわち、発泡層2bのポリウレタン樹脂はミクロポーラス構造を有している。発泡層2bの発泡3および図示しない発泡は、不図示の連通孔で網目状につながっている。
ポリウレタンシート2は、保持面Pの背面側が、ポリウレタンシート2の厚さ(図1の縦方向の長さ)が1〜2mmの範囲で一様となるようにバフ処理されている(詳細後述)。このため、発泡3および図示を省略した発泡の一部が保持面Pの背面で開孔している。発泡3が保持面Pの背面側で拡径していることから、保持面Pの背面では平均開孔径が250μm以上となる。また、ポリウレタンシート2では、厚さ方向に1cmあたりに50〜200gの初荷重をかけたときの平均厚みがX(mm)、最大厚みがXmax(mm)、最小厚みがXmin(mm)を示す。このポリウレタンシート2は、初荷重に加えて100gの荷重(初荷重+100g)をかけたときに、平均厚みXに対する厚みの変化量の最小値Ymin(mm)が、Ymin≧Xmax−Xminの関係を満たすように調整されている。換言すれば、初荷重に加えて100gの荷重をかけたときのポリウレタンシート2の厚みの変化量は、初荷重のみによる厚みのバラツキ範囲より大きくなる。
また、保持パッド10は、保持面Pの背面側に、ポリウレタンシート2を支持する基材6が貼り合わされている。基材6には、少なくともポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する。)製フィルム等の可撓性フィルム、不織布または織布から選択される1種が使用されている。基材6の下面側(ポリウレタンシート2と反対側)には、一面側(最下面側)に剥離紙8を有し研磨機に保持パッド10を装着するための両面テープ7の他面側が貼り合わされている。
(保持パッドの製造)
保持パッド10は、図2に示す各工程を経て製造される。まず、準備工程では、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂を溶解可能な水混和性の有機溶媒のN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する。)および添加剤を混合してポリウレタン樹脂を溶解させる。ポリウレタン樹脂には、樹脂の100%モジュラスが20MPa以下のもので、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系等の樹脂から選択して用い、例えば、ポリウレタン樹脂が30重量%となるようにDMFに溶解させる。添加剤としては、発泡3の大きさや量(個数)を制御するため、カーボンブラック等の顔料、発泡を促進させる親水性活性剤及びポリウレタン樹脂の凝固再生を安定化させる疎水性活性剤等を用いることができる。得られた溶液を減圧下で脱泡しポリウレタン樹脂溶液を得る。このとき、樹脂濃度や添加剤の配合を調整することで、得られるポリウレタンシートの厚みを上述した関係式を満たすように調整することができる。
塗布工程、凝固再生工程および洗浄・乾燥工程では、準備工程で得られたポリウレタン樹脂溶液を成膜基材に連続的に塗布し、水系凝固液に浸漬することでポリウレタン樹脂を凝固再生させ、洗浄後乾燥させてポリウレタンシート2を得る。塗布工程、凝固再生工程および洗浄・乾燥工程は、本例では、ポリウレタン樹脂に対して貧溶媒である水を主成分としポリウレタン樹脂を凝固再生させるための凝固液が満たされた凝固槽、凝固再生後のポリウレタン樹脂を洗浄する水等の洗浄液が満たされた洗浄槽およびポリウレタン樹脂を乾燥させるためのシリンダ乾燥機を連続して備えた成膜装置で連続して実行される。
図2に示すように、塗布工程では、準備工程で調製したポリウレタン樹脂溶液を常温下でナイフコータ等の塗布装置により成膜基材に略均一に塗布する。このとき、最終的な(バフ処理後の)ポリウレタンシート2の厚さを1〜2mmの範囲とするため、塗布装置と成膜基材の上面との間隙(クリアランス)を調整することで、ポリウレタン樹脂溶液の塗布厚さを1.0〜2.3mm程度に設定することが好ましい。成膜基材には、本例では、凝固液が浸透しないPET製等の可撓性フィルムが用いられる。
凝固再生工程では、成膜基材に塗布されたポリウレタン樹脂溶液を、凝固槽の凝固液中に案内する。凝固液中では、まず、塗布されたポリウレタン樹脂溶液の表面に厚さ数μmのスキン層2aが形成される。その後、ポリウレタン樹脂溶液中のDMFと凝固液(水)との置換の進行によりポリウレタン樹脂が成膜基材の片面に凝固再生する。DMFがポリウレタン樹脂溶液から脱溶媒するときに、ポリウレタン樹脂中に発泡3が形成される。このとき、PET製フィルムの成膜基材に水が浸透しないため、ポリウレタン樹脂溶液の表面(スキン層2a)側で脱溶媒が生じて成膜基材側が表面側より孔径の大きな発泡3が形成される。凝固再生したポリウレタン樹脂を、凝固液から引き上げ、洗浄槽に搬送し洗浄液中に案内する。
ここで、ポリウレタンシート2の発泡3の形成について説明する。ポリウレタン樹脂の溶解に使用したDMFは、ポリウレタン樹脂の溶解に一般に用いられる溶媒であり、水に対して任意の割合で混合することができる。このため、ポリウレタンシート2の作製では、凝固液にポリウレタン樹脂溶液を浸漬すると、まずポリウレタン樹脂溶液の表面でDMFと凝固液との置換(ポリウレタン樹脂の凝固再生)が起こりスキン層2aが形成される。その後、凝固液がスキン層2aの浸入しやすい部分からポリウレタン樹脂溶液内部に浸入するため、DMFと凝固液との置換が急速に進行する部分と遅れる部分とが生じ、比較的大きな発泡3が形成される。すなわち、DMFと凝固液との置換がスキン層2aを介して生じることとなる。凝固液が浸透しないPET製フィルムを成膜基材に使用することから、ポリウレタン樹脂溶液の表面側(スキン層2a側)からのみDMFが溶出するため、発泡3は成膜基材側が大きく丸みを帯びた円錘状となる。
洗浄・乾燥工程では、洗浄液中に案内されたポリウレタン樹脂から内部に残留するDMFを溶出させることによりポリウレタン樹脂を洗浄する。洗浄後、ポリウレタン樹脂を洗浄液から引き上げ、余分な洗浄液を絞り落とす。その後、ポリウレタン樹脂を、内部に熱源を有するシリンダを備えたシリンダ乾燥機に、シリンダの周面に沿って通過させることで乾燥させる。乾燥後のポリウレタン樹脂(ポリウレタンシート2)を、成膜基材と共に巻き取る。
バフ処理工程では、乾燥後のポリウレタンシート2の保持面Pの背面側にバフ処理を施す。図3(A)に示すように、巻き取られたポリウレタンシート2はPET製フィルムの成膜基材上に形成されている。成膜時にはポリウレタンシート2の厚さにバラツキが生じるため、保持面Pには凹凸が形成されている。成膜基材を剥離した後、図3(B)に示すように、保持面Pに、表面が平坦な圧接ローラ65の表面を圧接することで、保持面Pが平坦となり、保持面Pの背面Q1側に凹凸が出現する。背面Q1側に出現した凹凸をバフ処理で除去する。本例では、連続的に製造されたポリウレタンシート2が帯状のため、保持面Pに圧接ローラ65を圧接しながら、背面Q1側を連続的にバフ処理する。これにより、図3(C)に示すように、背面Q1側がバフ処理されて略平坦な背面Qが形成され、ポリウレタンシート2の厚さバラツキが解消される。なお、図3(C)では説明をわかりやすくするために保持面Pおよび背面Qを平坦に示しているが、ポリウレタンシート2の単体では両面共にポリウレタンシート2の厚さが1〜2mmの範囲で一様となる凹凸を有しており、基材6を貼り合わせることまたは研磨機に装着することで保持面Pが略平坦となる。
図2に示すように、ラミネート加工工程では、ポリウレタンシート2のバフ処理された面(背面Q)側に基材6を貼り合わせる。基材6のポリウレタンシート2と反対面側には、一面側に剥離紙8が貼付された両面テープ7の他面側を貼り合わせる。そして、円形等の所望の形状に裁断した後、汚れや異物等の付着が無いことを確認する等の検査を行い保持パッド10を完成させる。
(研磨加工)
得られた保持パッド10で被研磨物の研磨加工を行うときは、例えば、片面研磨機の保持定盤に保持パッド10を剥離紙8を剥離した両面テープ7で装着し、研磨定盤に研磨パッドを装着する。保持定盤の保持パッド10を装着する面および研磨定盤の研磨パッドを装着する面は、いずれも平坦に形成されている。このため、保持パッド10は、保持定盤に装着することで略平坦な保持面Pを形成する。被研磨物を加工表面の反対面側で保持パッド10の保持面Pに密着させることで保持定盤に保持させる。このとき、保持面Pに少量の水を吹きかけ被研磨物を押し付けることでスキン層2aに浸入した水の表面張力が作用するため、被研磨物が保持面Pで保持される。研磨加工時には、被研磨物の加工表面と研磨パッドとの間に研磨粒子を含む研磨液を供給すると共に、研磨圧をかけながら加工表面側を研磨パッドで研磨加工する。
(作用)
次に、本実施形態の保持パッド10の作用等について説明する。
本実施形態の保持パッド10では、ポリウレタンシート2の厚さが1〜2mmの範囲で一様となるように保持面Pの背面側がバフ処理されている。このため、被研磨物保持性に優れるスキン層2aを残したままポリウレタンシート2の厚さが一様となるので、保持定盤に保持パッド10を装着することでスキン層2aの表面、すなわち、保持面Pが略平坦となり、保持面Pと被研磨物との接触性を向上させることができる。この保持面Pに被研磨物を密着させることで被研磨物が略平坦に確実に保持されるので、研磨加工で被研磨物の加工表面の平坦性を向上させることができる。
また、本実施形態の保持パッド10では、ポリウレタンシート2の厚さ方向に、1cmあたりに初荷重に加えて100gの荷重(初荷重+100g)をかけたときに、初荷重をかけたときの平均厚みXに対する厚みの変化量の最小値Ymin(mm)が、Ymin≧Xmax−Xminの関係を満たすように調整されている。研磨加工時には、被研磨物に1cmあたり10〜300gの研磨圧をかけることから、内部に発泡3が形成されたポリウレタンシート2では、研磨圧がかかることにより、1〜2mmの範囲で一様な厚みが初荷重による厚みのバラツキ範囲を越えて一様に変化する分の弾力性を発揮する。このため、保持面Pに被研磨物を密着させ保持させることで、被研磨物には研磨圧に加えてポリウレタンシート2の弾力性が作用するので、バフ処理後のポリウレタンシート2に僅かな厚み斑が残されていても、研磨加工時に被研磨物にかかる押圧力を均等化することができる。具体的に説明すると、図4(A)に示すように、ポリウレタンシート2をバフ処理しても、保持パッド10には若干の厚み斑が残されることがある。この場合、保持面Pが僅かに波打った状態で被研磨物70に接触し、研磨加工時に研磨圧(矢印a)がかけられる。図4(B)に示すように、研磨圧でポリウレタンシート2が圧縮されるため、研磨圧に加えてポリウレタンシート2の弾力性が作用するので、被研磨物にかかる押圧力(矢印b)が均等化される。これにより、高精度な平坦性を要求されるIPS液晶用ガラス基板や大型の被研磨物等の研磨加工でも、略平坦に保持された被研磨物が略均等に押圧されて加工表面が研磨加工されるので、加工表面の平坦性を向上させることができる。厚みの変化量の最小値Yminが初荷重による厚みのバラツキ範囲より小さい場合、すなわち、Ymin<Xmax−Xminの関係となる場合は、研磨圧でポリウレタンシート2が圧縮されたときに、厚みの変化量分の中に、初荷重時の厚み斑が吸収されないこととなる。このため、ポリウレタンシート2の全面を使用した被研磨物の保持が難しくなるおそれがあり、研磨加工時に研磨圧をかけてもポリウレタンシート2の弾力性が局所的に不十分となることで被研磨物にかかる押圧力を均等化することが難しくなる。
更に、本実施形態の保持パッド10では、バフ処理後のポリウレタンシート2の厚さを1〜2mmの範囲とするため、湿式成膜時の塗布工程でポリウレタン樹脂溶液の塗布厚さを1.0〜2.3mmに設定する。バフ処理後の厚さが1mm未満では、研磨加工時に十分な弾力性を発揮することが難しい。塗布工程での塗布厚さが2.3mmを超えると、湿式成膜時にポリウレタン樹脂を内部まで十分に凝固再生させることが難しくなる。この場合、凝固再生時間を長くすることで十分な凝固再生を期待することはできるが、凝固再生中に却って厚み斑を増大させる可能性があるため、好ましくない。また、本実施形態の保持パッド10では、バフ処理によりポリウレタンシート2の保持面Pの背面(バフ処理された面)に形成された開孔の平均開孔径が250μm以上のため、ポリウレタンシート2による厚み斑の吸収機能を高め、被研磨物にかかる押圧力を均等化することができる。平均開孔径が250μmより小さい場合は、ポリウレタンシート2の厚みの変化量が小さくなり変形しにくくなるため、保持面Pと被研磨物との密着性が損なわれ、被研磨物にかかる押圧力にバラツキが生じることとなる。反対に、平均開孔径が800μmを超える場合は、研磨圧をかけたときの厚みの変化量が大きくなりすぎて耐久性を低下させてしまうため、平均開孔径を800μmを超えない範囲とすることが好ましい。
また更に、本実施形態の保持パッド10では、湿式成膜法により作製されたポリウレタンシート2が使用されている。ポリウレタン樹脂では、湿式成膜することでスキン層2aおよび発泡層2bの発泡3を容易に形成することができることから、厚みの変化量が上述した関係式を満たすようなポリウレタンシート2を得ることができる。
更にまた、本実施形態の保持パッド10では、ポリウレタンシート2の保持面Pの背面側にPET製フィルムの基材6が貼り合わされている。このため、ポリウレタンシート2が基材6に支持されるので、保持パッド10の搬送時や片面研磨機への装着時の取り扱いを容易にすることができる。また、基材6のポリウレタンシート2と反対面側には両面テープ7が貼り合わされているため、この両面テープ7で保持定盤に容易に装着することができる。
従来保持パッドの製造に用いられる湿式成膜法では、ポリウレタン樹脂溶液を成膜基材に塗布するときに搬送速度のバラツキや塗布装置の振れ等が生じるため、塗布厚さにバラツキが生じる。この状態でポリウレタン樹脂が凝固再生されるため、得られるポリウレタンシートに厚み斑が残される。また、凝固液中では凝固再生に伴う脱溶媒にバラツキが生じるため、ポリウレタンシートの厚み斑が増大する。厚み斑が生じたポリウレタンシートを使用した保持パッドでは、厚みの大きな部分で被研磨物にかかる圧力が大きくなるため、当該部分の加工表面が大きく研磨加工されて平坦性が損なわれる。このような厚み斑を減少させるために保持パッドの表面がバフ処理されるが、スキン層の厚さがポリウレタンシートの厚み斑より小さいことから、厚み斑を解消する程バフ処理すると被研磨物の保持に有効なスキン層が消失してしまうため、被研磨物保持性が低下する。スキン層を残すとポリウレタンシートの厚み斑がそのまま残るため、被研磨物の加工表面の平坦性が損なわれる。また、ポリウレタンシートの湿式成膜では、成膜作業性の点から厚さが0.1〜1.0mmに調整されている。このポリウレタンシートを使用した従来の保持パッド20では、図5(A)に示すように、ポリウレタンシートの厚み斑のため、保持面が大きく波打った状態となり、研磨加工時にはこの状態の保持面が被研磨物70に接触し研磨圧(矢印a)がかけられる。図5(B)に示すように、保持パッド20に使用したポリウレタンシートの厚さが0.1〜1.0mmのため、研磨加工時に研磨圧をかけても厚みの変化量が厚みで制限されることから、ポリウレタンシートの弾力性が十分に作用せず、厚み斑の生じた分で被研磨物が保持面に密着しにくくなる。このため、被研磨物にかかる押圧力(矢印b)にバラツキが生じ、被研磨物の加工表面の平坦性が損なわれる。本実施形態は、これらの問題を解決することができる保持パッドである。
なお、本実施形態では、特に言及していないが、ポリウレタンシート2の厚さ方向に、1cmあたりに初荷重に加えて100gの荷重をかけたときに、平均厚みXに対する厚みの変化量の最大値Ymax(mm)が被研磨物の厚みより小さいことが好ましい。換言すれば、保持パッド10は、厚みの変化量の最大値Ymaxより大きい厚みを有する被研磨物の研磨加工に好適に使用することができる。厚みの変化量の最大値Ymaxより小さい厚みを有する被研磨物では、研磨加工時に被研磨物がポリウレタンシート2に沈み込みすぎてしまう部分が生じるため、被研磨物全面を均一に研磨加工することが難しくなる。
また、本実施形態の保持パッド10では、バフ処理工程で保持面Pに圧接ローラ65を圧接させながら背面Q1側を連続的にバフ処理する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ポリウレタンシート2を所望の大きさに裁断した後、保持面Pに、平坦な表面を有する平板を圧接して背面Q1側をバフ処理してもよい。
更に、本実施形態では、ポリウレタンシート2のバフ処理された背面Q側にPET製フィルムの基材6を貼り合わせる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、不織布や織布等を基材6としてもよい。基材6を貼り合わせずに直接両面テープ7を貼り合わせてもよい。また、基材6、両面テープ7をいずれも貼り合わせることなく、ポリウレタンシート2をそのまま研磨加工に使用することもできる。この場合は、片面研磨機の保持定盤に装着する際に接着剤や両面テープを使用すればよい。
また更に、本実施形態では、成膜基材43にPET製フィルムを使用する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、不織布や織布を使用してもよい。この場合には、ポリウレタン樹脂の凝固再生後に成膜基材43を剥離することが難しいため、成膜基材43のポリウレタン樹脂と反対側の面をバフ処理すればよい。また、不織布や織布の成膜基材43をそのまま基材6としてもよく、更に別の基材6を貼り合わせてもよい。
更にまた、本実施形態では、ポリウレタンシート2の材質としてポリウレタン樹脂を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ポリエステル樹脂等を用いてもよいが、ポリウレタン樹脂を用いれば、湿式成膜法で容易にスキン層2aを形成することができる。また、本実施形態では、樹脂の100%モジュラスが20MPa以下のポリウレタン樹脂を用いる例を示したが、本発明はこれに制限されるものではなく、100%モジュラスが20MPaを超えるポリウレタン樹脂を用いることも可能である。この場合は、発泡3の大きさや形状を調整すること、すなわち、ポリウレタン樹脂溶液に配合する添加剤等の割合を調整することで、100%モジュラスが20MPa以下のポリウレタン樹脂と同等の性能を得ることができる。更に、ポリウレタン樹脂を30重量%となるようにDMFに溶解する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ポリウレタン樹脂溶液の粘性やポリウレタンシート2の厚さ等により適宜変更してもよい。
また、本実施形態では、ポリウレタン樹脂溶液の塗布にナイフコータを例示したが、例えば、リバースコータ、ロールコータ等を用いてもよく、成膜基材43に略均一な厚さに塗布可能であれば特に制限されるものではない。また、本実施形態では、ポリウレタン樹脂の乾燥にシリンダ乾燥機を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、熱風乾燥機等を用いてもよい。
更に、本実施形態では、湿式成膜されたポリウレタンシート2は、バフ機等で保持面Pの背面側がバフ処理されるが、バフ処理量はポリウレタンシート2の最大厚さと最小厚さとの差の2倍以上とすることが望ましい。バフ処理ではサンドペーパーやダイヤモンドバフロール等の種々のものが使用されるが、均一な処理(研削除去)ができるものであればいずれも使用できる。このとき、バフ番手(砥粒の粗さを示す番号)を高くする程、細かな砥粒で研削でき均一なバフ処理ができる。更に、バフ処理を、1回目で低いバフ番手(粗い砥粒)で研削をし、2回目で1回目より高いバフ番手のもので研削量を小さくしてバフ仕上げ処理することで、厚み精度を更に上げることもできる。
以下、本実施形態に従い製造した保持パッド10の実施例について説明する。なお、比較のために製造した比較例の保持パッドについても併記する。
(実施例1)
実施例1では、ポリウレタン樹脂として、100%モジュラスが10MPaのポリエステルMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)ポリウレタン樹脂を用いた。このポリウレタン樹脂を30重量%含むDMF溶液の100部に対して、粘度調整用のDMFの45部、顔料のカーボンブラックを30%含むDMF分散液の40部、疎水性活性剤の2部を混合してポリウレタン樹脂溶液を調製した。ポリウレタン樹脂溶液の塗布時に塗布装置のクリアランスを1.3mmに設定した。バフ処理量を0.20mmとしてバフ番手♯180のサンドペーパーを用いてポリウレタンシート2をバフ処理し実施例1の保持パッド10を製造した。なお、ポリウレタンシート2の単位面積あたりの重量から換算するとポリウレタン樹脂溶液の塗布量は、1072g/m(固形換算252g/m)である。
(実施例2)
実施例2では、ポリウレタン樹脂溶液の塗布時にクリアランスを1.5mmに設定し、バフ処理量を0.25mmとする以外は実施例1と同様にして実施例2の保持パッド10を製造した。
(実施例3)
実施例3では、ポリウレタン樹脂溶液の塗布時にクリアランスを2.0mmに設定する以外は実施例1と同様にして実施例3の保持パッド10を製造した。
(比較例1)
比較例1では、ポリウレタン樹脂溶液の塗布時にクリアランスを0.9mmに設定する以外は実施例1と同様にして比較例1の保持パッドを製造した。すなわち、比較例1はポリウレタンシートの厚さが1mm未満の保持パッドである。
(比較例2)
比較例2では、ポリウレタンシートをバフ処理しない以外は比較例1と同様にして比較例2の保持パッドを製造した。すなわち、比較例2は湿式成膜時の厚さバラツキが残されたポリウレタンシートを使用した従来の保持パッドである。
(物性評価1)
得られた各実施例および比較例で作製したポリウレタンシートについて、バフ処理した面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、開孔径を測定した。測定には、SEM用画像解析ソフトウェア(Olympus Soft−Imaging Solutions社製、「Scandium」)を用い、平均開孔径を求めた。平均開孔径の測定結果を下表1に示す。なお、比較例2では、バフ処理していないため、測定を行っていない。
(物性評価2)
各実施例および比較例で製造した保持パッドについて、日本工業規格(JIS K6505)に記載された厚さ測定方法に準じて、ポリウレタンシートの厚さを測定した。すなわち、ポリウレタンシートに厚さ方向に初荷重として1cmあたり100gの荷重をかけた(負加した)ときのシート厚みを測定した。シート厚みの測定では、縦1m×横1mのポリウレタンシートを縦10cm×横10cmの100ピースに切り分け、1ピースにつき四隅および中心部の厚みをダイヤルゲージ(最小目盛り0.01mm)を使用して最小目盛りの10分の1(0.001mm)まで読み取り計測し、5点の平均値を1ピースの厚みとした。シートの平均厚みXは、100ピースについてそれぞれ測定した厚みの平均値とした。また、100ピース分の測定値から、最大値および最小値を抽出してそれぞれを最大厚みXmaxおよび最小厚みXminとし、その差、すなわち、Xmax−Xminを厚みのバラツキ範囲として求めた。さらに、切り分けた100ピースについて、初荷重をかけた位置と同じ位置に初荷重に100gを加えた荷重、すなわち、1cmあたり200gの荷重をかけたときの厚みを同様にして測定した。初荷重をかけたときの平均厚みXと、200g/cmの荷重をかけたときの各ピースの厚みとの差を厚み変化量とし、その最小値Yminおよび最大値Ymaxを求めた。換言すれば、200g/cmの荷重をかけたときの厚みが最も大きいピースが厚み変化量の最小値Yminを示すこととなる。厚みおよび厚み変化量の結果を下表1にあわせて示す。
Figure 0005534834
表1に示すように、比較例1の保持パッドに使用したポリウレタンシートでは、バフ処理面の平均開孔径が226.0μmを示し、250μmに満たないサイズであった。また、比較例1および比較例2では、荷重100g/cm(初荷重)で測定した厚みのバラツキ範囲(Xmax−Xmin)がそれぞれ0.026mmおよび0.049mmであり、厚み変化量の最小値Yminがそれぞれ0.023mmおよび0.018mmであった。すなわち、比較例1、比較例2ともに、厚み変化量の最小値Yminが初荷重による厚みのバラツキ範囲より小さくなり、Ymin<Xmax−Xminの関係となる。このため、1cmあたりに初荷重に加えて100gの荷重をかけて圧縮する際に、厚み変化量の中に初荷重時の厚み斑を吸収することができなくなり、ポリウレタンシートの全面を使用して被研磨物を保持することができなくなるおそれがある。従って、比較例1、比較例2の保持パッドでは、ポリウレタンシートに荷重をかけたときの厚み変化量が小さく、研磨加工時に研磨圧をかけてもポリウレタンシートの弾力性が十分に作用しないため、被研磨物にかかる押圧力にバラツキが生じ、被研磨物の平坦性向上を期待することはできない。
これに対して、実施例1〜実施例3の保持パッドに使用したポリウレタンシート2では、バフ処理面の平均開孔径がそれぞれ273.4μm、311.0μm、389.2μmを示し、いずれも250μmを超えるサイズであった。また、実施例1〜実施例3では、初荷重をかけたときの厚みのバラツキ範囲(Xmax−Xmin)がそれぞれ0.032mm、0.033mm、0.039mmであり、厚み変化量の最小値Yminがそれぞれ0.037mm、0.054mm、0.075mmを示した。すなわち、実施例1〜実施例3のポリウレタンシート2は、いずれも、厚み変化量の最小値Yminが初荷重による厚みのバラツキ範囲より小さくなり、Ymin≧Xmax−Xminの関係を満たしていることとなる。このため、1cmあたりに初荷重に加えて100gの荷重をかけて圧縮する際に、厚み変化量の中に初荷重時の厚み斑を吸収することができ、ポリウレタンシート2の全面を使用して被研磨物を保持することが可能となる。従って、研磨加工時に、ポリウレタンシート2の弾力性も作用するので、被研磨物にかかる押圧力を均等化し、被研磨物の平坦性を向上させることが期待できる。
(研磨性能評価)
各実施例および比較例の保持パッドを用い、以下に示す研磨条件にて液晶ディスプレイ用ガラス基板(470mm×370mm×0.7mm)の研磨加工を行い、研磨性能を評価した。この評価では、日本工業規格(JIS B0601:’82)に準じた方法で、ろ波中心うねりから平坦度aを測定した。平坦度aの測定では、表面粗さ形状測定機(株式会社東京精密製、サーフコム480A)を使用し、以下に示す測定条件に設定した。研磨加工後のガラス基板表面の凹凸に起因して得られる測定曲線から、隣り合う凸部(山部)と凸部との間の幅W、および、凸部と凹部(谷部)との高さSを算出した後、幅Wを横軸、高さSを縦軸とした散布図を作成した。得られた散布図から、一次式S=aWの近似直線を求め、傾きaを研磨加工後の最終の平坦度aとした。一般に、平坦性が高くなるほど幅Wが大きくなり高さSが小さくなるため、傾きaが小さいほど平坦性に優れることを示すこととなる。平坦度aの測定結果を下表2に示す。
(研磨条件)
使用研磨機:オスカー研磨機(スピードファム社製、SP−1200)
研磨速度(回転数):61rpm
加工圧力:76gf/cm
スラリ:セリウムスラリ
研磨時間:30min
(ろ波中心うねり測定条件)
評価長さ:90mm
測定速度:3.0mm/s
カットオフ値:0.8〜8.0mm
フィルタ種別:2RC
測定レンジ:±40.0μm
傾斜補正:スプライン
Figure 0005534834
表2に示すように、比較例1、比較例2の各保持パッドを用いた研磨加工では、加工後のガラス基板の平坦度aがそれぞれ0.007、0.011を示した。これに対して、実施例1〜実施例3の各保持パッド10を用いた研磨加工では、平坦度aが0.003〜0.004を示し、いずれも、比較例1、比較例2より優れた結果を示した。従って、実施例1〜実施例3の保持パッド10の場合、研磨加工時に、ポリウレタンシート2の弾力性により,被研磨物にかかる押圧力を均等化することができる。このため、厚さ精度の向上した保持パッド10で保持した被研磨物が略均等な押圧力のもとで研磨加工されるので、被研磨物の平坦性を向上させることができる。
本発明は被研磨物を確実に保持し被研磨物にかかる押圧力を均等化することができる保持パッド及び該保持パッドを使用した研磨加工方法を提供するため、保持パッドの製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
P 保持面
Q 背面
2 ポリウレタンシート(軟質プラスチックシート)
2a スキン層
2b 発泡層
3 発泡
10 保持パッド

Claims (5)

  1. 湿式成膜法により形成されており、被研磨物を保持するための保持面側にスキン層を有し内部に前記保持面側から該保持面の背面側に向けて拡径した発泡が形成された軟質プラスチックシートを備えた保持パッドにおいて、前記軟質プラスチックシートは、厚さが1mm〜2mmの範囲で一様となるように前記保持面の背面側がバフ処理されており、前記軟質プラスチックシートの厚さ方向に1cmあたりに100gの初荷重をかけたときの平均厚みをX、最大厚みをXmax、最小厚みをXminとしたときに、1cmあたりに初荷重に加えて100gの荷重をかけたときの前記平均厚みXに対する厚みの変化量の最小値Yminが、Ymin≧Xmax−Xminの関係を満たすことを特徴とする保持パッド。
  2. 前記軟質プラスチックシートは、ポリウレタン樹脂製であることを特徴とする請求項1に記載の保持パッド。
  3. 前記軟質プラスチックシートのバフ処理された面側に、定盤に装着するための両面テープを更に備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の保持パッド。
  4. 前記軟質プラスチックシートと前記両面テープとの間に、少なくとも可撓性フィルム、不織布および織布から選択される1種の基材を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の保持パッド。
  5. 湿式成膜法により形成されており、被研磨物を保持するための保持面側にスキン層を有し内部に前記保持面側から該保持面の背面側に向けて拡径した発泡が形成された軟質プラスチックシートを備えた保持パッドで保持された前記被研磨物を研磨加工する研磨加工方法であって、前記軟質プラスチックシートは、厚さが1mm〜2mmの範囲で一様となるように前記保持面の背面側がバフ処理されているとともに、前記軟質プラスチックシートの厚さ方向に1cmあたりに100gの初荷重をかけたときの平均厚みをX、最大厚みをXmax、最小厚みをXminとしたときに、1cmあたりに初荷重に加えて100gの荷重をかけたときの前記平均厚みXに対する厚みの変化量の最小値Yminが、Ymin≧Xmax−Xminの関係を満たしており、
    前記保持面の反対面側で前記保持パッドを定盤に装着し、
    前記保持面に前記被研磨物の一面を密着させて保持しながら前記被研磨物の他面側を研磨加工する、
    ステップを含む研磨加工方法。
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