JP5000986B2 - ジヒドロキシベンゼン誘導体の製造方法 - Google Patents

ジヒドロキシベンゼン誘導体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、空気入りタイヤや工業用ベルト等のゴム物品に用いられるスチールコード等の金属補強材との接着耐久性を向上させる目的で使用されるレゾルシンジエステル系化合物に代表されるジヒドロキシベンゼン誘導体の製造方法に関する。
自動車用タイヤ、コンベアベルト、ホース等、特に強度が要求されるゴム製品には、ゴムを補強し強度、耐久性を向上させる目的で、スチールコード等の金属補強材をゴム組成物で被覆した複合材料が用いられている。該ゴム−金属複合材料が高い補強効果を発揮し信頼性を得るためにはゴム−金属補強材間に混合、配合、貯蔵等の条件に左右されない安定した接着が必要である。かかる複合体を得るには、亜鉛、黄銅、真鍮等でメッキされたスチールコード等の金属補強材を、硫黄を配合したゴム組成物に埋設し加熱加硫時に、ゴムの加硫と同時に接着させるいわゆる直接加硫接着が広く用いられており、これまで該直接加硫接着におけるゴム−金属補強材間の接着性、特に耐湿熱接着性向上のため様々な検討が行われている。
例えば、レゾルシン又は、レゾルシンとホルマリンを縮合して得られる、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂(以下、「RF樹脂」と略記する。)を耐湿熱接着性向上の目的で配合したゴム組成物が報告されている(特許文献1)。
また、重量平均分子量が3000〜45000のレゾルシン骨格を有する混合ポリエステルからなる、接着材料が報告されている(特許文献2)。
一方、我々は上記技術よりもさらに耐湿熱接着性を向上したものとしてレゾルシンジエステル系化合物および組成物を報告している(特許文献3)。しかしながら、該レゾルシンジエステル系化合物に代表されるジヒドロキシベンゼン誘導体は通常、塩基の存在下で2価カルボン酸ハライドに対して大過剰のジヒドロキシベンゼンとを反応させて製造する必要があり、該ジヒドロキシベンゼン誘導体の製造においてはジヒドロキシベンゼンを効率的に回収しつつプロセスを最適化する必要があった。
特開2001−234140号公報 特開平7−118621号公報 WO2005−087704号公報
本発明は、レゾルシンに代表されるジヒドロキシベンゼンと2価カルボン酸ハライドとを反応させてレゾルシンジエステル系化合物に代表されるジヒドロキシベンゼン誘導体を製造する方法を提供するものである。
本発明者らは鋭意検討した結果、反応、単離、ジヒドロキシベンゼン回収等の各単位操作の組み合わせを最適化する事で、簡便な操作で効率良くジヒドロキシベンゼン誘導体を製造できる事を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、
(a)実質的に水と不混和性の有機溶媒に一般式(1)で表される化合物
を溶解または懸濁し、塩基性化合物で前記一般式(1)で表される化合物を部分中和する工程
(b)続いて一般式(2)で表されるカルボン酸ハライド
(式中Rは炭素数1〜16の脂肪族基、2価の芳香族基を表し、Xはハロゲン原子を表す。)を滴下装入しつつ反応させる工程(エステル化反応工程)
(c)エステル化反応時の温度よりも高い温度で熱処理する工程(オリゴマー分解工程)
(d)前記(c)で得られた混合物を水と接触させて生成物を析出させ、固液分離操作および乾燥により生成物の固体を得る工程
(e)前記(d)の固液分離操作で発生する排水に、実質的に水と不混和性の有機溶媒を添加し、原料として用いた未反応の一般式(1)で表される化合物を抽出する工程
(f)前記(e)で得られた、一般式(1)で表される化合物が実質的に水と不混和性の有機溶媒に溶解した液の濃度を調整した後に、前記(a)の原料とする工程
からなり、前記(a)における一般式(1)で表される化合物の量が、前記一般式(2)で表されるカルボン酸ハライドに対して4〜30倍のモル比であり、前記(a)における塩基性化合物の量が、前記一般式(2)で表されるカルボン酸ハライド中の官能基に対して1.0〜1.5当量であることを特徴とする一般式(3)で表される化合物の製造方法に関するものである。

(式中、Rは炭素数1〜16の脂肪族基、2価の芳香族基を表す。)
本発明によれば、空気入りタイヤや工業用ベルト等のゴム物品に用いられるスチールコード等の金属補強材との接着耐久性を向上させる目的で使用されるレゾルシンジエステル系化合物に代表されるジヒドロキシベンゼン誘導体の効率的な製造方法を提供する事が出来る。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明に使用される一般式(1)で表される化合物としては、カテコール、レゾルシンおよびハイドロキノンが挙げられる。これらの中ではレゾルシンが好ましい。
本発明に使用される一般式(2)で表されるカルボン酸ハライドにおいて、Rは炭素数1〜16の脂肪族基あるいは2価の芳香族基を表す。炭素数1〜16の脂肪族基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、ブチレン基、イソブチレン基、オクチレン基、2−エチルヘキシレン基等の直鎖または分岐鎖のアルキレン基、エチレニル基、ブチレニル基
、オクチレニル基等の直鎖または分岐鎖のアルケニル基、これらのアルキレン基又はアルケニル基の水素原子がヒドロキシル基又はアミノ基等で置換されたアルキレン基またはアルケニレン基、シクロヘキシル基等の脂環式基が挙げられる。一方、2価の芳香族基としては、置換されていても良いフェニレン基あるいは置換されていても良いナフチレン基、ビフェニル基、ジフェニルエーテル基等が挙げられる。これらの中でも入手の容易さ等を考慮すれば、炭素数2〜10のアルキレン基およびフェニレン基が望ましく、特にエチレン基、ブチレン基又はオクチレン基が好ましい。
本発明に使用される一般式(2)で表されるカルボン酸ハライドにおいて、Xで示されるハロゲン原子としては、塩素、臭素が好ましい。
本発明に使用される一般式(2)で表されるカルボン酸ハライドとしては、マロン酸ジクロライド、コハク酸ジクロライド、フマル酸ジクロライド、マレイン酸ジクイロライド、グルタル酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、スベリン酸ジクロライド、アゼライン酸ジクロライド、セバシン酸ジクロライド、1.10−デカンジカルボン酸ジクロライド、1,12−ドデカンジカルボン酸ジクロライド、1,16−ヘキサデカン酸ジクロライド等の脂肪族カルボン酸ジクロライド、シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド、シクロヘキセンジカルボン酸ジクロライド等の脂環式ジカルボン酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド等の芳香族ジカルボン酸クロライド、マロン酸ジブロマイド、コハク酸ジブロマイド、フマル酸ジブロマイド、マレイン酸ジブロマイド、グルタル酸ジブロマイド、アジピン酸ジブロマイド、スベリン酸ジブロマイド、アゼライン酸ジブロマイド、セバシン酸ジブロマイド、1.10−デカンジカルボン酸ジブロマイド、1,12−ドデカンジカルボン酸ジブロマイド、1,16−ヘキサデカン酸ジブロマイド等の脂肪族カルボン酸ジクロライド、シクロヘキサンジカルボン酸ジブロマイド、シクロヘキセンジカルボン酸ジブロマイド等の脂環式ジカルボン酸ジブロマイド、イソフタル酸ジブロマイド、テレフタル酸ジブロマイド等の芳香族ジカルボン酸ブロマイドが挙げられる。これらの中でも、マロン酸ジクロライド、コハク酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、アゼライン酸ジクロライド、セバシン酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド、マロン酸ジブロマイド、コハク酸ジブロマイド、アジピン酸ジブロマイド、アゼライン酸ジブロマイド、セバシン酸ジブロマイド、テレフタル酸ジブロマイド、イソフタル酸ジブロマイド等が好ましい。
本発明における、実質的に水と不混和性の有機溶媒は、水への溶解度が5%以下の有機溶媒を意味し、一般にはケトン系、エーテル系およびエステル系有機溶媒から選択される。ケトン系有機溶媒としてはメチルイソブチルケトン、エチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系有機溶媒としてはジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等が挙げられる。また、エステル系有機溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等が挙げられる。これらの中でも、反応選択率、一般式(1)で表される化合物の回収率、沸点等の観点からメチルイソブチルケトンが最も好ましい。
本発明の塩基性化合物としては、有機塩基および無機塩基が用いられる。有機塩基としてはピリジン、β−ピコリン、N−メチルモルホリン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の有機アミンが挙げられる。無機塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩が用いられる。これらの中でも、価格面を考慮すれば無機塩基が好ましく、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。これら無機塩基は固体のまま使用しても、水溶液として使用しても差し支えない。
本発明において、一般式(1)で表される化合物は後述するように、一般式(2)で表されるカルボン酸ハライドに対して過剰に用いるが、工程(a)における部分中和に使用される塩基性化合物の量は、反応に使用する一般式(2)で表されるカルボン酸ハライド中の官能基に対して1.0〜1.5当量、好ましくは1.0〜1.2当量さらに好ましくは1.0〜1.05当量が採用される。この範囲未満では化学論量より不足する。一方、この範囲を超えて使用した場合には収率が低下する傾向がある。
本発明において、一般式(1)で表される化合物を一般式(2)で表されるカルボン酸ハライドに対して4〜30倍、好ましくは5〜25倍、より好ましくは8〜20倍のモル比で反応させる。一般式(1)で表される化合物のモル比が上記範囲より低い場合は、オリゴエステルが主生成物となる。また、一般式(2)で表される化合物が上記範囲より高い場合、反応選択率に差が観られないばかりか、容積効率を悪化させる。
本発明の一般式(3)で表される化合物としては、例えば、一般式(4)で表される化合物が挙げられる。一般式(4)中のRは一般式(2)および一般式(3)中のRと同義である。
一般式(3)で表される化合物の具体例としては、マロン酸ビス(2−ヒドロキシフェニル)エステル、コハク酸ビス(2−ヒドロキシフェニル)エステル、フマル酸ビス(2−ヒドロキシフェニル)エステル、マレイン酸ビス(2−ヒドロキシフェニル)エステル、リンゴ酸ビス(2−ヒドロキシフェニル)エステル、イタコン酸ビス(2−ヒドロキシフェニル)エステル、シトラコン酸ビス(2−ヒドロキシフェニル)エステル、アジピン酸ビス(2−ヒドロキシフェニル)エステル、酒石酸ビス(2−ヒドロキシフェニル)エステル、アゼライン酸ビス(2−ヒドロキシフェニル)エステル、セバシン酸ビス(2−ヒドロキシフェニル)エステル、シクロヘキサンジカルボン酸ビス(2−ヒドロキシフェニル)エステル、テレフタル酸ビス(2−ヒドロキシフェニル)エステル、イソフタル酸ビス(2−ヒドロキシフェニル)エステル、マロン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、コハク酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、フマル酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、マレイン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、リンゴ酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、イタコン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、シトラコン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、アジピン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、酒石酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、アゼライン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、セバシン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、シクロヘキサンジカルボン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、テレフタル酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、イソフタル酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、マロン酸ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、コハク酸ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、フマル酸ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、マレイン酸ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、イタコン酸ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、シトラコン酸ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、アジピン酸ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、酒石酸ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、アゼライン酸ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、セバシン酸ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、シクロヘキサンジカルボン酸ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、テレフタル酸ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、イソフタル酸ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル等が挙げられる。
これらの中でも、マロン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、コハク酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、フマル酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、マレイン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、リンゴ酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、イタコン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、シトラコン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、アジピン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル
)エステル、酒石酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、アゼライン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、セバシン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、シクロヘキサンジカルボン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステルが好ましく、特にコハク酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、アジピン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、セバシン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステルが好ましい。
本発明のエステル化反応工程は、一般式(2)で表されるカルボン酸ハライドを滴下装入しつつ行なわれる。カルボン酸ハライドの滴下速度は特に限定されず、エステル化工程の所望の温度が保持できる範囲で適宜決定すれば良い。使用する原料、塩基性化合物の種類、反応スケールにもよるが通常は2〜20時間程度で滴下する。カルボン酸ハライドの滴下終了をもってエステル化反応工程を終了しても差し支えないし、場合によっては熟成時間を設けても良い。熟成時間は通常1〜10時間程度が採用される。
本発明のエステル化反応工程は、通常、−20℃〜50℃、好ましくは−10℃〜40℃、より好ましくは0℃〜30℃で行なわれる。この範囲より低い温度では反応速度が低下し時間を要する。この範囲より高い温度では、カルボン酸ハライドの種類にもよるが、オリゴマー分解工程終了時点での反応選択率が低下する傾向にある。
本発明のエステル化反応工程の濃度は、所望の温度範囲にて攪拌が十分に行なわれるだけの液性が確保できれば特に限定されず、工程(a)における一般式(1)で表される化合物の仕込み濃度で5重量%〜60重量%、好ましくは10〜55%、さらに好ましくは20〜50%で行なわれる。この範囲より低濃度では容積効率が低い。また、この範囲より高濃度では粘度が高く攪拌に不具合が生じる傾向にある。
本発明の工程(a)において塩基性物質として無機塩基を用いた場合には中和生成水が生じる。さらに、アルカリ金属水酸化物等の水溶液を用いた場合には、塩基性化合物に由来する水が系内に存在する。系内に水を含んだままでオリゴマー分解工程に進んでしまうと生成物の加水分解が懸念されるため、エステル化反応工程後に水を除去する必要がある。多くの場合、使用する実質的に水と不混和性の有機溶媒と共沸組成を有しており、公知の共沸脱水操作にて、留出液より分離した有機溶媒を系内に戻しつつ水を留去する。通常、系内の水分濃度が2重量%以下、好ましくは1重量%以下を脱水の目安とする。
本発明において、オリゴマー分解工程は、通常、105℃〜140℃、好ましくは110℃〜130℃、さらに好ましくは115℃〜125℃で行なわれる。この範囲より低い温度ではオリゴマー分解速度が遅く時間を要する。この範囲より高い温度では、生成物の種類にもよるが、その骨格バランスが崩れる傾向があり、また、熱履歴により副生物が観られる事もある。
本発明のオリゴマー分解工程はエステル化反応混合物(場合により脱水したもの)をそのまま使用しても良いし、有機溶媒を留去した混合物を用いても良い。使用する有機溶媒によっては所望のオリゴマー分解温度に達しない場合もある事から、有機溶媒を留去した後、あるいは留去しながらオリゴマー分解温度に昇温する事が多い。また、有機溶媒を留去する場合には、共沸脱水の際に相互溶解度の関係で十分に除去できなかった水分を除去できるメリットがある。減圧度一定で内温を徐々に上昇しつつ留去しても良いし、内温が一定となるように減圧度を調整しつつ留去しても良い
本発明のオリゴマー分解工程は、化合物の種類や温度にもよるが、通常、2〜20時間程度行なう。また、有機溶媒を留去しながら昇温する場合には、その時間も含める。この範囲より短い時間ではオリゴマー分解が不十分で製品組成がオリゴマーリッチとなる。この範囲より長時間の熱処理は組成変化が観られないので無駄になると共に、場合によっては熱履歴により副生物の生成が観られる事もある。
本発明において有機溶媒を除去せずにオリゴマー分解工程を行なった場合、そのまま次工程(d)に進んでも構わないし、有機溶媒を除去した後に工程(d)に進んでも良い。使用している有機溶媒の量にもよるが、貧溶媒である水に対する比率が高い場合には沈殿析出に悪影響を及ぼす可能性があり、濃縮等により量を削減した後に工程(d)に進む事が多い。濃縮後の混合液中の有機溶媒濃度として20%以下、好ましくは10%以下を濃縮の目安とすれば良い。
本発明の工程(d)は、オリゴマー分解工程により反応が完結した混合液を水と接触させて生成物を析出させる工程である。基本的には生成物である一般式(3)で表される化合物の貧溶媒であると共に、原料である一般式(1)で表される化合物の良溶媒であれば良く、通常は水が用いられる。
本発明において貧溶媒として使用される水は、反応混合物に対して5重量倍〜100重量倍使用される。この範囲以下では、析出が不十分で収率が低い。またこの範囲以上では容積効率が悪化する。
本発明において、反応混合物を貧溶媒である水と接触させる際の温度は通常、0℃〜40℃、好ましくは0℃〜25℃が採用される。この範囲より高い温度では、生成物の加水分解が懸念される。
本発明において、反応混合物と貧溶媒である水を接触させる方法は特に限定されず、所望の温度を維持できれば良い。反応混合物は大半の溶媒が留去され、原料である一般式(1)で表される化合物に生成物が溶解している状態であるため、化合物種類にもよるがオリゴマー分解温度以下では流動性を維持できない場合が多い。従って、所望の温度に設定した水中に、加温下の反応混合物を滴下または分割装入しつつ沈殿を析出させる方法が採用される。装入の速度は所望の温度を維持できれば良く、特に限定はされないが0.5時間〜10時間かけて実施する。この範囲より時間が短い場合、得られる結晶の濾過速度が遅くなる傾向がある。この範囲より長時間かけても状態は特に変わらないが、攪拌によるせん断または破砕効果により結晶径に変化が生じて濾過速度が遅くなる場合もある。
本発明において、水との接触により得られた沈殿は、濾過、遠心分離などの固液分離操作により単離を行なう。
本発明において固液分離操作により単離した湿体は、常圧または減圧下で乾燥する。乾燥温度は特に限定されないが20℃〜120℃、好ましくは40℃〜80℃で行なう事が多い。この範囲より高い温度では生成物の加水分解が懸念される。乾燥初期〜後半にかけて連続的あるいは段階的に温度を上げつつ乾燥する事で、加水分解を抑制しつつ乾燥時間を短くする事ができる。
本発明において得られた乾燥固体は再結晶による精製や、カラム精製を行なっても良い。
本発明において、一般式(1)で表される化合物として例えばレゾルシンを用いた場合には、一般式(4)で表される化合物が得られるが、一般式(5)で表されるオリゴエステル体も含まれる事がある。通常、一般式(4)で表される化合物が60〜100重量%、一般式(5)におけるn=2の化合物が0〜20重量%、一般式(5)におけるn=3の化合物が0〜10重量%、一般式(5)におけるn=4〜6の化合物の総和が10重量%程度である量を含有する。これらの比率は一般式(2)で表されるカルボン酸ハライドとレゾルシンのモル比を変化させる事でコントロール可能である。即ち、カルボン酸ハラ
イドに対するレゾルシンのモル比を高くするほど、一般式(5)で表されるオリゴエステル体の比率は低下する。これらオリゴエステル体を含んでいても、前記一般式(3)で表される化合物同様の方法により、これらを含む反応混合物から単離することができる。
本発明において、固液分離操作により発生する廃水には、原料として過剰に使用した一般式(1)で表される化合物が含まれている。工程(e)は、該廃水に、反応で用いたのと同一の実質的に水と不混和性の有機溶媒を添加し、一般式(1)で表される化合物を抽出する工程である。
本発明の工程(e)において、抽出に使用する有機溶媒の量は特に限定されず、目指す回収率および抽出回数などにより適宜決定される。一般的には、抽出操作1回当たり、廃水に対して0.05重量倍〜10重量倍、好ましくは0.1重量倍〜5重量倍、さらに好ましくは0.2〜2重量倍用いられる。この範囲以下では抽出が不十分となり、この範囲以上に使用しても抽出率の向上は観られず容積効率の悪化に繋がる。
本発明の工程(e)において抽出回数は特に限定されず、目指す回収率により適宜決定されるが、1回〜3回程度で終了するように条件(溶媒量、時間、温度)を決定する事が多い。抽出時間も特に限定されず、概ね0.5時間から2時間程度抽出し、その後0.5時間〜2時間静置した後に分液すれば良い。
本発明の工程(e)において、抽出温度は特に限定されず、5℃〜80℃、好ましくは10℃〜70℃、さらに好ましくは20〜50℃で行なわれる。工程(d)で発生する廃液中には溶解度分の一般式(3)で表される化合物が存在する場合がある。この場合、一般式(3)で表される化合物は該抽出操作にて有機溶媒側に抽出され、工程(f)の濃縮操作の後、原料として仕込みに供されるため、次回反応の収量向上に繋がる。抽出温度がこの範囲より高い温度で行なわれた場合には、一般式(3)で表される化合物の加水分解により、次回反応の収量向上に繋がらない可能性がある。
本発明の工程(f)では、工程(e)で得られた抽出液を工程(a)の原料として使用出来るように濃縮する工程である。通常、一般式(1)で表される化合物の濃度が仕込みと同程度になるまで濃縮し、反応で消費された分の一般式(1)で表される化合物を追加した後に、有機溶媒を添加して濃度を調整する。該抽出液には飽和溶解度分の水が含まれており、溶媒と共に留去しても良いし、まず溶媒との共沸脱水を行い実質的に非水系にした後に濃縮操作を行なっても良い。
本発明の工程(f)での濃縮あるいは共沸脱水の際の温度は特に限定されず、通常は常圧または減圧下で20℃〜100℃で行なわれる。より好ましくは30℃〜70℃、さらに好ましくは40℃〜60℃である。この範囲より低い温度では、高真空が必要となるため、真空ポンプやコンデンサー等の設備負荷が大きくなる。また、この範囲より高い温度では抽出液中に含まれる一般式(3)で表される化合物の加水分解が懸念される。
以下に、本発明の好適な実施形態を説明する。
原料となるカルボン酸ハライドに対して10倍モルのジヒドロキシベンゼンを同重量の水不混和性溶媒に溶解し、カルボン酸ハライド中の官能基に対して1.0〜1.1当量の25wt%〜30wt%NaOH水を添加してジヒドロキシベンゼンを部分中和する。その後、10℃まで冷却し、10℃〜15℃を保持しながらカルボン酸ハライドを連続あるいは分割滴下しつつエステル化反応を行な、滴下終了後に1hr程度の熟成を行なう。この段階では目的の一般式(3)で表されるジヒドロキシベンゼン誘導体の収率は30%〜40%程度であり、大部分はオリゴマーが占めている。その後、40℃〜65℃で水不混和性溶媒との共沸脱水を行い反応系内水分濃度を1重量%以下まで低減させた後に、水不混和性溶媒を系外に留去する。この際、留去が進むにつれ内温が上昇するが、オリゴマー分解温度まで上昇した時点で溶媒留去を終了する。その後、120℃/2hrオリゴマー分解を実施する。この段階で生成物の組成が決定し、目的の一般式(3)で表されるジヒドロキシベンゼン誘導体が主生成物となる。その後、オリゴマー分解マスを流動性が保持できる程度に保温しながら、5℃〜25℃に冷却した水に連続または分割で排出し再沈殿を行い、得られた沈殿を濾取し、水洗により付着するジヒドロキシベンゼンを除去した後に、40〜80℃程度で減圧下あるいは不活性ガス気流中で乾燥する。
[実施例]
以下に、実施例を上げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
レゾルシン(以下、RSと略)110.2g(1.0mol)をメチルイソブチルケトン(以下、MIBKと略)110gに溶解し、30.6重量%のNaOH水溶液26.7g(0.204mol)を添加し部分中和した。その後、10℃に冷却し、10℃〜15℃を維持しながら塩化アジポイル(以下、ADCと略)18.3g(0.10mol)を1時間かけて滴下しつつ
エステル化反応を行い、同温度で1時間熟成を行なった。その後、昇温しつつ減圧下(40torr前後)で共沸脱水を行なった。凡そ3時間後に内温が65℃に達した時点で共沸脱水を終了した。系内水分濃度は0.3%であった。その後、昇温しつつ減圧下(30torr)でMIBKを留去した。凡そ2時間後に内温が120℃に達した時点でMIBK留去を終了した。この時系内MIBK濃度は5重量%であった。同温度で2時間熟成しオリゴマー分解を行った後に、5℃に冷却した540gの水中に30分かけて排出し、結晶を析出させた。ヌッチェでの減圧濾過により結晶を濾取し、540gの水で洗浄した後に60℃/15時間、減圧乾燥し29.8gの白色〜淡黄色粉体を得た(粗収率90.3%/ADC)。HPLCにて分析した結果、アジピン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステルが89.0重量%、オリゴマー(二量体)が7.4重量%、原料レゾルシンが3.1重量%であった。
一方、濾過・洗浄により発生した濾洗液609.9gに対して、オリゴマー分解後に留去して回収したMIBK106gに新MIBKを添加して計492.8gのMIBKで30℃/1時間抽出−1時間静置分液を2回繰り返した。MIBK層中のレゾルシンは濾洗液中のRSに対して98.0%であった。その後、60℃/20torrで水およびMIBKを留去し、44.0重量%のRS/MIBK溶液196.5gを調製した。
得られたRS/MIBK溶液に、不足分のRS23.74gを追加・溶解して50重量%のRS/MIBK溶液220.2gを調整した。
実施例1で得られた50重量%のRS/MIBK溶液220.2g(RS:1.0mol)に30.6重量%のNaOH水溶液26.7g(0.204mol)を添加し部分中和した。その後、実施例1と同様の操作を行ない、30.4gの薄茶色粉体を得た(粗収率93.8%/ADC)。HPLCにて分析した結果、アジピン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステルが86.5重量%、オリゴマー(二量体)が8.2重量%、原料レゾルシンが3.0重量%であった。
一方、濾過・洗浄により発生した濾洗液611.2gに対して、オリゴマー分解後に留去して回収したMIBK108gに新MIBKを添加して計492.8gのMIBKで30℃/1時間抽出−1時間静置分液を2回繰り返した。MIBK層中のレゾルシンは濾洗液中のRSに対して98.1%であった。その後、60℃/20torrで水およびMIBKを留去し、44.0重量%のRS/MIBK溶液196.3gを調製した。
得られたRS/MIBK溶液に、不足分のRS23.9gを追加・溶解して50重量%
のRS/MIBK溶液220.2gを調整した。
実施例2で得られた50重量%のRS/MIBK溶液220.2g(RS:1.0mol)を用いて実施例2と同様の操作を行なった。
得られた結晶の組成比、粗収率を表−1に示す。
実施例3で得られた50重量%のRS/MIBK溶液を用いて、実施例2と同様の操作を行なった。
得られた結晶の組成比、粗収率を表−1に示す。
尚、HPLCの分析条件は下記の通りである。
1.アジピン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、RSの分析
カラム : YMC社 A−312 ODS
カラム温度: 40℃
溶離液 : メタノール/水=7/3(リン酸でpH=3に調整)
検出 : UV(254nm)
2.オリゴマーの分析
カラム : YMC社 A−312 ODS
カラム温度: 40℃
溶離液 : アセトニトリル/水=8/2(酢酸でpH=3.5に調整)
検出 : UV(254nm)

Claims (7)

  1. (a)実質的に水と不混和性の有機溶媒に一般式(1)で表される化合物
    を溶解または懸濁し、塩基性化合物で前記一般式(1)で表される化合物を部分中和する工程
    (b)続いて一般式(2)で表されるカルボン酸ハライド
    (式中Rは炭素数1〜16の脂肪族基、2価の芳香族基を表し、Xはハロゲン原子を表す。)を滴下装入しつつ反応させる工程(エステル化反応工程)
    (c)エステル化反応時の温度よりも高い温度で熱処理する工程(オリゴマー分解工程)
    (d)前記(c)で得られた混合物を水と接触させて生成物を析出させ、固液分離操作および乾燥により生成物の固体を得る工程
    (e)前記(d)の固液分離操作で発生する排水に、実質的に水と不混和性の有機溶媒を添加し、原料として用いた未反応の一般式(1)で表される化合物を抽出する工程
    (f)前記(e)で得られた、一般式(1)で表される化合物が実質的に水と不混和性の有機溶媒に溶解した液の濃度を調整した後に、前記(a)の原料とする工程
    からなり、前記(a)における一般式(1)で表される化合物の量が、前記一般式(2)で表されるカルボン酸ハライドに対して4〜30倍のモル比であり、前記(a)における塩基性化合物の量が、前記一般式(2)で表されるカルボン酸ハライド中の官能基に対して1.0〜1.5当量であることを特徴とする一般式(3)で表される化合物の製造方法。
    (式中、Rは炭素数1〜16の脂肪族基、2価の芳香族基を表す。)
  2. 実質的に水と不混和性の有機溶媒が、ケトン系、エーテル系およびエステル系の有機溶媒から選択されることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  3. エステル化反応工程を−20℃〜50℃で行なうことを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. オリゴマー分解工程を110℃〜130℃で行なうことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法
  5. 一般式(3)で表される化合物が、下記一般式(4)
    (式中、Rは炭素数1〜16の脂肪族基、2価の芳香族基を表す。)
    で表される化合物である請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 一般式(4)で表される化合物中に、下記一般式(5)で表される化合物が0〜30%含まれることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
    (式中、Rは炭素数1〜16の脂肪族基、2価の芳香族基を表し、nは2〜6の整数を示す。)
  7. 塩基性化合物が有機アミンまたは無機塩基から選択されることを特徴とする請求項1〜いずれか1項に記載の製造方法
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