JP5049504B2 - 仕上げ用研磨布 - Google Patents

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Description

本発明は仕上げ用研磨布に係り、特に、湿式成膜法により形成され、ミクロな平坦性を有するスキン層と、スキン層の内側に配され厚さ方向に長い発泡が形成された発泡層とを有する軟質プラスチックシートを備えた仕上げ用研磨布に関する。
従来、レンズ、平行平面板、反射ミラー等の光学材料、ハードディスク用のアルミニウム基板やガラス基板、液晶ガラス等、高精度に平坦性が要求される材料(被研磨物)の平坦加工では、平坦性の向上を図るために一度研磨加工(一次研磨)した後に仕上げ研磨加工(二次研磨)が行われている。中でもハードディスクでは、現状の片面あたり40ギガバイト程度の容量に対して、片面あたり60ギガバイト以上の大容量を有する次世代型ハードディスクの開発が進められている。このような次世代型ハードディスクでは、高密度記憶、読み取り精度の向上を図るため、アルミニウム基板やガラス基板には更に高精度の平坦性が求められている。
一般に、仕上げ研磨加工には、軟質プラスチックシートを備えた研磨布が使用されている。軟質プラスチックシートは、軟質プラスチックを水混和性の有機溶媒に溶解させた樹脂溶液をシート状の基材に塗布後、水系凝固液中で樹脂を凝固再生させること(湿式成膜法)で製造される。製造された軟質プラスチックシートは、樹脂の凝固再生に伴う微多孔が緻密に形成された厚さ数μm程度のスキン層を有しており、内部(スキン層の内側)にスキン層の微多孔より平均孔径の大きい多数の発泡が形成された発泡層を有している。スキン層に形成された微多孔が緻密なため、スキン層の表面はミクロな平坦性を有している。このスキン層表面のミクロな平坦性を使用して、被研磨物、特に、ハードディスク用基板等の仕上げ研磨加工が行われている。
ところが、軟質プラスチックシートの製造では、樹脂溶液が粘性を有するため、基材への塗布時に厚さのバラツキが生じると共に、湿式成膜法のため、凝固再生時の発泡形成(有機溶媒と水系凝固液との置換)により厚さのバラツキが生じやすい。このため、軟質プラスチックシート自体の表面のマクロな平坦性が損なわれる(大きく波打った表面となる)ので、仕上げ研磨加工時に被研磨物の平坦性を向上させることが難しくなる。換言すれば、被研磨物の平坦性を向上させるためには、仕上げ研磨加工に使用するスキン層表面のミクロな平坦性を残したまま軟質プラスチックシート自体の厚さのバラツキを減少させてマクロな平坦性を向上させることが重要である。
軟質プラスチックシート自体の厚さのバラツキを減少させてマクロな平坦性を向上させ、研磨液(スラリー)の保持性を向上させるため、軟質プラスチックシートの製造後にその表面にバフ処理(表面サンディング)が施されている。例えば、軟質プラスチックシートの表面をバフ処理して表面粗さを50μm以下とし、表面で発泡を開口させたスエード様研磨布が開示されている(特許文献1参照)。また、軟質プラスチックシートの発泡が開口しないようにスキン層を残して表面バフ処理した研磨布が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特許第3187769号公報 特開2001−62704号公報
しかしながら、特許文献1の研磨布では、表面で発泡が開口しているため、表面粗さの低減には限界があり、仕上げ研磨加工に際しては、被研磨物の平坦性を向上させることが難しい。また、特許文献2の方法では、スキン層を残しているもののバフ処理でスキン層の厚さが部分的に薄くなるため、仕上げ研磨加工中に短時間でスキン層が摩耗して発泡層の発泡が開口し、研磨布の表面粗さが悪くなる。元々、スキン層の厚さは数μm程度しかなく、研磨布の厚さのバラツキより小さいため、研磨布の厚さのバラツキを解消する程バフ処理するとスキン層が消失してしまう。一方、バフ処理時には、軟質プラスチックシートの発泡層に形成されている発泡の変形で軟質プラスチックシートが伸縮することから、厚さ精度を低下させることがある。また、発泡層の発泡が軟質プラスチックシートの弾力性を増大させているため、上述した高精度の平坦性が要求される仕上げ研磨加工では、被研磨物の加工面の周縁部が中心部より過度に研磨加工されるロールオフが生じることがある。これを避けるために発泡の形成を抑制すると、軟質プラスチックシートが硬くなるため、被研磨物の加工面にスクラッチ(キズ)等を生じさせることとなる。
本発明は上記事案に鑑み、被研磨物の平坦性を向上させることができる仕上げ用研磨布を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は、湿式成膜法により形成され、ミクロな平坦性を有するスキン層と、前記スキン層の内側に配され厚さ方向に長い発泡が形成された発泡層とを有する軟質プラスチックシートを備えた仕上げ用研磨布において、前記軟質プラスチックシートは、前記スキン層が形成された反対面側に、湿式成膜法により形成され、前記発泡層に形成された発泡より平均孔径が小さい微発泡が形成された発泡プラスチックシートが接合されており、前記発泡プラスチックシートの前記軟質プラスチックシートが接合された反対面側が前記発泡プラスチックシート及び前記軟質プラスチックシートの全体の厚さが一様となり、かつ、前記スキン層の表面でのマクロなうねりを除去するように、前記発泡プラスチックシート及び前記軟質プラスチックシートが接合された状態でバフ処理されているとともに、前記スキン層の表面が被研磨物を研磨加工するための研磨面を構成することを特徴とする。
本発明では、軟質プラスチックシートのスキン層が形成された反対面側に、軟質プラスチックシートの発泡層に形成された発泡より平均孔径が小さい微発泡が形成された発泡プラスチックシートが接合されているため、発泡プラスチックシートの外力に対する変形量が軟質プラスチックシートより小さいことから、発泡プラスチックシートの軟質プラスチックシートが接合された反対面側の、発泡プラスチックシート及び軟質プラスチックシートが接合された状態でのバフ処理時に軟質プラスチックシートの伸縮が抑制されるので、発泡プラスチックシート及び軟質プラスチックシートの全体の厚さ精度を向上させることができ、研磨加工時に軟質プラスチックシートの変形が発泡プラスチックシートで抑制され、厚さ精度の向上によりミクロな平坦性を有したままマクロな平坦性を向上させた軟質プラスチックシートのスキン層の表面で構成される研磨面側で被研磨物が略均等に押し付けられるので、被研磨物のロールオフが低減し平坦性を向上させることができる。
この場合において、発泡プラスチックシートは、該発泡プラスチックシートの内部に微発泡が略均等に形成されており、圧縮率が軟質プラスチックシートより小さいことが好ましい。このとき、発泡プラスチックシートの圧縮率を1%〜5%の範囲としてもよい。また、発泡プラスチックシート及び軟質プラスチックシートをいずれもポリウレタン樹脂製とすることができる。このとき、発泡プラスチックシート及び軟質プラスチックシートがポリウレタン樹脂で接合されるようにしてもよい。また、発泡プラスチックシートのバフ処理された面側に両面テープが更に貼り合わされていてもよい。このとき、発泡プラスチックシートと両面テープとの間に、少なくとも可撓性フィルム、不織布及び織布から選択される1種の基材が更に貼り合わされていてもよい。
本発明によれば、軟質プラスチックシートに発泡プラスチックシートが接合されているため、発泡プラスチックシートの外力に対する変形量が軟質プラスチックシートより小さいことから、バフ処理時に軟質プラスチックシートの伸縮が抑制されるので、発泡プラスチックシート及び軟質プラスチックシートの全体の厚さ精度を向上させることができ、研磨加工時に軟質プラスチックシートの変形が抑制され、厚さ精度の向上によりミクロな平坦性を有したままマクロな平坦性を向上させた軟質プラスチックシートのスキン層の表面で構成される研磨面側で被研磨物が略均等に押し付けられるので、被研磨物のロールオフが低減し平坦性を向上させることができる、という効果を得ることができる。
以下、図面を参照して、本発明に係る仕上げ用研磨布の実施の形態について説明する。
(研磨パッド)
図1に示すように、研磨布(一般に研磨パッドと称されるため、以下、研磨パッドという。)1は、ポリウレタン樹脂で成膜され被研磨物を研磨加工するための研磨面Pを有する軟質プラスチックシートとしてのポリウレタンシート2と、ポリウレタンシート2の研磨面Pの反対面側に接合されポリウレタン樹脂で成膜された発泡プラスチックシートとしてのポリウレタンシート3とを備えている。
ポリウレタンシート2は、研磨面P側に、図示を省略した緻密な微多孔が形成されたスキン層2aを有しており、スキン層2aの内側(ポリウレタンシート3側)に、ナップ層2b(発泡層)を有している。ナップ層2bには、スキン層2aに形成された微多孔より平均孔径が大きく、ポリウレタンシート2の厚さのほぼ全体に亘る長さで厚さ方向に沿って丸みを帯びた断面略三角状の発泡5が略均等に形成されている。発泡5は、研磨面P側の孔径が研磨面Pの反対面側より小さく形成されている。すなわち、発泡5は、スキン層2a側で縮径されている。発泡5同士の間のポリウレタン樹脂中には、スキン層2aに形成された微多孔より平均孔径が大きく発泡5より平均孔径が小さい図示しない発泡が形成されている。スキン層2aの図示を省略した微多孔、ナップ層2bの発泡5及び図示しない発泡は、不図示の連通孔で立体網目状に連通されている。
一方、ポリウレタンシート3には、ポリウレタンシート2のスキン層2aに形成された微多孔より平均孔径が大きくナップ層2bに形成された発泡5より平均孔径が小さい微発泡6が略均等に形成されている。このため、ポリウレタンシート2、ポリウレタンシート3のそれぞれを加圧したときは、ポリウレタンシート2の発泡5がポリウレタンシート3の微発泡6より大きく変形することから、ポリウレタンシート3の圧縮率(加圧したときの厚さ減少分の加圧する前の厚さに対する百分率)がポリウレタンシート2より小さくなる。ポリウレタンシート3の圧縮率は、例えば、1%〜5%の範囲に設定されている。ポリウレタンシート2及びポリウレタンシート3は、ポリウレタン樹脂で接合されている。ポリウレタンシート3のポリウレタンシート2が接合された反対面側は、ポリウレタンシート2及びポリウレタンシート3の全体の厚さ(図1の縦方向の長さ)が一様となるようにバフ処理されている(詳細後述)。
また、研磨パッド1は、ポリウレタンシート3のバフ処理された面側に、ポリウレタンシート2及びポリウレタンシート3を支持する基材7が貼り合わされている。基材7には、少なくともポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する。)製フィルム等の可撓性フィルム、不織布又は織布から選択される1種が使用されている。基材7の下面側(ポリウレタンシート3と反対側)には、一面側(最下面側)に剥離紙9を有し研磨機に研磨パッド1を装着するための両面テープ8の他面側が貼り合わされている。
(研磨パッドの製造)
研磨パッド1は、図2に示す各工程を経て製造されるが、準備工程〜洗浄・乾燥工程でそれぞれ成膜されたポリウレタンシート2、3が接合工程で接合される。ポリウレタンシート2の作製、ポリウレタンシート3の作製の順に説明する。
準備工程では、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂を溶解可能な水混和性の有機溶媒のN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する。)及び添加剤を混合してポリウレタン樹脂を溶解させる。ポリウレタン樹脂には、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系等の樹脂から選択して用い、例えば、ポリウレタン樹脂が30%となるようにDMFに溶解させる。添加剤としては、発泡5の大きさや量(個数)を制御するため、カーボンブラック等の顔料、発泡を促進させる親水性活性剤及びポリウレタン樹脂の凝固再生を安定化させる疎水性活性剤等を用いることができる。得られた溶液を濾過することで凝集塊等を除去した後、真空下で脱泡してポリウレタン樹脂溶液45を得る。
塗布工程、凝固再生工程及び洗浄・乾燥工程では、準備工程で得られたポリウレタン樹脂溶液を成膜基材に連続的に塗布し、水系凝固液に浸漬することでポリウレタン樹脂を凝固再生させ、洗浄後乾燥させてポリウレタンシート2を得る。塗布工程、凝固再生工程及び洗浄・乾燥工程は、図3に示す成膜装置で連続して実行される。
図3に示すように、成膜装置60は、ポリウレタン樹脂に対して貧溶媒である水を主成分としポリウレタン樹脂を凝固再生させるための凝固液25が満たされた凝固槽20、凝固再生後のポリウレタン樹脂を洗浄する水等の洗浄液35が満たされた洗浄槽30及びポリウレタン樹脂を乾燥させるためのシリンダ乾燥機50を連続して備えている。
凝固槽20の上流側には、成膜基材43を供給する基材供給ローラ41が配置されている。基材供給ローラ41の下流側にはガイドローラ48が配置されており、ガイドローラ48の下流側には成膜基材43にポリウレタン樹脂溶液45を略均一に塗布するナイフコータ46が配置されている。ナイフコータ46の下流側で凝固槽20の上方にはガイドローラ21が配置されている。なお、成膜基材43には、凝固液25を浸透させないPET製等の可撓性フィルムが用いられる。
凝固槽20には、洗浄槽30側の内側下部にガイドローラ23が配置されている。凝固槽20の上方で洗浄槽30側には凝固再生後のポリウレタン樹脂を脱水処理するマングルローラ28が配置されている。マングルローラ28の下流側で洗浄槽30の上方にはガイドローラ31が配置されている。洗浄槽30には、成膜基材43の搬送方向と同じ長手方向で上部に4本、下部に5本のガイドローラ33が上下交互となるように配設されている。洗浄槽30の上方でシリンダ乾燥機50側には、洗浄後のポリウレタン樹脂を脱水処理するマングルローラ38が配置されている。シリンダ乾燥機50には、内部に熱源を有する4本のシリンダが上下4段に配設されている。シリンダ乾燥機50の下流側には、乾燥後のポリウレタン樹脂を(成膜基材43と共に)巻き取る巻取ローラ42が配置されている。なお、マングルローラ28、38、シリンダ乾燥機50及び巻取ローラ42は、図示を省略した回転駆動モータに接続されており、これらの回転駆動力により成膜基材43が基材供給ローラ41から巻取ローラ42まで搬送される。成膜基材43の搬送速度は、本例では2.5m/minに設定されており、1.0〜5.0m/minの範囲で設定されることが好ましい。
図2に示すように、塗布工程では、準備工程で調製したポリウレタン樹脂溶液45が常温下でナイフコータ46により成膜基材43に略均一に塗布される。このとき、ナイフコータ46と成膜基材43の上面との間隙(クリアランス)を調整することで、ポリウレタン樹脂溶液45の塗布厚さ(塗布量)を調整する。
凝固再生工程では、ナイフコータ46でポリウレタン樹脂溶液45が塗布された成膜基材43が、ガイドローラ21からガイドローラ23へ向けて凝固液25中に導入される。凝固液25中では、まず、塗布されたポリウレタン樹脂溶液45の表面に厚さ数μmにわたりスキン層2aを構成する微多孔が形成される。その後、ポリウレタン樹脂溶液45中のDMFと凝固液25との置換の進行によりポリウレタン樹脂が成膜基材43の片面に凝固再生する。この凝固再生は、ポリウレタン樹脂溶液45が塗布された成膜基材43が凝固液25中に進入してからガイドローラ23に到る間に完了する。DMFがポリウレタン樹脂溶液45から脱溶媒するときに、ポリウレタン樹脂中にナップ層2bを構成する発泡5が形成される。凝固再生したポリウレタン樹脂は、凝固液25から引き上げられ、マングルローラ28で余分な凝固液25が絞り落とされた後、ガイドローラ31を介して洗浄槽30に搬送され洗浄液35中に導入される。
洗浄・乾燥工程では、洗浄液35中に導入されたポリウレタン樹脂をガイドローラ33に上下交互に通過させることによりポリウレタン樹脂が洗浄される。洗浄後、ポリウレタン樹脂は洗浄液35から引き上げられ、マングルローラ38で余分な洗浄液35が絞り落とされる。その後、シリンダ乾燥機50の4本のシリンダ間を交互(図3の矢印方向)に、シリンダの周面に沿って通過させることでポリウレタン樹脂を乾燥させる。乾燥後のポリウレタン樹脂(ポリウレタンシート2)は、成膜基材43と共に巻取ローラ42に巻き取られる。
次に、ポリウレタンシート3の作製について説明するが、上述したポリウレタンシート2の作製と同じ工程、条件、成膜装置についてはその説明を省略し、異なる工程のみ説明する。
準備工程では、ポリウレタン樹脂、DMF、添加剤及び発泡調整用の調整有機溶媒を配合する。ポリウレタン樹脂、DMF、添加剤を混合しポリウレタン樹脂を溶解させた後、凝固再生時のDMFと水との置換を遅らせるため、所定量の調整有機溶媒を添加し樹脂エマルジョン49を得る。調整有機溶媒には、水に対する溶解度がDMFより小さく、DMFに溶解させたポリウレタン樹脂を凝固(ゲル化)させることなく、ポリウレタン樹脂を溶解させた溶液に均一に混合又は分散できるものを用いる。具体例としては、酢酸エチル、イソプロピルアルコール等を挙げることができる。調整有機溶媒の添加量を変えることで、ポリウレタンシート3の内部に形成される微発泡6の大きさや量(個数)を制御することができ、ポリウレタンシート3の圧縮率を調整することができる。本例では、ポリウレタンシート3の圧縮率を上述した範囲に設定するため、調整有機溶媒の添加量を樹脂エマルジョン49の100部に対して20〜45部の範囲とすることが好ましい。
凝固再生工程では、樹脂エマルジョン49が塗布された成膜基材43が凝固液25に導入され、ポリウレタン樹脂を凝固再生させる。凝固液25中では、まず、樹脂エマルジョン49の表面にスキン層2aが形成されるが、樹脂エマルジョン49に調整有機溶媒が添加されているため、樹脂エマルジョン49中のDMF及び調整有機溶媒と凝固液25との置換の進行が遅くなる。このため、表面に形成されたスキン層2aの内側には、ポリウレタンシート2のナップ層2bに形成された発泡5より平均孔径が小さくスキン層2aに形成された微多孔より平均孔径が大きい微発泡6が略均等に形成される。
ここで、ポリウレタンシート2の発泡5及びポリウレタンシート3の微発泡6の形成について説明する。ポリウレタン樹脂の溶解に使用したDMFは、ポリウレタン樹脂の溶解に一般に用いられる溶媒であり、水に対して任意の割合で混合することができる。このため、ポリウレタンシート2の作製では、凝固液25にポリウレタン樹脂溶液45を浸漬すると、まずポリウレタン樹脂溶液45の表面でDMFと凝固液25との置換(ポリウレタン樹脂の凝固再生)が起こりスキン層2aの微多孔が形成される。その後、凝固液25がスキン層2aの侵入しやすい部分からポリウレタン樹脂溶液45内部に侵入するため、DMFと凝固液25との置換が急速に進行する部分と遅れる部分とが生じ、比較的大きな発泡5が形成される。成膜基材43に凝固液を浸透させないPET製フィルムを使用することから、ポリウレタン樹脂溶液45の表面側(スキン層2a側)からのみDMFが溶出するため、発泡5は成膜基材43側が大きく丸みを帯びた三角錘状となる。
これに対して、ポリウレタンシート3の作製では、ポリウレタン樹脂の溶解後に調整有機溶媒を添加して樹脂エマルジョン49とする。調整有機溶媒は、水に対する溶解度がDMFより小さいため、水(凝固液25)中への溶出がDMFより遅くなる。また、樹脂エマルジョン49では、調整有機溶媒を添加した分、DMF量が少なくなる。このため、DMF及び調整有機溶媒と凝固液25との置換速度が遅くなるので、ポリウレタンシート2のような発泡5の形成が抑制され、ポリウレタンシート3のスキン層2aの内側には、微発泡6が概ね均等に分散して形成される。従って、微発泡6の平均孔径は、ポリウレタンシート2のナップ層2bの発泡5より小さくスキン層2aの微多孔より大きくなる。また、微発泡6は、DMF及び調整有機溶媒の脱溶媒に伴い形成されるため、微発泡6の平均孔径より小さい連通孔で立体網目状に連通される。
接合工程では、乾燥後のポリウレタンシート2、3がそれぞれ成膜基材43から剥離され、ポリウレタンシート2のスキン層2aの反対面側にポリウレタンシート3が接合される。接合には、DMFに少量のポリウレタン樹脂を溶解させた接合溶液を使用する。このポリウレタン樹脂には、ポリウレタンシート2、3と同じポリウレタン樹脂が使用される。ポリウレタン樹脂の溶解量は、ポリウレタンシート2、3の接合が可能であればよく、例えば、1〜5%程度でよい。ポリウレタンシート2、3を接合溶液を介して接触させ、加圧しながら加熱する。DMFを揮発させることでポリウレタンシート2、3がポリウレタン樹脂を介して接合される。なお、ポリウレタンシート3はスキン層2aが形成された反対面側が接合される。
バフ処理工程では、ポリウレタンシート3のポリウレタンシート2が接合された反対面側にバフ処理が施される。図4(A)に示すように、巻取ローラ42に巻き取られたポリウレタンシート2、3はそれぞれ成膜基材43のPET製フィルム上に形成されている。成膜時にはポリウレタンシート2、3の厚さにはいずれもバラツキが生じるため、略平坦な成膜基材43上に形成されたポリウレタンシート2、3の表面(成膜基材43と反対面側)には凹凸が形成されている。成膜基材43を剥離したポリウレタンシート2、3を接合した後、図4(B)に示すように、ポリウレタンシート2の研磨面P側に、平坦な表面を有する圧接ローラ65の表面を圧接することで、研磨面Pが平坦となり、ポリウレタンシート3のポリウレタンシート2が接合された反対面Q1側に凹凸が出現する。反対面Q1側に出現した凹凸がバフ処理で除去される。本例では、連続的に製造されたポリウレタンシート2、3が帯状のため、研磨面Pに圧接ローラ65を圧接しながら、反対面Q1側が連続的にバフ処理される。これにより、図4(C)に示すように、反対面Q1側がバフ処理されて平坦な反対面Qが形成されるため、接合されたポリウレタンシート2、3の全体の厚さのバラツキが解消される。なお、図4(A)では、ポリウレタンシート2、3に形成された発泡5、微発泡6を捨象して示している。また、図4(C)では説明をわかりやすくするために研磨面P及び反対面Qを平坦に示しているが、接合されたポリウレタンシート2、3では両面共にポリウレタンシート2、3の全体の厚さが一様となる凹凸を呈しており、基材7を貼り合わせること又は研磨機に装着することで研磨面Pが略平坦となる。
図2に示すように、ラミネート加工工程では、ポリウレタンシート3のバフ処理された面(反対面Q)側に基材7を貼り合わせる。基材7のポリウレタンシート3と反対面側には、一面側に剥離紙9が貼付された両面テープ8の他面側を貼り合わせる。そして、円形等の所望の形状に裁断した後、汚れや異物等の付着が無いことを確認する等の検査を行い研磨パッド1を完成させる。
得られた研磨パッド1で被研磨物の仕上げ研磨加工を行うときは、例えば、両面研磨機の上定盤、下定盤にそれぞれ研磨パッド1が貼付される。両面研磨機では、被研磨物が上定盤及び下定盤にそれぞれ貼付された2枚の研磨パッド1間に挟まれて両面同時に研磨加工される。研磨パッド1を貼付する面、すなわち、上定盤の下面及び下定盤の上面は、いずれも平坦に形成されている。このため、上定盤、下定盤に貼付された研磨パッド1は、いずれも平坦な研磨面Pを形成する。
(作用)
次に、本実施形態の研磨パッド1の作用等について説明する。
本実施形態の研磨パッド1では、ポリウレタンシート2のスキン層2aが形成された反対面側にポリウレタンシート3が接合されている。ポリウレタンシート3に形成された微発泡6の平均孔径がポリウレタンシート2のスキン層2aの微多孔より大きくナップ層2bの発泡5より小さいことから、ポリウレタンシート3の圧縮率がポリウレタンシート2より小さくなり、ポリウレタンシート3では外力に対する変形量がポリウレタンシート2より小さくなる。このため、接合されたポリウレタンシート2、3を連続的にバフ処理するときに、ポリウレタンシート2の伸縮がポリウレタンシート3で抑制される。従って、ポリウレタンシート2、3の全体の厚さが一様となるように安定したバフ処理が可能となるので、厚さのバラツキを解消して全体の厚さ精度を向上させることができる。得られた研磨パッド1を研磨機の定盤に貼付し被研磨物の仕上げ研磨加工に使用することで、厚さ精度の向上で平坦化したスキン層2aの表面で被研磨物が略均等に押し付けられるので、被研磨物の平坦性を向上させることができる。
また、本実施形態の研磨パッド1では、ポリウレタンシート2にポリウレタンシート3が接合されるため、ポリウレタンシート3の外力に対する変形量がポリウレタンシート2より小さいことから、ポリウレタンシート2の弾力性が抑制される。このため、研磨加工時に被研磨物が移動しても、ポリウレタンシート2が変形しつつスキン層2aの表面が被研磨物の加工面の全面に当接するように押し付けられるので、被研磨物の加工面の周縁部が中心部より過度に研磨加工されるロールオフを低減することができる。
更に、本実施形態の研磨パッド1では、ポリウレタンシート3の圧縮率が1%〜5%に設定されている。圧縮率が1%より小さいとポリウレタンシート3が硬くなり過ぎるため、研磨加工時にポリウレタンシート2が被研磨物の移動に対して変形しにくくなり、スキン層2aの表面で被研磨物を略均等に押し付けることができなくなる。反対に、圧縮率が5%より大きいとバフ処理時にポリウレタンシート2の伸縮の抑制が不十分となり厚さ精度の向上が不十分となる。従って、圧縮率を上述した範囲に設定することで、バフ処理時の厚さ精度の向上、及び、研磨加工時の被研磨物の平坦性の向上を実現することができる。
また更に、本実施形態の研磨パッド1では、ポリウレタンシート2、3がいずれもポリウレタン樹脂で形成されている。これら2枚のポリウレタンシート2、3の接合時には、同じポリウレタン樹脂を溶解した接合溶液が使用される。ポリウレタンシート2、3が同じ材質のポリウレタン樹脂で接合されるため、接合面での親和性が異種材料の接合より優れるので、ポリウレタンシート2、3を容易かつ確実に接合することができる。
更にまた、本実施形態の研磨パッド1では、ポリウレタンシート2、3の接合後、ポリウレタンシート3のポリウレタンシート2が接合された反対面Q側がバフ処理されている。このため、ポリウレタンシート2のミクロな平坦性を有するスキン層2aを減少させることなくポリウレタンシート2、3の全体の厚さ精度を向上させてマクロな平坦性を向上させることができる。
また、図5に示すように、ポリウレタンシート2のみを使用して研磨面Pの反対面側をバフ処理した研磨パッド12では、バフ処理によりある程度の厚さ精度が得られるため、被研磨物、例えば、現状の主流である片面あたり40ギガバイト程度の容量を有するハードディスク用基板の仕上げ研磨加工に使用しても十分な平坦性を得ることができる。ところが、片面あたり60ギガバイト以上の次世代型ハードディスク用基板の仕上げ研磨加工では、ナップ層2bの発泡5の変形による弾力性のためか、平坦性はよいが、基板端部がたれる、いわゆるロールオフが大きくなる。また、ポリウレタンシート2は、バフ処理された面で発泡5が開口するため、基材7等との貼り合わせに要する接着面積が減少することから、研磨加工時にポリウレタンシート2のずれ等が生じることがある。これに対して、本実施形態の研磨パッド1では、ポリウレタンシート2に接合されたポリウレタンシート3がバフ処理されるため、ポリウレタンシート3の微発泡6が開口しても、基材7との接着面積を確保してずれを防止することができる。また、研磨加工時にポリウレタンシート2の平坦なスキン層2aが被研磨物に押し付けられるので、スクラッチ等を防止することができると共に、ポリウレタンシート2の弾力性がポリウレタンシート3で抑制されるので、被研磨物のロールオフが低減し平坦性を向上させることができる。従って、上述した次世代型ハードディスク用基板等の高精度の平坦性が要求される被研磨物の仕上げ研磨加工に際しても、十分な平坦性を得ることができる。
更に、本実施形態の研磨パッド1では、ポリウレタンシート3の反対面Q側にPET製フィルムの基材7が貼り合わされている。このため、ポリウレタンシート2、3が基材7に支持されるので、研磨パッド1の搬送時や研磨機への装着時の取り扱いを容易にすることができる。
従来研磨パッドの製造に用いられる湿式成膜法では、粘性を有するポリウレタン樹脂溶液の成膜基材への塗布時に生じる塗布厚さのバラツキやポリウレタン樹脂の凝固再生時に生じる脱溶媒のバラツキにより得られるポリウレタンシートに厚さのバラツキが生じる。厚さのバラツキを減少させるため、研磨パッドの表面にバフ処理が施されるが、仕上げ研磨加工に有効なスキン層がバフ処理で消失してしまい、ナップ層に形成された発泡がポリウレタンシートの表面で開口するため、被研磨物の平坦性を向上させることが難しい。元々、スキン層の厚さがポリウレタンシートの厚さのバラツキより小さいため、スキン層を残しつつバフ処理しても、ポリウレタンシートの厚さのバラツキを十分改善することはできない。却って、スキン層の厚さが部分的に薄くなり、研磨加工中に短時間でスキン層が摩耗してナップ層の発泡が開口しやすくなるため、表面状態が不均一となり被研磨物の平坦性を低下させる。一方、バフ処理時には、ポリウレタンシートのナップ層に形成された発泡が変形するため、ポリウレタンシートが伸縮する。このため、ポリウレタンシートの厚さが一様となるような安定したバフ処理ができず、もとのシートよりは厚さ精度が改善されるものの、ポリウレタンシートの(バフ処理時にかかる)テンション斑の分、厚さ精度を低下させてしまう。ポリウレタンシートの伸縮を防止するために発泡の形成を抑制すると、ポリウレタンシートが硬くなるため、研磨加工時に被研磨物の表面にスクラッチ等が生じて平坦性を損なうことがある。本実施形態は、これらの問題を解決することができる研磨パッドである。
なお、本実施形態の研磨パッド1では、ポリウレタンシート2、3を同じポリウレタン樹脂製とする例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ポリウレタンシート3に代えてPET製等のシートやポリウレタン樹脂等を含浸した不織布シートを使用してもよく、バフ処理時にポリウレタンシート2の伸縮が抑制できればよい。また、本実施形態の研磨パッド1では、ポリウレタンシート3の作製に調整有機溶媒を添加する例を示したが、本発明はこれに制限されるものではなく、ポリウレタンシート2のスキン層2aの微多孔より平均孔径が大きくナップ層2bの発泡5より平均孔径が小さい微発泡6が形成されていればよい。換言すれば、発泡5の形成が抑制されていればよく、例えば、湿式成膜法では、凝固浴25にDMFを添加しておくようにしてもよい。このようにすれば、ポリウレタン樹脂の凝固再生時に脱溶媒の進行が遅くなるため、発泡5の形成を抑制することができる
また、本実施形態では、ポリウレタンシート2、3の接合に、少量のポリウレタン樹脂をDMFに溶解させた接合溶液を使用する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、DMFのみを使用しても、ポリウレタンシート2、3の接合面のポリウレタンがDMFにより軟化するため、加圧することで十分接合可能である。また、ポリウレタンシート2、3の接合面を加熱により軟化させ接合するようにしてもよい。もちろん、接着剤等を使用することも可能である。
更に、本実施形態では、ポリウレタンシート3の反対面Q側にPET製フィルムの基材7を貼り合わせる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、不織布や織布等を基材7としてもよい。基材7を貼り合わせずに直接両面テープ8を貼り合わせてもよい。また、基材7、両面テープ8をいずれも貼り合わせることなく、接合したポリウレタンシート2、3を研磨加工に使用することもできる。この場合は、研磨機の定盤に研磨パッドを装着する際に接着剤や両面テープを使用すればよい。
また更に、本実施形態では、ポリウレタン樹脂溶液45、樹脂エマルジョン49の塗布にナイフコータ46を例示したが、例えば、リバースコータ、ロールコータ等を用いてもよく、成膜基材43に略均一な厚さに塗布可能であれば特に制限されるものではない。また、本実施形態では、ポリウレタン樹脂の乾燥にシリンダ乾燥機50を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、熱風乾燥機等を用いてもよい。
更にまた、本実施形態では、ポリウレタンシート2が接合されたポリウレタンシート3は、バフ機等でポリウレタンシート2が接合された反対面側がバフ処理されるが、バフ処理量はポリウレタンシート2、3の全体の厚さの最大値と最小値との差の2倍以上とすることが望ましい。バフ処理ではサンドペーパーやダイヤモンドバフロール等の種々のものが使用されるが、均一な処理(研削除去)ができるものであればいずれも使用できる。このとき、バフ番手(砥粒の粗さを示す番号)を高くする程、細かな砥粒で研削でき均一なバフ処理ができる。更に、バフ処理を、1回目で低いバフ番手(粗い砥粒)で研削をし、2回目で1回目より高いバフ番手のもので研削量を小さくしてバフ仕上げ処理することで、厚み精度を更に上げることもできる。
以下、本実施形態に従い製造した研磨パッド1の実施例について説明する。なお、比較のために製造した比較例の研磨パッドについても併記する。
(実施例1)
実施例1では、ポリウレタンシート2、3の作製にポリウレタン樹脂としてポリエステルMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)ポリウレタン樹脂を用いた。ポリウレタンシート2の作製では、30%ポリウレタン樹脂溶液100部に対して、溶媒のDMFの45部、顔料としてカーボンブラック30%を含むDMF分散液40部、成膜安定剤の疎水性活性剤2部を添加し混合してポリウレタン樹脂溶液45を調製した。一方、ポリウレタンシート3の作製では、調整有機溶媒の酢酸エチルの45部を添加する以外はポリウレタン樹脂溶液45の調製と同様にして樹脂エマルジョン49を調製した。また、洗浄工程での洗浄効果を高めるために凝固再生後の洗浄を温水で行った。ポリウレタンシート3のポリウレタンシート2が接合された反対面側をバフ処理量0.14mmとしバフ番手♯180のサンドペーパーを使用してバフ処理し、基材7、両面テープ8を貼り合わせて実施例1の研磨パッド1を製造した。
(実施例2)
実施例2では、ポリウレタンシート3の作製で、酢酸エチルの20部を添加し樹脂エマルジョン49を調製する以外は実施例1と同様にして実施例2の研磨パッド1を製造した。
(比較例1)
比較例1では、実施例1で作製したポリウレタンシート2のみを使用し、基材7、両面テープ8を貼り合わせて比較例1の研磨パッドを製造した。
(比較例2)
比較例2では、実施例1で作製したポリウレタンシート2のみを使用し、スキン層2aの反対面側をバフ処理量0.14mmでバフ処理し、基材7、両面テープ8を貼り合わせて比較例2の研磨パッドを製造した(図5参照)。
(物性評価)
次に、各実施例及び比較例で作製した研磨パッドについて、厚さ、かさ密度、圧縮率、圧縮弾性率及びA硬度の各物性値を測定した。厚さの測定は、ダイヤルゲージ(最小目盛り0.01mm)を使用し加重100g/cmをかけて測定した。縦1m×横1mのポリウレタンシート2、3を縦横10cmピッチで最小目盛りの10分の1(0.001mm)まで読み取り、厚さの平均値、標準偏差σを求めた。かさ密度は、単位面積あたりの重量を測定し、厚さの測定結果を用いて算出した。圧縮率及び圧縮弾性率は、日本工業規格(JIS L 1021)に従い、ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を使用して求めた。具体的には、初荷重で30秒間加圧した後の厚さtを測定し、次に最終圧力のもとで5分間放置後の厚さtを測定した。全ての荷重を除き、5分間放置後、再び初荷重で30秒間加圧した後の厚さt’を測定した。圧縮率は、圧縮率(%)=(t−t)/t×100で算出し、圧縮弾性率は、圧縮弾性率(%)=(t’−t)/(t−t)×100で算出した。このとき、初荷重は100g/cm、最終圧力は1120g/cmであった。A硬度は、日本工業規格(JIS K 6253)に従い、バネを介して試験片表面へ押し付けられた押針の押し込み深さから求めた。厚さ、かさ密度、圧縮率、圧縮弾性率及びA硬度の測定結果を下表1に示す。
Figure 0005049504
表1に示すように、比較例1、比較例2では、ポリウレタンシート2のみを使用するため、厚さの平均値がそれぞれ0.79mm、0.86mmを示している。厚さの標準偏差σは、比較例1では0.008mmを示し、バフ処理を行った比較例2では、0.004mmを示し比較例1より小さくなっている。かさ密度は、発泡5の形成されたポリウレタンシート2を使用した比較例1では0.47g/cmを示し、比較例2では0.51g/cmを示している。また、圧縮率は、比較例1では9.4%を示し、比較例2では11.0%を示している。A硬度についても、比較例1より比較例2が低い結果を示している。これは、比較例2では、バフ処理によって、ポリウレタンシート2の発泡5が変形しやすくなったためであると考えられる。
これに対して、実施例1、実施例2では、ポリウレタンシート2、3を接合して使用するため、厚さの平均値がそれぞれ1.02mm、0.96mmを示している。厚さの標準偏差σはいずれも0.003mmを示しており、バフ処理を行っていない比較例1より小さく抑制されている。また、かさ密度、圧縮率については、ポリウレタンシート2のみの比較例1、比較例2より、かさ密度が大きくなり、圧縮率が小さくなっている。このことから、バフ処理時に生じるポリウレタンシート2の伸縮がポリウレタンシート3により抑制されるため、バフ処理で厚さ精度が向上することが判る。圧縮弾性率が、実施例1では94.3%、実施例2では94.2%を示していることから、ポリウレタンシート2にポリウレタンシート3を接合しても弾力性を残していることが判る。この実施例1、2の研磨パッド1で仕上げ研磨加工を行うことで、被研磨物の表面を高精度に平坦化することが期待できる。
(研磨性能評価)
次に、各実施例及び比較例の研磨パッドを用いて、以下の研磨条件でアルミニウム基板の仕上げ研磨加工を行い、研磨量、研磨レート、ロールオフ、うねりにより研磨性能を評価した。研磨量は、研磨加工前後のアルミニウム基板の重量減少を測定して求めた。研磨レートは、1分間当たりの研磨量を厚さで表したものであり、研磨量の測定値、アルミニウム基板の研磨面積及び比重から算出した。ロールオフは、アルミニウム基板の周縁部が中心部より過度に研磨加工されることで生じ、平坦性を評価するための測定項目の1つである。測定方法としては、例えば、光学式表面粗さ計にて外周端部から中心に向かい0.3mmの位置より半径方向に2mmの範囲で2次元プロファイル像を得る。得られた2次元プロファイル像において、半径方向をX軸、厚さ方向をY軸としたときに、外周端部からX=0.5mmおよびX=1.5mmの座標位置のY軸の値がY=0となるようにレベリング補正し、このときの2次元プロファイル像のX=0.5〜1.5mm間におけるPV値をロールオフとしてナノメートル単位で表したものである。被研磨物が3.5インチのアルミニウム基板の場合は、半径で表すと46〜47mmの間のPV値となる。うねり(waviness)は、表面精度(平坦性)を評価するための測定項目の1つであり、光学式非接触表面粗さ計で観察した単位面積当たりの表面像のうねり量(Wa)を、オングストローム(Å)単位で表したものである。ロールオフ及びうねりの測定には、表面粗さ測定機(Zygo社製、型番New View 5022)を使用した。研磨レート、ロールオフ、うねりの測定結果を下表2に示す。
(研磨条件)
使用研磨機:スピードファム社製、9B−5Pポリッシングマシン
研磨速度(回転数):30rpm
加工圧力:100g/cm
スラリー:コロイダルシリカスラリー
スラリー供給量:100cc/min
被研磨物:ハードディスク用アルミニウム基板
(外径95mmφ、内径25mm、厚さ1.27mm、一次研磨上がり)
目標研磨量:0.3μm/片面(研磨量が同じとなるように研磨時間を調整した)
Figure 0005049504
表2に示すように、ポリウレタンシート2のみを使用した比較例1の研磨パッドでは、発泡5の変形によるポリウレタンシート2の変形のため、研磨レートが0.183μm/分を示し、平坦性を表すロールオフが12.4nm、うねりが2.26Åであった。また、スキン層2aの反対面側をバフ処理したポリウレタンシート2を使用した比較例2の研磨パッドでは、うねりが1.88Åとなり、バフ処理によって厚さ精度が向上しうねりが良化したことが判る。しかしながら、一方で研磨レートが0.132μm/分となり、ロールオフが13.0nmとなったことから、バフ処理によって発泡5のセル形状が切り取られることで変形しやすくなり、ロールオフが悪化したと考えられる。
これに対して、ポリウレタンシート2、3を接合して使用した実施例1、実施例2の研磨パッド1では、全体として圧縮率が小さくなる(表1も参照)ため、研磨レートがそれぞれ0.253μm/分、0.240μm/分となり比較例1より大きい数値を示した。また、うねりがそれぞれ1.97Å、1.99Åとなった。これは、バフ処理によって厚さ精度が向上したためと考えられる。更に、ロールオフがそれぞれ1.4nm、1.6nmとなり、比較例1、2よりよい結果となった。これは、ポリウレタンシート2にポリウレタンシート3を接合したことで、発泡5の変形を抑制し、圧縮率を低く抑えることができたためと考えられる。以上のことから、ポリウレタンシート2にポリウレタンシート3を接合して使用することで、平坦性に優れたスキン層を有し、優れた研磨特性を達成することができる研磨パッド1を得ることができることが判った。
本発明は被研磨物の平坦性を向上させることができる仕上げ用研磨布を提供するため、研磨布の製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
本発明に係る仕上げ用研磨パッドを示す断面図である。 実施形態の研磨パッドの製造工程を示す工程図である。 研磨パッドのポリウレタンシートの製造に用いる成膜装置の概略構成を示す正面図である。 バフ処理工程でのポリウレタンシートの状態変化を示す断面図であり、(A)は成膜基材に形成されたときの状態、(B)は2枚のポリウレタンシートを接合した後、研磨面を圧接ローラに圧接したときの状態、(C)はバフ処理後に圧接ローラを取り外したときの状態をそれぞれ示す。 内部に発泡が形成されたポリウレタンシートを使用した従来の研磨パッドを示す断面図である。
符号の説明
P 研磨面
Q 反対面
1 研磨パッド(研磨布)
2 ポリウレタンシート(軟質プラスチックシート)
2a スキン
2b ナップ層(発泡層)
3 ポリウレタンシート(発泡プラスチックシート)
5 発泡
6 微発泡

Claims (7)

  1. 湿式成膜法により形成され、ミクロな平坦性を有するスキン層と、前記スキン層の内側に配され厚さ方向に長い発泡が形成された発泡層とを有する軟質プラスチックシートを備えた仕上げ用研磨布において、前記軟質プラスチックシートは、前記スキン層が形成された反対面側に、湿式成膜法により形成され、前記発泡層に形成された発泡より平均孔径が小さい微発泡が形成された発泡プラスチックシートが接合されており、前記発泡プラスチックシートの前記軟質プラスチックシートが接合された反対面側が前記発泡プラスチックシート及び前記軟質プラスチックシートの全体の厚さが一様となり、かつ、前記スキン層の表面でのマクロなうねりを除去するように、前記発泡プラスチックシート及び前記軟質プラスチックシートが接合された状態でバフ処理されているとともに、前記スキン層の表面が被研磨物を研磨加工するための研磨面を構成することを特徴とする研磨布。
  2. 前記発泡プラスチックシートは、該発泡プラスチックシートの内部に前記微発泡が略均等に形成されており、圧縮率が前記軟質プラスチックシートより小さいことを特徴とする請求項1に記載の研磨布。
  3. 前記発泡プラスチックシートは、圧縮率が1%〜5%の範囲であることを特徴とする請求項2に記載の研磨布。
  4. 前記発泡プラスチックシート及び前記軟質プラスチックシートは、いずれもポリウレタン樹脂製であることを特徴とする請求項1に記載の研磨布。
  5. 前記発泡プラスチックシート及び前記軟質プラスチックシートは、ポリウレタン樹脂で接合されていることを特徴とする請求項4に記載の研磨布。
  6. 前記発泡プラスチックシートのバフ処理された面側に、両面テープが更に貼り合わされていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の研磨布。
  7. 前記発泡プラスチックシートと前記両面テープとの間に、少なくとも可撓性フィルム、不織布及び織布から選択される1種の基材が更に貼り合わされていることを特徴とする請求項6に記載の研磨布。
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