JP4990756B2 - ワーク周壁における貫通孔の穿設装置 - Google Patents
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Description
しかし、フライスやドリルによる孔加工では、加工時間が長く、さらに孔縁に比較的大きなバリが生じるのでバリ取りの手間が掛かる。また、放電加工やレーザ加工でも、加工時間が長く、ダレや溶けた材料の付着などが生じる。このため、品質や生産性が悪く、加工コストを低減できない。
これはプレス又は切削による一次加工によって、ワーク(板材107b)の少なくとも裏面に、打ち抜くべき貫通孔170aの孔径に対応する周溝174aを形成し(図14(a))、図14(b)に示すように、プレスによる二次加工によって、板材107bの反対側面から周溝中心との対応位置に打抜きパンチ151aを打ち込んで貫通孔170aを開設するのである。なお、178aはスクラップ(抜きカス)である。
特に、端部の開口が小さく、軸線方向の中途部の筒状部における内径の方が大きい場合、その中途部の筒状部に貫通孔を開けることは困難であった。また、端部の開口が小さく、その入り口から貫通孔を開けるべき位置までの距離が長い管状部材の場合にも、貫通孔を穿設することは困難であった。これは、ワークの貫通孔を穿設すべき筒状部内へダイを好適に挿入できないためである。
なお、ダイを用いずに、外側からパンチを打ち込んで貫通孔を開ける方法はあるが、パンチを打ち込む圧力でワークが変形してしまう。
そこで本発明の目的は、プレス打抜きの方法を用い、生産性や品質が高く、加工コストを大幅に低減できるワーク周壁における貫通孔の穿設方法及び穿設装置を提供することにある。
本発明にかかるワーク周壁における貫通孔の穿設方法の一形態によれば、筒状部を少なくとも一部に有するワークの該筒状部の周壁にプレス打抜きによって貫通孔を穿設する方法であって、先端側にダイが形成されたダイ部を、貫通孔が開けられるべき前記筒状部の周壁内面へ前記ダイが当接されるように挿入する工程と、該ダイ部を挿入する工程の後又は前の工程で、先端側に前記ダイを支持する部位が形成された支持部を、貫通孔が開けられるべき前記筒状部の周壁内面と反対の周壁内面へ前記ダイを支持する部位が当接されるように挿入する工程と、前記ダイ部及び前記支持部と一体化して前記筒状部内にプレス打抜き方向に隙間なく配されるダイユニットを構成するため、前記ダイ部と前記支持部の間に中間挿入部を挿入する工程と、前記筒状部の内部に配された前記ダイユニットの前記ダイに対応して、前記筒状部の外側からパンチを打ち込んで貫通孔を穿設する工程とからなることを特徴とする。
また、本発明にかかるワーク周壁における貫通孔の穿設装置の一形態によれば、前記中間挿入部には軸線方向に延びる溝部又は筋部が設けられており、前記ダイ部及び前記支持部には前記中間挿入部の溝部又は筋部と嵌り合って該中間挿入部の挿入を案内すべく軸線方向に延びる筋部又は溝部が設けられていることを特徴とすることができる。
12 筒状部
15 周壁
20 ダイユニット
21 ダイ部
31 支持部
41 中間挿入部
50 パンチ
70 貫通孔
80 抜きカス
この穿設装置は、ワークの筒状部の周壁に外側からプレス打ち抜きで貫通孔を穿設する装置である。また、本形態例は、軸線方向の中途部の筒状部における内径が端部の開口よりも大きく形成されたワークについて、その筒状部の周壁にプレス打抜きによって貫通孔を穿設する装置となっている。
このワーク10は、具体的には自動車のハンドルシャフトであり、金属材によって形成されたものである。開口10aの内径が17mm(外形が23mm)程度である。また、貫通孔を開けるべき部分(中途部10b)は、外径が36mm程度、周壁15の厚さが2.5mm程度である。そして、その中途部10bの軸線方向の所定位置に、長径30mm×短径9mm程度の長円形の貫通孔70(図2参照)が1つ穿設される。
ダイ部21は、先端側にダイ22が形成され、貫通孔70が開けられるべき筒状部12の周壁内面15aへ前記ダイ22が当接されるように挿入される。
また、このダイ部21は、ワーク10の端部の開口10a(図3等参照)から挿入可能に、先端側にダイ22が形成されると共にその先端側より後端側の支え棒状部23が細く形成されている。このため、ダイ22を、筒状部12内に挿入した後、軸線方向に直交する方向へ移動させて周壁内面15aへ当接させることができる。
さらに、ダイ部21の後端部には、ワーク10の端面11が当接して軸線方向の位置決めがなされるように鍔部24が形成されている。
なお、穴26の深さは、図2に示すように、パンチ50が下死点に下降した場合でも、抜きカス80と底面との間に所定の隙間26aを確保できるように設定すればよい。
また、この支持部31は、ワーク10の端部の開口10a(図3等参照)から挿入可能に、先端側にダイを支持する部位32が形成されると共に先端側より後端側の支え棒状部33が細く形成されている。このため、ダイを支持する部位32を、筒状部15内に挿入した後、軸線方向に直交する方向へ移動させて反対の周壁内面15bへ当接させることができる。
さらに、支持部31の後端部には、ワーク10の端面11が当接して軸線方向の位置決めがなされるように鍔部34が形成されている。
この中間挿入部41は、くさび型の先端42を備える先端側が一方へ延設されると共に根元部である後端部がベース60に固定されて片持ち状態に保持されている。
このように中間挿入部41が保持されているため、ダイ部21及び支持部31と一体化して形成されるダイユニット20の回転方向の位置決めを好適に行うことができる。
また、中間挿入部41には軸線方向に延びる溝部43又は筋部44が設けられている。ダイ部21及び支持部31には中間挿入部41の溝部43又は筋部44と嵌り合ってその中間挿入部41の挿入を案内すべく軸線方向に延びる筋部28又は溝部35が設けられている。
これによって、ダイ部21、支持部31及び中間挿入部41という3つの構成要素を好適に一体化でき、ダイユニット20を好適に筒状部12内に配することができる。
このパンチ50は、加圧手段(図示せず)によって下降し、図2に示すように貫通孔70を穿設する。加圧手段の加圧装置としては、例えばシリンダ装置を用いればよい。
また、62はストリッパー部であり、パンチ50をワーク10からストリップするために設けられている。下方に開いた断面コの字状に形成され、ワーク保持部61に固定されている。また、ワーク10に上から当接する天板分には、パンチ50の上下動を許容する貫通孔が設けられている。なお、本形態例のストリッパー部62は、ワーク保持部61に固定されているが、パンチ50側にスプリングを介した可動ストリッパー方式とすることもできる(図示せず)。
なお、この適正クリアランスについては、経験的に適切な値が知られている。例えば、鉄系の材料に円形の貫通孔を開ける際には、ダイの内径とパンチの外径が、以下の式の関係となるように設定すればよい。
ダイの内径=パンチの外径+{被加工材厚さ×(5〜10%)}×2
図3及び図4は、ダイ部21をワーク10の筒状部12内に挿入する前の状態を示している。図3は、ワーク10の主要部とダイ部21の形態を示す正面の平面図(a)及び右側面の断面図(b)である。図4は、図3に示したワーク10の主要部とダイ部21の形態を示す正面の断面図(a)及び右側面の断面図(b)である。
ワーク10は、中途部10bが太く形成された管状部材であり、端部の開口10aの直径よりも中途部10bの筒状部12の内径の方が大きく形成されている。
ダイ部21は、下面が略平坦に形成され、先端側が上側へ厚く形成されている。その先端側の部位にダイ22が設けられている。また、ダイ部21の後端側の支え棒状部23が上下方向及び幅方向について薄く形成されている。さらに、鍔部24おいては、先端側と同様に上側へ厚く形成されている。
なお、この図5では正面から見た断面図を中央に記載し、右側に右側面から見た断面図を、左側に左側面から見た図を記載してある。以下の図の中でも、挿入状態等を明らかにするために同様に記載している。
図6は、ダイ部21がワーク10に対して相対的に軸線方向と直交する方向(上方)へ移動され、先端側のダイ22が周壁内面15aへ当接された状態を示している。ダイ部21の支え棒状部23は、上下方向に薄く形成されており、スムースに上下方向へ移動できる。
図8は、支持部31がワーク10に対して相対的に軸線方向へ移動され、支持部31がワーク10の筒状部12内でダイ部21の下側へ挿入された状態を示している。支持部31の先端部は、開口10aを通過できる大きさに形成されており、スムースに挿入される。このとき、ダイ部21の下面に形成された軸線方向へ延びる筋部28(図1)に、支持部31の上面に形成された溝部35が嵌って案内(スライド)され、上記の軸線方向の移動が好適になされる。
図9は、支持部31がワーク10に対して相対的に軸線方向と直交する方向(下方)へ移動され、先端側のダイを支持する部位32が反対の周壁内面15bへ当接された状態を示している。支持部31の支え棒状部33は、上下方向に薄く形成されており、スムースに上下方向へ移動できる。
図11及び図12は、中間挿入部41がワーク10に対して相対的に軸線方向へ移動され、その中間挿入部41をダイ部21と支持部31の間へ挿入した状態を示している。(図11は平面図であり、図12は断面図である。)中間挿入部41の上下方向の厚さは、以上の工程でセットされたダイ部21と支持部31との間隙に相当するもので、スムースに挿入される。このとき、ダイ部21の下面に形成された軸線方向へ延びる筋部28(図1参照)に、中間挿入部41の上面に形成された溝部43(図1及び図10)が嵌る。また、中間挿入部41の下面に形成された軸線方向へ延びる筋部44(図1参照)に、支持部31の上面に形成された溝部35(図1及び図10)が嵌って案内(スライド)され、上記の軸線方向の移動が好適になされる。
つまり、ダイ部21、支持部31及び中間挿入部41というパーツに3分割されていたダイユニット20が一体化して、筒状部12内にプレス打抜き方向に隙間なく配される。このダイユニット20とワーク保持部61(図1参照)によって、ワーク10は、プレス力を好適に受けることが可能な状態にセットされる。
次に、図13に示すように貫通孔70の打抜きがなされる。前述したようにワークは好適にセットされているため、プレス力によって変形することがなく、貫通孔70が好適に穿設される。
従って、この穿設装置によれば、プレス加工によって好適に貫通孔を開けることができるため、生産性及び品質を向上させて加工コストを大幅に低減できる。
そして、ダイ部21のダイ22の穴26に嵌っている抜きカス80が、小孔27に挿通されるピン(図示せず)によって押し出されて除去される。なお、条件によっては、ダイ22を逆さにするだけで抜きカス80が落下して除去できる場合もある。
以上の工程を繰り返すことで、効率よく貫通孔70を穿設できる。
また、中間挿入部41は、1つだけの部材でなく複数の部材で構成されていても良いことは勿論である。つまり、ダイユニット20を、4段重ね等、4分割以上の部材で構成しても良い。
また、パンチやダイなどの各構成の材質については、孔開け精度が高くて寿命が長いなどの好適な金型を得るべく、その仕様条件に応じて既知の材質から適宜に選定すればよい。さらに、パンチやダイなどについては、その耐久強度などを向上させるべく、必要に応じて既知の表面硬化技術を用いればよい。
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
Claims (4)
- 軸線方向の中途部の筒状部における内径が一方の端部の開口よりも大きく形成されたワークについて、前記筒状部の周壁にプレス打抜きによって貫通孔を穿設する装置であって、
前記一方の端部の開口から挿入可能に、先端側にダイが形成されると共に該先端側より後端側の支え棒状部が細く形成され、貫通孔が開けられるべき前記筒状部の周壁内面へ前記ダイが当接されるように挿入されるダイ部と、
前記一方の端部の開口から挿入可能に、先端側に前記ダイを支持する部位が形成されると共に該先端側より後端側の支え棒状部が細く形成され、貫通孔が開けられるべき前記筒状部の周壁内面と反対の周壁内面へ前記ダイを支持する部位が当接されるように挿入される支持部と、
前記ダイ部及び前記支持部と一体化して前記筒状部内にプレス打抜き方向に隙間なく配されるダイユニットを構成するため、前記ダイ部と前記支持部の間に前記一方の端部の開口から挿入される中間挿入部と、
前記筒状部の内部に配された前記ダイユニットの前記ダイに対応して設けられ、前記筒状部の外側から打ち込んで貫通孔を穿設するパンチとを具備し、
前記ダイ部の後端部には、前記ワークの前記一方の端部の端面に当接して軸線方向の位置決めがなされるように鍔部が形成され、前記支持部の後端部には、前記ワークの前記一方の端部の端面に当接して軸線方向の位置決めがなされるように鍔部が形成されていることを特徴とするワーク周壁における貫通孔の穿設装置。 - 前記中間挿入部は、くさび型の先端を備える先端側が一方へ延設されると共に根元部である後端部がベースに固定されて片持ち状態に保持されていることを特徴とする請求項1記載のワーク周壁における貫通孔の穿設装置。
- 前記中間挿入部には軸線方向に延びる溝部又は筋部が設けられており、前記ダイ部及び前記支持部には前記中間挿入部の溝部又は筋部と嵌り合って該中間挿入部の挿入を案内すべく軸線方向に延びる筋部又は溝部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のワーク周壁における貫通孔の穿設装置。
- 前記ダイ部には底部を有する穴が形成されることで前記ダイが形成され、ピンを通して抜きカスを除去することができるように、前記底部にはプレス打抜き方向へ貫通する小孔が設けられていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のワーク周壁における貫通孔の穿設装置。
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