JP4995851B2 - 小麦粉含有流動生地の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、小麦粉含有流動生地の製造方法、詳しくは小麦粉を主体として含有する穀粉原料から得られる流動性のある生地のpHを2段階で調整する工程を含む生地の製造方法に関する。
従来、穀粉類として小麦粉を主原料として含有し、且つ水分を比較的多く含み流動性を有する生地、例えば揚げ物用バッター、たこ焼き用生地、お好み焼き用生地、スポンジ状菓子用生地において、食感の改良や電子レンジ耐性を付与する等の目的において、特定の副原料を用いることが提案されている。例えば、お好み焼き、たこ焼き等では、原料粉に特定のガム類を配合すること(特許文献1参照)、油脂と澱粉エーテルを配合すること(特許文献2参照)が提案されている。しかし、これらの技術では、食感の改良という点で十分とはいえず、特に冷蔵または冷凍保存後に電子レンジ等で解凍、再加熱して食する場合には、焼成直後から食感の低下を防止しえるものではなかった。
一方、油ちょうにより衣の水分含量を容易に10%以下にすることを目的として、天ぷらの衣の部分を酸の添加によりpH5.0〜6.0に調整した乾燥天ぷら用のバッターが提案されている(特許文献3参照)。また、常温での長時間保存可能な揚げ物用バッターを提供することを目的として、pH5.5〜3.5に調整した後、80〜100℃に加熱殺菌することが提案されている(特許文献4参照)。また、小麦粉にフィチン酸を単独添加するか、フィチン酸とアルカリ剤とを併用添加することにより小麦粉製品の品質を改良する方法(特許文献5参照)が提案されている。
しかし、これらの技術でも経時的な食感低下や電子レンジ等で再調理した際の食感低下を抑制する効果が十分に発揮されているとはいえない。また、アルカリ剤、酸性剤に由来する酸味やえぐ味が感じられる等、呈味性の点で問題が生じやすく、また、加熱調理時に生地がベタついたり、脆くなり、作業性が悪くなることがある。
特開昭62−151136号公報 特開平6−62813号公報 特公昭63−10987号公報 特開2000−73号公報 特許第2682661号公報
本発明の目的は、加熱調理時に生地のベタつきや脆さがなく作業性が良好であり、かつ、加熱調理後の経時的な食感低下や電子レンジ等で再加熱した際の食感低下を抑制し、加熱調理直後と同等の歯切れや口溶けの良い軽い食感を保持し、くちゃつきやヒキがなく、しかも酸味やえぐ味のない良好な風味を有する小麦粉含有食品が得られる、小麦粉含有流動生地の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、種々検討した結果、小麦粉含有流動生地のpHを酸性側またはアルカリ側に一旦調整した後、該生地のpHを中性側に再調整することにより、上記目的を達成し得る小麦粉含有流動生地が得られることを知見した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、小麦粉を主体として含有する穀粉原料から得られる流動生地(ただし、春巻皮用生地を除く)のpHを3.0〜5.5の範囲または8.0〜10.5の範囲に調整した後、該生地のpHを6.0〜7.0の範囲に再調整する小麦粉含有流動生地の製造方法であり、上記流動生地は、その粘度が150〜60,000mPa・sの範囲であり、揚げ物用バッター、たこ焼き用生地、お好み焼き用生地、スポンジ状菓子用生地またはシュー皮用生地であることを特徴とする小麦粉含有流動生地の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、上記の本発明の小麦粉含有流動生地の製造方法により得られた小麦粉含有流動生地および当該小麦粉含有流動生地を用いて常法に従って製造する小麦粉含有食品の製造方法を提供するものである。
本発明の小麦粉含有流動生地の製造方法によれば、加熱調理時にベタつきや脆さがなく作業性が良好な流動生地が得られ、かつ、これを用いることにより、加熱調理後の経時的な食感低下や電子レンジ等で再加熱した際の食感低下を抑制し、加熱調理直後と同等の軽く、ヒキがなく歯切れや口溶けのよい良好な食感を保持し、しかも酸味やえぐ味のない良好な風味を有する小麦粉含有食品が得られる。特に、小麦粉含有食品が揚げ物の場合には、衣の食感が軽くクリスピーであり、たこ焼きやお好み焼きの場合にはヒキがなく、クレープ等のスポンジ状菓子の場合には生地の脆さやベタつきがなく作業性が良好である。
本発明において、小麦粉含有流動生地を用いて製造される小麦粉含有食品は、原料穀粉において小麦粉を主原料とする流動生地を用いて製造されるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、揚げ物食品(天ぷら、フリッター、唐揚げ等)、お好み焼き、たこ焼き、スポンジ状菓子およびシュー皮用生地等が挙げられる(ただし、春巻皮は含まれない)。なお、スポンジ状菓子は、小麦粉を含有する流動生地を用いて製造され、かつ内部が多孔質構造となっているものであれば特に限定されず、例えばカステラ、パンケーキ、ホットケーキ、スポンジケーキ、どら焼き、鯛焼き、マドレーヌ、クレープ、ホットドック、ドーナツ等が挙げられる。
本発明において用いられる「小麦粉を主体として含有する穀粉原料から得られる流動生地」は、上記小麦粉含有食品用の生地として従来より用いられている生地が例示される。
本発明において流動生地の主原料として用いられる小麦粉としては、薄力粉、中力粉、強力粉、デュラム小麦粉のいずれでもよく、目的とする小麦粉含有食品の種類等により適宜選択すればよい。例えば、小麦粉含有食品が揚げ物食品、特に天ぷらの場合には薄力粉が好ましく、たこ焼き・お好み焼きでは薄力粉または中力粉が好ましい。その他の穀粉原料としては、そば粉、米粉、コーンフラワー、大麦粉、ライ麦粉、はとむぎ粉、ひえ粉、あわ粉等の穀粉類;タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉等の澱粉類およびこれらのα化、エーテル化、エステル化、アセチル化、架橋処理、酸化処理等の処理を施した加工澱粉類等が挙げられ、目的とする小麦粉含有食品の種類等により適宜選択される。澱粉類を配合する場合、その配合量は、目的とする小麦粉含有食品の種類によって異なるが、一般的には小麦粉100質量部あたり5〜40質量部、好ましくは10〜30質量部の範囲である。
さらに、主原料としての小麦粉は、熱処理小麦粉を用いてもよい。熱処理小麦粉を配合する場合、その配合量は、目的とする小麦粉含有食品の種類によって異なるが、一般的には小麦粉100質量部中に、内割りで、好ましくは2〜100質量部、より好ましくは10〜50質量部である。熱処理小麦粉を2〜100質量部の範囲内で内割りで配合することにより、得られる小麦粉含有食品における軽くて、ヒキがなく歯切れや口溶けのよい良好な食感が一層向上する。
本発明で配合使用し得る熱処理小麦粉としては、例えば、特開2007−151508号公報に記載されている「小麦粉を密封容器中で攪拌しながら間接加熱処理して得られる熱処理小麦粉」、特開2007−166906号公報に記載されている「原料小麦の品温45〜95℃で1〜6分間湿熱処理した原料小麦を製粉して得られた湿熱処理小麦粉」、特開2001−120162号公報の段落〔0009〕に記載されている「小麦粉中に含まれる澱粉が実質的にα化されずに、かつそのグルテンバイタリティーが、未処理小麦粉のグルテンバイタリティーを100としたときに、70〜95となるように熱処理調整した熱処理小麦粉」等を用いるのが好ましい。なお、上記のグルテンバイタリティーは、特開平9−191847号公報に記載の測定法により求められる。
本発明で用いられる流動生地の原料としては、上記の穀粉原料の他に、目的とする小麦粉含有食品の種類等に応じて、必要により、他の成分を配合することができる。斯かる他の成分としては、本発明の効果を損なわないものであれば特に限定されず、例えば、糖類(ショ糖、ブドウ糖、果糖、デキストリン、水あめ、トレハロース、キシロース、マルトース、マルトオリゴ糖等)、乳類(全乳、脱脂粉乳、全脂粉乳等)、乳蛋白、卵または卵粉末、小麦蛋白、大豆蛋白、油脂(大豆油、なたね油、オリーブ油、コーン油、パーム油等の植物油や豚脂、牛脂等の動物油脂またはそれらの硬化油等)、乳化剤、色素、増粘多糖類(ローカストビーンガム、ジェランガム、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン等)、アミノ酸(グルタミン酸、アラニン、グリシン、リジン等)、エキス、調味料、膨張剤、食塩、香辛料類、ドライフルーツ、乾燥野菜、紅生姜、揚げ玉等の具材、この他従来より小麦粉含有食品の原料に添加されている添加成分が挙げられ、これらの中から1種以上を選択して配合することができる。
本発明で用いられる流動生地は、水分含量が多く流動性を有しており、その粘度は、製造される小麦粉含有食品の種類によって異なるが、一般的には150〜60,000mPa・sの範囲であり、好ましくは300〜55,000mPa・sの範囲である。なお、本発明でいう流動生地の粘度の測定法は、粘度計(東機産業社製「B型粘度計」)を用いて、プラスチックビーカー200mlに流動生地を200ml入れて、操作説明書に記載の方法(粘度に合わせてローターと回転数を選択する)で測定すればよい。
本発明においては、まず、流動生地の原料に加水・混合し、該生地のpHが3.0〜5.5の範囲、好ましくは3.5〜5.0の範囲または8.0〜10.5の範囲、好ましくは9.0〜10.5の範囲になるように調整する。
このpHの調整により、生地中の澱粉や蛋白質に化学的変化が生じると考えられ、これが本発明の目的の一つである、加熱調理後の経時的な食感低下や電子レンジ等で再加熱した際の食感低下を抑制し、加熱調理直後と同等の軽くて、ヒキがなく歯切れの良い食感を保持する小麦粉含有食品を得ることができるのである。
上記生地のpHが3.0未満であると、後でpHを再調整しても、生地焼成時の作業性が悪く、酸味が残ってしまう。また、上記生地のpHが5.5超〜8.0未満であると、加熱調理後の経時的な食感低下が大きくなり、また電子レンジ等で再加熱した際の食感低下が大きい。また、上記生地のpHが10.5超であると、後でpHを再調整しても、生地焼成時の作業性が悪く、アルカリ剤に由来するえぐ味が残ってしまう。
上記生地のpHの調整は、生地のpHを酸性側(3.0〜5.5の範囲)に調整する場合は酸性剤を用い、生地のpHをアルカリ側(8.0〜10.5の範囲)に調整する場合はアルカリ剤を用いて、それぞれ調整すればよい。
上記酸性剤としては、例えば、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸、酒石酸、アスコルビン酸等の有機酸およびこれらの塩類等の通常食品に用いられるものを使用すればよく、これらは単独使用しても2種以上併用してもよい。
また、上記アルカリ剤としては、例えば、かんすい、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、縮合リン酸塩、焼成カルシウム、塩基性アミノ酸等の通常食品に用いられるものを使用すればよく、これらは単独使用しても2種以上併用してもよい。
上記pHを有する生地の作製は、従来の小麦粉含有食品用の生地の製造法に従って該生地を製造する際に、上記の酸性剤またはアルカリ剤を上記のpH値の範囲内になるように所定量添加すればよい。上記の酸性剤またはアルカリ剤の添加時期は、流動生地の原料配合時に原料配合に使用してもよく、生地調製時に添加してもよく、または一旦流動生地を調製した後に該生地に添加してもよい。
pHを酸性側(3.0〜5.5の範囲)またはアルカリ側(8.0〜10.5の範囲)に調整した流動生地を、次いで、そのpHを6.0〜7.5の範囲、好ましくは6.0〜7.0の範囲に再調整する。
再調整した生地のpHが6.0未満であると、生地焼成時の作業性が悪く、酸味が残ってしまう。また再調整した生地のpHが7.5超であると、生地焼成時の作業性が悪く、アルカリ剤に由来するえぐ味が残ってしまう。
上記生地のpHの再調整は、生地のpHが酸性側にある場合はアルカリ剤を、生地のpHがアルカリ側にある場合は酸性剤を、それぞれ添加して行えばよい。
また、上記生地のpHの再調整は、生地のpHを酸性側(3.0〜5.5の範囲)またはアルカリ側(8.0〜10.5の範囲)に調整直後に、さらにアルカリ剤(生地のpHが酸性側にある場合)または酸性剤(生地のpHがアルカリ側にある場合)を添加して行ってもよく、また生地のpHを酸性側(3.0〜5.5の範囲)またはアルカリ側(8.0〜10.5の範囲)に調整した後、数分間〜一晩置いてから行ってもよく、また生地の加熱調理直前に行ってもよい。
なお、上記の流動生地の2段階のpH調整(酸性側またはアルカリ側への調整および中性側への再調整)は、流動生地に用いる全ての原料を添加した後に行ってもよいが、pH調整により影響を受ける成分、例えば蛋白質原料(卵または卵粉末、小麦蛋白、大豆蛋白、乳類、乳蛋白等)や膨張剤等を添加する前に、これらの成分以外の原料を混合して調整した生地についてあらかじめpH調整を行い、その後、生地にpH調整により影響を受ける成分を添加するのが好ましい。
上記のように2段階でpHを調整して製造された本発明に係る小麦粉含有流動生地は、直ぐに小麦粉含有食品の製造に供してもよいが、数時間〜数日間保存した後に用いてもよい。また、当該小麦粉含有流動生地は、必要により、目的とする小麦粉含有食品の種類等に応じて、穀粉原料以外の原料を添加した後、常法、すなわち小麦粉含有食品の通常の製法に従って加熱調理することにより、本発明の小麦粉含有食品を得ることができる。
本発明の小麦粉含有流動生地を用いて製造された各小麦粉含有食品は、直ぐに喫食に供してもよいが、常温保存、冷凍保存または冷蔵保存することができる。また、冷凍保存または冷蔵保存する場合、加熱調理後に冷凍保存または冷蔵保存してもよいが、加熱調理前に冷凍保存または冷蔵保存し、当該保存後に加熱調理して喫食に供してもよい。さらに、加熱調理後に保存する場合には、必要に応じて、電子レンジ等のマイクロ波処理して再加熱してもよい。
次に本発明をさらに具体的に説明するために実施例および比較例を挙げるが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〜6および比較例1〜7:天ぷら〕
小麦粉(日清製粉株式会社製「バイオレット」)90質量部および熱処理小麦粉10質量部からなる穀粉原料に水150質量部を添加・混合して流動生地を調製した。次いでこの流動生地のpH調整を、酸性側は酢酸を用いて、アルカリ側は炭酸ナトリウムを用いて、それぞれ行った。その後、酸性側にpH調整した生地については、炭酸ナトリウムを用いて、アルカリ側にpH調整した生地については、酢酸を用いて、それぞれ中性付近にpHを再調整した。pH調整の結果を下記の表1に示す。なお、熱処理小麦粉としては、特開2007−151508号公報に記載の調整例1の熱処理小麦粉10質量部を使用した。
上記のようにpHを再調整して小麦粉含有流動生地(天ぷら用バッター)を調製した。イモに小麦粉の打ち粉をした後、上記天ぷら用バッターにつけて170℃で3分間油ちょうしてイモ天ぷらを得た。この天ぷらを室温で4時間放置、あるいは冷蔵庫で24時間保存後に電子レンジ(500W)で30秒間加熱調理した。次いで、これらの天ぷらについて、10名のパネラーにより、室温4時間放置後の衣の食味および食感(さくみ、ヒキ)、電子レンジ再加熱後の食感を、下記の表2の評価基準に従い評価を行った。得られた結果を表1に示す。


Figure 0004995851
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上記の表1の結果から、本発明の2段階のpH調整を行った天ぷら用バッターを用いて製造された実施例1〜6の天ぷらは、室温4時間放置後の衣の食味および食感(さくみ、ヒキ)、並びに電子レンジ再加熱後の食感の全てに優れることがわかる。これに対し、pH調整を行わない天ぷら用バッターを用いて製造された比較例1の天ぷらは、衣の食味は良好であるものの、室温放置後における食感(さくみ、ヒキ)と電子レンジ再加熱後の食感に劣ることが分かる。pHの再調整を行わない天ぷら用バッターを用いて製造された比較例2および5の天ぷらは、衣の食味が不良である。2段階のpH調整を行ってもpH値が本発明で規定する範囲外の天ぷら用バッターを用いて製造された比較例3、4、6および7の天ぷらは、衣の食味、食感(さくみ、ヒキ)、電子レンジ再加熱後の食感のいずれかが劣ることが分かる。
〔実施例7〜12および比較例8〜14:お好み焼き〕
小麦粉(日清製粉株式会社製「フラワー」)100質量部に水100質量部を添加・混合して流動生地を調製した。次いでこの流動生地のpH調整を、酸性側は酢酸を用いて、アルカリ側は炭酸ナトリウムを用いて、それぞれ行った。その後、酸性側にpH調整した生地については、炭酸ナトリウムを用いて、アルカリ側にpH調整した生地については、酢酸を用いて、それぞれ中性付近にpHを再調整した。pH調整の結果を下記の表3に示す。
次いで、pHを再調整した流動生地に、食塩1質量部、うま味調味料1質量部および全卵50質量部を添加して小麦粉含有流動生地(お好み焼き用生地)を調製した。この生地に具材として5mm角みじん切りキャベツを添加し、180℃のグリドル上で8分間加熱し、反転して7分間焼成した。このお好み焼きを室温で2時間放置、あるいは冷蔵庫で24時間保存後に電子レンジ(1500W)で1分間加熱調理した。次いで、これらのお好み焼きについて、10名のパネラーにより、室温2時間放置後の食味および食感(ヒキ)、電子レンジ再加熱後の食感について表2の評価基準に従い評価を行った。また、室温2時間後の食感(歯切れ、口溶け)について下記の表4の評価基準に従い評価を行った。得られた結果を表3に示す。


Figure 0004995851
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上記の表3の結果から、本発明の2段階のpH調整を行った生地を用いて製造された実施例7〜12のお好み焼きは、室温2時間放置後の食味および食感(ヒキ、歯切れ・口溶け)、並びに電子レンジ再加熱後の食感の全てに優れることがわかる。これに対し、pH調整を行わない生地を用いて製造された比較例8のお好み焼きは、食味は良好であるものの、室温放置後の食感(ヒキ、歯切れ・口溶け)および電子レンジ再加熱後の食感に劣ることが分かる。pHの再調整を行わない生地を用いて製造された比較例9および12のお好み焼きは、食味が不良である。2段階のpH調整を行ってもpH値が本発明で規定する範囲外の生地を用いて製造された比較例10、11、13および14のお好み焼きは、室温放置後の食味、食感(ヒキ、歯切れ・口溶け)、電子レンジ再加熱後の食感のいずれかが劣ることが分かる。
〔実施例13〜14および比較例15〜19:クレープ〕
小麦粉(日清製粉株式会社製「バイオレット」)100質量部に、砂糖10質量部、食塩1質量部および水140質量部を添加・混合して流動生地を調製した。次いでこの流動生地のpH調整を、酸性側は乳酸を用いて、アルカリ側はかんすい(炭酸ナトリウム:炭酸カリウム=4:6)を用いて、それぞれ行った。その後、酸性側にpH調整した生地については、かんすいを用いて、アルカリ側にpH調整した生地については、乳酸を用いて、それぞれ中性付近にpHを再調整した。pH調整の結果を下記の表4に示す。
次いで、pHを再調整した流動生地に、全卵100質量部、脱脂粉乳15質量部およびサラダ油15質量を添加し、低速で30秒間、高速で30秒間ミキシングして、小麦粉含有流動生地(クレープ用生地)を調製した。この生地を、焼成温度180℃で30〜40秒間焼成した。得られたクレープを室温で4時間放置した。次いで、これらのクレープの製造における作業性を表4の評価基準に従い評価すると共に、10名のパネラーにより、室温4時間放置後の食味および食感(ヒキ、歯切れ・口溶け)について表2および表4の評価基準に従い評価を行った。得られた結果を表5に示す。
Figure 0004995851
上記の表5の結果から、本発明の2段階のpH調整を行った生地は作業性が良好であり、かつこの生地を用いて製造された実施例13〜14のクレープは、室温4時間放置後の食味および食感(ヒキ、歯切れ・口溶け)の全てに優れることが分かる。これに対し、pH調整を行わない生地およびこの生地を用いて製造された比較例15のクレープは、生地作業性と食味は良好かやや良好であるものの、室温放置後の食感(ヒキ、歯切れ・口溶け)にやや劣ることが分かる。pHの再調整を行わない比較例16および17の生地は作業性に劣り、これらの生地を用いて製造されたクレープは、食味に劣ることが分かる。2段階のpH調整を行ってもpH値が本発明で規定する範囲外の生地およびこの生地を用いて製造された比較例18および19のクレープは、生地作業性はやや良好であるものの、クレープの食味に劣ることが分かる。
〔実施例15〜16および比較例20〜24:たこ焼き〕
小麦粉(日清製粉株式会社製「フラワー」)100質量部に、砂糖3質量部、食塩3質量部および水200質量部を添加・混合して流動生地を調製した。次いでこの流動生地のpHの調整を、酸性側は酢酸を用いて、アルカリ側はかんすい(炭酸ナトリウム:炭酸カリウム=4:6)を用いて、それぞれ行った。その後、酸性側にpH調整した生地については、かんすいを用いて、アルカリ側にpH調整した生地については、酢酸を用いて、それぞれ中性付近にpHを再調整した。pH調整の結果を下記の表6に示す。
次いで、pHを再調整した流動生地に、全卵30質量部および粉末調味料10質量部を添加して均一になるまで混合して、小麦粉含有流動生地(たこ焼き用生地)を調製した。この生地を、たこ焼き用型に注入し、具材としてタコ片、5mm角みじん切りキャベツ、揚げ玉、紅生姜を入れて、6分間焼成した。得られたたこ焼きを室温で1時間放置、あるいは−20℃で冷凍し、10日間保存後に電子レンジ(1500W)で1分間解凍・再加熱した。次いで、各たこ焼きの製造における作業性を表4の評価基準に従い評価すると共に、10名のパネラーにより、室温で1時間放置後の食味および食感(ヒキ)、電子レンジ再加熱後の食感について表2の評価基準に従い評価を行った。得られた結果を表6に示す。


Figure 0004995851
上記の表6の結果から、本発明の2段階のpH調整を行った生地は作業性が良好であり、かつこの生地を用いて製造された実施例15〜16のたこ焼きは、室温1時間放置後の食味および食感(ヒキ)、電子レンジ再加熱後の食感の全てに優れることが分かる。これに対し、pH調整を行わない生地およびこの生地を用いて製造された比較例20のたこ焼きは、作業性は良好であるものの、室温放置後の食感(ヒキ)および電子レンジ再加熱後の食感に劣ることが分かる。また、pHの再調整を行わない比較例21および22の生地は作業性に劣り、これらの生地を用いて製造されたたこ焼きは、食味に劣ることが分かる。2段階のpH調整を行ってもpH値が本発明で規定する範囲外の生地およびこの生地を用いて製造された比較例23および24のたこ焼きは、作業性、室温放置後の食感(ヒキ)および電子レンジ再加熱後の食感には問題ないものの食味に劣ることが分かる。
〔実施例17〜18および比較例25〜29:シュー皮〕
小麦粉(日清製粉株式会社製「バイオレット」)100質量部に、水100質量部を添加・混合して流動生地を調製した。次いでこの流動生地のpHの調整を、酸性側は酢酸を用いて、アルカリ側はかんすい(炭酸ナトリウム:炭酸カリウム=4:6)を用いて、それぞれ行った。その後、酸性側にpH調整した生地については、かんすいを用いて、アルカリ側にpH調整した生地については、酢酸を用いて、それぞれ中性付近にpHを再調整した。pH調整の結果を下記の表7に示す。
水50質量部にマーガリン100質量部および食塩0.5質量部を添加した後、加熱して沸騰させた。この中に、pHを再調整した流動生地と膨張剤1質量部を添加し、混合しながら加熱してほぼ完全に糊化させた。次いで、全卵200質量部を4〜5回に分けて加えて混捏して小麦粉含有流動生地(シュー皮用生地)を調製した。この生地を絞り出した後、200℃で2分間焼成してシュー皮を得た。シュー皮の製造における作業性を表4の評価基準に従い評価すると共に、このシュー皮にカスタードクリームを詰めて、冷蔵庫で24時間保存後に、10名のパネラーにより、食味および食感(ヒキ)について表2の評価基準に従い評価を行った。得られた結果を表7に示す。
Figure 0004995851
上記の表7の結果から、本発明の2段階のpH調整を行った生地は作業性が良好であり、かつこの生地を用いて製造された実施例17〜18のシュー皮は、24時間冷蔵保存後の食味および食感(ヒキ)の全てに優れることが分かる。これに対し、pH調整を行わない生地およびこの生地を用いて製造された比較例25のシュー皮は、冷蔵保存後の食感に劣ることが分かる。また、pHの再調整を行わない比較例26および27の生地は作業性にやや劣り、これらの生地を用いて製造されたシュー皮は、食味に劣ることが分かる。2段階のpH調整を行ってもpH値が本発明で規定する範囲外の生地およびこの生地を用いて製造された比較例28および29のシュー皮は、作業性、冷蔵保存後の食感には問題ないものの食味にやや劣ることが分かる。

Claims (4)

  1. 小麦粉を主体として含有する穀粉原料から得られる流動生地(ただし、春巻皮用生地を除く)のpHを3.0〜5.5の範囲または8.0〜10.5の範囲に調整した後、該生地のpHを6.0〜7.0の範囲に再調整する小麦粉含有流動生地の製造方法であり、上記流動生地は、その粘度が150〜60,000mPa・sの範囲であり、揚げ物用バッター、たこ焼き用生地、お好み焼き用生地、スポンジ状菓子用生地またはシュー皮用生地であることを特徴とする小麦粉含有流動生地の製造方法。
  2. 流動生地のpHの調整を、酸性剤またはアルカリ剤を用いて行う請求項1記載の小麦粉含有流動生地の製造方法。
  3. 請求項1または2記載の小麦粉含有流動生地の製造方法で得られた小麦粉含有流動生地。
  4. 請求項3記載の小麦粉含有流動生地を用いて、常法に従って製造することを特徴とする小麦粉含有食品の製造方法。
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