JP2006213647A - 未反応アクリル酸の回収方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高沸点アクリル酸エステルの製造工程から排出されるアクリル酸水溶液から効率的にアクリル酸を回収する方法の提供。
【解決手段】 アクリル酸と高沸点のアルコールを用いる高沸点アクリル酸エステルの製造工程から生じる未反応のアクリル酸またはその塩を溶解した水性液のpHを2以下に調整する工程(1)と、該工程(1)で得られた酸性水と有機溶剤を接触させてアクリル酸を該有機溶剤に抽出する工程(2)と、該工程(2)で得られた有機相を蒸留してアクリル酸を留出させることにより高沸点不純物の除去されたアクリル酸を得る工程(3)と、該工程(3)で得られたアクリル酸を前記エステルの製造で再使用する工程(4)とからなるアクリル酸の回収方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ペンタエリスリトールまたはポリアルキレンオキサイド変性フェノールのアクリル酸エステル等に代表される高沸点のアクリル酸エステルの製造において生じる未反応のアクリル酸の回収、再使用に関するものである。
高沸点で蒸留が容易でないアクリル酸エステルの製造においては、精製手段として蒸留は通常行われない。高沸点アクリル酸エステルは、通常有機溶剤中でアクリル酸とアルコールとを直接エステル化することによって製造されている。この直接エステル化に際しては、最終製品中に沸点が高く蒸留除去の困難な未反応アルコールの混入を防ぐ目的で、アルコールに対してアクリル酸を大過剰に使用する。その結果、反応生成液として、アクリル酸エステル以外に多量のアクリル酸が含まれた反応液が得られ、それからアクリル酸および有機溶剤を除去することにより、アクリル酸エステルが製造されている。
反応液中のアクリル酸は、上記反応液をアルカリ水で水洗することにより、水相側に除去される。一方有機相を純水で洗浄した後、蒸留で有機溶剤を除去することにより、エステルを得ることができる。
エステル化反応液からアクリル酸を除去するためのアルカリ水による水洗は、高沸点のアクリル酸エステルに限らず、蒸留の容易な低沸点のアクリル酸エステルの製造においても採用されており、例えば特許文献1には、ブチルアクリート製造工程の反応液からアクリル酸を分離する方法としてアルカリ水による水洗が使用することが開示されている。
特許文献1に記載の発明においては、アクリル酸を塩として含んだアルカリ水溶液は静置分離槽において酸性水が加えられ、酸性に変換される。これによって、酸に戻されたアクリル酸をブチルアルコールまたはブチルアクリレートで抽出し、再びエステル化反応槽に再循環させている。
これに対して、高沸点のアクリル酸エステルの製造においては、製品の蒸留による精製が困難なために、反応液から回収したアクリル酸またはその塩を再使用すると、回収アクリル酸に含まれる不純物がアクリル酸エステル製品に混入する可能性があることから、従来それらは廃棄されてきた。しかしながら、アクリル酸エステルの製造原単位の向上のために、回収、再使用したいとの要求は存在していた。
特開平8−59551号公報
本発明は、アクリル酸水溶液から低コストで効率的にアクリル酸を回収する方法であって、しかもアクリル酸エステルの製造において得られるアクリル酸を再使用しても、エステル製品の品質、性能が従来品と変わらないアクリル酸の回収方法を提供しようとするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、アクリル酸と高沸点のアルコールを用いる高沸点アクリル酸エステルの製造工程から生じる未反応のアクリル酸またはその塩を溶解した水性液のpHを2以下に調整する工程(1)と、該工程(1)で得られた酸性水と有機溶剤を接触させてアクリル酸を該有機溶剤に抽出する工程(2)と、該工程(2)で得られた有機相を蒸留してアクリル酸を留出させることにより高沸点不純物の除去されたアクリル酸を得る工程(3)と、該工程(3)で得られたアクリル酸を前記エステルの製造で再使用する工程(4)とからなるアクリル酸の回収方法である。
本発明によれば、高沸点アクリル酸エステルの製造において従来廃棄されていたアクリル酸の80%以上を回収することができ、さらにこれを原料として製造さるエステルは従来品と同等の品質を有する。従って、本発明によれば、上記アクリル酸エステルの製造コストを大幅に低減することができる。
本発明において製造される高沸点アクリル酸エステルとしては、10torrの圧力下の沸点が100℃以上のものが好ましい。かかるエステルとしては、アルキレンオキサイド変性フェノールのアクリル酸エステル、アルキレンオキサイド変性ノニルフェノールのアクリル酸エステル、(ポリ)アルキレングリコールのアクリル酸エステル、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールAのアクリル酸エステル、アルキレンオキサイド変性p-クミルフェノールのアクリル酸エステル、アルキレンオキサイド変性2-エチルヘキシルのアクリル酸エステル、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールFのアクリル酸エステル、トリシクロデカンジメチロールのアクリル酸エステル、アルキレンオキサイド変性(ジ)グリセリンのアクリル酸エステル、(ジ)ペンタエリスリトールのアクリル酸エステル、(ジ)トリメチロールプロパンのアクリル酸エステル、アルキレンオキサイド変性(ジ)トリメチロールプロパンのアクリル酸エステルおよびアルキレンオキサイド変性ペンタエリスリトールのアクリル酸エステル等が挙げられる。
上記エステルの製造には、有機溶剤中でのアクリル酸とアルコールとの直接エステル化反応が採用され、アクリル酸とアルコール(OH)の反応比としては、酸に対しアルコールが1.1〜1.5倍となるのが好ましい。触媒としては、硫酸、パラトルエンスルホン酸またはメタンスルホン酸等が好ましく使用でき、その好ましい使用量は酸に対して0.01〜0.05程度である。
さらに、反応溶剤としては水と共沸性のものが好ましく、ベンゼン、トルエン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンまたはジイソプロピルエーテル等が挙げられる。酸、アルコールに対する溶剤の使用量は、得られるエステルの濃度が10〜60質量%となる量である。
反応の当たっては、重合防止のために、反応液内にヒドロキノン(HQ)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、フェノチアジン、硫酸銅および塩化銅等の重合防止剤の1種または複数添加することが好ましい。好ましい使用量は、全液量に対して100〜5000ppmである。
エステル化反応は、温度80〜100℃で6〜12時間かけて行うことができる。反応終了後に、反応液を水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液で洗浄することにより、フリーの酸を水溶性塩としてアルカリ水溶液側に移行させる。
水酸化ナトリウム水溶液の濃度は10〜30質量%程度が望ましい。30質量%を越えると酸を抽出した水相に析出物が発生することがあり、10質量%未満であると使用量が増加すると共に、有機相と水相との液液分離の時間が長くなる。アルカリの使用量は、反応液酸価に対して1.0倍以上、具体的には1.1〜2.0倍程度が好ましい。有機相と水相との液液分離を速めるために、溶剤を追加しても良い。
上記操作によって得られたアルカリ水溶液相を用いて、以下の方法により酸を回収する。一方、有機相からは、水洗の後、脱溶剤をすることによりアクリル酸エステルを得ることができる。
本発明において、上記のアルカリ水溶液におけるアクリル酸塩の濃度は通常5〜25質量%であり、好ましくは、アクリル酸の回収率が高い点で10〜25質量%である。本発明においては、上記のアルカリ水溶液に酸化合物を添加して、液のpHを2以下にする。液のpHが2より高いと、アクリル酸の回収率が劣る。さらに好ましい液のpHは、1.5〜2の範囲である。酸としては、硫酸、塩酸および硝酸等が使用できるが、腐食やコストの面から硫酸が好ましい。酸の添加の際に水溶液に塩が析出する場合には、水を加えて、それを溶解することが好ましい。
pHを2以下に調整された上記水溶液中において、アクリル酸はフリーの酸の状態で存在している。このアクリル酸を有機溶剤によって水相から抽出する。抽出用有機溶剤としては、アクリル酸より低い沸点を有する化合物が好ましく、たとえば、ベンゼン、トルエン、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、酢酸エチル、酢酸イソプロピルおよび酢酸ブチル等が挙げられる。
抽出剤として、エステル合成反応で使用する有機溶剤と同一のものを用いると、回収アクリル酸と有機溶剤とを分離することなく、エステル合成反応の原料として使用することができるというメリットがある。エステル合成反応でトルエンが好ましく用いられる点で、抽出剤としてもトルエンがより好ましい。
抽出は1段でも可能であるが抽出率を高めるために多段抽出が好ましい。多段抽出における好ましい段数は、溶剤の種類によっても異なるが、好ましくは3段〜10段である。また、抽出はバッチ式または連続式のいずれを用いてもよい。連続抽出は通常抽出塔を用いて、上方から水相を供給し、下方から有機相を供給することにより両者を接触させる向流抽出によって行われる。連続の場合にも、抽出理論段数としては3〜10段が好ましい。本発明において特に好ましい方法は、理論段数3〜10段の連続抽出である。
連続抽出に使用できる抽出塔としては、多孔板の棚段塔、充填塔やミキサーセトラータイプの抽出塔および往復振動式抽出塔等が挙げられる。
抽出における水相と有機相の割合としては、水相1当たり有機相0.5〜2(容量比)が好ましく、さらに好ましくは有機相1.0〜1.5である。
抽出塔への水相および有機相の供給速度、抽出塔の内径および塔高等は、目的とする抽出速度および抽出率等に応じて適宜選択すればよい。
次いでアクリル酸を抽出した有機相を蒸留して、高沸点の不純物を除去する。蒸留は、バッチ蒸留または連続蒸留のいずれでもよい。蒸留においては、アクリル酸を有機溶剤と分離して留出させるか、またはアクリル酸を有機溶剤と混合状態で留出物を得る。蒸留によって高沸点不純物が除去さたアクリル酸は、アクリル酸エステルの製造に再使用される。抽出用有機溶剤がエステル製造における反応溶剤と同一であれば、アクリル酸と有機溶剤の混合物はそのままエステル製造工程に供給することができる。
溶剤カットのための蒸留条件は溶剤の種類に応じて公知の条件を採用すればよい。アクリル酸の留出のためには、圧力10〜50torrで缶液温度50〜80℃が好ましい。缶液温度が80℃を越えると、蒸留中にアクリル酸の重合が起こりやすい。
連続蒸留を採用する場合には、通常2本の精留塔が必要となる。1本目で溶剤を留出させ、2本目でアクリル酸を留出させる。抽出に用いた有機溶剤がエステル合成の反応溶剤と同一である場合には、連続蒸留でも精留塔を1本にすることも可能である。
蒸留に際しては、重合防止のために缶液に酸素ガスを含む不活性ガスを通気することが好ましく、また蒸留塔の塔頂から重合防止剤を供給することが好ましい。
以下、合成例、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
○合成例1
10Lのフラスコに、アクリル酸2400g、ジペンタエリスリトール1200g、トルエン3700g、触媒として硫酸50g、重合防止剤としてHQ10gを仕込み、圧力60kPa、オイルバスの温度を120℃として、トルエンとの共沸で水を抜きながら10時間反応させた後に反応を停止した。反応液量は6900gで、残アクリル酸は551gであった。
得られた反応液に20%NaOH水溶液を2650g添加して混合後、静置分離を行い、上下層を分離した。上層(有機相)は6250g、下層(水相)は3300gであった。尚、下層には720gのアクリル酸ナトリウムが含まれていた。
次に上記上層にイオン交換水を630g添加して混合後静置分離を行い、上下層を分離した。上層(有機相)は6230g、下層(水相)は650gであった。
水洗後の上層を10Lフラスコ入れ、80℃で加熱しながら、減圧でトルエンを留出させた。トルエンが0.5%になった時点で終了とし、2530gのエステルを得た。
得られたエステルの色調は30(APHA)、粘度は6000mPa・s(25℃)であった。
合成例1において20%NaOH水溶液を反応液と接触させて得た水相3300gに、98%硫酸を650g添加してpH1.8の酸性水溶液3950gを得た。該水溶液中のアクリル酸濃度は13.9質量%であった。
上記酸性水溶液からアクリル酸を抽出するための抽剤としてトルエンを用い、理論段5段の抽出塔で抽剤比1で向流抽出を行った。抽出後のトルエン溶液は、重量4491gで、496gのアクリル酸を含んでいた(抽出率は90%)。
上記トルエン層を理論段3段の精留塔を用いて、圧力13.3〜4.0kPaでトルエンを留出させ、その後4.0〜2.7Paでアクリル酸を留出させた。
トルエンの留出量は4009gで2.0%のアクリル酸を含有していた。アクリル酸の留出量は387gであり、元のトルエン層に含まれていたアクリル酸の79質量%であった。これはまた、エステル製造における未反応アクリル酸の72質量%に相当する。
上記の方法で回収されたアクリル酸387gとフレッシュなアクリル酸2013g使用して、合成例1の方法でアクリル酸エステルの合成を行った。得られたエステルの色調は30(APHA)で、また粘度は5900mPa・sであり、該エステルは、合成例1で得られたアクリル酸エステルと対比して品質的に差は見られなかった。
実施例1の蒸留工程で留出させたトルエンとアクリル酸の両方を混合した。この混合液4416g中のアクリル酸は466gであり、それは、元のトルエン層に含まれていたアクリル酸の94質量%であった。これはまた、エステル製造における未反応アクリル酸の85質量%に相当する。
上記アクリル酸のトルエン溶液4416gのうち4137g(アクリル酸;437g,トルエン;3700g)と未使用アクリル酸1963gを使用して、合成例1の方法でアクリル酸エステルの合成を行った。得られたエステルの色調は30(APHA)で、また粘度は6000mPa・sであり、該エステルは、合成例1で得られたアクリル酸エステルと対比して品質的に差は見られなかった。
実施例1において、トルエンの代わりにジイソプロピルエーテルを使用して抽出を行った。抽出液は4540g、その中のアクリル酸は545gであり、抽出率は99%であった。
これを初期の圧力を80kPaに変えた以外は実施例1と同様に蒸留を行い、アクリル酸留出460gを得た。これは蒸留原料中のアクリル酸の84%であり、未反応アクリル酸の83質量%に相当する。
上記アクリル酸留出490gおよび未使用アクリル酸1910gを用いた以外は、合成例1と同様にアクリル酸エステルの合成を実施した。得られたエステルの色調は30(APHA)で、また粘度は6100mPa・sであり、該エステルは、合成例1で得られたアクリル酸エステルと対比して品質的に差は見られなかった。
○比較例1
実施例1と同様にトルエンを使用して抽出操作を行い、4491gのトルエン層を得た。このうちの4207g(アクリル酸;459g,トルエン;3700g,その他不純物;42g)と未使用アクリル酸1941gを使用して、合成例1同様にアクリル酸エステルの合成を実施した。
反応液の着色が合成例1に比べて大きく、また中和工程において、黒色の中間層が発生した。得られたエステルは色調が200(APHA)と高く、粘度も7000mPa・sと上昇した。
本発明のアクリル酸の回収方法は、高沸点アクリル酸エステルであれば、種類を問わず適用することができ、本発明によれば、上記アクリル酸エステルの製造コストを大幅に低減することができる。

Claims (4)

  1. アクリル酸と高沸点のアルコールを用いる高沸点アクリル酸エステルの製造工程から生じる未反応のアクリル酸またはその塩を溶解した水性液のpHを2以下に調整する工程(1)と、該工程(1)で得られた酸性水と有機溶剤を接触させてアクリル酸を該有機溶剤に抽出する工程(2)と、該工程(2)で得られた有機相を蒸留してアクリル酸を留出させることにより高沸点不純物の除去されたアクリル酸を得る工程(3)と、該工程(3)で得られたアクリル酸を前記エステルの製造で再使用する工程(4)とからなるアクリル酸の回収方法。
  2. 前記高沸点アクリル酸エステルが、10torrの圧力下で100℃以上の沸点を有するアクリル酸エステルである請求項1記載のアクリル酸の回収方法。
  3. 前記工程(2)において、連続抽出法を採用することを特徴とする請求項1または2記載のアクリル酸の回収方法。
  4. 前記工程(2)において、水相と有機相の液比0.5〜2の範囲としかつ連続抽出法を採用することを特徴とする請求項1または2記載のアクリル酸の回収方法

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