JP5203619B2 - レゾルシン系ジエステル化合物の製造方法 - Google Patents

レゾルシン系ジエステル化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、レゾルシン系ジエステル化合物[即ち、ジカルボン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル]の製造方法、特には、空気入りタイヤや工業用ベルト等のゴム物品に用いられるスチールコード等の金属補強材との接着耐久性を向上させる目的で使用されるレゾルシン系ジエステル化合物の製造方法に関するものである。
自動車用タイヤ、コンベアベルト、ホース等、特に強度が要求されるゴム製品には、ゴムを補強し強度、耐久性を向上させる目的で、スチールコード等の金属補強材をゴム組成物で被覆した複合材料が用いられている。該ゴム−金属複合材料が高い補強効果を発揮し信頼性を得るためにはゴム−金属補強材間に混合、配合、貯蔵等の条件に左右されない安定した接着が必要である。かかる複合体を得るには、亜鉛、黄銅等でメッキされたスチールコード等の金属補強材を、硫黄を配合したゴム組成物に埋設し加熱加硫時に、ゴムの加硫と同時に接着させるいわゆる直接加硫接着が広く用いられており、これまで該直接加硫接着におけるゴム−金属補強材間の接着性、特に耐湿熱接着性向上のため様々な検討が行われている。
例えば、レゾルシン又は、レゾルシンとホルマリンを縮合して得られる、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂(以下、「RF樹脂」と略記する。)を耐湿熱接着性向上の目的で配合したゴム組成物が報告されている(特許文献1)。また、重量平均分子量が3000〜45000のレゾルシン骨格を有する混合ポリエステルからなる、接着材料が報告されている(特許文献2)。しかしながら、上記のレゾルシン、RF樹脂、及び混合ポリエステルは、いずれも耐湿熱接着性を向上させる効果が十分でなく、更なる改良が必要であった。
これに対して、本発明者らは、上記技術よりもさらに耐湿熱接着性を向上させる効果が大きい配合剤として、レゾルシン系のジエステル化合物および該化合物を主成分とする組成物を報告している(特許文献3)。
特開2001−234140号公報 特開平7−118621号公報 国際公開第2005/087704号パンフレット
しかしながら、国際公開第2005/087704号に開示のレゾルシン系ジエステル化合物は、塩基の存在下でレゾルシンと2価カルボン酸クロライドとを反応させて製造されており、カルボン酸クロライドの製造に毒性の強い塩素化剤を使用する必要がある上、副生する塩酸の中和に大量の塩基が必要であるなど、プロセス上の課題が多く、改良の余地があった。
そこで、本発明は、コスト面で不利に働くカルボン酸クロライドを経由する事なく、ジカルボン酸とレゾルシンとから直接、レゾルシン系ジエステル化合物を製造するための方法を提供する事を目的とする。
本発明者らは、ジカルボン酸とレゾルシンから直接エステル化する処方を検討した結果、触媒としてルイス酸、特にSn系化合物を使用し、ジカルボン酸に対するレゾルシンの量を特定範囲とした場合に、高い選択率で目的のレゾルシン系ジエステル化合物が得られる事を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、ルイス酸触媒の存在下、下記一般式(1):
Figure 0005203619
(式中、Rは炭素数1〜16の2価の脂肪族基、又は2価の芳香族基を表す)で表されるジカルボン酸と前記ジカルボン酸に対し5〜30倍比のモル比のレゾルシンとを120℃〜220℃で脱水縮合させる事を特徴とする、下記一般式(2):
Figure 0005203619
(式中、Rは炭素数1〜16の2価の脂肪族基、又は2価の芳香族基を表す)で表される化合物の製造方法である。
本発明によれば、空気入りタイヤや工業用ベルト等のゴム物品に用いられるスチールコード等の金属補強材との接着耐久性を向上させる目的で使用されるレゾルシン系ジエステル化合物を安価に製造することが可能なプロセスを提供することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明に使用される上記一般式(1)で表されるジカルボン酸において、式中のRは、炭素数1〜16の2価の脂肪族基、又は2価の芳香族基を表す。ここで、炭素数1〜16の2価の脂肪族基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、ブチレン基、イソブチレン基、オクチレン基、2−エチルヘキシレン基等の直鎖または分岐鎖のアルキレン基、ビニレン基(エテニレン基)、ブテニレン基、オクテニレン基等の直鎖または分岐鎖のアルケニレン基、これらのアルキレン基又はアルケニレン基の水素原子がヒドロキシル基又はアミノ基等で置換されたアルキレン基またはアルケニレン基、シクロヘキシレン基等の脂環式基が挙げられる。また、2価の芳香族基としては、置換されていてもよいフェニレン基、置換されていてもよいナフチレン基等が挙げられる。これらの中でも入手の容易さ等を考慮すれば、炭素数2〜10(特には炭素数2〜8)の2価の脂肪族基(特にはアルキレン基)が好ましく、エチレン基、ブチレン基及びオクチレン基が最も好ましい。
本発明に使用される上記一般式(1)で表されるジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、イタコン酸、シトラコン酸、グルタル酸、アジピン酸、酒石酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸等の脂肪族カルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が好ましい。
本発明の目的生成物である上記一般式(2)で表わされる化合物において、式中のRは上記一般式(1)中のRと同義であり、同様に、炭素数2〜10(特には炭素数2〜8)の2価の脂肪族基(特にはアルキレン基)が好ましく、エチレン基、ブチレン基及びオクチレン基が最も好ましい。
本発明の目的生成物である上記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、マロン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、コハク酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、フマル酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、マレイン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、リンゴ酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、イタコン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、シトラコン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、グルタル酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、アジピン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、酒石酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、スベリン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、アゼライン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、セバシン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、1,10−デカンジカルボン酸(3−ヒドロキシフェニル)エステル、1,12−ドデカンジカルボン酸(3−ヒドロキシフェニル)エステル、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸(3−ヒドロキシフェニル)エステル、シクロヘキサンジカルボン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、シクロヘキセンジカルボン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、テレフタル酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、イソフタル酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル等が挙げられる。
これらの中でも、マロン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、コハク酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、フマル酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、マレイン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、セバシン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、シクロヘキサンジカルボン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、テレフタル酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、イソフタル酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステルが好ましく、特にコハク酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、アジピン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、セバシン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステルが好ましい。
本発明の製造方法において触媒として使用されるルイス酸としては、Zn、Ti、Sn等の金属の塩化物、酸化物、カルボン酸塩等が挙げられる。これらの中でも特にSn系化合物が好ましく、該Sn系化合物としては、SnCl2、SnCl4、SnO、オクタン酸Sn(II)、アジピン酸Sn(II)等が挙げられる。これらの中でも、オクタン酸Sn(II)、SnOおよびアジピン酸Sn(II)が好ましく、オクタン酸Snが特に好ましい。
本発明において、ルイス酸触媒、特にSn系化合物は、上記一般式(1)で表されるジカルボン酸のカルボキシル基に対して好ましくは0.01〜10mol%、さらに好ましくは0.5〜5mol%、より一層好ましくは0.5〜2mol%用いられる。この範囲より少ない量では反応速度が低下する。一方、この範囲より多い量では、反応速度の向上が観られないばかりか、不純物の生成が顕著となり、選択率が低下する。
本発明の製造方法においては、上記一般式(1)で表されるジカルボン酸に対してレゾルシンを5〜30倍、好ましくは10〜20倍のモル比で反応させる。レゾルシンがこの範囲より少ない量では、不純物が多く、選択率が十分でない。一方、この範囲より多くレゾルシンを用いても、選択率の向上は観られないばかりか、容積効率が悪化する。
本発明の製造方法において、上記一般式(1)で表されるジカルボン酸とレゾルシンを反応させる際の温度は、120℃〜220℃、好ましくは150〜200℃である。この範囲より低温では、反応が著しく遅いか、場合によっては殆ど転化しない事もある。一方、この範囲よりも高温では、不純物の生成が顕著になり、選択率が低下する。
本発明の製造方法においては、共沸剤の存在下、共沸脱水を行い、生成水を強制的に系外に除去しつつ反応させる事で、反応速度を向上させる事が出来る。ここで、共沸剤としては、炭化水素系有機溶媒を使用することが好ましい。該炭化水素系有機溶媒として、具体的には、ベンゼン、トルエン、(混合)キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン等の置換ベンゼン類、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素が挙げられる。
本発明の製造方法において使用される共沸剤の量は、その種類、反応温度によって異なる。本発明においては、所望の反応温度で共沸剤あるいは共沸剤/水の混合物が還流する様に使用量を調製することが好ましい。通常、共沸剤の量は、反応液の1〜20重量%程度となる。
また、本発明の製造方法においては、系内に不活性ガスを吹き込み、該不活性ガスと共に同伴させる事で強制的に生成水を系外に除去する事でも、反応速度を向上させる事が出来る。ここで、不活性ガスとしては、窒素、アルゴンが使用される。なお、系内への不活性ガスの吹き込みは、液中吹き込みでも、気相吹き込みでも構わない。また、不活性ガスの吹き込み速度は、特に限定されないが、概ね3L/hr〜30L/hr程度に設定される。
本発明の製造方法により得られる上記一般式(2)で表される化合物は、公知の方法により反応混合物から単離することができる。例えば、反応に用いた共沸剤およびレゾルシンを減圧蒸留等の操作により系外に留去し乾固させる方法、反応混合物あるいは反応混合物から共沸剤を留去した液を、一般式(2)で表される化合物の貧溶媒と接触させて再沈殿させる方法等が挙げられる。また、場合によっては再結晶により精製しても良い。ここで、上記一般式(2)で表される化合物の貧溶媒としては通常、水が用いられる事が多い。
なお、得られた結晶中には、下記一般式(3):
Figure 0005203619
(式中、Rは炭素数1〜16の2価の脂肪族基又は2価の芳香族基を表し、nは2である)で表される二量体が含まれる事がある。該二量体の含有量は、仕込み時のレゾルシン量(ジカルボン酸に対するモル比)により変化する。通常、該二量体は、上記一般式(2)で表される化合物の乾燥粉体中に、0重量%〜20重量%程度含まれる。なお、二量体含有量が変化しても、単離・精製における操作は、全く同様に行なう事が出来る。
以下に、実施例、参考例、比較例を上げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
なお、下記実施例、参考例及び比較例において、カルボン酸ビス(3−ヒドロキシフェニル)エステル、二量体およびレゾルシンの分析は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて、下記の条件で行った。
カラム : YMC社 A−312 ODS
カラム温度: 40℃
溶離液 : メタノール/水=7/3(リン酸でpH=3に調整)
検出 : UV(254nm)
(実施例1)
ディーンスタックトラップを設置したフラスコに36.5g(0.25モル)のアジピン酸、275.3g(2.50モル)のレゾルシンおよび1.01g(0.0025モル)のオクタン酸Sn、そしてトルエン10gを仕込み、180℃で共沸により留出した生成水を抜き出しながら反応を行なった。途中、系内のトルエン量をコントロールしながら反応温度をキープした。ラップ分析の結果、30hr後のアジピン酸ビス(3-ヒドロキシフェニル)エステルの反応収率は84.4%/アジピン酸であった。
(実施例2)
ディーンスタックトラップを設置したフラスコに36.5g(0.25モル)のアジピン酸、275.3g(2.50モル)のレゾルシンおよび4.05g(0.01モル)のオクタン酸Sn、そしてトルエン10gを仕込み、180℃で共沸により留出した生成水を抜き出しながら反応を行なった。途中、系内のトルエン量をコントロールしながら反応温度をキープした。ラップ分析の結果、目的のアジピン酸ビス(3-ヒドロキシフェニル)エステルの反応収率は6hr後に66.0%、12hr後に81.0%/アジピン酸に達していた。
(実施例3)
ディーンスタックトラップを設置したフラスコに36.5g(0.25モル)のアジピン酸、275.3g(2.50モル)のレゾルシンおよび1.35g(0.01モル)のSnO、そしてトルエン10gを仕込み、180℃で共沸により留出した生成水を抜き出しながら反応を行なった。途中、系内のトルエン量をコントロールしながら反応温度をキープした。ラップ分析の結果、42hr後のアジピン酸ビス(3-ヒドロキシフェニル)エステルの反応収率は75.4%/アジピン酸であった。
(実施例4)
ディーンスタックトラップを設置したフラスコに36.5g(0.25モル)のアジピン酸、275.3g(2.50モル)のレゾルシンおよび4.05g(0.01モル)のオクタン酸Sn、そしてトルエン10gを仕込み、160℃で共沸により留出した生成水を抜き出しながら反応を行なった。途中、系内のトルエン量をコントロールしながら反応温度をキープした。ラップ分析の結果、36hr後のアジピン酸ビス(3-ヒドロキシフェニル)エステルの反応収率は74.1%/アジピン酸であった。
(実施例5)
四つ口フラスコに36.5g(0.25モル)のアジピン酸、275.3g(2.50モル)のレゾルシンおよび4.05g(0.01モル)のオクタン酸Snを仕込み、180℃で反応を行なった。ラップ分析の結果、50hr後のアジピン酸ビス(3-ヒドロキシフェニル)エステルの反応収率は83.0%/アジピン酸であった。
(実施例6)
四つ口フラスコに36.5g(0.25モル)のアジピン酸、275.3g(2.50モル)のレゾルシンおよび4.05g(0.01モル)のオクタン酸Snを仕込み、180℃で反応を行なった。なお、本実施例では、窒素を5L/hrの速度で気相部に吹き込みつつ反応を実施した。ラップ分析の結果、30hr後のアジピン酸ビス(3-ヒドロキシフェニル)エステルの反応収率は81.8%/アジピン酸であった。
(実施例7)
ディーンスタックトラップを設置したフラスコに29.5g(0.25モル)のコハク酸、275.3g(2.50モル)のレゾルシンおよび4.05g(0.01モル)のオクタン酸Sn、そしてトルエン10gを仕込み、180℃で共沸により留出した生成水を抜き出しながら反応を行なった。途中、系内のトルエン量をコントロールしながら反応温度をキープした。ラップ分析の結果、20hr後に目的のコハク酸ビス(3-ヒドロキシフェニル)エステルの反応収率は82.2%/コハク酸であった。
(実施例8)
ディーンスタックトラップを設置したフラスコに50.5g(0.25モル)のセバシン酸、275.3g(2.50モル)のレゾルシンおよび4.05g(0.01モル)のオクタン酸Sn、そしてトルエン10gを仕込み、180℃で共沸により留出した生成水を抜き出しながら反応を行なった。途中、系内のトルエン量をコントロールしながら反応温度をキープした。ラップ分析の結果、22hr後に目的のセバシン酸ビス(3-ヒドロキシフェニル)エステルの反応収率は83.0%/セバシン酸であった。
(実施例9)
ディーンスタックトラップを設置したフラスコに36.5g(0.25モル)のアジピン酸、275.3g(2.50モル)のレゾルシンおよび4.05g(0.01モル)のオクタン酸Sn、そしてトルエン10gを仕込み、120℃で共沸により留出した生成水を抜き出しながら反応を行なった。途中、系内のトルエン量をコントロールしながら反応温度をキープした。ラップ分析の結果、60hr後のアジピン酸ビス(3-ヒドロキシフェニル)エステルの反応収率は67.0%/アジピン酸であった。
(実施例10)
ディーンスタックトラップを設置したフラスコに36.5g(0.25モル)のアジピン酸、275.3g(2.50モル)のレゾルシンおよび2.02g(0.005モル)のオクタン酸Sn、そしてトルエン10gを仕込み、220℃で共沸により留出した生成水を抜き出しながら反応を行なった。途中、系内のトルエン量をコントロールしながら反応温度をキープした。ラップ分析の結果、10hr後のアジピン酸ビス(3-ヒドロキシフェニル)エステルの反応収率は83.10%/アジピン酸であった。
(参考例1)
<反応液からの目的物の単離>
実施例1で得られた反応液から減圧下130℃でトルエンを留去した後、温度を120℃に調整し、5〜10℃に冷却した蒸留水中に、15分〜20分かけて滴下装入して晶析を行い、同温度で2hr熟成した。その後、濾過、水洗で得られた湿体を窒素気流下50℃で5hr、その後80℃で10hr乾燥し、アジピン酸ビス(3-ヒドロキシフェニル)エステルの白色結晶60.2gを得た(粗収率=72.9%/アジピン酸)。HPLC分析の結果、アジピン酸ビス(3-ヒドロキシフェニル)エステルの純度は81重量%であり、二量体を7.4重量%、モノ体を1.0重量%、そしてレゾルシンを3.9重量%含んでいた。
(比較例1)
ディーンスタックトラップを設置したフラスコに36.5g(0.25モル)のアジピン酸、275.3g(2.50モル)のレゾルシンおよびトルエン10gを仕込み、180℃で反応を行なったが、生成水の留出は観られなかった。10hr後に反応液を分析した結果、目的のアジピン酸ビス(3-ヒドロキシフェニル)エステルのピークは痕跡程度であった。
(比較例2)
ディーンスタックトラップを設置したフラスコに36.5g(0.25モル)のアジピン酸、275.3g(2.50モル)のレゾルシンおよび1.01g(0.0025モル)のオクタン酸Sn、そしてトルエン10gを仕込み、110℃で反応を行なった。同温度を保持しつつ、反応を行なったが生成水の留出は観られなかった。10hr後に反応液を分析した結果、目的のアジピン酸ビス(3-ヒドロキシフェニル)エステルのピークは不検出であった。
(比較例3)
ディーンスタックトラップを設置したフラスコに36.5g(0.25モル)のアジピン酸、275.3g(2.50モル)のレゾルシンおよび4.04g(0.01モル)のオクタン酸Sn、そしてトルエン10gを仕込み、240℃で共沸により留出した生成水を抜き出しながら反応を行なった。途中、系内のトルエン量をコントロールしながら反応温度をキープした。ラップ分析の結果、目的のアジピン酸ビス(3-ヒドロキシフェニル)エステルの反応収率は6hr後に63%/アジピン酸に達したが、その後横ばいであった。さらにHPLC分析において20本以上の不明ピークが存在した。
(比較例4)
ディーンスタックトラップを設置したフラスコに36.5g(0.25モル)のアジピン酸、275.3g(2.50モル)のレゾルシンおよび0.58g(0.005モル)の85%リン酸、そしてトルエン10gを仕込み、180℃で共沸により留出した生成水を抜き出しながら反応を行なった。途中、系内のトルエン量をコントロールしながら反応温度をキープした。ラップ分析の結果、10hr後のアジピン酸ビス(3-ヒドロキシフェニル)エステルの反応収率は10%/アジピン酸であり、複数の大きな不明ピークが検出された。
(比較例5)
ディーンスタックトラップを設置したフラスコに36.5g(0.25モル)のアジピン酸、275.3g(2.50モル)のレゾルシンおよび0.62g(0.005モル)のp−トルエンスルホン酸(1水和物)、そしてトルエン10gを仕込み、180℃で共沸により留出した生成水を抜き出しながら反応を行なった。途中、系内のトルエン量をコントロールしながら反応温度をキープした。ラップ分析の結果、10hr後のアジピン酸ビス(3-ヒドロキシフェニル)エステルの反応収率は10%/アジピン酸であり、複数の大きな不明ピークが検出された。
上記の実施例1〜10から、ルイス酸触媒の存在下、式(1)のジカルボン酸とレゾルシンとを120℃〜220℃で反応させることで、高い選択率でレゾルシン系ジエステル化合物を製造できることが分かる。一方、比較例1から、触媒の不存在下では、エステル化反応が殆ど進行しないことが分かる。また、比較例2から、反応温度が120℃未満では、エステル化反応が進行せず、一方、比較例3から、反応温度が220℃を超えると、副生物が増加して、選択率が低下することが分かる。更に、比較例4及び5から、ルイス酸触媒以外の酸触媒の存在下では、副生物が著しく増加して、選択率が大幅に低下することが分かる。

Claims (6)

  1. ルイス酸触媒の存在下、下記一般式(1):
    Figure 0005203619
    (式中、Rは炭素数1〜16の2価の脂肪族基、又は2価の芳香族基を表す)で表されるジカルボン酸と前記ジカルボン酸に対し5〜30倍比のモル比のレゾルシンとを120℃〜220℃で脱水縮合させる事を特徴とする下記一般式(2):
    Figure 0005203619
    (式中、Rは炭素数1〜16の2価の脂肪族基、又は2価の芳香族基を表す)で表される
    化合物の製造方法。
  2. 共沸脱水または不活性ガスとの同伴により生成水を強制的に系外に除去しつつ反応させる事を特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記ルイス酸触媒がSn系化合物である請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記Sn系化合物がオクタン酸Snまたは酸化Snである請求項3に記載の製造方法。
  5. 前記共沸脱水に用いる共沸剤が炭化水素系有機溶媒である請求項2に記載の製造方法。
  6. 前記一般式(2)中のRが、炭素数2〜8の2価の脂肪族基である事を特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
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